薄膜トランジスタの作製方法
【課題】 結晶性半導体膜を用いた薄膜トランジスタの作製方法において、半導体膜に対するレーザーアニールの効果を高める。
【解決手段】 本発明に係る結晶性半導体膜を用いた薄膜トランジスタの作製方法は、水分子を含んだガスを非単結晶半導体膜に吹き付けつつ、前記非単結晶半導体膜に対してレーザービームを照射することにより、前記結晶性半導体膜を形成することを特徴とする。これにより、結晶性、均質性が大幅に向上した結晶性半導体膜を用いて、薄膜トランジスタを作製することができる。
【解決手段】 本発明に係る結晶性半導体膜を用いた薄膜トランジスタの作製方法は、水分子を含んだガスを非単結晶半導体膜に吹き付けつつ、前記非単結晶半導体膜に対してレーザービームを照射することにより、前記結晶性半導体膜を形成することを特徴とする。これにより、結晶性、均質性が大幅に向上した結晶性半導体膜を用いて、薄膜トランジスタを作製することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス等の絶縁基板上に形成された非晶質(アモルファス)珪素膜や結晶性シリコン膜に対し、レーザーアニールを施して、結晶化させる、あるいは結晶性を向上させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラス等の絶縁基板上に形成された非晶質半導体膜や結晶性半導体膜(単結晶でない、多結晶、微結晶等の結晶性を有する半導体膜)、すなわち、非単結晶珪素膜に対し、レーザーアニールを施して、結晶化させたり、結晶性を向上させる技術が、広く研究されている。上記半導体膜には、珪素膜がよく用いられる。
【0003】
ガラス基板は、従来よく使用されてきた石英基板と比較し、安価で加工性に富んでおり、大面積基板を容易に作成できる利点を持っているからである。また、結晶化に好んでレーザーが使用されるのは、ガラス基板の融点が低いからである。レーザーは基板の温度をあまり変えずに非単結晶膜にのみ高いエネルギーを与えることができる。
【0004】
レーザーアニールを施して形成された結晶性珪素膜は、高い移動度を有している。そしてこの結晶性珪素膜を用いて薄膜トランジスタ(TFT)を形成する技術が研究されている。この技術を用いると、一枚のガラス基板上に、画素駆動用と駆動回路用のTFTを作製する、モノリシック型の液晶電気光学装置を得ることができる。結晶性珪素膜は多くの結晶粒からできているため、一般的には、多結晶珪素膜、あるいは多結晶半導体膜と呼ばれれている。
【0005】
また、出力の大きい、エキシマレーザー等のパルスレーザービームを、被照射面において、数cm角の四角いスポットや、数ミリ幅×数10cmの線状となるように光学系にて加工し、レーザービームを走査させて(レーザービームの照射位置を被照射面に対し相対的に移動させて)、レーザーアニールを行う方法が、量産性が良く、工業的に優れているため、好んで使用される。
【0006】
特に、線状レーザービームを用いると、前後左右の走査が必要なスポット状のレーザービームを用いた場合とは異なり、線方向に直角な方向だけの走査で被照射面全体にレーザー照射を行うことができるため、高い量産性が得られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
パルスレーザービームを光源とする、スポット状、あるいは線状のレーザービームを走査させて、非単結晶珪素膜に対してレーザーアニールを施すに際し、いくつかの問題が生じている。
【0008】
特に深刻な問題は、レーザー照射効果の基板面内での不均一であった。パルスレーザーの特徴として、大きなエネルギーが得られるのが最大の長所として挙げられるが、その一方でパルス一発ごとのエネルギーのバラツキが数%と大きいという欠点がある。この欠点により、例えば、アモルファスシリコン膜をエキシマレーザーで結晶化して液晶ディスプレイを作成した場合、レーザーのパルスのあとがそのまま映像に出てしまう不都合が生じた。
【0009】
このような映像不良は、美しい映像が求められている今日、致命的な欠陥である。本発明はこの欠陥を目立たなくし、あるいは完全に消去する目的でなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題を解決するべく、本発明人はレーザー照射時の基板雰囲気に注目し、様々な雰囲気にてレーザー照射を行いその違いを調べた。
【0011】
レーザー照射の対象は水素濃度が制御されたアモルファスシリコン膜とした。該膜の水素濃度は1020原子/cm3 オーダー程度とした。レーザーにはエキシマレーザーを使用した。その結果を以下に示す。
【0012】
窒素のような熱伝導性の低い気体雰囲気下でレーザー照射を行うと結晶化をさせるのにより高いエネルギーを要した。一方、水素、ヘリウムのような熱伝導性の高い気体雰囲気に基板をさらした状態でレーザー照射を行うと、比較的低いエネルギーで高い結晶性をもつ膜が得られた。なお、上記レーザー照射時の基板温度は200℃から400℃の範囲で変えている。温度が高ければレーザーエネルギーが比較的低く済んだが、均質性は悪くなった。
【0013】
上記気体雰囲気下でのレーザー照射は、結晶化のための最適レー
ザーエネルギーが変動するに留まり、均質性を向上させるものではなかった。
ところが、上記雰囲気に酸素を混入または単独で使用すると状況は一変した。結晶化の為の最適エネルギーが著しく減少し、かつ、レーザー照射後の膜の均質性も向上した。
【0014】
以上の実験から酸素は均質性の向上及び結晶化の為の最適レーザーエネルギーの低減に大変効果があることがわかった。図2はラマン半値半幅から見た基板の結晶性を雰囲気とレーザーエネルギーを変えて調べたものである。ラマン半値半幅は値が低いほど結晶性がよいので、酸素混入の効果がよくわかる。また、上記実験より温度の低い方がより均質性が向上するということがわかった。
【0015】
酸素は、基板温度を室温まで下げてのレーザー結晶化に特に有効であった。酸素を含まない気体雰囲気下、室温では、結晶化に多大なレーザーエネルギーを必要とし著しく生産性をおとしめた。また、200℃以下の温度領域においても、温度が低い方が均質性がより良くなった。このデータを図4に示す。
【0016】
図4の見方は以下の通りである。図4は、雰囲気を大気とし、基板温度を、室温、200℃、400℃とした場合のレーザーエネルギーによる膜荒れの状態を AFM により評価したものである。基板温度が低くなるにつれ結晶化に必要なレーザーエネルギーは高くなるので、基板温度が室温、200℃、400℃いずれの膜も同程度の結晶性を得られるようにレーザーエネルギーを変えている。よって、基板温度が低いものほど高いエネルギーでレーザーを照射している。
【0017】
本データから、基板温度が高いほど、レーザーエネルギーの変動による膜表面の平均粗さの変化が大きいことが読みとれる。よって、レーザーエネルギーの変動の激しいレーザー(例えばパルスレーザーのごときもの)を膜の結晶化に使用する場合、基板温度が低いほど膜表面の平均粗さの面内バラツキが減少した。膜表面の粗さは膜の結晶性と相関があり、粗さが均質であれば、結晶性も均質となった。
【0018】
図7に、その様子がわかる写真を用意した。レーザー照射により膜面があれると、膜は明るくなる。その明るさの程度と膜の荒れの程度とは相関しており、明るさの程度が同じであれば、膜面の荒れの程度も同じである。図7のA 、B 、C は、線状にビームを加工したエキシマレーザーによりアモルファスシリコン膜をレーザーアニールしたものの表面の写真である。線状レーザーは写真上方から下方へ走査させながら膜に打たれている。
【0019】
結晶化の為の最適エネルギーを探すため、レーザーエネルギーは基板の上(紙面に対して上。)ほど高くしている。(5mJ/ cm2ずつ変化させている。)膜に見られる縦縞はレーザービームを線状に加工するレンズ群(図8参照。)による光干渉縞である。これが目立たないほど結晶の均質性がよい。
【0020】
図7A は、珪素膜表面をHF、H2 O2 とを含有する水溶液にて洗浄し、該膜表面を水素で積極的に終端した状態で、大気雰囲気、基板温度400℃にてレーザー処理を施したものである。レーザーエネルギーは、255〜310mJ/ cm2の範囲で振っている。(5mJ/ cm2 ずつ変化させている。)
【0021】
図7Bは、図7A と同じ膜表面状態で、大気雰囲気、室温にてレーザー処理を施したものである。レーザーエネルギーは、315〜370mJ/ cm2の範囲で振っている。(5mJ/ cm2 ずつ変化させている。)
【0022】
図7Cは、珪素膜表面に極薄い自然酸化膜がついた状態、つまり、珪素膜表面を特に加工せずに、大気雰囲気、室温にてレーザー処理を施したものである。レーザーエネルギーは、300〜355mJ/ cm2の範囲で振っている。(5mJ/ cm2 ずつ変化させている。)
【0023】
写真A 、B 、C で、レーザーエネルギーの範囲が異なるのは、膜面の状態により結晶化の為の最適エネルギーが変わるからである。
【0024】
写真A 、B 、C を比較すると、最も膜表面の明るさを均質にするレーザーエネルギー領域を有しているのは写真B である(即ち、膜質のムラが少ない)。
【0025】
写真B の上から6番目の領域がそうである。写真B の膜は、膜表面を水素で積極的に終端した状態で、大気、室温にてレーザー照射している。
【0026】
本実験は、レーザー結晶化の均質性の向上には酸素を含む雰囲気が有効であり、さらに該雰囲気下で珪素膜表面を積極的に水素で終端すると効果が上がり、基板温度は、室温から400℃の温度範囲で選べば、室温が最適であるという結果を出した。
【0027】
酸素は熱伝導率が気体の中でも比較的悪く、窒素の熱伝導率とほとんどかわらない。しかしながら、これほどの違いをもたらすのはなぜか。何らかの化学変化が起きているのでは、と本発明人は考え、以下の仮説をたてた。
【0028】
レーザーでの結晶化の前のシリコン膜表面は一般的に水素で終端されている。その為、酸素を含む雰囲気中(大気中でもよい)で、レーザー結晶化を行うと、レーザーエネルギーにより酸素がシリコン表面の水素と反応して水分子が形成される。
【0029】
形成された水分子は、気体、液体または気体と液体の共存した状態で、薄い層状に基板表面に分布し、レーザー結晶化時の基板からの熱の拡散スピードを抑制する断熱層の役割を果たしている。基板を加熱してレーザー結晶化を行う場合は、水分子層が形成されても、すぐに拡散してしまうため水分子層の断熱効果が起きにくい。水分子層は発生しては消えまた発生することをレーザー照射とともに繰り返している。
【0030】
以上の仮説が正しいと仮定して、本発明人は、レーザー結晶化の際、意図的に水分子層をシリコン膜直上に設け、レーザー照射を行なった。水分子層の形成方法は以下のようにした。
【0031】
第一の方法。シリコン表面を意図的に水素で終端することを積極的に行う。
例えば、レーザー結晶化を施す前に、HF水溶液や、HF、H2 O2 とを含有する水溶液にて非単結晶珪素膜上面を洗浄してやると、シリコン膜表面の水素による終端率が著しく増加する。上記仮説が正しければ、シリコン表面の水素の増加により、レーザー照射の際の水分子の生成量が増加し、保温効果が上がるはずである。もちろん、この場合、酸素を含む雰囲気中でレーザー照射する。本方法の効果は図7で、実証済である。
【0032】
第二の方法。窒素パージに水分を添加して、パージしながらレーザー結晶化を行う。具体的には、窒素ガスの一部もしくはすべてを水のバブリングに通してから、レーザー照射室に送り込んでやるとよい。本方法で均質性向上の効果が確認できれば、水分子層の保温効果が確認できたことになる。
【0033】
第三の方法。窒素パージに酸素と水素を添加して、パージしながらレーザー結晶化を行う。水素の量は安全性を考え、0. 1%から10%程度までとした。本方法はレーザーエネルギーで気体の酸素と水素とを合成し水分子を得ようとするものである。
【0034】
上記第二、第三の方法はいずれも、第一の方法と同様又はそれ以上の効果があった。よって、水分子の層を半導体膜直前に設けることは結晶の均質性の向上に効果的であることがわかった。
【0035】
上記レーザー結晶化のレーザーとして線状にレーザービームを加工しもちいた場合、上記パージガスでエアナイフ状のガス流(以下エアナイフと記載する。)を形成し、今まさにレーザーが当たっている部分にあてながら、レーザー照射を行うとより水分子が多く供給され効果が向上した。エアナイフはレーザー照射部分に直接当てなくても、エアナイフのエアが、レーザーが膜に当たっている部分の上に十分供給されるようにさえしてやれば、同様の効果があった。しかし、
第二、第三の方法に於いては、添加する水分の量あるいは酸素と水素の量が多すぎると逆効果をもたらした。
【0036】
一般に、水はエキシマレーザーのごとき短波長の光はある深さ以上は通さないので、上記水分子層の水分子がある密度を越えた集団を形成した場合に、著しくレーザー照射の効果が低減することが予想される。上記逆効果は、この現象をよく説明できる。
【0037】
上記方法は、いずれの方法も結晶性の基板面内均質性を著しく向上させ、レーザーのパルス跡がほとんど目立たなくなった。本方法の特に優れた点は、結晶のグレインサイズが2000Å〜3000Åのあたりで揃ったことにあった。前記結晶のグレインサイズの大きさのバラツキはσ(標準偏差)で±20%以内と小さかった。その様子が見て取れる写真を図9に示す。
【0038】
図9A は、水素終端をアモルファスシリコン膜表面に意図的に施した基板を、室温(RT)大気中にて、レーザー照射した該シリコン膜表面のSEM 写真(走査型電子顕微鏡写真)である。
【0039】
図9B は、基板温度を400℃としたことを除いて、図9A と同一条件でレーザー照射した膜表面のSEM 写真である。基板温度が400℃と高い状態でレーザー照射された膜は、グレインサイズがμmオーダーの大きいものから、数百Åと微少なものまで広い範囲の分布を持った。その一方、基板温度が室温でレーザー照射された膜は、グレインサイズが2000Å〜3000Åの比較的狭い範囲でピークを持つ分布を持った。このことは、レーザー照射により形成される水分子の層の発散しにくい条件でレーザー結晶化を行う方が、グレインサイズが揃うことを示唆している。
【0040】
また、レーザー照射により生じる半導体膜表面の凹凸の高さのバラツキが従来と比較し少なくなった。このことは、図4より見て取れる。パルスレーザーのエネルギーは、エキシマレーザーで±5%振れることが知られているが、図4で実際に照射されているエネルギー密度の5%はほぼ10〜20mJ/ cm2に相当し、10〜20mJ/ cm2の幅で該エネルギー密度が変動した場合、平均粗さは基板温度400℃で±70%以上も振れるのに対し、基板温度室温では±40%以下に収まっている。これらの数値は、基板の凹凸を統計処理し算出したσの値とほぼ一致している。
【0041】
本明細書で開示する発明は、上記の実験結果から得られたものである。
本発明の第一は、
非単結晶半導体膜に対してレーザービームを照射してレーザーアニールを行うに際し、
レーザー光の照射面側に気体又は液体の熱の保温層を造りつつ、レーザービームを照射することを特徴とする。
【0042】
上記保温層は、上記非単結晶半導体膜を保温することにより、該非単結晶半導体膜の結晶化を助長させるものである。
上記保温層は、水又は水蒸気からなるものであると効果が大である。なぜなら、水は流体のなかで最も熱容量が大きい物質の1つだからである。
上記保温層は、非単結晶半導体膜の結晶化を助長させる、水又は水蒸気からなるものであることが望ましい。
【0043】
本発明の第二は、
非単結晶半導体膜に対してレーザービームを照射してレーザーアニールを行うに際し、
少なくとも半導体膜表面内外近傍に酸素と水素とを分布させた状態でレーザー光を照射し、前記酸素と水素とを該レーザー光により反応せしめて水を半導体膜結晶化と同時に形成することを特徴とする。
【0044】
本発明の第三は、
非単結晶半導体膜に対して線状に加工されたレーザービームを照射してレーザーアニールを行うに際し、
レーザー光の照射面側に気体又は液体の熱の保温層を造りつつ、レーザービームを照射することを特徴とする。
【0045】
上記保温層は、上記非単結晶半導体膜を保温することにより、該非単結晶半導体膜の結晶化を助長させるものである。
【0046】
上記保温層は、水又は水蒸気からなるものであると効果が大である。なぜなら、水は流体のなかで最も熱容量が大きい物質の1つだからである。
上記保温層は、非単結晶半導体膜の結晶化を助長させる、水又は水蒸気からなるものであることが望ましい。
【0047】
本発明の第四は、
非単結晶半導体膜に対して線状に加工されたレーザービームを照射してレーザーアニールを行うに際し、
少なくとも半導体膜表面内外近傍に酸素と水素とを分布させた状態でレーザー光を照射し、前記酸素と水素とを該レーザー光により反応せしめて水を半導体膜結晶化と同時に形成することを特徴とする。
【0048】
本発明の一〜四に使用されるレーザーは、パルスレーザーが効果的であった。本発明の一〜四に使用されるレーザーは、パルスレーザーの中で特に大出力をもつエキシマレーザーが効果的であった。
【0049】
本発明の第五は、
非単結晶半導体膜に対してレーザービームを照射してレーザーアニールを行うに際し、
意図的に、該非単結晶半導体膜表面を水素にて終端させた状態にし、
少なくとも酸素を含有する雰囲気とし、
前記非単結晶半導体膜に対してレーザービーム
を照射することを特徴とする。
【0050】
本発明の第六は、
非単結晶半導体膜に対してレーザービームを照射してレーザーアニールを行うに際し、
雰囲気制御の可能なレーザー照射室内を、少なくとも水分子を含有する雰囲気とし、 前記レーザー照射室内において、前記非単結晶半導体膜に対してレーザービームを照射することを特徴とする。
【0051】
本発明の第七は、
非単結晶半導体膜に対してレーザービームを照射してレーザーアニールを行うに際し、
雰囲気制御の可能なレーザー照射室内を、少なくとも酸素と水素を含有する雰囲気とした状態で、 前記レーザー照射室内において、前記非単結晶半導体膜に対してレーザー光を照射し、前記酸素と水素とを該レーザー光により反応せしめて水を半導体膜結晶化と同時に形成することを特徴とする。
【0052】
前述の非単結晶半導体膜は、レーザー光照射前に、意図的に該非単結晶半導体膜表面を水素にて終端させた状態にすると、よりレーザー結晶化が膜面内で均質に行われた。これは、より膜面近傍での水合成が行われたためで、保温効果が促進された結果である。
【0053】
本発明の第八は、
非単結晶半導体膜に対してレーザービームを照射してレーザーアニールを行うに際し、
水分子で構成された層を該非単結晶半導体膜表面上から該表面の極近傍までの範囲に形成しつつ、前記非単結晶半導体膜に対してレーザービーム
を照射することを特徴とする。
【0054】
本発明の第九は、
非単結晶半導体膜に対してレーザービームを照射してレーザーアニールを行うに際し、
水分子で構成された層を該非単結晶半導体膜表面上から該表面の極近傍までの範囲に形成した状態で、前記非単結晶半導体膜に対してレーザービーム
を照射することを特徴とする。
【0055】
上記いずれのレーザーアニールも、基板温度−10℃〜100℃の範囲に保たれている状態で行われると、より膜の結晶性の均質化が進んだ。
【0056】
本発明の第十は、
非単結晶半導体膜に対してレーザービームを照射してレーザーアニールを行うに際し、
水分子を含んだガスを前記非単結晶半導体膜に吹き付けつつ、
前記非単結晶半導体膜に対してレーザービームを照射することを特徴とする。
【0057】
本発明の第十一は、
非単結晶半導体膜に対してレーザービームを照射してレーザーアニールを行うに際し、
酸素と水素とを含んだガスを前記非単結晶半導体膜に吹き付けつつ、
前記非単結晶半導体膜に対してレーザービーム
を照射することを特徴とする。
【0058】
本発明十または十一において、レーザーアニールは、基板温度−10℃〜100℃の範囲に保たれている状態で行われると、より膜の結晶性の均質化を進んだものとすることができる。
【0059】
本発明十または十一においてレーザーアニールは、雰囲気制御可能なレーザー照射室内で行われると汚染防止に効果があった。特に本発明十一においては、水素を使用するので、安全のためにはレーザー照射室が必要である。
【0060】
本発明の五〜十一のいずれも、レーザービームの照射は、被照射面における断面形状が、スポット状または線状のレーザービームを走査して行われるとよかった。本発明の五〜十一に使用されるレーザーは、パルスレーザーが効果的であった。本発明の五〜十一に使用されるレーザーは、パルスレーザーの中で特に大出力をもつエキシマレーザーが効果的であった。
【0061】
本発明の十二は、
非単結晶半導体膜に対して線状に加工されたレーザービームを照射してレーザーアニールを行うに際し、水分子を含んだガスでエアナイフ状のガス流を形成し、前記非単結晶半導体膜に該エアナイフ状のガス流を吹き付けつつ、
前記非単結晶半導体膜の該エアナイフ状のガス流吹き付け部分に対してレーザービームを照射することを特徴とする。
【0062】
本発明の十三は、
非単結晶半導体膜に対して線状に加工されたレーザービームを照射してレーザーアニールを行うに際し、
酸素と水素とを含んだガスでエアナイフ状のガス流を形成し、前記非単結晶半導体膜に該エアナイフ状のガス流を吹き付けつつ、
前記非単結晶半導体膜の該エアナイフ状のガス流吹き付け部分に対してレーザービームを照射することを特徴とする。
【0063】
本発明十二、十三において、エアナイフ状のガス流を形成する理由は、該エアナイフの断面が線状レーザービームのビーム型とにているので、レーザー照射部分に効率よくガスを供給できるからである。本発明十二、十三において、レーザーアニールは、基板温度−10℃〜100℃の範囲に保たれている状態で行われると、より膜の結晶性の均質化が進んだ。
【0064】
本発明十二、十三において、レーザーアニールは、雰囲気制御可能なレーザー照射室内で行われると、汚染防止に効果があった。特に本発明十三においては、水素を使用するので、安全のためにはレーザー照射室が必要である。
【0065】
本発明の十二、十三に使用されるレーザーは、パルスレーザーが効果的であった。本発明の十二、十三に使用されるレーザーは、パルスレーザーの中で特に大出力をもつエキシマレーザーが効果的であった。
【0066】
本発明の一〜十三に使用される非単結晶半導体膜は、非単結晶珪素膜が適当であった。
【0067】
本発明の十四は、雰囲気制御可能なレーザー照射室内において、非単結晶半導体膜にレーザーアニールを施すレーザーアニール装置であって、前記レーザー照射室内へ、少なくとも水分子を含むガスを供給する手段を有することを特徴とする。
【0068】
本発明の十五は、雰囲気制御可能なレーザー照射室内において、非単結晶半導体膜にレーザーアニールを施すレーザーアニール装置であって、前記レーザー照射室内へ、少なくとも水素と酸素とを含むガスを供給する手段を有することを特徴とする。
【0069】
本発明の十六は、非単結晶半導体膜にレーザーアニールを施すレーザーアニール装置であって、少なくとも水分子を含むガスを、該レーザーアニール装置の形成するレーザービームが該非単結晶半導体膜に照射されている部分に、供給する手段を有することを特徴とする。
【0070】
本発明の十七は、非単結晶半導体膜にレーザーアニールを施すレーザーアニール装置であって、少なくとも水素と酸素を含むガスを、該レーザーアニール装置の形成するレーザービームが該非単結晶半導体膜に照射されている部分に、供給する手段を有することを特徴とする。
【0071】
本発明の十八は、非単結晶半導体膜にレーザーアニールを施すための線状に加工されたレーザービームを形成するレーザーアニール装置であって、少なくとも水分子を含むガスでエアナイフ状のガス流を形成する手段と、該レーザーアニール装置の形成するレーザービームが該非単結晶半導体膜に照射されている部分に、前記エアナイフ状のガス流を形成しているガスを供給する手段と、
を有することを特徴とする。
【0072】
本発明の十九は、非単結晶半導体膜にレーザーアニールを施すための線状に加工されたレーザービームを形成するレーザーアニール装置であって、少なくとも水素と酸素とを含むガスでエアナイフ状のガス流を形成する手段と、該レーザーアニール装置の形成するレーザービームが該非単結晶半導体膜に照射されている部分に、前記エアナイフ状のガス流を形成しているガスを供給する手段と、
を有することを特徴とする。
【0073】
本発明の十四〜十九のレーザーは、パルスレーザーが適当であった。本発明の十八、十九のレーザーは、パルスレーザーの中で特に大出力をもつエキシマレーザーが適当であった。本発明の十四〜十九に使用される非単結晶半導体膜は、非単結晶珪素膜が適当であった。
【0074】
上記いずれかの発明において、記載のガスのその他の成分はコスト、反応性の低さ等を鑑みて、窒素ガスが適当であった。
【発明の効果】
【0075】
本発明により、従来のあらゆるレーザーアニール技術と比較して、結晶性、均質性が大幅に向上し、さらにまたエネルギー利用効率を大きく向上させることができる。
(作用)
本発明は、非単結晶半導体膜にレーザーアニールを施して、結晶化また結晶性を向上させるに際し、水分子の層を該非単結晶半導体膜とレーザービームとの間に形成するものである。前記水分子層が保温層として該非単結晶半導体膜に作用し、結晶性の膜面内での均質性を著しく向上させる。
【0076】
前述のように、水分子層の効果は水分子の密度によって大きく変わる。液体の水は短波長の光をある深さ以上通さないからである。エキシマレーザーは紫外光であるから短波長である。
【実施例1】
【0077】
実施例の作製工程で、まず、レーザー照射される膜の作成方法を示す。レーザー照射される膜は、本明細書中で3種類である。いずれの膜に対しても、本発明は効果的である。
【0078】
まず、3種類いずれの膜も、基板として、127mm角のコーニング1737上に、下地膜としての酸化珪素膜が2000Å、その上に非晶質珪素膜が、500Å、共にプラズマCVD法にて、連続的に成膜される。該膜を今後、出発膜と呼ぶ。
【0079】
膜Aの作成手順。まず、出発膜を、450℃の熱浴に1時間さらす。本工程は非晶質珪素膜中の水素濃度を減らすための工程である。膜中の水素が多すぎると膜がレーザーエネルギーに対して耐えきれないので本工程をいれた。
【0080】
該膜内の水素の密度は10の20乗atoms/cm3 オーダーが適当であった。この膜を非単結晶珪素膜Aと呼ぶ。
【0081】
膜Bの作成手順。まず、10ppmの酢酸ニッケル水溶液が、スピンコート法により、出発膜上に塗布され、酢酸ニッケル層が形成される。酢酸ニッケル水溶液には、界面活性剤を添加するとより好ましい。酢酸ニッケル層は、極めて薄いので、膜状となっているとは限らないが、以後の工程において問題はない。
【0082】
次に、上記のようにして各膜が積層された基板に、600℃で4時間の
熱アニールが施され、非晶質珪素膜が結晶化し、非単結晶珪素膜である結晶性珪素膜B が形成される。
【0083】
このとき、触媒元素であるニッケルが結晶成長の核の役割を果たし、結晶化を促進させる。600℃、4時間という低温、短時間で結晶化を行うことができるのは、ニッケルの機能による。詳細については、特開平6−244104号に記載されている。
【0084】
触媒元素の濃度は、1×1015〜1019原子/cm3 であると好ましい。1×1019原子/cm3 以上の高濃度では、結晶性珪素膜に金属的性質が現れ、半導体としての特性が消滅する。
【0085】
本実施例において、結晶性珪素膜中の触媒元素の濃度は、膜中のおける最小値で、1×1017〜5×1018原子/cm3 である。これらの値は、2次イオン質量分析法(SIMS)により分析、測定したものである。
【0086】
膜C の作成手順。まず、出発膜の上からさらに酸化珪素膜を700Å成膜する。成膜方法はプラズマCVD法を用いた。次に該酸化珪素膜の一部をフォトリソパターニング工程によって完全に開孔する。さらに、該開孔部に薄い酸化膜を形成するために酸素雰囲気中でUV光を5分間照射する。この薄い酸化膜は、後に導入するニッケル水溶液に対する上記開孔部の濡れ性改善のために形成されるものである。
【0087】
100ppmの酢酸ニッケル水溶液が、スピンコート法により、該膜上に塗布され、酢酸ニッケルが上記開孔部分に入る。酢酸ニッケル水溶液には、界
面活性剤を添加するとより好ましい。
【0088】
次に、600℃で8時間の熱アニールが施され、ニッケル導入部分から横方向に結晶が成長してゆく。このとき、ニッケルが果たす役割は膜Bと同様のものである。今回の条件では横成長量として40μm程度が得られた。このようにして非晶質珪素膜が結晶化し、非単結晶珪素膜である結晶性珪素膜C が形成される。その後、結晶性珪素膜上の酸化珪素膜をバッファーフッ酸を用い剥離除去する。
【0089】
このようにして得られる非単結晶珪素膜A 、B 、C を結晶化させる、あるいは、結晶性をさらに高めるために、エキシマレーザーを用いてレーザーアニールを行う。
【0090】
図1に、実施例におけるレーザー照射室を示す。図1は、レーザー照射室の側断面図である。
【0091】
図3に、実施例におけるレーザーアニール装置の上面図を示す。ここでは、図3に示すマルチチャンバー型のレーザーアニール装置を用いる。図3におけるA−A’断面を示す図が図1に相当する。
【0092】
図1において、レーザー照射室101は、レーザー発振装置102から照射され、光学系112により断面形状が線状に加工されたパルスレーザービームをミラー103で反射させ、シリンドリカルレンズ116にて集光されつつ、石英で構成された窓104を介して被処理基板105に照射される機能を有している。光学系112、ミラー103、及びシリンドリカルレンズ116は図8に示す。
【0093】
図8のような光学系を用いるのは、線状ビーム面内のエネルギー分布の均質性が大変良いからである。エネルギーのバラツキは±5%以内であった。本発明で使用する線状レーザービームはすべて図8記載の光学系にて線状に加工されている。図8と異なる光学系にて線状レーザービームを加工してもよいが、該エネルギー分布の均質性は図8記載のものに準じていなければならない。図8のようなタイプのレンズ群の役割を以下に記述する。
【0094】
シリンドリカルレンズ群801、803はビームを縦横に分割する役割を果たしている。該分割された光束をシリンドリカルレンズ802、804が1領域、本発明では線状の形を成す領域に集める役割を果たしている。本実施例では、元のビームを横に5分割、縦に7分割しているので35分割されたビームを一つにすることにより、ビームのエネルギー分布を平均化している。ビームの縦横の長さの比はレンズ群の構造上自在に変えられるので、本光学系により、正方形状から線状に到るまであらゆるビームを形成できる。ただし、レンズの大きさ、焦点距離の組合せにより、造りやすいビーム形状は制限される。
【0095】
石英窓104は、ヒーター115内蔵の治具113によって固定されている。該ヒーター115は石英窓104の曇り止めのためについている。これは、レーザー照射室101がレーザー照射時、加湿状態になるからである。石英窓のO リング114にはバイトンを使用した。バイトンの耐熱温度は150℃程度であり、本発明には十分であるが、さらに高い耐熱温度が要求される場合、カルレツを用いると250℃程度まで耐える。上記曇り止めにはドライ窒素を石英窓104に吹き付けてもよかった。
【0096】
レーザー発振装置102は、ここでは、XeClエキシマレーザー(波長308nm)を発振するものを用いる。他に、KrFエキシマレーザー(波長248nm)を用いてもよい。
【0097】
被処理基板105は、台106上に設けられたステージ111上に配置される。台106内にはヒーターが内蔵されており、ステージ111上の基板温度を所定の温度に保つ。そして、台106は、移動機構107によって、線状レーザービームの線方向に対して直角方向に移動され、被処理基板105上面に対しレーザービームを走査しながら照射することを可能とする。
【0098】
雰囲気制御が可能なレーザー照射室101は、減圧、排気手段として、真空排気ポンプ108を有する。また、気体供給手段として、本実施例では、バルブを介して窒素ボンベに接続された、気体供給管109と、バルブを介してレーザー処理室内の湿度調節を行うための気体供給管110を有する。110から供給される気体は湿度調節された窒素が適当であった。
【0099】
レーザー照射室101は、ゲイトバルブ301を介して、基板搬送室302に連結されている。
【0100】
図3において、図1のレーザー照射室101がゲイトバルブ301を介して基板搬送室302に連結されている。
【0101】
図3に示す装置の説明をする。ロード/アンロード室306に、被処理基板105が多数枚、例えば20枚収納されたカセット304が配置される。ロボットアーム305により、カセット304から一枚の基板がアライメント室に移動される。
【0102】
アライメント室303には、被処理基板105とロボットアーム305との位置関係を修正するための、アライメント機構が配置されている。アライメント室303は、ロード/アンロード室306とゲイトバルブ307を介して接続されている。
【0103】
基板は、ロボットアーム305によって基板搬送室302に運ばれ、さらに
ロボットアーム305によって、レーザー照射室101に移送される。このときステージ111は台106内のヒーターにより、所望の温度、例えば室温から300℃程度の範囲で保たれている。ステージに配置された基板は温度が安定するまで放置される。このとき、石英窓104は曇り止めのため121内のヒーターにより適当な温度に昇温されている。また、気体供給管109、110からは窒素ガス及び湿度調整された窒素ガスが出て、レーザー照射室内の雰囲気、主に湿度を制御している。
【0104】
図1において、被処理基板105上に照射される線状レーザービームは、幅0.4mm×長さ135mmとする。被照射面におけるレーザービームのエネルギー密度は、100mJ/cm2 〜500mJ/cm2 の範囲で、例えば260mJ/cm2 とする。台106を1. 2mm/sで一方向に移動させながら行うことで、線状レーザービームを走査させる。レーザーの発振周波数は30Hzとし、被照射物の一点に注目すると、10〜50ショットのレーザービームが照射される。
【0105】
このとき、レーザー照射室内の水分が珪素膜の保温層の役割を果たし、結晶化の均質性を著しく向上させる。レーザー照射前に、被処理基板105を水洗し乾燥させた状態でレーザー結晶化を行うと、該珪素膜表面に吸着し残留した水分が、基板の保温効果を助長した。本発明では、前記該珪素膜表面に吸着し残留した水分も保温層の一部として定義する。
【0106】
基板温度が高すぎると該水分子の層の拡散スピードが高くなりすぎて、保温効果が減衰した。基板温度は−10℃〜100℃範囲で良い結果がでた。レーザー照射室内の圧力も気体供給排気のバランスをコントロールすることにより、数100パスカルから数アトムまで振ったがいずれの圧力下においても良い結果が得られた。
【0107】
レーザー照射終了後、被処理基板105はロボットアーム305によって基板搬送室302に引き戻される。被処理基板105は、ロボットアーム305によって、ロード/アンロード室306に移送され、カセット304に収納される。
【0108】
こうして、レーザーアニール工程が終了する。このようにして、上記工程を繰り返すことにより、多数の基板に対して、連続的に一枚づつ処理できる。
【0109】
本実施例は線状レーザーを用いたが、線状から正方形状にいたるまでいずれのビーム形状を本発明に使用しても本発明が特徴とする効果があった。
【実施例2】
【0110】
実施例1で作成した膜A 、B 、C を本実施例で結晶化させる。もしくは、結晶性を向上させる。
【0111】
本実施例は、実施例1とほとんど同様の工程を踏む。異なる点はレーザー照射室に供給されるガスの種類のみである。本実施例では、バルブを介して窒素で希釈された酸素を供給する気体供給管109と、バルブを介して窒素で希釈された水素を供給する気体供給管110を有する。水素の濃度は安全性を考慮して0.1 %〜10%までとした。酸素の濃度も水素に合わせ0.1 %〜10%までとした。
【0112】
上記ガス供給管等を使って、レーザー室内の雰囲気を窒素、酸素、及び水素を主とするものとした後、レーザー照射を行なった。レーザー照射室内の酸素と水素とがレーザーエネルギーにより反応し合成された水分子の層が、珪素膜の保温層の役割を果たし、結晶化の均質性を著しく向上させる。レーザー照射前に、被処理基板105を水洗し乾燥させた状態でレーザー結晶化を行うと、該珪素膜表面に吸着し残留した水分が、基板の保温効果を助長した。本発明では、前記該珪素膜表面に吸着し残留した水分も保温層の一部として定義する。
【0113】
基板温度が高すぎると該水分子の層の拡散スピードが高くなりすぎて、保温効果が減衰した。基板温度は−10℃〜100℃範囲で良い結果がでた。レーザー照射室内の圧力も気体供給排気のバランスをコントロールすることにより、数100パスカルから数アトムまで振ったがいずれの圧力下においても良い結果が得られた。
【実施例3】
【0114】
実施例1で作成した膜A 、B 、C を本実施例で結晶化させる。もしくは、結晶性を向上させる。本実施例は、図5に記載の装置を使う。
【0115】
本実施例は、実施例1とほとんど同様の工程を踏む。異なる点はレーザー照射室に供給されるガスの供給方法のみである。本実施例では、気体供給管109と、気体供給管110とに延長管501を接続し、気体供給管109、110から出てくる気体502を、該延長管501から吹き出させる。レーザービームが基板に当たっている部分にまんべんなく気体502が供給されるよう、延長管501を設置する。
【0116】
本実施例の場合、気体502は、湿度調整された窒素である。気体502中の水分子がが、珪素膜の保温層の役割を果たし、結晶化の均質性を著しく向上させる。レーザー照射前に、被処理基板105を水洗し乾燥させた状態でレーザー結晶化を行うと、該珪素膜表面に吸着し残留した水分が、基板の保温効果を助長した。本発明では、前記該珪素膜表面に吸着し残留した水分も保温層の一部として定義する。
【0117】
基板温度が高すぎると該水分子の層の拡散スピードが高くなりすぎて、保温効果が減衰した。基板温度は−10℃〜100℃範囲で良い結果がでた。レーザー照射室内の圧力も気体供給排気のバランスをコントロールすることにより、数100パスカルから数アトムまで振ったがいずれの圧力下においても良い結果が得られた。
【0118】
本実施例の結果より、本実施例の効果はレーザー照射室の有無によらないことがわかる。レーザー照射室の効果は基板汚染防止のみである。
【0119】
本実施例で使用するレーザービームを線状のものとした場合、気体延長管501の吹き出し口の形状もレーザービーム形状にあわせて線状とし、エアナイフ状に基板に吹き付けるとより効率よく気体502が供給できた。(図6参照。)ガス流503は気体延長管501内のガスの流れの様子を示している。
【実施例4】
【0120】
実施例1で作成した膜A 、B 、C を本実施例で結晶化させる。もしくは、結晶性を向上させる。
【0121】
本実施例は、実施例3とほとんど同様の工程を踏む。異なる点はレーザー照射室に供給されるガスの種類のみである。本実施例は、実施例2と同様に、バルブを介して窒素で希釈された酸素を供給する気体供給管109と、バルブを介して窒素で希釈された水素を供給する気体供給管110を有する。水素の濃度は安全性を考慮して0.1 %〜10%までとした。酸素の濃度も水素に合わせ0.1 %〜10%までとした。
【0122】
本実施例の場合、気体502は窒素、酸素、水素の混合気体である。酸素と水素とがレーザーエネルギーにより反応し合成された水分子の層が、珪素膜の保温層の役割を果たし、結晶化の均質性を著しく向上させる。レーザー照射前に、被処理基板105を水洗し乾燥させた状態でレーザー結晶化を行うと、該珪素膜表面に吸着し残留した水分が、基板の保温効果を助長した。本発明では、前記該珪素膜表面に吸着し残留した水分も保温層の一部として定義する。
【0123】
基板温度が高すぎると該水分子の層の拡散スピードが高くなりすぎて、保温効果が減衰した。基板温度は−10℃〜100℃範囲で良い結果がでた。レーザー照射室内の圧力も気体供給排気のバランスをコントロールすることにより、数100パスカルから数アトムまで振ったがいずれの圧力下においても良い結果が得られた。
【0124】
本実施例の結果より、本実施例の効果はレーザー照射室の有無によらないことがわかる。レーザー照射室の効果は基板汚染防止のみである。しかしながら、水素を大気中に放出することは危険を伴うため、本実施例の場合レーザー照射室はあるべきである。
【0125】
本実施例で使用するレーザービームを線状のものとした場合、気体延長管501の吹き出し口の形状もレーザービーム形状にあわせて線状とし、エアナイフ状に基板に吹き付けるとより効率よく気体502が供給できた。(図6参照。)ガス流503は気体延長管501内のガスの流れの様子を示している。
【実施例5】
【0126】
実施例1で作成方法を示した非単結晶珪素膜A 、B 、C を結晶化させる、あるいは、結晶性をさらに高めるために、エキシマレーザーを用いてレーザーアニールを行う。
【0127】
図1、図3に示す装置を用いてレーザーアニールを行う工程を説明する。まず、被処理基板105(非単結晶珪素膜を有する基板)は、HF水溶液、またはHFとH2 O2 の混合水溶液で洗浄されて該珪素膜表面が水素で終端された後、カセット304に納められ、カセット304がロード/アンロード室306に配置される。
【0128】
図3において、本実施例においては、ロード/アンロード室306から搬送される被処理基板105は、アライメントされた後、レーザー照射室101に搬送される。
【0129】
レーザー照射室101に搬送された被処理基板105は、ステージ111上に載置される。この状態でゲートバルブ301を閉じ、レーザー照射室101内を真空排気ポンプ108により真空引きした後、
【0130】
気体供給管109から窒素で希釈された酸素が、気体供給管110から窒素で希釈された水素がそれぞれ供給され、例えば酸素5%、水素5%、窒素90%の雰囲気とする。このとき、圧力は大気圧とする。
【0131】
また、図1において、被処理基板105上に照射される線状レーザービームは、幅0.4mm×長さ135mmとする。被照射面におけるレーザービームのエネルギー密度は、100mJ/cm2 〜500mJ/cm2 の範囲で、例えば260mJ/cm2 とする。台106を1. 2mm/sで一方向に移動させながら行うことで、線状レーザービームを走査させる。レーザーの発振周波数は30Hzとし、被照射物の一点に注目すると、10〜50ショットのレーザービームが照射される。
【0132】
このとき、レーザー室内の酸素と、レーザー室内の水素あるいは非単結晶珪素膜表面の水素原子がレーザーエネルギーにより反応し、水分子を形成する。この水分子の集合体が非単結晶珪素膜を保温する役目を果たし、結晶化を助長し、かつ、結晶性の均質性を著しく向上させた。レーザー照射前に被処理基板105はHF水溶液またはHFとH2 O2 の混合水溶液で洗浄されているので、該珪素膜表面には吸着し残留した水分あり、基板の保温効果を助長した。本発明では、前記該珪素膜表面に吸着し残留した水分も保温層の一部として定義する。基板温度が高ければ高いほど該水分子の集合体の拡散スピードが高くなり、保温効果が減衰した。このようにして非単結晶珪素膜A 、B 、C に対し、レーザーアニールが施され、結晶化が起こる、あるいは結晶性が向上される。
【0133】
本実施例におけるレーザー室内の雰囲気を、水素濃度0. 1%〜10%、酸素濃度0. 1%〜10%、レーザー処理室内の圧力を数100パスカルから数アトム、そして、基板温度を−10℃〜100℃まで変化させたがいずれの雰囲気下においても良い結果が得られた。また、水素を含まない雰囲気でも酸素さえあれば水は形成されるので、水素を含まない酸素を含む雰囲気中でのレーザー結晶化でも効果的であった。その後、ロボットアーム305を介して、ロード/アンロード室306のカセット304に収納される。
【実施例6】
【0134】
本実施例では、レーザー照射により水分子が形成されている証拠を示す。図10はレーザー照射室内のダストの数をダストカウンターで数えたものである。図10上段の表は、レーザー照射前のダストの数である。図10下段の表は、レーザー照射を基板を走査させながら行なった後のダストの数と、レーザー照射せずにただ基板を走査させた後のダストの数を数えたものである。図10から、レーザー照射によりダストカウンターの数値が著しく増えていることがわかる。
【0135】
レーザー照射後、該ダストカウンターから検出されたダストの大多数が0. 3μm程度のものである。そこで、本発明人はこれらのダストを視覚的にとらえるべく、ダストカウンター1101の吸引口1102の途中に0. 2μmピッチのフィルター1103を挿入し、レーザー照射後のダスト1104の捕獲を試みた(図11参照)。
【0136】
レーザー照射後、該フィルターをSEM で観察した。ところが、ほとんど全くといってよいほどダストが観察されなかった。この事実から推し量るに、該ダストカウンターで検出されたダストは、液体の粒であることが推察できる。レーザー照射によりできそうな液体は、レーザー照射対象から推し量るに水であろう。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】実施例におけるレーザー照射室を示す図。
【図2】各種雰囲気でのレーザーアニールにおける、レーザービームのエネル ギー密度と、レーザーアニールされた結晶性珪素膜のラマン半値半幅 との関係を示す図。
【図3】実施例におけるレーザーアニール装置の上面図。
【図4】各温度でのレーザーアニールにおける、レーザービームのエネルギー 密度と、レーザーアニールされた結晶性珪素膜の表面平均粗さとの関 係を示す図。
【図5】実施例におけるレーザー照射室を示す図。
【図6】実施例におけるレーザー照射室を示す図。
【図7】線状レーザーによりレーザー結晶化された珪素の薄膜を示す写真。
【図8】実施例における線状レーザーを形成する光学系を示す図。
【図9】水素終端をアモルファスシリコン膜表面に意図的に施した基板を、室 温大気中、あるいは基板温度を400℃に昇温した状態にて、レーザ ー照射が行われたシリコン膜表面を写した走査型電子顕微鏡写真。
【図10】ダストカウンターにより検出されたダストの数であって、レーザー照 射室内のレーザー処理前後のダスト数を示すグラフ。
【図11】実施例におけるダストカウンターとフィルターを示す図。
【符号の説明】
【0138】
101 レーザー照射室
102 レーザー発振装置
103 ミラー
104 窓
105 被処理基板
106 台
107 移動機構
108 真空排気ポンプ
109 110 気体供給管
111 ステージ
112 光学系
113 石英窓104の工程用治具
114 O リング
115 ヒーター
116 線状ビームを集光するためのシリンドリカルレンズ
301 ゲイトバルブ
302 基板搬送室
303 アライメント室
304 カセット
305 ロボットアーム
306 ロード/アンロード室
307 ゲイトバルブ
501 延長管
502 供給
503 延長管501内の供給ガス
801 レーザー光分割のためのシリンドリカルレンズ群
802 レーザー光収束のためのシリンドリカルレンズ
803 レーザー光分割のためのシリンドリカルレンズ群
804 レーザー光収束のためのシリンドリカルレンズ
1101 ダストカウンター
1102 吸引口
1103 フィルター
1104 ダスト
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス等の絶縁基板上に形成された非晶質(アモルファス)珪素膜や結晶性シリコン膜に対し、レーザーアニールを施して、結晶化させる、あるいは結晶性を向上させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラス等の絶縁基板上に形成された非晶質半導体膜や結晶性半導体膜(単結晶でない、多結晶、微結晶等の結晶性を有する半導体膜)、すなわち、非単結晶珪素膜に対し、レーザーアニールを施して、結晶化させたり、結晶性を向上させる技術が、広く研究されている。上記半導体膜には、珪素膜がよく用いられる。
【0003】
ガラス基板は、従来よく使用されてきた石英基板と比較し、安価で加工性に富んでおり、大面積基板を容易に作成できる利点を持っているからである。また、結晶化に好んでレーザーが使用されるのは、ガラス基板の融点が低いからである。レーザーは基板の温度をあまり変えずに非単結晶膜にのみ高いエネルギーを与えることができる。
【0004】
レーザーアニールを施して形成された結晶性珪素膜は、高い移動度を有している。そしてこの結晶性珪素膜を用いて薄膜トランジスタ(TFT)を形成する技術が研究されている。この技術を用いると、一枚のガラス基板上に、画素駆動用と駆動回路用のTFTを作製する、モノリシック型の液晶電気光学装置を得ることができる。結晶性珪素膜は多くの結晶粒からできているため、一般的には、多結晶珪素膜、あるいは多結晶半導体膜と呼ばれれている。
【0005】
また、出力の大きい、エキシマレーザー等のパルスレーザービームを、被照射面において、数cm角の四角いスポットや、数ミリ幅×数10cmの線状となるように光学系にて加工し、レーザービームを走査させて(レーザービームの照射位置を被照射面に対し相対的に移動させて)、レーザーアニールを行う方法が、量産性が良く、工業的に優れているため、好んで使用される。
【0006】
特に、線状レーザービームを用いると、前後左右の走査が必要なスポット状のレーザービームを用いた場合とは異なり、線方向に直角な方向だけの走査で被照射面全体にレーザー照射を行うことができるため、高い量産性が得られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
パルスレーザービームを光源とする、スポット状、あるいは線状のレーザービームを走査させて、非単結晶珪素膜に対してレーザーアニールを施すに際し、いくつかの問題が生じている。
【0008】
特に深刻な問題は、レーザー照射効果の基板面内での不均一であった。パルスレーザーの特徴として、大きなエネルギーが得られるのが最大の長所として挙げられるが、その一方でパルス一発ごとのエネルギーのバラツキが数%と大きいという欠点がある。この欠点により、例えば、アモルファスシリコン膜をエキシマレーザーで結晶化して液晶ディスプレイを作成した場合、レーザーのパルスのあとがそのまま映像に出てしまう不都合が生じた。
【0009】
このような映像不良は、美しい映像が求められている今日、致命的な欠陥である。本発明はこの欠陥を目立たなくし、あるいは完全に消去する目的でなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題を解決するべく、本発明人はレーザー照射時の基板雰囲気に注目し、様々な雰囲気にてレーザー照射を行いその違いを調べた。
【0011】
レーザー照射の対象は水素濃度が制御されたアモルファスシリコン膜とした。該膜の水素濃度は1020原子/cm3 オーダー程度とした。レーザーにはエキシマレーザーを使用した。その結果を以下に示す。
【0012】
窒素のような熱伝導性の低い気体雰囲気下でレーザー照射を行うと結晶化をさせるのにより高いエネルギーを要した。一方、水素、ヘリウムのような熱伝導性の高い気体雰囲気に基板をさらした状態でレーザー照射を行うと、比較的低いエネルギーで高い結晶性をもつ膜が得られた。なお、上記レーザー照射時の基板温度は200℃から400℃の範囲で変えている。温度が高ければレーザーエネルギーが比較的低く済んだが、均質性は悪くなった。
【0013】
上記気体雰囲気下でのレーザー照射は、結晶化のための最適レー
ザーエネルギーが変動するに留まり、均質性を向上させるものではなかった。
ところが、上記雰囲気に酸素を混入または単独で使用すると状況は一変した。結晶化の為の最適エネルギーが著しく減少し、かつ、レーザー照射後の膜の均質性も向上した。
【0014】
以上の実験から酸素は均質性の向上及び結晶化の為の最適レーザーエネルギーの低減に大変効果があることがわかった。図2はラマン半値半幅から見た基板の結晶性を雰囲気とレーザーエネルギーを変えて調べたものである。ラマン半値半幅は値が低いほど結晶性がよいので、酸素混入の効果がよくわかる。また、上記実験より温度の低い方がより均質性が向上するということがわかった。
【0015】
酸素は、基板温度を室温まで下げてのレーザー結晶化に特に有効であった。酸素を含まない気体雰囲気下、室温では、結晶化に多大なレーザーエネルギーを必要とし著しく生産性をおとしめた。また、200℃以下の温度領域においても、温度が低い方が均質性がより良くなった。このデータを図4に示す。
【0016】
図4の見方は以下の通りである。図4は、雰囲気を大気とし、基板温度を、室温、200℃、400℃とした場合のレーザーエネルギーによる膜荒れの状態を AFM により評価したものである。基板温度が低くなるにつれ結晶化に必要なレーザーエネルギーは高くなるので、基板温度が室温、200℃、400℃いずれの膜も同程度の結晶性を得られるようにレーザーエネルギーを変えている。よって、基板温度が低いものほど高いエネルギーでレーザーを照射している。
【0017】
本データから、基板温度が高いほど、レーザーエネルギーの変動による膜表面の平均粗さの変化が大きいことが読みとれる。よって、レーザーエネルギーの変動の激しいレーザー(例えばパルスレーザーのごときもの)を膜の結晶化に使用する場合、基板温度が低いほど膜表面の平均粗さの面内バラツキが減少した。膜表面の粗さは膜の結晶性と相関があり、粗さが均質であれば、結晶性も均質となった。
【0018】
図7に、その様子がわかる写真を用意した。レーザー照射により膜面があれると、膜は明るくなる。その明るさの程度と膜の荒れの程度とは相関しており、明るさの程度が同じであれば、膜面の荒れの程度も同じである。図7のA 、B 、C は、線状にビームを加工したエキシマレーザーによりアモルファスシリコン膜をレーザーアニールしたものの表面の写真である。線状レーザーは写真上方から下方へ走査させながら膜に打たれている。
【0019】
結晶化の為の最適エネルギーを探すため、レーザーエネルギーは基板の上(紙面に対して上。)ほど高くしている。(5mJ/ cm2ずつ変化させている。)膜に見られる縦縞はレーザービームを線状に加工するレンズ群(図8参照。)による光干渉縞である。これが目立たないほど結晶の均質性がよい。
【0020】
図7A は、珪素膜表面をHF、H2 O2 とを含有する水溶液にて洗浄し、該膜表面を水素で積極的に終端した状態で、大気雰囲気、基板温度400℃にてレーザー処理を施したものである。レーザーエネルギーは、255〜310mJ/ cm2の範囲で振っている。(5mJ/ cm2 ずつ変化させている。)
【0021】
図7Bは、図7A と同じ膜表面状態で、大気雰囲気、室温にてレーザー処理を施したものである。レーザーエネルギーは、315〜370mJ/ cm2の範囲で振っている。(5mJ/ cm2 ずつ変化させている。)
【0022】
図7Cは、珪素膜表面に極薄い自然酸化膜がついた状態、つまり、珪素膜表面を特に加工せずに、大気雰囲気、室温にてレーザー処理を施したものである。レーザーエネルギーは、300〜355mJ/ cm2の範囲で振っている。(5mJ/ cm2 ずつ変化させている。)
【0023】
写真A 、B 、C で、レーザーエネルギーの範囲が異なるのは、膜面の状態により結晶化の為の最適エネルギーが変わるからである。
【0024】
写真A 、B 、C を比較すると、最も膜表面の明るさを均質にするレーザーエネルギー領域を有しているのは写真B である(即ち、膜質のムラが少ない)。
【0025】
写真B の上から6番目の領域がそうである。写真B の膜は、膜表面を水素で積極的に終端した状態で、大気、室温にてレーザー照射している。
【0026】
本実験は、レーザー結晶化の均質性の向上には酸素を含む雰囲気が有効であり、さらに該雰囲気下で珪素膜表面を積極的に水素で終端すると効果が上がり、基板温度は、室温から400℃の温度範囲で選べば、室温が最適であるという結果を出した。
【0027】
酸素は熱伝導率が気体の中でも比較的悪く、窒素の熱伝導率とほとんどかわらない。しかしながら、これほどの違いをもたらすのはなぜか。何らかの化学変化が起きているのでは、と本発明人は考え、以下の仮説をたてた。
【0028】
レーザーでの結晶化の前のシリコン膜表面は一般的に水素で終端されている。その為、酸素を含む雰囲気中(大気中でもよい)で、レーザー結晶化を行うと、レーザーエネルギーにより酸素がシリコン表面の水素と反応して水分子が形成される。
【0029】
形成された水分子は、気体、液体または気体と液体の共存した状態で、薄い層状に基板表面に分布し、レーザー結晶化時の基板からの熱の拡散スピードを抑制する断熱層の役割を果たしている。基板を加熱してレーザー結晶化を行う場合は、水分子層が形成されても、すぐに拡散してしまうため水分子層の断熱効果が起きにくい。水分子層は発生しては消えまた発生することをレーザー照射とともに繰り返している。
【0030】
以上の仮説が正しいと仮定して、本発明人は、レーザー結晶化の際、意図的に水分子層をシリコン膜直上に設け、レーザー照射を行なった。水分子層の形成方法は以下のようにした。
【0031】
第一の方法。シリコン表面を意図的に水素で終端することを積極的に行う。
例えば、レーザー結晶化を施す前に、HF水溶液や、HF、H2 O2 とを含有する水溶液にて非単結晶珪素膜上面を洗浄してやると、シリコン膜表面の水素による終端率が著しく増加する。上記仮説が正しければ、シリコン表面の水素の増加により、レーザー照射の際の水分子の生成量が増加し、保温効果が上がるはずである。もちろん、この場合、酸素を含む雰囲気中でレーザー照射する。本方法の効果は図7で、実証済である。
【0032】
第二の方法。窒素パージに水分を添加して、パージしながらレーザー結晶化を行う。具体的には、窒素ガスの一部もしくはすべてを水のバブリングに通してから、レーザー照射室に送り込んでやるとよい。本方法で均質性向上の効果が確認できれば、水分子層の保温効果が確認できたことになる。
【0033】
第三の方法。窒素パージに酸素と水素を添加して、パージしながらレーザー結晶化を行う。水素の量は安全性を考え、0. 1%から10%程度までとした。本方法はレーザーエネルギーで気体の酸素と水素とを合成し水分子を得ようとするものである。
【0034】
上記第二、第三の方法はいずれも、第一の方法と同様又はそれ以上の効果があった。よって、水分子の層を半導体膜直前に設けることは結晶の均質性の向上に効果的であることがわかった。
【0035】
上記レーザー結晶化のレーザーとして線状にレーザービームを加工しもちいた場合、上記パージガスでエアナイフ状のガス流(以下エアナイフと記載する。)を形成し、今まさにレーザーが当たっている部分にあてながら、レーザー照射を行うとより水分子が多く供給され効果が向上した。エアナイフはレーザー照射部分に直接当てなくても、エアナイフのエアが、レーザーが膜に当たっている部分の上に十分供給されるようにさえしてやれば、同様の効果があった。しかし、
第二、第三の方法に於いては、添加する水分の量あるいは酸素と水素の量が多すぎると逆効果をもたらした。
【0036】
一般に、水はエキシマレーザーのごとき短波長の光はある深さ以上は通さないので、上記水分子層の水分子がある密度を越えた集団を形成した場合に、著しくレーザー照射の効果が低減することが予想される。上記逆効果は、この現象をよく説明できる。
【0037】
上記方法は、いずれの方法も結晶性の基板面内均質性を著しく向上させ、レーザーのパルス跡がほとんど目立たなくなった。本方法の特に優れた点は、結晶のグレインサイズが2000Å〜3000Åのあたりで揃ったことにあった。前記結晶のグレインサイズの大きさのバラツキはσ(標準偏差)で±20%以内と小さかった。その様子が見て取れる写真を図9に示す。
【0038】
図9A は、水素終端をアモルファスシリコン膜表面に意図的に施した基板を、室温(RT)大気中にて、レーザー照射した該シリコン膜表面のSEM 写真(走査型電子顕微鏡写真)である。
【0039】
図9B は、基板温度を400℃としたことを除いて、図9A と同一条件でレーザー照射した膜表面のSEM 写真である。基板温度が400℃と高い状態でレーザー照射された膜は、グレインサイズがμmオーダーの大きいものから、数百Åと微少なものまで広い範囲の分布を持った。その一方、基板温度が室温でレーザー照射された膜は、グレインサイズが2000Å〜3000Åの比較的狭い範囲でピークを持つ分布を持った。このことは、レーザー照射により形成される水分子の層の発散しにくい条件でレーザー結晶化を行う方が、グレインサイズが揃うことを示唆している。
【0040】
また、レーザー照射により生じる半導体膜表面の凹凸の高さのバラツキが従来と比較し少なくなった。このことは、図4より見て取れる。パルスレーザーのエネルギーは、エキシマレーザーで±5%振れることが知られているが、図4で実際に照射されているエネルギー密度の5%はほぼ10〜20mJ/ cm2に相当し、10〜20mJ/ cm2の幅で該エネルギー密度が変動した場合、平均粗さは基板温度400℃で±70%以上も振れるのに対し、基板温度室温では±40%以下に収まっている。これらの数値は、基板の凹凸を統計処理し算出したσの値とほぼ一致している。
【0041】
本明細書で開示する発明は、上記の実験結果から得られたものである。
本発明の第一は、
非単結晶半導体膜に対してレーザービームを照射してレーザーアニールを行うに際し、
レーザー光の照射面側に気体又は液体の熱の保温層を造りつつ、レーザービームを照射することを特徴とする。
【0042】
上記保温層は、上記非単結晶半導体膜を保温することにより、該非単結晶半導体膜の結晶化を助長させるものである。
上記保温層は、水又は水蒸気からなるものであると効果が大である。なぜなら、水は流体のなかで最も熱容量が大きい物質の1つだからである。
上記保温層は、非単結晶半導体膜の結晶化を助長させる、水又は水蒸気からなるものであることが望ましい。
【0043】
本発明の第二は、
非単結晶半導体膜に対してレーザービームを照射してレーザーアニールを行うに際し、
少なくとも半導体膜表面内外近傍に酸素と水素とを分布させた状態でレーザー光を照射し、前記酸素と水素とを該レーザー光により反応せしめて水を半導体膜結晶化と同時に形成することを特徴とする。
【0044】
本発明の第三は、
非単結晶半導体膜に対して線状に加工されたレーザービームを照射してレーザーアニールを行うに際し、
レーザー光の照射面側に気体又は液体の熱の保温層を造りつつ、レーザービームを照射することを特徴とする。
【0045】
上記保温層は、上記非単結晶半導体膜を保温することにより、該非単結晶半導体膜の結晶化を助長させるものである。
【0046】
上記保温層は、水又は水蒸気からなるものであると効果が大である。なぜなら、水は流体のなかで最も熱容量が大きい物質の1つだからである。
上記保温層は、非単結晶半導体膜の結晶化を助長させる、水又は水蒸気からなるものであることが望ましい。
【0047】
本発明の第四は、
非単結晶半導体膜に対して線状に加工されたレーザービームを照射してレーザーアニールを行うに際し、
少なくとも半導体膜表面内外近傍に酸素と水素とを分布させた状態でレーザー光を照射し、前記酸素と水素とを該レーザー光により反応せしめて水を半導体膜結晶化と同時に形成することを特徴とする。
【0048】
本発明の一〜四に使用されるレーザーは、パルスレーザーが効果的であった。本発明の一〜四に使用されるレーザーは、パルスレーザーの中で特に大出力をもつエキシマレーザーが効果的であった。
【0049】
本発明の第五は、
非単結晶半導体膜に対してレーザービームを照射してレーザーアニールを行うに際し、
意図的に、該非単結晶半導体膜表面を水素にて終端させた状態にし、
少なくとも酸素を含有する雰囲気とし、
前記非単結晶半導体膜に対してレーザービーム
を照射することを特徴とする。
【0050】
本発明の第六は、
非単結晶半導体膜に対してレーザービームを照射してレーザーアニールを行うに際し、
雰囲気制御の可能なレーザー照射室内を、少なくとも水分子を含有する雰囲気とし、 前記レーザー照射室内において、前記非単結晶半導体膜に対してレーザービームを照射することを特徴とする。
【0051】
本発明の第七は、
非単結晶半導体膜に対してレーザービームを照射してレーザーアニールを行うに際し、
雰囲気制御の可能なレーザー照射室内を、少なくとも酸素と水素を含有する雰囲気とした状態で、 前記レーザー照射室内において、前記非単結晶半導体膜に対してレーザー光を照射し、前記酸素と水素とを該レーザー光により反応せしめて水を半導体膜結晶化と同時に形成することを特徴とする。
【0052】
前述の非単結晶半導体膜は、レーザー光照射前に、意図的に該非単結晶半導体膜表面を水素にて終端させた状態にすると、よりレーザー結晶化が膜面内で均質に行われた。これは、より膜面近傍での水合成が行われたためで、保温効果が促進された結果である。
【0053】
本発明の第八は、
非単結晶半導体膜に対してレーザービームを照射してレーザーアニールを行うに際し、
水分子で構成された層を該非単結晶半導体膜表面上から該表面の極近傍までの範囲に形成しつつ、前記非単結晶半導体膜に対してレーザービーム
を照射することを特徴とする。
【0054】
本発明の第九は、
非単結晶半導体膜に対してレーザービームを照射してレーザーアニールを行うに際し、
水分子で構成された層を該非単結晶半導体膜表面上から該表面の極近傍までの範囲に形成した状態で、前記非単結晶半導体膜に対してレーザービーム
を照射することを特徴とする。
【0055】
上記いずれのレーザーアニールも、基板温度−10℃〜100℃の範囲に保たれている状態で行われると、より膜の結晶性の均質化が進んだ。
【0056】
本発明の第十は、
非単結晶半導体膜に対してレーザービームを照射してレーザーアニールを行うに際し、
水分子を含んだガスを前記非単結晶半導体膜に吹き付けつつ、
前記非単結晶半導体膜に対してレーザービームを照射することを特徴とする。
【0057】
本発明の第十一は、
非単結晶半導体膜に対してレーザービームを照射してレーザーアニールを行うに際し、
酸素と水素とを含んだガスを前記非単結晶半導体膜に吹き付けつつ、
前記非単結晶半導体膜に対してレーザービーム
を照射することを特徴とする。
【0058】
本発明十または十一において、レーザーアニールは、基板温度−10℃〜100℃の範囲に保たれている状態で行われると、より膜の結晶性の均質化を進んだものとすることができる。
【0059】
本発明十または十一においてレーザーアニールは、雰囲気制御可能なレーザー照射室内で行われると汚染防止に効果があった。特に本発明十一においては、水素を使用するので、安全のためにはレーザー照射室が必要である。
【0060】
本発明の五〜十一のいずれも、レーザービームの照射は、被照射面における断面形状が、スポット状または線状のレーザービームを走査して行われるとよかった。本発明の五〜十一に使用されるレーザーは、パルスレーザーが効果的であった。本発明の五〜十一に使用されるレーザーは、パルスレーザーの中で特に大出力をもつエキシマレーザーが効果的であった。
【0061】
本発明の十二は、
非単結晶半導体膜に対して線状に加工されたレーザービームを照射してレーザーアニールを行うに際し、水分子を含んだガスでエアナイフ状のガス流を形成し、前記非単結晶半導体膜に該エアナイフ状のガス流を吹き付けつつ、
前記非単結晶半導体膜の該エアナイフ状のガス流吹き付け部分に対してレーザービームを照射することを特徴とする。
【0062】
本発明の十三は、
非単結晶半導体膜に対して線状に加工されたレーザービームを照射してレーザーアニールを行うに際し、
酸素と水素とを含んだガスでエアナイフ状のガス流を形成し、前記非単結晶半導体膜に該エアナイフ状のガス流を吹き付けつつ、
前記非単結晶半導体膜の該エアナイフ状のガス流吹き付け部分に対してレーザービームを照射することを特徴とする。
【0063】
本発明十二、十三において、エアナイフ状のガス流を形成する理由は、該エアナイフの断面が線状レーザービームのビーム型とにているので、レーザー照射部分に効率よくガスを供給できるからである。本発明十二、十三において、レーザーアニールは、基板温度−10℃〜100℃の範囲に保たれている状態で行われると、より膜の結晶性の均質化が進んだ。
【0064】
本発明十二、十三において、レーザーアニールは、雰囲気制御可能なレーザー照射室内で行われると、汚染防止に効果があった。特に本発明十三においては、水素を使用するので、安全のためにはレーザー照射室が必要である。
【0065】
本発明の十二、十三に使用されるレーザーは、パルスレーザーが効果的であった。本発明の十二、十三に使用されるレーザーは、パルスレーザーの中で特に大出力をもつエキシマレーザーが効果的であった。
【0066】
本発明の一〜十三に使用される非単結晶半導体膜は、非単結晶珪素膜が適当であった。
【0067】
本発明の十四は、雰囲気制御可能なレーザー照射室内において、非単結晶半導体膜にレーザーアニールを施すレーザーアニール装置であって、前記レーザー照射室内へ、少なくとも水分子を含むガスを供給する手段を有することを特徴とする。
【0068】
本発明の十五は、雰囲気制御可能なレーザー照射室内において、非単結晶半導体膜にレーザーアニールを施すレーザーアニール装置であって、前記レーザー照射室内へ、少なくとも水素と酸素とを含むガスを供給する手段を有することを特徴とする。
【0069】
本発明の十六は、非単結晶半導体膜にレーザーアニールを施すレーザーアニール装置であって、少なくとも水分子を含むガスを、該レーザーアニール装置の形成するレーザービームが該非単結晶半導体膜に照射されている部分に、供給する手段を有することを特徴とする。
【0070】
本発明の十七は、非単結晶半導体膜にレーザーアニールを施すレーザーアニール装置であって、少なくとも水素と酸素を含むガスを、該レーザーアニール装置の形成するレーザービームが該非単結晶半導体膜に照射されている部分に、供給する手段を有することを特徴とする。
【0071】
本発明の十八は、非単結晶半導体膜にレーザーアニールを施すための線状に加工されたレーザービームを形成するレーザーアニール装置であって、少なくとも水分子を含むガスでエアナイフ状のガス流を形成する手段と、該レーザーアニール装置の形成するレーザービームが該非単結晶半導体膜に照射されている部分に、前記エアナイフ状のガス流を形成しているガスを供給する手段と、
を有することを特徴とする。
【0072】
本発明の十九は、非単結晶半導体膜にレーザーアニールを施すための線状に加工されたレーザービームを形成するレーザーアニール装置であって、少なくとも水素と酸素とを含むガスでエアナイフ状のガス流を形成する手段と、該レーザーアニール装置の形成するレーザービームが該非単結晶半導体膜に照射されている部分に、前記エアナイフ状のガス流を形成しているガスを供給する手段と、
を有することを特徴とする。
【0073】
本発明の十四〜十九のレーザーは、パルスレーザーが適当であった。本発明の十八、十九のレーザーは、パルスレーザーの中で特に大出力をもつエキシマレーザーが適当であった。本発明の十四〜十九に使用される非単結晶半導体膜は、非単結晶珪素膜が適当であった。
【0074】
上記いずれかの発明において、記載のガスのその他の成分はコスト、反応性の低さ等を鑑みて、窒素ガスが適当であった。
【発明の効果】
【0075】
本発明により、従来のあらゆるレーザーアニール技術と比較して、結晶性、均質性が大幅に向上し、さらにまたエネルギー利用効率を大きく向上させることができる。
(作用)
本発明は、非単結晶半導体膜にレーザーアニールを施して、結晶化また結晶性を向上させるに際し、水分子の層を該非単結晶半導体膜とレーザービームとの間に形成するものである。前記水分子層が保温層として該非単結晶半導体膜に作用し、結晶性の膜面内での均質性を著しく向上させる。
【0076】
前述のように、水分子層の効果は水分子の密度によって大きく変わる。液体の水は短波長の光をある深さ以上通さないからである。エキシマレーザーは紫外光であるから短波長である。
【実施例1】
【0077】
実施例の作製工程で、まず、レーザー照射される膜の作成方法を示す。レーザー照射される膜は、本明細書中で3種類である。いずれの膜に対しても、本発明は効果的である。
【0078】
まず、3種類いずれの膜も、基板として、127mm角のコーニング1737上に、下地膜としての酸化珪素膜が2000Å、その上に非晶質珪素膜が、500Å、共にプラズマCVD法にて、連続的に成膜される。該膜を今後、出発膜と呼ぶ。
【0079】
膜Aの作成手順。まず、出発膜を、450℃の熱浴に1時間さらす。本工程は非晶質珪素膜中の水素濃度を減らすための工程である。膜中の水素が多すぎると膜がレーザーエネルギーに対して耐えきれないので本工程をいれた。
【0080】
該膜内の水素の密度は10の20乗atoms/cm3 オーダーが適当であった。この膜を非単結晶珪素膜Aと呼ぶ。
【0081】
膜Bの作成手順。まず、10ppmの酢酸ニッケル水溶液が、スピンコート法により、出発膜上に塗布され、酢酸ニッケル層が形成される。酢酸ニッケル水溶液には、界面活性剤を添加するとより好ましい。酢酸ニッケル層は、極めて薄いので、膜状となっているとは限らないが、以後の工程において問題はない。
【0082】
次に、上記のようにして各膜が積層された基板に、600℃で4時間の
熱アニールが施され、非晶質珪素膜が結晶化し、非単結晶珪素膜である結晶性珪素膜B が形成される。
【0083】
このとき、触媒元素であるニッケルが結晶成長の核の役割を果たし、結晶化を促進させる。600℃、4時間という低温、短時間で結晶化を行うことができるのは、ニッケルの機能による。詳細については、特開平6−244104号に記載されている。
【0084】
触媒元素の濃度は、1×1015〜1019原子/cm3 であると好ましい。1×1019原子/cm3 以上の高濃度では、結晶性珪素膜に金属的性質が現れ、半導体としての特性が消滅する。
【0085】
本実施例において、結晶性珪素膜中の触媒元素の濃度は、膜中のおける最小値で、1×1017〜5×1018原子/cm3 である。これらの値は、2次イオン質量分析法(SIMS)により分析、測定したものである。
【0086】
膜C の作成手順。まず、出発膜の上からさらに酸化珪素膜を700Å成膜する。成膜方法はプラズマCVD法を用いた。次に該酸化珪素膜の一部をフォトリソパターニング工程によって完全に開孔する。さらに、該開孔部に薄い酸化膜を形成するために酸素雰囲気中でUV光を5分間照射する。この薄い酸化膜は、後に導入するニッケル水溶液に対する上記開孔部の濡れ性改善のために形成されるものである。
【0087】
100ppmの酢酸ニッケル水溶液が、スピンコート法により、該膜上に塗布され、酢酸ニッケルが上記開孔部分に入る。酢酸ニッケル水溶液には、界
面活性剤を添加するとより好ましい。
【0088】
次に、600℃で8時間の熱アニールが施され、ニッケル導入部分から横方向に結晶が成長してゆく。このとき、ニッケルが果たす役割は膜Bと同様のものである。今回の条件では横成長量として40μm程度が得られた。このようにして非晶質珪素膜が結晶化し、非単結晶珪素膜である結晶性珪素膜C が形成される。その後、結晶性珪素膜上の酸化珪素膜をバッファーフッ酸を用い剥離除去する。
【0089】
このようにして得られる非単結晶珪素膜A 、B 、C を結晶化させる、あるいは、結晶性をさらに高めるために、エキシマレーザーを用いてレーザーアニールを行う。
【0090】
図1に、実施例におけるレーザー照射室を示す。図1は、レーザー照射室の側断面図である。
【0091】
図3に、実施例におけるレーザーアニール装置の上面図を示す。ここでは、図3に示すマルチチャンバー型のレーザーアニール装置を用いる。図3におけるA−A’断面を示す図が図1に相当する。
【0092】
図1において、レーザー照射室101は、レーザー発振装置102から照射され、光学系112により断面形状が線状に加工されたパルスレーザービームをミラー103で反射させ、シリンドリカルレンズ116にて集光されつつ、石英で構成された窓104を介して被処理基板105に照射される機能を有している。光学系112、ミラー103、及びシリンドリカルレンズ116は図8に示す。
【0093】
図8のような光学系を用いるのは、線状ビーム面内のエネルギー分布の均質性が大変良いからである。エネルギーのバラツキは±5%以内であった。本発明で使用する線状レーザービームはすべて図8記載の光学系にて線状に加工されている。図8と異なる光学系にて線状レーザービームを加工してもよいが、該エネルギー分布の均質性は図8記載のものに準じていなければならない。図8のようなタイプのレンズ群の役割を以下に記述する。
【0094】
シリンドリカルレンズ群801、803はビームを縦横に分割する役割を果たしている。該分割された光束をシリンドリカルレンズ802、804が1領域、本発明では線状の形を成す領域に集める役割を果たしている。本実施例では、元のビームを横に5分割、縦に7分割しているので35分割されたビームを一つにすることにより、ビームのエネルギー分布を平均化している。ビームの縦横の長さの比はレンズ群の構造上自在に変えられるので、本光学系により、正方形状から線状に到るまであらゆるビームを形成できる。ただし、レンズの大きさ、焦点距離の組合せにより、造りやすいビーム形状は制限される。
【0095】
石英窓104は、ヒーター115内蔵の治具113によって固定されている。該ヒーター115は石英窓104の曇り止めのためについている。これは、レーザー照射室101がレーザー照射時、加湿状態になるからである。石英窓のO リング114にはバイトンを使用した。バイトンの耐熱温度は150℃程度であり、本発明には十分であるが、さらに高い耐熱温度が要求される場合、カルレツを用いると250℃程度まで耐える。上記曇り止めにはドライ窒素を石英窓104に吹き付けてもよかった。
【0096】
レーザー発振装置102は、ここでは、XeClエキシマレーザー(波長308nm)を発振するものを用いる。他に、KrFエキシマレーザー(波長248nm)を用いてもよい。
【0097】
被処理基板105は、台106上に設けられたステージ111上に配置される。台106内にはヒーターが内蔵されており、ステージ111上の基板温度を所定の温度に保つ。そして、台106は、移動機構107によって、線状レーザービームの線方向に対して直角方向に移動され、被処理基板105上面に対しレーザービームを走査しながら照射することを可能とする。
【0098】
雰囲気制御が可能なレーザー照射室101は、減圧、排気手段として、真空排気ポンプ108を有する。また、気体供給手段として、本実施例では、バルブを介して窒素ボンベに接続された、気体供給管109と、バルブを介してレーザー処理室内の湿度調節を行うための気体供給管110を有する。110から供給される気体は湿度調節された窒素が適当であった。
【0099】
レーザー照射室101は、ゲイトバルブ301を介して、基板搬送室302に連結されている。
【0100】
図3において、図1のレーザー照射室101がゲイトバルブ301を介して基板搬送室302に連結されている。
【0101】
図3に示す装置の説明をする。ロード/アンロード室306に、被処理基板105が多数枚、例えば20枚収納されたカセット304が配置される。ロボットアーム305により、カセット304から一枚の基板がアライメント室に移動される。
【0102】
アライメント室303には、被処理基板105とロボットアーム305との位置関係を修正するための、アライメント機構が配置されている。アライメント室303は、ロード/アンロード室306とゲイトバルブ307を介して接続されている。
【0103】
基板は、ロボットアーム305によって基板搬送室302に運ばれ、さらに
ロボットアーム305によって、レーザー照射室101に移送される。このときステージ111は台106内のヒーターにより、所望の温度、例えば室温から300℃程度の範囲で保たれている。ステージに配置された基板は温度が安定するまで放置される。このとき、石英窓104は曇り止めのため121内のヒーターにより適当な温度に昇温されている。また、気体供給管109、110からは窒素ガス及び湿度調整された窒素ガスが出て、レーザー照射室内の雰囲気、主に湿度を制御している。
【0104】
図1において、被処理基板105上に照射される線状レーザービームは、幅0.4mm×長さ135mmとする。被照射面におけるレーザービームのエネルギー密度は、100mJ/cm2 〜500mJ/cm2 の範囲で、例えば260mJ/cm2 とする。台106を1. 2mm/sで一方向に移動させながら行うことで、線状レーザービームを走査させる。レーザーの発振周波数は30Hzとし、被照射物の一点に注目すると、10〜50ショットのレーザービームが照射される。
【0105】
このとき、レーザー照射室内の水分が珪素膜の保温層の役割を果たし、結晶化の均質性を著しく向上させる。レーザー照射前に、被処理基板105を水洗し乾燥させた状態でレーザー結晶化を行うと、該珪素膜表面に吸着し残留した水分が、基板の保温効果を助長した。本発明では、前記該珪素膜表面に吸着し残留した水分も保温層の一部として定義する。
【0106】
基板温度が高すぎると該水分子の層の拡散スピードが高くなりすぎて、保温効果が減衰した。基板温度は−10℃〜100℃範囲で良い結果がでた。レーザー照射室内の圧力も気体供給排気のバランスをコントロールすることにより、数100パスカルから数アトムまで振ったがいずれの圧力下においても良い結果が得られた。
【0107】
レーザー照射終了後、被処理基板105はロボットアーム305によって基板搬送室302に引き戻される。被処理基板105は、ロボットアーム305によって、ロード/アンロード室306に移送され、カセット304に収納される。
【0108】
こうして、レーザーアニール工程が終了する。このようにして、上記工程を繰り返すことにより、多数の基板に対して、連続的に一枚づつ処理できる。
【0109】
本実施例は線状レーザーを用いたが、線状から正方形状にいたるまでいずれのビーム形状を本発明に使用しても本発明が特徴とする効果があった。
【実施例2】
【0110】
実施例1で作成した膜A 、B 、C を本実施例で結晶化させる。もしくは、結晶性を向上させる。
【0111】
本実施例は、実施例1とほとんど同様の工程を踏む。異なる点はレーザー照射室に供給されるガスの種類のみである。本実施例では、バルブを介して窒素で希釈された酸素を供給する気体供給管109と、バルブを介して窒素で希釈された水素を供給する気体供給管110を有する。水素の濃度は安全性を考慮して0.1 %〜10%までとした。酸素の濃度も水素に合わせ0.1 %〜10%までとした。
【0112】
上記ガス供給管等を使って、レーザー室内の雰囲気を窒素、酸素、及び水素を主とするものとした後、レーザー照射を行なった。レーザー照射室内の酸素と水素とがレーザーエネルギーにより反応し合成された水分子の層が、珪素膜の保温層の役割を果たし、結晶化の均質性を著しく向上させる。レーザー照射前に、被処理基板105を水洗し乾燥させた状態でレーザー結晶化を行うと、該珪素膜表面に吸着し残留した水分が、基板の保温効果を助長した。本発明では、前記該珪素膜表面に吸着し残留した水分も保温層の一部として定義する。
【0113】
基板温度が高すぎると該水分子の層の拡散スピードが高くなりすぎて、保温効果が減衰した。基板温度は−10℃〜100℃範囲で良い結果がでた。レーザー照射室内の圧力も気体供給排気のバランスをコントロールすることにより、数100パスカルから数アトムまで振ったがいずれの圧力下においても良い結果が得られた。
【実施例3】
【0114】
実施例1で作成した膜A 、B 、C を本実施例で結晶化させる。もしくは、結晶性を向上させる。本実施例は、図5に記載の装置を使う。
【0115】
本実施例は、実施例1とほとんど同様の工程を踏む。異なる点はレーザー照射室に供給されるガスの供給方法のみである。本実施例では、気体供給管109と、気体供給管110とに延長管501を接続し、気体供給管109、110から出てくる気体502を、該延長管501から吹き出させる。レーザービームが基板に当たっている部分にまんべんなく気体502が供給されるよう、延長管501を設置する。
【0116】
本実施例の場合、気体502は、湿度調整された窒素である。気体502中の水分子がが、珪素膜の保温層の役割を果たし、結晶化の均質性を著しく向上させる。レーザー照射前に、被処理基板105を水洗し乾燥させた状態でレーザー結晶化を行うと、該珪素膜表面に吸着し残留した水分が、基板の保温効果を助長した。本発明では、前記該珪素膜表面に吸着し残留した水分も保温層の一部として定義する。
【0117】
基板温度が高すぎると該水分子の層の拡散スピードが高くなりすぎて、保温効果が減衰した。基板温度は−10℃〜100℃範囲で良い結果がでた。レーザー照射室内の圧力も気体供給排気のバランスをコントロールすることにより、数100パスカルから数アトムまで振ったがいずれの圧力下においても良い結果が得られた。
【0118】
本実施例の結果より、本実施例の効果はレーザー照射室の有無によらないことがわかる。レーザー照射室の効果は基板汚染防止のみである。
【0119】
本実施例で使用するレーザービームを線状のものとした場合、気体延長管501の吹き出し口の形状もレーザービーム形状にあわせて線状とし、エアナイフ状に基板に吹き付けるとより効率よく気体502が供給できた。(図6参照。)ガス流503は気体延長管501内のガスの流れの様子を示している。
【実施例4】
【0120】
実施例1で作成した膜A 、B 、C を本実施例で結晶化させる。もしくは、結晶性を向上させる。
【0121】
本実施例は、実施例3とほとんど同様の工程を踏む。異なる点はレーザー照射室に供給されるガスの種類のみである。本実施例は、実施例2と同様に、バルブを介して窒素で希釈された酸素を供給する気体供給管109と、バルブを介して窒素で希釈された水素を供給する気体供給管110を有する。水素の濃度は安全性を考慮して0.1 %〜10%までとした。酸素の濃度も水素に合わせ0.1 %〜10%までとした。
【0122】
本実施例の場合、気体502は窒素、酸素、水素の混合気体である。酸素と水素とがレーザーエネルギーにより反応し合成された水分子の層が、珪素膜の保温層の役割を果たし、結晶化の均質性を著しく向上させる。レーザー照射前に、被処理基板105を水洗し乾燥させた状態でレーザー結晶化を行うと、該珪素膜表面に吸着し残留した水分が、基板の保温効果を助長した。本発明では、前記該珪素膜表面に吸着し残留した水分も保温層の一部として定義する。
【0123】
基板温度が高すぎると該水分子の層の拡散スピードが高くなりすぎて、保温効果が減衰した。基板温度は−10℃〜100℃範囲で良い結果がでた。レーザー照射室内の圧力も気体供給排気のバランスをコントロールすることにより、数100パスカルから数アトムまで振ったがいずれの圧力下においても良い結果が得られた。
【0124】
本実施例の結果より、本実施例の効果はレーザー照射室の有無によらないことがわかる。レーザー照射室の効果は基板汚染防止のみである。しかしながら、水素を大気中に放出することは危険を伴うため、本実施例の場合レーザー照射室はあるべきである。
【0125】
本実施例で使用するレーザービームを線状のものとした場合、気体延長管501の吹き出し口の形状もレーザービーム形状にあわせて線状とし、エアナイフ状に基板に吹き付けるとより効率よく気体502が供給できた。(図6参照。)ガス流503は気体延長管501内のガスの流れの様子を示している。
【実施例5】
【0126】
実施例1で作成方法を示した非単結晶珪素膜A 、B 、C を結晶化させる、あるいは、結晶性をさらに高めるために、エキシマレーザーを用いてレーザーアニールを行う。
【0127】
図1、図3に示す装置を用いてレーザーアニールを行う工程を説明する。まず、被処理基板105(非単結晶珪素膜を有する基板)は、HF水溶液、またはHFとH2 O2 の混合水溶液で洗浄されて該珪素膜表面が水素で終端された後、カセット304に納められ、カセット304がロード/アンロード室306に配置される。
【0128】
図3において、本実施例においては、ロード/アンロード室306から搬送される被処理基板105は、アライメントされた後、レーザー照射室101に搬送される。
【0129】
レーザー照射室101に搬送された被処理基板105は、ステージ111上に載置される。この状態でゲートバルブ301を閉じ、レーザー照射室101内を真空排気ポンプ108により真空引きした後、
【0130】
気体供給管109から窒素で希釈された酸素が、気体供給管110から窒素で希釈された水素がそれぞれ供給され、例えば酸素5%、水素5%、窒素90%の雰囲気とする。このとき、圧力は大気圧とする。
【0131】
また、図1において、被処理基板105上に照射される線状レーザービームは、幅0.4mm×長さ135mmとする。被照射面におけるレーザービームのエネルギー密度は、100mJ/cm2 〜500mJ/cm2 の範囲で、例えば260mJ/cm2 とする。台106を1. 2mm/sで一方向に移動させながら行うことで、線状レーザービームを走査させる。レーザーの発振周波数は30Hzとし、被照射物の一点に注目すると、10〜50ショットのレーザービームが照射される。
【0132】
このとき、レーザー室内の酸素と、レーザー室内の水素あるいは非単結晶珪素膜表面の水素原子がレーザーエネルギーにより反応し、水分子を形成する。この水分子の集合体が非単結晶珪素膜を保温する役目を果たし、結晶化を助長し、かつ、結晶性の均質性を著しく向上させた。レーザー照射前に被処理基板105はHF水溶液またはHFとH2 O2 の混合水溶液で洗浄されているので、該珪素膜表面には吸着し残留した水分あり、基板の保温効果を助長した。本発明では、前記該珪素膜表面に吸着し残留した水分も保温層の一部として定義する。基板温度が高ければ高いほど該水分子の集合体の拡散スピードが高くなり、保温効果が減衰した。このようにして非単結晶珪素膜A 、B 、C に対し、レーザーアニールが施され、結晶化が起こる、あるいは結晶性が向上される。
【0133】
本実施例におけるレーザー室内の雰囲気を、水素濃度0. 1%〜10%、酸素濃度0. 1%〜10%、レーザー処理室内の圧力を数100パスカルから数アトム、そして、基板温度を−10℃〜100℃まで変化させたがいずれの雰囲気下においても良い結果が得られた。また、水素を含まない雰囲気でも酸素さえあれば水は形成されるので、水素を含まない酸素を含む雰囲気中でのレーザー結晶化でも効果的であった。その後、ロボットアーム305を介して、ロード/アンロード室306のカセット304に収納される。
【実施例6】
【0134】
本実施例では、レーザー照射により水分子が形成されている証拠を示す。図10はレーザー照射室内のダストの数をダストカウンターで数えたものである。図10上段の表は、レーザー照射前のダストの数である。図10下段の表は、レーザー照射を基板を走査させながら行なった後のダストの数と、レーザー照射せずにただ基板を走査させた後のダストの数を数えたものである。図10から、レーザー照射によりダストカウンターの数値が著しく増えていることがわかる。
【0135】
レーザー照射後、該ダストカウンターから検出されたダストの大多数が0. 3μm程度のものである。そこで、本発明人はこれらのダストを視覚的にとらえるべく、ダストカウンター1101の吸引口1102の途中に0. 2μmピッチのフィルター1103を挿入し、レーザー照射後のダスト1104の捕獲を試みた(図11参照)。
【0136】
レーザー照射後、該フィルターをSEM で観察した。ところが、ほとんど全くといってよいほどダストが観察されなかった。この事実から推し量るに、該ダストカウンターで検出されたダストは、液体の粒であることが推察できる。レーザー照射によりできそうな液体は、レーザー照射対象から推し量るに水であろう。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】実施例におけるレーザー照射室を示す図。
【図2】各種雰囲気でのレーザーアニールにおける、レーザービームのエネル ギー密度と、レーザーアニールされた結晶性珪素膜のラマン半値半幅 との関係を示す図。
【図3】実施例におけるレーザーアニール装置の上面図。
【図4】各温度でのレーザーアニールにおける、レーザービームのエネルギー 密度と、レーザーアニールされた結晶性珪素膜の表面平均粗さとの関 係を示す図。
【図5】実施例におけるレーザー照射室を示す図。
【図6】実施例におけるレーザー照射室を示す図。
【図7】線状レーザーによりレーザー結晶化された珪素の薄膜を示す写真。
【図8】実施例における線状レーザーを形成する光学系を示す図。
【図9】水素終端をアモルファスシリコン膜表面に意図的に施した基板を、室 温大気中、あるいは基板温度を400℃に昇温した状態にて、レーザ ー照射が行われたシリコン膜表面を写した走査型電子顕微鏡写真。
【図10】ダストカウンターにより検出されたダストの数であって、レーザー照 射室内のレーザー処理前後のダスト数を示すグラフ。
【図11】実施例におけるダストカウンターとフィルターを示す図。
【符号の説明】
【0138】
101 レーザー照射室
102 レーザー発振装置
103 ミラー
104 窓
105 被処理基板
106 台
107 移動機構
108 真空排気ポンプ
109 110 気体供給管
111 ステージ
112 光学系
113 石英窓104の工程用治具
114 O リング
115 ヒーター
116 線状ビームを集光するためのシリンドリカルレンズ
301 ゲイトバルブ
302 基板搬送室
303 アライメント室
304 カセット
305 ロボットアーム
306 ロード/アンロード室
307 ゲイトバルブ
501 延長管
502 供給
503 延長管501内の供給ガス
801 レーザー光分割のためのシリンドリカルレンズ群
802 レーザー光収束のためのシリンドリカルレンズ
803 レーザー光分割のためのシリンドリカルレンズ群
804 レーザー光収束のためのシリンドリカルレンズ
1101 ダストカウンター
1102 吸引口
1103 フィルター
1104 ダスト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性半導体膜を用いた薄膜トランジスタの作製方法であって、
水分子を含んだガスを非単結晶半導体膜に吹き付けつつ、前記非単結晶半導体膜に対してレーザービームを照射することにより、前記結晶性半導体膜を形成することを特徴とする薄膜トランジスタの作製方法。
【請求項2】
結晶性半導体膜を用いた薄膜トランジスタの作製方法であって、
酸素と水素とを含んだガスを非単結晶半導体膜に吹き付けつつ、前記非単結晶半導体膜に対してレーザービームを照射することにより、前記結晶性半導体膜を形成することを特徴とする薄膜トランジスタの作製方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記レーザービームの照射は、被照射面における断面形状がスポット状又は線状のレーザービームを走査して行われることを特徴とする薄膜トランジスタの作製方法。
【請求項4】
結晶性半導体膜を用いた薄膜トランジスタの作製方法であって、
水分子を含んだガスでエアナイフ状のガス流を形成し、非単結晶半導体膜に前記エアナイフ状のガス流を吹き付けつつ、前記非単結晶半導体膜における前記エアナイフ状のガス流吹き付け部分に対して、線状に加工されたレーザービームを照射することにより、前記結晶性半導体膜を形成することを特徴とする薄膜トランジスタの作製方法。
【請求項5】
結晶性半導体膜を用いた薄膜トランジスタの作製方法であって、
酸素と水素とを含んだガスでエアナイフ状のガス流を形成し、非単結晶半導体膜に前記エアナイフ状のガス流を吹き付けつつ、前記非単結晶半導体膜における前記エアナイフ状のガス流吹き付け部分に対して、線状に加工されたレーザービームを照射することにより、前記結晶性半導体膜を形成することを特徴とする薄膜トランジスタの作製方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一において、
前記レーザービームの照射は、基板温度が−10℃〜100℃の範囲に保たれている状態で行われることを特徴とする薄膜トランジスタの作製方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一において、
前記レーザービームの照射は、雰囲気制御可能なレーザー照射室内で行われることを特徴とする薄膜トランジスタの作製方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一において、
前記レーザービームは、パルスレーザーを光源とするものであることを特徴とする薄膜トランジスタの作製方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一において、
前記レーザービームは、エキシマレーザーを光源とするものであることを特徴とする薄膜トランジスタの作製方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一において、
前記非単結晶半導体膜は、非晶質半導体膜又は結晶性半導体膜であることを特徴とする薄膜トランジスタの作製方法。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれか一において、
前記非単結晶半導体膜は、非単結晶珪素膜であることを特徴とする薄膜トランジスタの作製方法。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一において、
前記結晶性半導体膜の結晶のグレインサイズの分布がσ(標準偏差)で±20%以内に収まっていることを特徴とする薄膜トランジスタの作製方法。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一において、
前記結晶性半導体膜の表面の、AFMにより測定される平均粗さの面内バラツキが±40%以内に収まっていることを特徴とする薄膜トランジスタの作製方法。
【請求項1】
結晶性半導体膜を用いた薄膜トランジスタの作製方法であって、
水分子を含んだガスを非単結晶半導体膜に吹き付けつつ、前記非単結晶半導体膜に対してレーザービームを照射することにより、前記結晶性半導体膜を形成することを特徴とする薄膜トランジスタの作製方法。
【請求項2】
結晶性半導体膜を用いた薄膜トランジスタの作製方法であって、
酸素と水素とを含んだガスを非単結晶半導体膜に吹き付けつつ、前記非単結晶半導体膜に対してレーザービームを照射することにより、前記結晶性半導体膜を形成することを特徴とする薄膜トランジスタの作製方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記レーザービームの照射は、被照射面における断面形状がスポット状又は線状のレーザービームを走査して行われることを特徴とする薄膜トランジスタの作製方法。
【請求項4】
結晶性半導体膜を用いた薄膜トランジスタの作製方法であって、
水分子を含んだガスでエアナイフ状のガス流を形成し、非単結晶半導体膜に前記エアナイフ状のガス流を吹き付けつつ、前記非単結晶半導体膜における前記エアナイフ状のガス流吹き付け部分に対して、線状に加工されたレーザービームを照射することにより、前記結晶性半導体膜を形成することを特徴とする薄膜トランジスタの作製方法。
【請求項5】
結晶性半導体膜を用いた薄膜トランジスタの作製方法であって、
酸素と水素とを含んだガスでエアナイフ状のガス流を形成し、非単結晶半導体膜に前記エアナイフ状のガス流を吹き付けつつ、前記非単結晶半導体膜における前記エアナイフ状のガス流吹き付け部分に対して、線状に加工されたレーザービームを照射することにより、前記結晶性半導体膜を形成することを特徴とする薄膜トランジスタの作製方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一において、
前記レーザービームの照射は、基板温度が−10℃〜100℃の範囲に保たれている状態で行われることを特徴とする薄膜トランジスタの作製方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一において、
前記レーザービームの照射は、雰囲気制御可能なレーザー照射室内で行われることを特徴とする薄膜トランジスタの作製方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一において、
前記レーザービームは、パルスレーザーを光源とするものであることを特徴とする薄膜トランジスタの作製方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一において、
前記レーザービームは、エキシマレーザーを光源とするものであることを特徴とする薄膜トランジスタの作製方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一において、
前記非単結晶半導体膜は、非晶質半導体膜又は結晶性半導体膜であることを特徴とする薄膜トランジスタの作製方法。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれか一において、
前記非単結晶半導体膜は、非単結晶珪素膜であることを特徴とする薄膜トランジスタの作製方法。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一において、
前記結晶性半導体膜の結晶のグレインサイズの分布がσ(標準偏差)で±20%以内に収まっていることを特徴とする薄膜トランジスタの作製方法。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一において、
前記結晶性半導体膜の表面の、AFMにより測定される平均粗さの面内バラツキが±40%以内に収まっていることを特徴とする薄膜トランジスタの作製方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図10】
【図11】
【図7】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図10】
【図11】
【図7】
【図9】
【公開番号】特開2007−96343(P2007−96343A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−326012(P2006−326012)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【分割の表示】特願平8−352140の分割
【原出願日】平成8年12月12日(1996.12.12)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【分割の表示】特願平8−352140の分割
【原出願日】平成8年12月12日(1996.12.12)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]