説明

薄膜半導体パターンの製造方法

【課題】高精度で薄膜半導体パターンを形成する方法などを提供する。
【解決手段】フレキソ印刷版上の薄膜半導体パターン形成用インクを被印刷基板上に転写し、インク中の溶剤を乾燥除去、又はインクに光を照射して硬化させ、被印刷基板上に薄膜半導体パターンを形成する方法であって、下記式(1)及び/又は式(2)で表される繰り返し単位からなり、両末端基が水酸基であり、かつ数平均分子量が300〜50,000であるポリカーボネートジオールから製造されるポリマー(a)を含有する樹脂組成物を硬化して得られるフレキソ印刷版を用いる、薄膜半導体パターンの製造方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキソ印刷版を用いて薄膜半導体パターンを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子ペーパーやRFIDタグなどが注目されている。これらには、半導体が必要である。しかし、現在のトランジスタ製造プロセスでは真空プロセスとフォトプロセスが必要であり、その製造コストは高い。このため、これらを現実のものとするには、従来のトランジスタよりも安価かつ大量に生産する必要がある。またフレキシブル基板上にトランジスタを形成することも求められている。
【0003】
このため、印刷法を用いたトランジスタ、特には有機トランジスタが注目されている。(特許文献1)。
有機トランジスタを製造する場合には、半導体を低温で加工することが可能であるので被印刷基板に樹脂フィルムを用いることが可能であり、また、半導体が有機物であるので、これを溶剤に溶解した溶液を印刷インクと同様に用いた印刷法での加工が可能であると考えられる。
【0004】
【特許文献1】特開2003−249656号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、従来から行われているスピンコート法や真空蒸着法により有機トランジスタが作製されており、印刷法については具体的に開示されていない。また、印刷法を用いて有機トランジスタを製造する場合に、印刷インクに用いられる溶剤に対して、実用的に十分な耐溶剤特性を示す印刷版は知られていなかった。
【0006】
本発明は、高精度で薄膜半導体パターンを形成する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、被印刷基板上に薄膜半導体パターン形成用インクを転写して、薄膜半導体パターンを形成する際に、特定の構造を有するポリカーボネートジオールから製造されるポリマーを含有する樹脂組成物を硬化して得られるフレキソ印刷版を用いることによって、高精度で薄膜半導体パターンを形成できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は以下の薄膜半導体パターンの製造方法を提供する。
[1]
フレキソ印刷版上の薄膜半導体パターン形成用インクを被印刷基板上に転写し、転写された薄膜半導体パターン形成用インク中の溶剤を乾燥除去して、又は転写された前記薄膜半導体パターン形成用インクに光を照射して硬化させて、
被印刷基板上に前記薄膜半導体パターン形成用インクを固定化することによって薄膜半導体パターンを形成する方法であって、
下記式(1)及び/又は式(2)で表される繰り返し単位からなり、両末端基が水酸基であり、かつ数平均分子量が300〜50,000であるポリカーボネートジオールから製造されるポリマー(a)を含有する樹脂組成物を硬化して得られるフレキソ印刷版を用いて薄膜半導体パターン形成用インクを被印刷基板上に転写する、薄膜半導体パターンの製造方法。
【化1】

(式中、R1は、炭素数2〜50の直鎖又は分岐した炭化水素基を表し、nは、2〜50の整数を表す。)
【化2】

(式中、R2は、炭素数10〜50の直鎖又は分岐した炭化水素基を表す。)
[2]
前記樹脂組成物が、
前記ポリカーボネートジオールと、当該ポリカーボネートジオールの末端水酸基の当量未満のイソシアネート基当量の多官能イソシアネート化合物及び/又はポリイソシアネート化合物と、イソシアネートアルキルアクリレート及び/又はイソシアネートアルキルメタクリレートとを反応させることにより製造されるポリマー(a)、及び/又は
前記ポリカーボネートジオールと、当該ポリカーボネートジオールの末端水酸基の当量を超えるイソシアネート基当量の多官能イソシアネート化合物及び/又はポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシアルキルアクリレート及び/又はヒドロキシアルキルメタクリレートとを反応させることにより製造されるポリマー(a)を含有する、[1]に記載の薄膜半導体パターンの製造方法。
[3]
前記樹脂組成物が、さらに、重合性不飽和基を有し、数平均分子量が5,000未満である有機化合物(b)を含有する、[1]又は[2]に記載の薄膜半導体パターンの製造方法。
[4]
前記樹脂組成物が、さらに、無機系微粒子(c)を含有する、[1]〜[3]のいずれかに記載の薄膜半導体パターンの製造方法。
[5]
前記樹脂組成物が感光性樹脂組成物である、[1]〜[4]のいずれかに記載の薄膜半導体パターンの製造方法。
[6]
前記フレキソ印刷版が、フレキソ印刷原版に印刷パターンをレーザー彫刻することにより得られる、[1]〜[5]のいずれかに記載の薄膜半導体パターンの製造方法。
[7]
前記フレキソ印刷版が、シート状又は円筒状に形成される、[1]〜[6]のいずれかに記載の薄膜半導体パターンの製造方法。
[8]
前記フレキソ印刷版が、前記薄膜半導体パターン形成用インク中の前記溶剤に対する耐性を溶剤浸漬膨潤テストで評価した場合に、前記溶剤への浸漬前後で10質量%以下の質量変化率を示す、[1]〜[7]のいずれかに記載の薄膜半導体パターンの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の形成方法によれば、高精度で薄膜半導体パターンを形成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、「本実施の形態」と略記する。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施の形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0011】
本実施の形態におけるフレキソ印刷版は、下記式(1)及び/又は式(2)で表される繰り返し単位からなり、両末端基が水酸基であり、かつ数平均分子量が300〜50,000であるポリカーボネートジオールから製造されるポリマー(a)を含有する樹脂組成物を硬化して得られる。好ましくは、フレキソ印刷版は、前記樹脂組成物を含む樹脂組成物層を硬化した樹脂硬化物層を含む。本実施の形態におけるフレキソ印刷版が、前記樹脂組成物を含むことにより、薄膜半導体パターン形成用インク中の各種溶剤に対する卓越した耐溶剤性を発現させることができる。
【0012】
【化3】

(式中、R1は、炭素数2〜50の直鎖又は分岐した炭化水素基を表し、nは、2〜50の整数を表す。)
【0013】
【化4】

(式中、R2は、炭素数10〜50の直鎖又は分岐した炭化水素基を表す。)
【0014】
前記ポリカーボネートジオールは、例えば、特公平5−29648号公報などを参照して、前記式(1)又は式(2)にそれぞれ対応するジオール化合物であるHO−(R1−O)n−H又はHO−R2−OHより、公知の方法などにより製造することができる。
【0015】
数平均分子量(Mn)とは、末端基濃度から算出される分子量を意味し、ポリカーボネートジオールのOH価([OHV])から、下記実施例中に記載した計算式により算出することができる。
【0016】
前記式(1)の炭素数2〜50の直鎖又は分岐した炭化水素基としては、例えば、炭素数2〜50の直鎖のアルキレン基などが好ましい。入手容易性や取扱い容易性などの観点から、炭素数2〜20の直鎖のアルキレン基などが好ましい。
前記式(2)の炭素数10〜50の直鎖又は分岐した炭化水素基としては、例えば、炭素数10〜50の直鎖のアルキレン基などが好ましい。入手容易性や取扱い容易性などの観点から、炭素数12〜40の直鎖のアルキレン基などが好ましい。
【0017】
前記式(1)のnとしては、入手容易性や取扱い容易性などの観点から、2〜30の整数であることが好ましい。
【0018】
前記分岐した炭化水素基としては、主鎖の1つ以上の水素原子がアルキル基で置換された構造のものが好ましい。
【0019】
前記ポリカーボネートジオールは、両末端が水酸基である。両末端が水酸基であるのは、耐溶剤性の高いフレキソ印刷版を製造するのに好適な樹脂組成物の製造に際して、ポリカーボネートジオールと他の機能性分子などとを結合するためである。また、ポリカーボネートジオールは数平均分子量が300〜50,000である。数平均分子量を300以上とすることが、耐溶剤性の観点から好ましい。また、数平均分子量を50,000以下とすることにより、ポリカーボネートジオールの工業的製造を良好に行うことができる。
【0020】
ポリカーボネートジオールとしては、下記式(3)又は(4)で表される数平均分子量が300〜50,000である化合物が好ましい。
【0021】
【化5】

(式中、R1は、炭素数2〜50の直鎖又は分岐した炭化水素基を表し、nは、2〜50の整数を表し、aは、1以上の整数を表す。)
【0022】
【化6】

(式中、R2は、炭素数10〜50の直鎖又は分岐した炭化水素基を表し、bは、1以上の整数を表す。)
【0023】
前記ポリマー(a)は、前記ポリカーボネートジオールから製造されるものであれば特に制限はされないが、ポリカーボネートジオールの末端水酸基と他の化合物との間で化学結合の形成を伴って製造されるポリマーであって、かつ重合性不飽和基を含むポリマーであることが好ましい。化学結合及び重合性不飽和基の種類に制限はされないが、化学結合としては、ウレタン結合などが好ましく、重合性不飽和基としては、ラジカル重合又は付加重合に関与し得る二重結合などが好ましい。フレキソ印刷版を製造するに際し、ポリマー(a)が様々な分子と連結することができることから、ポリマー(a)が重合性不飽和基を有することが好ましい。
【0024】
ポリマー(a)としては、ポリカーボネートジオールの末端水酸基が、多官能イソシアネート化合物、ポリイソシアネート化合物、イソシアネートアルキルアクリレート及びイソシアネートアルキルメタクリレートなどのイソシアネート基を有する化合物などと化学結合を伴って製造されるポリマーであることが好ましく、アクリル基及びメタクリル基などの重合性不飽和基を有するポリマーであることが好ましい。
【0025】
ポリマー(a)の好ましい第1の例は、ポリカーボネートジオールの末端水酸基を、当該ポリカーボネートジオールの末端水酸基の当量未満のイソシアネート基当量の多官能イソシアネート化合物及び/又はポリイソシアネート化合物と、イソシアネートアルキルアクリレート及び/又はイソシアネートアルキルメタクリレートと反応させることにより製造されるポリマーなどが挙げられる。
【0026】
多官能イソシアネート化合物及び/又はポリイソシアネート化合物としては、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物であれば特に制限はされない。ジイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ジイソシアネートとして、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネートなど;脂肪族又は脂環式ジイソシアネートとして、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。トリイソシアネート化合物としては、例えば、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリ(イソシアネートフェニル)トリホスフェートなどが挙げられる。さらに、多官能ポリイソシアネートとしては、例えば、ポリメリック(ジフェニルメタンジイソシアネート)などが挙げられる。フレキソ印刷版の耐溶剤性の観点から、ジイソシアネート化合物が好ましく、芳香族ジイソシアネートがより好ましく、トリレンジイソシアネートがさらに好ましい。
【0027】
ポリカーボネートジオールの末端水酸基の当量未満のイソシアネート基当量とは、多官能イソシアネート化合物及び/又はポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の当量(mol)が、ポリカーボネートジオールの末端水酸基の当量(mol)未満であることを意味する。該イソシアネート基当量としては、ポリカーボネートジオールの末端水酸基の当量未満であれば制限はされないが、ポリカーボネートジオールの末端水酸基の当量の50〜95%当量であることが好ましく、60〜90%当量であることがより好ましい。
【0028】
イソシアネートアルキルアクリレート及び/又はイソシアネートアルキルメタクリレートとしては、例えば、該アクリレート化合物中のアルキル部分が炭素数2〜10のアルキレン基などである化合物が好ましく、炭素数2又は3のアルキレン基などである化合物がより好ましい。イソシアネートアルキルアクリレート及び/又はイソシアネートアルキルメタクリレートの具体例としては、イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、イソシアネートプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0029】
ポリマー(a)の好ましい第1の例における具体例としては、極めて優れた耐溶剤性を示すことから、下記式(5)で表されるポリマーなどが挙げられる。
【化7】

(式中、Rpは、前記式(1)及び/又は式(2)で表される繰り返し単位からなり、両末端基が水酸基であり、かつ数平均分子量が300〜50,000であるポリカーボネートジオールから両末端水酸基を除いた残基を表し、Rqは、ジイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基を表し、Rrは、は、イソシアネートアルキルアクリレート及び/又はイソシアネートアルキルメタクリレートのアルキル部分を表し、RS、RTは、各々独立して、メチル基又は水素原子を表し、Lは、1以上の整数を表す。)
【0030】
ポリマー(a)の好ましい第2の例は、ポリカーボネートジオールの末端水酸基を、当該ポリカーボネートジオールの末端水酸基の当量を超えるイソシアネート基当量の多官能イソシアネート化合物及び/又はポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシアルキルアクリレート及び/又はヒドロキシアルキルメタクリレートと反応させることにより製造されるポリマーなどが挙げられる。
【0031】
多官能イソシアネート化合物及び/又はポリイソシアネート化合物としては、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物であれば特に制限はされない。ジイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ジイソシアネートとして、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネートなど;脂肪族又は脂環式ジイソシアネートとして、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。トリイソシアネート化合物としては、例えば、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリ(イソシアネートフェニル)トリホスフェートなどが挙げられる。さらに、多官能ポリイソシアネートとしては、例えば、ポリメリック(ジフェニルメタンジイソシアネート)などが挙げられる。フレキソ印刷版の耐溶剤性の観点から、ジイソシアネート化合物が好ましく、芳香族ジイソシアネートがより好ましく、トリレンジイソシアネートがさらに好ましい。
【0032】
ポリカーボネートジオールの末端水酸基の当量を超えるイソシアネート基当量とは、多官能イソシアネート化合物及び/又はポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の当量(mol)が、ポリカーボネートジオールの末端水酸基の当量(mol)を超えることを意味する。該イソシアネート基当量としては、ポリカーボネートジオールの末端水酸基の当量を超えていれば制限はされないが、ポリカーボネートジオールの末端水酸基の当量の105〜150%当量であることが好ましく、110〜140%当量であることがより好ましい。
【0033】
ヒドロキシアルキルアクリレート及び/又はヒドロキシアルキルメタクリレートとしては、例えば、該アクリレート化合物中のアルキル部分が炭素数2〜10のアルキレン基などである化合物が好ましく、炭素数2又は3のアルキレン基などである化合物がより好ましい。ヒドロキシアルキルアクリレート及び/又はヒドロキシアルキルメタクリレートの具体例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0034】
ポリマー(a)の好ましい第2の例における具体例としては、極めて優れた耐溶剤性を示すことから、下記式(6)で表されるポリマーなどが挙げられる。
【0035】
【化8】

(式中、Rpは、前記式(1)及び/又は式(2)で表される繰り返し単位からなり、両末端基が水酸基であり、かつ数平均分子量が300〜50,000であるポリカーボネートジオールから両末端水酸基を除いた残基を表し、Rqは、ジイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基を表し、Ruは、ヒドロキシアルキルアクリレート及び/又はヒドロキシアルキルメタクリレートのアルキル部分を表し、RS、RTは、各々独立して、メチル基又は水素原子を表し、mは、1以上の整数を表す。)
【0036】
前記式(5)及び式(6)において、Rpは、下記式(3)及び/又は式(4)で表される化合物から両末端水酸基を除いた残基であることが好ましい。
【0037】
【化9】

(式中、R1は、炭素数2〜50の直鎖又は分岐した炭化水素基を表し、nは、2〜50の整数を表し、aは、1以上の整数を表す。)
【0038】
【化10】

(式中、R2は、炭素数10〜50の直鎖又は分岐した炭化水素基を表し、bは、1以上の整数を表す。)
【0039】
前記式(5)及び式(6)において、Rqとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートからイソシアネート基を除いた残基又はヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネートなどの脂肪族又は脂環式ジイソシアネートからイソシアネート基を除いた残基などが挙げられる。これらの中でも芳香族ジイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基などが好ましく、より好ましくはトリレンジイソシアネートからイソシアネート基を除いた残基などが挙げられる。
【0040】
前記式(5)及びは式(6)において、Rr、Ruとしては、炭素数2〜10のアルキレン基などが好ましく、より好ましくは、炭素数2〜3のアルキレン基などである。
【0041】
ポリマー(a)の製造方法としては、特に制限はされないが、例えば、以下の方法などによりポリマー(a)を製造することができる。前記ポリカーボネートジオールと、該ポリカーボネートジオールの末端水酸基の当量未満のイソシアネート基当量の多官能イソシアネート化合物及び/又はポリイソシアネート化合物と、ウレタン化触媒とを50〜90℃で1〜5時間反応させた後、イソシアネートアルキル(メタ)アクリレートとウレタン化触媒とを加え、50〜90℃で1〜5時間反応させることにより、ポリマー(a)を製造することができる。
また、前記ポリカーボネートジオールと、該ポリカーボネートジオールの末端水酸基の当量を超えるイソシアネート基当量の多官能イソシアネート化合物及び/又はポリイソシナネート化合物と、ウレタン化触媒とを50〜90℃で1〜5時間反応させた後、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとウレタン化触媒とを加え、50〜90℃で1〜5時間反応させることにより、ポリマー(a)を製造することができる。
【0042】
本実施の形態における樹脂組成物は、さらに重合性不飽和基を有する数平均分子量が50以上5,000未満である有機化合物(b)を含有することが好ましい。
本実施の形態における重合性不飽和基とは、ラジカル重合又は付加重合に関与する不飽和基を意味する。ラジカル重合反応に関与する重合性不飽和基としては、例えば、アクリル基、メタクリル基などが好ましく、付加重合反応に関与する重合性不飽和基としては、例えば、エポキシ基、オキセタン基、ビニルエーテル基などが好ましい。
【0043】
有機化合物(b)の具体例としては、エチレン、プロピレン、スチレン、ジビニルベンゼンなどのオレフィン類;(メタ)アクリル酸及びその誘導体;ハロオレフィン類、アクリルニトリルなどの不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド及びその誘導体;アリルアルコール、アリルイソシアネートなどのアリル化合物;無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸などの不飽和ジカルボン酸及びその誘導体;酢酸ビニル類;N−ビニルピロリドン;N−ビニルカルバゾールなどが挙げられる。
有機化合物(b)として、目的に応じて1種又は2種以上の有機化合物を併用して用いることができる。
【0044】
有機化合物(b)としては、例えば、(メタ)アクリル酸又はその誘導体が好ましい。(メタ)アクリル酸の誘導体の例としては、以下のアルコール性水酸基を有する化合物などとのエステルなどが挙げられる。該化合物としては、例えば、シクロアルキルアルコール、ビシクロアルキルアルコール、シクロアルケニルアルコール、ビシクロアルケニルアルコールなどの脂環式の骨格を有する化合物;ベンジルアルコール、フェノール、フルオレニルアルコールなどの芳香族の骨格を有する化合物;アルキルアルコール、ハロゲン化アルキルアルコール、アルコキシアルキルアルコール、フェノキシアルキルアルコール、ヒドロキシアルキルアルコール、アミノアルキルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、アリルアルコールなどが挙げられる。また、(メタ)アクリル酸の誘導体の例としては、グリシドール、アルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコール、(アルキル/アリルオキシ)ポリアルキレングリコールやトリメチロールプロパンなどの多価アルコールなどとのエステルなども挙げられる。また、(メタ)アクリル酸の誘導体が芳香族の骨格を有する化合物とのエステルである化合物の場合には、窒素、硫黄などをヘテロ原子として含有した複素芳香族化合物とのエステルなどである有機化合物も挙げられる。
有機化合物(b)の具体例として、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールブチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールフェニルエーテル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0045】
有機化合物(b)として、開環付加重合反応するエポキシ基を有する化合物が好ましい。開環付加反応するエポキシ基を有する化合物としては、種々のジオールやトリオールなどのポリオールにエピクロルヒドリンを反応させて得られる化合物、分子中のエチレン結合に過酸を反応させて得られるエポキシ化合物などが挙げられる。
【0046】
具体的には、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、
グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSプロピレンオキサイドジグリシジルエーテル、水添化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドが付加した化合物のジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリ(プロピレングリコールアジペート)ジオールジグリシジルエーテル、ポリ(エチレングリコールアジペート)ジオールジグリシジルエーテル、ポリ(カプロラクトン)ジオールジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、1−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−1’−メチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、アジピン酸ビス[1−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシル]エステル、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ポリブタジエンやポリイソプレンなどのポリジエンに過酢酸を反応させて得られるポリエポキシ化合物、エポキシ化大豆油などが挙げられる。
【0047】
本実施の形態における樹脂組成物は、フレキソ印刷原版とした場合、各種溶剤に対する優れた耐溶剤性に加え、レーザーで直接レリーフ画像を形成する手法において重要な特性である、レーザー彫刻性に優れるという特徴を併せ持つ。レーザー彫刻性をより向上させるためには、樹脂組成物が、さらに無機系微粒子(c)を含有することが好ましい。無機系微粒子(c)の材質、形態などに制限はされないが、粒子中に微小細孔又は微小な空隙を有するものがより好ましい。無機系微粒子(c)には、フレキソ印刷原版がレーザーによって分解されて発生する液状ガスを効果的に吸収除去する働きがあるので、樹脂組成物に無機系微粒子(c)を含有させることにより、レーザー彫刻によるレリーフ画像の精度が向上するのみならず、レーザー彫刻後の洗浄操作が極めて簡便になる。
【0048】
無機系微粒子(c)の大きさに制限はされないが、平均粒子径が0.01〜100μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜20μmであり、さらに好ましくは1〜10μmである。無機系微粒子(c)の平均細孔径に制限はされないが、1〜1,000nmであり、より好ましくは2〜200nmであり、さらに好ましくは2〜50nmである。無機系微粒子(c)の細孔容積に制限はされないが、0.01〜10ml/gが好ましく、より好ましくは0.1〜5ml/gである。無機系微粒子(c)の比表面積に制限はされないが、1〜1,500m2/gが好ましく、より好ましくは10〜800m2/gである。
【0049】
無機系微粒子(c)の形状に制限はされないが、球状、扁平状、針状、無定形、又は表面に突起のある粒子などを使用することができる。また、粒子の内部が空洞になっている粒子、シリカスポンジなどの均一な細孔径を有する球状顆粒体なども使用することができる。無機系微粒子としては、多孔質無機微粒子、無孔質無機微粒子のいずれも使用することができ、例えば、多孔質シリカ、メソポーラスシリカ、シリカ−ジルコニア多孔質ゲル、メソポーラスモレキュラーシーブ、ポーラスアルミナ、多孔質ガラス、アルミナ、シリカ、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、酸化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化バナジウム、酸化錫、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、ホウ素酸アルミニウム、酸化ニッケル、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化鉄、酸化セリウムなどを用いることができる。また、層状粘土化合物などのように、層間に数nm〜100nmの空隙が存在するものも無機系微粒子として用いることができる。
【0050】
本実施の形態における樹脂組成物は、さらに、光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤は公知のものから適宜選択すればよく、例えば、高分子学会編「高分子データ・ハンドブック−基礎編」(1986年、培風館発行)に例示されているラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合などの重合開始剤などを使用することができる。
【0051】
光重合開始剤を用いて光重合により樹脂組成物の架橋を行うことは、貯蔵安定性を保ちながら、生産性よくフレキソ印刷原版を生産する方法として有用である。
【0052】
光重合開始剤として使用することの出来る公知の重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類;2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4’−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノンなどのアセトフェノン類;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシル酸メチル、ベンゾフェノン、ベンジル、ジアセチル、ジフェニルスルフィド、エオシン、チオニン、アントラキノン類などの光ラジカル重合開始剤;光を吸収して酸を発生する芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩などの光カチオン重合開始剤;光を吸収して塩基を発生する光アニオン重合開始剤などを例示することができる。
【0053】
樹脂組成物の組成に制限はされないが、フレキソ印刷版の耐溶剤性の観点から、前記ポリカーボネートジオ―ルから製造されるポリマー(a)100質量部に対して、重合性不飽和基を有する有機化合物(b)は5〜200質量部、無機系微粒子(c)は1〜100質量部であることが好ましい。また、フレキソ印刷版の耐溶剤性の観点から、前記ポリカーボネートジオ―ルから製造されるポリマー(a)100質量部に対して、重合性不飽和基を有する有機化合物(b)は10〜180質量部、無機系微粒子(c)は1〜80質量部であることがより好ましい。さらに、フレキソ印刷原版製造の効率の観点から、光重合開始剤を1〜100質量部含むことが好ましく、フレキソ印刷版の耐溶剤性の観点から、光重合開始剤を1〜80質量部含むことがより好ましい。
【0054】
樹脂組成物には、用途や目的に応じて重合禁止剤、紫外線吸収剤、染料、滑剤、界面活性剤、可塑剤、香料などを添加することができる。その総添加量は樹脂組成物100質量部に対して10質量部以下の範囲であることが好ましい。
【0055】
樹脂組成物をシート又は円筒状に成形する方法に制限はされないが、既存の樹脂組成物の成形方法を用いることができる。例えば、ポンプや押し出し機などの機械で樹脂組成物をノズルやダイスから押し出し、ブレードで厚みを合わせる方法(注型法);ロールによりカレンダー加工して厚みを合わせる方法などが例示できる。樹脂組成物の性能を落とさない範囲で加熱しながら成形を行うことも可能である。また、必要に応じて圧延処理、研削処理などを施してもよい。通常は、PET(ポリエチレンテレフタレート)やニッケルなどの素材からなるバックフィルムと言われる下敷きの上に樹脂組成物を成形するが、印刷機のシリンダー上に直接成形することも出来る。その場合、継ぎ目の無いシームレススリーブを成形することが出来る。また、スリーブ成形・彫刻装置(液状の感光性樹脂組成物を円筒状支持体上に塗布し、光を照射して液状感光性樹脂組成物を架橋させる装置内に、レーザー彫刻用のレーザー光源を組み込んだもの)を用いてフレキソ印刷版を成形することもできる。このような装置を用いた場合、スリーブを成形した後に直ちにレーザー彫刻してフレキソ印刷版を成形することが出来るので、成形加工に数週間の期間を必要としていた従来のゴムスリーブでは到底考えられない短時間加工が実現可能となる。
【0056】
本実施の形態における薄膜半導体パターン形成用インクに用いられる有機半導体材料に特に制限はされないが、π共役系材料などが用いられる。例えば、ポリピロール、ポリ(N−置換ピロール)、ポリ(3−置換ピロール)、ポリ(3,4−二置換ピロール)などのポリピロール類、ポリチオフェン、ポリ(3−置換チオフェン)、ポリ(3,4−二置換チオフェン)、ポリベンゾチオフェンなどのポリチオフェン類、ポリイソチアナフテンなどのポリイソチアナフテン類、ポリチェニレンビニレンなどのポリチェニレンビニレン類、ポリ(p−フェニレンビニレン)などのポリ(p−フェニレンビニレン)類、ポリアニリン、ポリ(N−置換アニリン)、ポリ(3−置換アニリン)、ポリ(2,3−置換アニリン)などのポリアニリン類、ポリアセチレンなどのポリアセチレン類、ポリジアセチレンなどのポリジアセチレン類、ポリアズレンなどのポリアズレン類、ポリピレンなどのポリピレン類、ポリカルバゾール、ポリ(N−置換カルバゾール)などのポリカルバゾール類、ポリセレノフェンなどのポリセレノフェン類、ポリフラン、ポリベンゾフランなどのポリフラン類、ポリ(p−フェニレン)などのポリ(p−フェニレン類)、ポリインドールなどのポリインドール類、ポリピリタジンなどのポリピリタジン類、ナフタセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、ジベンゾペンタセン、テトラベンゾペンタセン、ピレン、ジベンゾピレン、クリセン、ペリレン、コロネン、テリレン、オバレン、クオテリレン、サーカムアントラセンなどのポリアセン類及びポリアセン類の炭素の一部をN、S,Oなどの原子、カルボニル基などの官能基に置換した誘導体(トリフェノジオキサン、トリフェノジチアジン、ヘキサセン−6、15−キノンなど)、ポリビニルカルバゾール、ポリフェニレンスルフィド、ポリビニレンスルフィドなどのポリマーや特開平11−195790号公報に開示された多環縮合体などを用いることができる。
【0057】
また、これらのポリマーと同じ繰り返し単位を有する、例えばチオフェン6量体であるα−セクシチオフェン、α、ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α、ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α、ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、スチリルベンゼン誘導体などのオリゴマーも好適に用いることができる。
【0058】
さらに銅フタロシアニンや特開平11−251601号公報に開示されたフッ素置換銅フタロシアニンなどの金属フタロシアニン類、ナフタレン1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド、N,N’−ビス(4−トリフルオロメチルベンジル)ナフタレン1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミドとともに、N,N’−ビス(1H,1H−ペルフルオロオクチル)、N、N’−ビス(1H,1H−ペルフルオロブチル)及びN,N’−ジオクチルナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド誘導体、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸ジイミドなどのナフタレンテトラカルボン酸ジイミド類、及びアントラセン−2,3,6,7−テトラカルボン酸ジイミドなどのアントラセンテトラカルボン酸ジイミド類などの縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、C60、C70、C76、C78、C84などフラーレン類、SWNTなどのカーボンナノチューブ、メロシアニン色素類、ヘミシアニン色素類などの色素などが挙げられる。
【0059】
これらのπ共役系材料のうちでも、チオフェン、ビニレン、チェニレンビニレン、フェニレンビニレン、p−フェニレン、これらの置換体又はこれらの2種以上を繰り返し単位とし、かつ繰り返し単位の数nが4〜10であるオリゴマーもしくは該繰り返し単位の数nが20以上であるポリマー、ペンタセンなどの縮合多環芳香族化合物、フラーレン類、縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、金属フタロシアニンよりなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。
【0060】
また、その他の有機半導体材料としては、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ニスエチレンテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、BEDTTTF−ヨウ素錯体、TCNQ−ヨウ素錯体、などの有機分子錯体も用いることが出来る。さらにポリシラン、ポリゲルマンなどのσ共役系ポリマーや特開2000−260999号公報に開示された有機・無機混成材料も用いることができる。
【0061】
薄膜半導体に、例えば、アクリル酸、アセトアミド、ジメチルアミノ基、シアノ基、カルボキシル基、ニトロ基などの官能基を有する材料や、ベンゾキノン誘導体、テトラシアノエチレン及びテトラシアノキノジメタンやそれらの誘導体などのように電子を受容するアクセプターとなる材料や、例えば、アミノ基、トリフェニル基、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、フェニル基などの官能基を有する材料、フェニレンジアミンなどの置換アミン類、アントラセン、ベンゾアントラセン、置換ベンゾアントラセン類、ピレン、置換ピレン、カルバゾール及びその誘導体、テトラチアフルバレンとその誘導体などのように電子の供与体であるドナーとなるような材料を含有させ、いわゆるドーピング処理を施してもよい。
【0062】
前記ドーピング処理とは、電子授与性分子(アクセプター)又は電子供与性分子(ドナー)をドーパントとして本実施の形態における薄膜半導体に導入することを意味する。従って、ドーピング処理が施された薄膜半導体は、前記縮合多環芳香族化合物などの有機半導体材料とドーパントを含有する薄膜半導体である。ドーパントとしてアクセプター、ドナーのいずれも使用可能であり、公知の材料、プロセスを用いることができる。
【0063】
薄膜半導体パターン形成用インクに用いる溶剤としては、有機半導体材料の種類によって異なるが、有機半導体材料を溶解させるものであれば特に制限されるものではないが、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン,n−ブチルベンゼンなどの炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサンなどのハロゲン系溶剤、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどのエーテル系溶剤などが挙げられる。有機半導体材料の化学構造や分子量にもよるが、通常はこれらの溶剤に0.1質量%以上の該材料を溶解させることができる。これらの溶剤は、単独又は2以上の溶剤を混合して使用することができる。
【0064】
薄膜半導体パターン形成用インクを光を照射させて硬化させる場合には、該インク中に、光重合性モノマーを含有させてもよい。光重合性モノマーとしては、例えば、ウレタンアクリレートやエポキシアクリレートなどが挙げられる。
【0065】
本実施の形態における薄膜半導体パターン層の膜厚としては、特に制限はされないが、得られたトランジスタの特性は、有機半導体材料からなる活性層の膜厚に大きく左右される場合が多く、その膜厚は、有機半導体材料によりことなるが、一般に、1μm以下、好ましくは10〜300nmが好ましい。
【0066】
本実施の形態におけるフレキソ印刷版の薄膜半導体パターン形成用インクに含有される溶剤に対する耐溶剤性は、溶剤浸漬膨潤テストにて評価することができる。前記溶剤への浸漬前後におけるフレキソ印刷原版の質量変化率が10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0067】
溶剤浸漬膨潤テストは、テストサンプルを室温において24時間、溶剤に浸漬して実施される。浸漬前後でフレキソ印刷原版の質量変化率が10質量%以下であれば、フレキソ印刷版の寸法変化が小さく、微細なパターンのフレキソ印刷及び薄膜半導体パターンの均一塗布が可能となる。また、質量変化率が10質量%以下であれば、フレキソ印刷版の寸法安定性を確保でき、フレキソ印刷版の耐久性も良好となり、繰り返しの印刷工程に耐えることができる。
【0068】
レーザー彫刻によりフレキソ印刷原版表面に印刷パターンを形成する場合には、形成される印刷パターンの深さは、1μm以上1,000μm以下が好ましい。より好ましくは5μm以上700μm以下であり、さらに好ましくは20μm以上500μm以下である。印刷パターンの深さが1μm以上であれば、フレキソ印刷版から転写される薄膜半導体パターン形成用インクを被印刷基板上に保持することができ、印刷パターンの深さが1000μm以下であれば、印刷パターンが印刷工程中に変形したり破壊されたりすることがないため好ましい。
【0069】
本実施の形態の薄膜半導体パターンの製造方法は、フレキソ印刷版上の薄膜半導体パターン形成用インクを被印刷基板上に転写し、転写された薄膜半導体パターン形成用インク中の溶剤を乾燥除去して、又は転写された薄膜半導体パターン形成用インクに光を照射して硬化させて、
被印刷基板上に薄膜半導体パターン形成用インクを固定化することによって薄膜半導体パターンを形成する方法であって、
前記式(1)及び/又は式(2)で表される繰り返し単位からなり、両末端基が水酸基であり、かつ数平均分子量が300〜50,000であるポリカーボネートジオールから製造されるポリマー(a)を含有する樹脂組成物を硬化して得られるフレキソ印刷版を用いて薄膜半導体パターン形成用インクを被印刷基板上に転写する、方法である。
【0070】
本実施の形態の形成方法における、フレキソ印刷版上の薄膜半導体パターン形成用インクを被印刷基板上に転写する方法としては、特に制限はされないが、凹凸のあるフレキソ印刷版の凸部の表面に、インキ供給ロールなどで前記インクを供給し、次に、フレキソ印刷版を被印刷基板に接触させて、凸部表面の前記インクを被印刷基板に転移させて行う方法などが挙げられる。
【0071】
本実施の形態の形成方法における、被印刷基板上に薄膜半導体パターン形成用インクを固定化する方法の第1の態様としては、前記方法により転写された前記インク中の溶剤を乾燥除去して、被印刷基板上に薄膜半導体パターン形成用インクを固定化する方法である。
前記インク中の溶剤を乾燥除去して、前記インクを固定化させる方法としては、例えば、窒素ガスなどの不活性ガスの存在下で熱処理することにより、前記溶剤を蒸気化して乾燥する方法などが挙げられる。
【0072】
本実施の形態の形成方法における、被印刷基板上に薄膜半導体パターン形成用インクを固定化する方法の第2の態様としては、前記方法により転写された前記インクに光を照射して硬化させて、被印刷基板上に薄膜半導体パターン形成用インクを固定化する方法である。
前記インクに光を照射して硬化させて固定化させる方法としては、例えば、前記インクに配合した(メタ)アクリル酸誘導体などの光重合性モノマーを光で硬化させる方法などが挙げられる。
【実施例】
【0073】
本実施の形態をさらに詳細に説明するために、以下に、実施例及び比較例を示すが、これらの実施例は本実施の形態の説明及びそれによって得られる効果などを具体的に示すものであって、本実施の形態の範囲をなんら制限するものではない。なお、以下の実施例及び比較例における諸特性は、下記の方法に従って測定した。
【0074】
<測定方法>
1.ポリカーボネートジオールのOH価
無水酢酸12.5gをピリジン50mlでメスアップしアセチル化試薬を調製した。100mlナスフラスコに、サンプルを1.0g精秤した。アセチル化試薬2mlとトルエン4mlをホールピペットで添加後、冷却管を取り付けて、100℃で1時間撹拌加熱した。蒸留水1mlをホールピペットで添加、さらに10分間加熱撹拌した。
2〜3分間冷却後、エタノールを5ml添加し、指示薬として1%フェノールフタレイン/エタノール溶液を2〜3滴入れた後に、0.5mol/lエタノール性水酸化カリウムで滴定した。
ブランク試験としてアセチル化試薬2ml、トルエン4ml、蒸留水1mlを100mlナスフラスコに入れ、10分間加熱撹拌した後、同様に滴定を行った。この結果をもとに、下記計算式(i)を用いてOH価を計算した。
【0075】
[数1]
OH価(mg−KOH/g)={(b−a)×28.05×f}/e (i)
a:サンプルの滴定量(ml)
b:ブランク試験の滴定量(ml)
e:サンプル質量(g)
f:滴定液のファクター
【0076】
2.ポリカーボネートジオールの数平均分子量
実施例及び比較例中のポリカーボネートジオールの末端は、13C−NMR(270MHz)の測定により、実質的に全てがヒドロキシル基であった。また、ポリカーボネートジオール中の酸価をKOHによる滴定により測定したところ、実施例及び比較例の全てにおいて、酸価が0.01以下であった。
そこで、得られたポリマーの数平均分子量を下記計算式(ii)により求めた。
【0077】
[数2]
数平均分子量Mn=2/(OH価×10−3/56.11) (ii)
【0078】
3.フレキソ印刷原版の質量変化率
溶剤に対するフレキソ質量変化率については、フレキソ印刷原版を1cm×2cmに切り、常温の各溶剤中に24時間浸漬させ、下記計算式(iii)を用いて質量変化率を求めた。
【0079】
[数3]
質量変化率(%)={(浸漬後の質量−浸漬前の質量)/浸漬前の質量}×100
(iii)
【0080】
4.フレキソ印刷原版のレーザー彫刻性
炭酸ガスレーザー彫刻機(出力12ワット、商標Laser Pro Venus、GCC社製)を用いてフレキソ印刷原版のレーザー彫刻を行った。彫刻は、200μm幅の凸線による線画を含むパターンを作成して実施した。彫刻深さは400μmとした。レーザー彫刻による粘稠性液状カス発生の有無及び線画の鮮明性を目視判定した。
【0081】
〔合成例1〕
規則充填物ヘリパックパッキンNo.3を充填した、充填高さ300mm、内径30mmの蒸留塔、及び分留頭を備えた500ml四口フラスコに、ジエチレングリコール214g(2.01mol)、エチレンカーボネート186g(2.12mol)を仕込み、70℃で撹拌溶解し、系内を窒素置換した後、触媒としてテトラブトキシチタンを0.177g加えた。このフラスコを、フラスコの内温が145〜150℃、圧力が2.5〜3.5kPaとなるように、分留頭から還流液の一部を抜き出しながら、オイルバスで加熱し、22時間反応した。その後、充填式蒸留塔を外して、単蒸留装置に取り替え、フラスコの内温を170℃に上げ、圧力を0.2kPaまで落として、フラスコ内に残ったジエチレングリコール及びエチレンカーボネートを1時間かけて留去した。その後、フラスコの内温170℃、圧力0.1kPaでさらに5時間反応した。この反応により、室温で粘稠な液状のポリカーボネートジオールが174g得られた。得られたポリカーボネートジオールのOH価は60.9(数平均分子量Mn=1,843)であった。
撹拌機を備えた300mlのセパラブルフラスコにこのポリカーボネートジオール65.0g、リン酸モノブチル0.05gを入れ、80℃で3時間撹拌することにより、テトラブトキシチタンを失活させた。その後、トリレンジイソシアネート4.63g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.07g、アジピン酸0.01g、ジ−n−ブチルスズジラウレート0.001gを加えて、乾燥空気雰囲気下、80℃で3時間撹拌した。その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート2.77g、ジ−n−ブチルスズジラウレート0.001gを加えて、乾燥空気雰囲気下、80℃で2時間撹拌した。この段階で、ポリカーボネートジオールの末端水酸基がウレタン結合により連結され、かつ、二重結合を有するポリマーが得られたことを赤外分光分析により確認した。
その後、エチレングリコールフェニルエーテルメタクリレート10.74g、トリメチロールプロパントリメタクリレート5.96g、シリカゲルC−1504(富士シリシア化学株式会社)5.55g、シリコーンオイルKF−410(信越化学工業株式会社)1.21g、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.72g、ベンゾフェノン1.21g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.72g、リン酸トリフェニル2.17g、サノールLS−785(三共株式会社)1.21gを加えて80℃で撹拌しながら、13kPaに減圧して脱泡し、室温で粘稠な液体状の樹脂組成物を得た。
【0082】
〔合成例2〕
撹拌機を備えた300mlのセパラブルフラスコに合成例1のポリカーボネートジオール65.0g、リン酸モノブチル0.05gを入れ、80℃で3時間撹拌することにより、テトラブトキシチタンを失活させた。その後、トリレンジイソシアネート8.16g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.08g、アジピン酸0.01g、ジ−n−ブチルスズジラウレート0.001gを加えて、乾燥空気雰囲気で、80℃で3時間撹拌した。その後、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート6.66g、ジ−n−ブチルスズジラウレート0.001gを加えて、乾燥空気雰囲気で、80℃で2時間撹拌した。この段階で、ポリカーボネートジオールの末端水酸基がウレタン結合により連結され、かつ、二重結合を有するポリマーが得られたことを、赤外分光分析により確認した。
その後、エチレングリコールフェニルエーテルメタクリレート10.74g、トリメチロールプロパントリメタクリレート5.96g、シリカゲルC−1504(富士シリシア化学株式会社)5.55g、シリコーンオイルKF−410(信越化学工業株式会社)1.21g、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.72g、ベンゾフェノン1.21g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.72g、リン酸トリフェニル2.17g、サノールLS−785(三共株式会社)1.21gを加えて80℃で撹拌しながら、13kPaに減圧して脱泡し、室温で粘稠な液体状の樹脂組成物を得た。
【0083】
[合成例3]
規則充填物ヘリパックパッキンNo.3を充填した、充填高さ300mm、内径30mmの蒸留塔、及び分留頭を備えた500ml四口フラスコに、ジブチレングリコール254.8g(1.57mol)、エチレンカーボネート145.2g(1.65mol)を仕込み、80℃で撹拌溶解し、系内を窒素置換した後、触媒としてテトラブトキシチタンを0.16g加えた。このフラスコを、フラスコの内温が150〜155℃、圧力が2〜3kPaとなるように、分留頭から還流液の一部を抜き出しながらオイルバスで加熱し、20時間反応した。その後、充填式蒸留塔を外して、単蒸留装置に取り替え、フラスコの内温を155℃、圧力を1.0kPaにして、フラスコ内に残ったジブチレングリコール及びエチレンカーボネートを1時間かけて留去した。その後、フラスコの内温155〜175℃、圧力0.1〜0.2kPaで、さらに7時間反応した。この反応により、室温で固体状のポリカーボネートジオールが164g得られた。得られたポリカーボネートジオールのOH価は55.8(数平均分子量Mn=2,011)であった。
撹拌機を備えた300mlのセパラブルフラスコにこのポリカーボネートジオール65.0g、リン酸モノブチル0.04gを入れ、95℃で3時間撹拌することにより、テトラブトキシチタンを失活させた。その後、トリレンジイソシアネート4.13g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.07g、アジピン酸0.01g、ジ−n−ブチルスズジラウレート0.001gを加えて、乾燥空気雰囲気下、40℃で30分間、さらに80℃で4時間撹拌した。その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート2.75g、ジ−n−ブチルスズジラウレート0.001gを加えて、乾燥空気雰囲気下、80℃で2時間撹拌した。
その後、エチレングリコールフェニルエーテルメタクリレート24.14g、ジエチレングリコールブチルエーテルメタクリレート7.26g、トリメチロールプロパントリメタクリレート0.13g、シリカゲルC−1504(富士シリシア化学株式会社)5.55g、シリコーンオイルKF−410(信越化学工業株式会社)1.20g、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.72g、ベンゾフェノン1.19g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.72g、リン酸トリフェニル2.16g、サノールLS−785(三共株式会社)1.19g、顔料GreenAG(日本化薬株式会社)0.007gを加えて80℃で撹拌しながら、13kPaに減圧して脱泡し、室温で固体状の樹脂組成物を得た。
【0084】
〔合成例4〕
分留頭を備えた300ml四口フラスコに、1,20−エイコサンジオール100g(0.32mol)、エチレンカーボネート30g(0.34mol)を仕込み、70℃で撹拌溶解し、系内を窒素置換した後、触媒としてテトラブトキシチタンを0.062g加えた。このフラスコを、フラスコの内温が150〜155℃、圧力が7〜8kPaとなるように、分留頭から還流液の一部を抜き出しながら、オイルバスで加熱し、11時間反応した。その後、エチレンカーボネート30g(0.34mol)を追加し、フラスコの内温155℃、圧力6〜7kPaで7時間反応した後、圧力を0.2kPaまで落として、フラスコ内に残ったエチレンカーボネートを留去した。その後さらに、エチレンカーボネート30g(0.34mol)を追加し、同様にしてフラスコの内温155℃、圧力5〜6kPaで5時間反応した後、圧力を0.2kPaまで落として、フラスコ内に残ったエチレンカーボネートを留去した。この反応により、室温で固体のポリカーボネートジオールが102g得られた。得られたポリカーボネートジオールのOH価は45.3(数平均分子量Mn=2,476)であった。
撹拌機を備えた300mlのセパラブルフラスコにこのポリカーボネートジオール65.1g、リン酸モノブチル0.03gを入れ、80℃で3時間撹拌することにより、テトラブトキシチタンを失活させた。その後、トリレンジイソシアネート3.18g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.08g、アジピン酸0.01g、ジ−n−ブチルスズジラウレート0.002gを加えて、乾燥空気雰囲気下、80℃で3時間撹拌した。その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート2.77g、ジ−n−ブチルスズジラウレート0.001gを加えて、乾燥空気雰囲気下、80℃で2時間撹拌した。この段階で、ポリカーボネートジオールの末端水酸基がウレタン結合により連結され、かつ、二重結合を有するポリマーが得られたことを赤外分光分析により確認した。
その後、エチレングリコールフェニルエーテルメタクリレート23.61g、ジエチレングリコールブチルエーテルメタクリレート7.08g、トリメチロールプロパントリメタクリレート0.12g、シリカゲルC−1504(富士シリシア化学株式会社)5.43g、シリコーンオイルKF−410(信越化学工業株式会社)1.12g、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.71g、ベンゾフェノン1.19g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.71g、リン酸トリフェニル2.13g、サノールLS−785(三共株式会社)1.20gを加えて80℃で撹拌しながら、13kPaに減圧して脱泡し、室温で固体状の樹脂組成物を得た。
【0085】
〔比較合成例1〕
規則充填物ヘリパックパッキンNo.3を充填した、充填高さ300mm、内径30mmの蒸留塔、及び分留頭を備えた500ml四口フラスコに、1,4−ブタンジオール197.4g(2.19mol)、エチレンカーボネート202.6g(2.30mol)を仕込み、80℃で撹拌溶解し、系内を窒素置換した後、触媒としてテトラブトキシチタンを0.033g加えた。このフラスコを、フラスコの内温が139〜145℃、圧力が2〜3kPaとなるように、分留頭から還流液の一部を抜き出しながらオイルバスで加熱し、計23時間反応した。その後、充填式蒸留塔を外して、単蒸留装置に取り替え、フラスコの内温を145℃、圧力を1.5kPaにして、フラスコ内に残った1,4−ブタンジオール及びエチレンカーボネートを1時間かけて留去した。その後、フラスコの内温145〜185℃、圧力0.08〜0.3kPaで、さらに7.5時間反応した。この反応により、室温で固体状のポリカーボネートジオールが128g得られた。得られたポリカーボネートジオールのOH価は45.0(数平均分子量Mn=2,493)であった。
撹拌機を備えた300mlのセパラブルフラスコにこのポリカーボネートジオール50.2g、リン酸モノブチル0.009gを入れ、80℃で3時間撹拌することにより、テトラブトキシチタンを失活させた。その後、トリレンジイソシアネート2.36g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.05g、アジピン酸0.01g、ジ−n−ブチルスズジラウレート0.001gを加えて、乾燥空気雰囲気下、80℃で3時間撹拌した。その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート2.09g、ジ−n−ブチルスズジラウレート0.001gを加えて、乾燥空気雰囲気下、80℃で2時間撹拌した。
その後、エチレングリコールフェニルエーテルメタクリレート18.22g、ジエチレングリコールブチルエーテルメタクリレート5.47g、トリメチロールプロパントリメタクリレート0.09g、シリカゲルC−1504(富士シリシア化学株式会社)4.19g、シリコーンオイルKF−410(信越化学工業株式会社)0.91g、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.55g、ベンゾフェノン0.91g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.55g、リン酸トリフェニル1.64g、サノールLS−785(三共株式会社)0.91g、顔料GreenAG(日本化薬株式会社)0.006gを加えて80℃で撹拌しながら、13kPaに減圧して脱泡し、室温で固体状の樹脂組成物を得た。
【0086】
〔比較合成例2〕
撹拌機を備えた300mlのセパラブルフラスコにポリカーボネートジオール「T6002」(OH価=56、数平均分子量Mn=2,004 旭化成ケミカルズ株式会社)61.67g、トリレンジイソシアネート3.93g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.07g、アジピン酸0.01g、ジ−n−ブチルスズジラウレート0.001gを加えて、乾燥空気雰囲気下、80℃で3時間撹拌した。その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート2.61g、ジ−n−ブチルスズジラウレート0.001gを加えて、乾燥空気雰囲気下、80℃で2時間撹拌した。
その後、エチレングリコールフェニルエーテルメタクリレート22.74g、ジエチレングリコールブチルエーテルメタクリレート6.82g、トリメチロールプロパントリメタクリレート0.11g、シリカゲルC−1504(富士シリシア化学株式会社)5.23g、シリコーンオイルKF−410(信越化学工業株式会社)1.14g、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.68g、ベンゾフェノン1.14g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.68g、リン酸トリフェニル2.05g、サノールLS−785(三共株式会社)1.14g、顔料GreenAG(日本化薬株式会社)0.007gを加えて80℃で撹拌しながら、13kPaに減圧して脱泡し、室温で固体状の樹脂組成物を得た。
【0087】
(フレキソ印刷原版の作製)
合成例1〜4、比較合成例1〜2で得られた樹脂組成物の各々を用いて、下記の方法でフレキソ印刷原版を作製した。
12×11×0.3cmのガラス板にジエチレングリコールを薄く塗布した後、PETフィルムを乗せ、ヘラでこすり密着させた。そのフィルム上に両面シールにより固定させたスポンジ枠で作成した1辺10cmの四角枠と、その枠外の四隅に厚さ3mmのアルミスペーサーを置いた。この作成した治具を約90℃のホットプレート上に置いた。
治具の枠内に前記各樹脂組成物を注いだ後、ジエチレングリコールを塗布しPETフィルムを乗せたガラス板を、PETフィルム面が樹脂組成物に接触するようにかぶせた。その後に上下のガラス板をクリップで挟み固定した。
この治具について高圧水銀灯(HC−98、センエンジニアリング株式会社)を用いて、500mJ/cm2(照度33.7mW/cm2、時間14.8秒)露光した後、治具面を逆にし、さらに500mJ/cm2露光した。これを両面もう一度ずつ行い、トータルで2,000mJ/cm2露光してフレキソ印刷原版を作成した。得られたフレキソ印刷原版のレーザー彫刻性を表1に示す。
【0088】
〔実施例1〕
(薄膜半導体パターンの印刷評価)
ポリ(3−ヘキシルチオフェン)を1.0質量%の濃度で脱水キシレンに溶解し、薄膜半導体パターン層用インクを作製した。
合成例1の樹脂組成物から得られたフレキソ印刷原版1にレーザー彫刻により印刷パターンを描画したフレキソ印刷版1を用いて、前記インクの印刷評価を実施した。フレキソ印刷には卓上型校正機(英国、KR社製、商標「Flexiploofer100」)を用い、版胴上に前記フレキソ印刷版1を、両面テープを用いて貼り付けた。被印刷基板としては、厚さ1.0mmの無アルカリガラス基板を用いた。前記インクを印刷した後、140℃で20分間乾燥して、薄膜半導体パターン層を製造した。結果を表1に示す。
【0089】
(質量変化率の測定)
フレキソ印刷原版1から作製した試験サンプルを、キシレン中に、20℃、24時間浸漬後、表面に付着した液滴をふき取り、質量増加量を測定することにより、質量変化率を求めた。結果を表1に示す。
【0090】
〔実施例2〕
(薄膜半導体パターンの印刷評価)
ポリ(3−ヘキシルチオフェン)を1.0質量%の濃度で脱水キシレンに溶解し、薄膜半導体パターン層用インクを作製した。
合成例2の樹脂組成物から得られたフレキソ印刷原版2にレーザー彫刻により印刷パターンを描画したフレキソ印刷版2を用いて、前記インクの印刷評価を実施した。フレキソ印刷には卓上型校正機(英国、KR社製、商標「Flexiploofer100」)を用い、版胴上に前記フレキソ印刷版2を、両面テープを用いて貼り付けた。被印刷基板としては、厚さ1.0mmの無アルカリガラス基板を用いた。前記インクを印刷した後、140℃で20分間乾燥して、薄膜半導体パターン層を製造した。結果を表1に示す。
【0091】
(質量変化率の測定)
フレキソ印刷原版2から作製した試験サンプルを、キシレン中に、20℃、24時間浸漬後、表面に付着した液滴をふき取り、質量増加量を測定することにより、質量変化率を求めた。結果を表1に示す。
【0092】
〔実施例3〕
(薄膜半導体パターンの印刷評価)
ポリ(3−ヘキシルチオフェン)を1.0質量%の濃度で脱水キシレンに溶解し、薄膜半導体パターン層用インクを作製した。
合成例3の樹脂組成物から得られたフレキソ印刷原版3にレーザー彫刻により印刷パターンを描画したフレキソ印刷版3を用いて、前記インクの印刷評価を実施した。フレキソ印刷には卓上型校正機(英国、KR社製、商標「Flexiploofer100」)を用い、版胴上に前記フレキソ印刷版3を、両面テープを用いて貼り付けた。被印刷基板としては、厚さ1.0mmの無アルカリガラス基板を用いた。前記インクを印刷した後、140℃で20分間乾燥して、薄膜半導体パターン層を製造した。結果を表1に示す。
【0093】
(質量変化率の測定)
フレキソ印刷原版3から作製した試験サンプルを、キシレン中に、20℃、24時間浸漬後、表面に付着した液滴をふき取り、質量増加量を測定することにより、質量変化率を求めた。結果を表1に示す。
【0094】
〔実施例4〕
(薄膜半導体パターンの印刷評価)
ポリ(3−ヘキシルチオフェン)を1.0質量%の濃度で脱水メチルエチルケトンに溶解し、薄膜半導体パターン層用インクを作製した。
合成例4の樹脂組成物から得られたフレキソ印刷原版4にレーザー彫刻により印刷パターンを描画したフレキソ印刷版4を用いて、前記インクの印刷評価を実施した。フレキソ印刷には卓上型校正機(英国、KR社製、商標「Flexiploofer100」)を用い、版胴上に前記フレキソ印刷版4を、両面テープを用いて貼り付けた。被印刷基板としては、厚さ1.0mmの無アルカリガラス基板を用いた。前記インクを印刷した後、140℃で20分間乾燥して、薄膜半導体パターン層を製造した。結果を表1に示す。
【0095】
(質量変化率の測定)
フレキソ印刷原版4から作製した試験サンプルを、メチルエチルケトン中に、20℃、24時間浸漬後、表面に付着した液滴をふき取り、質量増加量を測定することにより、質量変化率を求めた。結果を表1に示す。
【0096】
〔比較例1〕
(印刷評価)
比較合成例1の感光性樹脂組成物から得られた印刷原版(ア)にレーザー彫刻によりパターンを描画した印刷版(ア)を用いて、実施例1と同様にして印刷、乾燥を行った結果、ベーク後の薄膜半導体パターン層の膜厚は約100nmであるものの、不均一でムラが目立つものであった。
【0097】
(質量変化率の測定)
印刷原版(ア)から作製した試験サンプルを、キシレン及びメチルエチルケトン中に、20℃、24時間浸漬後、表面に付着した液滴をふき取り、質量増加量を測定することにより、質量変化率を求めた。結果を表1に示す。
【0098】
〔比較例2〕
(印刷評価)
比較合成例2の感光性樹脂組成物から得られた印刷原版(イ)にレーザー彫刻によりパターンを描画した印刷版(イ)を用いて、実施例1と同様にして印刷、乾燥を行った結果、ベーク後の薄膜半導体パターン層の膜厚は約100nmであるものの、不均一でムラが目立つものであった。
【0099】
(質量変化率の測定)
印刷原版(イ)から作製した試験サンプルを、キシレン及びメチルエチルケトン中に、20℃、24時間浸漬後、表面に付着した液滴をふき取り、質量増加量を測定することにより、質量変化率を求めた。結果を表1に示す。
【0100】
【表1】

【0101】
本実施の形態におけるフレキソ印刷版を用いると、溶剤膨潤によるフレキソ印刷版の厚み変動を減少させることができるので、被印刷物である薄膜半導体パターン層の厚み変動を縮小させることができる。本実施の形態によりトランジスタ性能と直結する薄膜半導体パターン層の厚みを高精度で制御することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の薄膜半導体パターンの製造方法により、高精度で薄膜半導体パターンを形成することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキソ印刷版上の薄膜半導体パターン形成用インクを被印刷基板上に転写し、転写された薄膜半導体パターン形成用インク中の溶剤を乾燥除去して、又は転写された前記薄膜半導体パターン形成用インクに光を照射して硬化させて、
被印刷基板上に前記薄膜半導体パターン形成用インクを固定化することによって薄膜半導体パターンを形成する方法であって、
下記式(1)及び/又は式(2)で表される繰り返し単位からなり、両末端基が水酸基であり、かつ数平均分子量が300〜50,000であるポリカーボネートジオールから製造されるポリマー(a)を含有する樹脂組成物を硬化して得られるフレキソ印刷版を用いて薄膜半導体パターン形成用インクを被印刷基板上に転写する、薄膜半導体パターンの製造方法。
【化1】

(式中、R1は、炭素数2〜50の直鎖又は分岐した炭化水素基を表し、nは、2〜50の整数を表す。)
【化2】

(式中、R2は、炭素数10〜50の直鎖又は分岐した炭化水素基を表す。)
【請求項2】
前記樹脂組成物が、
前記ポリカーボネートジオールと、当該ポリカーボネートジオールの末端水酸基の当量未満のイソシアネート基当量の多官能イソシアネート化合物及び/又はポリイソシアネート化合物と、イソシアネートアルキルアクリレート及び/又はイソシアネートアルキルメタクリレートとを反応させることにより製造されるポリマー(a)、及び/又は
前記ポリカーボネートジオールと、当該ポリカーボネートジオールの末端水酸基の当量を超えるイソシアネート基当量の多官能イソシアネート化合物及び/又はポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシアルキルアクリレート及び/又はヒドロキシアルキルメタクリレートとを反応させることにより製造されるポリマー(a)を含有する、請求項1に記載の薄膜半導体パターンの製造方法。
【請求項3】
前記樹脂組成物が、さらに、重合性不飽和基を有し、数平均分子量が5,000未満である有機化合物(b)を含有する、請求項1又は2に記載の薄膜半導体パターンの製造方法。
【請求項4】
前記樹脂組成物が、さらに、無機系微粒子(c)を含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の薄膜半導体パターンの製造方法。
【請求項5】
前記樹脂組成物が感光性樹脂組成物である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の薄膜半導体パターンの製造方法。
【請求項6】
前記フレキソ印刷版が、フレキソ印刷原版に印刷パターンをレーザー彫刻することにより得られる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の薄膜半導体パターンの製造方法。
【請求項7】
前記フレキソ印刷版が、シート状又は円筒状に形成される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の薄膜半導体パターンの製造方法。
【請求項8】
前記フレキソ印刷版が、前記薄膜半導体パターン形成用インク中の前記溶剤に対する耐性を溶剤浸漬膨潤テストで評価した場合に、前記溶剤への浸漬前後で10質量%以下の質量変化率を示す、請求項1〜7のいずれか一項に記載の薄膜半導体パターンの製造方法。

【公開番号】特開2009−70853(P2009−70853A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−234540(P2007−234540)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】