説明

表示装置スペーサー用感光性樹脂組成物及び感光性エレメント

【課題】本発明の目的は、塑性変形に起因する表示ムラの抑制と、硬度あるいは機械的強度向上に伴う密着性低下に起因する表示ムラの抑制とを両立でき、表示ムラのない良好な表示品質でかつ歩留りのよい表示装置の製造が可能な表示装置スペーサー用感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(a)バインダポリマー、(b)1分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する光重合性不飽和化合物、(c)活性光線により遊離ラジカルを生成する光重合開始剤、(d)1分子中に少なくとも1個の加水分解性基含有シリル基を有するシリル基含有有機化合物を含み、(d)成分の含有量が、(a)及び(b)成分の総量100重量部に対して0.01〜30重量部であることを特徴とする表示装置スペーサー用感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置スペーサー用感光性樹脂組成物及び感光性エレメントに関する。本発明は、特に、液晶表示装置における液晶層の厚みを一定に保つために配設される液晶スペーサーに使用される液晶スペーサー用感光性樹脂組成物及び感光性エレメントに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶カラーテレビ、液晶カラー表示のコンピューターなどが実用化されている。これらの液晶表示装置は、透明電極等を設けたガラス等の透明な基板間に1〜10μm程度の間隙(ギャップ)を設けて、その間隙に液晶物質を封入し、電極間に印加した電圧により液晶物質を配向させ、画像を表示する仕組になっている。このような液晶表示装置において、液晶層のギャップが変化すると表示ムラやコントラスト異常の原因となる。そのため、均一な粒径分布を持つ球状のガラスビーズまたは樹脂ビーズをスペーサーとして液晶層に配し、液晶層のギャップを一定に保持する必要がある。
しかしながら、このような球状のガラスビーズや樹脂ビーズのスペーサーは、一般に、対向する基板間の液晶層に散布されているだけで、基板に対して固定されていない。したがって、スペーサーの分布にバラツキが生じて表示ムラが発生したり、液晶表示装置の振動によりスペーサーが移動して配向異常領域が大きくなったり、配向膜面にダメージを与える等の問題があった。また、このような球状のガラスビーズや樹脂ビーズのスペーサーは、液晶表示装置の表示部分にも散布されているため、コントラストを低下させ、表示品質を低下させる等の問題があった。
これらの問題を改良する方法として、特許文献1〜3には、一方の基板上に紫外線硬化型樹脂を塗布、乾燥後、露光・現像を行うことでスペーサーを形成する方法が開示されている。また、特許文献4には、あらかじめ光硬化性樹脂塗液を塗布したフィルムを使用し、これを転写した後に、露光・現像でパターニングを行い、スペーサーを形成する方法が開示されている。これらの方法で形成されたスペーサーは、柱状スペーサーあるいは感光性スペーサーと呼ばれ、前記の球状のガラスビーズや樹脂ビーズを用いた場合に発生していた表示ムラ、配向異常及びコントラスト低下等の問題点を解消し得る手段として提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開平3−089320号公報
【特許文献2】特開平10−168134号公報
【特許文献3】特開平11−133600号公報
【特許文献4】特開平11−174461号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の材料及び方法で形成された柱状スペーサーあるいは感光性スペーサーを液晶表示装置に適用した場合、スペーサーの圧縮強度が弱く、パネル化時に塑性変形量が大きくなり、液晶層のギャップが目標値より狭くなったり、不均一化して表示ムラが顕著になったりするという問題があった。
そこで、柱状スペーサーの柔軟性を低下させ、硬度あるいは機械的強度を向上させることによって、このような問題を解決する試みがなされてきた。例えば、ネガ型の感光性材料を用いる場合には、高いガラス転移温度(Tg)を示す樹脂骨格を導入したり、光架橋密度を高めたりする等の具体的手段が挙げられる。
しかしながら、このように柱状スペーサーの硬度あるいは機械的強度を向上させた場合、柱状スペーサーの形成工程において、柱状スペーサーとガラス等の透明な基板との界面で発生する応力を緩和することが難しくなり、基板に対する柱状スペーサーの十分な密着性が得られず、柱状スペーサーのパターニング時、洗浄時、あるいは配向膜のラビング時に柱状スペーサーが基板から剥離する傾向が高くなる。このように、柱状スペーサーが基板から剥離してしまうと、液晶表示装置画面内で液晶層のギャップが不均一化し、表示ムラが顕著なものとなり、実用に耐えられなくなってしまう。
つまり、柱状スペーサーあるいは感光性スペーサーを液晶表示装置に適用する場合、従来の材料及び方法では、塑性変形に起因する表示ムラの解決と、硬度あるいは機械的強度向上に伴う密着性低下に起因する表示ムラの解決を両立することが困難であった。
【0005】
本発明の目的は、塑性変形に起因する表示ムラの抑制と、硬度あるいは機械的強度向上に伴う密着性低下に起因する表示ムラの抑制とを両立でき、表示ムラのない良好な表示品質でかつ歩留りのよい表示装置の製造が可能な表示装置スペーサー用感光性樹脂組成物を提供すること、上記の効果に加えて、さらに作業性に優れ、かつコスト低減に寄与し得る表示装置スペーサー用感光性エレメントを提供すること、上記効果を有する表示装置スペーサーを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、塑性変形に起因する表示ムラの抑制と、硬度あるいは機械的強度向上に伴う密着性低下に起因する表示ムラの抑制とを両立でき、表示ムラのない良好な表示品質でかつ歩留りのよい液晶表示装置の製造が可能な液晶スペーサー用感光性樹脂組成物を提供すること、上記の効果に加えて、さらに作業性に優れ、かつコスト低減に寄与し得る液晶スペーサー用感光性エレメントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(a)バインダポリマー、(b)1分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する光重合性不飽和化合物、(c)活性光線により遊離ラジカルを生成する光重合開始剤、(d)1分子中に少なくとも1個の加水分解性基含有シリル基を有するシリル基含有有機化合物を含み、(d)成分の含有量が、(a)及び(b)成分の総量100重量部に対して0.01〜30重量部であることを特徴とする表示装置スペーサー用感光性樹脂組成物に関する。
また、本発明は、(a’)水酸基を有するバインダポリマー、(b)1分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する光重合性不飽和化合物、(c)活性光線により遊離ラジカルを生成する光重合開始剤、(d)1分子中に少なくとも1個の加水分解性基含有シリル基を有するシリル基含有有機化合物を含み、(a’)水酸基を有するバインダポリマーが、水酸基を有する化合物を0.1〜50重量%含む化合物を重合して得られるバインダポリマーであることを特徴とする表示装置スペーサー用感光性樹脂組成物に関する。
本発明において、表示装置スペーサー用感光性樹脂組成物は、(I)基板上に感光性樹脂組成物層を形成する工程、(II)感光性樹脂組成物層に活性光線を像的に照射する工程、(III)現像により感光性樹脂組成物層を選択的に除去してパターンを形成する工程、(IV)パターンが形成された感光性樹脂組成物層を加熱する工程、及び(V)パターンが形成された感光性樹脂組成物層を超音波洗浄する工程により形成される表示装置スペーサー用に使用される感光性樹脂組成物であって、当該表示装置スペーサー用感光性樹脂組成物を用いて形成した円柱状スペーサーの数的残存率が95%以上となる時の該円柱状スペーサーの直径が、基板に接している面において3μm以上であることが好ましい。
また、本発明は、支持体フィルム上に、上記表示装置スペーサー用感光性樹脂組成物を用いて形成した層を有する表示装置スペーサー用感光性エレメントに関する。
また、本発明は、(a)バインダポリマー、(b)1分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する光重合性不飽和化合物、(c)活性光線により遊離ラジカルを生成する光重合開始剤、(d)1分子中に少なくとも1個の加水分解性基含有シリル基を有するシリル基含有有機化合物を含み、(d)成分の含有量が、(a)及び(b)成分の総量100重量部に対して0.01〜30重量部であることを特徴とする液晶スペーサー用感光性樹脂組成物に関する。
また、本発明は、(a’)水酸基を有するバインダポリマー、(b)1分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する光重合性不飽和化合物、(c)活性光線により遊離ラジカルを生成する光重合開始剤、(d)1分子中に少なくとも1個の加水分解性基含有シリル基を有するシリル基含有有機化合物を含み、(a’)水酸基を有するバインダポリマーが、水酸基を有する化合物を0.1〜50重量%含む化合物を重合して得られるバインダポリマーであることを特徴とする液晶スペーサー用感光性樹脂組成物に関する。
本発明の液晶スペーサー用感光性樹脂組成物において、(I)基板上に感光性樹脂組成物層を形成する工程、(II)感光性樹脂組成物層に活性光線を像的に照射する工程、(III)現像により感光性樹脂組成物層を選択的に除去してパターンを形成する工程、(IV)パターンが形成された感光性樹脂組成物層を加熱する工程、及び(V)パターンが形成された感光性樹脂組成物層を超音波洗浄する工程により形成される液晶スペーサー用に使用される感光性樹脂組成物であって、当該液晶スペーサー用感光性樹脂組成物を用いて形成した円柱状スペーサーの数的残存率が95%以上となる時の該円柱状スペーサーの直径が、基板に接している面において3μm以上であることが好ましい。
また、本発明は、支持体フィルム上に、上記液晶スペーサー用感光性樹脂組成物を用いて形成した層を有する液晶スペーサー用感光性エレメントに関する。
さらに、本発明は、上記表示装置スペーサー用感光性樹脂組成物、又は上記表示装置スペーサー用感光性エレメントを用いて形成した表示装置スペーサーに関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の表示装置スペーサー用感光性樹脂組成物は、表示装置表示装置用のスペーサーとして用いられ、塑性変形に起因する表示ムラの抑制と、硬度あるいは機械的強度向上に伴う密着性低下に起因する表示ムラの抑制とを両立でき、これによって表示ムラのない良好な表示品質で、かつ歩留り、作業性向上、低コスト化に効果がある表示装置スペーサー及び表示装置を製造することができる。また、本発明の表示装置スペーサー用感光性エレメントは、前記の効果を達成するために好適であり、これによって作業性に優れ、かつコスト低減に寄与し得る表示装置スペーサー及び表示装置を製造できるものである。
また、本発明の液晶スペーサー用感光性樹脂組成物は、液晶表示装置用のスペーサーとして用いられ、塑性変形に起因する表示ムラの抑制と、硬度あるいは機械的強度向上に伴う密着性低下に起因する表示ムラの抑制とを両立でき、これによって表示ムラのない良好な表示品質で、かつ歩留り、作業性向上、低コスト化に効果がある液晶スペーサー及び液晶表示装置を製造することができる。また、本発明の液晶スペーサー用感光性エレメントは、前記の効果を達成するために好適であり、これによって作業性に優れ、かつコスト低減に寄与し得る液晶スペーサー及び液晶表示装置を製造できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の表示装置スペーサー用感光性樹脂組成物及び表示装置スペーサー用感光性エレメントは、例えば、液晶表示装置、エレクトロクロミックディスプレイや電子ペーパー等、対向する基板間に流動性を有する物質の層を構成してなる表示装置等のスペーサー用途として好適に用いることができる。
【0009】
本発明の表示装置スペーサー用感光性樹脂組成物は、特に、対向させて配設された基板間に液晶層を有する液晶表示装置に好ましく用いられる。以下、本発明の表示装置スペーサー用感光性フィルム及び表示装置スペーサー用感光性樹脂組成物について、液晶スペーサー用感光性フィルム及び液晶スペーサー用感光性樹脂組成物を例に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0010】
液晶スペーサーは、対向させて配設された基板間に液晶層を有する液晶表示装置において、該液晶層の厚さを一定に保つために配設されたスペーサーである。ここで、液晶層の厚さは、その絶対値が使用温度で変動するため、液晶層の厚さを一定に保つということとは、ある温度で設計された液晶層の厚さが、その温度において液晶表示装置画面内で所定の厚さに保たれていることを意味する。
【0011】
本発明の液晶スペーサー用感光性樹脂組成物は、(a)バインダポリマー、(b)1分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する光重合性不飽和化合物、(c)活性光線により遊離ラジカルを生成する光重合開始剤、(d)1分子中に少なくとも1個の加水分解性基含有シリル基を有するシリル基含有有機化合物を含むものであって、(d)成分の含有量が、(a)成分及び(b)成分、あるいは後述する(a’)成分及び(b)成分の総量100重量部に対して0.01〜30重量部であることが好ましく、1〜25重量部とすることがより好ましく、2〜20重量部とすることが特に好ましく、3〜15重量部とすることが極めて好ましい。この使用量が0.1重量部未満では、フォトリソグラフィー工程における密着性向上効果を十分に発現できなくなる傾向があり、30重量部を超えると、感光性樹脂組成物とした場合の保存安定性が低下する傾向がある。
【0012】
本発明における(a)バインダポリマーとしては、特に制限はなく、例えば、ビニル共重合体が挙げられ、ビニル共重合体に用いられるビニル単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−プロピル、アクリル酸iso−プロピル、メタクリル酸iso−プロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso−ブチル、メタアクリル酸iso−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、アクリル酸ペンチル、メタクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、メタクリル酸ヘプチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、メタクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、メタクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸テトラデシル、メタクリル酸テトラデシル、アクリル酸ヘキサデシル、メタクリル酸ヘキサデシル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、アクリル酸エイコシル、メタクリル酸エイコシル、アクリル酸ドコシル、メタクリル酸ドコシル、アクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロペンチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸シクロヘプチル、メタクリル酸シクロヘプチル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸メトキシエチル、アクリル酸メトキシジエチレングリコール、メタクリル酸メトキシジエチレングリコール、アクリル酸メトキシジプロピレングリコール、メタクリル酸メトキシジプロピレングリコール、アクリル酸メトキシトリエチレングリコール、メタクリル酸メトキシトリエチレングリコール、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノプロピル、メタクリル酸ジメチルアミノプロピル、アクリル酸2−クロロエチル、メタクリル酸2−クロロエチル、アクリル酸2−フルオロエチル、メタクリル酸2−フルオロエチル、アクリル酸2−シアノエチル、メタクリル酸2−シアノエチル、スチレン、α−メチルスチレン、シクロヘキシルマレイミド、アクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、ビニルトルエン、塩化ビニル、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0013】
また、本発明における(a)バインダポリマーとしては、エチレン性不飽和基を有するビニル共重合体を使用することもできる。エチレン性不飽和基を有するビニル共重合体として、例えば、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、イソシアネート基、オキシラン環、酸無水物等の官能基を有するビニル共重合体に、少なくとも1個のエチレン性不飽和基と、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、イソシアネート基、オキシラン環、酸無水物等の1個の官能基を有する化合物を反応させて得られる、側鎖にエチレン性不飽和基を有するラジカル重合性共重合体等が挙げられる。
【0014】
前記カルボキシル基、水酸基、アミノ基、イソシアネート基、オキシラン環、酸無水物等の官能基を有するビニル共重合体の製造に用いられるビニル単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ケイ皮酸、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド、イソシアン酸エチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、無水マレイン酸等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用される。
【0015】
このような官能基を有するビニル共重合体の製造には必要に応じ、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、イソシアネート基、オキシラン環、酸無水物等の官能基を有するビニル単量体以外の前記ビニル単量体を共重合させることができ、これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0016】
官能基を有するビニル共重合体に反応させる、少なくとも1個のエチレン性不飽和基と、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、イソシアネート基、オキシラン環、酸無水物等の1個の官能基を有する化合物としては、前述のビニル単量体と同様の化合物が挙げられ、これらは、単独で又は2種類上を組み合わせて使用することができる。
【0017】
また、側鎖にエチレン性不飽和基を有するラジカル重合性共重合体のエチレン性不飽和基濃度は、1×10−4〜6×10−3モル/gとすることが好ましく、2×10−4〜5×10−3モル/gとすることがより好ましく、3×10−4〜4×10−3モル/gとすることが特に好ましい。このエチレン性不飽和基濃度が1×10−4モル/g未満では、液晶スペーサーとした場合に、表示品質確保のための硬度向上効果が十分に得られない傾向があり、6×10−3モル/gを超えると、側鎖にエチレン性不飽和基を有するラジカル重合性共重合体を製造する際にゲル化を起こす傾向がある。
【0018】
本発明における(a)バインダポリマーの重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定し、標準ポリスチレン換算した値)は、耐熱性、塗布性、後述する液晶スペーサー用感光性エレメントとした場合のフィルム性(フィルム状の形態を保持する特性)、溶媒への溶解性及び後述する現像工程における現像液への溶解性等の観点から、1,000〜300,000とすることが好ましく、5,000〜150,000とすることがより好ましい。
【0019】
本発明における(a)バインダポリマーは、後述の(III)現像により感光性樹脂組成物層を選択的に除去してパターンを形成する工程において、公知の各種現像液により現像可能となるように酸価を規定することができる。
【0020】
例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、トリエタノールアミン等のアルカリ水溶液を用いて現像する場合には、酸価を50〜260mgKOH/gとすることが好ましい。この酸価が、50mgKOH/g未満では、現像が困難となる傾向があり、260mgKOH/gを超えると、耐現像液性(現像により除去されずにパターンとなる部分が、現像液によって侵されない性質)が低下する傾向がある。
また、水又はアルカリ水溶液と1種以上の界面活性剤とからなるアルカリ水溶液を用いて現像する場合には、酸価を、16〜260mgKOH/gとすることが好ましい。この酸価が、16mgKOH/g未満では、現像が困難となる傾向があり、260mgKOH/gを超えると、耐現像液性が低下する傾向がある。
【0021】
また、本発明においては、(a)バインダポリマーとして、(a’)水酸基を有するバインダポリマーを用いることができる。(a’)水酸基を有するバインダポリマーは、特に制限はなく、例えば、水酸基を有するビニル共重合体が挙げられ、水酸基を有するビニル共重合体を得るための共重合成分として、水酸基を有するビニル単量体を用いることができる。共重合成分、すなわち、バインダポリマーを得るために用いる全単量体中の水酸基を有するビニル単量体の重量百分率を0.1〜50%とすることが、スペーサーとした場合の基板上における密着力向上の観点から好ましく、1〜40%とすることがより好ましく、3〜30%とすることがさらに好ましい。水酸基を有するビニル単量体の重量百分率が0.1重量%未満の場合は、スペーサーとした場合の基板上における密着力向上効果を得ることが困難であり、50重量%を超える場合は、得られるバインダポリマーの粘度が高く、また、極性の低い溶剤に対しては、得られるバインダポリマーが白濁する傾向がある。
【0022】
水酸基を有するビニル単量体としては、前述の(a)バインダポリマーに使用される水酸基を有するビニル単量体に加えて、特に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、パラヒドロキシスチレン等の水酸基を有するビニル単量体が好ましいものとして挙げられる。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
また、水酸基を有するビニル単量体と共に用いられる単量体としては、前述の(a)バインダポリマーに使用される水酸基を有しないビニル単量体が挙げられ、これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
本発明における(b)少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する光重合性不飽和化合物としては、例えば、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、2,2−ビス(4−(ジ(メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ノニルフェニルジオキシレン(メタ)アクリレート、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシエチル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート等が挙げられる。
【0025】
上記多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、エチレン基の数が2〜14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンテトラエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンペンタエトキシトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート(ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート)、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0026】
上記α,β−不飽和カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸等が拳げられる。
【0027】
上記2,2−ビス(4−(ジ(メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−(ジ(メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(ジ(メタ)アクリロキシトリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(ジ(メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(ジ(メタ)アクリロキシデカエトキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。
【0028】
上記グリシジル基含有化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ)フェニル)プロパン等が拳げられる。
【0029】
上記ウレタンモノマーとしては、例えば、β位にOH基を有する(メタ)アクリルモノマーとイソホロンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等との付加反応物、トリス((メタ)アクリロキシテトラエチレングリコールイソシアネート)ヘキサメチレンイソシアヌレート、エチレンオキシド変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド又はプロピレンオキシド変性ウレタンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル等が挙げられる。
これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
本発明における(c)活性光線により遊離ラジカルを生成する光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン(イルガキュア−369、チバスペシャリティーケミカルズ株式会社商品名)、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン(イルガキュア−907、チバスペシャリティーケミカルズ株式会社商品名)等の芳香族ケトン、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン等のキノン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物などが挙げられる。また、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体において、2つの2,4,5−トリアリールイミダゾールに置換した置換基は同一でも相違していてもよい。また、ジエチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸の組み合わせのように、チオキサントン系化合物と3級アミン化合物とを組み合わせてもよい。また、フォトリソグラフィー工程における密着性及び感度の観点から、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体が好ましく、液晶スペーサーとした場合の可視光線透過率の観点から2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オンがより好ましい。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0031】
本発明における(d)1分子中に少なくとも1個の加水分解性基含有シリル基を有するシリル基含有有機化合物において、加水分解性基含有シリル基としてはアルコキシシリル基が好ましく、トリアルコキシシリル基がより好ましい。(d)1分子中に少なくとも1個の加水分解性基含有シリル基を有するシリル基含有有機化合物としては、例えば、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、感光性樹脂組成物とした場合の保存安定性の観点から、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0032】
本発明における(a)バインダポリマーの使用量は、(a)及び(b)成分の総量100重量部に対して、10〜80重量部とすることが好ましく、20〜75重量部とすることがより好ましく、25〜73重量部とすることが特に好ましく、30〜70重量部とすることが極めて好ましい。この使用量が10重量部未満では、塗布性あるいは後述する液晶スペーサー用感光性エレメントとした場合のフィルム性が低下する傾向があり、80重量部を超えると、光硬化性あるいは耐熱性が低下する傾向がある。
【0033】
また、本発明における(a’)水酸基を有する化合物を構成単位とした共重合成分を含むバインダポリマーの使用量は、(a)バインダポリマーの場合と同様の観点から、(a’)及び(b)成分の総量100重量部に対して、10〜80重量部とすることが好ましく、20〜75重量部とすることがより好ましく、25〜73重量部とすることが特に好ましく、30〜70重量部とすることが極めて好ましい。
【0034】
本発明における(b)少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する光重合性不飽和化合物の使用量は、(a)及び(b)成分あるいは(a’)及び(b)成分の総量100重量部に対して、10〜80重量部とすることが好ましく、20〜75重量部とすることがより好ましく、25〜73重量部とすることが特に好ましく、30〜70重量部とすることが極めて好ましい。この使用量が10重量部未満では、光硬化性あるいは耐熱性が低下する傾向があり、80重量部を超えると、塗膜性あるいは液晶スペーサー用感光性エレメントとした場合のフィルム性が低下する傾向がある。
【0035】
本発明における(c)活性光線により遊離ラジカルを生成する光重合開始剤の使用量は、(a)及び(b)成分あるいは(a’)及び(b)成分の総量100重量部に対して、0.05〜20重量部とすることが好ましく、0.1〜15重量部とすることがより好ましく、0.15〜10重量部とすることが特に好ましい。この使用量が0.05重量部未満では、光硬化が不十分となる傾向があり、20重量部を超えると、後述する(II)感光性樹脂組成物層に活性光線を像的に照射する工程において、感光性樹脂組成物層の活性光線照射表面での活性光線の吸収が増大して、内部の光硬化が不十分となる傾向がある。
【0036】
また、本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて、レベリング剤、可塑剤、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、酸化防止剤、香料、熱架橋剤、重合禁止剤等を(a)及び(b)成分あるいは(a’)及び(b)成分の総量100重量部に対して各々0.01〜20重量部程度含有することができる。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0037】
さらに、本発明における感光性樹脂組成物は、必要に応じて溶媒に溶解又は分散して用いることができる。前記溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、酢酸エチル、乳酸エチル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、クロロホルム、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。これらは単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0038】
本発明の液晶スペーサー用感光性エレメントは、支持体フィルム上に、前記液晶スペーサー用感光性樹脂組成物の層を有してなる。
本発明の液晶スペーサー用感光性エレメントは、前記感光性樹脂組成物層を構成する各成分を溶媒に均一に溶解した溶液又は分散した分散液を、支持体フィルム上に塗布、乾燥し、液晶スペーサー用感光性樹脂組成物層を形成することにより得られる。溶媒としては、上述の溶媒を用いることができる
【0039】
本発明における支持体フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエーテルサルフォン等からなる厚さ5〜100μm程度のフィルムが挙げられる。
【0040】
本発明における感光性樹脂組成物層を前記支持体フィルムに形成する方法としては、公知の塗布方法を用いることができ、例えば、ドクターブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ロールコーティング法、スクリーンコーティング法、スピナーコーティング法、インクジェットコーティング法、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、グラビアコーティング法、カーテンコーティング法、ダイコーティング法等が挙げられる。
【0041】
乾燥温度は、60〜130℃とすることが好ましく、乾燥時間は、1分〜1時間とすることが好ましい。
【0042】
本発明における感光性樹脂組成物層の厚さは、液晶表示装置とした場合の電気的特性あるいは液晶の配向特性を考慮して、0.1〜20μmとすることが好ましく、0.3〜15μmとすることがより好ましく、0.5〜10μmとすることが特に好ましい。
【0043】
また、本発明における感光性樹脂組成物層の粘度は、後述するロール状の液晶スペーサー用感光性エレメントとした場合に、感光性エレメントの端面から感光性樹脂組成物がしみ出すことを1カ月以上防止する点及び感光性エレメントを切断する際に、感光性樹脂組成物の破片が基板に付着して引き起こされる露光不良や現像残り等を防止する点から、30℃において、15〜100MPa・sであることが好ましく、20〜90MPa・sであることがより好ましく、25〜80MPa・sであることが特に好ましい。
【0044】
なお、粘度は、直径7mm、厚さ2mmの該感光性樹脂組成物層の厚さ方向に、30℃及び80℃で1.96×10−2Nの荷重を加えて厚さの変化速度を測定し、この変化速度からニュートン流体を仮定して粘度に換算した値である。
【0045】
本発明の液晶スペーサー用感光性樹脂組成物は、(I)基板に形成された透明電極上に感光性樹脂組成物層を形成する工程、(II)感光性樹脂組成物層に活性光線を像的に照射する工程、(III)現像により感光性樹脂組成物層を選択的に除去してパターンを形成する工程、(IV)パターンが形成された感光性樹脂組成物層を加熱する工程、及び(V)パターンが形成された感光性樹脂組成物層を超音波洗浄する工程により形成される表示装置スペーサー用に使用される感光性樹脂組成物であって、当該表示装置スペーサー用感光性樹脂組成物を用いて形成した円柱状スペーサーの数的残存率が95%以上となる時の該円柱状スペーサーの直径が、基板に接している面において3μm以上となる密着力を有することが好ましい。
【0046】
また、本発明の液晶スペーサー用感光性樹脂組成物は、(I)基板上に感光性樹脂組成物層を形成する工程、(II)感光性樹脂組成物層に活性光線を像的に照射する工程、(III)現像により感光性樹脂組成物層を選択的に除去してパターンを形成する工程、(IV)パターンが形成された感光性樹脂組成物層を加熱する工程、及び(V)パターンが形成された感光性樹脂組成物層を超音波洗浄する工程により形成される表示装置スペーサー用に使用される感光性樹脂組成物であって、当該表示装置スペーサー用感光性樹脂組成物を用いて形成した円柱状スペーサーの数的残存率が95%以上となる時の該円柱状スペーサーの直径の下限値が、基板に接している面において10μm未満となる密着力を有することが好ましい。より好ましくは8μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。
【0047】
以下、本発明の液晶スペーサー用感光性樹脂組成物あるいは液晶スペーサー用感光性エレメントを用いて、液晶表示装置における液晶スペーサーを形成する方法の一例を説明する。
【0048】
〔(I)基板上に、液晶スペーサー用感光性樹脂組成物層を形成する工程〕
本発明で使用される基板は、特に制限はなく、例えば、セラミック板、プラスチック板、ガラス板等が挙げられる。この基板上には、絶縁層、ブラックマトリックスの層、カラーフィルターの層、ITO等の透明電極の層等の任意の層が設けられてもよい。したがって、感光性樹脂組成物層は、基板上に直接設けられてもよく、また、基板上に任意の層を介して設けられてもよい。
【0049】
本発明において、基板上に、液晶スペーサー用感光性樹脂組成物層を形成する方法としては、本発明の液晶スペーサー用感光性樹脂組成物を構成する各成分を溶解可能な溶剤に溶解させることにより均一に溶解した溶液とするか、又は、各成分を分散可能な溶剤に混合させることにより均一に分散した分散液とし、前記基板上に、塗布、乾燥する方法等が挙げられる。
【0050】
本発明における塗布方法としては、公知の塗布方法を用いることができ、例えば、ドクターブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ロールコーティング法、スクリーンコーティング法、スピナーコーティング法、インクジェットコーティング法、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、グラビアコーティング法、カーテンコーティング法、ダイコーティング法等が挙げられる。
【0051】
乾燥温度は、60〜130℃とすることが好ましく、乾燥時間は、1分〜1時間とすることが好ましい。
【0052】
本発明における感光性樹脂組成物層の厚さは、液晶表示装置とした場合の電気的特性及び液晶の配向特性を考慮して、0.1〜20μmとすることが好ましく、0.3〜15μmとすることがより好ましく、0.5〜10μmとすることが特に好ましい。
【0053】
このようにして、本発明の液晶スペーサー用感光性樹脂組成物層を基板上に積層することができる。
【0054】
また、本発明において、基板上に液晶スペーサー用感光性樹脂組成物の層を形成するための他の方法としては、基板上に、感光性樹脂組成物の層が接するように液晶スペーサー用感光性エレメントを積層する工程等が挙げられる。
【0055】
液晶スペーサー用感光性エレメントは、後述するように、支持体フィルム上に、前記液晶スペーサー用感光性樹脂組成物の層を有してなる。また、本発明の液晶スペーサー用感光性エレメントは、感光性樹脂組成物層の上に、さらにカバーフィルムが積層されていてもよい。
【0056】
本発明において、基板上に、液晶スペーサー用感光性樹脂組成物の層が接するように液晶スペーサー用感光性エレメントを積層する方法としては、感光性樹脂組成物層にカバーフィルムが接して存在しているときは、そのカバーフィルムを除去後、基板上に感光性樹脂組成物層が接するように、圧着ロールで圧着させること等により行うことができる。
【0057】
圧着ロールは、加熱圧着できるように加熱手段を備えたものであってもよく、加熱圧着する場合の加熱温度は、10〜180℃とすることが好ましく、20〜160℃とすることがより好ましく、30〜150℃とすることが特に好ましい。この加熱温度が、10℃未満では、感光性樹脂組成物層と基板との密着性が低下する傾向があり、180℃を超えると、感光性樹脂組成物層の構成成分が熱硬化あるいは熱分解する傾向がある。
【0058】
また、加熱圧着時の圧着圧力は、線圧で50〜1×10N/mとすることが好ましく、2.5×10〜5×10N/mとすることがより好ましく、5×10〜4×10N/mとすることが特に好ましい。この圧着圧力が、50N/m未満では、感光性樹脂組成物層と基板との密着性が低下する傾向があり、1×10N/mを超えると、基板が破壊される傾向がある。
【0059】
液晶スペーサー用感光性エレメントを前記のように加熱すれば、基板を予熱処理することは必要ではないが、感光性樹脂組成物層と基板との密着性をさらに向上させる点から、基板を予熱処理することが好ましい。この時の予熱温度は、30〜180℃とすることが好ましい。
【0060】
このようにして、本発明の液晶スペーサー用感光性エレメントの感光性樹脂組成物層を基板上に積層することができる。
【0061】
〔(II)感光性樹脂組成物層に活性光線を像的に照射する工程〕
本発明において、感光性樹脂組成物層に活性光線を像的に照射する方法としては、基板上に積層された前記感光性樹脂組成物層にフォトマスクを介して、公知の活性光線を照射する方法等が挙げられる。この時、液晶スペーサー用感光性エレメントを使用して、基板上に液晶スペーサー用感光性樹脂組成物層を形成した場合には、この感光性樹脂組成物層上の支持体フィルムを除去した後に、活性光線を像的に照射することもできるが、前記支持体フィルムが存在する場合には、この支持体フィルムも介して活性光線が照射されることとなる。
【0062】
また、本発明における活性光線としては、公知の活性光源が使用でき、例えば、カーボンアーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等が挙げられ、紫外線を有効に放射するものであれば特に制限されない。
【0063】
この時の活性光線の照射量は、通常、10〜1×10mJ/cm(i線(波長365nm)における測定値)であり、照射の際に、加熱を伴うこともできる。この活性光線照射量が、10mJ/cm未満では、硬化が不十分となる傾向があり、1×10mJ/cmを超えると、感光性樹脂層が変色する傾向がある。
【0064】
〔(III)現像により感光性樹脂組成物層を選択的に除去してパターンを形成する工程〕 本発明における現像方法としては、アルカリ水溶液、水系現像液、有機溶剤等の公知の現像液を用いて、スプレー、シャワー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法により現像を行い、不要部を除去する方法等が挙げられ、中でも、環境、安全性の観点からアルカリ水溶液を用いることが好ましい。
【0065】
アルカリ水溶液の塩基としては、水酸化アルカリ(リチウム、ナトリウム又はカリウムの水酸化物等)、炭酸アルカリ(リチウム、ナトリウム又はカリウムの炭酸塩若しくは重炭酸塩等)、アルカリ金属リン酸塩(リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等)、アルカリ金属ピロリン酸塩(ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等)、水酸化テトラメチルアンモニウム、トリエタノールアミンなどが挙げられ、中でも、水酸化テトラメチルアンモニウム等が好ましいものとして挙げられる。アルカリ水溶液の濃度は、0.1〜5重量%であることが好ましい。
【0066】
現像温度及び時間は、本発明の感光性樹脂組成物層の現像性に合わせて調整することができる。
【0067】
また、アルカリ水溶液中には、界面活性剤、消泡剤、現像を促進させるための少量の有機溶剤等を混入させることができる。
【0068】
また、現像後、光硬化後の感光性樹脂組成物層に残存したアルカリ水溶液の塩基を、有機酸、無機酸又はこれらの酸水溶液を用いて、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知方法により酸処理(中和処理)することができる。
【0069】
さらに、酸処理(中和処理)の後、水洗する工程を行うこともできる。
【0070】
〔(IV)パターンが形成された感光性樹脂組成物層を加熱する工程〕
本発明において、パターンを形成した感光性樹脂組成物層を加熱する方法としては、熱風放射、赤外線照射加熱等の公知の方法が挙げられ、基板上にパターンが形成された感光性樹脂組成物層が有効に加熱される方法であれば特に制限されない。
【0071】
加熱時の温度は、140〜300℃とすることが好ましく、150〜290℃とすることがより好ましく、160〜280℃とすることが特に好ましい。この加熱温度が、140℃未満では、熱硬化の効果が不十分となる傾向があり、300℃を超えると、感光性樹脂組成物層の構成成分が熱分解する傾向がある。
【0072】
〔(V)パターンが形成された感光性樹脂組成物層を超音波洗浄する工程〕
本発明において、パターンが形成された感光性樹脂組成物層を超音波洗浄する方法としては、例えば、東京超音波技研株式会社製の超音波洗浄機(PUC−0851:高周波出力 28KHz、3.6KW)等の市販の超音波洗浄機を使用して純水中で洗浄する方法が挙げられ、基板に形成された透明電極及びパターンが形成された感光性樹脂組成物層が有効に洗浄される方法であれば特に制限されない。
【0073】
また、本発明における超音波洗浄時の温度は、20〜30℃が好ましく、洗浄時間は、5〜10分間が好ましい。
【0074】
本発明の液晶スペーサー用感光性樹脂組成物は、以上に挙げた工程により、液晶表示装置に好適な液晶スペーサーを形成することが可能である。本発明の液晶スペーサー用感光性樹脂組成物は、(V)パターンが形成された感光性樹脂組成物層を超音波洗浄する工程を終えた後に、基板上の一定領域内に配設された円柱状スペーサーの数的残存率が95%以上となる時の該円柱状スペーサーの直径が、基板に接している面において3μm以上となる密着力を有する。
【0075】
以下、基板上の一定領域内に配設された円柱状スペーサーの数的残存率を測定する方法及びその数的残存率が95%以上となる時の基板に接している面における円柱状スペーサーの直径を測定する方法を詳細に説明する。
【0076】
本発明において、基板上の一定領域内に配設された円柱状スペーサーの数的残存率を測定するためには、前述の(II)工程において、フォトマスクとして、光透過部の直径が1〜20μmの範囲で、直径を1μm間隔で変化させたフォトマスクを各々準備して用いる。それぞれのフォトマスクは、50mm×50mmの領域内で、フォトマスク面上の垂直方向及び水平方向に100μmピッチで並んだ、同一の直径を有する円形の光透過部を有する。
【0077】
このようなフォトマスクを使用して、(II)工程を行い、次いで(III)〜(V)工程を行った後、スペーサーが形成された領域内で、10mm×10mmの領域を無作為に選択し、光学顕微鏡を使用して選択された領域を観察し(100倍程度の倍率で拡大することが好ましい)、スペーサーの有無を確認する。具体的には、剥がれずに形成されているスペーサーの個数を数えて、その数的残存率を算出する。例えば、10mm×10mmの領域内で全てのスペーサーが残存した場合のスペーサー個数は10,000個であるため、実際に残存したスペーサーが9,700個であった場合には、数的残存率が97%となる。
【0078】
また、本発明において、数的残存率が95%以上となる時の基板に接している面における円柱状スペーサーの直径を測定する方法としては、例えば、原子間力顕微鏡を使用する方法等が挙げられ、原子間力顕微鏡のプローブを走査することによって、スペーサーの形状を解析し、基板の基板に接している面におけるスペーサーの直径を測定することができる。
【0079】
本発明の液晶スペーサー用感光性エレメントは、感光性樹脂組成物層の上に、さらにカバーフィルムが積層されていてもよい。
【0080】
カバーフィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等からなる厚さ5〜100μm程度のフィルムが挙げられる。
【0081】
このようにして得られる液晶スペーサー用感光性エレメントは、ロール状に巻いて保管し、あるいは使用できる。
【実施例】
【0082】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0083】
製造例1
〔バインダポリマー溶液(p−1)の作製〕
撹拌機、還流冷却機、不活性ガス導入口及び温度計を備えたフラスコに、表1に示した(1)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で80℃に昇温し、反応温度を80℃±2℃に保ちながら、表1に示した(2)を4時間かけて均一に滴下した。
(2)の滴下後、80℃±2℃で6時間撹拌を続け、重量平均分子量が約30,000のバインダポリマーの溶液(固形分35重量%)(p−1)を得た。
【0084】
【表1】

【0085】
製造例2
〔水酸基を有する化合物を構成単位とした共重合成分を含むバインダポリマー溶液(p−2)の作製〕
撹拌機、還流冷却機、不活性ガス導入口及び温度計を備えたフラスコに、表2に示した(1)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で80℃に昇温し、反応温度を80℃±2℃に保ちながら、表2に示した(2)を4時間かけて均一に滴下した。
(2)の滴下後、80℃±2℃で6時間撹拌を続け、重量平均分子量が約30,000のバインダポリマーの溶液(固形分35重量%)(p−2)を得た。
【0086】
【表2】

【0087】
製造例3
〔バインダポリマー溶液(p−3)の作製〕
撹拌機、還流冷却機、不活性ガス導入口及び温度計を備えたフラスコに、表3に示した(1)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で80℃に昇温し、反応温度を80℃±2℃に保ちながら、表3に示した(2)を4時間かけて均一に滴下した。
(2)の滴下後、80℃±2℃で6時間撹拌を続け、重量平均分子量が約25,000のプレポリマーの溶液(固形分35重量%)を得た。
【0088】
【表3】

【0089】
さらに、撹拌機、還流冷却機、不活性ガス導入口及び温度計を備えたフラスコに、ここで得られたプレポリマー溶液を仕込み、窒素ガス雰囲気下で70℃に昇温して、反応温度を70℃±2℃に保ちながら、ここにイソシアン酸エチルメタクリレート20重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート35重量部及びジブチル錫ジラウリレート0.1重量部との混合物を2時間かけて均一に滴下した。
滴下後、70℃±2℃で2時間撹拌を続け、重量平均分子量が約26,000の光重合性不飽和基を有するバインダポリマーの溶液(固形分35重量%)(p−3)を得た。
【0090】
実施例1
〔液晶スペーサー用感光性樹脂組成物溶液(V−1)の作製〕
表4に示した材料を、撹拌機を用いて15分間混合し、液晶スペーサー用感光性樹脂組成物溶液(V−1)を作製した。
【0091】
【表4】

【0092】
〔液晶表示装置における液晶スペーサーの製造〕
得られた感光性樹脂組成物溶液(V−1)を厚さ1mmのITO膜が形成されたガラス基板上に塗布し、スピンコーターを使用して、1500回転/分で回転塗布して、ホットプレート上で90℃、5分間乾燥して、溶剤を除去し、膜厚4.5μmの感光性樹脂組成物層を形成した。
次いで、得られた感光性樹脂組成物層に、50mm×50mmの領域内で、光透過部がフォトマスク面上で垂直方向及び水平方向に100μmピッチで同一の直径を有する円形のパターンとなっているフォトマスクを用い、平行光線露光機(オーク製作所株式会社製、EXM1201)を使用して、フォトマスクと感光性樹脂組成物層表面との間に150μmのギャップを設けて、フォトマスク面垂直上方より露光量5×10J/mで(i線(波長365nm)における測定値)、紫外線を像的に照射した。
さらに、光透過部の直径のみを1〜10μmの範囲において、1μm間隔で変えたフォトマスクを各種使用して、上記のような操作を行った。
次いで、0.5重量%の界面活性剤を含有した0.5重量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を用いて、30℃で40秒間スプレー現像して、感光性樹脂組成物層を選択的に除去して円柱状のパターンを形成した。
次いで、パターンを形成した感光性樹脂組成物層を230℃で30分間、ボックス型乾燥機で加熱した後、東京超音波技研株式会社製の超音波洗浄機(PUC−0851:高周波出力 28KHz、3.6KW)を使用して純水中で超音波洗浄し、液晶スペーサーのパターンを得た。
得られた液晶スペーサーのパターンにおいて、パターンが形成された基板上の10mm×10mmの領域を無作為に選択し、光学顕微鏡を使用して選択された領域を100倍の倍率で拡大して観察し、残存している液晶スペーサーの個数を数えた。
さらに、得られた液晶スペーサーの形状をセイコーインスツルメンツ株式会社製の走査型プローブ顕微鏡(原子間力顕微鏡)SPI3800N/SPA500を使用して解析し、基板の透明電極に接している面における液晶スペーサーの直径を測定した。
各種フォトマスクを使用した場合の残存している液晶スペーサーの個数及び液晶スペーサーの直径を表8に示した。
表8から明らかなように、本発明の感光性樹脂組成物を用いて得られた液晶スペーサーは、数的残存率が95%以上となる時の液晶スペーサーの直径が、透明電極に接している面において3μm以上となる密着力を有することを確認した。
【0093】
実施例2
〔液晶スペーサー用感光性エレメント(i)の作製〕
支持体フィルムとして、ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、実施例1で得られた液晶スペーサー用感光性樹脂組成物溶液(V−1)を支持体フィルム上にコンマコーターを用いて均一に塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で1分間乾燥して溶剤を除去し、感光性樹脂組成物層を形成した。得られた感光性樹脂組成物層の厚さは4μmであった。
次いで、得られた感光性樹脂組成物層の上に、さらに、25μmの厚さのポリエチレンフィルムを、カバーフィルムとして張り合わせて、液晶スペーサー用感光性エレメント(i)を作製した。
【0094】
〔液晶表示装置における液晶スペーサーの製造〕
得られた液晶スペーサー用感光性エレメント(i)のポリエチレンフィルムをはがしながら、透明電極が形成された厚さ1mmのITO膜が形成されたガラス基板上に、感光性樹脂組成物層が接するようにラミネータ(日立化成工業株式会社製、商品名HLM−3000型)を用いて、ロール温度120℃、基板送り速度1m/分、圧着圧力(シリンダ圧力)4×10Pa(厚さが1mm、縦10cm×横10cmの基板を用いたため、この時の線圧は9.8×10N/m)の条件でラミネートして、ガラス基板上に、感光性樹脂組成物層及び支持体フィルムが積層された基板を作製した。
次いで、実施例1と同様の方法で紫外線の像的照射を行い支持体フィルムを剥離し、実施例1と同様の方法で現像、加熱、超音波洗浄を行って、液晶スペーサーのパターンを得た。
さらに、実施例1と同様の方法で各種フォトマスクを使用した場合の残存している液晶スペーサーの個数及び液晶スペーサーの直径を測定した。その結果を表8に示した。
表8から明らかなように、本発明の感光性樹脂組成物を用いて得られた液晶スペーサーは、数的残存率が95%以上となる時の液晶スペーサーの直径が、透明電極に接している面において3μm以上となる密着力を有することを確認した。
【0095】
実施例3
〔液晶スペーサー用感光性樹脂組成物溶液(V−2)の作製〕
表5に示した材料を、撹拌機を用いて15分間混合し、液晶スペーサー用感光性樹脂組成物溶液(V−2)を作製した。
【0096】
【表5】

【0097】
〔液晶スペーサー用感光性エレメント(ii)の作製〕
支持体フィルムとして、ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、得られた液晶スペーサー用感光性樹脂組成物溶液(V−2)を支持体フィルム上にコンマコーターを用いて均一に塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で3分間乾燥して溶剤を除去し、感光性樹脂組成物層を形成した。得られた感光性樹脂組成物層の厚さは4μmであった。
次いで、得られた感光性樹脂組成物層の上に、さらに、25μmの厚さのポリエチレンフィルムを、カバーフィルムとして張り合わせて、液晶スペーサー用感光性エレメント(ii)を作製した。
【0098】
〔液晶表示装置における液晶スペーサーの製造〕
実施例2における液晶スペーサー用感光性エレメント(i)をここで得られた液晶スペーサー用感光性エレメント(ii)に代えた以外は、実施例2と同様にして、液晶スペーサーのパターンを形成した。
さらに、実施例1と同様の方法で各種フォトマスクを使用した場合の残存している液晶スペーサーの個数及び液晶スペーサーの直径を測定した。その結果を表8に示した。
表8から明らかなように、本発明の感光性樹脂組成物を用いて得られた液晶スペーサーは、数的残存率が95%以上となる時の液晶スペーサーの直径が、透明電極に接している面において3μm以上となる密着力を有することを確認した。
【0099】
実施例4
〔液晶スペーサー用感光性樹脂組成物溶液(V−3)の作製〕
表6に示した材料を、撹拌機を用いて15分間混合し、液晶スペーサー用感光性樹脂組成物溶液(V−3)を作製した。
【0100】
【表6】

【0101】
〔液晶スペーサー用感光性エレメント(iii)の作製〕
支持体フィルムとして、ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、得られた液晶スペーサー用感光性樹脂組成物溶液(V−3)を支持体フィルム上にコンマコーターを用いて均一に塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で3分間乾燥して溶剤を除去し、感光性樹脂組成物層を形成した。得られた感光性樹脂組成物層の厚さは4μmであった。
次いで、得られた感光性樹脂組成物層の上に、さらに、25μmの厚さのポリエチレンフィルムを、カバーフィルムとして張り合わせて、液晶スペーサー用感光性エレメント(iii)を作製した。
【0102】
〔液晶表示装置における液晶スペーサーの製造〕
実施例2における液晶スペーサー用感光性エレメント(i)をここで得られた液晶スペーサー用感光性エレメント(iii)に代えた以外は、実施例2と同様にして、液晶スペーサーのパターンを形成した。
さらに、実施例1と同様の方法で各種フォトマスクを使用した場合の残存している液晶スペーサーの個数及び液晶スペーサーの直径を測定した。その結果を表8に示した。
表8から明らかなように、本発明の感光性樹脂組成物を用いて得られた液晶スペーサーは、数的残存率が95%以上となる時の液晶スペーサーの直径が、透明電極に接している面において3μm以上となる密着力を有することを確認した。
【0103】
比較例1
〔比較感光性樹脂組成物溶液(C−1)の作製〕
表7に示した材料を、撹拌機を用いて15分間混合し、比較感光性樹脂組成物溶液(C−1)を作製した。
【0104】
【表7】

【0105】
〔液晶表示装置における液晶スペーサーの製造〕
実施例1における感光性樹脂組成物溶液(V−1)をここで得られた比較感光性樹脂組成物溶液(C−1)に代え、さらに実施例1において、パターンを形成した感光性樹脂組成物層を230℃で30分間、ボックス型乾燥機で加熱する工程を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、液晶スペーサーのパターンを形成した。
次いで、実施例1と同様の方法で各種フォトマスクを使用した場合の残存している液晶スペーサーの個数及び液晶スペーサーの直径を測定した。その結果を表8に示した。
表8から明らかなように、比較感光性樹脂組成物溶液(C−1)を用い、さらにパターンを形成した感光性樹脂組成物層を230℃で30分間、ボックス型乾燥機で加熱する工程を行わない場合には、数的残存率が95%以上となる時の液晶スペーサーの直径が、透明電極に接している面において10μm以上となる密着力しか得られないことを確認した。
【0106】
【表8】

【0107】
比較例1に示したように、(IV)パターンが形成された感光性樹脂組成物層を加熱する工程を行わない場合、(d)1分子中に少なくとも1個の加水分解性基含有シリル基を有するシリル基含有有機化合物を含まない場合、基板上の一定領域内に配設されたスペーサーの数的残存率が95%以上となる時のスペーサーの直径が、透明電極に接している面において3μm以上となる密着力を有さない。これに対して、本願発明の実施例1〜4では、スペーサーの数的残存率が95%以上となる時のスペーサーの直径が、透明電極に接している面において3μm以上となる密着力を有し、塑性変形に起因する表示ムラの抑制と、硬度あるいは機械的強度向上に伴う密着性低下に起因する表示ムラの抑制を両立でき、これによって表示ムラのない良好な表示品質で、かつ歩留り、作業性向上、低コスト化に効果がある液晶表示装置を製造できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)バインダポリマー、(b)1分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する光重合性不飽和化合物、(c)活性光線により遊離ラジカルを生成する光重合開始剤、(d)1分子中に少なくとも1個の加水分解性基含有シリル基を有するシリル基含有有機化合物を含み、(d)成分の含有量が、(a)及び(b)成分の総量100重量部に対して0.01〜30重量部であることを特徴とする表示装置スペーサー用感光性樹脂組成物。
【請求項2】
(a’)水酸基を有するバインダポリマー、(b)1分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する光重合性不飽和化合物、(c)活性光線により遊離ラジカルを生成する光重合開始剤、(d)1分子中に少なくとも1個の加水分解性基含有シリル基を有するシリル基含有有機化合物を含み、(a’)水酸基を有するバインダポリマーが、水酸基を有する化合物を0.1〜50重量%含む化合物を重合して得られるバインダポリマーであることを特徴とする表示装置スペーサー用感光性樹脂組成物。
【請求項3】
(I)基板上に感光性樹脂組成物層を形成する工程、(II)感光性樹脂組成物層に活性光線を像的に照射する工程、(III)現像により感光性樹脂組成物層を選択的に除去してパターンを形成する工程、(IV)パターンが形成された感光性樹脂組成物層を加熱する工程、及び(V)パターンが形成された感光性樹脂組成物層を超音波洗浄する工程により形成される表示装置スペーサー用に使用される感光性樹脂組成物であって、当該表示装置スペーサー用感光性樹脂組成物を用いて形成した円柱状スペーサーの数的残存率が95%以上となる時の該円柱状スペーサーの直径が、基板に接している面において3μm以上である請求項1又は2記載の表示装置スペーサー用感光性樹脂組成物。
【請求項4】
支持体フィルム上に、請求項1〜3いずれかに記載の表示装置スペーサー用感光性樹脂組成物を用いて形成した層を有する表示装置スペーサー用感光性エレメント。
【請求項5】
(a)バインダポリマー、(b)1分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する光重合性不飽和化合物、(c)活性光線により遊離ラジカルを生成する光重合開始剤、(d)1分子中に少なくとも1個の加水分解性基含有シリル基を有するシリル基含有有機化合物を含み、(d)成分の含有量が、(a)及び(b)成分の総量100重量部に対して0.01〜30重量部であることを特徴とする液晶スペーサー用感光性樹脂組成物。
【請求項6】
(a’)水酸基を有するバインダポリマー、(b)1分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する光重合性不飽和化合物、(c)活性光線により遊離ラジカルを生成する光重合開始剤、(d)1分子中に少なくとも1個の加水分解性基含有シリル基を有するシリル基含有有機化合物を含み、(a’)水酸基を有するバインダポリマーが、水酸基を有する化合物を0.1〜50重量%含む化合物を重合して得られるバインダポリマーであることを特徴とする液晶スペーサー用感光性樹脂組成物。
【請求項7】
(I)基板上に感光性樹脂組成物層を形成する工程、(II)感光性樹脂組成物層に活性光線を像的に照射する工程、(III)現像により感光性樹脂組成物層を選択的に除去してパターンを形成する工程、(IV)パターンが形成された感光性樹脂組成物層を加熱する工程、及び(V)パターンが形成された感光性樹脂組成物層を超音波洗浄する工程により形成される液晶スペーサー用に使用される感光性樹脂組成物であって、当該液晶スペーサー用感光性樹脂組成物を用いて形成した円柱状スペーサーの数的残存率が95%以上となる時の該円柱状スペーサーの直径が、基板に接している面において3μm以上である請求項5又は6記載の液晶スペーサー用感光性樹脂組成物。
【請求項8】
支持体フィルム上に、請求項5〜7いずれかに記載の液晶スペーサー用感光性樹脂組成物を用いて形成した層を有する液晶スペーサー用感光性エレメント。
【請求項9】
請求項1〜3いずれかに記載の表示装置スペーサー用感光性樹脂組成物、又は請求項4記載の表示装置スペーサー用感光性エレメントを用いて形成した表示装置スペーサー。


【公開番号】特開2006−342325(P2006−342325A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−78872(P2006−78872)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】