説明

薄板保持容器及び薄板保持容器用処理装置

【課題】任意の枚数の半導体ウエハWを、上下いずれの側にも柔軟に支持する。
【解決手段】搬送、保管、処理等に用いるために複数の半導体ウエハWを保持する薄板保持容器11である。少なくとも1枚の半導体ウエハWを個別に保持した状態で複数枚積層された処理トレイ12と、この処理トレイ12を複数枚積層した状態でこれらを一体的に結合すると共に任意の位置で分割する結合機構(18,19)とを備えた。処理トレイ12は、その一側面に少なくとも1枚の半導体ウエハWを保持する一側固定保持部13を備えると共に他側面に他の処理トレイ12の上記一側固定保持部13と互いに嵌合することで外部環境と隔離して上記薄板を固定して保持する収納空間を形成する他側固定保持部14を備えた。これにより、半導体ウエハWの枚数に応じた枚数の処理トレイ12を積層して薄板保持容器11を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハ、磁気記録媒体ディスク、光記録媒体ディスク、液晶用ガラス基板、フレキシブル表示装置用フィルム基板などの電子デバイス用の薄板の搬送、保管、処理等のために保持する薄板保持容器及び薄板保持容器用処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体ウエハ等の電子デバイス用の薄板では、さらなる薄型化が求められている。このため、寸法の大小に係わらず、各薄板が極薄になって、破損しやすくなっている。このような極薄の薄板を収納して保管、搬送するための容器としては、引用文献1に記載の多段式収納カセットが知られている。この多段式収納カセットは、厚みが20〜100μmの極薄ウエハの外周面にチッピングを生じることなく、かつ、パッドへの吸着ミスなく搬出できる収納カセットである。具体的には、図2に示すように、平板3上より極薄ウエハwの直径より僅かに大きい直径の半円弧状ガイド4を起立させた収納棚2の複数を、支柱5を介して等間隔で上下に平行に並べた多段式収納カセット6である。搬送ロボットの吸着パッドをウエハw上面に移動させ、ついで下降させてウエハを平板上に押圧することによりウエハの反りを無くしてから吸着パッドにウエハを吸着固定する。
【特許文献1】特開2004−273867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述のような多段式収納カセットでは、極薄ウエハwの周縁部をその下側から支持するだけで、特に極薄ウエハwを固定する手段は設けられていない。このため、多段式収納カセットを傾けると、極薄ウエハwがずれて破損するおそれがあるため、慎重に搬送する必要がある。この結果、搬送時の作業性が悪いという問題がある。
【0004】
また、近年の液晶用ガラス基板等の大型化に伴って、傾斜させた状態で検査することが多くなってきたが、上記多段式収納カセットでは、内部に収納した極薄ウエハwを傾斜させることはできない。このため、上記多段式収納カセットを検査工程に使用することはできないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたもので、極薄の薄板の搬送、保管、処理等に適した薄板保持容器であり、小型から大型の薄板まで安全にかつ確実に搬送、保管、処理等を行うことができるように改良したものである。
【0006】
本発明は、具体的には、搬送、保管、処理等に用いるために1又は複数の薄板を保持する薄板保持容器であって、少なくとも1枚の薄板を個別に保持した状態で複数枚積層された処理トレイと、当該処理トレイを複数枚積層した状態でこれらを一体的に結合すると共に任意の位置で分割する結合機構とを備え、上記処理トレイが、その一側面に少なくとも1枚の薄板を保持する一側固定保持部を備えると共に他側面に他の処理トレイの上記一側固定保持部と互いに嵌合することで外部環境と隔離して上記薄板を固定して保持する収納空間を形成する他側固定保持部を備え、上記薄板の枚数に応じた枚数の上記処理トレイを積層して構成したことを特徴とする。
【0007】
上記一側固定保持部及び他側固定保持部は、互いに嵌合することで、上記収納空間内に収納した薄板を挟んで固定し、上記一側固定保持部又は他側固定保持部のいずれが上になっても下側の一側固定保持部又は他側固定保持部が上記薄板を支持する構成にすることが望ましい。上記結合機構は、上記各処理トレイの一側面に設けられた結合部と、他側面に設けられ上記結合部に結合される被結合部とから構成され、これら結合部と被結合部とが結合して固定されることで隣接する各処理トレイが互いに結合して全体を一体的に固定すると共に、任意の位置の結合部と被結合部とを切り離すことによりその位置で2つに分離できる構成にすることが望ましい。上記結合機構は、上記各処理トレイを支持して案内するガイド手段と、当該ガイド手段で支持して案内される各処理トレイの全体を一体的に固定すると共に、任意の位置で2つに分離するクランプとを備えて構成することが望ましい。上記各処理トレイのうち両端に位置する各処理トレイには、処理装置に取り付けるための位置決め嵌合部が形成され、上記各処理トレイの一側面を上にする場合に上記一側固定保持部が上記薄板を保持し、他側面を上にする場合に上記他側固定保持部が上記薄板を保持することが望ましい。上記各処理トレイの一側固定保持部と他側固定保持部との嵌合部分には、上記収納空間を密封するシール材を設けることが望ましい。
【0008】
また、薄板保持容器用処理装置は、上記薄板保持容器を載置する載置台と、当該載置台に載置された薄板保持容器を任意の位置で分離して開く分離機構と、当該分離機構で開いた部分に収納された薄板を出し入れする出し入れ機構とを備えて構成されたことを特徴とする。
【0009】
上記分離機構は、薄板保持容器の各処理トレイを任意の位置で分離する解除キーと、当該解除キーで分離した位置で処理トレイを持ち上げるリフト部とから構成することが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
少なくとも1枚の薄板を個別に保持した状態で複数枚積層された処理トレイと、当該処理トレイを複数枚積層した状態でこれらを一体的に結合すると共に任意の位置で分割する結合機構とを備えて構成することで、上記薄板の枚数に応じて上記処理トレイの枚数を任意に設定することができると共に積層された処理トレイを任意の位置で分離することにより、任意の位置で薄板を出し入れすることができる。
【0011】
また、上記処理トレイが、その一側面に一側固定保持部を備えると共に他側面に他側固定保持部を備えたので、2つの処理トレイを重ね合わせることで、上記一側固定保持部と他側固定保持部とが互いに嵌合して収納空間を形成し、この収納空間に上記薄板を、外部環境と隔離した状態で固定して保持することができる。
【0012】
また、上記一側固定保持部及び他側固定保持部を、互いに嵌合することで、上記収納空間内に収納した薄板を挟んで固定し、縦横斜めいずれの方向に配設されても上記一側固定保持部又は他側固定保持部のいずれか一方が蓋側、他方が容器側として機能して上記薄板を支持するように構成したので、薄板保持容器の搬送時、保管時、処理工程での薄板の出し入れ時に、薄板保持容器の上下を区別する必要がなくなる。
【0013】
また、上記結合機構を、上記各処理トレイの一側面に設けられた結合部と、他側面に設けられ上記結合部に結合される被結合部とから構成し、隣接する各処理トレイの結合部と被結合部とを結合して固定されることで全体を一体的に固定すると共に、任意の位置の結合部と被結合部とを切り離すことによりその位置で2つに分離できるようにしたので、薄板保持容器を、その全体を一体的に固定した状態で搬送した後、任意の位置で処理トレイを切り離してその位置の薄板を取り出し、特定の処理を施すことができる。
【0014】
また、上記結合機構を、上記各処理トレイを支持して案内するガイド手段と、当該ガイド手段で支持して案内される各処理トレイの全体を一体的に固定すると共に、任意の位置で2つに分離するクランプとを備えて構成したので、上記同様に、薄板保持容器を、その全体を一体的に固定した状態で搬送した後、任意の位置で処理トレイを切り離してその位置の薄板を取り出し、特定の処理を施すことができる。
【0015】
また、上記各処理トレイのうち両端に位置する各処理トレイに、処理装置に取り付けるための位置決め嵌合部を形成し、上記各処理トレイの一側面を上にする場合に上記一側固定保持部が上記薄板を保持し、他側面を上にする場合に上記他側固定保持部が上記薄板を保持するようにしたので、薄板保持容器をその上下をいずれにしても処理装置に取り付けることができる。また、横や斜めに配置した場合でも、薄板がずれることはなく、横や斜めの配置に対応した処理装置に確実に取り付けることができる。
【0016】
また、上記各処理トレイの一側固定保持部と他側固定保持部との嵌合部分に上記収納空間を密封するシール材を設けたので、上記収納空間内を清浄に保つことができる。
【0017】
また、薄板保持容器用処理装置を、上記薄板保持容器を載置する載置台と、当該載置台に載置された薄板保持容器を任意の位置で分離して開く分離機構と、当該分離機構で開いた部分に収納された薄板を出し入れする出し入れ機構とを備えて構成したので、載置台に載置された薄板保持容器を分離機構によって任意の位置で分離して開き、出し入れ機構によって薄板を出し入れすることで、任意の位置の薄板を容易に出し入れすることができる。
【0018】
また、上記分離機構を、薄板保持容器の各処理トレイを任意の位置で分離する解除キーと、当該解除キーで分離した位置で処理トレイを持ち上げるリフト部とから構成したので、積層された処理トレイを解除キーで分離してリフト部で持ち上げることができ、積層された処理トレイを任意の位置で分離して薄板を出し入れすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。本発明の薄板保持容器は、半導体ウエハ、磁気記録媒体ディスク、光記録媒体ディスク、液晶用ガラス基板、フレキシブル表示装置用フィルム基板などの電子デバイス用の極薄の薄板を収納して、搬送、保管、処理工程(製造ライン等)における使用に供するための容器である。なお、本実施形態では、極薄の半導体ウエハを収納する薄板保持容器を例に説明する。また、極薄の半導体ウエハの場合はその寸法の大小に係わらず破損しやすいため、全ての寸法の半導体ウエハに適用し得る。
【0020】
薄板保持容器11は、図1に示すように、複数枚積層される処理トレイ12から構成されている。この処理トレイ12は、極薄の半導体ウエハWを少なくとも1枚、即ち1枚又は数枚(例えば2枚重ね、3枚以上重ねる場合もある)支持するためのトレイである。この処理トレイ12は、1枚又は複数枚の中間処理トレイ12Aと、上端に位置する上端処理トレイ12Bと、下端に位置する下端処理トレイ12Cとから構成されている。各処理トレイ12は、全体を正方形板状に形成され、半導体ウエハWの大きさに合わせた大きさに設定される。例えば、直径300mm、厚さ50〜150μmの半導体ウエハWに合わせて設定される。なお、半導体ウエハWの表面には保護シートが貼付される場合があり、この場合は保護シートの厚さ分だけ厚くなる。
【0021】
各処理トレイ12のうち中間処理トレイ12Aは、その一側面(図1中の上側面)に一側固定保持部13を、他側面に他側固定保持部14を備えている。
【0022】
一側固定保持部13は、少なくとも1枚の半導体ウエハWを保持する部分である。一側固定保持部13は、正方形板状の中間処理トレイ12Aの中央に、円形状に窪ませて形成されている。この円形状の窪みの直径は、半導体ウエハWの直径よりもわずかに大きい程度である。窪みの深さは、数枚重ねの半導体ウエハWを収納できる程度である。
【0023】
一側固定保持部13の周縁部には環状隆起部16が設けられている。環状隆起部16は、円環状に隆起して形成されている。この環状隆起部16は、後述する他側固定保持部14の環状溝24に嵌合することで外部環境と隔離して半導体ウエハWを固定して保持する収納空間を形成する。この一側固定保持部13は、各中間処理トレイ12Aと共に下端処理トレイ12Cに設けられている。上端処理トレイ12Bには設けられていない。
【0024】
中間処理トレイ12Aの一側面の四隅には結合穴18が設けられている。この結合穴18は、後述する中間処理トレイ12Aの下側面の結合フック19が結合して2枚の中間処理トレイ12を互いに固定するための穴である。結合穴18の内部には、結合フック19に結合する機構が設けられている。この機構は、結合フック19に引っ掛けて固定し、外して固定解除する一般的な構成のものである。結合フック19を結合穴18に押し込むことで結合し、後述の結合操作穴21に解除キー36(図6参照)を差し込むことで結合が解除されるようになっている。この結合穴18は、各中間処理トレイ12Aと共に下端処理トレイ12Cに設けられている。上端処理トレイ12Bには設けられていない。
【0025】
中間処理トレイ12Aの他側面の四隅には結合フック19が設けられている。この結合フック19は、上記結合穴18に結合して2枚の中間処理トレイ12を互いに固定するためのフックである。結合フック19は、その先端部に係止爪を有し、この係止爪で上記結合穴18に結合するようになっている。この結合フック19は、各中間処理トレイ12Aと共に上端処理トレイ12Bに設けられている。下端処理トレイ12Cには設けられていない。
【0026】
なお、上記結合穴18と結合フック19とで、結合部及び被結合部からなる結合機構が構成されている。即ち、互いに結合されることによって隣接する各処理トレイ12を互いに結合して固定する結合機構が構成されている。
【0027】
中間処理トレイ12Aの周縁部の各結合穴18に対向する位置には結合操作穴21が設けられている。この結合操作穴21は、結合穴18に結合フック19が結合して2枚の中間処理トレイ12Aが互いに固定された状態から、固定を解除して2枚の中間処理トレイ12Aを切り離すための穴である。この結合操作穴21に解除キー36が挿入されて、固定が解除されるようになっている。この結合操作穴21は、中間処理トレイ12Aと共に上端処理トレイ12B及び下端処理トレイ12Cにも設けられている。
【0028】
中間処理トレイ12Aの対向する2つの辺にはフランジ部22が設けられている。このフランジ部22は、処理装置31(図6参照)のアーム部に係止して中間処理トレイ12Aを持ち上げるための部分である。処理装置31の解除キー36(図6参照)を結合操作穴21に挿入して固定を解除し、アーム部をフランジ部22に係止して、中間処理トレイ12Aを持ち上げることで、その中間処理トレイ12Aの位置で薄板保持容器11が分割されるようになっている。即ち、複数枚の処理トレイ12を積層した状態で一体的に結合されると共に任意の位置で2つに分割されるようになっている。フランジ部22は中間処理トレイ12Aのみに設けられている。なお、上端処理トレイ12Bに結合される中間処理トレイ12Aが一側固定保持部13を備えている場合は、上端処理トレイ12Bにもフランジ部22が設けられる。
【0029】
中間処理トレイ12Aの他側面(下側面)の他側固定保持部14は、下側に位置する処理トレイ12の一側固定保持部13と嵌合して外部環境と隔離した収納空間を形成すると共に、一側固定保持部13と嵌合して半導体ウエハWを挟み持つための部分である。他側固定保持部14は、中間処理トレイ12Aの下側面から円形状に隆起させて形成されている。この他側固定保持部14の隆起は、図3に示すように、他側固定保持部14と一側固定保持部13とで半導体ウエハWを挟み持つことができる寸法に設定されている。具体的には、収納される半導体ウエハWの厚さや枚数によって異なるため、その枚数等に応じて、他側固定保持部14の隆起の寸法が設定される。これにより、一側固定保持部13と他側固定保持部14とが互いに嵌合することで、上記収納空間内に収納された半導体ウエハWを挟んで固定し、一側固定保持部13又は他側固定保持部14のいずれが上になっても下側の一側固定保持部13又は他側固定保持部14が半導体ウエハWを支持するようになっている。即ち、一側固定保持部13又は他側固定保持部14のいずれか一方が蓋側、他方が容器側として機能して半導体ウエハWを支持するようになっている。斜めや横になった場合も同様に、一側固定保持部13又は他側固定保持部14のいずれか一方が蓋側、他方が容器側として機能して半導体ウエハWを支持するようになっている。
【0030】
他側固定保持部14の周囲には、図1に示すように、環状溝24が設けられている。この環状溝24は、上記一側固定保持部13の環状隆起部16が嵌合して、外部環境と隔離した収納空間を形成するための部分である。
【0031】
この他側固定保持部14は、中間処理トレイ12Aと共に上端処理トレイ12Bに設けられている。下端処理トレイ12Cには設けられていない。
【0032】
なお、環状溝24には、必要に応じてシール材が装着される。上記収納空間内を密封したい場合は、シール材を設ける。半導体ウエハWを保持するだけで、収納空間内を密封する必要がない場合は、シール材を設けない。
【0033】
上端処理トレイ12Bの上側面及び下端処理トレイ12Cの下側面には、位置決め嵌合部23が形成されている。この位置決め嵌合部23は、処理装置31に取り付けるための部分で、処理装置31の載置台32の構造に合わせて形成される。これにより、上端処理トレイ12B又は下端処理トレイ12Cのいずれを載置台32に載置しても、一側固定保持部13又他側固定保持部14のいずれか上方に向いた方が半導体ウエハWを保持するようになっている。
【0034】
このように構成された処理トレイ12は、半導体ウエハWの枚数に応じた枚数だけ積層され、図4及び図5に示すように一体的に結合されて、薄板保持容器11を構成する。
【0035】
次に、薄板保持容器11用の処理装置31について図6を基に説明する。
【0036】
この処理装置31は、薄板保持容器11に収納された半導体ウエハWを処理するための装置全般を示すものである。この処理としては、研磨、切削、洗浄、加工等の半導体ウエハWに対して行う種々の処理が含まれる。なお、図6では、半導体ウエハWの出し入れ機構部分のみを示している。
【0037】
この処理装置31は、載置台32と、分離機構33と、出し入れ機構34とを備えて構成されている。載置台32は薄板保持容器11を載置して固定支持するための部分である。分離機構33は、薄板保持容器11を任意の位置で分離するための機構である。この分離機構33は、解除キー36と、リフト部37とから構成されている。解除キー36は、処理トレイ12の結合操作穴21に挿入してその部分の結合を解除する機構部分である。解除キー36は、ガイドレール38に支持されて、上下の任意の位置に移動できるようになっている。リフト部37は、処理トレイ12のフランジ部22に係止して処理トレイ12を持ち上げて開く機構部分である。リフト部37は、処理トレイ12のフランジ部22に係止するアーム部を備えている。さらに、リフト部37は、解除キー36と同様に、ガイドレール38に支持されて、上下の任意の位置に移動できるようになっている。
【0038】
出し入れ機構34は、分離機構33で分離された位置の半導体ウエハWを外部に取り出し、又は内部に収納するための機構部分である。この出し入れ機構34は、真空ピンセット等の半導体ウエハWを支持する手段を備えている。さらに、出し入れ機構34は、ガイドレール39に支持されて、上下の任意の位置に移動できるようになっている。
【0039】
以上のように構成された薄板保持容器11は次のように動作する。
【0040】
まず、半導体ウエハWの枚数に応じて処理トレイ12を揃える。具体的には、中間処理トレイ12Aと下端処理トレイ12Cとを半導体ウエハWの枚数分だけ揃える。なお、この場合は、1つの処理トレイ12に1枚の半導体ウエハWを収納する例である。
【0041】
中間処理トレイ12Aと下端処理トレイ12Cの一側固定保持部13に半導体ウエハWをそれぞれ収納して積層する。下端処理トレイ12Cを最下部に置き、その上に中間処理トレイ12Aを積層していく。即ち、結合フック19を結合穴18に挿入して押し込んで互いに結合させながら、積層していく。そして、最後に上端処理トレイ12Bの結合フック19を最上段の中間処理トレイ12Aの結合穴18に押し込んで結合させる。これにより、薄板保持容器11を構成する。
【0042】
この状態で、半導体ウエハWは一側固定保持部13と他側固定保持部14とで挟まれて固定保持されている。これにより、上端処理トレイ12Bと下端処理トレイ12Cのいずれを上にしても、半導体ウエハWを確実に支持することができる。
【0043】
薄板保持容器11は、搬送されてきた後、処理装置31の載置台32に載置されて固定される(図6(a))。次いで、解除キー36が、処理対象の半導体ウエハWを保持した処理トレイ12の位置に移動して、その処理トレイ12の結合操作穴21に挿入されて固定が解除され、切り離される(図6(b))。
【0044】
次いで、リフト部37のアーム部が処理トレイ12のフランジ部22に係止して(図6(c))、その処理トレイ12が持ち上げられる(図6(d))。次いで、出し入れ機構34が半導体ウエハWを支持して持ち上げられ(図6(e))、処理するために外部に搬出される(図6(f))。
【0045】
処理が終了した後の半導体ウエハWを薄板保持容器11に収納する場合は、戻したい位置の処理トレイ12が上記同様にして切り離され、出し入れ機構34で支持された半導体ウエハWを一側固定保持部13に載置する。その後は、リフト部37で持ち上げた処理トレイ12を降ろして結合フック19を結合穴18に嵌合させて押し込む。これで、半導体ウエハWの収納は完了する。
【0046】
これにより、薄板保持容器11は次のような効果を奏する。
【0047】
少なくとも1枚の半導体ウエハWを個別に保持した状態で複数枚積層された処理トレイ12と、この処理トレイ12を複数枚積層した状態でこれらを一体的に結合すると共に任意の位置で分割する結合機構とを備えて構成することで、半導体ウエハWの枚数に応じて処理トレイ12の枚数を任意に設定することができると共に積層された処理トレイ12を任意の位置で分離することにより、任意の位置で半導体ウエハWを出し入れすることができるようになる。この結果、これまでの収納容器のように収納できる枚数が予め決められていて変更できないものと異なり、半導体ウエハWの枚数に応じて処理トレイ12の枚数を設定することができ、極めて柔軟性に富んだ薄板保持容器を提供することができる。
【0048】
また、処理トレイ12が、その一側面に一側固定保持部13を備えると共に他側面に他側固定保持部14を備えたので、2つの処理トレイ12を重ね合わせることで、一側固定保持部13と他側固定保持部14とが互いに嵌合して収納空間を形成し、この収納空間に半導体ウエハWを、外部環境と隔離した状態で固定して保持することができるようになる。この結果、半導体ウエハWの枚数に応じた個数の収納空間を形成できる枚数の処理トレイ12を用意し、各処理トレイ12に半導体ウエハWを1枚又は数枚収納してこれらを積層することで、半導体ウエハWの枚数に応じて薄板保持容器の大きさを自由に変更することができる。
【0049】
また、一側固定保持部13及び他側固定保持部14を、互いに嵌合することで、上記収納空間内に収納した半導体ウエハWを挟んで固定し、一側固定保持部13又は他側固定保持部14のいずれが上になっても下側の一側固定保持部13又は他側固定保持部14が半導体ウエハWを支持するように構成したので、薄板保持容器11の搬送時、保管時、処理工程での半導体ウエハWの出し入れ時に、薄板保持容器11の上下を区別する必要がなくなる。この結果、薄板保持容器11の上下を区別せずに作業を行うことができ、作業性が向上する。
【0050】
また、結合機構を、各処理トレイ12の一側面に設けられた結合穴18と、他側面に設けられて結合穴18に結合される結合フック19とから構成し、隣接する各処理トレイ12の結合穴18と結合フック19とを結合して固定されることで全体を一体的に固定すると共に、任意の位置の結合穴18と結合フック19とを切り離すことによりその位置で2つに分離できるようにしたので、薄板保持容器11を、その全体を一体的に固定した状態で搬送した後、任意の位置で処理トレイ12を切り離してその位置の半導体ウエハWを取り出し、特定の処理を施すことができるようになる。この結果、複数の処理トレイ12を一体的に固定した状態で搬送して、内部に収納された複数の半導体ウエハWのうち特定の半導体ウエハWを選択して処理を施すことができる。これにより、処理内容の異なる複数の半導体ウエハWを1つの薄板保持容器11で搬送して、各半導体ウエハWに個別の処理を施すことができるようになる。
【0051】
また、上記各処理トレイ12のうち両端に位置する各上端処理トレイ12B及び下端処理トレイ12Cに、処理装置31に取り付けるための位置決め嵌合部23を形成し、各処理トレイ12の一側面を上にする場合に一側固定保持部13が半導体ウエハWを保持し、他側面を上にする場合に他側固定保持部14が半導体ウエハWを保持するようにしたので、薄板保持容器11をその上下をいずれにしても処理装置31に確実に取り付けることができるようになる。この結果、半導体ウエハWの一側面を処理する工程と他側面を処理する工程とで、薄板保持容器11の上下を反転させることにより、処理工程において半導体ウエハWを個別に反転させる必要がなくなり、作業性が向上する。
【0052】
また、各処理トレイ12の一側固定保持部13と他側固定保持部14との嵌合部分に上記収納空間を密封するシール材を設けることにより、上記収納空間内を清浄に保つことができる。この結果、表面を清浄に保たなければならない半導体ウエハWを搬送する場合に、上記収納空間内を清浄に保って、半導体ウエハWの表面を保護することができる。
【0053】
また、処理装置31が、載置台32に載置された薄板保持容器11を分離機構33によって任意の位置で分離して開き、出し入れ機構34によって半導体ウエハWを出し入れするため、任意の位置の半導体ウエハWを容易に出し入れすることができる。
【0054】
また、上記分離機構を、薄板保持容器11の各処理トレイ12を任意の位置で分離する解除キー36と、この解除キー36で分離した位置で処理トレイ12を持ち上げるリフト部37とから構成したので、積層された処理トレイ12を解除キー36で分離してリフト部37で持ち上げることができる。この結果、複数枚積層された処理トレイ12を任意の位置で容易に分離して、半導体ウエハWを出し入れすることができるようになる。
【0055】
[変形例]
上記実施形態では、薄板として300mmの半導体ウエハWを例に説明したが、薄板の大小は問わないものである。例えば、小さい薄板として、直径1インチ程度の半導体ウエハWがある。大きい薄板では、縦120cm、横240cm程度の液晶用ガラス基板がある。さらに大きい寸法の薄板もあり得る。これらにおいても、本願発明を適用することにより、上記実施形態と同様の作用、効果を奏するものである。
【0056】
また、上記実施形態では、薄板保持容器11を縦方向に載置して上下に分割するようにしたが、必要に応じて斜め方向や横方向に載置して分割するようにしてもよい。例えば、液晶用ガラス基板の検査工程において、液晶用ガラス基板を斜めにした状態で検査することがあり、このような場合に合わせて、薄板保持容器11を斜めにしてもよい。
【0057】
また、上記結合機構を、各処理トレイ12を支持して案内する支柱等のガイド手段と、このガイド手段で支持して案内される各処理トレイ12の全体を一体的に固定すると共に、任意の位置で2つに分離するクランプとを備えて構成してもよい。このクランプとしては、例えば、積層した各処理トレイ12を一体的に支持するフックと、任意の位置で上下2つの処理トレイ12をそれぞれ支持して切り離すフックとを備えて構成する。これにより、上記同様に、薄板保持容器11を、その全体を一体的に固定した状態で搬送した後、任意の位置で処理トレイ12を切り離してその位置の半導体ウエハWを取り出し、特定の処理を施すことができる。この結果、複数の処理トレイ12を一体的に固定した状態で搬送して、内部に収納された複数の半導体ウエハWのうち特定の半導体ウエハWを選択して処理を施すことができる。これにより、処理内容の異なる複数の半導体ウエハWを1つの薄板保持容器11で搬送して、各半導体ウエハWに個別の処理を施すことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施形態に係る薄板保持容器を示す分解斜視図である。
【図2】従来の薄板保持容器を示す正面図である。
【図3】本発明の薄板保持容器の処理トレイを2枚重ねた状態を示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る薄板保持容器を示す正面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る薄板保持容器を示す側面図である。
【図6】本発明の薄板保持容器を装着した処理装置の動作を示す模式図である。
【符号の説明】
【0059】
11:薄板保持容器、12:処理トレイ、12A:中間処理トレイ、12B:上端処理トレイ、12C:下端処理トレイ、13:一側固定保持部、14:他側固定保持部、16:環状隆起部、23:位置決め嵌合部、24:環状溝、31:処理装置、32:載置台、33:分離機構、34:出し入れ機構、36:解除キー、37:リフト部、38:ガイドレール、39:ガイドレール、W:半導体ウエハ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送、保管、処理等に用いるために1又は複数の薄板を保持する薄板保持容器であって、
少なくとも1枚の薄板を個別に保持した状態で複数枚積層された処理トレイと、
当該処理トレイを複数枚積層した状態でこれらを一体的に結合すると共に任意の位置で分割する結合機構とを備え、
上記処理トレイが、その一側面に少なくとも1枚の薄板を保持する一側固定保持部を備えると共に他側面に他の処理トレイの上記一側固定保持部と互いに嵌合することで外部環境と隔離して上記薄板を固定して保持する収納空間を形成する他側固定保持部を備え、
上記薄板の枚数に応じた枚数の上記処理トレイを積層して構成したことを特徴とする薄板保持容器。
【請求項2】
請求項1に記載の薄板保持容器において、
上記一側固定保持部及び他側固定保持部が、互いに嵌合することで、上記収納空間内に収納された薄板を挟んで固定し、縦横斜めいずれの方向に配設されても上記一側固定保持部又は他側固定保持部のいずれか一方が蓋側、他方が容器側として機能して上記薄板を支持することを特徴とする薄板保持容器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の薄板保持容器において、
上記結合機構が、上記各処理トレイの一側面に設けられた結合部と、他側面に設けられ上記結合部に結合される被結合部とから構成され、これら結合部と被結合部とが結合して固定されることで隣接する各処理トレイが互いに結合して全体を一体的に固定すると共に、任意の位置の結合部と被結合部とを切り離すことによりその位置で2つに分離できることを特徴とする薄板保持容器。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の薄板保持容器において、
上記結合機構が、上記各処理トレイを支持して案内するガイド手段と、当該ガイド手段で支持して案内される各処理トレイの全体を一体的に固定すると共に、任意の位置で2つに分離するクランプとを備えて構成されたことを特徴とする薄板保持容器。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の薄板保持容器において、
上記各処理トレイのうち両端に位置する各処理トレイに、処理装置に取り付けるための位置決め嵌合部が形成され、
上記各処理トレイの一側面を上にする場合に上記一側固定保持部が上記薄板を保持し、他側面を上にする場合に上記他側固定保持部が上記薄板を保持することを特徴とする薄板保持容器。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の薄板保持容器において、
上記各処理トレイの一側固定保持部と他側固定保持部との嵌合部分に上記収納空間を密封するシール材を設けたことを特徴とする薄板保持容器。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の薄板保持容器を載置する載置台と、
当該載置台に載置された薄板保持容器を任意の位置で分離して開く分離機構と、
当該分離機構で開いた部分に収納された薄板を出し入れする出し入れ機構とを備えて構成されたことを特徴とする薄板保持容器用処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の薄板保持容器用処理装置において、
上記分離機構が、薄板保持容器の各処理トレイを任意の位置で分離する解除キーと、当該解除キーで分離した位置で処理トレイを持ち上げるリフト部とから構成されたことを特徴とする薄板保持容器用処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−103454(P2007−103454A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−288211(P2005−288211)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000140890)ミライアル株式会社 (74)
【出願人】(501114693)株式会社ウインズ (23)
【Fターム(参考)】