薄膜トランジスタ、及びそれを用いた最大印加電圧検出センサ及び照射光履歴センサ
【課題】酸化物の半導体薄膜を用いた薄膜トランジスタであって、各種センサに利用して新しいセンサを作製できる薄膜トランジスタを提供する。
【解決手段】この薄膜トランジスタ1は、非晶質酸化物の半導体薄膜2とドレイン電極3とソース電極4とゲート電極5を備え、ゲート電極5に印加されるゲート電圧に応じて半導体薄膜2にチャネル層が形成されて、ドレイン電極3とソース電極4の間にドレイン・ソース間電流が流れ得るものであって、非晶質酸化物は、弱く結合してバンドギャップ内に欠陥準位を生成する過剰酸素が含まれている。
【解決手段】この薄膜トランジスタ1は、非晶質酸化物の半導体薄膜2とドレイン電極3とソース電極4とゲート電極5を備え、ゲート電極5に印加されるゲート電圧に応じて半導体薄膜2にチャネル層が形成されて、ドレイン電極3とソース電極4の間にドレイン・ソース間電流が流れ得るものであって、非晶質酸化物は、弱く結合してバンドギャップ内に欠陥準位を生成する過剰酸素が含まれている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物半導体薄膜を用いた薄膜トランジスタに関し、また、その薄膜トランジスタを用いた最大印加電圧検出センサ及び照射光履歴センサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットパネルディスプレイの制御のための回路などを構成する素子として、ガラス基板の上に形成した非晶質シリコン(アモルファスシリコン)又は多結晶シリコンの半導体薄膜を用いた電界効果型の薄膜トランジスタ(TFT)が広く使用されている。非晶質シリコン又は多結晶シリコンの成膜のためには、比較的高温の工程を必要とする。これに対して、ガラス基板の代わりに、軽さや物理的強度などの面で有利な樹脂基板を用い、その樹脂基板上で半導体薄膜を適切に形成できるように、非晶質シリコン又は多結晶シリコンよりも低温で成膜できる半導体薄膜が研究されている。
【0003】
この低温で成膜できる半導体薄膜として、酸化物でありながら半導体の性質を有する非晶質酸化物(アモルファス酸化物)を用いた薄膜トランジスタが提案されている。例えば、特許文献1には、ノーマリーオフ動作を実現するために、酸素欠陥を低減して通常状態の電子キャリア濃度を1018/cm3未満に減少させることができる非晶質酸化物の半導体薄膜を用いた薄膜トランジスタが記載されている。非晶質酸化物の例としては、InGaO3(ZnO)mをターゲットとしてパルスレーザ堆積法やスパッタリング法で作成したa−IGZO薄膜が記載されている。また、酸素欠陥を低減して電子キャリア濃度を1018/cm3未満に減少させるために、半導体薄膜の成膜時又は成膜後の処理において、雰囲気の酸素濃度や温度などを制御している。
【0004】
今日、このような酸化物の半導体薄膜を用いた薄膜トランジスタの特性の詳細は、種々の実験を含めて研究されているところである。
【0005】
その一方、薄膜トランジスタを用いてフラットパネルディスプレイの制御以外の特別な機能を実現するような応用回路は、各種のものが提案されている。例えば、特許文献2には、サンプルホールド回路などに従来の薄膜トランジスタを用いて最大印加電圧を保持するセンサが記載されている。サンプルホールド回路は、長時間にわたって最大印加電圧を保持することは困難であるので、最大印加電圧を検出しようとすると、適当な時間ごとにその時間内で最大の電圧値を、前に記憶した電圧値と比較しながらメモリ装置に記憶させるという動作も必要である。
【0006】
また、例えば、特許文献3には、照射された光の強度を検出するセンサに従来の薄膜トランジスタを用い、照射された光がその薄膜トランジスタのなかで電子とホールのキャリアペアを生成し、それによって光の強度に応じた電流を取り出すものが記載されている。この薄膜トランジスタは、タッチパネルや指紋センサなどの応用回路に適用できるものである。この薄膜トランジスタを用いて照射された光の履歴、すなわち積算量を求めようとすると、瞬間毎の光の強度を検出し、それをメモリ装置に記憶させ、積算量を計算するという動作が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−165527号公報
【特許文献2】特開2010−101690号公報
【特許文献3】特開2008−244016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明者は、酸化物の半導体薄膜を用いた薄膜トランジスタに関して、酸化物に含まれる酸素の影響を詳細に研究している。その研究の中で、ある所定の条件で作製した薄膜トランジスタについては、電気的特性が電圧印加と光照射によって可逆的に変化するという現象を呈することを見出し、その現象に着目した。そして、上述した最大印加電圧検出センサや照射光履歴センサを含む各種センサに利用して新しいセンサを作製できる薄膜トランジスタを案出した。
【0009】
本発明は係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、酸化物の半導体薄膜を用いた薄膜トランジスタであって、各種センサに利用して新しいセンサを作製できる薄膜トランジスタを提供すること、及びその薄膜トランジスタを用いた最大印加電圧検出センサ及び照射光履歴センサを簡易な構成でもって提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の薄膜トランジスタは、非晶質酸化物の半導体薄膜とドレイン電極とソース電極とゲート電極を備え、該ゲート電極に印加されるゲート電圧に応じて前記半導体薄膜にチャネル層が形成されて、前記ドレイン電極と前記ソース電極の間にドレイン・ソース間電流が流れ得る薄膜トランジスタであって、前記非晶質酸化物は、弱く結合してバンドギャップ内に欠陥準位を生成する過剰酸素が含まれていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の薄膜トランジスタは、請求項1に記載の薄膜トランジスタにおいて、所定のドレイン・ソース間電流となるときのゲート電圧は、電圧の印加によって増加し、かつ、光照射によって減少することを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の薄膜トランジスタは、請求項1又は2に記載の薄膜トランジスタにおいて、前記非晶質酸化物は、In、Ga、Zn及び酸素の元素から構成されており、結晶化したときにInGaO3(ZnO)m(mは6未満の自然数あるいは1/2)の結晶相が現れる組成であることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の薄膜トランジスタは、請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタにおいて、前記非晶質酸化物の半導体薄膜は、成膜した前記非晶質酸化物を高温オゾンにさらすことによって過剰酸素を含ませることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の薄膜トランジスタは、請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタにおいて、前記非晶質酸化物の半導体薄膜は、所定の高酸素分圧あるいは高温酸素雰囲気中で成膜させることにより、過剰酸素を含ませることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の最大印加電圧検出センサは、請求項1〜5のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタを備え、該薄膜トランジスタへ光照射を行って初期状態にし、その後の印加電圧の入力期間の経過後に電気的特性の測定を行うことにより、最大印加電圧を検出することを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の最大印加電圧検出センサは、請求項6に記載の最大印加電圧検出センサにおいて、前記電気的特性の測定は、所定のドレイン・ソース間電流となるときのゲート電圧の測定又は所定のゲート電圧のときのドレイン・ソース間電流の測定であることを特徴とする。
【0017】
請求項8に記載の最大印加電圧検出センサは、請求項6又は7に記載の最大印加電圧検出センサにおいて、前記光照射は、エネルギー2.3eV以上の光子を含む光照射であることを特徴とする。
【0018】
請求項9に記載の照射光履歴センサは、請求項1〜5のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタを備え、該薄膜トランジスタに所定の電圧印加を行って初期状態にし、その後の照射光の入射期間の経過後に電気的特性の測定を行うことにより、照射された光の積算量を検出することを特徴とする。
【0019】
請求項10に記載の照射光履歴センサは、請求項9に記載の照射光履歴センサにおいて、前記電気的特性の測定は、所定のドレイン・ソース間電流となるときのゲート電圧の測定又は所定のゲート電圧のときのドレイン・ソース間電流の測定であることを特徴とする。
【0020】
請求項11に記載の照射光履歴センサは、前記薄膜トランジスタの前記ゲート電極への所定の電圧印加により該薄膜トランジスタを初期状態にすることを特徴とする
【0021】
請求項12に記載の照射光履歴センサは、前記ゲート電極に印加する所定の電圧の値によって初期状態の電気的特性を変えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の薄膜トランジスタによれば、チャネル層が形成され得る半導体薄膜の非晶質酸化物には、弱く結合してバンドギャップ内に欠陥準位を生成する過剰酸素が含まれているために、特性変動印加電圧の印加と光照射により互いに反対方向にシフトするIds−Vgs特性となるので、最大印加電圧検出センサや照射光履歴センサを含む各種センサに利用して新しいセンサを作製することができる。また、その薄膜トランジスタを用いることで、最大印加電圧検出センサ及び照射光履歴センサは、簡易な構成でもって実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る薄膜トランジスタの構造を例示する模式的な断面図である。
【図2】同上の薄膜トランジスタの各状態のIds−Vgs特性を示す特性図である。
【図3】同上の薄膜トランジスタにおける特性変動印加電圧による所定のIdsとなるときのVgsの変動を示す特性図である。
【図4】同上の薄膜トランジスタの別の各状態のIds−Vgs特性を示す特性図である。
【図5】同上の薄膜トランジスタにおける光照射時間による所定のIdsとなるときのVgsの変動を示す特性図である。
【図6】同上の薄膜トランジスタを用いた最大印加電圧検出センサを説明するための模式図である。
【図7】同上の薄膜トランジスタを用いた照射光履歴センサを説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための好ましい形態について図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態に係る薄膜トランジスタ1は、樹脂基板やガラス基板などの基板の上に、図1に示すように、半導体薄膜2を設け、それとともにドレイン電極3とソース電極4とゲート電極5を設けた構造のものである。この薄膜トランジスタ1は、ゲート電極5にかかるゲート電圧に応じて半導体薄膜2にチャネル層が形成されて、ドレイン電極3とソース電極4の間にドレイン・ソース間電流が流れ得る。本発明は、このような構造の薄膜トランジスタ1においてのものである。
【0025】
この薄膜トランジスタ1の具体的な構造は、図1に示すような構造とすることができる。すなわち、ドレイン電極3とソース電極4とは互いに離隔して半導体薄膜2に接触しており、ゲート電極5はゲート絶縁膜6を介して半導体薄膜2に接している。ゲート電極5及びゲート絶縁膜6は、図1に示すように半導体薄膜2の下方に設けても、或いは上方に設けてもよい。
【0026】
本発明において重要な点は、半導体薄膜2に半導体の性質を有する非晶質酸化物(アモルファス酸化物)を用い、過剰酸素が含まれるようにしたことである。過剰酸素は、弱く結合してバンドギャップ内に欠陥準位を生成する酸素である。この過剰酸素は、300℃以下の温度で加熱されても半導体薄膜2から放出される(脱離する)ものである。
【0027】
(薄膜トランジスタの実施例)
以下、実施例として、In、Ga、Zn及び酸素の元素から構成され、結晶化したときにInGaO3(ZnO)m(mは6未満の自然数あるいは1/2)の結晶相が現れる非晶質酸化物(以下、a−IGZOと称す。)を用いた薄膜トランジスタ1について説明する。a−IGZOは、半導体の性質を有する非晶質酸化物の代表的なものである、
【0028】
このような過剰酸素に含む非晶質酸化物の半導体薄膜2は、以下のようにして作製することができる。まず、a−IGZOを、成膜工程において、常温で、a−IGZOの多結晶化したものをターゲットとして、RFマグネトロンスパッタリングなどで成膜する。その後、オゾンアニール工程において、a−IGZOに過剰酸素を含ませるように、成膜したa−IGZOを高濃度で高温のオゾンにさらす。詳細には、例えば濃度が3.74g/m3で300℃のオゾンに15分さらせばよい。300℃以上のオゾンならば、十分な過剰酸素(例えば、5×1016cm−3以上)を含ませることができる。なお、成膜工程において、所定の高酸素分圧あるいは高温酸素雰囲気中で成膜させることにより、過剰酸素を含ませることも可能である。また、ドレイン電極3、ソース電極4、ゲート電極5、及びゲート絶縁膜6はいかなる方法で作製しても構わない。
【0029】
a−IGZOの半導体薄膜2を用いた薄膜トランジスタ1の電気的特性は以下のとおりである。
【0030】
図2〜図5に示すのは、薄膜トランジスタ1の電気的特性を示すものである。これらの図に示すものは、a−IGZOがInGaZnO4(すなわちmが1の場合のInGaO3(ZnO)m)のスパッタリングターゲットを用いて製膜した組成であって上述のようにして作製した薄膜トランジスタ1を測定した実験を基にしている。なお、下記の第1の実験と第2の実験では異なる実験サンプルを用いた。また、ゲート電極5に特性変動印加電圧を印加し、ドレイン電極3及びソース電極4を接地して実験を行った。なお、特性変動印加電圧とは、薄膜トランジスタ1の電気的特性を変動させるために印加されるゲート電圧をいう。
【0031】
図2は、第1の実験で行った各状態におけるドレイン・ソース間電流(Ids)の対ゲート電圧(Vgs)の電気的特性、すなわちIds−Vgs特性を示すものである。特性測定時のドレイン・ソース間電圧(Vds)は、0.1Vとした。図2の中で、曲線aは、LEDランプによる10秒の光照射後の状態の特性を示している。曲線b〜曲線jは、曲線aの状態からそれぞれ、20V、25V、30V、35V、40V、50V、60V、70V、80Vの特性変動印加電圧を1秒間印加した後の状態の特性を示している。曲線aは、詳細には、薄膜トランジスタ1の作製直後の状態又は曲線b〜曲線jのそれぞれの状態からLEDランプによる10秒の光照射を行うことで、ほとんど一致して示されるものである。なお、薄膜トランジスタ1の作製直後の状態の特性及び曲線aの状態から10Vの特性変動印加電圧を1秒間印加した後の状態の特性については、後述する図3では関連するものが示されているが、その図で示されるように曲線aとほとんど一致しているので図2では省略している。
【0032】
図2より、薄膜トランジスタ1のIds−Vgs特性は、特性変動印加電圧の印加によって右シフトして急峻になり、かつ、光照射によって左シフトして緩やかになることがわかる。更に詳しくは、Ids−Vgs特性は、特性変動印加電圧の値が増えるにつれて、段々と右シフトし急峻になることがわかる。
【0033】
図3は、図2で示した各曲線が示す状態のIds−Vgs特性を別の形で示したものである。図3は、横軸を特性変動印加電圧の値、縦軸をゲート電圧(Vgs)の値としている。曲線A〜曲線Gはそれぞれ、Ids=10−12A、10−11A、10−10A、10−9A、10−8A、10−7A、10−6A、となるときのVgsを示している。各IdsとなるときのVgsは、特性変動印加電圧の増加とともに段々と増加していることがわかる。Idsが少ないほど、その増加が顕著である。なお、図3では、理解し易いように、薄膜トランジスタ1の作製直後の状態をLEDランプによる10秒の光照射後の状態(すなわち、特性変動印加電圧が0Vの状態)の左側に示している。
【0034】
次に、図4は、第2の実験で行った各状態におけるIds−Vgs特性を示すものである。特性測定時のVdsは、0.1Vとした。図4の中で、曲線kは、80Vの特性変動印加電圧を1分間印加した後の状態の特性を示している。曲線l〜曲線rはそれぞれ、曲線kの状態からそれぞれ、2320ルクスのハロゲンランプによる光照射を1分、3分、10分、30分、100分、300分、1000分間行った後の状態の特性を示している。曲線kは、詳細には、薄膜トランジスタ1の作製直後の状態又は曲線l〜曲線rのそれぞれの状態から80Vの特性変動印加電圧を1分間印加することで、ほとんど一致して示されるものである。なお、2320ルクスのハロゲンランプからの光は、上述したLEDランプに比べエネルギーが非常に小さいものにしている。
【0035】
図4より、薄膜トランジスタ1のIds−Vgs特性は、図2を用いて述べたのと同様に、特性変動印加電圧の印加によって右シフトして急峻になり、かつ、光照射によって左シフトして緩やかになることがわかる。更に詳しくは、Ids−Vgs特性は、光照射時間が増えるにつれて、段々と左シフトし緩やかになることが分かる。
【0036】
図5は、図4で示した各曲線が示す状態のIds−Vgs特性を別の形で示したものである。図5は、横軸を光照射時間、縦軸をVgsの値とし、Ids=10−9A(1nA)となるときのVgsを曲線Hとして示している。所定のIdsとなるときのVgsは、光照射時間の増加とともに段々と減少していることがわかる。なお、図5においては、光照射時間が0分の状態は、80Vの特性変動印加電圧を1分間印加した後の状態を示している。
【0037】
このように、薄膜トランジスタ1のIds−Vgs特性は、特性変動印加電圧の印加によって右シフトし、かつ、光照射によって左シフトする(図2及び図4参照)。これを言い換えれば、薄膜トランジスタ1において所定のIdsとなるときのVgsは、特性変動印加電圧の印加によって増加し、かつ、光照射によって減少する(図3及び図5参照)。この現象は可逆的であり、特性変動印加電圧の印加と光照射を繰り返しても、同じ条件で電圧印加又は光照射を行えばほぼ同じ特性が得られる。なお、特性変動印加電圧を印加するときのドレイン電極とソース電極は、片方だけ接地しもう片方は浮かせていても、或いはそれらの間に電位差を有するような電圧にすることも可能である。
【0038】
この現象については、以下のように考察される。薄膜トランジスタ1の作製直後には、非晶質酸化物の半導体薄膜2に含まれる過剰酸素がバンドギャップの中のフェルミ準位近傍に深い欠陥準位を生成しており、Ids−Vgs特性は緩やかである。これらの深い欠陥準位は、特性変動印加電圧の印加によって電子を捕獲すると、構造緩和効果により、価電子帯端に近いより深い準位となるため、チャネル層に発生する電子キャリアが減少し、Ids−Vgs特性は右シフトし急峻となる。この際、印加電圧に応じて価電子帯端近くにまで緩和する準位密度が変わるため、印加電圧に応じて右シフトの変化量が定まる。また、光照射により電子が放出されると、照射された光の履歴(すなわち光の積算量)に応じて再び深い準位に戻るので、Ids−Vgs特性は左シフトし緩やかになる。
【0039】
以上、薄膜トランジスタ1について説明した。図2及び図3で示した電気的特性は、検出対象の印加電圧により電気的特性を変動させ、光照射により初期状態にリセットするような各種センサに利用できることを示している。リセットは、エネルギー2.3eV以上(光波長540nm以下)の光子を含む光を照射することによって可能である。また、図4及び図5で示した電気的特性は、検出対象の光照射により電気的特性を変動させ、所定のゲート電圧(特性変動印加電圧)を印加することで初期状態にリセットするような各種センサに利用できることを示している。この初期状態の電気的特性は、ゲート電圧の値によって制御可能である。以下、薄膜トランジスタ1を利用したセンサとして、最大印加電圧検出センサと照射光履歴センサを説明する。
【0040】
(最大印加電圧検出センサ)
薄膜トランジスタ1は、図2及び図3で示した電気的特性を利用することにより、最大印加電圧検出センサ7を作製することができる。最大印加電圧検出センサ7は、薄膜トランジスタ1の半導体薄膜2に外部からの電圧が印加可能であり、かつ、光照射が可能ならば、いろいろな構成が可能であるが、例えば、図6に示すように、薄膜トランジスタ1のドレイン電極3、ソース電極4、ゲート電極5にそれぞれ外部端子7a、7b、7cが接続されるような構成にすることができる。このような構成により、最大印加電圧の入力期間には、ドレイン電極3及び/又はソース電極4を接地し、ゲート電極5に外部端子7cから検出する印加電圧が入力されるようにでき、また、入力期間後に薄膜トランジスタ1の電気的特性を測定する際には、ドレイン電極3、ソース電極4、ゲート電極5に所要の電圧をかけることができる。
【0041】
最大印加電圧の検出は、以下の手順で行えばよい。まず、LEDランプ或いは他のランプを用いて薄膜トランジスタ1に2.3eV以上のエネルギーの光子を含む光照射を行って初期状態にリセットする。このとき、図2中の曲線aのように、薄膜トランジスタ1のIds−Vgs特性は緩やかであり、所定のIdsとなるときのVgsは減少している。その後、薄膜トランジスタ1に光が入射されないようにし、外部端子7cに最大印加電圧を検出する対象の印加電圧を入力させる。電圧印加がなければ、薄膜トランジスタ1のIds−Vgs特性は変動しない。これに対し、電圧印加されると、図2中の曲線b〜曲線jのように、印加電圧(特性変動印加電圧)の増加とともにIds−Vgs特性は右シフトし急峻となり、また、所定のIds(例えば、1nA)となるときのVgsは増加して行く。そして、印加電圧の入力期間の経過後に、薄膜トランジスタ1の電気的特性、例えば、所定のIdsとなるときのVgs、を測定する。そして、図3で示したようなVgsと特性変動印加電圧の対応関係などを用いて、入力期間内に外部端子7cに入力された最大の印加電圧(最大印加電圧)を導く(検出する)ことができる。その後、再び光照射を行って初期状態にリセットすれば、同様に最大印加電圧の検出を繰り返すことができる。なお、所定のIdsとなるときのVgsを測定する代わりに、所定のVgsのときのIdsを測定してもよい。
【0042】
最大印加電圧検出センサ7は、薄膜トランジスタ1は長時間にわたって最大印加電圧に対応する状態を保持することができるため、簡易な構成で最大印加電圧を検出できるものとなり、適当な時間ごとに印加電圧の電圧値をメモリ装置に記憶させ、順次比較するという動作も必要ではない。
【0043】
このような最大印加電圧検出センサ7は、例えば、電子部品の定格最大電圧を決定するための最大印加電圧モニタ装置などに用いることが可能である。また、光電素子を搭載し、それで照射光量を電圧に変換するようにすれば、最大照射光量検出装置に用いることが可能である。また、放射線を電圧に変換する素子を搭載すれば、最大放射線量検出装置に用いることが可能である。最大印加電圧検出センサ7は、その他、さまざまな装置に適用可能である。
【0044】
(照射光履歴センサ)
薄膜トランジスタ1は、図4及び図5で示した電気的特性を利用することにより、照射光履歴センサ8を作製することができる。照射光履歴センサ8は、薄膜トランジスタ1の半導体薄膜2に外部からの電圧が印加可能であり、かつ、光照射が可能ならば、いろいろな構成が可能であるが、例えば、図6に示したのと同様な図7に示す構成、すなわち薄膜トランジスタ1のドレイン電極3、ソース電極4、ゲート電極5にそれぞれ外部端子8a、8b、8cが接続されるような構成にすることができる。そして、照射光の入射期間後に薄膜トランジスタ1の電気的特性を測定する際には、ドレイン電極3、ソース電極4、ゲート電極5に所要の電圧をかけるようにすることができる。
【0045】
照射光履歴センサ8によって照射光の履歴、すなわち積算量を検出するには、以下の手順で行えばよい。まず、薄膜トランジスタ1のゲート電極5に所定の電圧(特性変動印加電圧)の印加を行って初期状態にする。このとき、図4中の曲線kのように、薄膜トランジスタ1のIds−Vgs特性は急峻であり、所定のIdsとなるときのVgsは増加している。その後、薄膜トランジスタ1に検出する照射光が入射されるようにする。照射光がなければ、薄膜トランジスタ1のIds−Vgs特性は変動しない。これに対し、照射光があれば、曲線l〜曲線rのように、照射光の積算量の増加とともにIds−Vgs特性は左シフトし緩やかになり、また、所定のIdsとなるときのVgsは減少して行く。そして、照射光の入射期間の経過後に、薄膜トランジスタ1の電気的特性、例えば、所定のIdsとなるときのVgs、を測定する。そして、図5で示したようなVgsと光照射時間の対応関係などを用いて、入射期間内に入射された照射光の積算量を導くことができる。その後、再び所定の電圧印加を行って初期状態にリセットすれば、同様に照射光の積算量の検出を繰り返すことができる。なお、所定のIdsとなるときのVgsを測定する代わりに、所定のVgsのときのIdsを測定してもよい。また、初期状態の電気的特性は、ゲート電極5に印加する所定の電圧の値によって制御してもよい。
【0046】
照射光履歴センサ8は、薄膜トランジスタ1の半導体薄膜2自体が照射光の積算量に対応する状態を保持することができるため、簡易な構成で照射光の積算量を検出できるものとなり、瞬間毎の光の強度を検出し、それをメモリ装置に記憶させ、積算量を計算するという動作も必要ではない。
【0047】
このような照射光履歴センサ8は、例えば、長時間露光対応イメージセンサ、照明やバックライトなどの発光部品の寿命検出装置、光波長変換材料や太陽電池などの光照射劣化のある光学部品の寿命検出装置などに用いることが可能である。照射光履歴センサ8は、その他、さまざまな装置に適用可能である。
【0048】
以上、本発明の実施形態に係る薄膜トランジスタ、及びそれを用いた最大印加電圧検出センサ及び照射光履歴センサについて説明したが、本発明は、実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 薄膜トランジスタ
2 半導体薄膜
3 ドレイン電極
4 ソース電極
5 ゲート電極
7 最大印加電圧検出センサ
8 照射光履歴センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物半導体薄膜を用いた薄膜トランジスタに関し、また、その薄膜トランジスタを用いた最大印加電圧検出センサ及び照射光履歴センサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットパネルディスプレイの制御のための回路などを構成する素子として、ガラス基板の上に形成した非晶質シリコン(アモルファスシリコン)又は多結晶シリコンの半導体薄膜を用いた電界効果型の薄膜トランジスタ(TFT)が広く使用されている。非晶質シリコン又は多結晶シリコンの成膜のためには、比較的高温の工程を必要とする。これに対して、ガラス基板の代わりに、軽さや物理的強度などの面で有利な樹脂基板を用い、その樹脂基板上で半導体薄膜を適切に形成できるように、非晶質シリコン又は多結晶シリコンよりも低温で成膜できる半導体薄膜が研究されている。
【0003】
この低温で成膜できる半導体薄膜として、酸化物でありながら半導体の性質を有する非晶質酸化物(アモルファス酸化物)を用いた薄膜トランジスタが提案されている。例えば、特許文献1には、ノーマリーオフ動作を実現するために、酸素欠陥を低減して通常状態の電子キャリア濃度を1018/cm3未満に減少させることができる非晶質酸化物の半導体薄膜を用いた薄膜トランジスタが記載されている。非晶質酸化物の例としては、InGaO3(ZnO)mをターゲットとしてパルスレーザ堆積法やスパッタリング法で作成したa−IGZO薄膜が記載されている。また、酸素欠陥を低減して電子キャリア濃度を1018/cm3未満に減少させるために、半導体薄膜の成膜時又は成膜後の処理において、雰囲気の酸素濃度や温度などを制御している。
【0004】
今日、このような酸化物の半導体薄膜を用いた薄膜トランジスタの特性の詳細は、種々の実験を含めて研究されているところである。
【0005】
その一方、薄膜トランジスタを用いてフラットパネルディスプレイの制御以外の特別な機能を実現するような応用回路は、各種のものが提案されている。例えば、特許文献2には、サンプルホールド回路などに従来の薄膜トランジスタを用いて最大印加電圧を保持するセンサが記載されている。サンプルホールド回路は、長時間にわたって最大印加電圧を保持することは困難であるので、最大印加電圧を検出しようとすると、適当な時間ごとにその時間内で最大の電圧値を、前に記憶した電圧値と比較しながらメモリ装置に記憶させるという動作も必要である。
【0006】
また、例えば、特許文献3には、照射された光の強度を検出するセンサに従来の薄膜トランジスタを用い、照射された光がその薄膜トランジスタのなかで電子とホールのキャリアペアを生成し、それによって光の強度に応じた電流を取り出すものが記載されている。この薄膜トランジスタは、タッチパネルや指紋センサなどの応用回路に適用できるものである。この薄膜トランジスタを用いて照射された光の履歴、すなわち積算量を求めようとすると、瞬間毎の光の強度を検出し、それをメモリ装置に記憶させ、積算量を計算するという動作が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−165527号公報
【特許文献2】特開2010−101690号公報
【特許文献3】特開2008−244016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明者は、酸化物の半導体薄膜を用いた薄膜トランジスタに関して、酸化物に含まれる酸素の影響を詳細に研究している。その研究の中で、ある所定の条件で作製した薄膜トランジスタについては、電気的特性が電圧印加と光照射によって可逆的に変化するという現象を呈することを見出し、その現象に着目した。そして、上述した最大印加電圧検出センサや照射光履歴センサを含む各種センサに利用して新しいセンサを作製できる薄膜トランジスタを案出した。
【0009】
本発明は係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、酸化物の半導体薄膜を用いた薄膜トランジスタであって、各種センサに利用して新しいセンサを作製できる薄膜トランジスタを提供すること、及びその薄膜トランジスタを用いた最大印加電圧検出センサ及び照射光履歴センサを簡易な構成でもって提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の薄膜トランジスタは、非晶質酸化物の半導体薄膜とドレイン電極とソース電極とゲート電極を備え、該ゲート電極に印加されるゲート電圧に応じて前記半導体薄膜にチャネル層が形成されて、前記ドレイン電極と前記ソース電極の間にドレイン・ソース間電流が流れ得る薄膜トランジスタであって、前記非晶質酸化物は、弱く結合してバンドギャップ内に欠陥準位を生成する過剰酸素が含まれていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の薄膜トランジスタは、請求項1に記載の薄膜トランジスタにおいて、所定のドレイン・ソース間電流となるときのゲート電圧は、電圧の印加によって増加し、かつ、光照射によって減少することを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の薄膜トランジスタは、請求項1又は2に記載の薄膜トランジスタにおいて、前記非晶質酸化物は、In、Ga、Zn及び酸素の元素から構成されており、結晶化したときにInGaO3(ZnO)m(mは6未満の自然数あるいは1/2)の結晶相が現れる組成であることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の薄膜トランジスタは、請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタにおいて、前記非晶質酸化物の半導体薄膜は、成膜した前記非晶質酸化物を高温オゾンにさらすことによって過剰酸素を含ませることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の薄膜トランジスタは、請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタにおいて、前記非晶質酸化物の半導体薄膜は、所定の高酸素分圧あるいは高温酸素雰囲気中で成膜させることにより、過剰酸素を含ませることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の最大印加電圧検出センサは、請求項1〜5のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタを備え、該薄膜トランジスタへ光照射を行って初期状態にし、その後の印加電圧の入力期間の経過後に電気的特性の測定を行うことにより、最大印加電圧を検出することを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の最大印加電圧検出センサは、請求項6に記載の最大印加電圧検出センサにおいて、前記電気的特性の測定は、所定のドレイン・ソース間電流となるときのゲート電圧の測定又は所定のゲート電圧のときのドレイン・ソース間電流の測定であることを特徴とする。
【0017】
請求項8に記載の最大印加電圧検出センサは、請求項6又は7に記載の最大印加電圧検出センサにおいて、前記光照射は、エネルギー2.3eV以上の光子を含む光照射であることを特徴とする。
【0018】
請求項9に記載の照射光履歴センサは、請求項1〜5のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタを備え、該薄膜トランジスタに所定の電圧印加を行って初期状態にし、その後の照射光の入射期間の経過後に電気的特性の測定を行うことにより、照射された光の積算量を検出することを特徴とする。
【0019】
請求項10に記載の照射光履歴センサは、請求項9に記載の照射光履歴センサにおいて、前記電気的特性の測定は、所定のドレイン・ソース間電流となるときのゲート電圧の測定又は所定のゲート電圧のときのドレイン・ソース間電流の測定であることを特徴とする。
【0020】
請求項11に記載の照射光履歴センサは、前記薄膜トランジスタの前記ゲート電極への所定の電圧印加により該薄膜トランジスタを初期状態にすることを特徴とする
【0021】
請求項12に記載の照射光履歴センサは、前記ゲート電極に印加する所定の電圧の値によって初期状態の電気的特性を変えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の薄膜トランジスタによれば、チャネル層が形成され得る半導体薄膜の非晶質酸化物には、弱く結合してバンドギャップ内に欠陥準位を生成する過剰酸素が含まれているために、特性変動印加電圧の印加と光照射により互いに反対方向にシフトするIds−Vgs特性となるので、最大印加電圧検出センサや照射光履歴センサを含む各種センサに利用して新しいセンサを作製することができる。また、その薄膜トランジスタを用いることで、最大印加電圧検出センサ及び照射光履歴センサは、簡易な構成でもって実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る薄膜トランジスタの構造を例示する模式的な断面図である。
【図2】同上の薄膜トランジスタの各状態のIds−Vgs特性を示す特性図である。
【図3】同上の薄膜トランジスタにおける特性変動印加電圧による所定のIdsとなるときのVgsの変動を示す特性図である。
【図4】同上の薄膜トランジスタの別の各状態のIds−Vgs特性を示す特性図である。
【図5】同上の薄膜トランジスタにおける光照射時間による所定のIdsとなるときのVgsの変動を示す特性図である。
【図6】同上の薄膜トランジスタを用いた最大印加電圧検出センサを説明するための模式図である。
【図7】同上の薄膜トランジスタを用いた照射光履歴センサを説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための好ましい形態について図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態に係る薄膜トランジスタ1は、樹脂基板やガラス基板などの基板の上に、図1に示すように、半導体薄膜2を設け、それとともにドレイン電極3とソース電極4とゲート電極5を設けた構造のものである。この薄膜トランジスタ1は、ゲート電極5にかかるゲート電圧に応じて半導体薄膜2にチャネル層が形成されて、ドレイン電極3とソース電極4の間にドレイン・ソース間電流が流れ得る。本発明は、このような構造の薄膜トランジスタ1においてのものである。
【0025】
この薄膜トランジスタ1の具体的な構造は、図1に示すような構造とすることができる。すなわち、ドレイン電極3とソース電極4とは互いに離隔して半導体薄膜2に接触しており、ゲート電極5はゲート絶縁膜6を介して半導体薄膜2に接している。ゲート電極5及びゲート絶縁膜6は、図1に示すように半導体薄膜2の下方に設けても、或いは上方に設けてもよい。
【0026】
本発明において重要な点は、半導体薄膜2に半導体の性質を有する非晶質酸化物(アモルファス酸化物)を用い、過剰酸素が含まれるようにしたことである。過剰酸素は、弱く結合してバンドギャップ内に欠陥準位を生成する酸素である。この過剰酸素は、300℃以下の温度で加熱されても半導体薄膜2から放出される(脱離する)ものである。
【0027】
(薄膜トランジスタの実施例)
以下、実施例として、In、Ga、Zn及び酸素の元素から構成され、結晶化したときにInGaO3(ZnO)m(mは6未満の自然数あるいは1/2)の結晶相が現れる非晶質酸化物(以下、a−IGZOと称す。)を用いた薄膜トランジスタ1について説明する。a−IGZOは、半導体の性質を有する非晶質酸化物の代表的なものである、
【0028】
このような過剰酸素に含む非晶質酸化物の半導体薄膜2は、以下のようにして作製することができる。まず、a−IGZOを、成膜工程において、常温で、a−IGZOの多結晶化したものをターゲットとして、RFマグネトロンスパッタリングなどで成膜する。その後、オゾンアニール工程において、a−IGZOに過剰酸素を含ませるように、成膜したa−IGZOを高濃度で高温のオゾンにさらす。詳細には、例えば濃度が3.74g/m3で300℃のオゾンに15分さらせばよい。300℃以上のオゾンならば、十分な過剰酸素(例えば、5×1016cm−3以上)を含ませることができる。なお、成膜工程において、所定の高酸素分圧あるいは高温酸素雰囲気中で成膜させることにより、過剰酸素を含ませることも可能である。また、ドレイン電極3、ソース電極4、ゲート電極5、及びゲート絶縁膜6はいかなる方法で作製しても構わない。
【0029】
a−IGZOの半導体薄膜2を用いた薄膜トランジスタ1の電気的特性は以下のとおりである。
【0030】
図2〜図5に示すのは、薄膜トランジスタ1の電気的特性を示すものである。これらの図に示すものは、a−IGZOがInGaZnO4(すなわちmが1の場合のInGaO3(ZnO)m)のスパッタリングターゲットを用いて製膜した組成であって上述のようにして作製した薄膜トランジスタ1を測定した実験を基にしている。なお、下記の第1の実験と第2の実験では異なる実験サンプルを用いた。また、ゲート電極5に特性変動印加電圧を印加し、ドレイン電極3及びソース電極4を接地して実験を行った。なお、特性変動印加電圧とは、薄膜トランジスタ1の電気的特性を変動させるために印加されるゲート電圧をいう。
【0031】
図2は、第1の実験で行った各状態におけるドレイン・ソース間電流(Ids)の対ゲート電圧(Vgs)の電気的特性、すなわちIds−Vgs特性を示すものである。特性測定時のドレイン・ソース間電圧(Vds)は、0.1Vとした。図2の中で、曲線aは、LEDランプによる10秒の光照射後の状態の特性を示している。曲線b〜曲線jは、曲線aの状態からそれぞれ、20V、25V、30V、35V、40V、50V、60V、70V、80Vの特性変動印加電圧を1秒間印加した後の状態の特性を示している。曲線aは、詳細には、薄膜トランジスタ1の作製直後の状態又は曲線b〜曲線jのそれぞれの状態からLEDランプによる10秒の光照射を行うことで、ほとんど一致して示されるものである。なお、薄膜トランジスタ1の作製直後の状態の特性及び曲線aの状態から10Vの特性変動印加電圧を1秒間印加した後の状態の特性については、後述する図3では関連するものが示されているが、その図で示されるように曲線aとほとんど一致しているので図2では省略している。
【0032】
図2より、薄膜トランジスタ1のIds−Vgs特性は、特性変動印加電圧の印加によって右シフトして急峻になり、かつ、光照射によって左シフトして緩やかになることがわかる。更に詳しくは、Ids−Vgs特性は、特性変動印加電圧の値が増えるにつれて、段々と右シフトし急峻になることがわかる。
【0033】
図3は、図2で示した各曲線が示す状態のIds−Vgs特性を別の形で示したものである。図3は、横軸を特性変動印加電圧の値、縦軸をゲート電圧(Vgs)の値としている。曲線A〜曲線Gはそれぞれ、Ids=10−12A、10−11A、10−10A、10−9A、10−8A、10−7A、10−6A、となるときのVgsを示している。各IdsとなるときのVgsは、特性変動印加電圧の増加とともに段々と増加していることがわかる。Idsが少ないほど、その増加が顕著である。なお、図3では、理解し易いように、薄膜トランジスタ1の作製直後の状態をLEDランプによる10秒の光照射後の状態(すなわち、特性変動印加電圧が0Vの状態)の左側に示している。
【0034】
次に、図4は、第2の実験で行った各状態におけるIds−Vgs特性を示すものである。特性測定時のVdsは、0.1Vとした。図4の中で、曲線kは、80Vの特性変動印加電圧を1分間印加した後の状態の特性を示している。曲線l〜曲線rはそれぞれ、曲線kの状態からそれぞれ、2320ルクスのハロゲンランプによる光照射を1分、3分、10分、30分、100分、300分、1000分間行った後の状態の特性を示している。曲線kは、詳細には、薄膜トランジスタ1の作製直後の状態又は曲線l〜曲線rのそれぞれの状態から80Vの特性変動印加電圧を1分間印加することで、ほとんど一致して示されるものである。なお、2320ルクスのハロゲンランプからの光は、上述したLEDランプに比べエネルギーが非常に小さいものにしている。
【0035】
図4より、薄膜トランジスタ1のIds−Vgs特性は、図2を用いて述べたのと同様に、特性変動印加電圧の印加によって右シフトして急峻になり、かつ、光照射によって左シフトして緩やかになることがわかる。更に詳しくは、Ids−Vgs特性は、光照射時間が増えるにつれて、段々と左シフトし緩やかになることが分かる。
【0036】
図5は、図4で示した各曲線が示す状態のIds−Vgs特性を別の形で示したものである。図5は、横軸を光照射時間、縦軸をVgsの値とし、Ids=10−9A(1nA)となるときのVgsを曲線Hとして示している。所定のIdsとなるときのVgsは、光照射時間の増加とともに段々と減少していることがわかる。なお、図5においては、光照射時間が0分の状態は、80Vの特性変動印加電圧を1分間印加した後の状態を示している。
【0037】
このように、薄膜トランジスタ1のIds−Vgs特性は、特性変動印加電圧の印加によって右シフトし、かつ、光照射によって左シフトする(図2及び図4参照)。これを言い換えれば、薄膜トランジスタ1において所定のIdsとなるときのVgsは、特性変動印加電圧の印加によって増加し、かつ、光照射によって減少する(図3及び図5参照)。この現象は可逆的であり、特性変動印加電圧の印加と光照射を繰り返しても、同じ条件で電圧印加又は光照射を行えばほぼ同じ特性が得られる。なお、特性変動印加電圧を印加するときのドレイン電極とソース電極は、片方だけ接地しもう片方は浮かせていても、或いはそれらの間に電位差を有するような電圧にすることも可能である。
【0038】
この現象については、以下のように考察される。薄膜トランジスタ1の作製直後には、非晶質酸化物の半導体薄膜2に含まれる過剰酸素がバンドギャップの中のフェルミ準位近傍に深い欠陥準位を生成しており、Ids−Vgs特性は緩やかである。これらの深い欠陥準位は、特性変動印加電圧の印加によって電子を捕獲すると、構造緩和効果により、価電子帯端に近いより深い準位となるため、チャネル層に発生する電子キャリアが減少し、Ids−Vgs特性は右シフトし急峻となる。この際、印加電圧に応じて価電子帯端近くにまで緩和する準位密度が変わるため、印加電圧に応じて右シフトの変化量が定まる。また、光照射により電子が放出されると、照射された光の履歴(すなわち光の積算量)に応じて再び深い準位に戻るので、Ids−Vgs特性は左シフトし緩やかになる。
【0039】
以上、薄膜トランジスタ1について説明した。図2及び図3で示した電気的特性は、検出対象の印加電圧により電気的特性を変動させ、光照射により初期状態にリセットするような各種センサに利用できることを示している。リセットは、エネルギー2.3eV以上(光波長540nm以下)の光子を含む光を照射することによって可能である。また、図4及び図5で示した電気的特性は、検出対象の光照射により電気的特性を変動させ、所定のゲート電圧(特性変動印加電圧)を印加することで初期状態にリセットするような各種センサに利用できることを示している。この初期状態の電気的特性は、ゲート電圧の値によって制御可能である。以下、薄膜トランジスタ1を利用したセンサとして、最大印加電圧検出センサと照射光履歴センサを説明する。
【0040】
(最大印加電圧検出センサ)
薄膜トランジスタ1は、図2及び図3で示した電気的特性を利用することにより、最大印加電圧検出センサ7を作製することができる。最大印加電圧検出センサ7は、薄膜トランジスタ1の半導体薄膜2に外部からの電圧が印加可能であり、かつ、光照射が可能ならば、いろいろな構成が可能であるが、例えば、図6に示すように、薄膜トランジスタ1のドレイン電極3、ソース電極4、ゲート電極5にそれぞれ外部端子7a、7b、7cが接続されるような構成にすることができる。このような構成により、最大印加電圧の入力期間には、ドレイン電極3及び/又はソース電極4を接地し、ゲート電極5に外部端子7cから検出する印加電圧が入力されるようにでき、また、入力期間後に薄膜トランジスタ1の電気的特性を測定する際には、ドレイン電極3、ソース電極4、ゲート電極5に所要の電圧をかけることができる。
【0041】
最大印加電圧の検出は、以下の手順で行えばよい。まず、LEDランプ或いは他のランプを用いて薄膜トランジスタ1に2.3eV以上のエネルギーの光子を含む光照射を行って初期状態にリセットする。このとき、図2中の曲線aのように、薄膜トランジスタ1のIds−Vgs特性は緩やかであり、所定のIdsとなるときのVgsは減少している。その後、薄膜トランジスタ1に光が入射されないようにし、外部端子7cに最大印加電圧を検出する対象の印加電圧を入力させる。電圧印加がなければ、薄膜トランジスタ1のIds−Vgs特性は変動しない。これに対し、電圧印加されると、図2中の曲線b〜曲線jのように、印加電圧(特性変動印加電圧)の増加とともにIds−Vgs特性は右シフトし急峻となり、また、所定のIds(例えば、1nA)となるときのVgsは増加して行く。そして、印加電圧の入力期間の経過後に、薄膜トランジスタ1の電気的特性、例えば、所定のIdsとなるときのVgs、を測定する。そして、図3で示したようなVgsと特性変動印加電圧の対応関係などを用いて、入力期間内に外部端子7cに入力された最大の印加電圧(最大印加電圧)を導く(検出する)ことができる。その後、再び光照射を行って初期状態にリセットすれば、同様に最大印加電圧の検出を繰り返すことができる。なお、所定のIdsとなるときのVgsを測定する代わりに、所定のVgsのときのIdsを測定してもよい。
【0042】
最大印加電圧検出センサ7は、薄膜トランジスタ1は長時間にわたって最大印加電圧に対応する状態を保持することができるため、簡易な構成で最大印加電圧を検出できるものとなり、適当な時間ごとに印加電圧の電圧値をメモリ装置に記憶させ、順次比較するという動作も必要ではない。
【0043】
このような最大印加電圧検出センサ7は、例えば、電子部品の定格最大電圧を決定するための最大印加電圧モニタ装置などに用いることが可能である。また、光電素子を搭載し、それで照射光量を電圧に変換するようにすれば、最大照射光量検出装置に用いることが可能である。また、放射線を電圧に変換する素子を搭載すれば、最大放射線量検出装置に用いることが可能である。最大印加電圧検出センサ7は、その他、さまざまな装置に適用可能である。
【0044】
(照射光履歴センサ)
薄膜トランジスタ1は、図4及び図5で示した電気的特性を利用することにより、照射光履歴センサ8を作製することができる。照射光履歴センサ8は、薄膜トランジスタ1の半導体薄膜2に外部からの電圧が印加可能であり、かつ、光照射が可能ならば、いろいろな構成が可能であるが、例えば、図6に示したのと同様な図7に示す構成、すなわち薄膜トランジスタ1のドレイン電極3、ソース電極4、ゲート電極5にそれぞれ外部端子8a、8b、8cが接続されるような構成にすることができる。そして、照射光の入射期間後に薄膜トランジスタ1の電気的特性を測定する際には、ドレイン電極3、ソース電極4、ゲート電極5に所要の電圧をかけるようにすることができる。
【0045】
照射光履歴センサ8によって照射光の履歴、すなわち積算量を検出するには、以下の手順で行えばよい。まず、薄膜トランジスタ1のゲート電極5に所定の電圧(特性変動印加電圧)の印加を行って初期状態にする。このとき、図4中の曲線kのように、薄膜トランジスタ1のIds−Vgs特性は急峻であり、所定のIdsとなるときのVgsは増加している。その後、薄膜トランジスタ1に検出する照射光が入射されるようにする。照射光がなければ、薄膜トランジスタ1のIds−Vgs特性は変動しない。これに対し、照射光があれば、曲線l〜曲線rのように、照射光の積算量の増加とともにIds−Vgs特性は左シフトし緩やかになり、また、所定のIdsとなるときのVgsは減少して行く。そして、照射光の入射期間の経過後に、薄膜トランジスタ1の電気的特性、例えば、所定のIdsとなるときのVgs、を測定する。そして、図5で示したようなVgsと光照射時間の対応関係などを用いて、入射期間内に入射された照射光の積算量を導くことができる。その後、再び所定の電圧印加を行って初期状態にリセットすれば、同様に照射光の積算量の検出を繰り返すことができる。なお、所定のIdsとなるときのVgsを測定する代わりに、所定のVgsのときのIdsを測定してもよい。また、初期状態の電気的特性は、ゲート電極5に印加する所定の電圧の値によって制御してもよい。
【0046】
照射光履歴センサ8は、薄膜トランジスタ1の半導体薄膜2自体が照射光の積算量に対応する状態を保持することができるため、簡易な構成で照射光の積算量を検出できるものとなり、瞬間毎の光の強度を検出し、それをメモリ装置に記憶させ、積算量を計算するという動作も必要ではない。
【0047】
このような照射光履歴センサ8は、例えば、長時間露光対応イメージセンサ、照明やバックライトなどの発光部品の寿命検出装置、光波長変換材料や太陽電池などの光照射劣化のある光学部品の寿命検出装置などに用いることが可能である。照射光履歴センサ8は、その他、さまざまな装置に適用可能である。
【0048】
以上、本発明の実施形態に係る薄膜トランジスタ、及びそれを用いた最大印加電圧検出センサ及び照射光履歴センサについて説明したが、本発明は、実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 薄膜トランジスタ
2 半導体薄膜
3 ドレイン電極
4 ソース電極
5 ゲート電極
7 最大印加電圧検出センサ
8 照射光履歴センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質酸化物の半導体薄膜とドレイン電極とソース電極とゲート電極を備え、該ゲート電極に印加されるゲート電圧に応じて前記半導体薄膜にチャネル層が形成されて、前記ドレイン電極と前記ソース電極の間にドレイン・ソース間電流が流れ得る薄膜トランジスタであって、
前記非晶質酸化物は、弱く結合してバンドギャップ内に欠陥準位を生成する過剰酸素が含まれていることを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項2】
請求項1に記載の薄膜トランジスタにおいて、
所定のドレイン・ソース間電流となるときのゲート電圧は、電圧の印加によって増加し、かつ、光照射によって減少することを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の薄膜トランジスタにおいて、
前記非晶質酸化物は、In、Ga、Zn及び酸素の元素から構成されており、結晶化したときにInGaO3(ZnO)m(mは6未満の自然数あるいは1/2)の結晶相が現れる組成であることを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタにおいて、
前記非晶質酸化物の半導体薄膜は、成膜した前記非晶質酸化物を高温オゾンにさらすことによって過剰酸素を含ませることを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタにおいて、
前記非晶質酸化物の半導体薄膜は、所定の高酸素分圧あるいは高温酸素雰囲気中で成膜させることにより、過剰酸素を含ませることを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタを備え、
該薄膜トランジスタへ光照射を行って初期状態にし、その後の印加電圧の入力期間の経過後に電気的特性の測定を行うことにより、最大印加電圧を検出することを特徴とする最大印加電圧検出センサ。
【請求項7】
請求項6に記載の最大印加電圧検出センサにおいて、
前記電気的特性の測定は、所定のドレイン・ソース間電流となるときのゲート電圧の測定又は所定のゲート電圧のときのドレイン・ソース間電流の測定であることを特徴とする最大印加電圧検出センサ。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の最大印加電圧検出センサにおいて、
前記光照射は、エネルギー2.3eV以上の光子を含む光照射であることを特徴とする最大印加電圧検出センサ。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタを備え、
該薄膜トランジスタに所定の電圧印加を行って初期状態にし、その後の照射光の入射期間の経過後に電気的特性の測定を行うことにより、照射された光の積算量を検出することを特徴とする 照射光履歴センサ。
【請求項10】
請求項9に記載の照射光履歴センサにおいて、
前記電気的特性の測定は、所定のドレイン・ソース間電流となるときのゲート電圧の測定又は所定のゲート電圧のときのドレイン・ソース間電流の測定であることを特徴とする照射光履歴センサ。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の照射光履歴センサにおいて、
前記薄膜トランジスタの前記ゲート電極への所定の電圧印加により該薄膜トランジスタを初期状態にすることを特徴とする照射光履歴センサ。
【請求項12】
請求項11に記載の照射光履歴センサにおいて、
前記ゲート電極に印加する所定の電圧の値によって初期状態の電気的特性を変えることを特徴とする照射光履歴センサ。
【請求項1】
非晶質酸化物の半導体薄膜とドレイン電極とソース電極とゲート電極を備え、該ゲート電極に印加されるゲート電圧に応じて前記半導体薄膜にチャネル層が形成されて、前記ドレイン電極と前記ソース電極の間にドレイン・ソース間電流が流れ得る薄膜トランジスタであって、
前記非晶質酸化物は、弱く結合してバンドギャップ内に欠陥準位を生成する過剰酸素が含まれていることを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項2】
請求項1に記載の薄膜トランジスタにおいて、
所定のドレイン・ソース間電流となるときのゲート電圧は、電圧の印加によって増加し、かつ、光照射によって減少することを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の薄膜トランジスタにおいて、
前記非晶質酸化物は、In、Ga、Zn及び酸素の元素から構成されており、結晶化したときにInGaO3(ZnO)m(mは6未満の自然数あるいは1/2)の結晶相が現れる組成であることを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタにおいて、
前記非晶質酸化物の半導体薄膜は、成膜した前記非晶質酸化物を高温オゾンにさらすことによって過剰酸素を含ませることを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタにおいて、
前記非晶質酸化物の半導体薄膜は、所定の高酸素分圧あるいは高温酸素雰囲気中で成膜させることにより、過剰酸素を含ませることを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタを備え、
該薄膜トランジスタへ光照射を行って初期状態にし、その後の印加電圧の入力期間の経過後に電気的特性の測定を行うことにより、最大印加電圧を検出することを特徴とする最大印加電圧検出センサ。
【請求項7】
請求項6に記載の最大印加電圧検出センサにおいて、
前記電気的特性の測定は、所定のドレイン・ソース間電流となるときのゲート電圧の測定又は所定のゲート電圧のときのドレイン・ソース間電流の測定であることを特徴とする最大印加電圧検出センサ。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の最大印加電圧検出センサにおいて、
前記光照射は、エネルギー2.3eV以上の光子を含む光照射であることを特徴とする最大印加電圧検出センサ。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタを備え、
該薄膜トランジスタに所定の電圧印加を行って初期状態にし、その後の照射光の入射期間の経過後に電気的特性の測定を行うことにより、照射された光の積算量を検出することを特徴とする 照射光履歴センサ。
【請求項10】
請求項9に記載の照射光履歴センサにおいて、
前記電気的特性の測定は、所定のドレイン・ソース間電流となるときのゲート電圧の測定又は所定のゲート電圧のときのドレイン・ソース間電流の測定であることを特徴とする照射光履歴センサ。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の照射光履歴センサにおいて、
前記薄膜トランジスタの前記ゲート電極への所定の電圧印加により該薄膜トランジスタを初期状態にすることを特徴とする照射光履歴センサ。
【請求項12】
請求項11に記載の照射光履歴センサにおいて、
前記ゲート電極に印加する所定の電圧の値によって初期状態の電気的特性を変えることを特徴とする照射光履歴センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2013−62384(P2013−62384A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200040(P2011−200040)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 1.(独立行政法人)日本学術振興会、7th International Symposium on Transparent Oxide Thin Films for Electronics and Optics ABSTRACT Book、平成23年3月14日 2.7th International Symposium on Transparent Oxide Thin Films for Electronics and Optics、(独立行政法人)日本学術振興会、平成23年3月14日 3.平成23年9月2日、http://apl.aip.org/resource/1/applab/v99/i9/p093507_s1?isAuthorized=no
【出願人】(597065329)学校法人 龍谷大学 (120)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 1.(独立行政法人)日本学術振興会、7th International Symposium on Transparent Oxide Thin Films for Electronics and Optics ABSTRACT Book、平成23年3月14日 2.7th International Symposium on Transparent Oxide Thin Films for Electronics and Optics、(独立行政法人)日本学術振興会、平成23年3月14日 3.平成23年9月2日、http://apl.aip.org/resource/1/applab/v99/i9/p093507_s1?isAuthorized=no
【出願人】(597065329)学校法人 龍谷大学 (120)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】
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