説明

蛍光X線分析装置

【課題】 X線管が結露した状態であるか否かを判定して、X線管を破損することを防止することができる蛍光X線分析装置を提供する。
【解決手段】 一次X線を筐体14の出射窓14aから出射するX線管10と、試料Sで発生した蛍光X線の強度を検出する検出器30と、入力操作される入力装置82と、入力装置82から入力される分析開始操作信号に基づいて、ターゲット11に高電圧を印加するとともにフィラメント12に低電圧を印加することにより、検出器30で検出された蛍光X線の強度を取得する制御部50とを備える蛍光X線分析装置1であって、X線管10の外側筐体14の外周面に取り付けられ、水分情報を検出する結露センサ17を備え、制御部50は、入力装置82から分析開始操作信号が入力された際に、結露センサ17で検出された水分情報に基づいて、ターゲット11に低電圧を印加するか、若しくは、ターゲット11に電圧を印加しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中に含まれる元素の濃度を算出する蛍光X線分析装置に関し、特にエネルギー分散型蛍光X線分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、一般的なエネルギー分散型蛍光X線分析装置の構成を示す図である。エネルギー分散型蛍光X線分析装置100は、一次X線を出射するX線管10と、試料Sが配置される試料台20と、蛍光X線のエネルギーと強度I(t)とを検出する検出器30と、高電圧Vhighを印加する高圧電源40と、低電圧Vlow’を印加する低圧電源90と、蛍光X線分析装置100全体を制御する制御部150とを備える(例えば、特許文献1参照)。
試料台20には、円形状の開口21が形成されており、X線管10から出射する一次X線が開口21に入射するように構成されている。これにより、試料Sの分析面が開口21を塞ぐように当接されることで、試料Sの分析面が一次X線に照射されることになる。試料Sの分析面が一次X線に照射されると、試料Sの分析面で蛍光X線が発生する。
検出器30は、導入窓31が形成されており、試料Sの分析面で発生する蛍光X線が導入窓31に入射するように構成されている。これにより、検出器30は、蛍光X線のエネルギーと強度I(t)とを検出する。
【0003】
高圧電源40は、例えば電圧値1kV〜50kV程度のうちから自由に選択して、選択した電圧値Vを印加できるようになっている。
低圧電源90は、電圧値V(例えば、2〜3V等)を印加できるようになっている。
制御部150は、CPU60とメモリ70とを備え、さらにモニタ画面等を有する表示装置81と、キーボードやマウスや蛍光X線分析装置用電源等を有する入力装置82とが連結されている。そして、入力装置81から入力される分析開始操作信号に基づいて、高圧電源40と低圧電源90とを制御して、検出器30で検出された蛍光X線のエネルギーと強度I(t)とを取得することにより、試料Sの定性、定量分析を行うようになっている。
【0004】
ここで、一次X線を出射するX線管10について説明する。図5は、図4に示すX線管10を示す断面図である。X線管10は、陽極であるターゲット11と陰極であるフィラメント12とを内部に有する円筒形状の内側筐体13と、内側筐体13を内部に有する円筒形状の外側筐体14とを有する。
内側筐体13の側壁には、円形状の開口13aが形成されており、開口13aと対向する位置にターゲット11の端面11aが配置されるとともに、ターゲット11の端面11aと対向する位置にフィラメント12の先端が配置されている。そして、ターゲット11は、高電圧用ケーブル15を介して高圧電源40と接続されるとともに、フィラメント12は、低電圧用ケーブル16を介して低圧電源90と接続されている。
これにより、高圧電源40によってターゲット11に高電圧Vhighを印加するとともに、低圧電源90によってフィラメント12に低電圧Vlow’を印加することで、フィラメント12から放射された熱電子をターゲット11の端面11aに衝突させることで、ターゲット11の端面11aで発生した一次X線を開口13aから出射する。
【0005】
外側筐体14の内部には、絶縁油が充填されており、外側筐体14の内部の中央部に内側筐体13が配置される。これにより、ターゲット11で発生する熱を絶縁油の対流により外側筐体14に逃がすことができる。さらに、絶縁油が絶縁材の役割を果すことになる。
そして、外側筐体14の側壁には、内側筐体13の開口13aと連結される円筒形状の窓部14aが形成されるとともに、端面には絶縁体である円筒形状の高電圧用開口部14bと低電圧用開口部14cとが形成されている。
ターゲット11の他端面と高電圧用開口部14bの金属製の端部14dとは、配線11bを介して接続されており、高電圧用開口部14bに、高圧電源40の陽極と接続された高電圧用ケーブル15の導線15aが挿入されることにより、高電圧用ケーブル15の導線15aの先端部と高電圧用開口部14bの端部14dとが電気的に接続され、その結果、ターゲット11と高圧電源40の陽極とが電気的に接続されるようになっている。また、高圧電源40の陰極と接続された高電圧用ケーブル15の導線15bが高電圧用開口部14bの入口部でアースされる。
このとき、高電圧用ケーブル15の導線15aの先端部と導線15bの先端部とは高電圧Vhighが印加されており、導線15aの先端部と導線15bの先端部との間で、放電を起こさないように沿面距離を大きくするために、高電圧用開口部14bの端部14dは、外側筐体14の内部まで伸びている。
【0006】
また、フィラメント12と低電圧用開口部14cとは、電気的に接続されており、低電圧用開口部14cには、低圧電源90の陽極と接続された低電圧用ケーブル16の導線16aの先端部と、低圧電源90の陰極と接続された低電圧用ケーブル16の導線16bの先端部とが電気的に接続され、その結果、フィラメント12と低圧電源90とが電気的に接続されるようになっている。なお、低電圧用ケーブル16の導線16aの先端部と導線16bの先端部とは低電圧Vlow’が印加されており、危険でないので、外側筐体14の表面で電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−3283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、蛍光X線分析装置100が設置された室内の暖房等の電源が入れられると、室内の空気の温度は上昇するが、熱容量が大きい絶縁油の温度は、なかなか上昇せずに低いままとなるので、外側筐体14の外周面に水滴が付着することがある。このとき、高電圧用開口部14bの内周面も、結露することになる。
このように高電圧用開口部14bの内周面が結露した状態で、試料Sの分析を行おうとして、ターゲット11に高電圧Vhighを印加させる分析開始操作信号を入力装置81から入力することにより、分析開始操作信号に基づいてターゲット11に高電圧Vhighを印加すると、沿面距離を大きくしているのもかかわらず高電圧用開口部14bで放電が発生して、その結果、高電圧用開口部14bや高電圧用ケーブル15を破損することがあった。
【0009】
また、高電圧用開口部14bの内周面が、入力装置81から分析開始操作信号を入力した際には、結露していなくても、分析開始操作信号に基づいてターゲット11に高電圧Vhighを印加すると、高電圧用開口部14bの温度が上昇することにより、高電圧用ケーブル15の導線15aを覆う被覆層15cに浸み込んでいた水分が蒸発することにより、高電圧用開口部14bの内周面に水分が付着して、その結果、高電圧用開口部14bで放電が起こることがあった。
そこで、本発明は、X線管が結露した状態であるか否かを判定して、X線管の高電圧用開口部等を破損することを防止することができる蛍光X線分析装置を提供することを目的とする。さらに、分析開始操作信号を入力した際には、X線管の高電圧用開口部等が結露していなくても、X線管の高電圧用開口部等を破損することを防止することができる蛍光X線分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた本発明の蛍光X線分析装置は、出射窓が形成されている外側筐体と、当該外側筐体の内部に配置される内側筐体と、前記外側筐体の内周面と内側筐体の外周面との間に充填される絶縁油と、当該内側筐体の内部に端面が配置された陽極であるターゲットと、当該内側筐体の内部に配置された陰極であるフィラメントとを有し、前記ターゲットの端面で発生した一次X線を外側筐体の出射窓から出射するX線管と、試料に一次X線が照射されることにより、当該試料で発生した蛍光X線の強度を検出する検出器と、高電圧用ケーブルを介してターゲットに高電圧を印加する高圧電源と、低電圧用ケーブルを介してフィラメントに低電圧を印加する低圧電源と、入力操作される入力装置と、前記入力装置から入力される分析開始操作信号に基づいて、前記ターゲットに高電圧を印加するとともにフィラメントに低電圧を印加することにより、前記検出器で検出された蛍光X線の強度を取得する制御部とを備える蛍光X線分析装置であって、前記X線管の外側筐体の外周面に取り付けられ、水分情報を検出する結露センサを備え、前記制御部は、前記入力装置から分析開始操作信号が入力された際に、前記結露センサで検出された水分情報に基づいて、前記ターゲットに低電圧を印加するか、若しくは、前記ターゲットに電圧を印加しないようにするようにしている。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明の蛍光X線分析装置によれば、制御部は、入力装置から分析開始操作信号が入力された際に、結露センサで検出された水分情報に基づいて、X線管が結露した状態であるか否かを判定する。これにより、X線管が結露した状態でないと判定したときには、ターゲットに高電圧を印加させる分析開始操作信号に基づいて、ターゲットに高電圧を印加する。一方、X線管が結露した状態であると判定したときには、ターゲットに高電圧を印加させる分析開始操作信号に基づかず、ターゲットに低電圧を印加するか、若しくは、ターゲットに電圧を印加しない。その結果、X線管の高電圧用開口部等を破損することを防止することができる。
【0012】
(他の課題を解決するための手段および効果)
また、上記の発明において、前記制御部には、蛍光X線分析装置用電源が入れられた状態で、前記ターゲットに高電圧を印加するとともにフィラメントに低電圧を印加する分析を行う分析モードと、蛍光X線分析装置用電源が入れられた状態で、前記ターゲットとフィラメントとに電圧を印加しない状態である待機モードと、蛍光X線分析装置用電源が切られている状態である電源OFFモードとなる群から選択されるいずれかのモードが入力装置によって設定され、前記制御部は、前記待機モードが設定されている際には、前記結露センサで検出された水分情報を記憶していき、前記待機モードから分析モードへ設定された際には、前記待機モードで記憶された水分情報に基づいて、前記ターゲットに低電圧を印加するか、若しくは、前記ターゲットに電圧を印加しないようにしてもよい。
本発明の蛍光X線分析装置によれば、制御部は、蛍光X線分析装置用電源が入れられた状態で、分析に関する機能は通電せずに、結露センサのみが動作する省電力状態である待機モードとすることができる。
【0013】
さらに、上記の発明において、前記制御部は、前記電源OFFモードから分析モードへ設定された際には、前記ターゲットに低電圧を印加するようにしてもよい。
本発明の蛍光X線分析装置によれば、制御部は、電源OFFモードから分析モードへ設定された際に、ターゲットに高電圧を印加させる前に、ターゲットに低電圧を印加する。これにより、X線管に存在する水分を外部へと蒸発させることができる。その結果、X線管の高電圧用開口部等を破損することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係るエネルギー分散型蛍光X線分析装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】図1に示すX線管を示す断面図である。
【図3】分析方法について説明するためのフローチャートである。
【図4】従来のエネルギー分散型蛍光X線分析装置の一例を示す概略構成図である。
【図5】図4に示すX線管を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0016】
図1は、実施形態に係るエネルギー分散型蛍光X線分析装置の一例を示す概略構成図であり、図2は、図1に示すX線管を示す断面図である。なお、エネルギー分散型蛍光X線分析装置100と同様のものについては、同じ符号を付している。
エネルギー分散型蛍光X線分析装置1は、一次X線を出射するX線管10と、試料Sが配置される試料台20と、蛍光X線のエネルギーと強度I(t)とを検出する検出器30と、高電圧Vhighを印加する高圧電源40と、低電圧Vlow’を印加する低圧電源90と、蛍光X線分析装置1全体を制御する制御部50とを備える。
【0017】
X線管10は、陽極であるターゲット11と陰極であるフィラメント12とを内部に有する円筒形状の内側筐体13と、内側筐体13を内部に有する円筒形状の外側筐体14と、高電圧用開口部14b付近の外側筐体14の外周面に取り付けられる結露センサ17とを有する。
外側筐体14の内部には、絶縁油が充填されており、外側筐体14の内部の中央部に内側筐体13が配置される。これにより、ターゲット11で発生する熱を絶縁油の対流により外側筐体14に逃がすことができる。さらに、絶縁油が絶縁材の役割を果すことになる。
結露センサ17は、水分情報W(t)を検出し、制御部50に所定の時間間隔(例えば、数ミリ秒間隔)で順次出力する。結露センサとしては、例えば、結露センサ「HDPシリーズ」(北陸電気工業製)等が挙げられる。
【0018】
制御部50は、CPU60とメモリ70とを備え、さらにモニタ画面等を有する表示装置81と、キーボードやマウスや蛍光X線分析装置用電源等を有する入力装置82とが連結されている。
また、CPU60が処理する機能をブロック化して説明すると、検出器30で検出された蛍光X線のエネルギーと強度I(t)とに基づいて試料S中に含まれる元素の濃度を算出する検出器制御部61と、高圧電源40によってターゲット11に高電圧Vhighを印加するととともに、低圧電源90によってフィラメント12に低電圧Vlow’を印加する電源制御部62とを有する。
【0019】
さらに、メモリ70は、水分情報W(t)を記憶していく水分情報記憶領域71と、高電圧用開口部14bが結露した状態にターゲット11に印加する低い電圧値Vlowを予め記憶する電圧値記憶領域73と、蛍光X線のエネルギーと強度I(t)とを記憶していく蛍光X線記憶領域74とを有する。
なお、電圧値記憶領域73に記憶される電圧値Vlowは、導線15aの先端部と導線15bの先端部との間で放電が発生することなく、高電圧用開口部14b内に存在する水分を外部へと蒸発させるための電圧値(例えば、5kV等)とされている。
【0020】
また、制御部50には、「分析モード」と「待機モード」と「電源OFFモード」となる群から選択されるいずれかのモードが設定されるようになっている。「分析モード」とは、蛍光X線分析装置用電源が入れられた状態で、ターゲット11に高電圧Vhighを印加するとともにフィラメント12に低電圧Vlow’を印加する分析を行うモードのことであり、入力装置82から分析開始操作信号が入力されることで呼び出される。また、「待機モード」とは、蛍光X線分析装置用電源が入れられた状態で、分析に関する機能は通電せずに、結露センサ17のみが動作する省電力状態であるモードのことである。さらに、「電源OFFモード」とは、蛍光X線分析装置用電源が切られている状態であるモードのことである。
【0021】
ここで、蛍光X線分析装置1による分析方法について説明する。図3は、分析方法について説明するためのフローチャートである。なお、図3に示すフローチャートは、蛍光X線分析装置用電源が入れられることで呼び出されるものである。そして、呼び出されると同時に、制御部50には「分析モード」に設定されることになる。
まず、ステップS101の処理において、電源制御部62は、高圧電源40によってターゲット11に、電圧値記憶領域73に記憶された低い電圧値Vlowを所定の時間印加する。その結果、電圧用開口部14b内に水分が存在すれば、高電圧用開口部14b内で放電が発生することなく、高電圧用開口部14b内に存在した水分を外部へと蒸発させることになる。
【0022】
次に、ステップS102の処理において、検出器制御部61は、入力装置82から入力された分析開始操作信号(高電圧Vhigh)に基づいて、高圧電源40によってターゲット11に高電圧Vhighを印加するとともに、低圧電源90によってフィラメント12に低電圧Vlow’を印加することにより、検出器30で検出された蛍光X線のエネルギーと強度I(t)とを取得して、蛍光X線記憶領域74に記憶させる。このとき、高電圧用開口部14bが結露した状態で確実にないので、高電圧用開口部14bや高電圧用ケーブル15を破損することがない。
次に、ステップS103の処理において、検出器制御部61は、モードが何に変更されたか否かを判定する。「分析モード」を続けると判定したときには、ステップS102の処理に戻る。つまり、試料Sの分析を繰り返すことになる。
【0023】
また、ステップS103の処理において、「電源OFFモード」に変更すると判定したときには、蛍光X線分析装置用電源を切って本フローチャートを終了させることになる。
さらに、ステップS103の処理において、「待機モード」に変更すると判定したときには、ステップS104の処理において、電源制御部62は、結露センサ17で検出された水分情報W(t)を取得して、水分情報記憶領域71に記憶させる。
次に、ステップS105の処理において、電源制御部62は、「分析モード」が選択されたか否かを判定する。「分析モード」が選択されていないと判定したときには、ステップS104の処理に戻る。つまり、水分情報W(t)の記憶を繰り返すことになる。
【0024】
一方、「分析モード」が選択されたと判定したときには、ステップS106の処理において、電源制御部62は、水分情報記憶領域71に記憶された水分情報W(t)によって、高電圧用開口部14bが結露した状態であるか否かを判定する。具体的には、所定の時間間隔で取得した水分情報W(t)が一度でも高電圧用開口部14bが結露した状態であると判定したときには、ステップS101の処理に戻る。
一方、所定の時間間隔で取得した水分情報W(t)が一度も高電圧用開口部14bが結露した状態でないと判定したときには、ステップS102の処理に戻る。つまり、高圧電源40によってターゲット11に、電圧値記憶領域73に記憶された低い電圧値Vlowを所定の時間印加せずに、試料Sの分析を行うことになる。
【0025】
以上のように、本発明のエネルギー分散型蛍光X線分析装置1によれば、制御部50は、高電圧用開口部14bが結露した状態であるか否かを判定して、X線管10の高電圧用開口部14bや高電圧用ケーブル15を破損することを防ぐことができる。
また、本発明のエネルギー分散型蛍光X線分析装置1によれば、制御部50は、蛍光X線分析装置用電源が入れられた状態で、分析に関する機能は通電せずに、結露センサ17のみが動作する省電力状態である待機モードとすることができる。
さらに、本発明のエネルギー分散型蛍光X線分析装置1によれば、制御部50は、「電源OFFモード」から「分析モード」へ設定された際に、ターゲット11に高電圧Vhighを印加させる前に、ターゲット11に低電圧Vlowを印加する。これにより、高電圧用開口部14bに存在する水分を外部へと蒸発させることができる。その結果、X線管10の高電圧用開口部14bや高電圧用ケーブル15を破損することを防止することができる。
【0026】
(他の実施形態)
上述したエネルギー分散型蛍光X線分析装置1では、水分情報記憶領域71に記憶された水分情報W(t)によって、X線管10が結露した状態であると判定したときには、高圧電源40によってターゲット11に低い電圧値Vlowを所定の時間印加するような構成を示したが、高圧電源40によってターゲット11に電圧を印加しないような構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、試料中に含まれる元素の濃度を算出する蛍光X線分析装置等に利用することができる。
【符号の説明】
【0028】
1、100 蛍光X線分析装置
10 X線管
11 ターゲット
12 フィラメント
14 外側筐体
14a 窓部(出射窓)
15 高電圧用ケーブル
16 低電圧用ケーブル
17 結露センサ
20 試料台
30 検出器
40 高圧電源
50、150 制御部
82 入力装置
S 試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出射窓が形成されている外側筐体と、当該外側筐体の内部に配置される内側筐体と、前記外側筐体の内周面と内側筐体の外周面との間に充填される絶縁油と、当該内側筐体の内部に端面が配置された陽極であるターゲットと、当該内側筐体の内部に配置された陰極であるフィラメントとを有し、前記ターゲットの端面で発生した一次X線を外側筐体の出射窓から出射するX線管と、
試料に一次X線が照射されることにより、当該試料で発生した蛍光X線の強度を検出する検出器と、
高電圧用ケーブルを介してターゲットに高電圧を印加する高圧電源と、
低電圧用ケーブルを介してフィラメントに低電圧を印加する低圧電源と、
入力操作される入力装置と、
前記入力装置から入力される分析開始操作信号に基づいて、前記ターゲットに高電圧を印加するとともにフィラメントに低電圧を印加することにより、前記検出器で検出された蛍光X線の強度を取得する制御部とを備える蛍光X線分析装置であって、
前記X線管の外側筐体の外周面に取り付けられ、水分情報を検出する結露センサを備え、
前記制御部は、前記入力装置から分析開始操作信号が入力された際に、前記結露センサで検出された水分情報に基づいて、前記ターゲットに低電圧を印加するか、若しくは、前記ターゲットに電圧を印加しないようにすることを特徴とする蛍光X線分析装置。
【請求項2】
前記制御部には、蛍光X線分析装置用電源が入れられた状態で、前記ターゲットに高電圧を印加するとともにフィラメントに低電圧を印加する分析を行う分析モードと、蛍光X線分析装置用電源が入れられた状態で、前記ターゲットとフィラメントとに電圧を印加しない状態である待機モードと、蛍光X線分析装置用電源が切られている状態である電源OFFモードとなる群から選択されるいずれかのモードが入力装置によって設定され、
前記制御部は、前記待機モードが設定されている際には、前記結露センサで検出された水分情報を記憶していき、前記待機モードから分析モードへ設定された際には、前記待機モードで記憶された水分情報に基づいて、前記ターゲットに低電圧を印加するか、若しくは、前記ターゲットに電圧を印加しないことを特徴とする請求項1に記載の蛍光X線分析装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記電源OFFモードから分析モードへ設定された際には、前記ターゲットに低電圧を印加することを特徴とする請求項2に記載の蛍光X線分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−197205(P2010−197205A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42213(P2009−42213)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】