説明

表示装置及びその製造方法

【課題】表示装置及びその製造方法において、端子部分を小型化及び高密度化しつつ確実な接続を可能とすること。
【解決手段】透明電極からなる端子13bが形成された下基板11を有する表示パネル10Bにおいて、端子13bの上に端子剥離防止膜17を設ける。端子剥離防止膜17には、ワイヤーボンディングによる接続を行うための、直径数10μm程度の開口部17aを形成する。端子13bの開口部17a以外の部分で端子剥離防止膜17によって下基板11に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ペーパー等の表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今後、電力を供給しなくても表示の保持が可能で、表示内容を電気的に書き換え可能な電子ペーパーが急速に普及するものと予想されている。電子ペーパーは、電源を切断してもメモリー表示可能な超低消費電力と目に優しく疲れない表示とが要求され、紙のように薄い表示装置の実現を目指して研究が進められている。電子ペーパーの応用としては、電子ブック、電子新聞及び電子ポスター等が考えられる。
【0003】
電子ペーパーにフレキシブル性(柔軟性)が求められる場合には、樹脂からなるフィルム基板が用いられる。このフィルム基板には、駆動回路と接続するための端子が配置された端子領域と、表示セルが配置された表示領域とを備えている。通常、表示パネル側の端子には、駆動回路を搭載したフレキシブル基板の端子が直接圧着される。
【特許文献1】特開平10−10581号公報
【特許文献2】特開平06−73736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
今後、表示装置の更なる高精細化が進むものと予想され、これに伴って表示パネルの端子の小型化及び高密度化が要求される。
【0005】
しかし、表示パネルの端子を小型化及び高密度化すると、表示パネルの端子とフレキシブル基板の端子とを直接圧着することが困難となる。よって、表示装置及びその製造方法において、端子を小型化及び高密度化しつつ確実な接続を可能とすることが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一観点によれば、フレキシブル性を有するフィルム基板と、透明導電体により前記フィルム基板上に形成されて駆動回路に接続される端子と、前記フィルム基板上に形成され、前記端子を介して信号が与えられる表示セルと、少なくとも前記端子の上に形成され、前記端子の一部が露出する開口部を有する端子剥離防止膜と、を備えた表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
上記一観点では、透明導電体からなる端子が端子剥離防止膜によって覆われることで、端子がフィルム基板上に強固に固定される。この場合、端子と駆動回路とは、例えば端子剥離防止膜の開口部を介してボンディングワイヤーにより接続される。この接続工程において、端子に引っ張り力が作用しても、上述したように端子剥離防止膜により端子がフィルム基板上に強固に固定されているので、端子の剥離や変形を抑制できる。したがって、端子の小型化及び高密度化を図りつつ確実な接続が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、実施形態について、添付の図面を参照して説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る表示装置(液晶表示装置)を示すブロック図である。図2は、同じくその表示装置の表示パネルを示す上面図である。図3は、図2のI-I線に沿った断面図である。
【0010】
図1に示すように、第1の実施形態に係る表示装置50は、青色の画像を生成する青色表示素子50Bと、緑色の画像を生成する緑色表示素子50Gと、赤色の画像を生成する赤色表示素子50Rとを観察者側からこの順に重ね合わせた構造を有する。赤色表示素子50Rの背面には、黒色樹脂よりなる光吸収層55が配置されている。
【0011】
青色表示素子50Bは、表示パネル10B、走査電極駆動回路51及びデータ電極駆動回路52を備えている。また、緑色表示素子50Gは、表示パネル10G、走査電極駆動回路51及びデータ電極駆動回路52を備え、赤色表示素子50Rは、表示パネル10R、走査電極駆動回路51及びデータ電極駆動回路52を備えている。
【0012】
図2及び図3に示すように、表示パネル10Bは、相互に対向して配置された下基板11と上基板12との間にコレステリック液晶18を封入した構造を有している。下基板11及び上基板12は、フレキシブル性が必要であるため、厚さ0.1mm程度の樹脂フィルムで形成される。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)又はポリカーボネート等のフィルムを用いることができる。
【0013】
これらの下基板11及び上基板12は、下基板11の表示領域の縁部に沿って塗布されたシール材16により接合されている。下基板11において、表示領域の外側(図2では左側)に張り出した部分が、走査電極駆動回路51に接続される端子が配置された端子領域である。また、上基板12において、表示領域の外側(図2では上側)に張り出した部分が、データ電極駆動回路52に接続される端子が配置された端子領域である。
【0014】
下基板11及び上基板12の間の空間にはマトリクス状に配列した支柱15が設けられている。この支柱15は高さ5μm程度に形成される。なお、表示パネル10Bのセルギャップ(下基板11と上基板12との間隔)は支柱15の高さによって決まる。
【0015】
図3に示すように、下基板11の液晶18側の面には透明電極(走査電極)13が形成されており、上基板12の液晶18側の面には透明電極(データ電極)14が形成されている。透明電極13は、図2においてX方向に伸びており、シール材16の外側の基板11の縁部近傍の部分が外部回路(駆動回路)と接続するための端子13bとなっている。また、透明電極14は、図2においてY方向に伸びており、シール材16の外側の基板12の縁部近傍の部分が端子14bとなっている。透明電極13、14の幅及び間隔は50〜100μm程度である。これらの透明電極13、14は、ITO(Indium-Tin Oxide)等の透明導電体により形成されている。
【0016】
表示パネル10Bにおいて、透明電極13、14が交差する部分が画素(表示セル)となっている。透明電極13、14間に印加する電圧により、透明電極13、14間のコレステリック液晶18の状態をプレーナ状態、フォーカルコニック状態又はそれらが混在した状態とすることができる。コレステリック液晶18がプレーナ状態のときには、入射した光のうち液晶分子のらせんピッチに応じた波長の光(表示パネル10Bでは青色)が反射される。また、コレステリック液晶18がフォーカルコニック状態のときには入射した光は透過する。このように、画素毎にコレステリック液晶18の状態を制御することにより、所望の画像を表示することができる。
【0017】
下基板11の端子領域には、下基板11及び端子13bを覆う端子剥離防止膜17が、数μm(例えば5μm程度)の厚さに形成されている。本実施形態では、端子剥離防止膜17及び支柱15は感光性樹脂により形成されているものとする。
【0018】
端子剥離防止膜17には、後述するボンディングワイヤー19を接続するための開口部17aが形成されており、この開口部17aで端子13bの一部が露出している。開口部17aは、ワイヤーボンディング装置(図示せず)のキャピラリの先端を入れることができる程度の大きさ、例えば直径が数十μm程度の円形に形成される。なお、開口部17aは円形状に限定されるものではなく、例えば矩形状等としてもよい。
【0019】
図4は、表示パネルの端子領域とフレキシブル基板とを接続した状態を示す上面図である。
【0020】
図4に示すように、下基板11と接続されるフレキシブル基板20には、複数の端子21が一方向(Y方向)に配列している。端子21から伸びる配線は走査電極駆動回路52に繋がっている。端子21と開口部17aに露出した端子13bとは、ボンディングワイヤー19を介して接続されている。ボンディングワイヤー19は、直径25μm程度の金等の金属線を用いることができる。
【0021】
なお、表示パネル10G、10Rは、液晶(液晶分子のらせんピッチ)が異なる以外は基本的に表示パネル10Bと同様の構造であるので、ここでは、表示パネル10G、10Rの構造の説明は省略する。
【0022】
ここに、図5(a)〜(e)は、第1の実施形態に係る表示装置50の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0023】
まず、図5(a)に示すように、下基板11及び上基板12を用意し、これらの下基板11及び上基板12の上にスパッタ法によりITOを140nm程度堆積させる。なお、フィルム基板11は樹脂からなるため、スパッタ法によるITOの堆積は、基板11の温度を比較的低温、例えば80℃程度で行う。続いて、フォトレジスト法によるパターニングを行って透明電極13、14を形成する。
【0024】
次に、下基板11の上に感光性樹脂を塗布してフォトレジスト(感光性樹脂)膜を形成し、このフォトレジスト膜を露光及び現像処理して、図5(b)に示すように、表示領域に支柱15を形成する。このとき同時に、端子領域の基板11の上に、端子13bを覆う端子剥離防止膜17を形成する。但し、端子剥離防止膜17には、端子13bの一部が露出する開口部17aを形成する。
【0025】
その後、下基板11の表示領域の縁部に沿ってシール材16を額縁状に塗布する。但し、後述の工程で基板11、12間に液晶を注入するために、液晶注入口となる部分にはシール材16を塗布しないでおく。
【0026】
次に、図5(c)に示すように、下基板11と上基板12とを、透明電極13、14が形成された面を向かい合わせて、シール材16により貼り合わせる。以後、下基板11及び上基板12を貼り合わせてなる構造物をパネルPという。
【0027】
次に、パネルPを熱処理装置内に載置し、所定の温度で熱処理してシール材16を硬化させる。その後、例えば真空注入法によりパネルPに液晶注入口(図示せず)からコレステリック液晶18を注入した後、液晶注入口を樹脂で封じる。以上のようにして、図5(c)に示すような表示パネル10が完成する。なお、表示パネル10G、10Rも、注入するコレステリック液晶18が異なる以外は同様にして製造できる。
【0028】
次に、図5(d)に示すように、下基板11の端子領域に走査電極駆動回路51を搭載したフレキシブル基板20を接着材等で接合する。
【0029】
次に、図5(e)に示すように、ワイヤーボンディング装置により、表示パネル10Bの端子13bと、フレキシブル基板20の端子21とをボンディングワイヤー19で接続する。以上の工程により、透明電極13と走査電極駆動回路51とが電気的に接続される。
【0030】
上述のように端子13bは低い基板温度で堆積されたITOからなる。このため、フィルム基板11と端子13bとの密着性が低く、端子13bは剥離しやすい。したがって、ワイヤーボンディング工程において、仮に端子剥離防止膜17がないとすると、図6(a)、(b)に示すように、ワイヤーボンディングの際の引っ張り力で端子13bが下基板11から剥離し、大きく変形してクラックや断線が発生するおそれがある。
【0031】
これに対し、図7に示すように、端子13bを端子剥離防止膜17で覆った場合は、端子剥離防止膜17が基板11及び端子13bに密着して、端子13bが基板11から剥離することを抑える。このため、端子13bの変形の程度は小さく、端子13bのクラックや断線の発生を防ぐことができる。
【0032】
透明電極13と走査電極駆動回路51とをワイヤーボンディングした後、透明電極14とデータ電極駆動回路52を搭載したフレキシブル基板(図示せず)とを接続する。これにより、青色表示素子50Bが完成する。緑色表示素子50G及び赤色表示素子50Rも青色表示素子50Bと同様にして製造する。
【0033】
次に、青色表示素子50B、緑色表示素子50G及び赤色表示素子50Rを上からこの順に貼り合わせ、赤色表示素子50Rの裏面に光吸収層55を張り付ける。これにより、第1の実施形態に係る表示装置50が完成する。
【0034】
以上のように、第1の実施形態の表示装置50は、端子13bが端子剥離防止膜17で覆われている。このため、端子13bにボンディングワイヤー19を接続する際に、端子13bに引っ張り力が作用しても、端子13bの剥離や変形による損傷を抑制できる。したがって、端子13bの小型化及び高密度化を図りつつ確実な接続が可能となる。
【0035】
また、端子剥離防止膜17は支柱15と同時に形成するので、製造工程を追加することなく作製できる。さらに、端子剥離防止膜17は、フォトレジスト法により形成されるため、ワイヤーボンディングによる接続を行うのに十分な精度で開口部17aを形成できる。
【0036】
尚、上述の例では、下基板11の端子領域に端子剥離防止膜17を形成することについて説明したが、第1の実施形態はこれに限定されるものではなく、上基板12の端子領域にも同様の端子剥離防止膜17を設けてもよい。
【0037】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態の表示装置の表示パネルを示す断面図である。図9は、同じくその表示パネルの端子領域付近を示す断面図である。なお、第2の実施形態の表示装置が第1の実施形態の表示装置と異なる点は表示パネルの端子部の構造が異なることにあり、その他の構造は第1の実施形態と基本的に同じである。図8、図9において、図3、図7と同一物には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0038】
表示パネル30は、図8に示すように、端子13bの上に金属層22が形成されている。そして、金属層22の上に端子剥離防止膜17が形成されている。また、端子剥離防止膜17の開口部17aには金属層22が露出している。
【0039】
この金属層22は、例えば金、クロム又は銅等のようにITOよりも電気抵抗が低い金属を、スパッタ法又はめっき法等により端子13bの上に積層して形成する。金属層22の厚さは例えば50nm程度とする。
【0040】
第2の実施形態では、図9に示すように、ボンディングワイヤー19が金属層22に接合される。このため、第2の実施形態では第1の実施形態に比べてボンディングワイヤー19と端子との接合強度がより一層向上し、接合部における電気抵抗が小さくなるという効果を奏する。
【0041】
上述の第1及び第2の実施形態では液晶表示装置を例に説明したが、特許請求の範囲に記載した構成を、有機EL又はその他の方式の表示装置に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る表示装置を示すブロック図である。
【図2】図2は、第1の実施形態の表示装置の表示パネルを示す上面図である。
【図3】図3は、図2のI-I線に沿った断面図である。
【図4】図4は、第1の実施形態に係る表示パネルの端子付近を拡大して示す上面図である。
【図5】図5(a)〜(e)は、第1の実施形態に係る表示装置の製造工程を順に示す断面図である。
【図6】図6は、端子剥離防止膜を形成せずに表示パネルの端子領域をワイヤーボンディングで接続した結果を示す模式図である。
【図7】図7は、表示パネルをワイヤーボンディングで接続したときの構造を示す断面図である。
【図8】図8は、第2の実施形態の表示装置の表示パネルを示す断面図である。
【図9】図9は、第2の実施形態の表示装置の表示パネルの端子領域を拡大して示す断面図である。
【符号の説明】
【0043】
10B、10G、10R、30…表示パネル、11…下基板、12…上基板、13…透明電極(走査電極)、14…透明電極(データ電極)、13b、14b…端子、15…支柱、16…シール材、17…端子剥離防止膜、17a…開口部、18…コレステリック液晶、19…ボンディングワイヤー、20…フレキシブル基板、21…端子、22…金属層、50…表示装置、50B…青色表示素子、50G…緑色表示素子、50R…赤色表示素子、51…走査電極駆動回路、52…データ電極駆動回路、53…走査電極、54…データ電極、55…光吸収層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム基板と、
透明導電体により前記フィルム基板上に形成されて駆動回路に接続される端子と、
前記フィルム基板上に形成され、前記端子を介して信号が与えられる表示セルと、
少なくとも前記端子の上に形成され、前記端子の一部が露出する開口部を有する端子剥離防止膜と、
を備えたことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記表示セルは、前記フィルム基板に対向する対向基板と前記フィルム基板との間に封入された液晶を有し、
前記フィルム基板上には前記フィルム基板と前記対向基板との間隔を一定に維持する支柱を有し、
前記端子剥離防止膜と前記支柱とが同一の樹脂により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記端子と前記端子剥離防止膜との間に金属からなる層が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
更に、前記駆動回路と電気的に接続された端子を有する駆動回路基板と、
一方の端部が前記駆動回路基板の前記端子に接続され、他方の端部が前記端子剥離防止膜の開口部を介して前記フィルム基板上の前記端子に接続されたボンディングワイヤーと、
を備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
フィルム基板の上に透明導電体からなる端子を形成する工程と、
前記フィルム基板の上に感光性樹脂を塗布する工程と、
前記感光性樹脂を露光及び現像して、少なくとも前記端子を覆うとともに前記端子の一部が露出する開口部を備えた端子剥離防止膜を形成する工程と、
を有することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記フィルム基板に対向する対向基板を前記フィルム基板上に貼り付ける工程と、前記フィルム基板及び前記対向基板の間に液晶を封入する工程と、を更に有し、
前記端子剥離防止膜を形成する工程において、前記フィルム基板と前記対向基板との間隔を一定に維持する支柱を同時に形成することを特徴とする請求項5に記載の表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−39211(P2010−39211A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202192(P2008−202192)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】