説明

薬用石鹸

本発明は、グリセリン及び腐泥を含む石鹸を提供する。また、その治療的用途も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、界面活性剤に関する。本発明は、特に、清めるために使用される界面活性剤に関する。本発明は、特に、石鹸に関する。具体的には、本発明は、湿疹、皮膚炎、ざ瘡、乾癬、白癬(水虫)及び様々な皮膚アレルギー等の病気及び/又は健康状態によってもたらされる症状、又はそれらに関連する症状を、軽減及び/又は抑えるための薬用石鹸に関する。
【背景技術】
【0002】
石鹸は陰イオン界面活性剤である。石鹸は、脂肪及び油、又はそれらの脂肪酸を強いアルカリで化学的に処理することによって作られる。石鹸を作る際に使用される脂肪及び油は、一般的に動物性又は植物性のものである。
【0003】
各々の脂肪や油は、いくつかのトリグリセリドの特徴的な混成からなり、そして3つの脂肪酸分子を含む各々のトリグリセリドがグリセリンの分子の1つに付着する。トリグリセリドには多くの異なるタイプがあり、それぞれのタイプが特定の脂肪酸の組合わせを有している。
【0004】
脂肪及び油の鹸化は、石鹸の製造方法で最も一般的な方法である。これは、脂肪及び油を加熱し、通常、液体の中で、石鹸と水溶液(純石鹸)及びグリセリンを生産するためにこれらをアルカリと作用させる。
【0005】
石鹸を作る他の方法は、アルカリで脂肪酸を中和することを必要とする。この方法では、脂肪及び油は、天然脂肪酸及びグリセリンを産するために高圧蒸気によって加水分解される。脂肪酸は、それから蒸留によって精製され、その後、石鹸と水(純石鹸)を作るために、アルカリによって中和される。
【0006】
石鹸の製造工程での副産物の1つは、グリセリンである。グリセリンは石鹸を軟化する傾向があり、さらに、その固有の湿気を与える特性のために、シャンプー、バスオイル、スキンクリームやその他類似の製品のための基礎物質として、より大きな価値があると考えられているため、通常、最終的な製品からは除去される。
【0007】
アルカリが水酸化ナトリウムであるときに、ナトリウム石鹸は形成される。ナトリウム石鹸は「固い/固体」の石鹸である。アルカリが水酸化カリウムであるときに、カリウム石鹸は形成される。カリウム石鹸は、より柔らかくて、液体のハンドソープやシェービングクリームの中に用いられる。
【0008】
文脈上、ナトリウム石鹸に関する如何なる言及も、例えば、何らかの形状の石鹸の塊など、石鹸製品が固いことや、固体であることを意味し、カリウム石鹸に関する如何なる言及も、例えば、ハンドソープ等のように、石鹸製品が液体又はジェル状のものを意味していると解されるべきである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
石鹸の中には、乾燥している皮膚から水分を吸収して乾燥させる傾向があるものがある。これは、例えば、湿疹等によって生じる乾燥皮膜特有の皮膚状況を悪化させ得る。さらに、アレルゲンのように作用することがより望まれるということは、例えば、石鹸に加えられる着色料等のように、石鹸の成分要素には稀なことではない。その結果として、加湿性があり、及び/又は低アレルギー性の石鹸を提供する必要がある。
【0010】
腐泥は粘土のような物質であり、油や天然ガスの原材料として公知である。sapropel(腐泥)という語は、ギリシャ語の「腐る」を意味するsarosと、「泥」を意味するpelosに由来し、有機体又は無機体の成分を含んでいる海や湖の沈殿物の或る範囲のものを意味している。腐泥は、シルル紀岩構造に関連する黒い有機湿地から、様々な色のついた完新世の沈殿物に迄わたっている。
【0011】
表1は、腐泥の発見が報告されている世界の国や地域を、地質学上の年代と共に示したものである。
【表1】

【0012】
腐泥の沈殿物は主に、北ヨーロッパ、シベリア、カナダ、及び米国北部の州といった亜寒帯の湖と関連している。ヨーロッパの中では、カレリア、エストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランド、及びチェコ共和国に腐泥の豊かな湖が集中している。デンマーク、フィンランド、スウェーデン、オランダ、北イタリア、及びドイツ東部では、より少ない量しか存在しないと報告されている。ロシア連邦、ベラルーシ、及びウクライナでは、広範囲に渡って沈殿物が発見されている。
【0013】
周知のとおり、全ての腐泥が湖の沈殿物として発見されるわけではない。それらは、草木の下の層において形成される泥炭に源泉を持つものであろう。例えば、北西ロシアのサーフティシ湖領域原産の腐泥は、乾燥した泥炭地帯の下から採掘される。
【0014】
海の腐泥は完新世の層でも発見される。それらは、ナミビア、ベネズエラのシエラネバダ山脈、東地中海やヨーロッパの黒海のような、乾燥地方に接している海と関連がある。
【0015】
ヨーロッパ地方では、腐泥は1年に1mmずつ形成されることが報告されている。腐泥の有機成分は、湖に接している広大な葦湿原に源を発する有機堆積物の絶え間のない雨により微積層に蓄積し、それ故、自生的、すなわち、湖領域内に起源があると言える。腐泥の無機体の成分はおそらく他生的で、すなわち、湖外部に起源があるが、しかし、カルシウムやマグネシウムや硫黄のようないくつかの無機物質のイオン移動は、他生的な有機体源泉から生じていると言える。
【0016】
多くの腐泥は、殆ど、白からクリームまでの色をしている。これは、その中に含まれる有機物質の量を反映する。周知のとおり、腐泥内の有機成分が増加するにつれてより濃い色を呈するようになり、中には真っ黒なものもある。
【0017】
腐泥は、異なるアルカリ度を示す。この点について、pH7を超える腐泥は「石灰腐泥」と称され、通常、いくつかの種類のかたつむりの存在によって特徴づけられる。
【0018】
腐泥は、淡水湖の場合と同様に、海の環境でも形成される。
【0019】
酸素を溶存酸素のままの状態にしておくには余りに深すぎる海底の環境において、硫黄を豊富に含む水が還元剤として作用し、有機堆積物が腐泥を形成できる環境を与えてくれる。その硫黄自体は、動物性や植物性物質の部分的な分解からもたらされる。腐泥沈殿物が見つかるような海底では、隣接した大陸は、通常、不毛で、植物の成長が支えている無機物をよく浸出する。これは、沖合いで生物相の豊かな多様性を支えている、栄養分の豊富な供給と一致する結果である。
【0020】
典型的には、腐泥の豊かな湖は低地に位置している。通常、湖の床岩は比較的不溶性であり、そして、湖畔の土は栄養分を容易に浸出させられるポロゾル性土壌である傾向がある。
【0021】
周知のとおり、湖自体は無機質の塩の水溜めとなり、その塩は水を精製する作用がある葦湿原によって吸収される。腐泥は、高いところにある湿地やブランケット型泥炭地で、泥炭が形成されるのと全く同じような仕組みで、湖の底で形成される。
【0022】
有機化合物は、淡水湖沼の(表面の)草木、特に葦に源を発する。これら草木の成長と腐朽の1年のサイクルが、湖底に蓄積する流出有機物質の継続的な流れを起こす。この化学的分解は、木質化組織の分解という形で継続される。
【0023】
蛋白質結合からの硫黄は、溶存酸素と化合して溶性の亜硫酸を作る硫化水素ガスとして遊離させられる。典型的な腐泥湖では、水が停滞している傾向があるため、殆ど置換酸素がなく、しばらくすると利用できる酸素は全て使い果たされ、分解は失速し、ついには全く止まってしまう。その後、有機物質の消化は嫌気性生物に支配され、化学的な還元や、いくらかの無機物質の沈殿を生じさせる。
【0024】
湖の中には、1万年以上の間、恒常的に腐泥を蓄積していたものもある。
【0025】
一部では、腐泥の沈殿物はほぼ全ての水を置換した。例えば、ラトビアのゼブリス湖に残っている水の深さは、ほぼ0.5メートルであった。
【0026】
周知のとおり、全ての腐泥沈殿物が湖の環境で見つかるというわけではない。例えば、北ロシアの地域にあるサーフティシ湖では、最近水際が後退してしまい、当該湖の地域では、腐泥沈殿物より上に形成される泥炭の層につき、苔や葦湿原の遷移を受けた場所もある。
【0027】
過去においては、腐泥は肥料として使用されたこともある。この点に関しては、腐泥中の窒素含有量を増やすために、多くの試みがなされたという事実にも拘らず、その低い窒素含有量のために、肥料としての腐泥の使用は継続されなかった。さらに、その無機物質としての要素のために、腐泥を動物の餌を補うものとして利用していた国もあった。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は、第1に、石鹸が腐泥及びグリセリンを含むという点に特徴がある石鹸を提供する。
【発明の効果】
【0029】
研究の結果、通常、石鹸から取除かれるグリセリンと、石鹸の中に存在する腐泥の間に相乗効果があるという意外な発見がなされた。石鹸の中にある相乗効果の結果は、潤いを与えるだけではなく、例えば、皮膚病や湿疹、皮膚炎、乾癬、ざ瘡、白癬や皮膚アレルギーのような病気や健康状態に関連していたり、またそれによってもたらされる、ひび割れの症状を抑え、又は完治させる効果ももたらした。
【0030】
本発明は、さらに、本発明の石鹸の薬剤としての用途を提供する。特に、本発明の石鹸は、ひび割れ及び/又は、かゆみ及び/又は、じくじく及び/又は、湿疹、皮膚炎、乾癬、ざ瘡、白癬や皮膚アレルギーのような皮膚病や皮膚の状態の発疹の徴候を抑えるか、又は完治させるために用いられる。
【0031】
さらに、腐泥を含むことの他の長所は、それが肌に優しい摩擦材となり、剥離剤のように作用することである。
【0032】
本発明に従った、3つの石鹸の非制限実施例の製造工程を表2を参照して説明する。表2は、本発明の石鹸の3つの異なるタイプを作るために利用される反応体の一覧を示す。前記石鹸を、ここでは、それぞれ、1398、1397、1393と表す。
【表2】

【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
石鹸の腐泥構成要素が最初に用意された。腐泥構成要素が黒い腐泥である場合には、それは炉で対流により乾燥させられ、それから純度の高い粉になるまで焼かれた。腐泥構成要素が白い腐泥である場合には、それは空気で乾燥させられ、続いて、純度の高い粉にするために粉に挽かれた。
【0034】
蜜蝋は、石鹸の中で生じる鹸化作用の触媒として含まれ、それから液状になるまで加熱された。ココナッツ油及びオリーブ油も同様である。両方とも、65℃近くまで加熱されて、それから、油の混合を容易にするために40℃まで冷やされる。
【0035】
それから、ナトリウムが、水に加えられ、油と同じ約40℃にされた。
【0036】
油及び水とナトリウムの混合物は、その後、バッチ反応器、好ましくは、オフセット・回転パドルを具えた蒸気二重釜に加えられた。さらに、触媒反応を起こすために、先行するバッチからの石鹸も、また混合反応物に加えられた。
【0037】
約1時間後に、混合反応体のpH値が検査された。約pH8に達した時に、所望の香り及び色素構成要素が加えられた。
【0038】
結果として生じる混合は、液体状態のまま、その後、ステンレス鋼の円柱状の型に流し込まれ、6日間、暖かい部屋に隔離された。これにより、混合物が凝固するまで、型の中で鹸化反応が続くことが可能となった。
【0039】
できあがった石鹸は、それから型から外されて、さらに2週間乾燥させられた。次に、石鹸は棒状に切られ、8週間積み重ねられ、その間、石鹸は水分を失って縮んで安定化した。
【0040】
湿疹、皮膚炎、乾癬、ざ瘡、白癬や、皮膚アレルギーのような皮膚病や皮膚の状態に関連する、ひび割れ及び/又は、かゆみ及び/又は、じくじく及び/又は、発疹を抑える及び/又は、完治させることができる、薬剤としての本発明の有効性を確認する趣旨で行なわれた試験に関して、以下の調査がなされた。
【0041】
上記の皮膚状況のうちの少なくとも1つを患っている、様々な年齢の男女約30名の被験者のグループが選ばれた。
【0042】
グループのそれぞれのメンバーは自分たちが患っている皮膚の症状や病気の徴候を抑えたり治療するために、その時使っていた薬を止めるように言われ、さらに、少なくとも1日2回、暖かい水と本発明の石鹸で患部を洗うように指示された。
【0043】
調査結果の一部を、表3に示す。
【表3】

【0044】
発明者等もまた、以下の症状を約25年患っている女性の事例の研究を実施した:
【実施例1】
【0045】
乾癬
被験者は、髪の生え際、耳、眉周辺の散発性の乾癬を患っていた。
【0046】
本発明の石鹸を使用した後に、症状によって影響を受けていた部分の炎症と痛みが減少した。2度目に石鹸を使用した後、炎症を起こしていた皮膚の範囲が少なくなっていた。
【0047】
この石鹸を使用して約4日後には、痛みを感じる部分はなくなった。
【0048】
この病状に伴う症状の如何なる再発生も、この石鹸を使うことによって急速に軽減された。被験者はまた、本発明の石鹸で顔を洗っているときでさえ、その皮膚は柔らかいままで、刺激のない状態のままであることが観察された。
【実施例2】
【0049】
湿疹
この被験者は、指の間の散発的な湿疹も患っていた。
【0050】
かゆみが最初に現れたとき、被験者は、症状がある部分に石鹸を使用した。被験者の症状に伴う赤みとかゆさは、ほぼ直ちに軽減された。1日3回、本発明の石鹸を使用した後、湿疹は殆ど完全になくなった。被験者の治療を始めて2日目で、全ての症状が消えた。
【実施例3】
【0051】
慢性アレルギー反応
被験者は、或るアレルギー物質によってもたらされる、皮膚の過剰な反応を患っていた。
【0052】
・アレルギー1
水仙の樹液が被験者の皮膚を赤く覆い、かゆみと炎症した発疹を生じさせていた。ひどい不快感の1週間を過ごした後、被験者はこの石鹸を使用した。この病状に伴う症状は、この石鹸を1回使用した直後に殆ど軽減された。この石鹸を使用し続けて3日後、発疹は完全に消えた。
【0053】
・アレルギー2
被験者は樹液によるアレルギー反応を呈していた。樹液が、皮膚に強烈な反応を起こしていた。被験者がアレルギー反応の徴候を感じ始めて直ぐに、本発明の石鹸で症状がある部分を徹底的に洗った。これにより、アレルギー反応は完全に止まり、発生し始めた如何なる炎症も沈静化された。被験者は、以前は、植物樹液に接触すると、回復するのに1週間から2週間かかっていた。
【0054】
・アレルギー3
この被験者は、太陽にさらされると反応していた。通常、皮膚が腫れ上がり、しみが生じる。蜂の巣のようであった。本発明の石鹸を使用することによって、被験者は太陽にさらされることに関連した症状、すなわち、ちくちく痛む腫れ上がった皮膚や、しみを伴う徴候が軽減されていると気付いた。
【0055】
上記の全てのケースで、本発明の石鹸を用いて治療を始めた直後に著しい改善が見られた。
【0056】
上記の説明、又は請求項、又は添付の表において開示される本発明の特徴、特定の形態によって表される、又は、開示された作用を実現するための手段、又は開示された結果を達成するための方法又は工程によって表される本発明の特徴は、単独で、或いは、組合わされて、本発明を実現するために、様々な形態において利用されることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセリン及び腐泥を含む、石鹸。
【請求項2】
前記石鹸がナトリウム石鹸である、請求項1の石鹸。
【請求項3】
前記石鹸がカリウム石鹸である、請求項1の石鹸。
【請求項4】
前記腐泥が白い腐泥である、請求項1から3のいずれかの石鹸。
【請求項5】
前記腐泥が黒い腐泥である、請求項1から3のいずれかの石鹸。
【請求項6】
用途が薬剤である、請求項1から5のいずれかの石鹸。
【請求項7】
反応体に腐泥を添加し、
最終製品から結果として生じるグリセリンを除去せず、
又は、前記最終製品にグリセリンを添加することからなる、
石鹸の製造方法。
【請求項8】
ざ瘡、湿疹、皮膚炎、乾癬、白癬、及び皮膚アレルギーからなるグループから選ばれる症状の治療のために製造された、請求項1から5のいずれかの石鹸の用途。

【公表番号】特表2007−518860(P2007−518860A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−550285(P2006−550285)
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【国際出願番号】PCT/GB2005/000226
【国際公開番号】WO2005/070385
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(506255016)ザンダー・コーポレイション・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】