説明

表示装置及びその製造方法

【課題】対向基板上にカラーフィルタ層を形成する場合と同様に、複雑な工程によることなくカラーフィルタ層を形成し、アレイ基板上にカラーフィルタ層が設けられた表示装置を得る。
【解決手段】表示装置10は、各画素毎にスイッチング素子26が形成されたアレイ基板20と、アレイ基板20に対向して配置された対向基板30と、を有する。アレイ基板20は、アレイ基板本体21と、アレイ基板本体21上に設けられ、各画素に対応する複数の着色層24、及びこれらの着色層24の間に位置する遮光層23からなるカラーフィルタ層22と、カラーフィルタ層22の上層に設けられたスイッチング素子層と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタ層を備えたアレイ基板と対向基板とが対向するように配置された構成の、例えば、液晶表示装置やプラズマディスプレイ等の表示装置、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、薄型化が可能で低消費電力であるため、パーソナルコンピュータ等のOA機器や携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)等の携帯情報機器のディスプレイとして広く用いられている。
【0003】
液晶表示装置は、液晶表示パネルと、液晶表示パネルの背面側に取り付けられたバックライトユニットとを備えている。液晶表示パネルは、薄膜トランジスタ(TFT;Thin Film Transistor)等のスイッチング素子を備えたアレイ基板と、アレイ基板に対向して配置された対向基板と、がシール材により貼り合わされた構成を有する。そして、両基板間に構成される空間には液晶材料が封入されており、液晶層を構成している。対向基板はアレイ基板よりも一回り小さい基板が採用されており、これによって露出したアレイ基板の端子領域上に、駆動回路が実装されている。
【0004】
液晶表示装置は、画素に応じた電極をON、OFFすることで液晶分子の配向状態が変わることを利用して、外部から入射する光の透過率を調整し、その透過光がカラーフィルタ層の着色部分を透過することでカラー表示を行う。
【0005】
液晶表示パネルは、一般に、TFTをマトリクス状に配置したアレイ基板(TFT基板)と、カラーフィルタ層を備えた対向基板(カラーフィルタ基板(CF基板))とを対向させ両基板間に液晶層を挟持することにより構成されている。TFT基板のTFTやCF基板の遮光層(ブラックマトリクス)の領域は共に遮光領域となるので、各TFTと遮光層とが対応して位置付けられるように位置合わせが行われる。
【0006】
ところで、TFT基板とCF基板とは、独立した製造工程で作製することが多いため、各TFTと各遮光層との位置合わせを行うのが難しく、位置ズレが生じやすい。また、TFT基板の製造プロセスはCF基板の製造プロセスよりも高温となるプロセスを含むので、CF基板よりも基板が収縮(シュリンク)しやすく、TFT基板上に設けられるTFTの位置を精度よく制御するのが困難となり、これも位置ズレの原因となる。さらに、貼り合わせ精度のばらつきを考慮して、一般に、カラーフィルタ層側の遮光層の幅が実際の遮蔽部分の幅よりも大きくなるように設定されているため、その分だけ開口率が小さくなり、液晶表示装置の輝度が低下する。そして、輝度の低下を補うためにバックライトの灯数を増やしたり他の手段により高輝度化したりしなければならず、消費電力が大きくなってしまう。これらの位置ズレやそれに伴う開口率の低下の問題は、求められる表示性能が高精細になるほど顕著に現れる。
【0007】
特許文献1には、アレイ基板の表面にカラーフィルタ層を設けたオンチップカラーフィルタ型の液晶表示装置について記載されており、アレイ基板の凹部をカラーフィルタ材を用いて充填して基板表面を平坦化し、カラーフィルタ層形成後に遮光膜及び配向膜を形成する液晶表示装置の製造方法が開示されている。そして、この構成によれば、対向基板側に遮光膜やカラーフィルタ膜が存在しないので、パネル化におけるアレイ基板とのアライメントが不要になると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平06−110058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、カラーフィルタ層は、通常、アクリル樹脂等の樹脂に顔料が分散された材料で構成されている。そして、カラーフィルタ層は、この樹脂材料を塗布した後に加熱して樹脂を硬化させることにより形成される。例えば、カラーフィルタ層の樹脂成分としてアクリル樹脂を用いる場合には、アクリル樹脂の耐熱性を考慮して240℃程度に加熱して樹脂の硬化を行う。
【0010】
一方、TFTの形成工程においては、例えばB(ボロン)やP(リン)等をイオンドーピングする低温ポリシリコンTFTでは、熱エネルギーによるSiの再配列とB−SiやP−Siの結合を促して半導体を形成する工程で活性化と呼ばれる高温アニールが必要である。そのため、アレイ基板本体上に予めカラーフィルタ層が設けられていると、TFT形成時の高熱によりカラーフィルタ層を構成する樹脂が損傷を受けてしまう。これを回避するため、カラーフィルタ層をアレイ基板上に設ける場合には、TFTを形成した後にその上層にカラーフィルタ層を設けることが行われている。
【0011】
カラーフィルタ層を対向基板上に設ける場合には、フォトリソグラフィやインクジェット法でカラーフィルタ層を形成することができるが、TFTが予め設けられたアレイ基板本体上にカラーフィルタ層を形成する場合には、TFTやそれを覆う絶縁層が顔料に含まれている金属成分等により損傷を受けるのを防ぐために複雑な工程を経てカラーフィルタ層を形成する必要がある。例えば、特許文献1には、TFTが形成されたアレイ基板表面に有機膜を成膜した後、各TFTに対応してできた凹部にフォトリソグラフィによりカゼイン等の着色ベース層を充填するように形成した後、それを硬化し、さらに着色ベース層に赤、緑、青等の着色を行ってカラーフィルタ層を形成することが記載されている。
【0012】
本発明は、対向基板上にカラーフィルタ層を形成する場合と同様に複雑な工程によることなく、アレイ基板上にカラーフィルタ層が形成された表示装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の表示装置は、各画素毎にスイッチング素子が形成されたアレイ基板と、アレイ基板に対向して配置された対向基板と、を有するものであって、アレイ基板は、アレイ基板本体と、アレイ基板本体上に設けられ、各画素に対応する複数の着色層、及びこれらの着色層の間に位置する遮光層からなるカラーフィルタ層と、カラーフィルタ層の上層に設けられたスイッチング素子層と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
上記の構成によれば、カラーフィルタ層がアレイ基板本体上に設けられているので、カラーフィルタ層の遮光層とスイッチング素子層のスイッチング素子との位置合わせを精度よく行うことができ、表示装置の画素領域を大きく確保することができる。また、アレイ基板本体上にカラーフィルタ層が設けられ、カラーフィルタ層の上層にスイッチング素子層が設けられているので、カラーフィルタ層の形成工程においてスイッチング層の存在を考慮に入れる必要がない。そのため、対向基板側にカラーフィルタ層を形成する場合と同様に複雑な工程を経ることなく、フォトリソグラフィやインクジェット法等の方法を用いてカラーフィルタ層がアレイ基板上に形成された表示装置を得ることができる。
【0015】
本発明の表示装置は、カラーフィルタ層を構成する材料が400〜600℃程度の温度に対する耐熱性を有していてもよい。
【0016】
上記の構成によれば、カラーフィルタ層が400〜600℃の温度に対する耐熱性を有するので、カラーフィルタ層を形成した後のスイッチング素子層を形成するプロセスにおいて高温になっても、カラーフィルタ層が熱により損傷を受けるのを抑制することができる。
【0017】
本発明は、着色層が樹脂を含まない材料で構成されていることが好ましい。
【0018】
上記の構成によれば、着色層が樹脂を含まない材料で構成されているので、着色層の耐熱温度を樹脂の耐熱温度よりも高い温度に設定できる。そのため、カラーフィルタ層を形成した後のスイッチング素子層を形成するプロセスにおいて着色層が高温になっても、カラーフィルタ層が熱により損傷を受けるのを抑制することができる。
【0019】
本発明は、遮光層が樹脂を含まない材料で構成されていることが好ましい。
【0020】
上記の構成によれば、遮光層が樹脂を含まない材料で構成されているので、遮光層の耐熱温度を樹脂の耐熱温度よりも高い温度に設定できる。そのため、カラーフィルタ層を形成した後のスイッチング素子層を形成するプロセスにおいて遮光層が高温になっても、カラーフィルタ層が熱により損傷を受けるのを抑制することができる。
【0021】
本発明は、アレイ基板と対向基板との間に液晶層が設けられていてもよい。
【0022】
本発明の表示装置の製造方法は、アレイ基板本体上にカラーフィルタ層を形成した後、カラーフィルタ層の上層にスイッチング素子を含むスイッチング素子層を形成してアレイ基板を得るものである。
【0023】
上記の製造方法によれば、アレイ基板本体上にカラーフィルタ層を形成するので、カラーフィルタ層の遮光層とスイッチング素子層のスイッチング素子との位置合わせを精度よく行うことができ、表示装置の画素領域を大きく確保することができる。また、カラーフィルタ層を形成した後、カラーフィルタ層の上層にスイッチング素子を含むスイッチング素子層を形成するので、カラーフィルタ層の形成工程においてスイッチング層の存在を考慮に入れる必要がない。そのため、対向基板側にカラーフィルタ層を形成する場合と同様に複雑な工程を経ることなく、フォトリソグラフィやインクジェット法等の方法を用いてカラーフィルタ層を形成することができる。
【0024】
本発明の表示装置の製造方法は、アレイ基板本体上に着色剤及び樹脂を含んだカラーレジスト膜を形成すると共に、遮光剤及び樹脂を含んだ遮光レジスト膜を形成した後、カラーレジスト膜及び遮光レジスト膜を焼成することにより各レジスト膜中の樹脂を除去して着色層及び遮光層を形成しカラーフィルタ層を得ることが好ましい。
【0025】
上記の製造方法によれば、各レジスト膜中の樹脂を除去して着色層及び遮光層を形成してカラーフィルタ層を得るので、例えば400〜600℃の温度に対する耐熱性を有するカラーフィルタ層を設けることができる。
【0026】
本発明の表示装置の製造方法は、カラーレジスト膜及び遮光レジスト膜の焼成を、カラーレジスト膜に含まれる樹脂の耐熱温度及び遮光レジスト膜に含まれる樹脂の耐熱温度よりも高い温度で行うことが好ましい。
【0027】
本発明の表示装置の製造方法は、カラーレジスト膜を焼成することにより得られた着色層が樹脂を含まない材料で構成されていることが好ましい。
【0028】
上記の製造方法によれば、カラーレジスト膜を焼成することにより得られた着色層が樹脂を含まない材料で構成されているので、着色層の耐熱温度を樹脂の耐熱温度よりも高い温度に設定できる。そのため、スイッチング素子層を形成するプロセスにおいて高温になっても、スイッチング素子層の下層に予め形成したカラーフィルタ層が熱により損傷を受けるのを抑制することができる。
【0029】
本発明の表示装置の製造方法は、遮光レジスト膜を焼成することにより得られた遮光層が樹脂を含まない材料で構成されていることが好ましい。
【0030】
上記の製造方法によれば、遮光レジスト膜を焼成することにより得られた遮光層が樹脂を含まない材料で構成されているので、遮光層の耐熱温度を樹脂の耐熱温度よりも高い温度に設定できる。そのため、スイッチング素子層を形成するプロセスにおいて高温になっても、スイッチング素子層の下層に予め形成したカラーフィルタ層が熱により損傷を受けるのを抑制することができる。
【0031】
本発明の表示装置の製造方法は、カラーレジスト膜及び遮光レジスト膜をフォトリソグラフィを用いて形成してもよい。
【0032】
また、カラーレジスト膜をインクジェット法を用いて形成し、遮光レジスト膜をフォトリソグラフィを用いて形成してもよい。
【0033】
さらに、カラーレジスト膜及び遮光レジスト膜をインクジェット法を用いて形成してもよい。
【0034】
本発明の表示装置の製造方法は、アレイ基板と対向基板との間に液晶層を形成してもよい。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、カラーフィルタ層がアレイ基板本体上に設けられているので、カラーフィルタ層の遮光層とスイッチング素子層のスイッチング素子との位置合わせを精度よく行うことができ、表示装置の画素領域を大きく確保することができる。また、アレイ基板本体上にカラーフィルタ層が設けられ、カラーフィルタ層の上層にスイッチング素子層が設けられているので、カラーフィルタ層の形成工程においてスイッチング層の存在を考慮に入れる必要がない。そのため、対向基板側にカラーフィルタ層を形成する場合と同様に複雑な工程を経ることなく、フォトリソグラフィやインクジェット法等の方法を用いてカラーフィルタ層がアレイ基板上に形成された表示装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】液晶表示装置の平面図である。
【図2】図1のII−II線における断面図である。
【図3】実施形態1の液晶表示装置の断面図である。
【図4】実施形態1のアレイ基板の断面図である。
【図5】実施形態1の液晶表示装置の製造方法のフローチャートである。
【図6】実施形態1のアレイ基板の製造方法のフローチャートである。
【図7】(a)〜(h)は、実施形態1の液晶表示装置の製造工程の説明図である。
【図8】(a)〜(g)は、実施形態2の液晶表示装置の製造工程の説明図である。
【図9】実施形態3のアレイ基板の断面図である。
【図10】実施形態3のアレイ基板の製造方法のフローチャートである。
【図11】(a)〜(e)は、実施形態3の液晶表示装置の製造工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態では、画素毎にスイッチング素子を備えたアクティブマトリクス駆動型の液晶表示装置を例に説明する。但し、本発明は以下の実施形態1〜3に限定されるものではなく、他の構成であってもよい。この液晶表示装置は、例えば、パーソナルコンピュータ等のOA機器や携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)等の携帯情報機器のディスプレイ等に用いられるものである。
【0038】
《実施形態1》
図1及び2は、実施形態1にかかる液晶表示装置10を示す。液晶表示装置10は、アレイ基板20と対向基板30とが対向配置された液晶表示パネルを備えている。アレイ基板20と対向基板30との間には、シール材50で囲まれた空間に液晶層40が設けられている。
【0039】
液晶表示装置10には、シール材50の内側に形成されて複数の画素がマトリクス状に配置された表示領域Dと、表示領域Dの周囲に配置された非表示領域Nとが構成されている。そして、非表示領域Nの一部は、駆動回路等を取り付けるための端子領域Tとなっている。すなわち、液晶表示装置10の少なくとも1つの端縁は、図1に示すように、アレイ基板20が対向基板30よりも突出して形成され、その突出した部分が端子領域Tとなっている。
【0040】
アレイ基板20は、図4に示すように、アレイ基板本体21上にカラーフィルタ層22が形成されている。カラーフィルタ層22上には、例えば、SiN、SiO、SiNO等からなる層間絶縁膜25が設けられ、その上層に、スイッチング素子26を複数備えたスイッチング素子層が形成されている。そして、スイッチング素子層上には、例えばアクリル樹脂等からなる平坦化膜が設けられ、その平坦化膜に各スイッチング素子に導通するように、例えばITO等からなる複数の画素電極28が形成されている。画素電極28の上層には、さらに、例えばポリイミド等からなる配向膜29が形成されている。なお、ここでは、スイッチング素子層はスイッチング素子26としてTFT26を備えたTFT層である場合について説明する。
【0041】
カラーフィルタ層22は、画素毎に設けられた複数の着色層24と、各着色層24を区画する遮光層23(ブラックマトリクス)が形成されている。複数の着色層24は、例えば、赤色、緑色及び青色の着色層24R,24G及び24Bが周期的に配置されて構成されている。カラーフィルタ層22を構成する遮光層23及び着色層24のそれぞれは、その上層に設けられたTFT26の形成時における高温プロセスに耐えるため、400〜600℃程度の温度に対する耐熱性を有する。
【0042】
各着色層24は、樹脂成分を含まない着色剤等で形成されている。赤色着色層24Rの着色材としては、例えばアントラキノン系の顔料や等が挙げられる。緑色着色層24Gの着色材としては、例えばフタロシアニン系の顔料等が挙げられる。また、青色着色層24Bの着色材としては、例えばフタロシアニン系の顔料等が挙げられる。各着色層24は、例えば厚さが300〜600nm程度であり、この厚さは樹脂を含む材料で着色層を形成した場合の1/10〜1/5である。
【0043】
遮光層23は、隣り合う着色層24同士を区画するように、それらの境界の領域に設けられており、樹脂成分を含まない黒色材、例えばカーボンブラック等で形成されている。遮光層23は、例えば厚さが150〜300nm程度であり、この厚さは樹脂を含む材料で遮光色層を形成した場合の1/10〜1/5である。
【0044】
TFT層は、層間絶縁膜25上に複数のソース線及び複数のゲート線が互いに交差するように形成され、これら各ソース線と各ゲート線との交差部には、複数のTFT26が構成されている。
【0045】
なお、図示はしていないが、アレイ基板20の非表示領域Nには、TFT26を遮光領域に対応するように形成するためのアライメントマークが設けられていることが好ましい。アライメントマークは、例えば、カラーフィルタ層22の遮光層23や着色層24と同一の材料で形成することができる。
【0046】
対向基板30は、対向基板本体31上の全面を覆うように例えばITOからなる共通電極32が設けられている。そして、共通電極32を覆うように、例えばポリイミド膜からなる配向膜33が設けられている。
【0047】
液晶層40は、電気光学特性を有するネマチック液晶材料などにより構成されている。
【0048】
上記構成の液晶表示装置10は、各画素電極28毎に1つの画素が構成されており、各画素において、ゲート線からゲート信号が送られてTFTがオン状態になったときに、ソース線からソース信号が送られてソース電極及びドレイン電極を介して、画素電極28に所定の電荷が書き込まれ、画素電極28と対向基板30の共通電極32との間で電位差が生じることになり、液晶層40からなる液晶容量に所定の電圧が印加されるように構成されている。そして、液晶表示装置10では、その印加電圧の大きさに応じて液晶分子の配向状態が変わることを利用して、外部から入射する光の透過率を調整することにより、画像が表示される。
【0049】
<液晶表示装置の製造方法>
次に、実施形態1に係る液晶表示装置10の製造方法について例示して説明する。
【0050】
図5に、液晶表示装置10の製造方法の全体のフローチャートを示す。まず、アレイ基板20及び対向基板30をそれぞれ独立に作製する(ステップS1及びS2)。そして、これら両基板20,30をシール材50を介して互いに貼り合わせる(ステップS3)。貼り合わせにより液晶表示パネルを得た後は、公知の作製工程に従って液晶表示装置10を得る(ステップS4〜S7)。
【0051】
はじめに、ステップS1において、アレイ基板20を作製する。図6は、アレイ基板作製工程のフローチャートであり、図7は、アレイ基板20の作製工程を示す説明図である。
【0052】
まず、ステップS11において、アレイ基板本体21を準備して、アレイ基板本体21上にカラーフィルタ層22を形成する。カラーフィルタ層22を形成するアレイ基板本体21にはまだTFT26が設けられていないので、カラーフィルタ層22の形成プロセスがTFT26に与える影響を考慮に入れる必要がない。そのため、対向基板側にカラーフィルタ層を形成する場合と同様に複雑な工程を経ることなく、カラーフィルタ層22の形成を行うことができる。
【0053】
まず、ステップS12Aにおいて、フォトリソグラフィにより遮光レジスト膜72を成膜する。具体的には、カーボンブラック等の黒色成分からなる遮光材料をアクリル樹脂等の樹脂に分散したネガ型の遮光レジストを、ロール塗布やスピン塗布によりアレイ基板本体21の全面に塗布して樹脂膜71を成膜する。そして、図7(a)に示すように、遮光層23を形成する領域に重なる開口を有するマスクMNを介して樹脂膜71を露光する。その後、樹脂膜71を現像処理することにより、図7(b)に示すように、アレイ基板本体21の表面に遮光レジスト膜72が形成される。なお、ここではネガ型の遮光レジストを用いるとしたが、ポジ型の遮光レジストを用いて遮光レジスト膜72を形成してもよい。
【0054】
次に、ステップS12Bにおいて、フォトリソグラフィによりカラーレジスト膜74を成膜する。具体的には、赤色着色剤をアクリル樹脂等の樹脂に分散したポジ型のカラーレジストを、ロール塗布やスピン塗布によりアレイ基板本体21の全面に塗布して樹脂膜73Rを形成する。そして、図7(c)に示すように、赤色の着色層24Rを形成しない領域に重なる開口を有するMPを介して樹脂膜73Rを露光する。その後、樹脂膜73Rを現像処理することにより、図7(d)に示すように、遮光レジストで区画された赤色の着色層24Rを形成する領域に、赤色カラーレジスト膜74Rが形成される。なお、図7中では、カラーレジスト膜74の具体例として、赤色カラーレジスト膜74R、緑色カラーレジスト膜74G、及び青色カラーレジスト膜74Bとして示している。
【0055】
この一連の工程を繰り返すことにより、図7(e)に示すように、緑色カラーレジスト膜74G及び青色カラーレジスト膜74Bを順に形成する。なお、カラーレジストに含まれる樹脂は遮光レジストと同一種の樹脂であっても、異なる種類の樹脂であっても構わない。また、ここではポジ型のカラーレジストを用いるとしたが、ネガ型のカラーレジストを用いてカラーレジスト膜74を形成してもよい。さらに、図7(e)では、赤色カラーレジスト膜74R、緑色カラーレジスト膜74G、及び青色カラーレジスト膜74Bが遮光レジスト膜72の上層において連続して形成された断面図が示されているが、遮光レジスト膜72の上にカラーレジスト膜74が設けられていても実質的に機能するわけではないので、遮光レジスト膜72の上層にはカラーレジスト膜74が設けられていなくてもよく、また、例えば赤色カラーレジスト膜74Rと緑色カラーレジスト膜74Gがそれらを区画する遮光レジスト膜72の上層で間隔をあけて隣接するようにパターン形成されていてもよい。
【0056】
なお、遮光レジスト膜72やカラーレジスト膜74をアライメントマーク形成位置にもパターニングして設けることで、後工程において遮光層23または着色層24とアライメントマークとを同時に形成することが好ましい。
【0057】
続いて、ステップS13において、上記形成した遮光レジスト膜72及びカラーレジスト膜74を、例えばバッチタイプ炉を用いて焼成を行い、各レジスト膜72,74から樹脂成分を除去する。このときの焼成条件は、例えば、焼成温度が400〜600℃程度及び焼成時間が60〜240分程度である。なお、これらの焼成条件は、各レジスト膜72,74に含まれる樹脂の耐熱特性により変更可能であり、各レジスト膜72,74の樹脂成分を完全に除去できる焼成条件とすることが好ましく、焼成温度が各レジスト膜72,74に含まれる樹脂の耐熱温度よりも高い温度であることが好ましい。この焼成により、遮光レジスト膜72及びカラーレジスト膜74が、図7(f)に示すように、各々遮光層23及び着色層24となり、カラーフィルタ層22が得られる。
【0058】
次いで、ステップS14において、カラーフィルタ層22を覆うように、図7(g)に示すように、例えばスパッタ法等を用いて層間絶縁膜25を形成する。
【0059】
次に、ステップS15において、層間絶縁膜25の上層にスイッチング素子としてTFT26を形成する。例えば、フォトリソグラフィ法により、ゲート線及びゲート電極、ゲート絶縁膜、半導体層、並びに、ソース線、ソース電極及びドレイン電極を順に形成し、半導体層にチャネル部をパターニングすることにより、TFT26を形成する。
【0060】
このとき、遮光層23及び着色層24は、遮光レジスト膜72及びカラーレジスト膜74を焼成することにより得られるので、樹脂を含まない材料で構成されることとなり、遮光層23及び着色層24の耐熱温度が樹脂の耐熱温度よりも高くなる。そのため、TFT作製工程において例えば400〜600℃程度の高温で高温アニールを行っても、カラーフィルタ22が損傷を受けることがない。
【0061】
なお、カラーフィルタ層22の遮光層23または着色層24と同時に、或いは、カラーフィルタ層22の形成とは別工程により形成したアライメントマークを利用して、TFT26が遮光層23と対応する領域に位置付けられるようにTFT26の形成を行う。
【0062】
このとき、同一基板(アレイ基板本体21)上にカラーフィルタ層22とTFT26の両方を設けるので、各々を別工程でそれぞれ別の基板上に形成する場合よりも精度よく遮光層23とTFT26の位置合わせを行うことができる。そのため、位置ズレを考慮することなく遮光層23の領域をレイアウトすることができ、画素領域を大きく確保することができるので、優れた輝度特性を得ることができる。
【0063】
続いて、公知の方法を用いて、ステップS16における平坦化膜27の形成、ステップS17における画素電極28の形成、及びステップS18における配向膜29の形成を順に行うことにより、アレイ基板20が得られる(ステップS19)。
【0064】
次に、ステップS2において、対向基板30を形成する。
【0065】
まず、対向基板本体31の全面に、共通電極32となるITO膜をスパッタ法等を用いて成膜する。そして、表示領域Dにおいて、共通電極32を覆うように、公知の方法で配向膜33となるポリイミド膜を成膜することにより、対向基板30が得られる。
【0066】
なお、ここではステップS1のアレイ基板20の作製を行った後にステップS2の対向基板30の作製を行うとして説明したが、各工程ステップS1及びS2は独立の工程であり、どちらを先に行っても、同時に行っても、いずれてもよい。
【0067】
続いて、ステップS3において、アレイ基板20または対向基板30の外周縁にシール材50を配置すると共に両基板20,30を重ね合わせ、シール材50を硬化することにより、アレイ基板20と対向基板30とを貼り合わせる。このとき、カラーフィルタ層22がアレイ基板20上に設けられており、すでに、遮光層23とTFT26との位置合わせが精度よく行われているため、係るアライメント作業を行うことなく両基板20,30を貼り合わせることができる。
【0068】
次に、ステップS4において、公知の方法により両基板20,30の間の空間に液晶材料を導入して液晶層40を形成することにより、液晶表示パネルを得る(ステップS5)。
【0069】
最後に、ステップS6において、液晶表示パネルの表面にそれぞれ偏光板(図示せず)を配置し、アレイ基板20上の端子領域Tに駆動回路を、基板表面にバックライトを取り付ける。これにより、液晶表示装置10が完成する(ステップS7)。
【0070】
《実施形態2》
次に、本発明の実施形態2に係る液晶表示装置10について説明する。この液晶表示装置10は、実施形態1の液晶表示装置と同一の構成を有するが、製造方法において実施形態1とは異なる点がある。なお、同一または対応する構成については同一の参照符号を用いて説明する。実施形態2の液晶表示装置10の製造方法では、図5及び6のフローチャートに沿って工程を進める。
【0071】
実施形態1と同様、ステップS1において、アレイ基板20を作製する。図8は、アレイ基板20の作製工程を示す説明図である。
【0072】
はじめに、ステップS11において、アレイ基板本体21を準備して、アレイ基板本体21上にカラーフィルタ層22を形成する。
【0073】
まず、ステップS12Aにおいて、実施形態1と同様にして遮光レジスト膜72を形成する(図8(a),(b))。
【0074】
次に、ステップS12Bにおいて、インクジェット法を用いてカラーレジスト膜74を成膜する。まず、図8(c)に示すようにインクジェットヘッドをアレイ基板本体21に対向するようにセットし、図8(d)に示すように、インクジェットヘッドのノズルからカラーレジスト膜74の原料を基板上に塗布することにより、カラーレジスト膜74を形成する。
【0075】
遮光レジスト膜72及びカラーレジスト膜74を形成した後は、実施形態1と同様にして、ステップS13において各レジスト膜72,74の焼成を行ってカラーフィルタ層22を得(図8(e))、ステップS14において層間絶縁膜25を形成し(図8(f))、続いてステップS15〜S18においてTFT26の形成、平坦化膜27の形成、画素電極28の形成、及び配向膜29の形成を行うことにより、図8(g)に示すようにアレイ基板20が完成する(ステップS19)。
【0076】
なお、ステップS2における対向基板30の作製工程や、アレイ基板20及び対向基板30の貼り合わせ以降の工程(ステップS3〜S7)は、実施形態1と同様にして行うので、詳細な説明を省略する。
【0077】
《実施形態3》
次に、本発明の実施形態3に係る液晶表示装置10について説明する。この液晶表示装置10は、アレイ基板20を除いて、実施形態1と同一の構成を有する。なお、同一または対応する構成については同一の参照符号を用いて説明する。実施形態3の液晶表示装置10の構成についてはアレイ基板20についてのみ説明する。
【0078】
アレイ基板20は、図9に示すように、アレイ基板本体21上にカラーフィルタ層22、層間絶縁膜25、TFT26、平坦化膜27、画素電極28、及び配向膜29が順に積層された構成を有する。
【0079】
カラーフィルタ層22は、各画素に対応して設けられた着色層24と、それらを区画するように設けられた遮光層23と、で構成されている。このカラーフィルタ層22においては、着色層24は遮光層23の上層にオーバーラップすることなく、遮光層23と同一層となるように設けられている。
【0080】
アレイ基板20のカラーフィルタ層22以外の構成は実施形態1と同一である。
【0081】
<液晶表示装置の製造方法>
次に、実施形態3に係る液晶表示装置10の製造方法について説明する。この製造方法では、図5のフローチャートに沿って工程を進める。
【0082】
はじめに、ステップS1において、アレイ基板20を作製する。図10は、アレイ基板作製工程のフローチャートであり、図11は、アレイ基板20の作製工程を示す説明図である。
【0083】
まず、ステップS11において、アレイ基板本体21を準備した後、アレイ基板本体21上にカラーフィルタ層22を形成する。
【0084】
まず、ステップS12において、インクジェット法を用いて遮光レジスト膜72及びカラーレジスト膜74を同時に成膜する。まず、図11(a)に示すように、インクジェットヘッドをアレイ基板本体21に対向するようにセットし、図11(b)に示すように、インクジェットヘッドのノズルから遮光レジスト膜72及びカラーレジスト膜74の原料を基板上に塗布することにより、遮光レジスト膜72及びカラーレジスト膜74を形成する。
【0085】
遮光レジスト膜72及びカラーレジスト膜74を形成した後は、実施形態1と同様にして、ステップS13において各レジスト膜72,74の焼成を行ってカラーフィルタ層22を得(図11(c))、ステップS14において層間絶縁膜25を形成し(図11(d))、続いてステップS15〜S18においてTFT26の形成、平坦化膜27の形成、画素電極28の形成、及び配向膜29の形成を行うことにより、図11(e)に示すようにアレイ基板20が完成する(ステップS19)。
【0086】
なお、ステップS2における対向基板30の作製工程や、アレイ基板20及び対向基板30の貼り合わせ以降の工程(ステップS3〜S7)は、実施形態1と同様にして行うので、詳細な説明を省略する。
【0087】
《その他の実施形態》
上記の実施形態1〜3では、カラーフィルタ層22を備えたアレイ基板20と対向基板30とが対向するように配置された構成の表示装置として液晶表示装置について説明したが、特にこれに限られず、例えばプラズマディスプレイ等の表示装置についても本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、カラーフィルタ層を備えたアレイ基板と対向基板とが対向するように配置された構成の、例えば、液晶表示装置やプラズマディスプレイ等の表示装置、及びその製造方法について有用である。
【符号の説明】
【0089】
10 表示装置(液晶表示装置)
20 アレイ基板
21 アレイ基板本体
22 カラーフィルタ層
23 遮光層
24 着色層
26 スイッチング素子(TFT)
30 対向基板
40 液晶層
72 遮光レジスト膜
74 カラーレジスト膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各画素毎にスイッチング素子が形成されたアレイ基板と、該アレイ基板に対向して配置された対向基板と、を有する表示装置であって、
上記アレイ基板は、
アレイ基板本体と、
上記アレイ基板本体上に設けられ、上記各画素に対応する複数の着色層、及びこれらの着色層の間に位置する遮光層からなるカラーフィルタ層と、
上記カラーフィルタ層の上層に設けられたスイッチング素子層と、
を備えたことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載された表示装置において、
上記カラーフィルタ層を構成する材料は、400〜600℃の温度に対する耐熱性を有することを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載された表示装置において、
上記着色層は樹脂を含まない材料で構成されていることを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載された表示装置において、
上記遮光層は樹脂を含まない材料で構成されていることを特徴とする表示装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載された表示装置において、
上記アレイ基板と対向基板との間には液晶層が設けられていることを特徴とする表示装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載された表示装置の製造方法であって、
アレイ基板本体上にカラーフィルタ層を形成した後、該カラーフィルタ層の上層にスイッチング素子を含むスイッチング素子層を形成してアレイ基板を得ることを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載された表示装置の製造方法において、
上記アレイ基板本体上に着色剤及び樹脂を含んだカラーレジスト膜を形成すると共に、遮光剤及び樹脂を含んだ遮光レジスト膜を形成した後、
上記カラーレジスト膜及び遮光レジスト膜を焼成することにより各レジスト膜中の樹脂を除去して着色層及び遮光層を形成してカラーフィルタ層を設けることを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載された表示装置の製造方法において、
上記カラーレジスト膜及び上記遮光レジスト膜の焼成を上記カラーレジスト膜に含まれる樹脂の耐熱温度及び上記遮光レジスト膜に含まれる樹脂の耐熱温度よりも高い温度で行うことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載された表示装置の製造方法において、
上記カラーレジスト膜を焼成することにより得られた上記着色層は樹脂を含まない材料で構成されていることを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれかに記載された表示装置の製造方法において、
上記遮光レジスト膜を焼成することにより得られた上記遮光層は樹脂を含まない材料で構成されていることを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれかに記載された表示装置の製造方法において、
上記カラーレジスト膜及び上記遮光レジスト膜をフォトリソグラフィを用いて形成することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項12】
請求項7〜10のいずれかに記載された表示装置の製造方法において、
上記カラーレジスト膜をインクジェット法を用いて形成し、上記遮光レジスト膜をフォトリソグラフィを用いて形成することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項13】
請求項7〜10のいずれかに記載された表示装置の製造方法において、
上記カラーレジスト膜及び上記遮光レジスト膜をインクジェット法を用いて形成することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項14】
請求項6〜13のいずれかに記載された表示装置の製造方法において、
上記アレイ基板と上記対向基板との間に挟持されるように、液晶層を形成することを特徴とする表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−215471(P2011−215471A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85059(P2010−85059)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】