説明

表皮材の取付方法

【課題】表皮材を木目込み溝の底まで押し込むことができ、剥がれを防止して外観の改善を図ることのできる表皮材の取付方法および表皮材の取付装置を提供する。
【解決手段】受治具11において通常のセットピン取り付け位置よりも基材21から離れた位置にセットピン12を設け、表皮材23を引っ張りながらセットピン12に取り付けるので、セットピン12間に皺部25が形成され、木目込み代が形成される。このため、表皮材23を基材21の木目込み溝22に押し込むことにより、木目込み溝22の底22aまで押し込むことができ、確実に表皮材23を基材21に取り付けて剥がれを防止するとともに外観を改善することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の内装部品で、基材に木目込みにより表皮材を取り付ける表皮材の取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車等の内装部品を製造する際に、基材に木目込みにより表皮材を取り付けることが行われている(例えば特許文献1参照)。図5に示すように、特許文献1に記載の表皮材の取付方法では、最初に圧着下型である受治具100の上にドアトリム本体等の基材101をセットし、更にその上側から装飾シート等の表皮材102をセットした後、圧着中子103により基材101の表面に表皮材102を圧着固定する。
【0003】
その後、図5(A)に示すように、木目込みバー104の先端が基材101の木目込み溝105の溝深さの中間部分まで下降して、表皮材102の端部106を木目込み溝105の中間位置まで圧入する。次いで、図5(B)に示すように、木目込みバー104を上昇させるが、圧着中子103は停止したままである。さらに、図5(C),(D)に示すように1、2回のポンピング動作を行なって、木目込みバー104の先端で表皮材102の端部106を直接押圧して端末処理を完了する。
【0004】
ところで、表皮材の中間部を木目込みする場合には、一般に、図6(A)に示すように、受治具110の上に基材111をセットし、基材111の上から表皮材112を重ねて、表皮材112のセットピン用取付穴113をセットピン114に係止して表皮材112をセットする。その後、図6(B)に示すように、木目込みバー115を下降させて、表皮材112を基材111に設けられている木目込み溝116に押し込んで固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−240155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図6に示したような、従来の表皮材の取付方法では、表皮材112の伸び代が少なく、木目込みバー115で木目込み溝116に押し込んだ際に、図7に示すように、木目込み溝116の底部に隙間117ができ、接着不良による剥がれおよび外観の低下を招くという問題がある。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、表皮材を木目込み溝の底まで押し込むことができ、剥がれを防止して外観の改善を図ることのできる表皮材の取付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の表皮材の取付方法は、内装部品本体の基材に設けられている木目込み溝に表皮材を木目込んで取り付ける表皮材の取付方法であって、前記基材を受治具にセットする工程と、前記表皮材を引っ張って広げながら、前記表皮材に設けられているセットピン用取付穴を受治具のセットピンに取り付ける工程と、前記表皮材を前記木目込み溝に押し込む工程と、を有している。
【0009】
この構成により、受治具において通常のセットピン取り付け位置よりも基材から離れた位置にセットピンを設け、表皮材を引っ張りながらセットピンに取り付けるので、セットピン間に皺部が形成され、木目込み代が形成される。このため、表皮材を基材の木目込み溝に押し込むことにより、木目込み溝の底まで押し込むことができ、確実に表皮材を基材に取り付けて剥がれを防止するとともに外観を改善することができる。
【0010】
また、本発明の表皮材の取付方法は、前記セットピンを、前記受治具に取り付けられた前記基材の前記木目込み溝の長手方向両端の延長上に位置するように配設する構成を有している。
【0011】
この構成により、セットピンを、受治具に取り付けられた基材の木目込み溝の長手方向両端の延長上に位置するように配設したので、表皮材をセットピンに取り付けることにより、表皮材に、木目込み溝に沿った皺部を形成することができる。
【0012】
また、本発明の表皮材の取付方法は、前記表皮材を広げながら前記セットピンに取り付ける際に、前記木目込み溝に沿った皺部を形成する構成を有している。
【0013】
この構成により、表皮材を基材の上に重ねて取り付ける際に、表皮材を広げながらセットピンに取り付けることにより表皮材に木目込み溝に沿った皺部を形成するので、木目込み溝に押し込む際の木目込み代を設けることができ、木目込み溝に容易に押し込むことができる。
【0014】
また、本発明の表皮材の取付方法は、前記表皮材を前記木目込み溝に押し込む際に、前記皺部を押し込む構成を有している。
【0015】
この構成により、基材の木目込み溝に沿って設けられた皺部を木目込み溝に押し込むので、十分な木目込み代が確保でき、表皮材を木目込み溝の底まで押し込むことができる。
【0016】
さらに、本発明の表皮材の取付装置は、内装部品本体の基材に設けられている木目込み溝に表皮材を木目込んで取り付ける表皮材の取付装置であって、前記基材をセットする受治具と、前記受治具に設けられ、前記表皮材を前記受治具にセットするための複数本のセットピンと、引っ張って広げながら前記セットピンにセットされた前記表皮材を、前記基材の前記木目込み溝に押し込んで決め込む木目込みバーと、を有し、前記セットピンが、通常の取り付け位置よりも前記基材から離れた位置に取り付け可能である構成を有している。
【0017】
この構成により、受治具において通常のセットピン取り付け位置よりも基材から離れた位置にセットピンを設けることができるので、表皮材を引っ張りながらセットピンに取り付けることにより、セットピン間に皺部が形成され、木目込み代が形成される。このため、木目込みバーを下降させて表皮材を基材の木目込み溝に押し込むことにより、木目込み溝の底まで押し込むことができ、確実に表皮材を基材に取り付けて剥がれを防止するとともに外観を改善することができる。
【0018】
さらにまた、本発明の表皮材の取付装置は、前記セットピンが、前記受治具に取り付けられた前記基材の木目込み溝の長手方向延長上に取り付け可能である構成を有している。
【0019】
この構成により、セットピンを、受治具に取り付けられた基材の木目込み溝の長手方向両端の延長上に位置するように配設することができるので、表皮材をセットピンに取り付けることにより、表皮材を広げて、木目込み溝に沿った皺部を形成することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、受治具において通常のセットピン取り付け位置よりも基材から離れた位置にセットピンを設け、表皮材を引っ張りながらセットピンに取り付けるので、セットピン間に皺部が形成され、木目込み代が形成される。このため、表皮材を基材の木目込み溝に押し込むことにより、木目込み溝の底まで押し込むことができ、確実に表皮材を基材に取り付けて剥がれを防止するとともに外観を改善することができるという効果を有する表皮材の取付方法および表皮材の取付装置を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る実施形態の表皮材の取付装置に基材をセットした状態を示す斜視図である。
【図2】基材の上に表皮材をセットした状態を示す斜視図である。
【図3】図2中III−III位置の断面図である。
【図4】皺部を木目込む状態を示す断面図である。
【図5】(A)〜(D)は、従来の木目込みによる表示材の端部の取付方法を示す工程図である。
【図6】(A)は従来における表皮材を基材に重ねる状態を示す分解斜視図,(B)は木目込みの動作を示す断面図である。
【図7】従来の木目込みにおける問題点を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の最良の実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1および図2に示すように、本発明にかかる実施形態の表皮材の取付装置10は、例えば自動車のドアトリム等の内装部品本体(図示省略)の基材21に設けられている木目込み溝22に、表皮材23を木目込んで取り付けるものである。なお、基材21は樹脂で形成されている。また、表皮材23の裏面にはウレタン層23aが貼り付けられている(図3参照)。以後、表皮材23とは、ウレタン層23aを含むものを表すこととする。
【0023】
この表皮材の取付装置10は、基材21をセットする受治具11と、表皮材23を基材21の上にセットするために受治具11に設けられる複数本のセットピン12と、表皮材23を基材21の木目込み溝22に押し込んで木め込むための木目込みバー13を有する。木目込みバー13は、昇降手段(図示省略)によって、昇降する。なお、図1及び図2は、一部の木目込みバー13のみを記載している。
【0024】
セットピン12は、受治具11に取り付けられた基材21の木目込み溝22の長手方向延長線上(延長線L)で、通常の取り付け位置よりも基材21から離れた位置に取り付けられる。木目込み溝22に沿った一対のセットピン12、12の間隔D1(図1参照)は、取り付け前の表皮材23における一対のセットピン用取付穴24、24の間隔(D2)(図2参照、ただし、図2においてD2は取り付け後の間隔である。)よりも大きく設定されている。すなわち、D1>(D2)である。
【0025】
従って、表皮材23に設けられているセットピン用取付穴24をセットピン12に引っ掛ける際には、表皮材23を外向き(図2における矢印方向)に引っ張りながら引っ掛ける。なお、セットピン用取付穴24は、予め、基材21の木目込み溝22の延長線L上に配置し、基材21からの距離はこれまでの距離と同様に設けておく。
【0026】
次に、本発明に係る表皮材の取付方法について説明する。まず、図1に示すように、基材21を受治具11にセットする。そして、基材21の木目込み溝22の長手方向延長線上(延長線L)で、通常の取り付け位置よりも基材21から離れた位置に複数本のセットピン12を取り付ける。
【0027】
次いで、図2に示すように、表皮材23を引っ張って広げながら、表皮材23に設けられているセットピン用取付穴24をセットピン12に取り付ける。このように表皮材23を外向きに引っ張って広げることにより、表皮材23には基材21の木目込み溝22に沿って、すなわち、対向する一対のセットピン用取付穴24、24を結ぶ線上に皺部25が形成される(図3参照)。
【0028】
なお、表皮材23のセットピン用取付穴24をセットピン12に取り付ける際には、まず、木目込み溝22の一方の延長線L上にあるセットピン用取付穴24をセットピン12に取り付け、次いで、表示材23を引っ張りながら他方のセットピン用取付穴24をセットピン12に取り付けることができる。
【0029】
その後、図4に示すように、木目込みバー13を下降させて、表皮材23を木目込み溝22に押し込む。木目込み溝22の上には、表皮材23の皺部25が形成されているので、木目込みバー13で皺部25を木目込み溝22に押し込む。このとき、表皮材23の皺部25が木目込み代となるので、押し込まれた表皮材23は木目込み溝22の底22aまで達する。なお、基材21と表皮材23との間には接着剤26が塗布されており、木目込み後は接着剤により固定される。
【0030】
以上、説明した本発明に係る実施形態の表皮材の取付方法によれば、受治具11において通常のセットピン取り付け位置よりも基材21から離れた位置にセットピン12を設け、表皮材23を引っ張りながらセットピン12に取り付けるので、セットピン12間に皺部25が形成され、木目込み代が形成される。このため、表皮材23を基材21の木目込み溝22に押し込むことにより、木目込み溝22の底22aまで押し込むことができ、確実に表皮材23を基材21に取り付けて剥がれを防止するとともに外観を改善することができる。
【0031】
また、セットピン12を、受治具11に取り付けられた基材21の木目込み溝22の長手方向両端の延長線L上に位置するように配設したので、表皮材23を広げながらセットピン12に取り付けることにより、表皮材23に、木目込み溝22に沿った皺部25を形成することができる。
【0032】
これにより、表皮材23を木目込み溝22に押し込む際の木目込み代を設けることができるので、皺部25を木目込み溝22に押し込むことにより、表皮材23を木目込み溝22の底22aまで押し込むことができる。
【0033】
また、以上、説明した本発明に係る実施形態の表皮材の取付装置10によれば、受治具11において通常のセットピン取り付け位置よりも基材21から離れた位置にセットピン12を設けることができるので、表皮材23を引っ張りながらセットピン12に取り付けることにより、セットピン12間に皺部25が形成され、木目込み代が形成される。このため、木目込みバー13で表皮材23を基材21の木目込み溝22に押し込むことにより、木目込み溝22の底22aまで押し込むことができ、確実に表皮材23を基材21に取り付けて剥がれを防止するとともに外観を改善することができる。
【0034】
また、セットピン12を、受治具11に取り付けられた基材21の木目込み溝22の長手方向両端の延長線L上に位置するように配設することができるので、表皮材23をセットピン12に取り付けることにより、表皮材23に、木目込み溝22に沿った皺部25を形成することができる。
従って、皺部25を木目込みバー13で木目込み溝22に押し込むことにより、木目込み溝22の底22aまで押し込むことができる。
【0035】
さらに、皺部25が木目込み代となり、木目込みの際に1度の押し込みで木目込みができるので、従来のように木目込みバー13を何度か上下にポンピングする必要がなくなる。これに伴い、製作工数の低減、設備の簡素化を図ることができる。
【0036】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0037】
10 表皮材の取付装置
11 受治具
12 セットピン
13 木目込みバー
21 基材
22 木目込み溝
22a 底
23 表皮材
24 セットピン用取付穴
25 皺部
L 延長線(延長)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内装部品本体の基材に設けられている木目込み溝に表皮材を木目込んで取り付ける表皮材の取付方法であって、
前記基材を受治具にセットする工程と、
前記表皮材を引っ張って広げながら、前記表皮材に設けられているセットピン用取付穴を受治具のセットピンに取り付ける工程と、
前記表皮材を前記木目込み溝に押し込む工程と、
を有することを特徴とする表皮材の取付方法。
【請求項2】
前記表皮材を広げながら前記セットピンに取り付ける際に、前記木目込み溝に沿った皺部を形成し、
前記表皮材を前記木目込み溝に押し込む際に、前記皺部を押し込むことを特徴とする請求項1記載の表皮材の取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−183708(P2011−183708A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52377(P2010−52377)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】