説明

血小板ADPレセプターインヒビター

【課題】血管性の疾患(特に血栓症に関する血管性の疾患)の予防および/または処置に効果的である血小板ADPレセプターインヒビターの提供。
【解決手段】


に代表される、スルホニル尿素誘導体、スルホニルチオ尿素誘導体、スルホニルグアニジン誘導体、スルホニルシアノグアニジン誘導体、チオアシルスルホンアミド誘導体、およびアシルスルホンアミド誘導体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)、式(VI)(本明細書中において以下、「式(I)〜(VI)」と呼ぶ)の新規化合物に関連する。この新規化合物は、より詳細には、効果的な血小板ADPレセプター阻害剤であるスルホニル尿素誘導体、スルホニルチオ尿素誘導体、スルホニルグアニジン誘導体、スルホニルシアノグアニジン誘導体、チオアシルスルホンアミド誘導体、およびアシルスルホンアミド誘導体を含む。これらの誘導体は、種々の薬学的組成物において使用され得、そして特に心臓血管の疾患(特に、血栓症に関する疾患)の予防および/または処置に有効である。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の説明)
血栓症の合併症は、産業化された世界における死亡の主要な原因である。これらの合併症の例として、急性心筋梗塞、不安定狭心症、慢性安定狭心症、一過性脳虚血発作、発作、末梢血管疾患、子癇前症/子癇症、深部静脈血栓症、塞栓症、汎発性血管内凝固症候群および血栓性血球減少性紫斑病が挙げられる。血栓および再狭窄の合併症はまた、侵襲性の手技(例えば、血管形成術、頸動脈血管内膜切除術、CABG(冠状動脈バイパス移植)後手術、血管移植手術、ステントの設置ならびに血管内デバイスおよび人工器官(prothese)の挿入)の後に起こる。一般的に、血小板凝集がこれらの事象に重要な役割を果たしていると考えられる。血小板(正常には血管系を自由に循環している)は、破裂するアテローム性動脈硬化症の病変によってかまたは侵襲性の処置(例えば、血管形成術)によって生じる血流の妨害を伴って、活性化され、そして凝集して血栓を形成し、血管の閉塞をもたらす。血小板の活性化は、種々の因子(例えば、暴露される皮下内のマトリックス分子(例えば、コラーゲン))によってか、または凝固カスケードにおいて形成されるトロンビンによって開始され得る。
【0003】
血小板の活性化および凝集の重要な媒介物質は、ADP(アデノシン5’−二リン酸)である。ADPは、種々の因子(例えば、コラーゲンおよびトロンビン)による活性化時の血管系中の血小板から、および損傷を受けた血液細胞、内皮、または組織から放出される。ADPによる活性化は、さらなる血小板の漸増および存在する血小板凝集物の安定化をもたらす。凝集を媒介する血小板ADPレセプターは、ADPおよびその誘導体のいくつかによって活性化され、そしてATP(アデノシン5’−三リン酸)およびその誘導体のいくつかによって拮抗される(Mills、D.C.B.(1996)Thromb.Hemost.76:835−856)。それ故、血小板ADPレセプターは、プリンヌクレオチドおよび/またはピリミジンヌクレオチドによって活性化されるP2レセプターのファミリーのメンバーである(King,B.F.,Townsend−Nicholson,A.& Burnstock,G.(1998)Trends Pharmacol.Sci.19:506−514)。
【0004】
選択的なアンタゴニストを使用する最近の薬理学的データは、ADP−依存性血小板凝集が少なくとも2つのADPレセプターの活性化を必要とすることを提唱している(Kunapuli,S.P.(1998),Trends Pharmacol.Sci.19:391−394;Kunapuli,S.P.&Daniel,J.L.(1998)Biochem.J.336:513−523;Jantzen,H.M.ら、(1999)Thromb.Hemost.81:111−117)。1つのレセプターは、クローン化されたP2Yレセプターと同一であり、ホスホリパーゼC活性化および細胞内カルシウム可動(calcium mobilization)を媒介し、そして血小板形状変化に必要とされることが明らかである。凝集に重要なもう1つの血小板ADPレセプターは、アデニリルシクラーゼの阻害を媒介する。このレセプターについての遺伝子またはcDNAの分子クローニングはまだ報告されていない。この薬理学的性質およびシグナル伝達の性質に基づいて、このレセプターは、仮にP2YADP(Fredholm,B.B.ら(1997)TIPS 18:79−82)、P2TAC(Kunapuli,S.P.(1998)、Trends Pharmacol.Sci.19:391−394)またはP2Ycyc(Hechler,B.ら、(1998)Blood 92,152−159)と称されている。
【0005】
ADP依存的血小板凝集の直接的または間接的に作用する種々の合成阻害剤が、抗血栓活性を伴って、報告されている。内服で、活性な抗血性栓チエノピリジンであるチクロピジンおよびクロピドグレルは、ADP誘導血小板凝集、放射標識されたADPレセプターアゴニスト2−メチルチオアデノシン5’−二リン酸の血小板に対する結合、および他の間接的なADP依存的事象(恐らく、不安定かつ不可逆的に作用する代謝産物の形成を介して)を阻害する(Quinn,M.J.& Fitzgerald,D.J.(1999)Circulation 100:1667−1667)。内因性のアンタゴニストATPのいくつかのプリン誘導体(例えば、AR−C(以前は、FPLまたはARL)67085MXおよびAR−C69931MX)は、ADP依存的血小板凝集を阻害し、そして動物血栓モデルに有効な選択的血小板ADPレセプターアンタゴニストである(Humphriesら、(1995),Trends Pharmacol.Sci. 16,179;Ingall,A.H.ら(1999)J.Med.Chem.42,213−230)。新規のトリアゾロ[4,5−d]ピリミジン化合物は、P2T−アンタゴニストとして開示された(WO99/05144)。三環式化合物がまた、血小板ADPレセプター阻害剤として、WO99/36425中に開示される。これらの抗血栓化合物の標的は、アデニリルシクラーゼの阻害を媒介する血小板ADPレセプターであることが明白である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの化合物にも関わらず、さらに有効な血小板ADPレセプター阻害剤の必要性がある。特に、心臓血管の疾患(特に、血栓症に関する疾患)の予防および/または処置に有用であり、抗血栓活性を有するさらに有効な血小板ADPレセプター阻害剤の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(本発明の要旨)
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)および式(VI):
【化1】


からなる群から選択される化合物であって、ここで:
Aは、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、アルキルアリールおよびアルキルヘテロアリールからなる群から選択され;
Wは、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリールおよび置換されたヘトロアリールからなる群から選択され;
Eは、H、−C−Cアルキル、ポリハロアルキル、−C3−8−シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、置換されたアリール、ヘテロアリールおよび置換されたヘトロアリールからなる群から選択され;
Dは、−NR−(C=O)−R、−O−R
【化2】


からなる群から選択され、ここで:
は、以下:H、C−Cアルキル、ポリハロアルキル、−C3−8−シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、−(C=O)−C−Cアルキル、−(C=O)−アリール、−(C=O)−置換されたアリール、−(C=O)−ヘテロアリールおよび−(C=O)−置換されたヘテロアリール、からなる群から独立して選択され;
は、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリールおよび置換されたヘテロアリールからなる群から独立して選択されるか、または、
およびRは、長さが1〜約8の炭素原子である炭素鎖を介して直接的に結合され得るか、もしくは間接的に結合され得、
nは、0〜4の整数であり、
mは、0または1の整数であり、
yは、0〜4の整数であり、そして、
Qは、独立してCまたはNであり、ここでQが、環炭素原子である場合、各環炭素原子は、Xによって独立して置換され、ここで、
Xは、以下:水素、ハロゲン、ポリハロアルキル、−OR、−SR、−CN、−NO、−SO、−C1−10−アルキル、−C3−8−シクロアルキル、アリール、1−4R基によって置換されたアリール、アミノ、アミノ−C1−8−アルキル、C1−3−アシルアミノ、C1−3−アシルアミノ−C1−8−アルキル、C1−6−アルキルアミノ、C1−6−アルキルアミノC1−8アルキル、C1−6ジアルキルアミノ、C1−6ジアルキルアミノC1−8アルキル、C1−6アルコキシ、C1−6アルコキシ−C1−6−アルキル、カルボキシ−C1−6−アルキル、C1−3−アルコキシカルボニル、C1−3−アルコキシカルボニル−C1−6−アルキル、カルボキシC1−6−アルキルオキシ、ヒドロキシ、ヒドロキシC1−6アルキル、ならびに、N、OおよびSから独立して選択される1から4のヘテロ原子を有する、5〜10員の縮合化した芳香族もしくは非芳香族複素環式環系または縮合化していない芳香族もしくは非芳香族複素環式環系、からなる群から独立して選択される各条件におけるメンバーであり、但し複素環式環系が存在する場合、炭素原子および窒素原子が、置換されていないか、0〜2R基で、独立して一置換されるか、または二置換される条件を有し、
ここで、RおよびRは、以下:水素、ハロゲン、−CN、−NO、−C1−10アルキル、C3−8−シクロアルキル、アリール、アミノ、アミノ−C1−8−アルキル、C1−3−アシルアミノ、C1−3−アシルアミノ−C1−8−アルキル、C1−6−アルキルアミノ、C1−6−アルキルアミノC1−8アルキル、C1−6ジアルキルアミノ、C1−6ジアルキルアミノC1−8アルキル、C1−6アルコキシ、C1−6アルコキシ−C1−6−アルキル、カルボキシ−C1−6−アルキル、C1−3−アルコキシカルボニル、C1−3−アルコキシカルボニル−C1−6−アルキル、カルボキシ−C1−6−アルキルオキシ、ヒドロキシ、ヒドロキシ−C1−6−アルキル、−チオおよびチオ−C1−6−アルキル、からなる群から各々独立して選択され;
Yは、O、S、N−OR、およびNRからなる群から選択され、
ここで、Rは、H、C1−10アルキル、C3−8−シクロアルキル、およびCNからなる群から選択されるか;
または、薬学的に受容可能な塩およびプロドラッグである、化合物。
(項目2)
項目1に記載の化合物であって、該化合物が、以下の式:
【化3】


を有し、ここで:Rは、以下:
【化4】


からなる群から選択され、Rは、以下:
【化5】


からなる群から選択され、Wは、以下:
【化6】


からなる群から選択され、Yは、以下:
【化7】


からなる群から選択され、Aは、以下:
【化8】


からなる群から選択される、化合物。
(項目3)
項目1に記載の化合物であって、該化合物が、以下の式:
【化9】


を有し、ここで:nは、0〜4の整数であり;
Xは、3−Br、3−Cl、4−OMe、H、3−SOMe、3−N(Me)および3,4,−ジメチルからなる群から選択され;
Wは、以下:
【化10】


からなる群から選択され、Yは、以下:
【化11】


からなる群から選択され、Aは、以下:
【化12】


からなる群から選択される、化合物。
(項目4)
項目1に記載の化合物であって、該化合物が、以下の式:
【化13】


を有し、ここで:Yは、以下:
【化14】


からなる群から選択され、Aは、以下:
【化15】


からなる群から選択される、化合物。
(項目5)
項目1に記載の化合物であって、該化合物が、以下の式:
【化16】


を有し、ここで、Rは、以下:
【化17】


からなる群から選択され、Rは、以下:
【化18】


からなる群から選択され、Wは、以下:
【化19】


からなる群から選択される、化合物。
(項目6)
項目1に記載の化合物であって、該化合物が、以下:
【化20】


【化20A】


からなる群から選択される、化合物。
(項目7)
治療学的に効果的な量の項目1に記載の化合物、または薬学的に受容可能なそれらの塩および薬学的に受容可能なキャリアを含む哺乳動物における血栓症を予防または処置するための、薬学的組成物。
(項目8)
前記治療学的に効果的な量が、哺乳動物における血小板の凝集を阻害するのに効果的な量である、項目7に記載の薬学的組成物。
(項目9)
前記血小板の凝集が、血小板ADP依存凝集である、項目8に記載の薬学的組成物。
(項目10)
前記哺乳動物が、ヒトである、項目9に記載の薬学的組成物。
(項目11)
前記化合物が、血小板ADPレセプターとの[H]2−MeS−ADP結合の効果的なインヒビターである、項目7に記載の薬学的組成物。
(項目12)
治療学的に効果的な量の項目6に記載の化合物、または薬学的に受容可能なそれらの塩および薬学的に受容可能なキャリアを含む哺乳動物における血栓症を予防または処置するための、薬学的組成物。
(項目13)
前記治療学的に効果的な量が、哺乳動物における血小板の凝集を阻害するのに効果的な量である、項目12に記載の薬学的組成物。
(項目14)
前記血小板の凝集が、血小板ADP依存凝集である、項目13に記載の薬学的組成物。
(項目15)
前記哺乳動物が、ヒトである、項目14に記載の薬学的組成物。
(項目16)
前記化合物が、血小板ADPレセプターとの[H]2−MeS−ADP結合の効果的なインヒビターである、項目12に記載の薬学的組成物。
(項目17)
治療学的に効果的な量の項目1に記載の化合物、または薬学的に受容可能なそれらの塩を哺乳動物に投与する工程を包含する哺乳動物における血栓症を予防または処置するための、方法。
(項目18)
前記哺乳動物が、ヒトである、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記哺乳動物が、心臓血管の疾患を被りやすいか、または罹患している、項目17に記載の方法。
(項目20)
項目17に記載の方法であって、前記心臓血管の疾患が、急性心筋梗塞、不安定狭心症、慢性安定狭心症、一過性脳虚血、発作、末梢性血管の疾患、子癇前症/子癇、深在静脈血栓症、塞栓症、汎発性血管内凝固症候群および血栓性血小板減少性紫斑病、血管形成、頸動脈内膜切除、CAGB(冠状動脈バイパス移植)手術後、血管移植手術、ステント配置ならびに血管内デバイスおよび補綴の挿入によって生じる侵襲性の手術の後の血栓の合併症および再狭窄の合併症からなる群から選択される少なくとも1つである、方法。
本発明は、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)、式(VI)の化合物を提供し:
【0008】

【化21】


Aは、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルキルアリールおよびアルキルヘテロアリールからなる群より選択される。Wは、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、および置換ヘテロアリールからなる群より選択される。Eは、H、−C−Cアルキル、ポリハロアルキル、−C3−8シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、置換アリール、ヘテロアリール、および置換ヘテロアリールからなる群より選択される。Dは、NR−(C=O)−R、−O−R
【0009】
【化22】


からなる群より選択されここで:Rは、以下からなる群より独立して選択される:
H、C−Cアルキル、ポリハロアルキル、−C3−8−シクロアルキル,アリール、アルキルアリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、−(C=O)−C−Cアルキル、−(C=O)−アリール、−(C=O)−置換アリール、−(C=O)−ヘテロアリールおよび−(C=O)−置換ヘテロアリール;Rは、以下からなる群より独立して選択される:
アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、またはRおよびRは、直接的に結合し得るか、または1〜約8までの炭素原子長である炭素鎖を通じて間接的に結合され得、
nは0〜4、
mは0または1、
yは0〜4、そして
Qは独立してCまたはNであり、但し、Qが環炭素原子である場合、各環炭素原子は独立してXによって置換される。
Xは、各場合において、以下からなる群より独立して選択されるメンバーである:
H、ハロゲン、ポリハロアルキル、−OR、−SR、−CN、−NO、−SO、−C1−10−アルキル、−C3−8−シクロアルキル、アリール、1〜4個のR基により置換されるアリール、アミノ、アミノ−C1−8−アルキル、C1−3−アシルアミノ、C1−3−アシルアミノ−C1−8−アルキル、C1−6−アルキルアミノ、C1−6−アルキルアミノC1−8アルキル、C1−6ジアルキルアミノ、C1−6ジアルキルアミノC1−8アルキル、C1−6アルコキシ、C1−6アルコキシ−C1−6−アルキル、カルボキシ−C1−6−アルキル、C1−3−アルコキシカルボニル、C1−3−アルコキシカルボニルCl−6−アルキル、カルボキシC1−6アルキルオキシ、ヒドロキシ、ヒドロキシC1−6アルキル、および5〜10員の縮合または非縮合の芳香族または非芳香族ヘテロ環式環系(N、OおよびSより独立して選択される1〜4のヘテロ原子を有し、但し、ヘテロ環式環系に存在する場合、炭素および窒素原子は置換されないか、0〜2個のR基で一置換されるか、または独立して二置換される)。
【0010】
およびRは、以下からなる群より各々独立して選択される:
H、ハロゲン、−CN、−NO、−C1−10−アルキル、C3−8−シクロアルキル、アリール、アミノ、アミノ−C1−8−アルキル、C1−3−アシルアミノ、C1−3−アシルアミノ−C1−8−アルキル、C1−6−アルキルアミノ、C1−6−アルキルアミノC1−8アルキル、C1−6ジアルキルアミノ、C1−6ジアルキルアミノC1−8アルキル、C1−6アルコキシ、C1−6アルコキシ−C1−6−アルキル、カルボキシ−C1−6−アルキル、C1−3−アルコキシカルボニル、C1−3−アルコキシカルボニル−Cl−6−アルキル、カルボキシ−C1−6アルキルオキシ、ヒドロキシ、ヒドロキシ−C1−6アルキル、チオおよびチオ−C1−6−アルキル。Yは、O、S、N−ORおよびNRからなる群より選択される、ここでRは、以下からなる群より選択される:
H、C1−10アルキル、C3−8シクロアルキル、およびCN。
【0011】
本発明はまた、式(I)〜(VI)の化合物の全ての薬学的に受容可能な塩およびプロドラッグも範囲に入れる。
【0012】
別の局面において、本発明は、治療的有効量の式(I)〜(VI)の化合物またはその薬学的に受容可能な塩および薬学的に受容可能なキャリアを含む、哺乳動物において血栓を予防または処置するための薬学的組成物を提供する。本発明はさらに、治療的有効量の式(I)〜(VI)の化合物またはその薬学的に受容可能な塩を投与することによって動物において血栓を予防または処置する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(発明の詳細な説明)
(定義)
本発明に基づいて、そして本明細書中で使用される場合に、以下の用語は、別に明記しない限り、以下の意味で定義される。
【0014】
用語「アルケニル」は、三価の直鎖または分岐鎖不飽和脂肪族ラジカルをいう。用語「アルキニル(alkinyl)」(または「アルキニル(alkynyl)」)は、三重結合によって結合される少なくとも2つの炭素を含む直鎖または分岐鎖脂肪族ラジカルをいう。炭素の数が指定されない場合は、アルケニルおよびアルキニルはそれぞれ、2〜12炭素原子を有するラジカルをいう。
【0015】
用語「アルキル」は、指定される数の炭素(数が指定されない場合は、約12炭素原子まで)を有する直鎖、分岐鎖および環状基を含む飽和脂肪族基をいう。用語「シクロアルキル」は、本明細書中で使用される場合、3〜約14炭素原子、そして好ましくは3〜7炭素原子を有する単環式脂肪族環、二環式脂肪族環、または三環式脂肪族環をいう。
【0016】
用語「C−Cアルコキシ」は、本明細書中で使用される場合、酸素が示される数の炭素原子の直鎖または分岐鎖に結合するエーテル部分をいう。
【0017】
用語「モノC−Cアルキルアミノ」は、本明細書中で使用される場合、窒素が1つのHおよび1つのC−Cアルキル置換基(後者は、上記のように定義される)で置換されるアミノ部分をいう。
【0018】
用語「ジC−Cアルキルアミノ」は、本明細書中で使用される場合、窒素が上記で定義されるような2つのC−Cアルキル置換基で置換されるアミノ部分をいう。
【0019】
用語「モノアリールアミノ」は、本明細書中で使用される場合、窒素が1つのHおよび1つのアリル置換基(例えば、フェニル)(後者は、上記のように定義される)で置換されるアミノ部分をいう。
【0020】
用語「ジアリールアミノ」は、本明細書中で使用される場合、窒素が2つのアリール置換基(例えば、フェニル)(後者は、上記のように定義される)で置換されるアミノ部分をいう。
【0021】
用語「C−Cアルキルスルホニル」は、本明細書中で使用される場合、硫黄原子がまた、1つのC−Cアルキル置換基(後者は、上記のように定義される)に結合されるジオキソ硫黄部分をいう。
【0022】
用語「C−Cアルコキシカルボニル」は、本明細書中で使用される場合、水素がC−Cアルキル置換基(後者は、上記のように定義される)によって置換されるヒドロキシカルボニル部分をいう。
【0023】
本明細書中で使用される場合、用語「炭素環式環構造」および「C3−16炭素環式単環式構造、C3−16炭素環式二環式構造またはC3−16炭素環式三環式構造」などは、環原子として炭素原子のみを有する安定な環構造を意味することがそれぞれ意図され、ここで、この環構造は、以下からなる群より選択される置換員または非置換員である:6個の環原子(「フェニル」)を有する芳香族環(「アリール」)である安定な単環式環;3個〜約7個の環原子を環中に有する安定な単環式非芳香族環;合計7個〜約12個の環原子を二環中に有する環原子安定な二環式環構造であって、ここで、この二環式環構造は、これらの環の両方が芳香族である環構造、これらの環の一方が芳香族である環構造、およびこれらの環の両方が非芳香族である環構造からなる群より選択される、二環式環構造;ならびに、合計約10個〜約16個の環原子を三環中に有する安定な三環式環構造であって、ここで、この三環式環構造は、これらの環のうちの三環が芳香族である環構造、これらの環のうちの二環が芳香族である環構造、およびこれらの環のうちの三環が非芳香族である環構造からなる群より選択される、三環式環構造。それぞれの場合において、非芳香族環は、単環式環構造、二環式環構造または三環式環構造中に存在する場合、独立して飽和していても、部分的に飽和していても、全て飽和していても良い。このような炭素環式環構造の例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アダマンチル、シクロオクチル、[3.3.0]ビシクロオクタン、[4.3.0]ビシクロノナン、[4.4.0]ビシクロオクタン(デカリン)、2.2.2]ビシクロオクタン、フルオレニル、フェニル、ナフチル、インダニル、アダマンチルまたはテトラヒドロナフチル(テトラリン)。さらに、本明細書中に記載される環構造は、安定な構造を生じる任意の炭素原子を介して1個以上の指示ペンダント(pendant)基に結合され得る。炭素環式環構造とともに使用される場合、用語「置換」とは、本明細書中で記載される環構造の環炭素原子に結合する水素原子が、その構造を指示する1個以上の置換基(このような置換基(単数または複数)が安定な化合物を生じる場合)によって置換され得ることを意味する。
【0024】
用語「炭素環式環構造」に含まれる用語「アリール」とは、非置換芳香族環または以下から選択される置換基1個、2個、もしくは3個と置換される置換芳香族環をいう:低級アルコキシ、低級アルキル、低級アルキルアミノ、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシル、メルカプト、ニトロ、チオアルコキシ、カルボキサルデヒド、カルボキシル、カルボアルコキシおよびカルボキサミド。このアリールは、炭素環式アリール基、複素環式アリール基およびビアリール基などを含むがこれらに限定されず、これらの全ては必要に応じて置換され得る。好ましいアリール基としては、フェニル、ハロフェニル、低級アルキルフェニル、ナフチル、ビフェニル、フェナントレニルおよびナフサセニルが挙げられる。
【0025】
用語「炭素環式アリール」に含まれる用語「アリールアルキル」とは、指定された炭素原子の数を有するアルキル基に付加された指定された数の炭素原子を有する1個、2個、または3個のアリール基をいう。適切なアリールアルキル基としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ベンジル、ピコリル、ナフチルメチル、フェネチル、ベンジルヒドリル(benzyhydryl)、トリチルなど(これらの全ては必要に応じて置換され得る)。
【0026】
本明細書中で使用される場合、用語「フェニル」とは、芳香族環を含む6個の炭素をいい、この芳香族環は、H、C〜Cアルキル、ヒドロキシル、C〜Cアルコキシ、アミノ、モノ−C〜Cアルキルアミノ、ジ−C〜Cアルキルアミノ、ニトロ、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、ヒドロキシカルボニル、またはC〜Cアルコキシカルボニルで多様に単置換または複数置換され得る。
【0027】
本明細書中に使用される場合、用語「複素環式環」または「複素環式環系」とは、以下からなる群より選択される置換員または非置換員を意味することが意図される:5員から7員を環自体中に有し、そしてN、OおよびSからなる群より選択される1個〜4個のヘテロ環原子を有する安定な単環式環;合計7原子〜12原子を二環中に有する安定な二環式環構造であって、ここで、二環のうちの少なくとも一環が、N、OおよびSから選択される1個〜4個のヘテロ原子を有し、記載される安定な単環式複素環式環のいずれかがヘキサン環またはベンゼン環に縮合される二環式環構造を含む、二環式環構造;ならびに、合計10原子〜16原子を三環中に有する安定な三環式複素環式環構造であって、ここで、三環のうちの少なくとも一環は、N、OおよびSからなる群より選択される1個〜4個のヘテロ原子を有する、三複素環式環構造。このような複素環式環構造の複素環式環中に存在する任意の窒素原子および硫黄原子は、酸化され得る。他に示さない限り、用語「複素環式環」または「複素環式環系」は、芳香族環、および飽和している飽和非芳香族環、部分的に飽和し得る非芳香族環、または全て飽和している非芳香族環を含む。また、他に示さない限り、用語「複素環式環系」は、全ての環が少なくとも1個のヘテロ原子を含む環構造を含み、そして全ての環未満の環が少なくとも1個のヘテロ原子を環構造中に含む構造を含む(例えば、一環がベンゼン環であり、そしてこれらの環のうちの一環が一個以上のヘテロ原子を有する二環式環構造および二環それぞれが少なくとも1個のヘテロ原子を有する二環式環構造と同様に、用語「複素環式環系」内に含まれる)。さらに、本明細書中に記載される環構造は、安定な構造を生じる任意のヘテロ原子または炭素原子を介して1個以上の指示ペンダント基に結合され得る。さらに、用語「置換」とは、本明細書中に記載される環構造中の環のそれぞれの環炭素原子(単数または複数)または環窒素原子(単数または複数)の1個以上の水素原子が、このような置換(単数または複数)が安定な化合物を生じる場合、1個以上の指示された置換基によって置換され得ることを意味する。環構造中の窒素原子を4級にしても良いが、このような化合物は詳細に指示されるかまたは特定の化合物について用語「薬学的に受容可能な塩」の中に含まれる。単一の複素環式環中のO原子およびS原子の総数が、1個よりも多い場合、このような原子が互いに隣接しないことが好ましい。好ましくは、所定の複素環式環構造の同環中に、たった1個のO環原子またはS環原子が存在する。
【0028】
単環式複素環系および二環式複素環式環系の例としては、アルファベット順に以下である:アクリジニル、アゾシニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンズオキサゾリル、ベンズチアゾリル、ベンズトリアゾリル、ベンズテトラゾリル、ベンズイソキサゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンズイミダザリニル、カルバゾリル、4aH−カルバゾリル、カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、2H,6H−1,5,2−ジチアジニル、ジヒドロフロ[2,3−b]テトラヒドロフラン、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H−インダゾリル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、3H−インドリル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル(ベンズイミダゾリル)、イソチアゾリル、イソキサゾリル、モルフォリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサヂアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキサゾリジニル、ピリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピロアゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾール(pryidooxazole)、ピロリドイミダゾール、ピリドチアゾール、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、2H−ピロリル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、4H−キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、6H−1,2,5−チアダジニル、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニル、トリアジニル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、1,2,5−トリアゾリル、1,3,4−トリアゾリルおよびキサンテニル。好ましい複素環式環構造は、以下を含むがこれらに限定されない:ピリジニル、フラニル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、ピロリジニル、イミダゾリル、インドリル、ベンズイミダゾリル、1H−インダゾリル、オキゾリニル、またはイサチノール。例えば、上記の複素環式環構造を含む縮合環およびスピロ化合物もまた含まれる。
【0029】
本明細書において使用される場合、用語「芳香族複素環式環系」は、その環系のうちの少なくとも一環が芳香族複素環式環であるか、または二環が芳香族炭素環式環構造に縮合した芳香族複素環式環もしくは非芳香族複素環式環である場合を除く、単環式環系および二環式環系と本質的に同じ定義を有する。
【0030】
本明細書中で使用される場合、用語「ハロ」または「ハロゲン」とは、Cl置換基、Br置換基、F置換基またはI置換基をいう。用語「ハロアルキル」などとは、Cl原子、Br原子、F原子またはI原子によって置換された少なくとも1個のハロゲン原子を有する脂肪族炭素基をいい、これは、異なるハロ原子の混合物を含む。トリハロアルキルは、例えば、好ましい基としてトリフルオロメチルなどを含む。
【0031】
用語「メチレン」とは、−CH−をいう。
【0032】
用語「薬学的に受容可能な塩」は、化合物と有機酸または無機酸との組み合せから誘導される化合物の塩を含む。これらの化合物は、遊離塩基および塩の形態の両方で有用である。実際には、塩形態の使用は、塩基形態の使用ということになる;酸付加塩および塩基付加塩の両方は、本発明の範囲内にある。
【0033】
「薬学的に受容可能な酸付加塩」とは、遊離塩基の生物学的な有効性および性質を残している塩をいい、そしてこれは、生物学的にも他の場合でも望ましく、無機酸(例えば、塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など)および有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸など)と形成される。
【0034】
「薬学的に受容可能な塩基付加塩」は、無機塩基(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、マンガン塩、アルミニウム塩など)から誘導される塩を含む。アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、およびマグネシウム塩などが特に好ましい。薬学的に受容可能な有機非毒性塩基由来の塩は、1級アミン、2級アミン、および3級アミン、天然に存在する置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、ならびに塩基性イオン交換樹脂(例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2−ジエチルアミノエタノール、トリメタミン、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン(piperizine)、ピペリジン、N−エチルピペリジン、ポリアミン樹脂など)の塩を含む。特に好ましい有機非毒性塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメタミン、ジシクロヘキシルアミン、コリン、およびカフェインである。
【0035】
本明細書における目的のための「生物学的性質」とは、インビトロアッセイによってしばしば示される本発明の化合物によって直接的または間接的に実施されるインビボでの、エフェクター機能もしくはエフェクター活性または抗原性機能もしくは抗原性活性を意味する。エフェクター機能は、レセプター結合もしくはリガンド結合、任意の酵素活性もしくは酵素調節活性、任意のキャリア結合活性、任意のホルモン活性、細胞外マトリクスもしくは細胞表面分子に対する細胞の接着を促進するかまたは阻害する任意の活性、あるいは任意の構造的役割を含む。抗原性機能は、それに対して惹起された抗体と反応し得るエピトープ部位または抗原性部位の所有を含む。
【0036】
本発明の化合物において、4個の非同一置換基に結合した炭素原子は、不斉性である。従って、これらの化合物は、ジアステレオマー、エナンチオマーまたはそれらの混合物として存在し得る。本発明中に記載される合成は、開始材料または中間体としてラセミ体、エナンチオマーまたはジアステレオマーを用い得る。このような合成から得られたジアステレオマーの生成物は、クロマトグラフィー法もしくは結晶化法によってか、または当該分野で公知の他の方法によって分離され得る。同様に、エナンチオマーの生成物の混合物は、同じ技術を用いてかまたは当該分野で公知の他の方法によって分離され得る。不斉炭素原子のそれぞれは、本発明の化合物中に存在する場合、2つの立体配置(RまたはS)のうちの1つであり得、そしてその両方は、本発明の範囲内である。
【0037】
(本発明の化合物の実施形態)
以下の式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)、および式(VI)の化合物は、本発明の1つの実施形態を示す。
【0038】

【化23】


Aは、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換へテロアリール、アルキルアリール、およびアルキルへテロアリールからなる群より選択される。Wは、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、および置換へテロアリールからなる群より選択される。Eは、H、−C〜Cアルキル、ポリハロアルキル、−C3−8シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、置換アリール、ヘテロアリール、および置換ヘテロアリールからなる群より選択される。Dは、以下からなる群より選択される:NR−(C=O)−R、−O−R
【0039】
【化24】


ここで、Rは、以下からなる群より独立して選択される:
H、C〜Cアルキル、ポリハロアルキル、−C3−8−シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、−(C=O)−C〜Cアルキル、−(C=O)−アリール、−(C=O)−置換アリール、−(C=O)−ヘテロアリールおよび−(C=O)−置換ヘテロアリール;Rは、以下からなる群より選択される:アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換へテロアリール、あるいはRまたはRは、直接結合され得るか、または1個〜約8個の炭素原子長である炭素鎖を介して間接的に結合され得、nは、0〜4であり、mは、0または1であり、yは、0〜4であり、そしてQは、独立してCまたはNであり、但し、Qが環炭素原子である場合、各環炭素原子がXによって独立して置換され、ここで、Xは、各場合において、以下の群より独立して選択される員である:
H、ハロゲン、ポリハロアルキル、−OR、−SR、−CN、−NO、−SO、−C1−10−アルキル、−C3−8−シクロアルキル、アリール、1〜4個のR基によって置換されたアリール、アミノ、アミノ−C1−8−アルキル、C1−3−アシルアミノ、C1−3−アシルアミノ−C1−8−アルキル、C1−6−アルキルアミノ、C1−6−アルキルアミノC1−8−アルキル、C1−6−ジアルキルアミノ、C1−6−ジアルキルアミノC1−8−アルキル、C1−6−アルコキシ、C1−6−アルコキシ−C1−6−アルキル、カルボキシ−C1−6−アルキル、C1−3−アルコキシカルボニル、C1−3−アルコキシカルボニル−C1−6−アルキル、カルボキシC1−6アルキルオキシ、ヒドロキシ、ヒドロキシC1−6アルキル、および5員〜10員の縮合されたかまたは縮合されていない芳香族複素環式環系または非芳香族複素環式環系(これは、N、O、およびSから独立して選択される1個〜4個のヘテロ原子を有する。但し、炭素原子および窒素原子は、複素環式環系中に存在する場合、置換されていないか、0〜2個のR基で独立して一置換されるか、または二置換される)、そしてここで、RまたはRは、以下からなる群よりそれぞれ独立して選択される: H、ハロゲン、−CN、−NO、−C1−10アルキル、C3−8−シクロアルキル、アリール、アミノ、アミノ−C1−8−アルキル、C1−3−アシルアミノ、C1−3−アシルアミノ−C1−8−アルキル、C1−6−アルキルアミノ、C1−6−アルキルアミノC1−8−アルキル、C1−6−ジアルキルアミノ、C1−6−ジアルキルアミノC1−8−アルキル、C1−6−アルコキシ、C1−6−アルコキシ−C1−6−アルキル、カルボキシ−C1−6−アルキル、C1−3−アルコキシカルボニル、C1−3−アルコキシカルボニル−C1−6−アルキル、カルボキシ−C1−6−アルキルオキシ、ヒドロキシ、ヒドロキシ−C1−6−アルキル、−チオおよびチオ−C1−6−アルキル。Yは、O、S,N−OR、およびNRからなる群より選択され、ここで、Rは、以下からなる群より選択される:
H、C1−10アルキル、C3−8−シクロアルキル、およびCN。
【0040】
本発明はまた、式Iから式VIの化合物の、全ての薬学的に受容可能な塩およびプロドラッグを網羅する。
【0041】
本発明の別の好ましい実施形態において、式(I)〜(VI)の化合物は、以下の表1〜4に記載される化合物を含む。
【0042】
【表1】



【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【0045】
【表4】


特定の好ましい化合物の例を、以下に列挙する:
【0046】
【化25】

【0047】
【化26】


(本発明の化合物の調製)
式(I)〜(VI)の化合物は、以下の資料に概略される種々の方法によって調製され得る:J.Med.Chem.、33、23〜93〜2407(1990);BiorgおよびMed.Chem.Letts.、第2巻、No.9、987〜992頁(1992);J.Med.Chem.35、3012〜3016(1992);米国特許第5,234,955号(1993);米国特許第5,354,778号(1994);米国特許第5,565,494号(1996);米国特許第5,594,028号(1997);米国特許第5,302,724号(1994);およびWO97/08145(これらはその全体において参考として本明細書中で援用される)。他の周知の複素環式合成手順および炭素環式合成手順ならびに上記で取り入れられる手順の改変が、利用され得る。
【0048】
式(I)〜(VI)の化合物は、当該分野で公知の代表的な単離技術および精製技術(例えば、クロマトグラフィー法および再結晶法が挙げられる)を使用して単離され得る。
【0049】
本発明の式(I)〜(VI)の式の化合物において、同一でない4つの置換基が結合する炭素原子は、不斉である。従って、式(I)〜(VI)の化合物は、エナンチオマー、ジアステレオマーまたはそれらの混合物として存在し得る。このエナンチオマーおよびジアステレオマーは、クロマトグラフィー法もしくは再結晶法によって分離され得るか、または当該分野で公知の他の方法によって分離され得る。この不斉炭素原子は、本発明の式(I)〜(VI)の化合物中に存在する場合、2つの立体配置(RまたはS)のうちの1つであり、そして両方が本発明の範囲内である。最終精製生成物中における、少量の反対のエナンチオマーまたはジアステレオマーの存在は、このような化合物の治療的適用または診断的適用に影響しない。
【0050】
本発明に従って、式(I)〜(VI)の化合物はさらに処理されて、薬学的に受容可能な塩を形成し得る。本発明の化合物の、酸または塩基での処理は、それぞれ上記に規定されるような、薬学的に受容可能な酸付加塩および薬学的に受容可能な塩基付加塩をそれぞれ形成し得る。本明細書中で規定される無機酸および無機塩基ならびに有機酸および有機塩基を含む、当該分野で公知の種々の無機酸および無機塩基ならびに有機酸および有機塩基が、塩への転換をもたらすために使用され得る。
【0051】
本発明はまた、式(I)〜(VI)の化合物の、薬学的に受容可能な異性体、水和物、および溶媒和物に関する。式(I)〜(VI)の化合物はまた、種々の異性体および互変異性体の形態(このような異性体および互変異性体の薬学的に受容可能な塩、水和物、および溶媒和物を含む)で存在する。
【0052】
本発明はまた、式(I)〜(VI)の化合物のプロドラッグ誘導体を包含する。用語「プロドラッグ」は、活性な薬物を放出するために、自発的もしくは酵素的のいずれかで、生物体内での生体内変化を必要とする、親の薬物分子の薬理学的に不活性な誘導体をいう。プロドラッグは、代謝条件下で切断可能な基を有する本発明の式(I)〜(VI)の化合物の異形または誘導体である。プロドラッグは、生理学的条件下で加溶媒分解を受けるか、または酵素的分解を受ける場合に、インビボで薬学的に活性な本発明の化合物となる。本発明のプロドラッグ化合物は、生物体内で活性薬物を放出するために要求される生体内変化の工程の数に依存して単一、二重、三重などと呼ばれ得、前駆体型の形状に存在する官能基の数を示唆する。プロドラッグ形状は、しばしば溶解性、組織適合性、または哺乳動物生物体における遅延放出の利点を提供する(Bundgard、Design of Prodrugs、7〜9頁、21〜24頁、Elsevier、Amsterdam(1985);Silverman、The Organic Chemistry of Drug Design and Drug Action、352〜401頁、Academic Press、San Diego、CA(1992))。当該分野で一般に公知のプロドラッグは、当業者に周知である酸誘導体(例えば、親の酸の適切なアルコールとの反応によって調製されるエステル、もしくは親の酸化合物のアミンとの反応によって調製されるアミド)またはアクリル化塩基性誘導体を形成するように反応する塩基性基が挙げられる。さらに、本発明のプロドラッグ誘導体は、本明細書中でバイオアベイラビリティを増強すると教示された他の特徴と組み合わされ得る。
【0053】
(薬学的組成物および処置の方法)
本発明に従う式(I)〜(VI)の化合物は、薬学的組成物に処方され得る。従って、本発明はまた、哺乳動物における血栓症、特に血小板凝集に関与する血栓症の病理学的な状態の予防または処置のための薬学的組成物に関し、これはそれぞれ上記に記載される、治療有効量の式(I)〜(VI)の化合物またはその薬学的に受容可能な塩、および薬学的に受容可能なキャリアもしくは薬剤を含む。好ましくは、本発明の薬学的組成物は、血小板凝集(より好ましくは哺乳動物、特にヒトにおけるADP−依存性凝集)の阻害に効果的な量の式(I)〜(VI)の化合物またはそれらの塩を含む。薬学的に受容可能なキャリアまたは薬剤としては、当該分野で公知のキャリアまたは薬剤、および以下に記載されるキャリアまたは薬剤が挙げられる。
【0054】
本発明の薬学的組成物は、式(I)〜(VI)の化合物を生理学的に受容可能なキャリアまたは薬剤と共に混合することによって調製され得る。本発明の薬学的組成物は、さらに賦形剤、安定剤、希釈剤などを含み得、そして徐放性処方物または時限放出性処方物で提供され得る。治療的使用のために受容可能なキャリア、薬剤、賦形剤、安定剤、希釈剤などは、薬学的分野で周知であり、そして例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、A.R.Gennaro編、(1985)に記載される。このような材料は、使用される投薬量および濃度ではレシピエントに対して無毒性であり、そして緩衝液(例えば、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩および他の有機酸塩)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸)、低分子量(10残基未満)のペプチド(例えば、ポリアルギニン)、タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン)、親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン)、アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸またはアルギニン)、単糖類、二糖類、および他の炭水化物(セルロースまたはその誘導体、グルコース、マンノースまたはデキストリンを含む)、キレート剤(例えば、EDTA)、糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール)、対イオン(例えば、ナトリウム)、ならびに/もしくは非イオン性界面活性剤(例えば、TWEEN)、またはポリエチレングリコールが挙げられる。
【0055】
本発明に含まれる、哺乳動物における血栓症の予防または処置のための方法は、治療有効量の式(I)〜(VI)の化合物を単独で、または上記に記載される本発明の薬学的組成物の一部として、哺乳動物、特にヒトに投与する。式(I)〜(VI)の化合物、および本発明の式(I)〜(VI)の化合物を含む本発明の薬学的組成物は、心臓血管疾患、特に血栓症に関連のある心臓血管障害の予防または処置のための、単独での使用、または多成分処置レジメンの一部として適切である。例えば、本発明の化合物または薬学的組成物は、任意の血栓症、特に血小板依存性の血栓症徴候(これには、限定されないが以下が挙げられる:急性心筋梗塞、不安定狭心症、慢性安定狭心症、一過性の脳虚血発作、発作、末梢血管疾患、子癇前症/子癇症、深部静脈血栓症、塞栓症、汎発性血管内凝固症候群および血栓性血球減少性紫斑病)、侵襲性手順(例えば、血管形成術、頸動脈血管内膜切除術、CABG後(冠状動脈バイパス移植)手術、血管移植手術、ステント配置ならびに血管内デバイスおよびプロテーゼ(protheses)の挿入)後の血栓性および再狭窄の合併症)のための薬物または治療剤として使用され得る。
【0056】
本発明の化合物および薬学的組成物はまた、哺乳動物中における血栓症の予防または治療において、他の治療剤または診断剤と共に、多成分処置レジメンの一部として使用され得る。特定の好ましい実施形態において、本発明の化合物または薬学的組成物は、一般的に受け入れられた医学的実践に従って、これらの状態のために代表的に処方される他の化合物(例えば、抗凝固剤、血栓崩壊剤、あるいは血小板凝集阻害剤、組織プラスミノーゲン活性化因子、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヘパリン、アスピリン、またはワルファリンを含む他の抗血栓剤)と共に共投与され得る。共投与はまた、これらの抗血栓剤の減少した用量の適用を可能にし、それによって潜在的な出血性の副作用を最小化し得る。本発明の化合物および薬学的組成物はまた、成功した血栓崩壊治療に続く再閉塞を予防し、そして/または再灌流する時間を減少させるために、相乗的な様式で作用し得る。
【0057】
本発明のこの化合物および薬学的組成物は、通常は、哺乳動物(例えば、霊長類(例えば、ヒト)、ヒツジ、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、ラットおよびマウス)においてインビボで、またはインビトロで使用され得る。本発明の化合物および薬学的組成物の上で定義した生物学的特性は、当業者に周知の方法、例えば、抗血栓の効力ならびにうっ血および血液学的パラメーターに対する効果を評価するインビボ研究によって、容易に特徴付けられ得る。
【0058】
本発明の化合物および薬学的組成物は、溶液または懸濁液の形態であり得る。血栓症障害の管理において、本発明の化合物または薬学的組成物はまた、例えば、経口投与のための錠剤、カプセルまたはエリキシル、坐剤、無菌溶液または懸濁液あるいは注射可能な投与などのような形態であり得るか、もしくは成形された物品中に収容され得る。本発明の化合物または薬学的組成物を使用する処置を必要とする被験体(代表的には哺乳動物)に、最適な効力を提供する用量を投与し得る。投与の用量および方法は、被験体によって異なる。そして処置される哺乳動物の型、その性別、重量、食餌、同時の薬物適用、全体的な臨床的状態、採用される式(I)〜(VI)の特定の化合物、化合物または薬学的組成物が採用される特定の使用、および医学分野の当業者が認識する他の因子といった因子に依存する。
【0059】
治療的投与のために使用される式(I)〜(VI)の化合物の投薬処方物、または本発明の化合物を含む薬学的組成物は、無菌であるべきである。無菌性は、無菌の膜(例えば、0.2ミクロンの膜)に通して濾過することによって、または他の慣用的な方法によって容易に達成され得る。処方物は、代表的には固体形態で、好ましくは凍結乾燥された形態で貯蔵される。好ましい投与経路は、経口的であるが、本発明の式(I)〜(VI)の化合物または薬学的組成物の投薬処方物はまた、静脈内注射(ボーラスおよび/または注入)、皮下注射、筋内注射、結腸注射、直腸注射、経鼻注射、経皮注射または腹膜内注射によって投与され得る。種々の投与形態が採用され得、これらの投与形態としては、坐剤、埋め込みペレット剤、または小シリンダー、エアロゾル、経口投与処方物および局所的な処方物(例えば、軟膏、ドロップ、および皮膚のパッチ)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の式(I)〜(VI)の化合物および薬学的組成物はまた、挿入材料(生分解性ポリマーまたは合成シリコーン(例えば、SILASTIC、シリコーンゴムまたは市販の他のポリマー))を採用し得る移植片のような、形態および物品中に取り込まれ得る。本発明の化合物および薬学的組成物はまた、リポソーム送達システム(例えば、単層の小さいベシクル、単層の大きいベシクルおよび多層のベシクル)の形態で投与され得る。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリンのような種々の脂質から形成され得る。
【0060】
治療有効投薬を、インビトロの方法またはインビボの方法のいずれかによって、決定し得る。本発明の各特定の化合物または薬学的組成物について、個々の決定は必要とされる最適な投薬量を決定するためになされ得る。治療有効投薬量の範囲は、投与の経路、治療対象および患者の状態によって影響される。皮下針による注射について、この投薬量は、体液中に送達されると仮定し得る。投与の他の経路について、吸収効率は、薬理学における周知の方法によって、各化合物について個々に決定されなければならない。従って、治療士は投薬量を滴定し、そして最適な治療効果を得るために必要な投与の経路を調整する必要がある。
【0061】
有効投薬量レベル、すなわち、所望の結果(すなわち、血小板ADPレセプターの阻害)を達成するために必要な投薬量レベルの決定は、当業者によって容易に決定される。代表的には、本発明の化合物または薬学的組成物の適用は、より低い投薬量レベルで開始され、投薬量レベルは、所望の効果が達成されるまで増大される。本発明の化合物および組成物は、単独のまたはいくつかの別々の毎日の用量のレジメンにおいて約0.01〜1000mg/kgの投薬量の範囲内の有効な量で、経口的に投与され得る。薬学的に受容可能なキャリアが本発明の薬学的組成物に使用される場合、代表的には、約5〜500mgの式(I)〜(VI)の化合物が、受容される薬学的実践によって必要とされる薬学的に受容可能なキャリアと共に調合され、この薬学的に受容可能なキャリアとしては、生理学的に受容可能なビヒクル、キャリア、賦形剤、結合剤、保存剤、安定剤、染料、香料などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの組成物に含まれる活性な成分の量は、示される範囲での適切な投薬量が得られる量である。
【0062】
錠剤、カプセルなどに組み込まれ得る代表的なアジュバントとしては、アカシア、コーンスターチまたはゼラチンのような結合剤、および微晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチまたはアルギニン酸のような分解剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖または乳糖のような甘味剤、または香味剤が挙げられるが、これらに限定されない。投与形態がカプセルである場合、上記の材料に加えて、液体キャリア(例えば、水、生理食塩水、または脂肪油)をまた含み得る。種々の型の他の材料は、投与単位の物理的形態のコーティングまたは改質剤として使用され得る。注射用の無菌組成物は、慣用的な薬学的実施に従って処方され得る。例えば、ビヒクル(例えば、油またはオレイン酸エチルのような合成脂肪ビヒクル)中の、あるいはリポソーム中への活性な化合物の溶解または懸濁が、所望され得る。緩衝液、防腐剤、抗酸化剤などは、受容される薬学的実行に従って組み込まれ得る。
【0063】
(薬理学的アッセイ)
本発明に従った各化合物の薬理学的活性を、以下のインビトロアッセイによって決定する:
(I.インビトロのADP媒介血小板凝集の阻害)
ADP誘導ヒト血小板凝集に対する本発明に従った化合物の試験の効果を、好ましくは96ウェルのマイクロタイターアッセイで評価する(Jantzen,H.M.ら、(1999)Thromb.Hemost.81:111−117を一般的に参照のこと)。ヒト静脈血を、健康な薬物を服用していない志願者から、PGI(1.6μM PGI/10ml血液を含む1.25mlのACD;PGIは、Sigma、St.Louis、MOからのもの)を含むACD(85mMのクエン酸ナトリウム、111mMのグルコース、71.4mMのクエン酸)中に採取する。血小板豊富な血清(PRP)を、室温で160×gで20分間の遠心分離で調製する。洗浄した血小板を、730gで10分間PRPを遠心分離することによって調製し、そして1U/mlのアピラーゼ(グレードV、Sigma、St.Louis、MO)を含むCGS(13mMのクエン酸ナトリウム、30mMのグルコース、120mMのNaCl;2mlのCGS/10mlの元の血液体積)中に血小板のペレットを再懸濁する。37℃で15分間インキュベートした後、この血小板を、730gで10分間遠心分離することによって回収し、そして0.1%のウシ血清アルブミン、1mMのCaClおよび1mMのMgClを含む、Hepes−Tyrodeの緩衝液(10mMのHepes、138mMのNaCl、5.5mMのグルコース、2.9mMのKCl、12mMのNaHCO、pH7.4)中に、3×10血小板/mlの濃度で再懸濁する。この血小板懸濁液を、凝集アッセイでの使用の前に、37℃で45分より長く維持した。
【0064】
ADP依存性の凝集を、好ましくは、Frantantoniら、Am.J.Clin.Pathol.94、613(1990)に記載の手順と類似したマイクロタイタープレート振盪機およびプレート読み取り機を使用して96ウェルの平底マイクロタイタープレート中で決定する。全ての工程を、室温で実施する。0.2ml/ウェルの反応総体積は、Hepes−Tyrodeの緩衝液/0.1%のBSA中に、4.5×10アピラーゼ洗浄血小板、0.5mg/mlヒトフィブリノーゲン(American Diagnostica、Inc.、Greenwich、CT)、0.6%DMSO中の試験化合物の連続的な希釈物(コントロールのウェルについては緩衝液)を含む。約5分の室温でのプレインキュベーション後、ADPを、準最大な凝集を誘導する最終濃度の2μMに添加する。コントロールのウェルの1つのセットに、ADPの代わりに緩衝液を添加する(ADPコントロール)。次いでサンプルのODを、マイクロタイタープレート読み取り機(Softmax、Molecular Devices、Menlo Park、CA)を使用して490nmで決定し、0分の読み取りを得る。次いで、このプレートをマイクロタイタープレート振盪機上で5分間攪拌し、そして5分の読み取りを、プレート読み取り機中で得る。凝集を、t=0分と比較したt=5分での490nmでのODの減少から計算し、そして凝集していないコントロールサンプルにおける変化について補正した後、ADPコントロールサンプルにおける減少の%として表す。
【0065】
(II.血小板への[H]2−MeS−ADPの結合の阻害)
本発明に従った化合物が、ADP依存性の血小板の凝集を阻害することを上記のアッセイで最初に決定すると、第二のアッセイを使用して、このような阻害が血小板のADPレセプターとの相互作用によって媒介されるのかどうかを決定する。第二のアッセイを使用して、[H]2−MeS−ADPの血小板全体への結合について、このような化合物の阻害の可能性を決定する。[H]2−MeS−ADP結合実験を、病院の血液銀行で標準的な手順によって採取された古いヒト血小板で慣用的に実施する。アピラーゼ洗浄した古い血小板を、以下のように調製する(そうではないと示さない場合、全ての工程は室温である): 古い血小板懸濁液を、1体積のCGSで希釈し、血小板を1900×gで45分間の遠心分離によってペレット化する。血小板ペレットは、1U/mlアピラーゼ(グレードV、Sigma、St.Louis、MO)を含むCGS中に3〜6×10血小板/mlで再懸濁し、37℃で15分間インキュベートする。730×gで20分間の遠心分離後、ペレットを、0.1%のBSA(Sigma、St.Louis、MO)を含むHepes−Tyrodeの緩衝液中に6.66×10血小板/mlの濃度で再懸濁する。結合実験を、45分より長い血小板の静置後に実施する。
【0066】
または、結合実験を、I.(インビトロのADP媒介血小板凝集の阻害)に記載したように調製された新鮮なヒト血小板で(この血小板を、0.1%のBSA(Sigma、St.Louis、MO)を含むHepes−Tyrodeの緩衝液中に6.66×10血小板/mlの濃度で再懸濁することを除いて)実施する。非常に類似した結果が、新鮮な血小板および古い血小板で得られる。
【0067】
トリチウム化した強力なアゴニストリガンド[H]2−MeS−ADPを使用する血小板ADPレセプター結合アッセイ(Jantzen,H.M.ら、(1999)Thromb.Hemost.81:111−117)を、96ウェルのマイクロタイター様式に適合させた。0.1%のBSAおよび0.6%のDMSOを含むHepes−Tyrodeの緩衝液0.2mlのアッセイ体積において、1×10のアピラーゼ洗浄血小板を、1nMの[H]2−MeS−ADP([H]2−メチルチオアデノシン−5’−ジホスフェート、アンモニウム塩;特異的活性48〜49Ci/mmol、Amersham Life Science、Inc.、Arlington Heights、IL、またはNEN Life Science Products、Boston、MAから注文合成によって得られる)の添加前に、試験化合物の連続希釈物と共に、96ウェルの平底マイクロタイター中で5分間プレインキュベートする。総結合を、試験化合物の非存在下で決定する。非特異的結合についてのサンプルは、10−5Mの未標識の2−MeS−ADP(PBI、Natick、MA)を含み得る。室温で15分間のインキュベーション後、未結合の放射性リガンドを、96ウェル細胞回収機(Minidisc 96、Skatron Instruments、Sterling、VA)および8×12GF/Cガラス線維フィルターマット(Prinsted Filtermat A、1450 Microbetaに対して、Wallac Inc.、Gaithersburg、MD)を使用して、迅速な濾過および冷却(4〜8℃)結合洗浄緩衝液(10mMのHepes pH7.4、138mMのNaCl)での2回の洗浄によって分離する。フィルターマット上の血小板結合放射能を、シンチレーションカウンター(Microbeta 1450、Wallac Inc.、Gaithersburg、MD)で決定する。特異的な結合を、総結合から非特異的結合を引くことによって決定し、そして試験化合物の存在下での特異的結合を、試験化合物希釈物の非存在下での特異的結合の%として表す。
【0068】
先の議論、実施形態および実施例は単に、特定の好ましい実施形態の詳細な記載を提供するだけであることが理解されるべきである。当業者にとって、種々の改変および同等物が、本発明の趣旨および範囲から逸脱せずになされ得ることが明らかである。上で議論したかまたは引用した全ての特許、学術誌および他の資料は、本明細書中で参照として援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の血栓を予防または処置する方法。

【公開番号】特開2010−180226(P2010−180226A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76419(P2010−76419)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【分割の表示】特願2001−557869(P2001−557869)の分割
【原出願日】平成13年2月5日(2001.2.5)
【出願人】(506109155)ポートラ ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (19)
【Fターム(参考)】