説明

表示装置およびその製造方法

【課題】共通電極上に補助配線を、発光層にダメージを与えることなく、高精度に形成する。
【解決手段】画素電極と、前記画素電極上に形成される透明電極とを有する複数の画素と、前記透明電極上で前記各画素の発光領域の間に形成される補助配線とを備える表示装置であって、前記補助配線は、樹脂の上に形成されたストライプ状の金属配線である。前記透明電極は、前記各画素に対して共通に形成され、前記透明電極と前記金属配線とを組み合わせたときのシート抵抗は、10Ω/□以下である。前記金属配線は、Cu、または、Al、あるいは、SUSである。前記金属配線は、黒色化処理が施されている。前記透明電極は、ITO、または、IZO、あるいは、ZnOである。前記金属配線は、走査線の延長方向で、前記各画素の発光領域の間の非発光領域に形成される。前記樹脂は、PET、または、TAC、あるいは、POCである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置およびその製造方法に係り、特に、有機EL表示における補助配線の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トップエミッション方式の有機EL表示装置は、画素駆動に用いる薄膜トランジスタ(以下、駆動TFT)や配線の上部に画素部を設計可能であることから、前述の駆動TFTや配線の面積に影響されない為、画素開口率を大きくすることが出来る。この為、有機EL表示パネルの高精細化や高輝度化、あるいは低消費電力化が可能であるというメリットを有する。
しかし、光取り出し方向に存在する上部透明電極(共通電極)は、ITOあるいはIZOといった金属酸化物を用いなければならず、電気抵抗もAL(アルミニウム)等の金属に比較して大きいことが問題となる。即ち、上部透明電極が高抵抗であるが故に、有機EL表示パネルの画面中央と画面周辺において電圧降下が生じることから、輝度均一性を確保する事が困難となる。
そこで、上部透明電極を低抵抗化する為に、上部透明電極の上部あるいは下部にAL等の低抵抗金属を微細に配線し、透明電極と接続することにより、上部透明電極の電気抵抗を全体的に低抵抗化する手法が採用されている。(下記、特許文献1〜特許文献3参照)。
【0003】
なお、本願発明に関連する先行技術文献としては以下のものがある。
【特許文献1】特開2007−103058号公報
【特許文献2】特開2007−103098号公報
【特許文献3】特開2007−108469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の微細な低抵抗金属配線を補助配線と定義した場合、補助配線の作成方法は、大きく分けて次ぎの2つの製法が考えられる。
(1)透明電極の下部に用いる補助配線をフォトプロセスにより製作する。
(2)透明電極の下部もしくは上部にAL等の低抵抗金属を蒸着により作成する。
前者の場合、フォトプロセス増加による製造プロセスの変更並びにコスト増加が不可避となる。
一方、後者の場合には、AL等の低抵抗金属を蒸着する際には、高融点金属であることから、蒸着マスクならびに基板温度上昇による有機EL素子のダメージあるいは蒸着精度の劣化による補助配線の位置ずれ等が発生する事が容易に考えられる。更に、AL等の低抵抗金属は金属光沢を持つ事から、外光の乱反射による表示品位の劣化等の問題も考えられる。
本発明は、前記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、表示装置および製造方法において、共通電極上に補助配線を、発光層にダメージを与えることなく、高精度に形成することが可能となる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、下記の通りである。
(1)画素電極と、前記画素電極上に形成される透明電極とを有する複数の画素と、前記透明電極上で前記各画素の発光領域の間に形成される補助配線とを備える表示装置であって、前記補助配線は、樹脂の上に形成されたストライプ状の金属配線である。
(2)(1)において、前記透明電極は、前記各画素に対して共通に形成され、前記透明電極と前記金属配線とを組み合わせたときのシート抵抗は、10Ω/□以下である。
(3)(1)または(2)において、前記金属配線は、Cu、または、Al、あるいは、SUSである。
(4)(1)ないし(3)の何れかにおいて、前記金属配線は、黒色化処理が施されている。
(5)(1)ないし(4)の何れかにおいて、前記透明電極は、ITO、または、IZO、あるいは、ZnOである。
(6)(1)ないし(5)の何れかにおいて、前記各画素に走査電圧を入力する走査線を有し、前記金属配線は、前記走査線の延長方向で、前記各画素の発光領域の間の非発光領域に形成されている。
(7)(1)ないし(6)の何れかにおいて、前記各画素を分離する分離壁を有し、前記各画素の発光領域は、前記分離壁により前記各画素毎に分離されており、前記金属配線は、前記分離壁上の前記透明電極上に形成されている。
(8)(1)ないし(7)の何れかにおいて、前記樹脂は、PET、または、TAC、あるいは、POCである。
【0006】
(9)画素電極と、前記画素電極上に形成される透明電極とを有する複数の画素と、前記透明電極上で、前記各画素の発光領域の間に形成される補助配線とを有する表示装置の製造方法であって、主面上に金属配線がストライプ状に形成された樹脂を用意するステップと、基板上に前記画素電極を形成するステップと、前記画素電極上に透明電極を形成するステップと、前記透明電極上に、前記主面が前記透明電極と対向するように、前記用意した樹脂を貼り合わせて、前記透明電極上で前記各画素の発光領域の間に補助配線を形成するステップとを有する。
(10)(9)において、前記主面上に金属配線がストライプ状に形成された樹脂を用意するステップは、前記樹脂の主面上に金属材料を形成するステップと、前記金属材料をホトエッチングでエッチングし、前記ストライプ状の金属配線を形成するステップとを有する。
(11)(9)において、前記主面上に金属配線がストライプ状に形成された樹脂を用意するステップは、前記樹脂の主面上に印刷法、あるいは析出法により前記ストライプ状の金属配線を形成するステップである。
(12)(9)ないし(11)の何れかにおいて、基板上に前記画素電極を形成するステップの後に、前記各画素の発光領域を分離する分離壁を形成するステップを有し、前記画素電極上に透明電極を形成するステップは、前記分離壁を覆い、前記各画素に対して共通に前記透明電極を形成するステップである。
【発明の効果】
【0007】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、下記の通りである。
本発明によれば、共通電極上に補助配線を、発光層にダメージを与えることなく、高精度に形成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
なお、実施例を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
また、本実施例では、トップエミッション方式のアクティブマトリクス型有機EL表示装置に本発明を適用した例について説明する。
[本発明の前提となる有機EL表示パネル]
図1は、本発明の前提となる有機EL表示パネルの1画素(サブピクセル)の等価回路を示す回路図である。
図1に示すように、本発明の前提となる有機EL表示パネルでは、上下方向に映像線(DATA)及び電源線(POWER)、左右方向に補助配線(SUP)と走査線(SCAN)が配置され、各画素はこれらの配線の間に形成される。
各画素は、第1トランジスタ(TFT1)、第2トランジスタ(TFT2)、データ保持容量(CAP)、および有機EL素子(OLE)を有する。
第1トランジスタ(TFT1)のソースドレイン領域の一端に、映像線(DATA)が接続され、他端に、データ保持容量(CAP)の一端が接続され、制御端であるゲートは、走査線(SCAN)に接続される。
データ保持容量(CAP)の一端は、第2トランジスタ(TFT2)の制御端にも接続され、他端は、電源線(POWER)に接続される。
電源線(POWER)には、データ保持容量(CAP)だけでなく、第2トンランジスタ(TFT2)のソースドレイン領域の一端が接続されている。第2トンランジスタ(TFT2)のソースドレイン領域の他端は、有機EL素子(OLE)のアノードに接続される。有機EL素子(OLE)のカソードは、補助配線(SUP)に接続される。
【0009】
本発明の前提となる有機EL表示パネルの1画素の要部断面構造を図2に示す。
図2に示すように、本発明の前提となる有機EL表示パネルでは、基板(SUB)上に、下地膜(UC)、半導体膜(FG)、ゲート絶縁膜(GI)、金属ゲート電極膜(SG)、第1層間絶縁膜(INS1)、金属電極膜(ADM)、第2層間絶縁膜(INS2)、画素電極(AD)、バンク(BNK)、補助配線(SUP)、有機EL素子(OLE)、共通電極(CD)が形成される。なお、図2において、矢印Aは、有機EL素子(OLE)で発光した光の照射方向を示す。
基板(SUB)は、0.5mmの厚さの無アルカリガラスである。
下地膜(UC)は、基板(SUB)に含まれるイオン性不純物が、第1トランジスタ(TFT1)、あるいは第2トランジスタ(TFT2)を構成する薄膜トランジスタ(TFT)に影響を及ぼすのを回避するために設けられており、厚さ50〜200nmの窒化シリコン膜と厚さ50〜200nmの酸化シリコン膜との積層膜からなる。
半導体膜(FG)は、第1トランジスタ(TFT1)、あるいは第2トランジスタ(TFT2)を構成する薄膜トランジスタ(TFT)のソース領域、ドレイン領域、チャネル領域だけでなく、高濃度ドーピングによる配線やデータ保持容量(CAP)の下層電極を構成する層である。この半導体膜(FG)は、厚さ50〜150nmのポリシリコンで構成される。
ゲート絶縁膜(GI)は、厚さ100〜200nmのTEOSによる酸化シリコン膜で構成され、コンタクトホール以外の基板全面を覆っている。ゲート絶縁膜(GI)は、ゲート絶縁膜だけでなく、データ保持容量(CAP)の誘電体層としても機能する。
【0010】
金属ゲート電極膜(SG)は、第1トランジスタ(TFT1)のゲート電極と第2トランジスタ(TFT2)のゲート電極となる他、走査配線(SCAN)、データ保持容量(CAP)の上層電極を構成する層である。金属ゲート電極膜(SG)は、厚さ100〜300nmの金属膜で、モリブデン(Mo)とタングステン(W)との合金膜(MoW)で構成されている。
第1層間絶縁膜(INS1)は、厚さ200〜500nmの酸化シリコン膜で構成され、コンタクトホール以外の基板全面を覆っている。
金属電極膜(ADM)は、映像線(DATA)、電源線(POWER)を構成するだけでなく、半導体膜(FG)と金属ゲート電極膜(SG)とを接続する際の配線や、抵抗を下げる冗長配線を構成する。金属電極膜(ADM)は、厚さ20〜120nm程度の厚さのMoW膜と50〜150nm程度の厚さのMoW膜との間に200〜400nm程度の厚さのAlSi膜を挟み込んだ積層構造の金属膜からなる。
第2層間絶縁膜(INS2)は、厚さ300〜500nmのシリコン窒化膜の上に、厚さ1μm〜2μmのポリイミド、アクリル、エポキシの何れから選択された有機絶縁膜が形成された積層構造で構成され、コンタクトホール以外の基板全面を覆っている。
画素電極(AD)は、上下2層で構成される。下層は、厚さ50〜200nmのAlSi膜と20〜120nm程度の厚さのMoW膜との積層膜(上Al膜/下MoW膜)で構成され、画素毎に分離されている。上層は、厚さ30〜200nm程度のITO(Indium Tin Oxide)膜で構成され、画素毎に分離されている。上層のITOは、下層の金属を覆い、下層を介さずに第2トランジスタ(TFT2)と電気的に直接接続されている。即ち、画素電極(AD)の上層は、ホール注入する陽極として機能し、下層は有機EL素子(OLE)で発光した光を反射する反射膜として機能する。
【0011】
バンク(BNK)は、画素電極(AD)の外縁を覆い、画素電極(AD)を露出する発光領域(ARA)間を絶縁する絶縁膜で、窒化シリコン膜SiN、アクリル又はポリイミドで構成される。
有機EL素子(OLE)は、図3に示すように、ホール輸送層22、発光層21、電子輸送層20の3層を少なくとも備えている。この有機EL素子(OLE)の少なくとも一層がバンクの上にも形成される。
陰極となる共通電極(CD)は、IZOなどの亜鉛系の酸化導電膜で構成され、有機EL素子(OLE)の全面を覆っている。
共通電極(CD)上には、補助配線(SUP)が形成される。補助配線(SUP)は、走査線(SCAN)の延長方向で、各画素の発光領域(ARA)の間の非発光領域に形成される。即ち、補助配線(SUP)は、上下左右に延びるバンク(BNK)のうち、左右に延びるバンク(BNK)上に形成される。図4に補助配線(SUP)の平面パターンを示す。ここで、図4に示すように、補助配線(SUP)の配線幅は10〜15μm、各画素の発光領域(ARA)の間隔は、25ないし30μmとされる。
このように、トップエミッション方式の有機EL表示装置は、第1トランジスタ(TFT1)、第2トランジスタ(TFT2)、および各配線の上部に、画素電極(AD)、有機EL素子(OLE)を形成することができるので、画素開口率を大きくでき、有機EL表示パネルの高精細化や高輝度化、あるいは低消費電力化が可能であるというメリットを有する。
【0012】
前述したように、補助配線(SUP)は、共通電極(CD)を低抵抗化する目的で用いられる為、共通電極(CD)の材料がITOやIZOあるいはZnOに対して、充分に電気抵抗の低い金属を用いる必要がある。その為、現在では入手が容易であり、電気抵抗が低く、かつ製膜方法の安定したALが補助配線(SUP)に用いられる。
しかし、ALを補助配線材料に用いる場合には、ALは高融点金属である為、一般的な抵抗加熱あるいは誘導加熱法を用いた場合、蒸着源の温度は1500K以上となることから、高精細な蒸着マスクの昇温あるいは基板温度の昇温、更には高温に熱せられた蒸着マスクが有機EL素子(OLE)に接触することによる、有機EL素子(OLE)のダメージ等が問題となる。有機EL素子(OLE)のダメージは、有機EL表示パネルの信頼性に関わる問題となり、十分な対策が必要である。
一方、蒸着マスクや基板の昇温による影響は、それぞれの熱膨張を引き起こすことから、補助配線(SUP)の製膜位置の蒸着位置ずれといった問題となる。この蒸着位置ずれは設計裕度を超えた場合、即ち、補助配線(SUP)が画素上にずれて成膜された場合には、製品として表示不良となる。この状態の模式図を図9に示す。
有機EL素子(OLE)の下に補助配線(SUP)を形成する場合には、高精細な蒸着マスクの昇温あるいは基板温度の昇温、更には高温に熱せられた蒸着マスクが有機EL素子(OLE)に接触することによる、有機EL素子(OLE)のダメージを考慮する必要がないので、ホトリソによる高い精度の補助配線(SUP)のパターン化が可能である。
しかし、有機EL素子(OLE)の下に補助配線(SUP)を形成する場合、有機膜がその中間に存在し、補助配線(SUP)と共通電極(CD)との接続の妨げになる。この状態の模式図を図10に示す。
これは、単色発光とカラーフィルタの組合せのカラー有機EL表示装置だけでなく、多色発光でも発光材料層を構成する少なくとも1層はプロセス簡略化のために、異なる色の画素にも共通に蒸着する、所謂「ベタ蒸着」が採用された有機EL表示装置でも問題となる。なお、図9、図10において、図2に示す基板(SUB)と画素電極(AD)との間の構造をBTFTで表し、図2に示す基板(SUB)と画素電極(AD)との間の構造の図示は省略している。
【0013】
[本発明の実施例の有機EL表示パネルの特徴]
本発明の実施例の有機EL表示パネルは、補助配線構成部材を有機EL表示パネルと別の部品で構成し、有機EL表示パネルと補助配線構成部材とを組み合わせて用いることを特徴とする。
図5は、本発明の実施例の補助配線構成部材を説明するための図であり、図6は、本発明の実施例の補助配線構成部材を拡大して示す斜視図である。
図5、図6に示す補助配線構成部材は、PET(ポリエチレンテレフタラート;PolyEthylene Terephthalate)で構成された樹脂フィルム(RESIN)と、この樹脂フィルム(RESIN)の上にストライプ状に形成された金属配線(MLINE)とで構成される。
この補助配線構成部材は、例えば、冷間圧延加工により10μm以下にされた銅箔とPETフィルムとを化粧鋼板技術により貼り合わせた後、高温かつ高圧でエッチング液を噴出するエッチング技術により銅箔をエッチングし、テーパ角が80〜90度となるように加工された金属配線(MLINE)をストライプ状に形成することにより作成される。
このプロセスを用いた場合には、金属配線(MLINE)の配線ピッチ(PITCH)は80〜1000μm、配線幅(WIDTH)は8〜50μm、配線高(HEIGHT)は10〜150μmまでは適宜製造可能である。
したがって、前述のプロセスを用いた場合には、金属配線(MLINE)の精細度は300LPI(Line per inch)程度は充分に達成可能であるため、有機EL素子パネルの補助配線(SUP)パターンを形成する目的においては、充分な加工精細度の実力を持っている。
【0014】
更に、金属配線(MLINE)パターンに用いられる金属は、板厚10μm程度の配線厚みを持つ為、一般的なガラス基板上にフォトプロセスでパターンニングされた金属配線の厚み(1μm程度)と比較して、約1/10の電気抵抗となる。このため、現状考えうる補助配線の形成プロセス、即ち、フォトプロセス法や真空蒸着法に比較して、本実施例による補助配線(SUP)は配線抵抗が最も低いものとなる。
本実施例では、共通電極(CD)としては、ITO、または、IZO、あるいはZnOが使用されるが、本実施例では、共通電極(CD)として、ITO、または、IZO、あるいはZnOを用い、補助配線構成部材を有機EL素子パネルの共通電極(CD)に組み合わせた際には、共通電極(CD)と補助配線(SUP)とを組み合わせたシート抵抗を10Ω/□以下とすることができる。
この結果、補助配線(SUP)の配線抵抗による電圧降下を従来よりも低くできるので、高性能な有機EL表示パネルの製造に貢献する他、トップエミッション方式の有機EL表示パネルの大型化対応(例えば、17インチ以上の有機EL素子パネル)に対しても容易に対応可能となる。
この金属配線(MLINE)は、不透明な金属膜で、アルミニウム(Al)の他、銅(Cu)、ステンレス(SUS)などの金属材料を用いることができる。なお、金属配線(MLINE)の表面に黒色化処理を施すようにしてもよい。この場合には、有機EL素子パネルの視認特性を向上させることが可能となる。
樹脂フィルム(RESIN)としては、PETのほかにTAC(トリアセチルセルロース)、あるいは、POC(ポリオレフィン;polyolefin)等を適用することもできる。これらの樹脂のように、複屈折が少ない膜であれば、他の材料も用いることができる。
前述の説明では、補助配線構成部材の製造法は、あらかじめ金属箔と樹脂フィルムを貼り合わせた部材を準備して、これにフォトレジストでパターンニングし、エッチング法により、配線以外の部分を除去することによって製造したが、析出法や印刷法を用いても、同様な効果を得ることができる。
【0015】
本実施例では、図5、図6に示す補助配線部材と、図2に示す構造において補助配線(SUP)が形成されていない有機EL表示パネルとをそれぞれ別々に製造する。
その後、金属配線(MLINE)が、発光領域(ARA)に重ならないように、樹脂フィルム(RESIN)を、図2に示す構造において補助配線(SUP)が形成されていない有機EL表示パネル上に、例えば、真空ラミネート等の圧着により貼り合わせる。
この場合、有機EL表示パネルの成膜層は薄膜であり、有機層を主体としている為、樹脂フィルム(RESIN)の金属配線(MLINE)に比較して弾性が高いことから、樹脂フィルム(RESIN)の金属配線(MLINE)は、有機EL表示パネルの共通電極(CD)に食い込む形状となる。
図7に、図5、図6に示す補助配線部材と、図2に示す構造において補助配線(SUP)が形成されていない有機EL表示パネルとを貼り合わせる前の状態を、図8に、図5、図6に示す補助配線部材と、図2に示す構造において補助配線(SUP)が形成されていない有機EL表示パネルとを貼り合わせた後の状態を示す。
図8に示すように、図5、図6に示す補助配線部材と、図2に示す構造において補助配線(SUP)が形成されていない有機EL表示パネルとを貼り合わせた後、通常の有機EL表示パネルの封止プロセスを行うことによって、有機EL表示パネルが完成する。
なお、図7、図8において、図2に示す基板(SUB)と画素電極(AD)との間の構造をBTFTで表し、図2に示す基板(SUB)と画素電極(AD)との間の構造の図示は省略している。
【0016】
本実施例によれば、下記の作用・効果を得ることが可能である。
(1)補助配線(SUP)の成膜時の基板温度上昇プロセスが不要となるので、補助配線(SUP)の形成時における有機EL素子(OLE)のダメージを阻止することが可能となる。
(2)金属配線(MLINE)が高精度に形成された樹脂フィルム(RESIN)を有機EL表示パネルに貼り合わせるプロセスのため、位置合わせプロセスの精度で、有機EL素子パネルへ補助配線(SUP)を形成することができ、補助配線(SUP)の形成精度の向上、即ち、補助配線(SUP)の位置ずれを抑制することができる。
(3)金属配線(MLINE)に黒色化処理を施すことにより、補助配線(SUP)の表面を黒色にでき光学反射率が抑えることができるため、CRTにおけるBM(ブラックマトリクス)のように非発光時の黒の沈みを改善し、コントラストを向上させることが可能となる。
(4)金属配線(MLINE)が高精度に形成された樹脂フィルム(RESIN)は、そのまま電磁波吸収効果を持つため、不要輻射(電磁波)を抑制することが可能となる。
(5)金属配線(MLINE)を蒸着成膜するプロセスや真空装置、あるいはフォトプロセスが不要となり、液晶ディスプレイにおけるカラーフィルタの貼り合わせのような簡易的なプロセスのみとなるので、プロセス削減の効果の他、歩留まりの向上によるコストを低減することが可能となる。
以上説明したように、本実施例によれば、有機EL素子(OLE)のダメージが無く、高精度な補助配線(SUP)の形成が可能となり、トップエミッション方式の有機EL表示パネルの性能向上、並びに生産歩留まりを向上させることが可能となる。
以上、本発明者によってなされた発明を、前記実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の前提となる有機EL表示パネルの1画素(サブピクセル)の等価回路を示す回路図である。
【図2】本発明の前提となる有機EL表示パネルの1画素の要部断面構造を示す模式断面図である。
【図3】図2に示す有機EL素子(OLE)の構成の一例を示す図である。
【図4】図2に示す補助配線(SUP)の配置パターンを示す図である。
【図5】本発明の実施例の補助配線構成部材を説明するための図である。
【図6】本発明の実施例の補助配線構成部材を拡大して示す斜視図である。
【図7】図5、図6に示す補助配線部材と、図2に示す構造において補助配線(SUP)が形成されていない有機EL表示パネルとを貼り合わせる前の状態を示す模式断面図である。
【図8】図5、図6に示す補助配線部材と、図2に示す構造において補助配線(SUP)が形成されていない有機EL表示パネルとを貼り合わせる後の状態を示す模式断面図である。
【図9】従来のプロセスで補助配線(SUP)を共通電極(CD)の上に形成する時の問題点を説明するための図である。
【図10】従来のプロセスで補助配線(SUP)を共通電極(CD)の下に形成する時の問題点を説明するための図である。
【符号の説明】
【0018】
20 電子輸送層
21 発光層
22 ホール輸送層
SUB 基板
UC 下地膜
FG 半導体層
GI ゲート絶縁膜
SG 金属ゲート電極膜
ADM 金属電極膜
INS1 第1層間絶縁膜
INS2 第2層間絶縁膜
AD 画素電極
BNK バンク
SUP 補助配線
CD 共通電極
DATA 映像線
POWER 電源線
SCAN 走査線
OLE 有機EL素子
TFT1 第1トランジスタ
TFT2 第2トランジスタ
CAP データ保持容量
RESIN 樹脂フィルム
MLINE 金属配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素電極と、前記画素電極上に形成される透明電極とを有する複数の画素と、
前記透明電極上で前記各画素の発光領域の間に形成される補助配線とを備える表示装置であって、
前記補助配線は、樹脂の上に形成されたストライプ状の金属配線であることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記透明電極は、前記各画素に対して共通に形成され、
前記透明電極と前記金属配線とを組み合わせたときのシート抵抗は、10Ω/□以下であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記金属配線は、Cu、または、Al、あるいは、SUSであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記金属配線は、黒色化処理が施されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記透明電極は、ITO、または、IZO、あるいは、ZnOであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記各画素に走査電圧を入力する走査線を有し、
前記金属配線は、前記走査線の延長方向で、前記各画素の発光領域の間の非発光領域に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記各画素を分離する分離壁を有し、
前記各画素の発光領域は、前記分離壁により前記各画素毎に分離されており、
前記金属配線は、前記分離壁上の前記透明電極上に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記樹脂は、PET、または、TAC、あるいは、POCであることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項9】
画素電極と、前記画素電極上に形成される透明電極とを有する複数の画素と、
前記透明電極上で、前記各画素の発光領域の間に形成される補助配線とを有する表示装置の製造方法であって、
主面上に金属配線がストライプ状に形成された樹脂を用意するステップと、
基板上に前記画素電極を形成するステップと、
前記画素電極上に透明電極を形成するステップと、
前記透明電極上に、前記主面が前記透明電極と対向するように、前記用意した樹脂を貼り合わせて、前記透明電極上で前記各画素の発光領域の間に補助配線を形成するステップとを有することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記主面上に金属配線がストライプ状に形成された樹脂を用意するステップは、前記樹脂の主面上に金属材料を形成するステップと、
前記金属材料をホトエッチングでエッチングし、前記ストライプ状の金属配線を形成するステップとを有することを特徴とする請求項9に記載の表示装置の製造方法。
【請求項11】
前記主面上に金属配線がストライプ状に形成された樹脂を用意するステップは、前記樹脂の主面上に印刷法、あるいは析出法により前記ストライプ状の金属配線を形成するステップであることを特徴とする請求項9に記載の表示装置の製造方法。
【請求項12】
基板上に前記画素電極を形成するステップの後に、前記各画素の発光領域を分離する分離壁を形成するステップを有し、
前記画素電極上に透明電極を形成するステップは、前記分離壁を覆い、前記各画素に対して共通に前記透明電極を形成するステップであることを特徴とする請求項9ないし請求項11のいずれか1項に記載の表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−193797(P2009−193797A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−32502(P2008−32502)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】