説明

血糖値を監視及び調整するシステム及び方法

本発明は、血液循環の血糖値58を監視及び調整するシステムであって、血液循環で測定される少なくとも1つの血糖値58、少なくとも1つのインスリン供給装置18、51によって血液循環に供給された少なくとも1つのインスリン値、及び/又は少なくとも1つの栄養供給装置15、52によって血液循環にそれまでに供給された少なくとも1つの人工栄養剤の少なくとも1つの栄養値59を受信する、入力ユニット14と、新たなインスリン値55及び任意選択的に新たな栄養値を、血糖値へのその影響に応じて、また、前に測定された血糖値58に応じて計算する(6、13)、計算機17、57と、新たなインスリン値55及び任意選択的に栄養値を出力する、出力装置60とを有する、システムに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求項1及び10のプリアンブルに記載の、血流中の血糖値を監視及び調整するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の体組織中の血糖値を監視するシステムの一例が特許文献1から知られており、このシステムは、媒体中のグルコース濃度に応じて電気的又は光学的なシグナルを生成することが可能な埋め込み式グルコース感応型生細胞によって、該生細胞の外部に位置する手段を介して電気的及び光学的なシグナルを検出することを対象としている。かかる細胞は、埋め込む必要があるため、集中治療室に入っている患者での使用にはあまり適さない。
【0003】
特許文献2から、使用者に流体を注入するための、閉ループ制御回路を有する注入システムが知られており、このシステムでは、センサシステムがグルコース濃度をモニタし、該システムが出力するセンサ信号が制御装置入力を発生させ、この制御装置入力を制御装置が使用して、送達システムに送られるコマンド(例えばインスリンについて)を発生させる。この制御装置は、特定の比例プラス積分プラス微分(PID)制御装置である。グルコースレベルに影響を及ぼす可能性がある、実際のグルコースレベルを超えるいずれの値も、このシステムによってたとえ考慮されるとしてもわずかな程度しか考慮されない。
【0004】
特許文献3は、注入ポンプと、該注入ポンプによる薬剤の送出を制御するためのアルゴリズムを有する制御システムとを用いる、薬剤の送出システムを記載している。この制御システムは、貯蔵器から薬剤を送出するための複数の薬剤送出プロフィールを有する。制御システムは複数の停止機能を示し、複数の薬剤送出プロフィールのうち少なくとも1つを独立に且つ一時的に停止することができる。第1の薬剤を送出するための第1の送出プロフィールを停止し、その一方、第2の薬剤を送出するための第2の送出プロフィールを続けることが可能である。これに関して、血糖レベルに影響を及ぼすインスリン因子を考慮しつつ、複数の送出プロフィールを組合せることが重要視されている。集中治療室に入っていて人工栄養を必要とする患者に適し得るものとしての薬剤の制御は、この文献には記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第0461207号明細書
【特許文献2】欧州特許第1185321号明細書
【特許文献3】欧州特許第1458435号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、血流中の血糖値を監視及び調整するシステム及び方法であって、血糖値に影響を及ぼす、人工栄養のパラメータに応じて、集中治療室に入っているために人工栄養を必要とする患者の血流の場合においても監視及び調整が可能である、システム及び方法を提供するという目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、本システムに関して、特許請求項1の特徴によって達成され、本方法に関して、特許請求項10の特徴によって達成される。
【0008】
本発明の要点は、血流中の血糖値を監視及び調整するシステムであって、以下の構成要素:
血流中に存在する少なくとも1つの測定された血糖値、少なくとも1つのインスリン供給ユニットによって血流にそれまでに供給された少なくとも1つのインスリン値、及び/又は必要に応じて少なくとも1つの栄養供給ユニットによって血流にそれまでに供給された人工栄養の少なくとも1つの栄養値を受信する、入力ユニットと、
新たなインスリン値又は新たなインスリン速度(insulin rate:インスリン注入速度、インスリン注入率)、及び必要に応じて新たな栄養値を、血糖値へのその影響に応じて、また、前に測定された血糖値に応じて計算する、計算ユニットと、
外部経路又は非経口経路を介して供給され得る新たなインスリン値又は新たなインスリン速度、及び必要に応じて栄養値を出力する、出力ユニットと、
が設けられる、システムにある。
【0009】
血流中の血糖値を監視及び調整する本発明による方法が、
血流中に好ましくは人工栄養を直接又は間接的に供給する少なくとも1つの栄養供給ユニットを開始するステップと、
栄養供給ユニットから制御ユニットに転送された複数のデータ項目から好ましくは人工栄養の少なくとも1つの栄養値を求めるステップと、
血流中に存在する測定された血糖値を制御ユニットに転送するステップと、
インスリン値又はインスリン速度、及び必要に応じて栄養値を、血糖値へのその影響に応じて、また、前に測定された血糖値に応じて、計算ユニットによって計算するステップと、
計算された新たなインスリン値又はインスリン速度、及び必要に応じて計算された新たな栄養値を出力ユニットによって出力するステップと、
を含む。
【0010】
これは、非経口栄養及び/又は経腸栄養の栄養値、血糖値、例えば体重情報等の患者データ並びにインスリン値に関するデータを、入力データとして計算ユニットに入力することができることを意味する。出力データとして、インスリン値又は新たなインスリン速度、次の測定時間、場合によってはグルコース妥当性確認値及び必要に応じて栄養値が、計算ユニットによって出力される。
【0011】
特に次の測定時間が重要な出力値と見なされることになり、ここでは、前の測定から0.5時間〜4時間の時間間隔が用いられることが好ましい。示した時間間隔内でかかる測定が行われない場合、操作員に警報が出される。
【0012】
かかるシステム及びかかる方法は有利には、供給される人工栄養による影響因子を無視する結果として生じる、供給されるインスリンの量の過剰投与又は過少投与のいかなる危険性もなく、集中治療室に入っていて人工栄養に依存している患者に用いられ得る。ヒトの血流は、不適正なインスリン速度に迅速な反応を喚起し得るため、同時に栄養供給を受けないか又は不十分にしか受けずにインスリンが投与される場合、生命を脅かす低血糖状態に陥る。これに関して、患者に供給される栄養は、特に栄養の炭水化物(carbohydrates:糖質)濃度、及び単位時間当たりの炭水化物(炭水化物速度(carbohydrate rate:炭水化物注入速度、炭水化物注入率))に関して持続投与されるか又はボーラスとして投与される炭水化物の量等、血糖値に関連するパラメータを有することが考慮される。
【0013】
かかる炭水化物値が新たなインスリン値の計算に考慮される場合、それに起因して、栄養値、インスリン値及び血糖値の相互依存の考慮が行われ、それにより、人体に供給される物質に対する人体の不所望な反応をいずれも回避することができる。それと同時に、供給されるインスリンの量及び持続時間を、人体が栄養値の変更された栄養を投与されることになっているかどうかに関する状況に応じて計算することができるため、インスリン値が計算されると、供給される人工栄養の種類、すなわち栄養の種類への適応を行うことができる。経腸栄養及び非経口栄養のどちらも実施することが可能である。
【0014】
同様に、かかるシステム又は方法では、血糖値に影響を及ぼす、人工栄養の停止が考慮され得る。この結果としてインスリン速度が新たに計算されることにより、この人工栄養停止によって引き起こされる悪影響を相殺することができ、そのため、いずれもの切迫した不都合なグルコース値による血流の過剰反応が起こらないことを意味する。例えば非経口栄養又は経腸栄養の中断による投与停止の場合に、インスリンの供給が同じインスリン速度で続けられていると、インスリンの過剰用量による低血糖の危険性がある。
【0015】
人工栄養は、持続式及びボーラス式のどちらでも行うことができ、前に計算された新たな栄養値及び/若しくは新たなインスリン値に応じて自動的に供給されてもよく、又は、操作員が前に計算された値をディスプレイ装置から読み取ることによるか若しくは自ら作成した値を指定することによって、手動で供給されてもよい。しかしながら、主要な優先事項は、栄養及び血糖に関して計算ユニットに前に入力された値に基づき、インスリン値又はインスリン速度を求めることである。
【0016】
当然のことながら、供給される栄養の栄養値もまた、栄養の個々の所望の変更に基づき、計算された値から個々に変更することができる。これに関して、人工栄養が計算ユニットへの入力値と見なされることになり、これにより、次に、血糖値の考慮下で新たなインスリン値又は新たなインスリン速度が出力値として出力される。
【0017】
入力ユニット及び出力ユニットは、制御ユニット内で送受信ユニットと組み合わせられる。かかる制御ユニット(Space Control)は、計算ユニット(Space Com)と直接通信する。代替的に、これらの双方のユニットを共通の装置内に組み込んでもよい。
【0018】
出力ユニットはディスプレイユニットに接続され、このディスプレイユニットは何よりもまず、新たに計算されたインスリン値及び必要に応じて栄養値を表示し読み出すのに用いられ、また、必要に応じて、タッチスクリーンの形態の入力ユニットを同時に提供するのに用いられ、この入力ユニットにより、測定された血糖値並びに必要に応じていずれもの所望の新たな栄養値及び/又は新たなインスリン値がシステムに入力される。かかるユーザインタフェースは治療制御ユニットと直接通信し、この治療制御ユニットは制御ユニット内に取り付けられており、計算ユニットに送受信されるデータの制御及び交換に関与する。
【0019】
新たに計算されたインスリン値及び栄養値を用いてインスリン及び人工栄養の自動供給が行われることになっている場合では、出力ユニットは栄養供給ユニット及びインスリン供給ユニットに接続されることが好ましい。
【0020】
好ましい実施の形態によれば、栄養値をポーリングするポーリング信号が予め決定可能な少なくとも1つの時点で制御ユニットから栄養供給ユニットに送信される。このポーリング信号を用いて、ポーリングされた栄養値、例えば、ポンプとして実装された栄養供給ユニットのその時点での送出速度、栄養の種類(これは投与される栄養薬剤を意味する)及びその炭水化物濃度を制御ユニットに通信して、制御ユニットがこのデータから炭水化物速度を関連の栄養値として計算することができるようにする。続いて、炭水化物速度が計算ユニットに転送されて、新たなインスリン値又は新たな栄養値が計算される。
【0021】
例えば測定された血糖データ又はさらなる患者特有の(person-specific:患者に特異的な)値等の様々なデータを操作者が入力することが同時にできるようにする、上述したようなタッチスクリーンの形態のディスプレイユニットの代わりに、測定又は計算された血糖値及び/又は栄養値、並びに、個人の体重、年齢及び同様のデータ等のさらなる患者特有の値を入力する別個の入力ユニットを入力ユニットとして用いてもよい。この幾つかの例として、従来のキーボード又は操作可能なカーソル制御装置(例えばマウス等)がある。
【0022】
かかる入力ユニットにより入力されると共に、新たなインスリン値又は新たなインスリン速度及び必要に応じて新たな栄養値を計算するのに関連する、必要不可欠な値は、例えば患者の血流中にある又はその外部にある別個の装置によって測定され得る血糖値、人工栄養のいずれもの変更(栄養値の所望の変更をもたらす)、及び/又は患者の体重の変化である。このデータすなわちこれらの値の入力は、いずれの場合においても新たなインスリン値又はインスリン速度及び必要に応じて新たな栄養値の計算値をもたらし、このようにして、変更されたデータに対する血流の適応、並びに、インスリン値、血糖値及び栄養値の相互依存の新たな調整を得るようにする。当然のことながら、例えば、栄養値の所望の変更(操作者によって行われている場合もあり、その場合、入力ユニットを介してシステムに通知される)の場合、新たな栄養値は計算されず、新たなインスリン値のみが計算される。
【0023】
好適な実施の形態によれば、血糖値の新たな測定を行う時間であることを操作者に視覚的及び/又は聴覚的に警告するように、警報ユニットが制御ユニットに設けられる。かかる警報ユニットは、例えば技術的な不具合による、人工栄養プロセスの不所望な停止の場合にも、又はそのような場合に付加的に、警報を発動することができる。また、警報は栄養のいずれの不所望な変更の場合にも発動され得る。
【0024】
警報を発動させる、栄養の不所望な変更は、以下の場合の3つの異なるシナリオにカテゴライズすることができる:人工栄養プロセス(経腸栄養及び非経口栄養のどちらともすることができる)の不所望な中断が存在する可能性がある場合、或いは、経腸栄養又は非経口栄養の速度(rate:注入速度、注入率)が変更される可能性がある場合、3つ目の可能性は栄養供給ユニットの使い捨て製品を交換する際の栄養の変更の場合、であり得る。
【0025】
警報は、およそ5分の間隔で、好ましくは栄養の変更から5分後に発動されるが、ただし、その間に新たなインスリン速度の計算のための入力が制御ユニット又は入力ユニットになされている場合は除く。
【0026】
血糖値が測定される時間であることを示す警報は、例えば以下:次の測定の実際の時限の10分前に事前警報が出されるという手順に従って行われ得る。行われる測定の時間間隔は、例えば0.5時間〜4時間の範囲内とすることができる。かかる警報信号は10分間消音にすることもできる。
【0027】
測定が行われるべき時点で、その際に聴覚的な警報が繰り返されてもよく、又は再度オンに切り替えられてもよい。これはさらに10分後及び20分後にも行われる。ここでもまた、聴覚的な警報は10分間消音にすることもできる。
【0028】
システムが自動モードでなくなると、インスリンポンプがもはや自動停止しないため、30分後、インスリンポンプを停止するように使用者に命令するさらなる警報が発せられる。操作が血糖値の測定なしに続く場合、システムの手動モードに変える必要がある。手動モードは、インスリンが供給される新たな投与速度を操作者が設定することを含む。
【0029】
代替的に、インスリンポンプの自動停止に関する自動スイッチオフモードを設けてもよい。このため、インスリンポンプ及びSpace Control間に通信リンクが存在することで、Space Controlがインスリンポンプ作業を終了させることができるようになる。かかる自動停止モードは、インスリンポンプを停止する提案(suggestion)を出力するシステムとして動作することができ、このシステムは、この提案に従うことを望まない医者又は看護師によっていつでも手動でオーバーライドされ、続いて、自動モードに戻すようにすることができる。
【0030】
プロセスが血糖測定なしではなく血糖測定を伴って続く場合、操作者は新たなグルコース値を入力し、提案されたインスリン速度をインスリンポンプに設定する。この時点でシステムは自動モードに戻る。
【0031】
血流中の血糖値を監視及び調整する本発明による方法は、血流中に人工栄養を供給する少なくとも1つの栄養供給ユニットを開始するステップと、制御ユニットに転送された複数のデータから人工栄養の少なくとも1つの栄養値を求めるステップと、少なくとも1つの測定された血糖値を制御ユニットに転送するステップと、インスリン値及び必要に応じて栄養値を、血糖値へのその影響に応じて、また、前に測定された血糖値に応じて、計算ユニットによって計算するステップとを含む。さらに、計算された新たなインスリン値及び必要に応じていずれもの計算された新たな栄養値を出力ユニットによって出力する。
【0032】
計算されたインスリン値及び必要に応じて計算された栄養値は、インスリン供給ユニット及び栄養供給ユニットに自動的に転送されることができるか、又は操作員によって供給ユニットに入力されることができ、必要に応じて確認される。
【0033】
栄養ユニットは双方ともポンプであり、栄養供給ユニットは経腸栄養供給用のポンプ及び非経口栄養供給用のポンプであることが好ましい。
【0034】
所要のインスリン値及び必要に応じて栄養値を計算するには、年齢、それまでに投与されたインスリン速度、体重及びさらなるパラメータ等の様々な個人特有のデータ項目をその計算モデルに考慮する患者モデルが使用される。
【0035】
さらなる有利な実施の形態は従属請求項から明らかとなる。
【0036】
利点及び好都合な点は図面と共に以下の説明から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明による方法の一部を示すフローチャートの概略図である。
【図2】本発明による方法の一部のフローチャートである。
【図3】本発明による方法のフローダイアグラムである。
【図4】本発明による方法の一部のフローダイアグラムである。
【図5】本発明による方法のさらなるフローチャートである。
【図6】本発明によるシステムの概略図である。
【図7】本発明によるシステムに用いる、時間に依存した血糖グラフである。
【0038】
図1は、本発明による方法の一部を本発明の一実施形態によるフローチャートで示す。これは本方法の初期設定段階である。かかる初期設定段階では、所要データの全てが少なくとも部分的に、自動化、ポーリング又は手動入力され、最初に提案されるインスリン値が提示される。その後、本発明によるシステムは、インスリン速度の新たな計算又は警報を必要とするさらなる事象を待つ。例えば、いずれもの栄養の変更、新たな血糖値、次の血糖測定についてのタイマー時限又はインスリン速度の手動変更が挙げられる。
【0039】
制御ユニット(Space Control)1が、非経口栄養及び経腸栄養に用いられる2つの栄養ポンプ(ここでは詳細に図示せず)にポーリング信号を自動的に送信する。ポーリング信号は、栄養ポンプの状態に関する情報、及び該ポンプ中に存在する栄養の種類の治療関連データに関する情報を、栄養ポンプから制御ユニットに送信する。ここでは特に炭水化物値及びその時点での送出速度が栄養の種類に関する重要なデータとしてポーリングされることになる。
【0040】
続いて又は同時に、操作者が、キーボード及び/又はスクリーン(マウスを使用)等の入力ユニットの形態の入力ユニットを介してさらなるデータを入力する。例えば、その時点での時間及び日付が制御ユニットに入力されて、ステップ2に従って計算ユニット(Space Com)に転送される。続いて、ステップ3にて患者識別番号(患者ID)が制御ユニット(Space Control)に入力されて、計算ユニットに転送される。
【0041】
さらなるステップ4にて、患者の体重が入力され、計算ユニットに転送される。
【0042】
ステップ5にて、血糖値が入力され、計算ユニットに転送される。
【0043】
ステップ6にて、上記の値、及び計算ユニットに格納されている患者モデルに基づき、計算ユニットにおいて新たなインスリン速度が計算され、この新たなインスリン速度は、判定が行われることを目的にディスプレイユニット上で操作者に表示される。計算ユニットは、データが全て入力されると、制御ユニットによって自動的に起動する。
【0044】
ここでまた、操作者は、表示されたインスリン速度が妥当であるかどうかを医療的視点から評価することができ、続いて、このインスリン速度をインスリンポンプに入力することができる(ステップ7)。
【0045】
図2は、本発明による方法の一部をフローチャートとして示す。これは、栄養及びその変化時に送出される栄養値の、新たなインスリン値の計算への自動的組込みである。
【0046】
これによれば、図1は本方法の初期開始を示すが、図2は栄養の組込み、すなわち進行過程中の変更に対する血流の反応を示す。
【0047】
ステップ8に従って、栄養の種類及び送出速度又はさらなる栄養パラメータが栄養供給ユニットにて操作者によって変更される。栄養ポンプの形態のかかる栄養供給ユニットでは、栄養薬剤を特定の栄養薬剤データベースから選択することができる。
【0048】
栄養薬剤データセットは、栄養薬剤の部分的濃縮(partial concentration)に関する情報を含む。栄養薬剤データベースは別のPCプログラムによって作成され、続いて、栄養ポンプ内の装置にロードされる。例えば、栄養薬剤のデータセットは以下の表において参照することができる:
【0049】
【表1】

【0050】
ステップ9及び10に従って、制御ユニットは、送出速度、薬剤の名称及び炭水化物濃度について栄養ポンプを周期的にポーリングする。続いて、送出速度及び濃度に基づき、ステップ11にて制御ユニット内で炭水化物速度(g/時)が計算され、続いて、ステップ12に従って計算ユニットに転送される。
【0051】
ステップ13にて、計算ユニット(Space Com)において新たなインスリン(insulation)速度が計算され、このインスリン速度がディスプレイユニットのスクリーン上で操作員に提示される。
【0052】
ステップ9及びステップ10にてポーリングされた関連の入力パラメータの変更に応じて、計算プロセスが自動的に起動し、新たなインスリン速度についての提案が計算される。これに関して、最も重要な関連の入力パラメータは血糖値、栄養の変更及び/又は患者の体重の変化である。
【0053】
図3は、本発明による方法の初期設定段階部分の別の面をフローチャートの形態で示す。図3に示すフローチャートは、栄養ポンプ15に対して幾つかの特定の作業を行う操作者14、制御ユニット16及びインスリンポンプ18を示す。計算ユニット17は制御ユニット16と連続してデータ交換する。
【0054】
ステップ19にて、操作者14は栄養ポンプ15を開始させる。さらなるステップ20にて、送出速度又は栄養速度が栄養ポンプ15によって制御ユニット16に送られる。
【0055】
その後、ステップ21にて、制御ユニット16が該制御ユニットによって計算された炭水化物速度を計算ユニット17に送信する。
【0056】
ステップ22にて、その時点での時間及び速度が操作者によって制御ユニット16に入力される。次にステップ23にて、制御ユニットがこのデータを計算ユニットに転送する。同じようにして、患者IDがステップ24にて入力され、患者の体重がステップ26にて入力され、血糖値がステップ28にて操作者14によって制御ユニット16に入力される。
【0057】
制御ユニット16はさらに、ステップ25にて患者ID、ステップ27にて患者の体重、及びステップ29にて血糖値を計算ユニット17に転送する。
【0058】
続いて、提案されたインスリン値がステップ13にて計算ユニット17内で計算される。その後、制御ユニット16が、ステップ32にて、新たに計算及び提案されたインスリン値について計算ユニットをポーリングし、ステップ33にて、この計算されたインスリン速度を制御ユニット16に示されるディスプレイユニット上で表示する。操作者が、提案されたインスリン速度を医療的視点から認める場合、ステップ34にて、提案されたインスリン速度がここで操作者14によってインスリンポンプ80に入力される。
【0059】
図4は、本発明による方法の一部のフローチャートを示す。この図は、栄養、したがって栄養値の計算の、自動化手順への自動的組込みを示す。
【0060】
ステップ35にて、操作者14は栄養ポンプ15中に存在する栄養薬剤の1つを選択する。続いて、栄養ポンプ15がステップ36にて開始する。
【0061】
ステップ37にて、ポーリング信号が制御ユニット16によって栄養ポンプ15に送信されて、送出速度又は栄養速度を栄養ポンプ15から情報として得る。同様に、人工栄養の選択された種類の栄養についての炭水化物濃度の入力がステップ38にて制御ユニット16から要求される。
【0062】
ここで、制御ユニット16が、ステップ37及びステップ38にて受信した前のデータから炭水化物速度をステップ39にて計算し、ステップ40にてこの炭水化物速度を制御ユニットのディスプレイユニット上で表示する。
【0063】
図5は、インスリン速度を計算する計算手順のさらなる概略的なフローチャートを示す。ステップ41にて、実際に測定された血糖値が、変更されていたとしても、入力ユニットを介してシステムに入力される。
【0064】
続いて、ステップ42にて、計算ユニットが制御ユニットによって起動される。起動プロセス中、「計算中(calculation running)」と表示される。
【0065】
ステップ45及びステップ48に従って、かかる計算プロセスが栄養の変更又は患者の体重の変化の結果として開始した場合に新たなインスリン速度についての提案が操作者にただちに表示されることになる。操作者は表示されたインスリン速度値をインスリンポンプに設定することができるか、又は異なるインスリン速度をインスリンポンプに入力することによって上記速度値を拒否することができる。
【0066】
ステップ43及びステップ44にて、新たに測定された血糖値の結果として計算モードが開始した場合に、新たに入力された血糖値が40mg/dl以下であれば低血糖警告が操作者に示される。
【0067】
入力された血糖値がかかる値(示した値とは異なっていてもよい)を下回っていない場合、ステップ46にて、計算ユニット内に存在するさらなる値に関して、また、基となる患者モデルに応じて、或る形式の入力値の妥当性確認が行われる。
【0068】
妥当性確認により、さらなる値に鑑み、入力値が妥当ではないと思われることが示される場合、このステップ46がディスプレイ上で示される。表示された値に応じて、ここで操作者は測定エラーが存在する可能性があるかどうかに関して判定を行わねばならず、それにより、測定エラーがあれば、測定値を放棄して新たな測定を行うようにするか、又はこの血糖値が適正であるかどうかに関して判定を行わねばならず、それにより、適正であれば、ステップ47に入る。
【0069】
次に、妥当性確認が、図7に示すダイアグラムに詳細に示す手順で行われる。図7は、次の4時間にわたる予測される血糖値曲線のグラフを示す。その時点で、予測される血糖値に基づき、軌道が計算される。これは曲線73に対応する。同様にして、予測されるいずれもの円錐状の誤差領域が計算され、血糖値の曲線72による上限及び曲線74による下限により確定される。この円錐状領域内での2時間後、ライン75にある測定値が曲線(line)72及び74間にあれば、測定された値は妥当であると思われる。曲線(line)72及び74間の円錐状領域外にある測定値はいずれも、操作者に警告として示される。
【0070】
図6は、本発明によるシステムの一実施形態の概略図を示す。操作者53が、血糖測定ユニット54によって測定された血糖値を受信する。同様にして、操作者53が、インスリン速度55をインスリンポンプ51に転送するか又は入力することができ、また、必要に応じて、栄養値を栄養ポンプ52に入力することもできる。ポンプ51及び52は双方とも患者50に接続される。
【0071】
制御ユニット56は、共通のデータ線71(ここでは概略的に図示)を介して計算ユニット57と直接通信する。
【0072】
血糖値58及び栄養値の手動入力59が、入力ユニット60(これは同時に出力ユニットでもある)を介して行われる。入力ユニット60は、データの交換並びにその制御及び調整に関与する治療制御ユニット62と直接通信する。したがって、複数のチャネル68、69、70及び67を介して、制御ユニット56及び計算ユニット57並びにポンプ51、52及び警報ユニット63間でセキュア/非セキュアな通信データが交換される。
【0073】
測定時間間隔の終了時に血糖値の新たな測定が行われることになっている場合か、或いは、供給されるインスリン速度の停止及び/又は供給されるいずれもの栄養値の停止及び/又は血糖値の大きな変化が起こった場合、視覚的及び/又は聴覚的な警報ユニット63にて警報信号が発生する。これは、視覚的及び聴覚的の双方による警報によって示されることで、現場に居合わせない場合があるいずれの操作員にも警告するようにすることができる。
【0074】
計算ユニット57では、インスリン速度の計算及び必要に応じて新たな栄養値等のさらなるデータの計算が、計算ユニット57に格納されている計算プログラム65、及び計算プログラム65と協働するMPC制御装置64によって行われる。
【0075】
本出願明細書において開示される特徴は全て、個々の又は組合せの従来技術を排除する新規性がある限りにおいて本発明に必要不可欠であるとして特許請求される。
【符号の説明】
【0076】
1 栄養データの自動ポーリング
2 その時点での日付及び時間の入力
3 患者IDの入力
4 患者の体重の入力
5 血糖値の入力
6 新たなインスリン速度提案の計算
7 インスリンポンプの開始
8 栄養を変更
9 制御ユニットが問い合わせ信号を送信
10 制御ユニットがポーリング信号を送信
11 制御ユニットが炭水化物速度を計算
12 制御ユニットが計算ユニットに炭水化物速度を転送
13 新たなインスリン速度の計算
14 操作者
15 栄養ポンプ
16 制御ユニット
17 計算ユニット
18 インスリンポンプ
19 栄養ポンプの開始
20 送出速度の転送
21 炭水化物速度の転送
22 日付及び時間の入力
23 時間を設定
24 患者IDの入力
25 患者IDを設定
26 患者の体重の入力
27 患者の体重を設定
28 血糖値の入力
29 血糖値を設定
30 計算プログラムを開始
31 インスリン速度を計算
32 インスリン速度を転送
33 提案されたインスリン速度の提示
34 インスリン速度をインスリンポンプに設定
35 栄養薬剤を選択
36 栄養ポンプを開始
37 送出速度を転送
38 炭水化物濃度を転送
39 炭水化物速度を計算
40 炭水化物速度を転送
41 血糖値の入力
42 計算開始
43 血糖値が所定の値を下回る
44 低血糖警告
45 栄養値変更による計算
46 血糖値が妥当ではない
47 血糖値が適正である
48 新たなインスリン速度を計算及び提案
49 終了
50 患者
51 インスリンポンプ
52 栄養供給ユニット
53 操作者
54 血糖測定ユニット
55 インスリン注入速度装置
56 制御ユニット
57 計算ユニット
58 血糖値
59 人工栄養データ
60 ユーザインタフェース
62 治療制御ユニット
63 警報ユニット
64 MPC制御装置
65 計算プログラム
67、68、69、70 データ通信チャネル
71、72、73 データ通信主チャネル
74 血糖値曲線
75 測定値が示される直線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血流中の血糖値(58)を監視及び調整するシステムであって、
前記血流中に存在する少なくとも1つの測定された血糖値(58)、少なくとも1つのインスリン供給ユニット(18、51)によって前記血流にそれまでに供給された少なくとも1つのインスリン値、及び/又は少なくとも1つの栄養供給ユニット(15、52)によって前記血流にそれまでに直接又は間接的に供給された栄養の少なくとも1つの栄養値(59)を受信する、入力ユニット(14)と、
新たなインスリン値(55)及び必要に応じて新たな栄養値を、前記血糖値へのその影響に応じて、また、前に測定された前記血糖値(58)に応じて計算する(6、13)、計算ユニット(17、57)と、
前記新たなインスリン値(55)及び必要に応じていずれもの栄養値を出力する、出力ユニット(60)と、
を備える、システム。
【請求項2】
前記入力ユニット及び前記出力ユニットは、制御ユニット(16、56)内で送受信ユニットと組み合わせられることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記出力ユニット(60)はディスプレイユニットに接続されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記出力ユニット(60)は前記栄養供給ユニット(52)に接続されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項5】
前記出力ユニット(60)は前記インスリン供給ユニット(51)に接続されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項6】
前記栄養値をポーリングするように、予め決定可能な少なくとも1つの時点で前記制御ユニット(16)によって前記栄養供給ユニット(15)に送信される少なくとも1つのポーリング信号(37、38)を特徴とする、請求項2〜5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記ポーリングされた栄養値は、ポンプとして具現される前記栄養供給ユニット(15、52)のその時点での送出速度、栄養の種類及びその炭水化物濃度を含むことを特徴とする、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記入力ユニット(14)は、前記測定又は計算された血糖値(58)及び/又は栄養値(59)、並びに、個人の体重、年齢及びそのようなデータ等のさらなる個人特有の値を入力する入力ユニット(60)を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記血流中の前記血糖値(58)の測定(54)のための時間であることを示す視覚的又は聴覚的な警報を操作者(53)に発する警報ユニットを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
血流中の血糖値を監視及び調整する方法であって、
前記血流中に栄養を直接又は間接的に供給する少なくとも1つの栄養供給ユニット(15、52)を開始するステップ(19、36)と、
前記栄養供給ユニット(15、52)によって制御ユニット(16、56)に転送された複数のデータから前記栄養の少なくとも1つの栄養値を求めるステップ(1、20、37、38)と、
前記血流中に存在する測定された血糖値(58)を前記制御ユニット(16、56)に転送するステップ(5、28)と、
インスリン値(55)及び必要に応じて栄養値を、前記血糖値へのその影響に応じて、また、前に測定された前記血糖値(58)に応じて、計算ユニット(17、57)によって計算するステップ(6、13、31)と、
前記計算された新たなインスリン値(55)及び必要に応じて前記計算された新たな栄養値を出力ユニット(60)によって出力するステップ(6、33)と、
を含む、方法。
【請求項11】
前記計算され出力されたインスリン値(55)はインスリン供給ユニット(18、51)に転送される(35)か又はこれに入力されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記計算され出力された栄養値は前記栄養供給ユニット(52)に転送されるか又はこれに入力されることを特徴とする、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記栄養値を求めるステップ(1、20、37、38)は、
前記栄養供給ユニット(15)から送出速度、栄養の種類(10)及び炭水化物濃度(19、38)を前記制御ユニット(16)によってポーリングすること(9、37)、
前記送出速度、前記栄養の種類及び前記炭水化物濃度から栄養値として前記炭水化物速度を前記制御ユニット(16)によって計算すること(11、39)、及び
新たなインスリン値及び必要に応じて新たな栄養値を計算する(13、31)ように、前記計算ユニット(17)に前記炭水化物速度を転送すること(12、14)、
を含むことを特徴とする、請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記新たなインスリン値を計算する(13、31)ように、例えば個人の体重、年齢等の個人特有のデータが前記制御ユニット(16)に入力される(2、3、4;22、24、26)ことを特徴とする、請求項10〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記栄養供給ユニット(15)が栄養供給を中断するか又はその送出速度(8)を変更する場合、前記新たな栄養値が計算されることを特徴とする、請求項10〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記血流中の前記血糖値の次の測定(54)のための時間であることを示すように、前記制御ユニット(56)に配置された警報ユニット(63)によって操作者(53)に警告することを特徴とする、請求項10〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記操作者(53)は、予め決定されていない、供給される栄養値の変更の場合に、前記警報ユニット(63)によって警告されることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記計算ユニットによって出力された値が操作者(53)に表示され、必要に応じて該操作者によって確認されることを特徴とする、請求項10〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記測定された血糖値の妥当性に関する妥当性確認が行われることを特徴とする、請求項10〜18のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−540133(P2010−540133A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527435(P2010−527435)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【国際出願番号】PCT/EP2008/063122
【国際公開番号】WO2009/047178
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(502137189)
【Fターム(参考)】