説明

薄膜トランジスタ

【課題】 結晶性に優れ、電気特性、特にリーク電流の少ない結晶性シリコン薄膜半導体装置を提供する。
【解決手段】 ソース電極およびドレイン電極上に非晶質シリコン層を形成し、その上に微結晶シリコン層、ゲート絶縁層、ゲート電極を形成する薄膜トランジスタであって、前記非晶質シリコン層と前記ソース電極とドレイン電極とが前記微結晶シリコン層を介して接続する領域と、前記非晶質シリコン層と前記ソース電極およびドレイン電極と直接接続する領域と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶性シリコン層を活性層とする薄膜トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
表示素子の駆動に薄膜トランジスタ(以下、TFTと記述する)を用いたアクティブマトリクス型の表示装置が広く知られている。薄膜トランジスタの活性層には、シリコン薄膜が好適に用いられている。シリコン薄膜は、非晶質シリコン膜と結晶性シリコンに大別され、結晶性シリコンはレーザーアニール法によるLTPS膜と気相成長法による微結晶シリコン膜とに分けることができる。
【0003】
微結晶シリコン膜やLTPS膜を活性層とするTFTは、非晶質シリコン膜を活性層とするTFT(以下、aSi−TFT)に比べ、移動度が大きいため駆動能力が高く、対電流ストレス耐性が高いため長時間駆動した後のVthのシフトが小さい。また、微結晶シリコンを活性層とするTFT(以下、μcSi−TFT)を製造する際には、LTPSを活性層とするTFT(以下、LTPS‐TFTという)を製造する際に必要なレーザーアニール処理を用いない。そのため、μcSi−TFTはLTPS‐TFTに比べて生産コストを低く抑えることができ、レーザーアニール処理に起因する結晶性のばらつきが無いため大面積の基板に特性むらの少ないTFTを製造することができる。以上のように、μcSi−TFTは、aSi−TFTやLTPS‐TFTに比べて有利な点が多く、表示装置に用いるTFTとして注目されている。
【0004】
特許文献1には、微結晶シリコンからなる活性層とソース電極およびドレイン電極との間に非晶質シリコン層を積層した、トップゲートスタガー型TFTが開示されている。ソース電極およびドレイン電極と活性層を、バンドギャップの広い非晶質シリコン層を介して接続することにより、TFTに逆バイアスが印加された状態あるいはオフの状態にチャネル領域の外側を通って流れるリーク電流を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001‐77372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1のTFTは、ソース電極およびドレイン電極と活性層との間にはバンドギャップの広い非晶質シリコン層が設けられているため、キャリアの移動を妨げる障壁となり、オン状態の電流特性が悪くなるという問題がある。微結晶シリコンTFTとしての特性を十分に発揮させ、実用化するためには、オン状態の電流特性を悪化させること無く、オフ状態(逆バイアス印加状態を含む)に流れるリーク電流を抑える必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明にかかる薄膜トランジスタは、
基板に、ソース電極およびドレイン電極と、非晶質シリコン層と、微結晶シリコン層と、ゲート絶縁層と、ゲート電極と、を積層してなる薄膜トランジスタであって、
前記非晶質シリコン層と前記ソース電極とドレイン電極とが前記微結晶シリコン層を介して接続する領域と、前記非晶質シリコン層と前記ソース電極およびドレイン電極と直接接続する領域と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、オン電流を減少させることなく、オフ状態に流れるリーク電流を低減することができ、電流特性に優れた薄膜トランジスタの実現を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明にかかる薄膜トランジスタの平面図(a)および断面図(b)である。
【図2】本発明にかかる薄膜トランジスタのドレインでの電流の流れを模式的に表す図である。
【図3】実施例にかかる薄膜トランジスタの断面図である。
【図4】薄膜トランジスタのエネルギーバンドを説明する図である。
【図5】実施例および比較例の薄膜トランジスタの断面図である。
【図6】実施例および比較例の薄膜トランジスタのVg−Id特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の概略図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を説明する。本発明では、ラマン分光法により520cm−1にラマンシフトが観察され、かつ結晶の体積分率が20%以上である層を、結晶性シリコン層と定義する。520cm−1にラマンシフトが観察されても結晶の体積分率が20%以下の場合や、520cm−1にラマンシフトが観察されない場合に非晶質シリコン層という。ただし、非晶質シリコン層中にも短距離的には結晶性シリコンと同じ構造を有する領域は存在する。
【0011】
本発明に係る半導体装置の例として、トップゲートスタガー型の薄膜トランジスタ(TFT)の平面図を図1(a)、図1(a)のX−X´断面図を図1(b)に示す。
【0012】
図1(a)(b)において、1はガラス基板、2はガラス基板1上に形成されたソース電極及びドレイン電極である。ソース電極及びドレイン電極2は、金属層2aと不純物含有半導体(n+Si)層からなるコンタクト層2bとの積層で構成されており、島状にパターニングされている。3は非晶質シリコン層であり、ソース電極およびドレイン電極2の一部とソース電極およびドレイン電極の間の領域とに設けられている。4は活性層となる微結晶シリコン層である。微結晶シリコン層は、ソース電極およびドレイン電極層2が非晶質シリコン層3で覆われない領域Aで直接ソース電極およびドレイン電極2と接続し、非晶質シリコン層3で覆われていない領域Bで非晶質シリコン層3を介して接続している。5はゲート絶縁層で、微結晶シリコン層4を覆うように形成され、6はゲート電極であり所望の形状にパターニングされる。ゲート絶縁層5には、窒化シリコン(SiNx)等が好適に用いられ、ゲート電極6と微結晶シリコン層4との電気的な絶縁を保っている。微結晶シリコン層4の側面を絶縁するために、ゲート絶縁層5を2層構成としてもよい。ソース電極とドレイン電極との間にあり、かつゲート電極6の直下にある微結晶シリコン層4のゲート電極6側の表面がチャネル領域7として機能する。
【0013】
非晶質シリコン層3は、上部に積層される微結晶シリコン層4のリーク電流を抑えるため、図1(a)に示すようにTFTのチャネル領域7を含み、チャネル領域7より広い領域に設けられる。さらに、TFTがオン状態の時の電流特性を向上させるため、活性層である微結晶シリコン層4とソース電極およびドレイン電極層2とが直接接触するように設けられる。つまり、非晶質シリコン層3の長さLa(電流の流れる方向の長さ)はゲート電極6の長さLg、および、ソース電極とドレイン電極との間の距離Lsd1よりも大きい。かつ、ドレイン電極から最も離れたソース電極の端部とソース電極から最も離れたドレイン電極の端部との距離Lsd2よりも小さい。また、非晶質シリコン3の幅(電流の流れと直交する方向の長さ)Waは、ソース電極およびドレイン電極2の幅Wsdよりも大きい。
【0014】
図2に本発明にかかるn型TFTのドレイン電極層側の断面図を示す。破線で囲まれた領域8は、チャネル領域とコンタクト層との接合部である。チャネル領域とコンタクト層との間には非晶質シリコン層3が設けられているため、オフ時においてもトンネル電流が流れにくく、結果としてオフリーク電流の減少が達成できる。この現象を図6に示すエネルギーバンド図(以下、単にバンド図と記述する)を用いて詳しく説明する。
【0015】
図4(a)(b)において、キャリアが流れるTFTの部位とそのエネルギーバンドとを示しており、紙面に向かって左側からソース電極、ソース電極と活性層の接合部、活性層、活性層とドレイン電極の接合部、ドレイン電極である。
【0016】
図4(a)は、チャネル領域とコンタクト層との間に非晶質シリコン層3が設けられていない、従来のTFTのバンドを示している。図4(a)−1は、ゲート電極に正の電位を印加したTFTがオン状態の時のバンドを表している。TFTがオン状態の時、結晶性シリコン層のチャネル領域のバンドは低エネルギー側にシフトし、電子と正孔はそれぞれ矢印で示した向きに流れる。この時流れる電流をオン電流という。一方、図4(a)−2は、ゲート電極に負の電位を印加したTFTがオフ状態の時のバンドを表している。TFTがオフ状態の時は、結晶性シリコン層のチャネル領域のバンドが高エネルギー側にシフトして、ドレイン電極と活性層とのバンドギャップが広くなるため、本来ならば電子と正孔は流れない。ところが、図4(a)−2のように接合部の電位の傾きが急峻な場合、トンネル電流、すなわちオフリーク電流が生じてしまう。
【0017】
図4(b)は、本発明にかかるTFTのバンド図である。図1に示したように、チャネル層とソース電極およびドレイン電極との間にバンドギャップの広い非晶質シリコン層を設けることによって、接合部の電位の傾きを緩和させることができる。その結果、トンネル電流が流れにくくなり、オフ時のリーク電流を低減することができる。
【0018】
以上のように、チャネル層とソース電極およびドレイン電極との間に設けた非晶質シリコン層によって、オフ時のリーク電流を低減し、TFTの電気特性を改善することができる。しかし、その一方でバンドギャップの広い非晶質シリコン層はキャリアの移動を阻害する障壁、すなわち抵抗成分となるため、オン電流特性を悪化させてしまう。オン電流特性向上させるためには、微結晶シリコン層4はソース電極およびドレイン電極2と直接接触していることが望ましい。
【0019】
図2にドレイン部の電流のパスを示す。この時、非晶質シリコン層3が抵抗成分となり、オン電流の抵抗となっている。そこでソース電極およびドレイン電極2と活性層である微結晶シリコン層4とが直接接触する領域を設け、オン電流が流れるパス19を作ることでオン電流を増加させることが可能となる。パス19がゲート電極6から離れすぎているとオン電流が流れるパス19の領域が小さくなってしまう。従って、ソース電極およびドレイン電極2と活性層である微結晶シリコン層4とが直接接触する領域とゲート電極との距離dは、2ミクロン以下が好ましい。
【0020】
さらに、ゲート電極5は、ソース電極およびドレイン電極2とオーバーラップしていることが望ましい。ゲート電極6の直下の微結晶シリコン層(活性層)4がチャネル領域となるため、ゲート電極6がオーバーラップしていない場合はソース電極およびドレイン電極からの電流パス18が小さく、十分なオン電流を得ることができない。
【0021】
次に、上記の構造のTFTの製造方法について図3を用いて説明する。
まず、図3の(a)に示したように、高融点ガラス、石英、セラミック等の基板1上に、スパッタや真空蒸着法等によってMo、Ti、W、Ni、Ta、Cu、Al、あるいはそれらの合金、それらの積層構造体からなる電極層2aを10〜300nm堆積する。さらにこの電極層2a上に、同じくプラズマCVD法にてn型非晶質シリコン層(n+Si)2bを形成する。このn型非晶質シリコン層2bの厚みは、一般には10〜300nm、望ましくは20〜100nmである。そして、これにレジスト(不図示)でパターンを形成した後、ハロゲン元素を含むドライエッチとウェットエッチを組み合わせて、あるいはどちらか一方でエッチングし、ソース電極およびドレイン電極2が形成される。
【0022】
続いて、ソース電極及びドレイン電極上にプラズマCVD法で非晶質シリコン膜3および微結晶シリコン層4を形成する(図3(b))。非晶質シリコン層3の厚みは、一般には50〜300nm、望ましくは100〜200nmである。ここで、非晶質シリコン層3の成膜条件は、相対的に低パワー密度、高反応圧力、低水素希釈とする。具体的には、RFパワー密度として0.01〜1W/cm、より望ましくは0.01〜0.3W/cmであり、反応圧力としては、0.5〜5torr、より望ましくは0.7〜2.0Torrである。また、原料ガスとしてはSiH、Si、SiHCl、SiF、SiH、希釈ガスとしてH や不活性ガスを用いる。なお、シリコン系原料ガスのH希釈率は、一般には0〜20倍希釈、望ましくは0〜15倍希釈である。
【0023】
非晶質シリコン層3にはドーパントとしてホウ素を混合しても良く、ドーピングガスとしてはBF、Bが適用可能である。なお、ドーピング量は一般的には1×10−19atm/cm以下、望ましくは1×10−17〜2×10−18atm/cmである。ホウ素のドーピングはトランジスタの電気特性を制御するために用いるものである。そして、レジスト(不図示)でパターンを形成した後、ハロゲン元素を含む雰囲気、具体的にはドライエッチまたはウェットエッチ、あるいはそれらを組み合わせてエッチングを行い、非晶質シリコン層をパターニングする。
【0024】
次にレジスト(不図示)を剥離し、非晶質シリコン層3の表面を前記エッチング工程と同様のプロセスにより改質処理する。表面改質処理を行なった後の非晶質シリコン層3上には、非晶質シリコン内に含まれていた結晶粒が膜の表面(不図示)に現れる。ここでは、ハロゲン元素により、非晶質シリコン層表面の弱い結合は除去してしまうため、より強い結合、つまり結晶構造に近い結合だけが取り残される事となる。続いて、CVD法で微結晶シリコン層4を形成する。この時、非晶質シリコン層3の表面に露出した結晶粒を核にして微結晶シリコンが成長するため、堆積初期の段階より結晶性の高い結晶性シリコン層を得ることができる。微結晶シリコン層4の厚みは、一般には20〜200nm、望ましくは40〜100nmである。
【0025】
微結晶シリコン層4の成膜条件は、相対的に高圧力かつ高水素希釈で行う。具体的には、RFパワー密度は0.05〜1W/cm、より望ましくは0.1〜0.8W/cm、反応圧力は1.0〜10torr、より望ましくは1.5〜8.0torrである。また、原料ガスはSiH、Si、SiHCl、SiF、SiH、希釈ガスとしてHや不活性ガスを用いる。なお、シリコン系原料ガスのHの希釈率は、一般には100〜2000倍であるが、希釈率の好ましい値は、シリコン系原料ガスがハロゲン系元素を含む場合と、含まない場合で異なる。
【0026】
微結晶シリコン層105の結晶性をより高くするためには、微結晶シリコン層を堆積する工程と水素プラズマを照射する工程とを交互に繰り返しながら堆積する方法が好適に用いられる。これは成膜ガスのマスフローコントローラーを任意に調整することで可能であり、堆積する工程と、水素プラズマ照射の時間配分は、堆積速度と結晶化率を確認した上で、適宜調整される。
【0027】
さらに、結晶性シリコン層4上にレジスト(不図示)でパターンを形成した後、ドライエッチとウェットエッチを組み合わせて、あるいはどちらか一方でエッチングし、結晶性半導体層を島状にアイソレーションする。
【0028】
次に、図3(c)に示すように、CVD法でゲート絶縁層5を形成する。ゲート絶縁層5の厚みは、50〜300nmである。このゲート絶縁層5としては、SiOやSiNxが用いられる。SiOやSiNxは、TEOSとOの混合ガス、SiHとNHとNとの混合ガスを用いプラズマCVD法により形成することができる。
【0029】
このゲート絶縁層5は、第1のゲート絶縁層と第2のゲート絶縁層に分けて形成しても良い。この場合、微結晶シリコン層4を形成した後、続けて第1のゲート絶縁層(不図示)を形成する。第1ゲート絶縁層の厚みは、30〜200nmである。第1のゲート絶縁層(不図示)形成後、レジスト(不図示)でパターン形成し、微結晶シリコン層4と第1ゲート絶縁層を同時にパターニングする。その後、微結晶シリコン層4の端部を覆うように、パターン形成された第1ゲート絶縁層上に第2ゲート絶縁層(不図示)を形成する。第2ゲート絶縁層の厚みは100〜300nmである。
【0030】
続いて、Al、Cr,Ti、Mo,Taの単膜やそれらの積層膜からなるゲート電極層を、厚みが100〜600nmで形成する。最後に、ゲート電極層上にレジスト(不図示)でパターンを形成した後、ドライエッチとウェットエッチを組み合わせて、あるいはどちらか一方でエッチングし、ゲート電極6をパターニングする。この時、非晶質シリコン層の領域よりも狭い範囲にゲート電極6をパターニングする。
【0031】
以上、トップゲート型のTFTについて説明してきた。しかし、活性層となる微結晶シリコン層とソース電極およびドレイン電極層が、直接接続する領域と非晶質シリコン層を介して接続する領域とを設けておけば、積層順を変えるだけで、本発明をボトムゲート型TFTに適用することができる。
【0032】
(実施例)
図3(a)に示す、ガラス基板1上にスパッタ法により50nmのMo層2aを堆積させた。続いてプラズマCVD法によりn+ Si層2bを30nm堆積した後、フォトリソグラフィーおよびドライエッチングによりソース電極およびドレイン電極2をパターニングした。その上に、プラズマCVD法により200nmの非晶質シリコン層3を堆積し、再びフォトリソグラフィーおよびドライエッチングによりパターニングを行なった。次に、非晶質シリコン層3の表面に、ドライエッチングと同じガスを用いて界面処理を行い、結晶性シリコン成長核を形成した。このときの非単結晶性シリコンの成膜条件、ドライエッチングの条件、および界面処理の条件は以下のようであった。
【0033】
(成膜条件)
基板サイズ 300×400mm
基板温度 300℃
RFパワー 0.05W/cm2
圧力 1.5torr
SiH 250sccm
2000sccm
(ドライエッチング条件)
CF 100sccm
RFパワー 0.1W/cm2
(界面処理条件)
CF 30sccm
RFパワー 0.05W/cm2
【0034】
さらに、このソース電極およびドレイン電極2と非晶質シリコン層3の上にプラズマCVDにより微結晶シリコン層4を堆積した。ここでは、結晶性シリコン層堆積工程と水素プラズマ照射工程を交互に繰返し行っており、それぞれの工程の条件は以下の通りである。
【0035】
(成膜条件)
基板温度 250℃
RFパワー 0.20W/cm2
圧力 5.0torr
膜厚 50nm
(堆積工程)
SiH 10sccm
3000sccm
(水素プラズマ照射工程)
SiH 0sccm
3000sccm
(工程サイクル)
堆積/水素プラズマ照射 15サイクル
サンプルについては、微結晶シリコン層4を、フォトリソグラフィーとドライエッチングにより島状に形成した。
【0036】
次に、この島状の微結晶シリコン層4上にプラズマCVD法によりゲート絶縁層5としてSiNx膜を200nm堆積した後、最後にMo/Al、50nm/500nmのメタル層を堆積した。(図3(c)参照)。その後、メタル層上にフォトレジストを塗布し、マスク露光を行い、ゲート電極6のパターニングをウェットエッチングにより行った。
【0037】
次に、ソース電極、ドレイン電極部分のコンタクトホールをゲート絶縁層上よりフォトリソグラフィーおよびドライエッチングにより形成した。
【0038】
実施例で作製したTFTの、模式図を図5に示す。
図5(a)は、完成したTFTを上から見た図、図5(b)は図5(a)のA−A’断面図である。本実施例において使用したTFTの寸法は、ソース電極とドレイン電極との間の距離Lsdが30ミクロン、ソース電極およびドレイン電極の幅Wsdが300ミクロンである。
【0039】
また図5(b)中、Lsdより長い分の非晶質シリコン層の長さL1(図中オーバーラップ長、(La−Lsd)/2)は1ミクロン、ゲート電極とソース電極およびドレイン電極のオーバーラップ長L2((Lg−Lsd)/2)は0.5ミクロンとした。従って、ソース電極およびドレイン電極2と微結晶シリコン層4とが直接接触する領域とゲート電極との距離dは、0.5ミクロンである。
【0040】
そして、このようにして形成したTFTについては、結晶性シリコン層が最表面にある状態のサンプルについては結晶性の評価を行ない、TFTとして作成したサンプルについては電気特性を測定した。
【0041】
電気測定には、Agilent社製4155C半導体パラメータアナライザを使用し、作製したTFTは25℃に保たれたステージ上で測定した。
【0042】
測定条件は、ソース電極に0V、ドレイン電極に0.5V、5.0V、20Vをそれぞれ印加した状態でゲート電圧を−10Vから+20Vまでスィープさせた。
【0043】
こうして得られた特性をTFTのVg−Id特性とした。代表的な結果を、図6(a)および図6(b)に実線で示す。
【0044】
[比較例1]
オーバーラップ長(非晶質シリコン)L1を1ミクロン、オーバーラップ長(ゲート電極)L2を3ミクロンとなるようにした以外は、実施例1と同様にしてゲート電極まで形成した。完成したTFTのソース電極とドレイン電極との間の距離Lsdが30ミクロン、ソース電極およびドレイン電極の幅Wsdが300ミクロンとした。得られたTFTを実施例と同様に電気特性の測定し、代表的な結果を図6(a)に破線で示す。
【0045】
図6(a)の実施例と比較例1との結果比較から明らかなように、ゲート電極の長さが非晶質シリコン層の長さよりも短い場合、オフ時のリーク電流は1桁低減できることがわかる。
【0046】
[比較例2]
微結晶シリコン層4とソース電極およびドレイン電極2が直接接触しないようにパターニングを行なった点を除いて、実施例と同様にしてTFTを作成した。このとき、ゲート電極6は、非晶質シリコン層3よりも狭い面積となる。完成したTFTの断面図を図5(c)に示す。オーバーラップ長(非晶質シリコン)L1を10ミクロン、オーバーラップ長(ゲート電極)L2を3ミクロンとした。また、ソース電極とドレイン電極との間の距離Lsdは実施例および比較例1と同様に30ミクロン、ソース電極およびドレイン電極の幅Wsdは300ミクロンである。代表的な結果を、図6(b)に破線で示す。
【0047】
図6(b)から明らかなように、部結晶シリコン層4とソース電極およびドレイン電極2が直接接触しないTFTのオフリーク電流は実施例と同等であるが、オン電流は、実施例の方が約半桁高いものが得られ、特性が改善されることがわかる。
【符号の説明】
【0048】
1 基板
2 ソース電極およびドレイン電極
3 非晶質シリコン層
4 微結晶シリコン層
5 ゲート絶縁層
6 ゲート電極層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に、ソース電極およびドレイン電極と、非晶質シリコン層と、微結晶シリコン層と、ゲート絶縁層と、ゲート電極と、を積層してなる薄膜トランジスタであって、
前記非晶質シリコン層と前記ソース電極およびドレイン電極とが前記微結晶シリコン層を介して接続する領域と、前記非晶質シリコン層と前記ソース電極およびドレイン電極と直接接続する領域と、を有することを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項2】
前記ゲート電極の幅は、前記非晶質シリコン層の幅よりも小さく、前記ソース電極およびドレイン電極の幅は、前記非晶質シリコン層の幅よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−119396(P2012−119396A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265753(P2010−265753)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】