説明

薄膜積層体製造装置およびその運転方法

【課題】搬送方向の切替えに付随した挟圧力や搬送高さの偏差を低減し、品質向上と製造コスト低減を両立する薄膜積層体製造装置を提供する。
【解決手段】搬送経路の端部で可撓性基板1をロールから巻出し/ロールに巻取るための正逆双方向に駆動可能なロールコア駆動装置と、基板の縁部を挟持しかつその挟圧力に応じた展張力を縁部に付与する回転可能なグリップローラ61〜69と、成膜部30における基板の搬送高さを検知する検知手段S1〜S9と、検知手段の検出値に基づいてグリップローラの挟圧力を制御する搬送高さ制御装置73と、を備え、搬送高さ制御装置は、グリップローラの挟圧力の初期値を保持する保持手段を有し、基板の搬送方向の切替え時に、初期値に基づいてグリップローラ61〜69の挟圧力を再設定可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状可撓性基板上に複数の薄膜を形成して、薄膜光電変換素子などの薄膜積層体を製造する薄膜積層体製造装置およびその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体薄膜などの薄膜積層体の基板には、通常、剛性基板が用いられるが、軽量でロールを介した取り扱いの利便性による生産性向上やコスト低減を目的として、プラスチックフィルムなどの可撓性基板が用いられる場合がある。例えば、特許文献1〜3には、巻出しロールから供給される帯状可撓性基板(ポリイミドフィルム)を所定のピッチで間欠的に搬送しながら、前記可撓性基板の搬送方向に配列された複数の成膜ユニットで、前記可撓性基板上に性質の異なる複数の薄膜を積層形成し、製品ロールとして巻取る薄膜積層体の製造装置が開示されている。
【0003】
このような薄膜積層体の製造装置には、横姿勢すなわち帯状可撓性基板の幅方向を水平方向にして搬送しつつ成膜を行なうタイプと、縦姿勢すなわち帯状可撓性基板の幅方向を上下方向にして搬送しつつ成膜を行なうタイプがある。後者は、前者に比べて設置面積が小さく、基板表面が汚染されにくい等の利点があるが、搬送スパンが長くなると、重力に抗して搬送高さを一定に維持するのが困難になり、可撓性基板の表面に皺が発生したり、可撓性基板が垂れ下がったりする傾向が顕著になる。
【0004】
そこで、特許文献1〜3では、薄膜積層体製造装置を構成する各成膜ユニット間に、可撓性基板の上下の縁部を挟持するグリップローラ対を配設し、可撓性基板の縁部に上方および下方に向かう展張力を作用させ、可撓性基板を上下幅方向に展張しつつ搬送高さを調整できるようにしている。グリップローラ対によって可撓性基板に付与される展張力は、グリップローラ対の挟圧力により制御可能である。特許文献4には、グリップローラにスプリングおよび機構部を介して挟圧力を付与するプルロッドと、該プルロッドを進退駆動するアクチュエータと、前記プルロッドに負荷される荷重(歪み)を検知するロードセルとを備え、該ロードセルの検出値に基づいてアクチュエータを進退駆動しグリップローラを変位させる制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−38276号公報
【特許文献2】特開2009−38277号公報
【特許文献3】特開2009−57632号公報
【特許文献4】国際公開第2009/122836号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記装置は、可撓性基板を上下に展張しかつ可撓性基板の搬送高さを制御するうえで有利であるが、可撓性基板の逆方向への搬送を含む往復成膜プロセスには直ちに適用できない。可撓性基板を逆方向に搬送する場合には、グリップローラの傾斜角に応じた展張力が逆方向に作用するので、グリップローラの傾斜角を反転させる必要がある。加えて、帯状可撓性基板に搬送張力を付与する駆動ロールの回転方向を反転させる際に、張力バランスに変化を生じ、反転以前の設定では適切な搬送高さ制御を行えない場合もある。装置構成が搬送方向に非対称である場合は言うまでもないが、装置構成が対称であっても、可撓性基板が搬送され薄膜が積層形成されるに従って可撓性基板の面密度や剛性が僅かではあるが変化するので、可撓性基板の物理的条件は搬送方向に必ずしも一様ではない。
【0007】
上記のような理由で、可撓性基板の搬送方向に間隔を有して設置された各グリップローラの挟圧力に、搬送方向切替え以前の制御を通じて偏差を生じている場合、そのような挟圧力の分布が搬送方向切替え後における搬送高さ制御に適合しない虞がある。その結果、一時的ではあっても、各グリップローラにおける挟圧力や、可撓性基板の搬送高さに偏差を生じる虞がある。さらに、搬送方向切替え時に、可撓性基板の搬送高さの偏差や蛇行成分が残存する場合、往復成膜プロセスの進行に伴い蛇行量や偏差が累積することも懸念される。
【0008】
可撓性基板の逆方向への搬送を含む往復成膜を実施する場合、一方向への搬送のみ行う場合に比べて、搬送方向に並設される成膜ユニット数を少なくでき、装置の規模を縮小できるとともに、成膜部における搬送スパンを短縮できる利点がある。したがって、その点では搬送高さ制御にも有利な構成であるが、正逆搬送方向の切替えに付随した上記課題を解消しない限り、このような装置構成上の利点も、縦姿勢での搬送による成膜上の利点も享受できない。
【0009】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、帯状可撓性基板を縦姿勢で横方向かつ正逆双方向に往復搬送しながら前記基板の表面に薄膜を積層形成する薄膜積層体製造装置において、搬送方向の切替えに付随した挟圧力や搬送高さの偏差を低減し、品質向上と製造コスト低減を両立することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決することを目的として、本発明は、
帯状の可撓性基板を縦姿勢で横方向に搬送し、前記基板の搬送経路に沿って設置された成膜部で、前記基板の表面に薄膜を積層形成する薄膜積層体製造装置であって、
前記搬送経路のそれぞれの端部で前記基板をロールから巻出し/ロールに巻取るための正逆双方向に駆動可能なロールコア駆動装置と、
前記基板の縁部を挟持しかつその挟圧力に応じた展張力を前記縁部に付与すべく回転可能に支持されたグリップローラと、
前記成膜部における前記基板の搬送高さを検知する検知手段と、
前記検知手段の検出値に基づいて前記グリップローラの前記挟圧力を制御する搬送高さ制御装置と、を備え、
前記搬送高さ制御装置は、前記グリップローラの前記挟圧力の初期値を保持する保持手段を有し、前記基板の搬送方向の切替え時に、前記初期値に基づいて前記グリップローラの前記挟圧力を再設定可能である、薄膜積層体製造装置にある。
【0011】
上記構成により、可撓性基板の各搬送方向に対応したグリップローラ挟圧力の初期値を予め保持手段に保持しておき、搬送方向の切替え時に、前記初期値に基づいてグリップローラの挟圧力を再設定することで、挟圧力の偏差が直ちに解消され、当該搬送方向に適合した展張力が得られる。また、搬送方向切替え以前の制御を通じて可撓性基板の搬送高さに偏差を生じていても、速やかに収束させることができ、蛇行成分や偏差の残留や累積を防止できる。これにより、可撓性基板に汚染物質が堆積しない、省スペースであるといった、可撓性基板を縦姿勢で搬送する搬送形態の利点とともに、成膜ユニット数の削減、装置規模のさらなる縮小といった、正逆双方向への搬送を含む往復成膜の利点を得ることができる。
【0012】
本発明において、前記グリップローラは、前記搬送経路に沿って複数箇所に配設され、そのうちの少なくとも1つが、前記搬送高さ制御装置によって前記挟圧力を制御可能であるとともに前記初期値に基づいて前記挟圧力を再設定可能であり、他は、挟圧力を事前設定することのみ可能であることが好適である。
【0013】
この態様では、積極的に制御されるグリップローラの数を最小限に留め、それ以外は、プリセット値による消極的制御に留めることで、制御に要するコストが低減され、かつ安定的な制御を行うことができる。
【0014】
本発明において、前記グリップローラの複数が、前記挟圧力を制御可能であるとともに前記挟圧力を再設定可能であり、前記保持手段は、これら制御可能なグリップローラ毎に挟圧力の初期値を保持可能であり、前記基板の搬送方向の切替え時に、前記各初期値に基づいて前記各制御可能なグリップローラの挟圧力を個別に再設定可能であることが好適である。
【0015】
この態様では、前記同様に制御コストの低減、制御の安定化を図りながら、搬送方向の位置に応じて異なるグリップローラ挟圧力に直ちに再設定可能となり、特に、搬送スパンが長く、グリップローラの設置数が多い場合に有利である。
【0016】
本発明において、前記各ロールコア駆動装置は、それぞれ、前記各ロールとそれらに隣接したロールとの間で前記基板の高さを検知する第2の検知手段と、前記第2の検知手段の検出値に基づいて前記各ロールの軸方向位置を変位させるロール位置制御装置とを有し、前記ロール位置制御装置は、前記各ロールの軸方向位置の初期値を保持する第2の保持手段を有し、前記基板の搬送方向の切替え時に、前記初期値に基づいて前記各ロールの軸方向位置を再設定可能であることが好適である。
【0017】
上記構成により、搬送方向下流側の巻取りロールにおいて、成膜済みの可撓性基板を、巻きずれを生じることなく巻き取ることができ、その巻取り終了時に、巻取りロールに軸方向変位を生じていても、搬送方向の切替え時に、軸方向変位が初期値に再設定されることで、可撓性基板を最適位置で巻出すことができ、搬送高さの偏差や蛇行成分の累積を防止するうえで有利である。
【0018】
このようなロールの軸方向位置の再設定は、グリップローラの再設定と独立して実施することもできる。すなわち、本発明は、
帯状の可撓性基板を縦姿勢で横方向に搬送し、前記基板の搬送経路に沿って設置された成膜部で、前記基板の表面に薄膜を積層形成する薄膜積層体製造装置であって、
前記搬送経路のそれぞれの端部で前記基板をロールから巻出し/ロールに巻取るための正逆双方向に駆動可能なロールコア駆動装置と、
前記基板の縁部を挟持しかつその挟圧力に応じた展張力を前記縁部に付与すべく回転可能に支持されたグリップローラと、
前記成膜部における前記基板の搬送高さを検知する検知手段と、
前記検知手段の検出値に基づいて前記グリップローラの前記挟圧力を制御する搬送高さ制御装置と、を備え、
前記各ロールコア駆動装置は、それぞれ、前記各ロールとそれらに隣接したロールとの間で前記基板の高さを検知する第2の検知手段と、前記第2の検知手段の検出値に基づいて前記各ロールの軸方向位置を変位させるロール位置制御装置とを有し、前記ロール位置制御装置は、前記各ロールの軸方向位置の初期値を保持する保持手段を有し、前記基板の搬送方向の切替え時に、前記初期値に基づいて前記各ロールの軸方向位置を再設定可能である、薄膜積層体製造装置をも対象としている。
【0019】
本発明の前記各態様において、前記第2の検知手段は、前記各ロールの軸方向位置の初期値を検出する手段を兼ねることが好適である。
【0020】
この構成により、別途、検知手段を設置する場合に比べて装置コストを削減でき、かつ、通常運転時の制御を行う検知手段によって初期値の検出を行うことで、信頼性の高い初期値を得ることができる。
【0021】
本発明において、前記成膜部と前記各ロールコア駆動装置との間にそれぞれ配設された正逆双方向に駆動可能な駆動ロールと、前記各駆動ロールと前記成膜部との間にそれぞれ配設された前記基板の搬送張力検出手段と、前記各駆動ロールおよび前記各ロールコア駆動装置を同期させ、前記基板の正逆各搬送方向に対応した搬送張力、搬送速度および搬送量の制御を行う搬送制御装置と、をさらに備えることが好適である。
【0022】
この構成により、正逆各搬送方向において、例えば、下流側に位置した駆動ロールを基準に搬送量および搬送速度の制御を行い、上流側に位置した駆動ロールを、搬送張力検出手段の検出値が一定になるよう制御することで、正逆各搬送方向に対応した搬送張力、搬送速度および搬送量の制御を安定的に行うことができ、かつ、搬送方向の切替えも容易かつ安定的に行うことができる。
【0023】
本発明において、前記成膜部に対して同側に位置した前記各駆動ロールと前記各ロールコア駆動装置との間に前記グリップローラをそれぞれ備えることが好適である。
【0024】
この構成により、各駆動ロールと各ロールコア駆動装置との間における可撓性基板の位置ずれや張力皺を防止できるとともに、巻取り部の上流側で可撓性基板が展張されかつ幅方向位置が保持されることにより、ロール位置制御装置による巻きずれ防止制御をより効果的に実施することができる。
【0025】
本発明は、帯状の可撓性基板を縦姿勢で横方向に搬送し、前記基板の搬送経路に沿って設置された成膜部で、前記基板の表面に薄膜を積層形成する薄膜積層体製造装置の運転方法であって、前記薄膜積層体製造装置が、前記搬送経路のそれぞれの端部で前記基板をロールから巻出し/ロールに巻取るための正逆双方向に駆動可能なロールコア駆動装置と、前記基板の縁部を挟持しかつその挟圧力に応じた展張力を前記縁部に付与すべく回転可能に支持されたグリップローラと、前記成膜部における前記基板の搬送高さを検知する検知手段と、前記検知手段の検出値に基づいて前記グリップローラの前記挟圧力を制御する搬送高さ制御装置と、を備え、前記各ロールコア駆動装置が、それぞれ、前記各ロールとそれらに隣接したロールとの間で前記基板の高さを検知する第2の検知手段と、前記第2の検知手段の検出値に基づいて前記各ロールの軸方向位置を変位させるロール位置制御装置とを有する場合において、
前記基板の搬送方向の切替え時に、前記基板を停止させた状態で、前記各ロール位置制御装置による前記各ロールの軸方向位置を初期値に再設定し、その後、前記グリップローラの前記挟圧力を初期値に再設定することを特徴とする薄膜積層体製造装置の運転方法にもある。
【0026】
また、先述した本発明に係る薄膜積層体製造装置において、前記搬送高さ制御装置は、前記グリップローラの前記挟圧力を検知する手段をさらに有することが好適である。
【0027】
この態様では、グリップローラに挟圧力を付与するスプリングなどの付勢力の個体差や前記付勢力をグリップローラに伝達する機械系誤差の影響を排除でき、それらに起因した搬送高さ制御の不安定や、定常的な偏差が解消されることで、製膜品質の安定化とコスト低減が可能である。
【0028】
本発明装置において、前記グリップローラを回転可能かつ相互に接離可能に支持する支持部材と、前記支持部材を介して前記グリップローラに前記挟圧力を生じさせる付勢手段と、をさらに備え、前記挟圧力検知手段は、前記支持部材の基部に付設された少なくとも1つの歪センサを含むことが好適である。
【0029】
本発明装置において、前記搬送高さ制御装置は、前記付勢手段を変位させるアクチュエータをさらに有し、前記保持手段は、前記挟圧力の初期値を前記アクチュエータの変位量として保持可能であり、前記搬送高さ検知手段の検出値と基準値との偏差に応じて出力される前記アクチュエータの制御量と、前記歪センサの検出値とを比較し、その差分が最小になるように、前記アクチュエータをフィードバック制御するように構成されていることが好適である。
【0030】
さらに、前記挟圧力の初期値は、前記アクチュエータの変位量を、前記挟圧力検知手段を構成する前記歪センサからの信号に基づいて補正されて前記保持手段に保持されていることが好適である。
【0031】
本発明装置において、前記搬送高さ検知手段の検出値と基準値との偏差およびそれに応じて出力される前記アクチュエータの制御量が、予め制御関数またはデータテーブルとして前記搬送高さ制御装置に格納されており、前記制御関数またはデータテーブルを介した制御量と前記歪センサの検出値との前記差分が最小になるように、前記アクチュエータをフィードバック制御するように構成されていることが好適である。
【0032】
本発明装置において、前記挟圧力検知手段を構成する前記歪センサは、前記支持部材の基部に取り外し可能に付設されていることが好適である。
【0033】
すなわち、挟圧力検知手段(歪センサ)による校正を初期の設置時に行い、アクチュエータの制御量を最適化しておくことで、実際の操業時には、挟圧力検知手段の検出値をフィードバックせずに可撓性基板の搬送高さ制御を行うことにより、高温や真空中にグリップローラが設置される場合の耐環境を考慮する必要がなく、低コスト化が可能となる。
【0034】
本発明の好適な態様では、前記グリップローラの前記挟圧力を制御する搬送高さ制御装置は、前記挟圧力を生じさせるスプリングの付勢力を、前記グリップローラを接離可能に支持する支持機構にトルクとして伝達する伝達部材と、前記スプリングの支持点を前記伝達部材との連結点の周りに角変位させるアクチュエータと、を備えている。
【0035】
本発明の好適な態様では、前記グリップローラは、軸方向に対して傾斜した周面を有する円錐ローラであり、該円錐ローラの小径側が前記基板の幅方向中央側に位置しかつ前記基板の挟持面における回転方向が前記基板の搬送方向と同方向になるよう回転可能に支持されている。
【発明の効果】
【0036】
上述したように、本発明は、帯状可撓性基板を縦姿勢で横方向かつ正逆双方向に往復搬送しながら前記基板の表面に薄膜を積層形成する薄膜積層体製造装置において、搬送方向の切替えに付随した挟圧力や搬送高さの偏差を低減し、高品質の薄膜積層体を製造するうえで有利である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明実施形態の薄膜積層体製造装置を示す概略平面図である。
【図2】本発明実施形態の薄膜積層体製造装置の一端部を示す側面図である。
【図3】本発明第1実施形態に係るグリップローラおよびその制御システムを示す概略斜視図である。
【図4】搬送経路の上下に設置されたグリップローラを示す搬送方向から見た正面図である。
【図5】本発明第2実施形態に係るグリップローラおよびその制御システムを示す概略斜視図である。
【図6】搬送経路の上部に設置されたグリップローラを示す搬送方向から見た正面図(a)及び側面図(b)である。
【図7】グリップローラの挟圧力検出センサ(歪センサ)の回路構成図である。
【図8】駆動アームの角変位と挟圧力との関係を示すグラフである。
【図9】本発明第3実施形態に係るグリップローラを示す要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態について、本発明を太陽電池用の薄膜光電変換素子を構成する薄膜積層体製造装置に実施する場合を例にとり、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0039】
(第1実施形態)
図1および図2は、本発明に係る薄膜積層体製造装置100の基本構成を示し、図3および図4は、本発明第1実施形態に係るグリップローラおよびその制御システムを示す概略斜視図である。図1において、薄膜積層体製造装置100は、長手方向の各端に配設された第1および第2コア収容部10,50、長手方向の中間部に配設された成膜部30、それぞれのコア収容部10,50と成膜部30の間に介設された第1および第2搬送部20,40からなり、これら各部を構成する個々の室構造(10〜50)は、相互に気密に連結され、かつ、その内部が所定の真空度に維持され、全体として共通真空室80を構成している。
【0040】
第1および第2コア収容部10,50には、パウダクラッチC1,C5を介して連結されたモータM1,M5により正逆双方向に駆動回転可能なコア支持部材(チャック、図示せず)を備えたロールコア駆動装置(11,51)、張力検出センサT1,T5が付設された張力検出ロール12,52、および、ガイドロール13,53が配設され、ガイドロール13,53のロールコア11,51側には、当該部分における可撓性基板1の搬送高さ(上縁部位置)を検知するセンサS3,S6が配設されている。
【0041】
ロールコア駆動装置(11,51)は、アクチュエータA3,A6により軸方向(上下方向)に変位可能なロール位置制御装置14,54の可動部に搭載されている。この可動部(可動枠)は軸またはレールなどの直動案内機構によって上下方向に移動可能に案内されるとともに、ロールコア11,51の重量をキャンセルする図示しないカウンターウエイトが連結されている。アクチュエータA3,A6は、モータとその回転を直線往復動に変換する送りネジ機構などで構成される。
【0042】
第1および第2搬送部20,40には、モータM2,M4により正逆双方向に駆動回転可能な駆動ロール21,41、張力検出センサT2,T4が付設された張力検出ロール22,42が配設されている。駆動ロール21,41には、可撓性基板1を巻き掛け所定角度にて巻き掛ける2つのガイドロールと、駆動ロール21,41の周面に可撓性基板1を圧接させて駆動力(搬送張力)を伝達可能にするニップロールが付設されている。また、張力検出ロール22,42の前後にも可撓性基板1を所定角度にて巻き掛けるガイドロールが付設されている。
【0043】
成膜部30には、前記各搬送部20,40の間の可撓性基板1の搬送経路に沿って一定間隔で複数の成膜ユニット33が並設されており、図示例では6つの成膜ユニット33が並設されている。成膜部30の室構造は、成膜ユニット33毎に区分され、かつ、可撓性基板1が通過可能なスリットによって相互に連通されている。
【0044】
各成膜ユニット33は、プラズマCVDなどの化学蒸着(CVD)や、スパッタなどの物理蒸着(PVD)を行なうための真空蒸着ユニットで構成される。例えば、プラズマCVDの場合、各成膜ユニット33は、可撓性基板1の搬送経路を挟んでその両側に対向配置された電極31(表面に多数の原料ガス噴出孔を有する高周波電極)と、ヒータを内蔵した接地電極32で構成され、それぞれが、可撓性基板1に向かって開口した開閉可能なチャンバー内に収容されている。各成膜ユニット33の開閉動作を含む成膜動作は、薄膜積層体製造装置100の主制御部70によって、可撓性基板1のステップ搬送を制御する搬送制御部71と同期して制御される。
【0045】
以上のように構成された各コア収容部10,50と各搬送部20,40の間、および、各搬送部20,40と成膜部30の間、および、成膜部30の各成膜ユニット33の間には、可撓性基板1の上下方向の位置を制御しその搬送高さを一定に維持するとともに、可撓性基板1を幅方向すなわち上下方向に展張するために、可撓性基板1の上下各縁部を挟持する9つのグリップローラ61〜69が配設されている。
【0046】
これらのうち、アクチュエータA1,A2,A5,A8,A9が付設された5つのグリップローラ61,62,65,68,69は、挟圧力Pxを積極的に制御可能なアクティブタイプであり、他の4つのグリップローラ63,64,66,67は、挟圧力を事前に調整することのみ可能なプリセットタイプである。図4は、成膜部30と搬送部40の間に配設された上下1組のグリップローラ68,68′を示しているが、図示のように、搬送経路の上下に配置されたグリップローラ(68,68′)のうち、上側(68)のみがアクティブタイプのグリップローラであり、下側(68′)はプリセットタイプのグリップローラである。他のグリップローラ61,62,65,69についても同様である。
【0047】
図3および図4において、グリップローラ68は、可撓性基板1の上側縁部を挟持する一対の円錐ローラ(81,82)と、各円錐ローラ(81,82)を回転可能かつ相互に接離可能に支持する支持機構(83〜86)、該支持機構を介して円錐ローラ(81,82)に挟圧力を付与するスプリング92、該スプリング92の付勢力を前記支持機構にトルクとして伝達する伝達部材(87〜89)、スプリング92の支持点(91b)を伝達部材(87〜89)との連結点(89a)の周りで角変位させる駆動アーム91およびアクチュエータA8から構成されている。
【0048】
グリップローラ68を構成する一対の円錐ローラ81,82は、いずれも小径側が、可撓性基板1の幅方向中央側(図中下側)に位置しかつ挟持面における回転方向が可撓性基板1の搬送方向(F,R)と同方向になるように、それぞれの支軸81a,82aにおいて支持部材83,84に軸支されている。この構成により、可撓性基板1が駆動ロール41(または駆動ロール21)による搬送力で正方向F(または逆方向R)に搬送される際、各円錐ローラ81,82は可撓性基板1の縁部を挟持した状態で従動回転され、それに伴い、可撓性基板1の縁部が、各円錐ローラ81,82の大径側に誘導され、可撓性基板1が幅方向に展張される。
【0049】
グリップローラ68(81,82)によって付与される展張力Qxは、摩擦力として可撓性基板1に伝達されるので、グリップローラ68の挟圧力Pxに比例する。したがって、挟圧力Pおよび展張力Qが固定の下側グリップローラ68′に対して、上側グリップローラ68は、スプリング92の付勢力に応じて挟圧力Pxおよび展張力Qxを調整可能であり、上下の展張力Qx,−Qのバランスを調整することで、可撓性基板1の上端位置(搬送高さ)を調整可能である。
【0050】
グリップローラ68(81,82)を支持する支持部材83,84のうち、一方の支持部材84は、ブラケット86に固定された固定支持部材であり、該ブラケット86はその上部において、真空室80の構造要素(開口80bの上部)に固定されているのに対し、他方の支持部材83は、ブラケット86の軸受部86aに回動可能に支持された延長アーム85の軸部85aに取り付けられ、延長アーム85と一体的に揺動可能な可動支持部材である。延長アーム85の上端部は、回動軸87の下端に固定された第2アーム87aの先端部に係合している。
【0051】
回動軸87は、真空室80の外部に配設されたスプリング92の付勢力を、真空室80内にトルクとして伝達する伝達部材であり、真空室80の天井部(大気遮断フランジ88b)に設けた磁気シール軸受88を介して気密かつ回動自在に支持されている。また、真空室80の外部に位置した回動軸87の上端には、入力部としての第1アーム89が固定されている。
【0052】
第1アーム89の先端には、連結ピン89aが回動可能に支持され、該連結ピン89aにスプリング92の一端が連結され、該スプリング92の他端は、調整ネジ93を介して、駆動アーム91の支持ピン91bに連結されている。スプリング92は、連結ピン89aと支持ピン91bとの間に、予め伸長された状態で張架されており、調整ネジ93を回動することにより、スプリング92の初期張力を調整可能である。
【0053】
アクチュエータA8は、エンコーダA8eを内蔵したサーボモータなどのロータリーアクチュエータであり、真空室80の天井部に設置されたハウジング90の上部に駆動軸を下向きにして取付けられている。アクチュエータA8の駆動軸(駆動アーム91の回動軸)は、グリップローラ68(81,82)が相互に当接する第1アーム89の回動原点において、第1アーム89の連結ピン89aと同一軸線上に配設されている。
【0054】
上記構成により、駆動アーム91が第1アーム89と整列する最小挟圧力位置と、第1アーム89に対して直角になる最大挟圧力位置(91′)との間での角変位に応じて、スプリング92の張力の直交成分が、第1アーム89を図中反時計方向に回動させる付勢力として連結ピン89aに負荷される。この付勢力は、回動軸87を介して第2アーム87aにトルクとして伝達され、延長アーム85およびそれと一体の支持部材83を介して可動側ローラ81に伝えられ、可動側ローラ81が上記付勢力にレバー比を乗じた挟圧力Pxで固定側ローラ82に圧接されることになる。
【0055】
アクチュエータA8は、グリップローラ68の搬送方向上流側において可撓性基板1の上端位置を検知するセンサS8から、搬送高さ制御部73に取得される位置情報に基づいて制御される。例えば、センサS8は、搬送方向にずれて配設された2つのセンサSA,SDで構成され、これらの検出値から、可撓性基板1の上端位置(搬送高さ)と同時に、グリップローラ68に対する可撓性基板1の進入角度を検知することができ、搬送高さ制御部73は、それらの検出値と基準値との偏差を検出し、それに基づいて、アクチュエータA8に駆動アーム91を角変位させ、グリップローラ68の挟圧力Pxを調整する。センサS8としては、可撓性基板1の上端位置を非接触で検出する光学センサなどを利用可能である。
【0056】
グリップローラ68(61,62,65,69)の挟圧力Pxの初期値に対応したアクチュエータA8(A1,A2,A5,A9)の角変位の初期値は、搬送高さ制御部73の保持手段(ROMなど)に保持されており、後述する搬送方向の切替え時などには、保持した初期値に基づいてアクチュエータA8(A1,A2,A5,A9)の角変位を初期値に再設定できるように構成されている。
【0057】
なお、プリセットタイプの下側グリップローラ68′は、図4に示すように、延長アーム85等は省略され、可動側支持部材83と固定側支持部材84(ブラケット84b)との間に調整ネジ95を介してスプリング94が張架され、調整ネジ95で挟圧力Pを設定可能である。プリセットタイプの他のグリップローラも同様である。
【0058】
また、駆動アーム91およびスプリング92による加圧機構を備えたグリップローラ68(61,62,65,69)は、可撓性基板1の導入作業やメンテナンス作業の際に、可動側ローラ81を離反状態に保持可能な解除機構を備えている。図3において、アクチュエータA8により、駆動アーム91を2点鎖線で示されるトグル位置91tまで角変位させると、第1アーム89および該第1アーム89と回動軸87を介して一体の第2アーム87aは、スプリング92の付勢に抗して、図中破線矢印で示される加圧方向と反対方向に回動可能となる。
【0059】
この状態で、作業者が延長アーム85を傾倒させ、可動側ローラ81を固定側ローラ82から離反させれば、トグルスプリングとして機能するスプリング92の付勢力によって、可動側ローラ81は離反状態に保持され、可撓性基板1の導入作業などを行うことができる。可撓性基板1を導入後、延長アーム85を元位置に戻せば、スプリング92の付勢力によって、可動側ローラ81は固定側ローラ82に直ちに圧接される。
【0060】
次に、以上のように構成された薄膜積層体製造装置100で、可撓性基板1の表面に薄膜太陽電池の光電変換層を積層形成する場合、図1(および図2)に示すように、可撓性基板1はコア11に巻かれたロール1aとして第1コア収容部10のロールコア駆動装置(11)にセットされ、さらにロール1aから巻出された可撓性基板1の先端部は、第1搬送部20、成膜部30、第2搬送部40に挿通されて第2コア収容部50の空のコア51に係止され、張力を掛けて巻取り可能な状態とする。
【0061】
上記各コア収容部10,50におけるロール位置制御装置14,54は、コア11,51を軸方向の基準位置に位置させており、上記初期状態における可撓性基板1の上端位置(搬送高さ)がセンサS3,S6によって検出され、コア11,51の軸方向位置の初期値としてロール位置制御部72の保持手段(ROMなど)に保持される。
【0062】
このような準備作業を経た後、可撓性基板1を巻出し側のロール1aから成膜部30を通って巻取り側のロール1bに、各成膜ユニット33に対応した所定ピッチで正方向Fにステップ搬送し、各停止期間において成膜工程を実施する。
【0063】
可撓性基板1のステップ搬送時には、搬送制御部71により、4つのモータM1,M2,M4,M5が一斉に作動状態となるが、成膜部30における搬送量および搬送速度は、成膜部30の搬送方向F下流側に位置した第2搬送部40の駆動ローラ41(モータM4)の速度および回転量によって制御される。成膜部30の搬送方向F上流側に位置した第1搬送部20の駆動ロール21(モータM2)は、同側の張力検出ロール22(張力検出センサT2)の検出値が所定値となるようにトルク制御される。このような制御により、成膜部30における可撓性基板1の搬送張力、搬送量および搬送速度が制御される。
【0064】
巻出し側のコア11(モータM1)は、張力検出ロール12(張力検出センサT1)の検出値が所定値になるようにトルク制御され、それにより所定張力で可撓性基板1がロール1aから巻出される。また、巻取り側のコア51(モータM5)は、張力検出ロール52(張力検出センサT5)の検出値が所定値になるようにトルク制御され、それにより所定張力で成膜済みの可撓性基板1がロール1bに巻き取られる。
【0065】
さらに、搬送高さ制御部73によりグリップローラ61,62,65,68,69が作動状態となり、各センサS1,S2,S5,S8,S9の検出値に基づいて対応するアクチュエータA1,A2,A5,A8,A9によりグリップローラ61,62,65,68,69の挟圧力が制御され、成膜部30(62〜68)、巻出し区間(61)および巻取り区間(69)における可撓性基板1の搬送高さが一定になるように制御される。
【0066】
また、ロール位置制御部72により、巻取り側のロール位置制御装置54が作動状態となり、センサS6の検出値に基づいてアクチュエータA6によりコア51の軸方向(上下方向)位置が制御され、成膜部30下流側での搬送誤差などによるコア51の巻きずれが防止される。なお、巻出し側のロール位置制御装置14は、コア11を所定の軸方向位置にした状態で保持される。
【0067】
上記のような制御を通じて可撓性基板1を正方向Fにステップ搬送しつつ成膜工程を実施し、巻取り側のロール1bが満巻きになると、成膜部30における各成膜ユニット33のガス種の切替えを行った後、可撓性基板1の搬送方向を逆方向Rに切替えて次の成膜工程を実施する前に、次のように各ロール位置制御装置14,54および各グリップローラ61,62,65,68,69の初期化が行われる。
【0068】
先ず、各コア収容部10,50のセンサS3,S6によって当該部位における可撓性基板1の現在の搬送高さが検出され、ロール位置制御部72に保持された初期値との偏差が検出される。この偏差に基づいてアクチュエータA3,A6が駆動され、各ロール位置制御装置14,54によるロールコア11,51の軸方向位置が再設定される。次いで、搬送高さ制御部73に保持された初期値に基づいて各アクチュエータA1,A2,A5,A8,A9の角変位が再設定され、各グリップローラ61,62,65,68,69の挟圧力Pxが初期値に再設定される。
【0069】
上記のような初期化作業を実施した後、搬送制御部71により、4つのモータM1,M2,M4,M5の回転方向が反転されて作動状態となり、第1搬送部20の駆動ロール21(モータM2)によって搬送量および搬送速度が制御され、かつ、第2搬送部40の駆動ローラ41(モータM4)が、同側の張力検出ロール42(張力検出センサT4)の検出値が所定値となるようにトルク制御されることで、搬送張力、搬送量および搬送速度が制御された状態で、可撓性基板1の逆方向Rのステップ搬送が実施され、各停止期間において各成膜ユニット33で成膜工程が実施される。
【0070】
その際、正方向Fへの搬送時とは逆に、巻出し側のコア51(モータM5)が、張力検出ロール52(張力検出センサT5)の検出値が所定値になるようにトルク制御されることで、所定張力にて可撓性基板1がロール1bから巻出され、巻取り側のコア11(モータM1)が、張力検出ロール12(張力検出センサT1)の検出値が所定値になるようにトルク制御されることで、所定張力にて成膜済みの可撓性基板1がロール1aに巻き取られる。
【0071】
上記逆方向Rへのステップ搬送および成膜工程においても、前記同様に各グリップローラ61,62,65,68,69により可撓性基板1の搬送高さが一定になるように制御される。搬送方向の切替え前後を通じて、可撓性基板1の上側縁部は各グリップローラ61〜69で挟持されており、その上端位置が維持されていることは勿論、逆方向Rへの搬送に先立ち各グリップローラ61,62,65,68,69の挟圧力が初期値に再設定されているので、各グリップローラ61,62,65,68,69の挟圧力Px,−Pおよびそれにより可撓性基板1に付与される展張力Qx,−Qは、可撓性基板1の搬送高さを初期値に収束させる方向に作用する。
【0072】
しかも、各グリップローラ61,62,65,68,69による搬送高さの制御に先立ち、巻出し側のロール位置制御装置(54)のロールコア(51)の軸方向位置が初期値に再設定されかつ保持されているので、巻出しロール(1b)から搬送高さの変動要因が成膜部30側に伝播することもない。
【0073】
なお、上記実施形態では、各搬送部20,40、成膜部30、および、9つのグリップローラ61〜69が搬送方向F,Rに対称に配置される場合を示したが、機器配置は必ずしも搬送方向F,Rに対称でなくてもよい。また、アクティブタイプのグリップローラとプリセットタイプのグリップローラの配分や設置数も実施形態に限定されるものではなく、搬送経路の上下にアクティブタイプのグリップローラを設置することもできる。
【0074】
また、上記第1実施形態では、グリップローラ68(61,62,65,69)の挟圧力Pxに対応する駆動アーム91の角変位をアクチュエータA8(A1,A2,A5,A9)で制御するとともに、角変位の初期値を、搬送高さ制御部73に保持し、それに基づいて再設定を行う場合を示したが、以下に述べる第2実施形態のように、グリップローラの挟圧力Pxを直接的に検出することもできる。
【0075】
(第2実施形態)
図5に示すように、第2実施形態では、グリップローラ68(81,82)の固定側の支持部材84の基部に挟圧力検出センサSGが付設されている。この挟圧力検出センサSGは、可動側の支持部材83を介してグリップローラ81,82に付与される挟圧力Pxにより支持部材84の基部に生じる微小な歪を検出する少なくとも1つの歪センサで構成されている。このような歪センサ(歪ゲージ)としては、例えば、抵抗線歪センサ、半導体歪センサ、圧電歪センサなどを使用可能である。
【0076】
図6に示す例では、挟圧力検出センサSGは、支持部材84の外側面84a(対になる支持部材83と反対側の面)に貼付された2つの歪センサG1,G2と、内側面84b(対になる支持部材83側の面)に貼付された2つの歪センサG3,G4とで構成されている。これら4つの歪センサG1〜G4は、図7に示すようにブリッジ回路を構成することで微小な抵抗値の変化を検知可能となっており、ブリッジ回路の入力側には電源97(交流または直流電源)が接続され、出力側はアンプ98を介して搬送高さ制御部73に接続されている。
【0077】
図5および図6において、支持部材84の基部に挟圧力Pxによる曲げモーメントが作用すると、外側面84aには圧縮歪みが生じ、内側面84bには引張歪み(伸び歪み)が生じる。歪センサG1〜G4は、圧縮側(G1,G2)では抵抗値が減少し、伸び側(G3,G4)では抵抗値が増加するので、これらの抵抗差に応じた電流が生じ、アンプで増幅されて搬送高さ制御部73に出力される。
【0078】
上記構成に基づいて、先ず、事前設定を次のように実施する。予め計算によって求めた駆動アーム91の角変位と挟圧力Pxcの関係(図8理論値)と、駆動アーム91を実際に図5に91′で示す90度の位置まで往復移動させたときの角変位と、挟圧力検出センサSGに検出された挟圧力Pxc(図8の実測値B)を元に、相互の誤差が最小になるように図5の調整ネジ93でスプリング92の初期変位を調整する。これにより、図8に示される実測値Aが得られるが、この操作のみで駆動アーム91の角変位全領域において理論値と完全に一致させることは困難である。
【0079】
そこで、実際にグリップローラを取り付けた状態で最終調整して得られた図8の実測値Aに係る駆動アーム91の角変位と挟圧力Pxcの関係を、予め、図5に示す搬送高さ制御部73の保持手段(ROMなど)に記憶させておき、可撓性基板1の搬送時に各センサS1,S2,S5,S8,S9の検出値に基づいて、基準高さと前記センサで検出された高さとの偏差を元に必要挟圧力Pxを計算し、記憶しておいた駆動アーム91の角度と挟圧力Pxcの関係から駆動アーム91の角変位を決定し、必要挟圧力Pxが得られるように駆動アーム91の角変位をアクチュエータA1,A2,A5,A8,A9で制御し、成膜部30(62〜68)、巻出し区間(61)および巻取り区間(69)における可撓性基板1の搬送高さが一定になるようにする。
【0080】
その際、設定した加圧力指令値Px0と実際に挟圧力検出センサSGから得られた挟圧力Pxの偏差が最小となるように、駆動アーム91の角変位をアクチュエータA1,A2,A5,A8,A9で制御する。可動側ローラ81が、上記角変位に応じたスプリング92の付勢力にレバー比を乗じた挟圧力Pxで固定側ローラ82に圧接された時に、挟圧力検出センサSGに検出される挟圧力Pxの信号がアンプ98で増幅され、搬送高さ制御部73にフィードバックされる。これにより、第一アーム89から延長アーム85を経て支持部材83までの機構部における誤差などの機械系誤差が補償され、搬送高さ制御の精度を向上できる。
【0081】
上記制御において、基準高さと各センサS1,S2,S5,S8,S9で検出された高さとの偏差や、隣接した2つのセンサSA,SDの検出値の差から推定される可撓性基板1の傾斜、それらに基づいてアクチュエータA1,A2,A5,A8,A9に出力すべき制御量との関係を、予め制御関数やデータテーブルとしてメモリーに記憶しておくことで、偏差を速やかに収束させ、安定的な高さ制御が行える。
【0082】
第2実施形態においても、先述した第1実施形態の場合と同様に、可撓性基板1の正方向Fの搬送・成膜工程から逆方向Rの搬送・成膜工程に切替る際には、搬送高さ制御部73に保持された初期値に基づいて各アクチュエータA1,A2,A5,A8,A9の角変位が再設定され、各グリップローラ61,62,65,68,69の挟圧力Pxが初期値に再設定されるが、この際の初期値が、上述した挟圧力検出センサSGの検出値を反映したプロセスで取得されることに加えて、再設定時に挟圧力検出センサSGに検出される挟圧力Pxを搬送高さ制御部73にフィードバックして初期値との偏差を補正することもできる。
【0083】
なお、上記第2実施形態では、挟圧力検出センサSGが4つの歪センサG1〜G4で構成される場合を示したが、外側面84aと内側面84bとにそれぞれ1つずつの歪センサを設けることもでき、また、外側面84aと内側面84bの何れか一方にのみ1つまたは2つの歪センサを設けることもできる。これらの場合にも、対応する歪センサを固定抵抗に置換することでブリッジ回路を構成することが有利である。さらに、可動側の支持部材83に挟圧力検出センサSG(歪センサG1〜G4)を付設することもできるが、配線の引き回しや、検出精度の点では固定側の支持部材84が有利である。
【0084】
また、グリップローラの設置部位が高温になることが想定される場合には、挟圧力検出センサSGを構成する歪センサG1〜G4の表面を断熱材で覆うこともできる。あるいは、事前設定を行って挟圧力Pxの初期値を搬送高さ制御部73に保持した後に、挟圧力検出センサSGを取り外すこともできる。
【0085】
その場合、歪センサG1〜G4を、支持部材84と同程度またはそれ以下の弾性率を有する素材で構成された試験片に貼付し、該試験片を、支持部材84の外側面84aおよび/または内側面84bに取付けて事前設定を行った後に、試験片ごと取り外すようにしても良い。この場合、試験片と支持部材84の取付け面には、想定される圧縮または引張歪みが伝達されるように、各方向(図示例では上下方向)の相互移動が拘束されるような嵌合形状(例えばI型など)で嵌脱可能に取り付けられることが好ましい。
【0086】
(第3実施形態)
上記第1および第2実施形態では、可撓性基板1を挟持するグリップローラとして、一対の円錐ローラ81,82を用いる場合を示したが、図9に示す第3実施形態のように、可撓性基板1の挟持面における回転方向が搬送方向に対して幅方向縁端側に向かう偏角θ(傾斜角)を有するように支持部材283,284で回転可能に支持された円筒ローラ281,282を用いることもできる。その場合、可撓性基板1の搬送方向F,Rの切替え時に、各グリップローラ281,282の偏角θを一斉に反転させる反転手段(リンク機構とそれを操作するアクチュエータなど)が、固定側の支持部材284またはブラケット286に付設される。
【0087】
図9に示す例では、ブラケット286は、可撓性基板1の搬送面に直交する軸286aを中心に揺動可能に支持された揺動ブラケットであり、このブラケット286に連結された図示しないアクチュエータで反転操作が実施されるか、または、ブラケット286に各揺動端で安定させるトグルバネが連結され、手動で反転操作を実施するようにしても良い。ブラケット286の揺動範囲は、各側でストッパー286bにて規制される。ストッパー286bは、例えば、図示しないブラケットに螺合するネジで構成され、その螺合位置を調整することにより、ブラケット286の揺動範囲を設定できるようになっている。
【0088】
グリップローラ281,282による可撓性基板1の挟持位置が、ブラケット286の揺動中心(286a)とずれている場合、反転操作に伴い、グリップローラ281,282の挟持位置が搬送方向F,Rに移動することになる。しかし、グリップローラ281,282が回転可能であることに加えて、グリップローラ281,282の偏角θは0.5〜2度(実用的な例では1度前後)と極めて小さいので、先述したような挟圧力Pxの初期化を実施することで、反転操作による影響は無視できるレベルに過ぎない。
【0089】
以上、本発明のいくつかの実施形態につき述べたが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、上記以外にも本発明の技術的思想に基づいてさらに各種の変形および変更が可能である。
【0090】
例えば、上記各実施形態では、可撓性基板1をステップ搬送しつつその停止期間中に成膜を行う薄膜積層体製造装置について述べたが、本発明は、可撓性基板を正逆双方向に連続的に搬送しつつ成膜を行う薄膜積層体製造装置にも実施可能である。また、上記第2および第3実施形態のグリップローラおよび制御システムは、可撓性基板を一方向にステップ搬送または連続搬送しつつ成膜を行う薄膜積層体製造装置に対しても実施可能である。さらに、本発明は、有機ELの半導体薄膜など、太陽電池以外の薄膜積層体を製造する装置にも実施可能である。
【符号の説明】
【0091】
1 可撓性基板
10,50 コア収容部
11,51 コア
12,52 張力検出ロール
13,53 ガイドロール
14,54 ロール位置制御装置
20,40 搬送部
21,41 駆動ロール
22,42 張力検出ロール
30 成膜部
33 成膜ユニット
61,62,65,68,69 グリップローラ(アクティブタイプ)
63,64,66,67 グリップローラ(プリセットタイプ)
70 主制御部
71 搬送制御部
72 ロール位置制御部
73 搬送高さ制御部
80 真空室
81,82 円錐ローラ
83,84 支持部材
85 延長アーム
87 回動軸
87a 第2アーム
88 磁気シール軸受
89 第1アーム
89a 連結ピン
91 駆動アーム
91b 支持ピン
92,94 スプリング
93,95 調整ネジ
268 グリップローラ(アクティブタイプ)
281,282 円筒状ローラ
283,284 支持部材
286 ブラケット
A1〜A9 アクチュエータ
A8e エンコーダ
C1,C5 パウダクラッチ
G1〜G4 歪センサ
M1,M2,M4,M5 モータ
S1,S2,S3,S5,S6,S8,S9 センサ(搬送高さ検出センサ)
SA,SD センサ(搬送高さ検出センサ)
SG 挟圧力検出センサ
T1,T2,T4,T5 張力検出センサ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の可撓性基板を縦姿勢で横方向に搬送し、前記基板の搬送経路に沿って設置された成膜部で、前記基板の表面に薄膜を積層形成する薄膜積層体製造装置であって、
前記搬送経路のそれぞれの端部で前記基板をロールから巻出し/ロールに巻取るための正逆双方向に駆動可能なロールコア駆動装置と、
前記基板の縁部を挟持しかつその挟圧力に応じた展張力を前記縁部に付与すべく回転可能に支持されたグリップローラと、
前記成膜部における前記基板の搬送高さを検知する検知手段と、
前記検知手段の検出値に基づいて前記グリップローラの前記挟圧力を制御する搬送高さ制御装置と、を備え、
前記搬送高さ制御装置は、前記グリップローラの前記挟圧力の初期値を保持する保持手段を有し、前記基板の搬送方向の切替え時に、前記初期値に基づいて前記グリップローラの前記挟圧力を再設定可能である、薄膜積層体製造装置。
【請求項2】
前記グリップローラは、前記搬送経路に沿って複数箇所に配設され、そのうちの少なくとも1つが、前記搬送高さ制御装置によって前記挟圧力を制御可能であるとともに前記初期値に基づいて前記挟圧力を再設定可能であり、他は、挟圧力を事前設定することのみ可能である、請求項1記載の薄膜積層体製造装置。
【請求項3】
前記グリップローラの複数が、前記挟圧力を制御可能であるとともに前記挟圧力を再設定可能であり、前記保持手段は、これら制御可能なグリップローラ毎に挟圧力の初期値を保持可能であり、前記基板の搬送方向の切替え時に、前記各初期値に基づいて前記各制御可能なグリップローラの挟圧力を個別に再設定可能である、請求項2記載の薄膜積層体製造装置。
【請求項4】
前記各ロールコア駆動装置は、それぞれ、前記各ロールとそれらに隣接したロールとの間で前記基板の高さを検知する第2の検知手段と、前記第2の検知手段の検出値に基づいて前記各ロールの軸方向位置を変位させるロール位置制御装置とを有し、前記ロール位置制御装置は、前記各ロールの軸方向位置の初期値を保持する第2の保持手段を有し、前記基板の搬送方向の切替え時に、前記初期値に基づいて前記各ロールの軸方向位置を再設定可能である、請求項1〜3の何れか一項記載の薄膜積層体製造装置。
【請求項5】
帯状の可撓性基板を縦姿勢で横方向に搬送し、前記基板の搬送経路に沿って設置された成膜部で、前記基板の表面に薄膜を積層形成する薄膜積層体製造装置であって、
前記搬送経路のそれぞれの端部で前記基板をロールから巻出し/ロールに巻取るための正逆双方向に駆動可能なロールコア駆動装置と、
前記基板の縁部を挟持しかつその挟圧力に応じた展張力を前記縁部に付与すべく回転可能に支持されたグリップローラと、
前記成膜部における前記基板の搬送高さを検知する検知手段と、
前記検知手段の検出値に基づいて前記グリップローラの前記挟圧力を制御する搬送高さ制御装置と、を備え、
前記各ロールコア駆動装置は、それぞれ、前記各ロールとそれらに隣接したロールとの間で前記基板の高さを検知する第2の検知手段と、前記第2の検知手段の検出値に基づいて前記各ロールの軸方向位置を変位させるロール位置制御装置とを有し、前記ロール位置制御装置は、前記各ロールの軸方向位置の初期値を保持する保持手段を有し、前記基板の搬送方向の切替え時に、前記初期値に基づいて前記各ロールの軸方向位置を再設定可能である、薄膜積層体製造装置。
【請求項6】
前記第2の検知手段は、前記各ロールの軸方向位置の初期値を検出する手段を兼ねる、請求項4または5記載の薄膜積層体製造装置。
【請求項7】
前記成膜部と前記各ロールコア駆動装置との間にそれぞれ配設された正逆双方向に駆動可能な駆動ロールと、前記各駆動ロールと前記成膜部との間にそれぞれ配設された前記基板の搬送張力検出手段と、前記各駆動ロールおよび前記各ロールコア駆動装置を同期させ、前記基板の正逆各搬送方向に対応した搬送張力、搬送速度および搬送量の制御を行う搬送制御装置と、をさらに備えた、請求項1〜6の何れか一項記載の薄膜積層体製造装置。
【請求項8】
前記成膜部に対して同側に位置した前記各駆動ロールと前記各ロールコア駆動装置との間に前記グリップローラをそれぞれ備えた、請求項7記載の薄膜積層体製造装置。
【請求項9】
帯状の可撓性基板を縦姿勢で横方向に搬送し、前記基板の搬送経路に沿って設置された成膜部で、前記基板の表面に薄膜を積層形成する薄膜積層体製造装置の運転方法であって、前記薄膜積層体製造装置が、
前記搬送経路のそれぞれの端部で前記基板をロールから巻出し/ロールに巻取るための正逆双方向に駆動可能なロールコア駆動装置と、
前記基板の縁部を挟持しかつその挟圧力に応じた展張力を前記縁部に付与すべく回転可能に支持されたグリップローラと、
前記成膜部における前記基板の搬送高さを検知する検知手段と、前記検知手段の検出値に基づいて前記グリップローラの前記挟圧力を制御する搬送高さ制御装置と、を備え、
前記各ロールコア駆動装置が、それぞれ、前記各ロールとそれらに隣接したロールとの間で前記基板の高さを検知する第2の検知手段と、前記第2の検知手段の検出値に基づいて前記各ロールの軸方向位置を変位させるロール位置制御装置とを有する場合において、
前記基板の搬送方向の切替え時に、前記基板を停止させた状態で、前記各ロール位置制御装置による前記各ロールの軸方向位置を初期値に再設定し、その後、前記グリップローラの前記挟圧力を初期値に再設定することを特徴とする薄膜積層体製造装置の運転方法。
【請求項10】
帯状の可撓性基板を縦姿勢で横方向に搬送し、前記基板の搬送経路に沿って設置された成膜部で、前記基板の表面に薄膜を積層形成する薄膜積層体製造装置であって、
前記搬送経路のそれぞれの端部で前記基板をロールから巻出し/ロールに巻取るための正逆双方向に駆動可能なロールコア駆動装置と、
前記基板の縁部を挟持しかつその挟圧力に応じた展張力を前記縁部に付与すべく回転可能に支持されたグリップローラと、
前記成膜部における前記基板の搬送高さを検知する検知手段と、
前記検知手段の検出値に基づいて前記グリップローラの前記挟圧力を制御する搬送高さ制御装置と、を備え、
前記搬送高さ制御装置は、前記グリップローラの前記挟圧力を検知する手段と、前記挟圧力の初期値を保持する保持手段とを有し、前記基板の搬送方向の切替え時に、前記初期値に基づいて前記グリップローラの前記挟圧力を再設定可能である、薄膜積層体製造装置。
【請求項11】
前記グリップローラを回転可能かつ相互に接離可能に支持する支持部材と、前記支持部材を介して前記グリップローラに前記挟圧力を生じさせる付勢手段と、をさらに備え、
前記挟圧力検知手段は、前記支持部材の基部に付設された少なくとも1つの歪センサを含む、請求項10記載の薄膜積層体製造装置。
【請求項12】
前記搬送高さ制御装置は、前記付勢手段を変位させるアクチュエータをさらに有し、前記保持手段は、前記挟圧力の初期値を前記アクチュエータの変位量として保持可能であり、前記搬送高さ検知手段の検出値と基準値との偏差に応じて出力される前記アクチュエータの制御量と、前記歪センサの検出値とを比較し、その差分が最小になるように、前記アクチュエータをフィードバック制御するように構成されている、請求項11記載の薄膜積層体製造装置。
【請求項13】
前記挟圧力の初期値は、前記アクチュエータの変位量を、前記挟圧力検知手段を構成する前記歪センサからの信号に基づいて補正されて前記保持手段に保持されている、請求項12記載の薄膜積層体製造装置。
【請求項14】
前記搬送高さ検知手段の検出値と基準値との偏差およびそれに応じて出力される前記アクチュエータの制御量が、予め制御関数またはデータテーブルとして前記搬送高さ制御装置に格納されており、前記制御関数またはデータテーブルを介した制御量と前記歪センサの検出値との前記差分が最小になるように、前記アクチュエータをフィードバック制御するように構成されている、請求項12記載の薄膜積層体製造装置。
【請求項15】
前記挟圧力検知手段を構成する前記歪センサは、前記支持部材の基部に取り外し可能に付設されている、請求項11記載の薄膜積層体製造装置。
【請求項16】
帯状の可撓性基板を縦姿勢で横方向に搬送し、前記基板の搬送経路に沿って設置された成膜部で、前記基板の表面に薄膜を積層形成する薄膜積層体製造装置であって、
前記基板の縁部を挟持しかつその挟圧力に応じた展張力を前記縁部に付与すべく回転可能に支持されたグリップローラと、
前記グリップローラを回転可能かつ相互に接離可能に支持する支持部材と、
前記支持部材を介して前記グリップローラに前記挟圧力を生じさせる付勢手段と、
前記成膜部における前記基板の搬送高さを検知する検知手段と、
前記検知手段の検出値に基づいて前記グリップローラの前記挟圧力を制御する搬送高さ制御装置と、を備え、
前記搬送高さ制御装置は、前記付勢手段を変位させるアクチュエータと、前記グリップローラの前記挟圧力を検知する手段と、前記挟圧力の初期値を前記アクチュエータの変位量として保持する保持手段とを有し、前記搬送高さ検知手段の検出値と基準値との偏差に応じて出力される前記アクチュエータの制御量と、前記挟圧力検知手段の検出値とを比較し、その差分が最小になるように、前記アクチュエータをフィードバック制御するように構成されている、薄膜積層体製造装置。
【請求項17】
前記搬送経路のそれぞれの端部で前記基板をロールから巻出し/ロールに巻取るための正逆双方向に駆動可能なロールコア駆動装置をさらに備え、
前記搬送高さ制御装置は、前記挟圧力の初期値を保持する保持手段をさらに有し、前記基板の搬送方向の切替え時に、前記初期値に基づいて前記グリップローラの前記挟圧力を再設定可能である、請求項16記載の薄膜積層体製造装置。
【請求項18】
前記挟圧力検知手段は、前記支持部材の基部に付設された少なくとも1つの歪センサを含む、請求項17記載の薄膜積層体製造装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−26031(P2012−26031A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136095(P2011−136095)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】