説明

薄膜蒸着装置

【課題】大型基板の量産工程に容易に適用でき、製造収率が向上した薄膜蒸着装置を提供する。
【解決手段】基板上に薄膜を形成するための薄膜蒸着装置において、蒸着物質を放射する蒸着源と、蒸着源の一側に配され、第1方向に沿って複数の蒸着源ノズルが形成される蒸着源ノズル部と、蒸着源ノズル部と対向して配され、第1方向に沿って複数のパターニングスリットが形成されるパターニングスリットシートと、蒸着源ノズル部とパターニングスリットシートとの間に第1方向に沿って配されて、蒸着源ノズル部とパターニングスリットシートとの間の空間を複数の蒸着空間に区切る複数の遮断板を備える遮断板アセンブリと、基板と蒸着源との間に配される遮断部材と、を備え、薄膜蒸着装置は、基板と所定程度離隔するように形成され、基板は、薄膜蒸着装置に対して相対的に移動自在に形成され、遮断部材は、基板の少なくとも一部を遮蔽するように基板と共に移動することを特徴とする薄膜蒸着装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薄膜蒸着装置に係り、詳細には、大型基板の量産工程に容易に適用でき、製造収率が向上した薄膜蒸着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ装置のうち、有機発光ディスプレイ装置は、視野角が広くてコントラストが優秀なだけではなく、応答速度が速いという長所を持っていて、次世代ディスプレイ装置として注目されている。
【0003】
一般的に、有機発光ディスプレイ装置は、アノード及びカソードから注入される正孔及び電子が発光層で再結合して発光する原理で色相を具現できるように、アノードとカソードとの間に発光層を挿入した積層型構造を持っている。しかし、このような構造では高効率発光を得難いため、それぞれの電極と発光層との間に電子注入層、電子輸送層、正孔輸送層及び正孔注入層などの中間層を選択的に追加挿入して使用している。
【0004】
しかし、発光層及び中間層などの有機薄膜の微細パターンを形成することが実質的に非常に難しく、前記層によって赤色、緑色及び青色の発光効率が変わるため、従来の薄膜蒸着装置では、大面積(5G以上のマザーガラスに対するパターニングが不可能であって、満足すべきレベルの駆動電圧、電流密度、輝度、色純度、発光効率及び寿命などを持つ大型有機発光ディスプレイ装置を製造できないところ、その改善が至急である。
【0005】
一方、有機発光ディスプレイ装置は、互いに対向した第1電極と第2電極との間に発光層及びそれを含む中間層を備える。この時、前記電極及び中間層はいろいろな方法で形成されうるが、そのうち一つの方法が蒸着である。蒸着方法を利用して有機発光ディスプレイ装置を製作するためには、薄膜などが形成される基板面に、形成される薄膜などのパターンと同じパターンを持つファインメタルマスク(Fine Metal Mask:FMM)を密着させ、薄膜などの材料を蒸着して所定パターンの薄膜を形成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、製造が容易であり、大型基板の量産工程に容易に適用でき、製造収率及び蒸着効率が向上し、物質のリサイクルが容易な薄膜蒸着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基板上に薄膜を形成するための薄膜蒸着装置において、蒸着物質を放射する蒸着源と、前記蒸着源の一側に配され、第1方向に沿って複数の蒸着源ノズルが形成される蒸着源ノズル部と、前記蒸着源ノズル部と対向して配され、前記第1方向に沿って複数のパターニングスリットが形成されるパターニングスリットシートと、前記蒸着源ノズル部と前記パターニングスリットシートとの間に前記第1方向に沿って配されて、前記蒸着源ノズル部と前記パターニングスリットシートとの間の空間を複数の蒸着空間に区切る複数の遮断板を備える遮断板アセンブリと、前記基板と前記蒸着源との間に配される遮断部材と、を備え、前記薄膜蒸着装置は、前記基板と所定程度離隔するように形成され、前記基板は、前記薄膜蒸着装置に対して相対的に移動自在に形成され、前記遮断部材は、前記基板の少なくとも一部を遮蔽するように、前記基板と共に移動することを特徴とする薄膜蒸着装置を提供する。
【0008】
本発明において、前記遮断部材は、前記基板の非成膜領域を遮蔽するように備えられる。
本発明において、前記遮断部材は、前記基板の枠領域を遮蔽するように備えられる。
本発明において、前記遮断部材は、前記遮断板アセンブリと前記パターニングスリットシートとの間の空間で移動する。
【0009】
本発明において、前記遮断部材は、前記基板の一端部の第1非成膜領域を遮蔽するように配された第1遮断部材と、前記基板の他端部の第2非成膜領域を遮蔽するように配された第2遮断部材と、を備える。
ここで、前記第1遮断部材及び前記第2遮断部材は、それぞれ平板プレート状に備えられる。
【0010】
ここで、前記第1遮断部材は、前記第1非成膜領域の直下に位置し、前記第2遮断部材は、前記第2非成膜領域の直下に位置するように、前記第1遮断部材及び前記第2遮断部材が前記基板と共に移動する。
ここで、前記第1遮断部材と前記第2遮断部材とは、前記基板と同じ速度で移動する。
ここで、前記基板に対する前記第1遮断部材及び前記第2遮断部材の相対的な位置が一定に維持される。
【0011】
ここで、前記第1遮断部材及び前記第2遮断部材の断面は“∪”形状に形成される。
ここで、前記第1遮断部材及び前記第2遮断部材のうちいずれか一つの断面は“∪”形状に形成され、他の一つの断面は“L”形状に形成される。
ここで、前記基板に蒸着が行われていない間に、前記第1遮断部材と前記第2遮断部材とは互いに重畳して位置するように配される。
【0012】
ここで、前記第1遮断部材は、前記第1非成膜領域が前記遮断板アセンブリと前記パターニングスリットシートとの間を過ぎる間に、前記第1非成膜領域を遮蔽し、前記第2遮断部材は、前記第2非成膜領域が前記遮断板アセンブリと前記パターニングスリットシートとの間を過ぎる間に、前記第2非成膜領域を遮蔽するように、前記第1遮断部材及び前記第2遮断部材が前記基板と共に移動する。
【0013】
ここで、前記第1非成膜領域が前記遮断板アセンブリと前記パターニングスリットシートとの間を過ぎる間に、前記第1遮断部材は、前記基板と同じ速度で移動し、前記第2非成膜領域が前記遮断板アセンブリと前記パターニングスリットシートとの間を過ぎる間に、前記第2遮断部材は、前記基板と同じ速度で移動する。
ここで、前記第1非成膜領域が前記遮断板アセンブリと前記パターニングスリットシートとの間を過ぎる間に、前記基板に対する前記第1遮断部材の相対的な位置が一定に維持され、前記第2非成膜領域が前記遮断板アセンブリと前記パターニングスリットシートとの間を過ぎる間に、前記基板に対する前記第2遮断部材の相対的な位置が一定に維持される。
【0014】
本発明において、前記薄膜蒸着装置の前記パターニングスリットシートは、前記基板より小さく形成される。
本発明において、前記複数の遮断板それぞれは、前記第1方向と実質的に垂直な第2方向に沿って延設される。
【0015】
本発明において、前記遮断板アセンブリは、複数の第1遮断板を備える第1遮断板アセンブリと、複数の第2遮断板を備える第2遮断板アセンブリとを備える。
本発明において、前記基板が前記薄膜蒸着装置に対して相対的に移動しつつ、前記基板上に前記各薄膜蒸着装置の各蒸着物質が連続的に蒸着される。
【0016】
本発明において、前記薄膜蒸着装置と前記基板とは、前記基板で前記蒸着物質が蒸着される面と平行な面に沿って、いずれか一側が他側に対して相対的に移動する。
他の側面による本発明は、基板上に薄膜を形成するための薄膜蒸着装置において、蒸着物質を放射する蒸着源と、前記蒸着源の一側に配され、第1方向に沿って複数の蒸着源ノズルが形成される蒸着源ノズル部と、前記蒸着源ノズル部と対向して配され、前記第1方向に対して垂直な第2方向に沿って複数のパターニングスリットが形成されるパターニングスリットシートと、前記基板と前記蒸着源との間に配される遮断部材と、を備え、前記基板が前記薄膜蒸着装置に対して前記第1方向に沿って移動しつつ蒸着が行われ、前記蒸着源、前記蒸着源ノズル部及び前記パターニングスリットシートは一体に形成され、前記遮断部材は、前記基板の少なくとも一部を遮蔽するように前記基板と共に移動することを特徴とする薄膜蒸着装置を提供する。
【0017】
本発明において、前記遮断部材は、前記基板の非成膜領域を遮蔽するように備えられる。
本発明において、前記遮断部材は、前記基板の枠領域を遮蔽するように備えられる。
本発明において、前記遮断部材は、前記遮断板アセンブリと前記パターニングスリットシートとの間の空間で移動する。
【0018】
本発明において、前記遮断部材は、前記基板の一端部の第1非成膜領域を遮蔽するように配された第1遮断部材と、前記基板の他端部の第2非成膜領域を遮蔽するように配された第2遮断部材とを備える。
本発明において、前記第1遮断部材及び前記第2遮断部材は、それぞれ平板プレート状に備えられる。
【0019】
ここで、前記第1遮断部材は、前記第1非成膜領域の直下に位置し、前記第2遮断部材は、前記第2非成膜領域の直下に位置するように、前記第1遮断部材及び前記第2遮断部材が前記基板と共に移動する。
ここで、前記第1遮断部材と前記第2遮断部材とは、前記基板と同じ速度で移動する。
ここで、前記基板に対する前記第1遮断部材及び前記第2遮断部材の相対的な位置が一定に維持される。
【0020】
ここで、前記第1遮断部材及び前記第2遮断部材の断面は、“∪”形状に形成される。
ここで、前記第1遮断部材及び前記第2遮断部材のうちいずれか一つの断面は、“∪”形状に形成され、他の一つの断面は、“L”形状に形成される。
ここで、前記基板に蒸着が行われていない間、前記第1遮断部材と前記第2遮断部材とは互いに重畳して位置するように配される。
【0021】
ここで、前記第1遮断部材は、前記第1非成膜領域が前記遮断板アセンブリと前記パターニングスリットシートとの間を過ぎる間に、前記第1非成膜領域を遮蔽し、前記第2遮断部材は、前記第2非成膜領域が前記遮断板アセンブリと前記パターニングスリットシートとの間を過ぎる間に、前記第2非成膜領域を遮蔽するように、前記第1遮断部材及び前記第2遮断部材が前記基板と共に移動する。
【0022】
ここで、前記第1非成膜領域が前記遮断板アセンブリと前記パターニングスリットシートとの間を過ぎる間に、前記第1遮断部材は、前記基板と同じ速度で移動し、前記第2非成膜領域が前記遮断板アセンブリと前記パターニングスリットシートとの間を過ぎる間に、前記第2遮断部材は、前記基板と同じ速度で移動する。
【0023】
ここで、前記第1非成膜領域が前記遮断板アセンブリと前記パターニングスリットシートとの間を過ぎる間に、前記基板に対する前記第1遮断部材の相対的な位置が一定に維持され、前記第2非成膜領域が前記遮断板アセンブリと前記パターニングスリットシートとの間を過ぎる間に、前記基板に対する前記第2遮断部材の相対的な位置が一定に維持される。
【0024】
本発明において、前記蒸着源及び前記蒸着源ノズル部と前記パターニングスリットシートは、連結部材により結合されて一体に形成される。
ここで、前記連結部材は、前記蒸着物質の移動経路をガイドする。
ここで、前記連結部材は、前記蒸着源及び前記蒸着源ノズル部と前記パターニングスリットシートとの間の空間を外部から密閉するように形成される。
【0025】
ここで、前記薄膜蒸着装置は、前記基板と所定程度離隔するように形成される。
本発明において、前記基板が前記薄膜蒸着装置に対して前記第1方向に沿って移動しつつ、前記基板上に前記蒸着物質が連続的に蒸着される。
本発明において、前記薄膜蒸着装置の前記パターニングスリットシートは、前記基板より小さく形成される。
【0026】
本発明において、前記複数の蒸着源ノズルは、所定角度チルトされるように形成される。
ここで、前記複数の蒸着源ノズルは、前記第1方向に沿って形成された2列の蒸着源ノズルを備え、前記2列の蒸着源ノズルは互いに対向する方向にチルトされる。
ここで、前記複数の蒸着源ノズルは、前記第1方向に沿って形成された2列の蒸着源ノズルを備え、前記2列の蒸着源ノズルのうち第1側に配された蒸着源ノズルは、パターニングスリットシートの第2側端部に向くように配され、前記2列の蒸着源ノズルのうち第2側に配された蒸着源ノズルは、パターニングスリットシートの第1側端部に向くように配される。
【発明の効果】
【0027】
本発明の薄膜蒸着装置によれば、製造が容易で、大型基板の量産工程に容易に適用できて、製造収率及び蒸着効率が向上して、蒸着物質のリサイクルが容易になる効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態による薄膜蒸着装置を概略的に示した斜視図である。
【図2】図1の薄膜蒸着装置の概略的な側面図である。
【図3】図1の薄膜蒸着装置の概略的な平面図である。
【図4A】本発明の第1実施形態による薄膜蒸着装置で、蒸着物質が蒸着されている状態を概略的に示す図面である。
【図4B】図4Aのように、遮断板により蒸着空間が分離された状態で発生する陰影を示す図面である。
【図4C】蒸着空間が分離されていない状態で発生する陰影を示す図面である。
【図5A】本発明の第1実施形態による薄膜蒸着装置を利用した有機発光ディスプレイ装置の製造方法を示す図面である。
【図5B】本発明の第1実施形態による薄膜蒸着装置を利用した有機発光ディスプレイ装置の製造方法を示す図面である。
【図5C】本発明の第1実施形態による薄膜蒸着装置を利用した有機発光ディスプレイ装置の製造方法を示す図面である。
【図5D】本発明の第1実施形態による薄膜蒸着装置を利用した有機発光ディスプレイ装置の製造方法を示す図面である。
【図6A】本発明の第1実施形態の一変形例による薄膜蒸着装置を利用した有機発光ディスプレイ装置の製造方法を示す図面である。
【図6B】本発明の第1実施形態の一変形例による薄膜蒸着装置を利用した有機発光ディスプレイ装置の製造方法を示す図面である。
【図6C】本発明の第1実施形態の一変形例による薄膜蒸着装置を利用した有機発光ディスプレイ装置の製造方法を示す図面である。
【図6D】本発明の第1実施形態の一変形例による薄膜蒸着装置を利用した有機発光ディスプレイ装置の製造方法を示す図面である。
【図7】本発明の第2実施形態による薄膜蒸着装置を概略的に示した斜視図である。
【図8】本発明による薄膜蒸着装置で製造できる有機発光ディスプレイ装置の断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態による薄膜蒸着装置を概略的に示した斜視図である。
【図10】図9の薄膜蒸着装置の概略的な側面図である。
【図11】図9の薄膜蒸着装置の概略的な平面図である。
【図12】本発明の第4実施形態による薄膜蒸着装置を示す図面である。
【図13】本発明による薄膜蒸着装置で蒸着源ノズルをチルトさせていない時、基板に蒸着された蒸着膜の分布形態を概略的に示す図面である。
【図14】本発明による薄膜蒸着装置で蒸着源ノズルをチルトさせた時、基板に蒸着された蒸着膜の分布形態を概略的に示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付した図面を参照して、本発明による望ましい実施形態を詳細に説明すれば、次の通りである。
図1は、本発明の第1実施形態による薄膜蒸着装置を概略的に示した斜視図であり、 図2は、図1の薄膜蒸着装置の概略的な側面図であり、図3は、図1の薄膜蒸着装置の概略的な平面図である。
【0030】
図1、図2及び図3を参照すれば、本発明の第1実施形態による薄膜蒸着装置100は、蒸着源110、蒸着源ノズル部120、遮断板アセンブリ130、パターニングスリットシート150及び遮断部材161、162を備える。
【0031】
ここで、図1、図2及び図3には、説明の便宜のためにチャンバーを図示していないが、図1ないし図3のあらゆる構成は、適切な真空度が維持されるチャンバー内に配されることが望ましい。これは、蒸着物質の直進性を確保するためである。
【0032】
詳細には、蒸着源110から放出された蒸着物質115を、蒸着源ノズル部120及びパターニングスリットシート150を通過して基板400に所望のパターンに蒸着させるためには、基本的に、チャンバー(図示せず)の内部はFMM(Fine Metal Mask)蒸着方法と同じ高真空状態を維持せねばならない。また、遮断板131及びパターニングスリットシート150の温度が、蒸着源110の温度より十分に低くなければならない(約100゜C以下)。なぜなら、遮断板131の温度が十分に低くて初めて遮断板131に衝突した蒸着物質115が再び蒸発する現象を防止でき、パターニングスリットシート150の温度が十分に低くて初めて、温度によるパターニングスリットシート150の熱膨張問題を最小化できるからである。この時、遮断板アセンブリ130は高温の蒸着源110に向かっており、蒸着源110と近いところは最大167℃ほどに温度が上昇するため、必要な場合に部分冷却装置がさらに備えられうる。このために、遮断板アセンブリ130には冷却部材が形成されうる。
【0033】
これらのチャンバー(図示せず)内には、被蒸着体である基板400が配される。前記基板400は平板表示装置用基板になりうるが、多くの平板表示装置を形成できるマザーガラスのような大面積基板が適用されうる。
ここで、本発明の第1実施形態では、基板400が薄膜蒸着装置100に対して相対的に移動しつつ蒸着が進められることを一特徴とする。
【0034】
詳細には、既存のFMM蒸着方法では、FMMサイズが基板サイズと同一に形成されねばならない。したがって、基板サイズが増大するほどFMMも大型化しなければならず、したがって、FMM製作が容易でなく、FMMを引張って精密なパターンに整列(align)するにも容易でないという問題点があった。
【0035】
これらの問題点を解決するために、本発明の第1実施形態による薄膜蒸着装置100は、薄膜蒸着装置100と基板400とが互いに相対的に移動しつつ蒸着が行われることを一特徴とする。言い換えれば、薄膜蒸着装置100と対向するように配された基板400が、Y軸方向に沿って移動しつつ連続的に蒸着を行う。すなわち、基板400が図1の矢印A方向に移動しつつスキャニング方式で蒸着が行われるのである。ここで、図面には、基板400がチャンバー(図示せず)内でY軸方向に移動しつつ蒸着が行われると図示されているが、本発明の思想はこれに制限されるものではなく、基板400は固定されていて、薄膜蒸着装置100自体がY軸方向に移動しつつ蒸着を行うことも可能であるといえる。
【0036】
したがって、本発明の薄膜蒸着装置100では、従来のFMMに比べて非常に小さくパターニングスリットシート150を作ることができる。すなわち、本発明の薄膜蒸着装置100の場合、基板400がY軸方向に沿って移動しつつ連続的に、すなわち、スキャニング方式で蒸着を行うため、パターニングスリットシート150のX軸方向及びY軸方向の長さは、基板400の長さより非常に小さく形成されうるのである。このように、従来のFMMに比べて非常に小さくパターニングスリットシート150を作ることができるため、本発明のパターニングスリットシート150はその製造が容易である。すなわち、パターニングスリットシート150のエッチング作業や、その後の精密引張及び溶接作業、移動及び洗浄作業などのあらゆる工程で、小さなサイズのパターニングスリットシート150がFMM蒸着方法に比べて有利である。また、これは、ディスプレイ装置が大型化するほどさらに有利になる。
【0037】
このように、薄膜蒸着装置100と基板400とが互いに相対的に移動しつつ蒸着が行われるためには、薄膜蒸着装置100と基板400とが一定程度離隔することが望ましい。これについては、後で詳細に記述する。
【0038】
一方、チャンバー内で前記基板400と対向する側には、蒸着物質115が収納及び加熱される蒸着源110が配される。前記蒸着源110内に収納されている蒸着物質115が気化することによって、基板400に蒸着が行われる。
詳細には、蒸着源110は、その内部に蒸着物質115が充填される坩堝111と、坩堝111を加熱させて坩堝111の内部に満たされた蒸着物質115を坩堝111の一側、詳細には、蒸着源ノズル部120側に蒸発させるためのヒーター112とを備える。
【0039】
蒸着源110の一側、詳細には、蒸着源110から基板400に向かう側には蒸着源ノズル部120が配される。そして、蒸着源ノズル部120には、X軸方向に沿って複数の蒸着源ノズル121が形成される。ここで、前記複数の蒸着源ノズル121は等間隔で形成されうる。蒸着源110内で気化された蒸着物質115は、これらの蒸着源ノズル部120を通過して、被蒸着体である基板400側に向かう。
【0040】
蒸着源ノズル部120の一側には、遮断板アセンブリ130が備えられる。前記遮断板アセンブリ130は、複数の遮断板131と、遮断板131の外側に備えられる遮断板フレーム132とを備える。前記複数の遮断板131は、X軸方向に沿って互いに平行に備えられうる。ここで、前記複数の遮断板131は等間隔で形成されうる。また、それぞれの遮断板131は図面から見た時、YZ平面と平行に、言い換えれば、X軸方向に垂直になるように形成される。このように配された複数の遮断板131は、蒸着源ノズル部120とパターニングスリットシート150との間の空間を複数の蒸着空間Sに区切る役割を行う。すなわち、本発明の第1実施形態による薄膜蒸着装置100は、前記遮断板131によって、蒸着物質が噴射されるそれぞれの蒸着源ノズル121別に、蒸着空間Sが分離されることを一特徴とする。
【0041】
ここで、それぞれの遮断板131は、互いに隣接している蒸着源ノズル121の間に配されうる。これは、言い換えれば、互いに隣接している遮断板131の間に一つの蒸着源ノズル121が配されるともいえる。望ましくは、蒸着源ノズル121は、互いに隣接している遮断板131間の真ん中に位置しうる。このように、遮断板131が蒸着源ノズル部120とパターニングスリットシート150との間の空間を複数の蒸着空間Sに区切ることによって、一つの蒸着源ノズル121から排出される蒸着物質は、他の蒸着源ノズル121から排出された蒸着物質と混合されず、パターニングスリット151を通過して基板400に蒸着されるのである。言い換えれば、遮断板131は、蒸着源ノズル121を通じて排出される蒸着物質が分散されずに直進性を維持するように、蒸着物質のX軸方向の移動経路をガイドする役割を行う。
【0042】
このように、遮断板131を備えて蒸着物質の直進性を確保することによって、基板に形成される陰影のサイズを大幅に縮めることができ、したがって、薄膜蒸着装置100と基板400とを一定程度離隔させることが可能になる。これについては、後で詳細に記述する。
【0043】
一方、前記複数の遮断板131の外側には、遮断板フレーム132がさらに備えられうる。遮断板フレーム132は、複数の遮断板131の上下面にそれぞれ備えられて、複数の遮断板131の位置を支持すると同時に、蒸着源ノズル121を通じて排出される蒸着物質が分散されないように、蒸着物質のY軸方向の移動経路をガイドする役割を行う。
【0044】
一方、図面には、蒸着源ノズル部120と遮断板アセンブリ130とが一定程度離隔されていると図示されているが、本発明の思想はこれに制限されるものではない。すなわち、蒸着源110から発散する熱が遮断板アセンブリ130に伝導されることを防止するために、蒸着源ノズル部120と遮断板アセンブリ130とを一定程度離隔させて形成してもよく、蒸着源ノズル部120と遮断板アセンブリ130との間に適切な断熱手段が備えられる場合、蒸着源ノズル部120と遮断板アセンブリ130とが結合して接触してもよい。
【0045】
一方、前記遮断板アセンブリ130は、薄膜蒸着装置100から分離自在に形成されうる。詳細には、従来のFMM蒸着方法は、蒸着効率が低いという問題点が存在した。ここで蒸着効率とは、蒸着源で気化した材料のうち、実際に基板に蒸着された材料の比率を意味するものであって、従来のFMM蒸着方法での蒸着効率は約32%ほどである。しかも、従来のFMM蒸着方法では、蒸着に使われていない約68%ほどの有機物が蒸着器内部のところどころに蒸着されるため、そのリサイクルが容易でないという問題点があった。
【0046】
これらの問題点を解決するために、本発明の第1実施形態による薄膜蒸着装置100では、遮断板アセンブリ130を利用して蒸着空間を外部空間と分離したため、基板400に蒸着されていない蒸着物質は、ほとんど遮断板アセンブリ130内に蒸着される。したがって、遮断板アセンブリ130を薄膜蒸着装置100から分離自在に形成して、長時間の蒸着後に遮断板アセンブリ130に蒸着物質が多く溜まれば、遮断板アセンブリ130を分離して別途の蒸着物質リサイクル装置に入れて蒸着物質を回収できる。このような構成を通じて、蒸着物質リサイクル率を高めることによって蒸着効率が向上し、コストダウン効果を得ることができる。
【0047】
一方、蒸着源110と基板400との間には、パターニングスリットシート150及びフレーム155がさらに備えられる。フレーム155は、窓枠の形態に形成され、その内側にパターニングスリットシート150が結合される。そして、パターニングスリットシート150にはX軸方向に沿って複数のパターニングスリット151が形成される。蒸着源110内で気化された蒸着物質115は、蒸着源ノズル部120及びパターニングスリットシート150を通過して被蒸着体である基板400側に向かう。この時、前記パターニングスリットシート150は、従来のFMM、特に、ストライプタイプのマスクの製造方法と同じ方法であるエッチングを通じて製作されうる。
【0048】
ここで、本発明の第1実施形態による薄膜蒸着装置100は、蒸着源ノズル121の総数よりパターニングスリット151の総数がさらに多く形成される。また、互いに隣接している2枚の遮断板131の間に配された蒸着源ノズル121の数よりパターニングスリット151の数がさらに多く形成される。
【0049】
すなわち、互いに隣接している2枚の遮断板131の間には、一つの蒸着源ノズル121が配されうる。同時に、互いに隣接している2枚の遮断板131の間には、複数のパターニングスリット151が配されうる。そして、互いに隣接している2枚の遮断板131によって蒸着源ノズル部120とパターニングスリットシート150との間の空間が区切られて、それぞれの蒸着源ノズル121別に蒸着空間Sが分離される。したがって、一つの蒸着源ノズル121から放射された蒸着物質は、ほぼ同じ蒸着空間Sにあるパターニングスリット151を通過して基板400に蒸着されるようになる。
【0050】
一方、遮断板アセンブリ130とパターニングスリットシート150との間には遮断部材161、162が配される。ここで、本発明の第1実施形態による薄膜蒸着装置100は、基板400と共に移動し、基板400の非成膜領域401、402を遮蔽するように配される遮断部材161、162をさらに備え、基板400の非成膜領域401、402に有機物が蒸着される現象を防止することを一特徴とする。これについては、図5以下で詳細に説明する。
【0051】
一方、前述した遮断板アセンブリ130とパターニングスリットシート150とは、互いに一定程度離隔するように形成され、遮断板アセンブリ130とパターニングスリットシート150とは、連結部材135によって互いに連結されうる。詳細には、高温状態の蒸着源110により、遮断板アセンブリ130の温度は約100℃以上上昇するため、上昇した遮断板アセンブリ130の温度がパターニングスリットシート150に伝導されないように、遮断板アセンブリ130とパターニングスリットシート150とを一定程度離隔させるのである。
【0052】
前述したように、本発明の第1実施形態による薄膜蒸着装置100は、基板400に対して相対的に移動しつつ蒸着を行い、このように薄膜蒸着装置100が基板400に対して相対的に移動するために、パターニングスリットシート150は、基板400から一定程度離隔するように形成される。そして、パターニングスリットシート150と基板400とを離隔させる場合に発生する陰影問題を解決するために、蒸着源ノズル部120とパターニングスリットシート150との間に遮断板131を備えて蒸着物質の直進性を確保することによって、基板に形成される陰影のサイズを大幅に縮める。
【0053】
詳細には、従来のFMM蒸着方法では、基板に陰影を生じさせないように、基板にマスクを密着させて蒸着工程を進めた。しかし、このように基板にマスクを密着させる場合、基板とマスクとの接触による不良問題が発生するという問題点が存在した。また、マスクを基板に対して移動させることができないため、マスクが基板と同じサイズに形成されねばならない。したがって、ディスプレイ装置が大型化するにつれてマスクのサイズも大きくならねばならないが、このような大型マスクを形成することが容易でないという問題点が存在した。
【0054】
これらの問題点を解決するために、本発明の第1実施形態による薄膜蒸着装置100では、パターニングスリットシート150が被蒸着体である基板400と所定間隔をおいて離隔するように配する。これは、遮断板131を備えて、基板400に生成される陰影が小さくなることによって実現可能になる。
このような本発明によってマスクを基板より小さく形成した後、マスクを基板に対し移動させつつ蒸着を行えることで、マスク製作が容易になる効果を得ることができる。また、基板とマスクとの接触による不良を防止する効果を得ることができる。また、工程で基板とマスクとを密着させる時間が不要になるため、製造速度が向上する効果を得ることができる。
【0055】
以下では、遮断板を備えた場合と、そうでない場合とに形成される陰影のサイズを詳細に比較する。
図4Aは、本発明の第1実施形態による薄膜蒸着装置で蒸着物質が蒸着されている状態を概略的に示す図面であり、図4Bは、図4Aのように遮断板により蒸着空間が分離された状態で発生する陰影を示す図面であり、図4Cは、蒸着空間が分離されていない状態で発生する陰影を示す図面である。
【0056】
図4Aを参照すれば、蒸着源110で気化した蒸着物質は、蒸着源ノズル部120及びパターニングスリットシート150を通過して基板400に蒸着される。この時、蒸着源ノズル部120とパターニングスリットシート150との間の空間は、遮断板131によって複数の蒸着空間Sに区切られているので、遮断板131によって蒸着源ノズル部120のそれぞれの蒸着源ノズル121から出た蒸着物質は、他の蒸着源ノズル121から出た蒸着物質と混合されない。
【0057】
蒸着源ノズル部120とパターニングスリットシート150との間の空間が遮断板アセンブリ130によって区切られている場合、図4A及び図4Bに示したように、基板400に生成される陰影領域の幅SHは、次の数式1によって決定される。
【0058】
[数1]
SH=s*d/h
(s=パターニングスリットシートと基板との距離、d=蒸着源ノズルの幅、h=蒸着源とパターニングスリットシートとの距離)
【0059】
一方、蒸着源ノズル部とパターニングスリットシートとの間の空間が遮断板によって区切られていない場合、図4Cに示したように、蒸着物質は、図4Bより広い範囲の多様な角度でパターニングスリットシートを通過する。すなわち、この場合、パターニングスリットの直向かいにある蒸着源ノズルから放射された蒸着物質だけではなく、他の蒸着源ノズルから放射された蒸着物質までパターニングスリットを通じて基板400に蒸着されるので、基板400に形成された陰影領域SHの幅は、遮断板を備えた場合に比べて非常に大きくなる。この時、基板400に生成される陰影領域の幅SHは次の数式2によって決定される。
【0060】
[数2]
SH=s*2d/h
(s=パターニングスリットシートと基板との距離、d=隣接する蒸着源ノズルとの間隔、h=蒸着源とパターニングスリットシートとの距離)
【0061】
前記数式1と数式2とを比較してみた時、d(蒸着源ノズルの幅)よりd(隣接する蒸着源ノズルとの間隔)が数〜数十倍以上非常に大きく形成されるので、蒸着源ノズル部120とパターニングスリットシート150との間の空間が遮断板131によって区切られている場合、陰影がはるかに小さく形成されることが分かる。ここで、基板400に生成される陰影領域の幅SHを狭めるためには、(1)蒸着源ノズル121が設けられる間隔を狭めるか(d減少)、(2)パターニングスリットシート150と基板400との間隔を狭めるか(s減少)、(3)蒸着源110とパターニングスリットシート150との距離を増大させねばならない(h増加)。
【0062】
これにより、遮断板131を備えることによって、基板400に生成される陰影が小さくなり、したがって、パターニングスリットシート150を基板400から離隔させることができることが分かる。
【0063】
以下では、本発明の第1実施形態による薄膜蒸着装置100の遮断部材161、162を利用した薄膜蒸着方法についてさらに詳細に説明する。
図5Aないし図5Dは、本発明の第1実施形態による薄膜蒸着装置を利用した有機発光ディスプレイ装置の製造方法を示す図面である。
図5Aないし図5Dを参照すれば、本発明の第1実施形態による薄膜蒸着装置は、基板400のエッジ部と対応するように遮断部材161、162をさらに備えて、基板400の非成膜領域に有機物が蒸着される現象を防止することを一特徴とする。
【0064】
詳細には、基板400の枠部分にはアノード電極またはカソード電極パターンが形成されて、今後製品検査用または製品製作時に、端子として活用するための領域が存在する。もし、この領域に有機物が成膜される場合、アノード電極またはカソード電極が自体の役割を行い難くなり、したがって、これらの基板400の枠部分は、有機物などが成膜されてはならない非成膜領域にならねばならない。しかし、前述したように、本発明の薄膜蒸着装置では、基板400が薄膜蒸着装置に対して移動しつつスキャニング方式で蒸着が行われるので、基板400の非成膜領域への有機物蒸着を防止することが容易でなかった。
【0065】
このように基板400の非成膜領域に有機物が蒸着されることを防止するために、本発明の第1実施形態による薄膜蒸着装置では、基板400の枠部分に別途の遮断部材を配する。
【0066】
図5Aを参照すれば、基板400の下方、詳細には蒸着源110と対向する基板400下部面の下方には遮断部材161、162が配される。ここで、第1遮断部材161は、基板400の第1非成膜領域401に対応するように第1非成膜領域401の直下に配され、第2遮断部材162は、基板400の第2非成膜領域402に対応するように、第2非成膜領域402の直下に配される。この時、第1遮断部材161及び第2遮断部材162は、平らな平板プレート状に備えられうる。
【0067】
前述したように、薄膜蒸着装置100と対向するように配された基板400は、Y軸方向に沿って移動しつつ連続的に蒸着を行う。すなわち、基板400が図5Bの矢印A方向に移動しつつスキャニング方式で蒸着が行われるのである。ここで、第1遮断部材161と第2遮断部材162とは基板400と同じ速度で矢印A方向に移動する。すなわち、基板400に対する遮断部材161、162の相対的な位置は固定されており、基板400の第1非成膜領域401の下方には、常に第1遮断部材161が位置し、基板400の第2非成膜領域402の下方には、常に第2遮断部材162が位置するのである。
【0068】
図5A及び図5Bに示したように、基板400が矢印A方向に一定程度移動して、基板400の第1非成膜領域401が蒸着源110と対向するように位置した状態で、第1遮断部材161が遮断板アセンブリ130とパターニングスリットシート150との間に配されて、蒸着源110から蒸発された蒸着物質が第1非成膜領域401に蒸着されることを防ぐ。
【0069】
そして、図5Cに示したように、基板400が矢印A方向にさらに移動して、基板400の第2非成膜領域402が蒸着源110と対向するように位置した状態では、第2遮断部材162が遮断板アセンブリ130とパターニングスリットシート150との間に配されて、蒸着源110から蒸発された蒸着物質が第2非成膜領域402に蒸着されることを防ぐ。
【0070】
このような遮断部材161、162によって基板400の非成膜領域401、402が遮蔽されることによって、別途の構造物なしにも簡便に基板400の非成膜領域401、402への有機物の蒸着が防止される効果を得ることができる。
以下では、本発明の第1実施形態の一変形例による薄膜蒸着装置100の遮断部材161、162を利用した薄膜蒸着方法について詳細に説明する。
【0071】
図6Aないし図6Dは、本発明の第1実施形態の一変形例に関する薄膜蒸着装置を利用した有機発光ディスプレイ装置の製造方法を示す図面である。
図6Aないし図6Dを参照すれば、本発明の第1実施形態の一変形例に関する薄膜蒸着装置は、基板400のエッジ部と対応するように遮断部材161、162をさらに備えて、基板400の非成膜領域に有機物が蒸着される現象を防止することを一特徴とする。この時、第1遮断部材161と第2遮断部材162とが互いに独立して移動できるように備えられると同時に、遮断部材161、162は、基板400に対して互いに独立して移動できるように備えられる。これをさらに詳細に説明すれば、次の通りである。
【0072】
チャンバー(図示せず)内の空間は限定されているため、チャンバー内で遮断部材が占める空間が小さければ小さくなるほど、チャンバー内の空間活用度側面で有利である。この場合、基板400の第1非成膜領域401を遮蔽する第1遮断部材161と、基板400の第2非成膜領域402を遮蔽する第2遮断部材162との基板400に対する相対的な位置が固定されているならば、それだけ遮断部材がチャンバー内の空間を多く占めるようになる。
【0073】
したがって、チャンバー内で遮断部材が占める空間を最小化させるために、図6A及び図6Dに示したように、基板400に薄膜が蒸着されていない時には、第1遮断部材161と第2遮断部材162とが互いに重畳されて位置する。すなわち、基板400の下方、詳細には、蒸着源110と対向する基板400の下部面の下方には、遮断部材161、162が互いに重畳された形態に配される。
【0074】
一方、図6Bに示したように、基板400の第1非成膜領域401が蒸着源110の上部を通過している間には、第1遮断部材161が基板400の第1非成膜領域401に沿って基板400と同じ速度で移動しつつ、蒸着源110から蒸発された蒸着物質が第1非成膜領域401に蒸着されることを防ぐ。また、図6Cに示したように、基板400の第2非成膜領域402が蒸着源110の上部を通過している間には、第2遮断部材162が基板400の第2非成膜領域402に沿って基板400と同じ速度で移動しつつ、蒸着源110から蒸発された蒸着物質が第2非成膜領域402に蒸着されることを防ぐ。すなわち、第1遮断部材161と第2遮断部材162との互いに相対的な位置が連続的に変化し、同時に、第1遮断部材161及び第2遮断部材162と基板400との間の相対的な位置も連続的に変化するようになる。
【0075】
この時、第1遮断部材161と第2遮断部材162との断面は、ほぼ“∪”形状に形成されることが望ましい。なぜなら、蒸着源110から放出された蒸着物質が遮断部材161、162の正面から入射して遮断部材161、162に衝突することもあるが、遮断部材161、162の側面から入射することもあるからである。したがって、非成膜領域に蒸着されないようにするためには、遮断部材161、162の側面から入射する蒸着物質まで防げるように、遮断部材161、162の断面がほぼ“∪”形状に形成されることが望ましい。
【0076】
ただし、前述したように、チャンバー内で遮断部材が占める空間を最小化するために、第1遮断部材161と第2遮断部材162のうちいずれか一つは、一側面が開放されるように形成されうる。すなわち、図6Aないし図6Dに示したように、第1遮断部材161はほぼ“∪”形状に形成され、第2遮断部材162は一側面が開放されるようにほぼ“L”形状に形成されうる。このような第1遮断部材161と第2遮断部材162との構成によって、基板400に薄膜が蒸着されていない時には、第1遮断部材161と第2遮断部材162とが互いに重畳されて位置するようになる。
【0077】
このような遮断部材161、162によって、基板400の非成膜領域401、402が遮蔽されることによって、別途の構造物なしにも簡便に、基板400の非成膜領域401、402への有機物の蒸着が防止される効果を得ることができる。また、遮断部材161、162の移動経路が短くなり、チャンバー内の空間活用度が高くなるという効果を得ることができる。
【0078】
図7は、本発明の第2実施形態による薄膜蒸着装置を概略的に示した斜視図である。
図7に示した実施形態に関する薄膜蒸着装置500は、蒸着源510、蒸着源ノズル部520、第1遮断板アセンブリ530、第2遮断板アセンブリ540、パターニングスリットシート550及び遮断部材561、562を備える。
ここで、図7には説明の便宜のためにチャンバーを図示していないが、図7のあらゆる構成は、適切な真空度が維持されるチャンバー内に配されることが望ましい。これは、蒸着物質の直進性を確保するためである。
【0079】
これらのチャンバー(図示せず)内には、被蒸着体である基板400が配される。そして、チャンバー(図示せず)内で基板400と対向する側には、蒸着物質515が収納及び加熱される蒸着源510が配される。
【0080】
蒸着源510及びパターニングスリットシート550の詳細な構成は、前述した図1による実施形態と同一であるので、詳細な説明を省略する。そして、前記第1遮断板アセンブリ530は、図1による実施形態の遮断板アセンブリと同一であるので、やはり詳細な説明は省略する。
【0081】
本実施形態では、第1遮断板アセンブリ530の一側に第2遮断板アセンブリ540が備えられる。前記第2遮断板アセンブリ540は、複数の第2遮断板541と、第2遮断板541の外側に備えられる第2遮断板フレーム542とを備える。
前記複数の第2遮断板541は、X軸方向に沿って互いに平行に備えられうる。そして、前記複数の第2遮断板541は等間隔で形成されうる。また、それぞれの第2遮断板541は、図面から見た時、YZ平面と平行に、言い換えれば、X軸方向に垂直になるように形成される。
【0082】
このように配された複数の第1遮断板531及び第2遮断板541は、蒸着源ノズル部520とパターニングスリットシート550との間の空間を区切る役割を行う。すなわち、前記第1遮断板531及び第2遮断板541によって、蒸着物質が噴射されるそれぞれの蒸着源ノズル521別に蒸着空間が分離されることを一特徴とする。
【0083】
ここで、それぞれの第2遮断板541は、それぞれの第1遮断板531と一対一対応するように配されうる。言い換えれば、それぞれの第2遮断板541は、それぞれの第1遮断板531と整列されて互いに平行に配されうる。すなわち、互いに対応する第1遮断板531と第2遮断板541とは互いに同じ平面上に位置するのである。図面には、第1遮断板531と第2遮断板541とのX軸方向の幅が同一であると図示されているが、本発明の思想はこれに制限されるものではない。すなわち、パターニングスリット551との精密な整列が要求される第2遮断板541は相対的に薄く形成される一方、精密な整列が要求されない第1遮断板531は相対的に厚く形成されて、その製造を容易にすることもできるといえる。
【0084】
以上説明したような薄膜蒸着装置500は基板400と共に移動し、基板400の非成膜領域401、402を遮蔽するように配される遮断部材561、562をさらに備えて、基板400の非成膜領域401、402に有機物が蒸着される現象を防止する役割を行う。これらの遮断部材561、562は、図1による第1実施形態及び図6Aないし図6Dによる実施形態の変形例の遮断部材と同一であるので、やはり詳細な説明は省略する。
【0085】
図8は、本発明の蒸着装置を利用して製造されたアクティブマトリックス型有機発光ディスプレイ装置の断面を示したものである。
図8に示したように、ガラス材またはプラスチック材の基板50上にバッファ層51が形成されており、この上に薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)と、有機電界発光素子(Organic light−Emitting Diode:OLED)とが形成される。
【0086】
基板50のバッファ層51上に所定パターンの活性層52が備えられる。活性層52の上部にはゲート絶縁膜53が備えられ、ゲート絶縁膜53の上部の所定領域にはゲート電極54が形成される。ゲート電極54は、薄膜トランジスタのオン/オフ信号を印加するゲートライン(図示せず)と連結されている。ゲート電極54の上部には層間絶縁膜55が形成され、コンタクトホールを通じてソース/ドレイン電極56、57が、それぞれ活性層52のソース/ドレイン領域52b、52cに接するように形成される。ソース/ドレイン電極56、57の上部には、SiO、SiNなどからなるパッシベーション膜58が形成され、パッシベーション膜58の上部には、アクリル、ポリイミド、BCB(Benzocyclobutene)などの有機物質で平坦化膜59が形成されている。平坦化膜59の上部に、OLEDのアノード電極になる画素電極61が形成され、これを覆うように有機物で画素定義膜60が形成される。画素定義膜60に所定の開口を形成した後、画素定義膜60の上部及び開口が形成されて外部に露出された画素電極61の上部に有機膜62を形成する。有機膜62は発光層を備えたものになる。本発明は必ずしもこれらの構造に限定されるものではなく、多様な有機発光ディスプレイ装置の構造がそのまま適用されうるということはいうまでもない。
【0087】
OLEDは、電流のフローによって赤色、緑色、青色の光を発光して所定の画像情報を表示するものであって、薄膜トランジスタのドレイン電極57に連結されて、これよりプラス電源を供給される画素電極61、全体画素を覆うように備えられてマイナス電源を供給する対向電極63、及びこれら画素電極61と対向電極63との間に配されて発光する有機膜62とで構成される。
【0088】
画素電極61と対向電極63との間には、有機膜62が介在しており、有機膜62に相異なる極性の電圧を加えて有機膜62で発光が行われるようにする。
有機膜62は、低分子または高分子有機膜が使われうるが、低分子有機膜を使用する場合、ホール注入層(HIL:Hole Injection Layer)、ホール輸送層(HTL:Hole Transport Layer)、発光層(EML:Emission Layer)、電子輸送層(ETL:Electron Transport Layer)、電子注入層(EIL:Electron Injection Layer)などが単一あるいは複合の構造に積層されて形成され、使用可能な有機材料も銅フタロシアニン(CuPc)、N,N−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン(NPB)、トリス−8−ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq3)などをはじめとして多様に適用できる。これら低分子有機膜は真空蒸着の方法で形成される。
【0089】
高分子有機膜の場合には、大体ホール輸送層(HTL)及び発光層(EML)で備えられた構造を持つことができ、この時、ホール輸送層としてPEDOTを使用し、発光層としてPPV(Poly−Phenylenevinylene)系及びポリフルオレン系などの高分子有機物質を使用し、これをスクリーン印刷やインクジェット印刷方法などで形成できる。
これらの有機膜は必ずしもこれに限定されるものではなく、多様な実施形態が適用されうるということはいうまでもない。
【0090】
画素電極61はアノード電極の機能を行い、対向電極63はカソード電極の機能を行うが、もちろん、これら画素電極61と対向電極63との極性は逆になってもよい。
画素電極61は、透明電極または反射型電極で備えられうるが、透明電極として使われる時にはITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、ZnO、またはInで備えられ、反射型電極として使われる時にはAg、Mg、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、及びこれらの化合物などで反射膜を形成した後、その上にITO、IZO、ZnO、またはInを形成できる。
【0091】
一方、対向電極63も透明電極または反射型電極で備えられうるが、透明電極として使われる時には、対向電極63がカソード電極として使われるので、仕事関数の小さな金属、すなわち、Li、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Al、Ag、Mg、及びこれらの化合物が有機膜62の方向に向かうように蒸着した後、その上にITO、IZO、ZnO、またはInなどの透明電極形成用物質で補助電極層やバス電極ラインを形成できる。そして、反射型電極として使われる時には、前記のLi、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Al、Ag、Mg、及びこれらの化合物を全面蒸着して形成する。
【0092】
これらの有機発光ディスプレイ装置で、発光層を備える有機膜62は、前述した薄膜蒸着装置100、500によって形成されうる。本発明はこれ以外にも、有機TFTの有機膜または無機膜などの蒸着にも使用でき、その他の多様な素材の成膜工程に適用できる。
【0093】
図9は、本発明の第3実施形態による薄膜蒸着装置900を概略的に示した斜視図であり、図10は、図9の薄膜蒸着装置900の概略的な側面図であり、図11は、図9の薄膜蒸着装置900の概略的な平面図である。
図9、図10及び図11を参照すれば、本発明の第3実施形態に関する薄膜蒸着装置900は、蒸着源910、蒸着源ノズル部920、パターニングスリットシート950及び遮断部材961、962を備える。
【0094】
ここで、図9、図10及び図11には、説明の便宜のためにチャンバーを示していないが、図9ないし図11のあらゆる構成は、適切な真空度が維持されるチャンバー内に配されることが望ましい。これは、蒸着物質の直進性を確保するためである。
【0095】
詳細には、蒸着源910から放出された蒸着物質915が蒸着源ノズル部920及びパターニングスリットシート950を通過して基板400に所望のパターンで蒸着されるようにするためには、基本的にチャンバー(図示せず)内部はFMM蒸着方法と同じ高真空状態を維持せねばならない。また、パターニングスリットシート950の温度が蒸着源910の温度より十分に低くなければならない(約100℃以下)。なぜなら、パターニングスリットシート950の温度が十分に低くて初めて、温度によるパターニングスリットシート950の熱膨張問題を最小化できるからである。
これらのチャンバー(図示せず)内には被蒸着体である基板400が配される。前記基板400は平板表示装置用基板になりうるが、多くの平板表示装置を形成できるマザーガラスのような大面積基板が適用されうる。
【0096】
ここで、本発明の一実施形態では、基板400が薄膜蒸着装置900に対して相対的に移動しつつ蒸着が進められることを一特徴とする。
詳細には、既存のFMM蒸着方法では、FMMサイズが基板サイズと同一に形成されねばならない。したがって、基板サイズが増大するほどFMMも大型化せねばならず、これによってFMM製作が容易でなく、FMMを引張って精密なパターンに整列することも容易でないという問題点があった。
【0097】
これらの問題点を解決するために、本発明の一実施形態に関する薄膜蒸着装置900は、薄膜蒸着装置900と基板400とが互いに相対的に移動しつつ蒸着が行われることを一特徴とする。言い換えれば、薄膜蒸着装置900と対向するように配された基板400が、Y軸方向に沿って移動しつつ連続的に蒸着を行う。すなわち、基板400が図9の矢印A方向に移動しつつスキャニング方式で蒸着が行われるのである。ここで、図面には、基板400がチャンバー(図示せず)内でY軸方向に移動しつつ蒸着が行われると図示されているが、本発明の思想はこれに制限されるものではなく、基板400は固定されており、薄膜蒸着装置900自体がY軸方向に移動しつつ蒸着を行うことも可能であるといえる。
【0098】
したがって、本発明の薄膜蒸着装置900では、従来のFMMに比べて非常に小さくパターニングスリットシート950を作ることができる。すなわち、本発明の薄膜蒸着装置900の場合、基板400がY軸方向に沿って移動しつつ連続的に、すなわち、スキャニング方式で蒸着を行うため、パターニングスリットシート950のX軸方向及びY軸方向の長さは、基板400の長さより非常に小さく形成されうるのである。このように、従来のFMMに比べて非常に小さくパターニングスリットシート950を作ることができるため、本発明のパターニングスリットシート950はその製造が容易である。すなわち、パターニングスリットシート950のエッチング作業や、その後の精密引張及び溶接作業、移動及び洗浄作業などのあらゆる工程で、小さなサイズのパターニングスリットシート950がFMM蒸着方法に比べて有利である。また、これはディスプレイ装置が大型化するほどさらに有利になる。
【0099】
このように、薄膜蒸着装置900と基板400とが互いに相対的に移動しつつ蒸着が行われるためには、薄膜蒸着装置900と基板400とが一定程度離隔することが望ましい。これについては、後で詳細に記述する。
一方、チャンバー内で前記基板400と対向する側には、蒸着物質915が収納及び加熱される蒸着源910が配される。前記蒸着源910内に収納されている蒸着物質915が気化することによって基板400に蒸着が行われる。
【0100】
詳細には、蒸着源910はその内部に蒸着物質915が充填される坩堝911と、坩堝911を加熱させて坩堝911の内部に満たされた蒸着物質915を坩堝911の一側、詳細には、蒸着源ノズル部920側に蒸発させるためのヒーター912とを備える。
【0101】
蒸着源910の一側、詳細には、蒸着源910から基板400に向かう側には、蒸着源ノズル部920が配される。そして、蒸着源ノズル部920には、Y軸方向、すなわち、基板400のスキャン方向に沿って複数の蒸着源ノズル921が形成される。ここで、前記複数の蒸着源ノズル921は等間隔に形成されうる。蒸着源910内で気化した蒸着物質915は、これらの蒸着源ノズル部920を通過して被蒸着体である基板400側に向かう。このように、蒸着源ノズル部920上に、Y軸方向、すなわち、基板400のスキャン方向に沿って複数の蒸着源ノズル921を形成する場合、パターニングスリットシート950のそれぞれのパターニングスリット951を通過する蒸着物質により形成されるパターンのサイズは、蒸着源ノズル921一つのサイズのみにより影響されるので(すなわち、X軸方向には蒸着源ノズル921が一つのみ存在するので)、陰影が発生しなくなる。また、多くの蒸着源ノズル921がスキャン方向に存在するので、個別蒸着源ノズル間のフラックス(flux)差が発生しても、その差が相殺されて蒸着均一度が一定に維持される効果を得ることができる。
【0102】
一方、蒸着源910と基板400との間には、パターニングスリットシート950及びフレーム955がさらに備えられる。フレーム955は窓枠のような形態で形成され、その内側にパターニングスリットシート950が結合される。そして、パターニングスリットシート950には、X軸方向に沿って複数のパターニングスリット951が形成される。蒸着源910内で気化した蒸着物質915は、蒸着源ノズル部920及びパターニングスリットシート950を通過して、被蒸着体である基板400方向に向かう。この時、前記パターニングスリットシート950は、従来のFMM、特にストライプタイプのマスクの製造方法と同じ方法であるエッチングを通じて製作されうる。この時、蒸着源ノズル921の総数よりパターニングスリット951の総数がさらに多く形成されうる。
【0103】
一方、前述した蒸着源910(及びこれと結合された蒸着源ノズル部920)とパターニングスリットシート950とは、互いに一定程度離隔するように形成され、蒸着源910(及びこれと結合された蒸着源ノズル部920)とパターニングスリットシート950とは、連結部材935によって互いに連結されうる。すなわち、蒸着源910、蒸着源ノズル部920及びパターニングスリットシート950が連結部材935により連結されて、互いに一体に形成されうる。ここで、連結部材935は、蒸着源ノズル921を通じて排出される蒸着物質が分散されないように蒸着物質の移動経路をガイドできる。図面には、連結部材935が蒸着源910、蒸着源ノズル部920及びパターニングスリットシート950の左右方向のみに形成されて、蒸着物質のX軸方向のみをガイドすると図示されているが、これは図示の便宜のためのものであって、本発明の思想はこれに制限されず、連結部材935がボックス形態の密閉型に形成されて、蒸着物質のX軸方向及びY軸方向移動を同時にガイドすることもできる。
【0104】
前述したように、本発明の一実施形態に関する薄膜蒸着装置900は、基板400に対して相対的に移動しつつ蒸着を行い、このように薄膜蒸着装置900が基板400に対して相対的に移動するために、パターニングスリットシート950は、基板400から一定程度離隔するように形成される。
【0105】
詳細には、従来のFMM蒸着方法では、基板に陰影が生じないようにするために基板にマスクを密着させて蒸着工程を進めた。しかし、このように基板にマスクを密着させる場合、基板とマスクとの接触による不良問題が発生するという問題点が存在した。また、マスクを基板に対して移動させられないため、マスクが基板と同じサイズに形成されねばならない。したがって、ディスプレイ装置が大型化するにつれてマスクのサイズも大きくならねばならないが、このような大型マスクを形成することが容易でないという問題点があった。
【0106】
これらの問題点を解決するために、本発明のさらに他の実施形態に関する薄膜蒸着装置900では、パターニングスリットシート950が被蒸着体である基板400と所定間隔をおいて離隔するように配されるようにする。
このような本発明によって、マスクを基板より小さく形成した後、マスクを基板に対して移動させつつ蒸着を行えることによって、マスク製作が容易になる効果を得ることができる。また、基板とマスクとの接触による不良を防止する効果を得ることができる。また、工程で基板とマスクとを密着させる時間が不要になるため、製造速度が向上する効果を得ることができる。
【0107】
ここで、本発明の第3実施形態による薄膜蒸着装置900は、基板400と共に移動し、基板400の非成膜領域401、402を遮蔽するように配される遮断部材961、962をさらに備えて、基板400の非成膜領域401、402に有機物が蒸着される現象を防止することを一特徴とする。これについては、第1実施形態で詳細に説明したので、本実施形態ではその詳細な説明は省略する。
【0108】
図12は、本発明の第4実施形態による薄膜蒸着装置9100を示す図面である。図面を参照すれば、本発明の第4実施形態による薄膜蒸着装置9100は、蒸着源910、蒸着源ノズル部920及びパターニングスリットシート950を備える。ここで、蒸着源910は、その内部に蒸着物質915が充填される坩堝911と、坩堝911を加熱させて坩堝911の内部に満たされた蒸着物質915を蒸着源ノズル部920側に蒸発させるためのヒーター912とを備える。一方、蒸着源910の一側には蒸着源ノズル部920が配され、蒸着源ノズル部920には、Y軸方向に沿って複数の蒸着源ノズル921が形成される。一方、蒸着源910と基板400との間にはパターニングスリットシート950及びフレーム955がさらに備えられ、パターニングスリットシート950には、X軸方向に沿って複数のパターニングスリット951が形成される。そして、蒸着源910及び蒸着源ノズル部920とパターニングスリットシート950とは、連結部材935によって結合される。
【0109】
本実施形態では、蒸着源ノズル部920に形成された複数の蒸着源ノズル921が所定角度チルトされて配されるという点で、前述した第3実施形態と区別される。詳細には、蒸着源ノズル921は2列の蒸着源ノズル921a、921bで形成され、前記2列の蒸着源ノズル921a、921bは互いに交互に配される。この時、蒸着源ノズル921a、921bは、XZ平面上で所定角度傾くようにチルトされて形成されうる。
【0110】
すなわち、本実施形態では、蒸着源ノズル921a、921bが所定角度チルトされて配されるようにする。ここで、第1列の蒸着源ノズル921aは、第2列の蒸着源ノズル921bに向くようにチルトされ、第2列の蒸着源ノズル921bは、第1列の蒸着源ノズル921aに向くようにチルトされうる。言い換えれば、左側列に配された蒸着源ノズル921aは、パターニングスリットシート950の右側端部に向くように配され、右側列に配された蒸着源ノズル921bは、パターニングスリットシート950の左側端部に向くように配されうるのである。
【0111】
図13は、本発明による薄膜蒸着装置で蒸着源ノズルをチルトさせていない時、基板に蒸着された蒸着膜の分布形態を概略的に示す図面であり、図14は、本発明による薄膜蒸着装置で蒸着源ノズルをチルトさせた時、基板に蒸着された蒸着膜の分布形態を概略的に示す図面である。図13と図14とを比較すれば、蒸着源ノズルをチルトさせた時、基板の両端部に成膜される蒸着膜の厚さが相対的に増大して蒸着膜の均一度が上昇することが分かる。
【0112】
このような構成によって、基板の中央部と端部とでの成膜厚さの差が低減して全体的な蒸着物質の厚さが均一になるように蒸着量を制御でき、さらには材料利用効率が向上する効果を得ることができる。
【0113】
ここで、本発明の第4実施形態による薄膜蒸着装置9100は、基板400と共に移動し、基板400の非成膜領域401、402を遮蔽するように配される遮断部材961、962をさらに備え、基板400の非成膜領域401、402に有機物が蒸着される現象を防止することを一特徴とする。これについては、第1実施形態で詳細に説明したので、本実施形態ではその詳細な説明は省略する。
本発明は図面に示した実施形態を参考に説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これより多様な変形及び均等な他の実施形態が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって定められねばならない。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、薄膜蒸着装置関連の技術分野に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0115】
100 薄膜蒸着装置
110 蒸着源
111 坩堝
115 蒸着物質
120 蒸着源ノズル部
121 蒸着源ノズル
130 遮断板アセンブリ
131 遮断板
132 遮断板フレーム
150 パターニングスリットシート
155 フレーム
161 第1遮断部材
162 第2遮断部材
400 基板
401、402 非成膜領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に薄膜を形成するための薄膜蒸着装置において、
蒸着物質を放射する蒸着源と、
前記蒸着源の一側に配され、第1方向に沿って複数の蒸着源ノズルが形成される蒸着源ノズル部と、
前記蒸着源ノズル部と対向して配され、前記第1方向に沿って複数のパターニングスリットが形成されるパターニングスリットシートと、
前記蒸着源ノズル部と前記パターニングスリットシートとの間に前記第1方向に沿って配されて、前記蒸着源ノズル部と前記パターニングスリットシートとの間の空間を複数の蒸着空間に区切る複数の遮断板を備える遮断板アセンブリと、
前記基板と前記蒸着源との間に配される遮断部材と、を備え、
前記薄膜蒸着装置は、前記基板と所定程度離隔するように形成され、
前記基板は、前記薄膜蒸着装置に対して相対的に移動自在に形成され、
前記遮断部材は、前記基板の少なくとも一部を遮蔽するように、前記基板と共に移動することを特徴とする薄膜蒸着装置。
【請求項2】
前記遮断部材は、前記基板の非成膜領域を遮蔽するように備えられることを特徴とする請求項1に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項3】
前記遮断部材は、前記基板の枠領域を遮蔽するように備えられることを特徴とする請求項1に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項4】
前記遮断部材は、前記遮断板アセンブリと前記パターニングスリットシートとの間の空間で移動することを特徴とする請求項1に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項5】
前記遮断部材は、前記基板の一端部の第1非成膜領域を遮蔽するように配された第1遮断部材と、前記基板の他端部の第2非成膜領域を遮蔽するように配された第2遮断部材と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項6】
前記第1遮断部材及び前記第2遮断部材は、それぞれ平板プレート状に備えられることを特徴とする請求項5に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項7】
前記第1遮断部材は、前記第1非成膜領域の直下に位置し、前記第2遮断部材は、前記第2非成膜領域の直下に位置するように、前記第1遮断部材及び前記第2遮断部材が前記基板と共に移動することを特徴とする請求項5に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項8】
前記第1遮断部材と前記第2遮断部材とは、前記基板と同じ速度で移動することを特徴とする請求項7に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項9】
前記基板に対する前記第1遮断部材及び前記第2遮断部材の相対的な位置が一定に維持されることを特徴とする請求項7に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項10】
前記第1遮断部材及び前記第2遮断部材の断面は、“∪”形状に形成されることを特徴とする請求項5に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項11】
前記第1遮断部材及び前記第2遮断部材のうちいずれか一つの断面は“∪”形状に形成され、他の一つの断面は“L”形状に形成されることを特徴とする請求項5に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項12】
前記基板に蒸着が行われていない間に、前記第1遮断部材と前記第2遮断部材とは互いに重畳して位置するように配されることを特徴とする請求項11に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項13】
前記第1遮断部材は、前記第1非成膜領域が前記遮断板アセンブリと前記パターニングスリットシートとの間を過ぎる間に、前記第1非成膜領域を遮蔽し、前記第2遮断部材は、前記第2非成膜領域が前記遮断板アセンブリと前記パターニングスリットシートとの間を過ぎる間に前記第2非成膜領域を遮蔽するように、前記第1遮断部材及び前記第2遮断部材が前記基板と共に移動することを特徴とする請求項5に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項14】
前記第1非成膜領域が前記遮断板アセンブリと前記パターニングスリットシートとの間を過ぎる間に、前記第1遮断部材は、前記基板と同じ速度で移動し、
前記第2非成膜領域が前記遮断板アセンブリと前記パターニングスリットシートとの間を過ぎる間に、前記第2遮断部材は、前記基板と同じ速度で移動することを特徴とする請求項13に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項15】
前記第1非成膜領域が前記遮断板アセンブリと前記パターニングスリットシートとの間を過ぎる間に、前記基板に対する前記第1遮断部材の相対的な位置が一定に維持され、
前記第2非成膜領域が前記遮断板アセンブリと前記パターニングスリットシートとの間を過ぎる間に、前記基板に対する前記第2遮断部材の相対的な位置が一定に維持されることを特徴とする請求項13に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項16】
前記薄膜蒸着装置の前記パターニングスリットシートは、前記基板より小さく形成されることを特徴とする請求項1に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項17】
前記複数の遮断板それぞれは、前記第1方向と実質的に垂直な第2方向に沿って延設されたことを特徴とする請求項1に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項18】
前記遮断板アセンブリは、複数の第1遮断板を備える第1遮断板アセンブリと、複数の第2遮断板を備える第2遮断板アセンブリとを備えることを特徴とする請求項1に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項19】
前記基板が前記薄膜蒸着装置に対して相対的に移動しつつ、前記基板上に前記各薄膜蒸着装置の各蒸着物質が連続的に蒸着されることを特徴とする請求項1に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項20】
前記薄膜蒸着装置と前記基板とは、前記基板で前記蒸着物質が蒸着される面と平行な面に沿って、いずれか一側が他側に対して相対的に移動することを特徴とする請求項1に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項21】
基板上に薄膜を形成するための薄膜蒸着装置において、
蒸着物質を放射する蒸着源と、
前記蒸着源の一側に配され、第1方向に沿って複数の蒸着源ノズルが形成される蒸着源ノズル部と、
前記蒸着源ノズル部と対向して配され、前記第1方向に対して垂直な第2方向に沿って複数のパターニングスリットが形成されるパターニングスリットシートと、
前記基板と前記蒸着源との間に配される遮断部材と、を備え、
前記基板が前記薄膜蒸着装置に対して前記第1方向に沿って移動しつつ蒸着が行われ、
前記蒸着源、前記蒸着源ノズル部及び前記パターニングスリットシートは一体に形成され、
前記遮断部材は、前記基板の少なくとも一部を遮蔽するように、前記基板と共に移動することを特徴とする薄膜蒸着装置。
【請求項22】
前記遮断部材は、前記基板の非成膜領域を遮蔽するように備えられることを特徴とする請求項21に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項23】
前記遮断部材は、前記基板の枠領域を遮蔽するように備えられることを特徴とする請求項21に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項24】
前記遮断部材は、前記遮断板アセンブリと前記パターニングスリットシートとの間の空間で移動することを特徴とする請求項21に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項25】
前記遮断部材は、前記基板の一端部の第1非成膜領域を遮蔽するように配された第1遮断部材と、前記基板の他端部の第2非成膜領域を遮蔽するように配された第2遮断部材とを備えることを特徴とする請求項21に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項26】
前記第1遮断部材及び前記第2遮断部材は、それぞれ平板プレート状に備えられることを特徴とする請求項25に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項27】
前記第1遮断部材は、前記第1非成膜領域の直下に位置し、前記第2遮断部材は、 前記第2非成膜領域の直下に位置するように、前記第1遮断部材及び前記第2遮断部材が前記基板と共に移動することを特徴とする請求項25に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項28】
前記第1遮断部材と前記第2遮断部材とは、前記基板と同じ速度で移動することを特徴とする請求項27に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項29】
前記基板に対する前記第1遮断部材及び前記第2遮断部材の相対的な位置が一定に維持されることを特徴とする請求項27に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項30】
前記第1遮断部材及び前記第2遮断部材の断面は“∪”形状に形成されることを特徴とする請求項25に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項31】
前記第1遮断部材及び前記第2遮断部材のうちいずれか一つの断面は“∪”形状に形成され、他の一つの断面は“L”形状に形成されることを特徴とする請求項25に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項32】
前記基板に蒸着が行われていない間、前記第1遮断部材と前記第2遮断部材とは互いに重畳して位置するように配されることを特徴とする請求項31に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項33】
前記第1遮断部材は、前記第1非成膜領域が前記遮断板アセンブリと前記パターニングスリットシートとの間を過ぎる間に、前記第1非成膜領域を遮蔽し、前記第2遮断部材は、前記第2非成膜領域が前記遮断板アセンブリと前記パターニングスリットシートとの間を過ぎる間に、前記第2非成膜領域を遮蔽するように、前記第1遮断部材及び前記第2遮断部材が前記基板と共に移動することを特徴とする請求項25に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項34】
前記第1非成膜領域が前記遮断板アセンブリと前記パターニングスリットシートとの間を過ぎる間に、前記第1遮断部材は前記基板と同じ速度で移動し、
前記第2非成膜領域が前記遮断板アセンブリと前記パターニングスリットシートとの間を過ぎる間に、前記第2遮断部材は前記基板と同じ速度で移動することを特徴とする請求項33に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項35】
前記第1非成膜領域が前記遮断板アセンブリと前記パターニングスリットシートとの間を過ぎる間に、前記基板に対する前記第1遮断部材の相対的な位置が一定に維持され、
前記第2非成膜領域が前記遮断板アセンブリと前記パターニングスリットシートとの間を過ぎる間に、前記基板に対する前記第2遮断部材の相対的な位置が一定に維持されることを特徴とする請求項33に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項36】
前記蒸着源及び前記蒸着源ノズル部と前記パターニングスリットシートは、連結部材により結合されて一体に形成されることを特徴とする請求項21に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項37】
前記連結部材は、前記蒸着物質の移動経路をガイドすることを特徴とする請求項36に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項38】
前記連結部材は、前記蒸着源及び前記蒸着源ノズル部と前記パターニングスリットシートとの間の空間を外部から密閉するように形成されることを特徴とする薄膜蒸着装置。
【請求項39】
前記薄膜蒸着装置は、前記基板と所定程度離隔するように形成されることを特徴とする請求項21に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項40】
前記基板が前記薄膜蒸着装置に対して前記第1方向に沿って移動しつつ、前記基板上に前記蒸着物質が連続的に蒸着されることを特徴とする請求項21に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項41】
前記薄膜蒸着装置の前記パターニングスリットシートは前記基板より小さく形成されることを特徴とする請求項21に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項42】
前記複数の蒸着源ノズルは、所定角度チルトされるように形成されることを特徴とする請求項21に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項43】
前記複数の蒸着源ノズルは、前記第1方向に沿って形成された2列の蒸着源ノズルを備え、前記2列の蒸着源ノズルは、互いに対向する方向にチルトされていることを特徴とする請求項42に記載の薄膜蒸着装置。
【請求項44】
前記複数の蒸着源ノズルは、前記第1方向に沿って形成された2列の蒸着源ノズルを備え、
前記2列の蒸着源ノズルのうち第1側に配された蒸着源ノズルは、パターニングスリットシートの第2側端部に向くように配され、
前記2列の蒸着源ノズルのうち第2側に配された蒸着源ノズルは、パターニングスリットシートの第1側端部に向くように配されることを特徴とする請求項42に記載の薄膜蒸着装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図5C】
image rotate

【図5D】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図6C】
image rotate

【図6D】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2011−52318(P2011−52318A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145226(P2010−145226)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(308040351)三星モバイルディスプレイ株式會社 (764)
【Fターム(参考)】