説明

薄肉ステンレス鋼管と薄肉小径管用継手の接合構造

【課題】 薄肉で軽量性や耐薬品性,防食性などに優れると共に、抜け止め防止機能に優れた装着性の高い薄肉ステンレス鋼管と薄肉小径管用継手の接合構造を提供する。
【解決手段】 ステンレス鋼管端部に樹脂リングを外嵌して固着すると共に、上記樹脂リングを介して上記ステンレス鋼管端部が接合され、且つ、上記樹脂リングに上記ロック爪が食い込むことにより、上記継手本体内に挿入された上記ステンレス鋼管端部と上記継手本体とが互いに一体化されることを特徴とする薄肉ステンレス鋼管と薄肉小径管用継手の接合構造。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
この発明は、薄肉で軽量性や耐薬品性,防食性などに優れると共に、抜け止め防止機能に優れた装着性の高い薄肉ステンレス鋼管と薄肉小径管用継手の接合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属製の配管として各種の配管用継手が知られている。
例えば、JWWA G 115「水道用ステンレス鋼鋼管」などに規定する配管継手として、プレス式継手,ワンタッチ継手,拡管式継手などがあり、その他にもスウェージロック継手など種々のタイプの配管用継手が知られている。
【0003】
プレス継手は、筒状の継手の受口にゴム輪などのシール材を内蔵し、継手に配管を差し込んだ後に継手の外周をプレス加工し、配管の差し込み部分である継手端部から中央付近までの接続部を、部分的に管縦断面を六角形や八角形のように縮径し、配管と継手とを圧着接合したように構成するタイプのものである。また、ワンタッチ継手は、食い込み部である爪を備えた抜け止め部材を、複合パイプに食い込ませることにより抜け止め防止を達成させるように構成するタイプのもので、拡管式継手は、管端部を凸状に拡管すると共に、管端部に被嵌される特殊ナットと継手と接合する構成のタイプのものである。
【0004】
また、スウェージロック継手は、ヒンジ機能により締め付けを行なうものであり、アドバンス・バック・フェルールと称される構造を締め付けると、フロント・フェルールは継手本体と配管チューブとの間に押し込まれ、第一シールを形成し、その後段に配置されたバック・フェルールはヒンジとなって内向きに曲がり、配管用チューブを強力にグリップする。このヒンジを構成するバック・フェルールの形状で、独自の技術を駆使したヒンジ・コレット機能が向上し、それにより軸方向の動きが配管チューブに対する中心方向のスウェージング動作に変換されるだけでなく、少ない締め付けトルク量で取り付けることができる構成のものである。
【0005】
従来のこのような配管用継手は、例えば水道用ステンレス鋼鋼管としては、肉厚13SU(0.8mm),20〜25SU(1.0mm),30〜50SU(1.2mm)に対応する規格範囲のものであれば、従来市販の継手である程度は対応することができる。
【0006】
しかし、薄肉なステンレス鋼管については、様々な理由から好適な継手が存在しないという事情がある。
【0007】
そこで、金属用の配管継手(金属チューブ)以外で、市販継手類で調べた結果、薄肉で小径なステンレス鋼管に対応できる薄肉小径管継手類としては、特許文献1<特開2000−310384号>として((株))日本ピスコ製:樹脂チューブ用継手:チューブフィティング(商標名)があることが判明した。
【0008】
この特許文献1は、「本発明の目的は樹脂材料でも製造し易い形状であり、爪部が管(樹脂チューブ)の外壁に必要以上にくい込んだり、コレットリングが抜け出ることを防止できると共に、シール性を向上できる管継手を提供することにある。」(段落[0007]参照)
「係止片の先端側の外側に形成された係止片の凸部がテ−パ内面の所定の位置に形成されたテ−パ内面の凹に嵌まることで、コレットリングが所定位置以上に管(樹脂チューブ)の引き抜き方向へ移動することを阻止すると共に、係止片が所定以上に内側に反ることを阻止するように、管継手に管(樹脂チューブ)を接続した状態にロックできる。」([発明の効果]参照)
【0009】
【特許文献1】特開2000−310384号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、この配管用継手は、あくまで樹脂チューブ用継手とされており、薄肉で小径なステンレス鋼管に配管できる薄肉小径管継手ではなかった。近年、水道用の分野のみならず半導体用,医療用,食品用など各種の分野においても、小径な配管用継手の応用が増加しており、薄肉ステンレス鋼管と薄肉小径管用継手の接合が多くなってきている。
【0011】
また、設置箇所や分野においては、樹脂チューブによらず防食性や耐久性に優れた薄肉ステンレス鋼管を使用したいという要請や、環境問題の観点からも信頼性に優れたステンレス鋼管が好まれることもある。
【0012】
しかして、本発明者は、薄肉小径管継手類は、薄肉で小径なステンレス鋼管に満足できない、且つ、対応することができる薄肉小径管継手類はないという課題に基づき、鋭意研究を行なったものである。
【0013】
この発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、薄肉で軽量性や耐薬品性,防食性などに優れると共に、抜け止め防止機能に優れた装着性の高い薄肉ステンレス鋼管と薄肉小径管用継手の接合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は、上記のような目的を違成するために、請求項1記載のように、薄肉ステンレス鋼管端部の外周に取り付けられる継手本体であって、上記継手本体の内周に備えられる抜け止め防止機構のロック爪が、上記薄肉ステンレス鋼管端部の外周に掛り止められる薄肉小径管用継手の接合構造において、上記ステンレス鋼管端部に樹脂リングを外嵌して固着すると共に、上記樹脂リングを介して上記ステンレス鋼管端部が接合され、且つ、上記樹脂リングに上記ロック爪が食い込むことにより、上記継手本体内に挿入された上記ステンレス鋼管端部と上記継手本体とが互いに一体化されることを特徴とする。また、請求項2記載のように、上記樹脂リングは、熱可塑性樹脂により形成され、請求項3記載のように、上記樹脂リングはゴム製リング部材により形成され、また、請求項4記載のように、上記ロック爪は、ステンレス製材よりなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、この発明によれば、配管である薄肉ステンレス鋼管の端部に樹脂リングを外嵌して固着し、この樹脂リングに対して継手本体内に備えられた抜け止め防止機構のロック爪が樹脂リングを変形させて押さえるように食い込むことにより、継手本体内に挿入された薄肉ステンレス鋼管端部と継手本体とが良好な関係で互いに一体化されるので、薄肉ステンレス鋼管と薄肉小径管用継手との接合を果たすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施例を図面に基づき詳細に説明する。図1は、この発明に係る薄肉ステンレス鋼管を示す説明図、図2は、図1の薄肉ステンレス鋼管と薄肉小径管用継手との接合状態を示す説明図である。
【0017】
図2に示すように、薄肉ステンレス鋼管10の管端部10aと薄肉小径管用継手本体11とは、管端部10aに外装されて固着された樹脂リング12を介して互いに接合されている。
【0018】
薄肉ステンレス鋼管10は、JWWA G 115「水道用ステンレス鋼鋼管」の規定に基づき、肉厚30〜50SU(1.2mm)以下の細径管に対応し得るものが好適であり、その管端部10aの平滑部には樹脂リング12が外装され固着されている。
【0019】
樹脂リング12は、後述するロック爪14の好適な食い込みを許容する樹脂部材であればよい。また、そのような効果を果たすゴム製リングにより代用してもよい。
【0020】
次に、継手本体11の構造について説明する。なお、この薄肉小径管用継手本体11の構造は、種々の構造として設計することができるが、((株))日本ピスコ製「樹脂チューブ用継手」を1例として説明する。すなわち、この継手本体11は、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂部材により形成され、その一方側の開口部11aは段差を以って薄肉に形成された段差部11b(拡径部)とされ、この段差部11bの奥行き側にはニトリルゴムの弾性スリーブ13が挿嵌されている。
【0021】
また、段差部11bの手前側には、抜け止め防止機構を構成するステンレス製のロック爪14が、薄肉ステンレス鋼管10の管端部10aに固着された樹脂リング12に食い込むように配備されている。
【0022】
さらに、この抜け止め防止機構を構成するロック爪14の手前側からは、継手本体11の一方側の開口部11aと対向すべく、その元部にフランジ部15aを有するガイドリング15が挿嵌されている。また、その元部にフランジ部16aを有すると共に、ストレート部16bよりなる開放リング16aがポリアセタールから形成されている。
【0023】
また、継手本体11の他方側の開口部11cにも、黄銅、無電解ニッケルメッキからなる金属製継手本体17が挿嵌され、その拡径部17aが開口部11cと当接するように取り付けられる。そして、この開口部11cの奥行きには、ニトリルゴムのOリング16が挿嵌されている。
【0024】
このように構成された薄肉小径管用継手の接合は、薄肉小径管用継手11の一方側の開口部11a(拡径部)に、薄肉ステンレス鋼管10の管端部10aを挿入し段部まで挿入する。この際、弾性スリーブ13が緩衝材となり、さらに隣接する抜け止め防止機構を構成するロック爪14が、薄肉ステンレス鋼管10の管端部10aに固着された樹脂リング12に食い込むこととなる。また、このロック爪14は、ロック爪14の手前側に配備されているガイドリング15が開口部11a(拡径部)内に挿入され薄肉小径管用継手に内蔵される。
【0025】
さらに、ガイドリング15の手前側に配備された開放リング16は、ストレート部16bをガイドリング15に押し込むと共に、その元部のフランジ部16aが薄肉小径管用継手11の端面に当接される。
【0026】
金属製継手本体17は、黄銅、無電解ニッケルメッキからなる金属本体部よりなりシーロック加工されており、適宜相手方他部材(図示略)と接続される。
【0027】
このように、この薄肉ステンレス鋼管と薄肉小径管用継手との接合構造によれば、配管である薄肉ステンレス鋼管の端部に樹脂リングを外嵌して固着し、この樹脂リングに対して継手本体内に備えられた抜け止め防止機構のロック爪が樹脂リングを変形させて押さえるように食い込むことにより、継手本体内に挿入された薄肉ステンレス鋼管端部と継手本体とが良好な関係で互いに一体化されるので、薄肉ステンレス鋼管と薄肉小径管用継手との接合を果たすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
勿論、この発明は肉厚30〜50SU(1.2mm)以下の細径管だけでなく、薄肉小径管用継手の継手だけでなく、肉厚13SU(13mm),20〜25SU(10mm),30〜50SU(1.2mm)などの厚肉管用継手にも応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】 この発明に係る薄肉ステンレス鋼管を示す説明図である。
【図2】 図1の薄肉ステンレス鋼管と薄肉小径管用継手との接合状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0031】
10 薄肉ステンレス鋼管
11 薄肉小径管用継手本体
12 樹脂リング
13 弾性スリーブ
14 ロック爪
15 ガイドリング
16 開放リング
17 金属製継手本体
18 Oリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄肉ステンレス鋼管端部の外周に取り付けられる継手本体であって、上記継手本体の内周に備えられる抜け止め防止機構のロック爪が、上記薄肉ステンレス鋼管端部の外周に掛り止められる薄肉小径管用継手の接合構造において、
上記ステンレス鋼管端部に樹脂リングを外嵌して固着すると共に、上記樹脂リングを介して上記ステンレス鋼管端部が接合され、且つ、上記樹脂リングに上記ロック爪が食い込むことにより、上記継手本体内に挿入された上記ステンレス鋼管端部と上記継手本体とが互いに一体化されることを特徴とする薄肉ステンレス鋼管と薄肉小径管用継手の接合構造。
【請求項2】
上記樹脂リングは、熱可塑性樹脂により形成されることを特徴とする請求項1記載の薄肉ステンレス鋼管と薄肉小径管用継手の接合構造。
【請求項3】
上記樹脂リングは、ゴム製リング部材により形成されることを特徴とする請求項1または2記載の薄肉ステンレス鋼管と薄肉小径管用継手の接合構造。
【請求項4】
上記ロック爪は、ステンレス製材よりなることを特徴とする請求項1記載の薄肉ステンレス鋼管と薄肉小径管用継手の接合構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−181023(P2010−181023A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49892(P2009−49892)
【出願日】平成21年2月7日(2009.2.7)
【出願人】(592123853)株式会社昭和螺旋管製作所 (27)
【Fターム(参考)】