説明

表示装置

【課題】装置の誤動作を抑制することが可能な表示装置を提供する。
【解決手段】この液晶表示装置(表示装置)100は、電源電圧(PVDD)をクロック
信号(DCCLKおよびBDCCLK)により昇圧する昇圧回路6と、クロック信号を供
給する液晶ドライバIC3とを備え、昇圧回路6の起動時に、電源電圧(PVDD)また
はクロック信号(DCCLKおよびBDCCLK)の電圧の少なくとも一方の電圧を通常
動作時の電圧よりも低くするソフトスタート期間を設けるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関し、特に、昇圧回路を備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、昇圧回路を備えた表示装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、昇圧回路としての機能を有するチャージポンプ制御回路を内蔵し
た表示装置が開示されている。上記特許文献1の表示装置では、外部から供給された電圧
をチャージポンプ制御回路により昇圧して表示部に供給するように構成されている。なお
、チャージポンプ方式の昇圧回路とは、コンデンサを充放電させることにより電圧を昇圧
させる方式の回路である。
【0004】
【特許文献1】特開2004―146082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された表示装置のように、コンデンサを用いたチ
ャージポンプ方式の昇圧回路(チャージポンプ制御回路)により電圧を昇圧する構成を用
いた場合、装置本体への電源投入の際にコンデンサには電荷が蓄積されていないため、コ
ンデンサに一度に多量の電流が流れ込む状態である突入電流が発生するという不都合があ
る。この場合、突入電流が大きいとコンデンサ(昇圧回路)に接続されている外部電源回
路からの供給電流量が多くなるため、外部電源回路の動作が不安定になる。その結果、装
置が誤動作する場合があるという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つ
の目的は、装置が誤動作するのを抑制することが可能な表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
この発明の一の局面による表示装置は、電源電圧をクロック信号により昇圧する昇圧回
路と、クロック信号を供給する制御回路部とを備え、昇圧回路の起動時に、電源電圧また
はクロック信号の電圧の少なくとも一方の電圧を通常動作時の電圧よりも低くする低電圧
期間を設けるように構成されている。
【0008】
この一の局面による液晶表示装置では、上記のように、昇圧回路の起動時に、昇圧回路
に供給される電源電圧またはクロック信号の電圧の少なくとも一方の電圧を通常動作時の
電圧よりも低くする低電圧期間を設けるように構成することによって、装置本体の電源投
入時に、昇圧回路には通常動作時に比べて低い電圧のクロック信号または電源電圧が供給
される。これにより、昇圧回路がコンデンサを含む構成である場合、昇圧回路の起動時に
コンデンサに流れ込む電流(突入電流)の大きさを小さくすることができるので、突入電
流が大きい場合と異なり、装置が誤動作するのを抑制することができる。
【0009】
上記一の局面による表示装置において、好ましくは、低電圧期間には、電源電圧が通常
動作時の電圧に徐々に立ち上がるように構成されている。このように構成すれば、低電圧
期間における昇圧回路に対して、通常動作時の電圧が供給される場合と比べて低い電圧が
供給されるとともに、この電圧が徐々に通常動作時の電圧にまで大きくなる。したがって
、昇圧回路のコンデンサに流れ込む電流も電圧に対応して徐々に大きくなることにより、
コンデンサに流れ込む突入電流が大きくなるのを抑制しながら昇圧動作を行うことができ
る。
【0010】
上記一の局面による表示装置において、好ましくは、低電圧期間には、電源電圧または
クロック信号の電圧の少なくとも一方の電圧は、通常動作時よりも低い一定の大きさの電
圧になるように構成されている。このように構成すれば、低電圧期間において、常に通常
動作時よりも低い電源電圧またはクロック信号の電圧が昇圧回路に供給される。したがっ
て、通常動作時の電圧において昇圧する場合と比べて緩やかに昇圧することができるので
、コンデンサに流れ込む突入電流を小さくすることができる。
【0011】
上記一の局面による表示装置において、好ましくは、低電圧期間には、クロック信号の
電圧および電源電圧の両方が、それぞれ、通常動作時におけるクロック信号の電圧および
電源電圧よりも小さくなるように構成され、低電圧期間におけるクロック信号の周波数は
、通常動作時におけるクロック信号の周波数よりも高い。このように構成すれば、昇圧回
路の起動時に、昇圧回路に供給される電源電圧が通常動作時よりも低いことによりコンデ
ンサに流れ込む突入電流が大きくなるのを抑制することができる。また、これに加えて、
電源電圧を昇圧するためのクロック信号の電圧も通常動作時よりも低いので、その分、電
源電圧は緩やかに昇圧される。したがって、電源電圧を徐々に昇圧することができるので
、コンデンサに流れ込む突入電流が大きくなるのをより抑制することができる。また、ク
ロック信号の周波数を高くした分だけ一度の昇圧動作の期間が短くなるので、その分、一
度の昇圧動作における電源電圧の昇圧分を小さくすることができる。その結果、電源電圧
を緩やかに昇圧することができるので、これによっても、コンデンサに流れ込む突入電流
が大きくなるのを抑制することができる。
【0012】
上記一の局面による表示装置において、好ましくは、表示パネルをさらに備え、制御回
路部および昇圧回路の少なくとも一部は、表示パネル内に設けられている。このように構
成すれば、表示パネルの基板上に形成することにより部品点数を減少させることができる
とともに、表示装置の小型化を図ることができる。
【0013】
この場合、好ましくは、昇圧回路は、コンデンサとスイッチング素子とを含むチャージ
ポンプ方式の昇圧回路であり、チャージポンプ方式の昇圧回路の少なくともスイッチング
素子は、表示パネル内に設けられている。このように構成すれば、スイッチング素子を表
示パネルの基板上に形成した分、小型化を図ることができる。
【0014】
上記昇圧回路がコンデンサとスイッチング素子とを含むチャージポンプ方式の昇圧回路
である構成において、好ましくは、チャージポンプ方式の昇圧回路には、互いに位相の反
転した第1クロック信号および第2クロック信号からなるクロック信号が供給され、昇圧
回路のコンデンサは、第1ノードおよび第2ノードに、それぞれ、一方の端子が接続され
る第1コンデンサおよび第2コンデンサと、昇圧された電圧を充電するとともに表示パネ
ルに供給する第3コンデンサとからなり、スイッチング素子は、第1ノードにソース端子
およびドレイン端子の一方が接続され、他方が電源電位端子に接続される第1導電型の第
1トランジスタと、第1ノードにソース端子およびドレイン端子の一方が接続され、他方
が電圧出力端子および第3コンデンサの一方電極に接続される第2導電型の第2トランジ
スタと、第2ノードにソース端子およびドレイン端子の一方が接続され、他方が電源電位
端子に接続される第1導電型の第3トランジスタと、第2ノードにソース端子およびドレ
イン端子の一方が接続され、他方が電圧出力端子および第3コンデンサの一方電極に接続
される第2導電型の第4トランジスタとを備え、昇圧回路において、第1トランジスタお
よび第3トランジスタは電源電位端子により共通接続され、第2トランジスタおよび第4
トランジスタは電圧出力端子および第3コンデンサの一方電極によりそれぞれ共通接続さ
れ、第1トランジスタおよび第2トランジスタのゲート端子は共通接続されるとともに第
2ノードに接続され、第3トランジスタおよび第4トランジスタのゲート端子は共通接続
されるとともに第1ノードに接続されている。このように構成すれば、互いに位相の反転
した第1クロック信号および第2クロック信号により、半サイクルごとにポンピング動作
を行うことができるので、効率的にポンピング動作を行うことができる。したがって、目
標出力電圧に到達するまでの時間を短縮することができる。
【0015】
この場合、好ましくは、低電圧期間には、電源電圧、第1クロック信号および第2クロ
ック信号が徐々に立ち上がるように構成されている。このように構成すれば、徐々に立ち
上がる第1および第2クロック信号によって電源電圧を緩やかに昇圧することにより、突
入電流が大きくなるのを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による液晶表示装置の全体構成を示すブロック図である
。図2は、本発明の第1実施形態による液晶表示装置の液晶パネルにおけるブロック図で
ある。図3は、本発明の第1実施形態による液晶表示装置における昇圧回路の等価回路図
である。まず、図1〜図3を参照して、本発明の第1実施形態による液晶表示装置100
の構成について説明する。なお、第1実施形態では、表示装置の一例である液晶表示装置
に本発明を適用した場合について説明する。
【0018】
第1実施形態による液晶表示装置100は、図1に示すように、フレキシブルプリント
基板1(FPC)が接続された液晶パネル2により構成されている。なお、液晶パネル2
は、本発明における「表示パネル」の一例である。
【0019】
ここで、第1実施形態における液晶表示装置100では、チップ・オン・グラス方式(
Chip On Glass)により、液晶パネル2に液晶ドライバIC3がCOG接続
され、システム・オン・グラス方式(System On Glass)により、表示部
4とパネル内蔵電源部5とが一体的に形成されている。なお、液晶ドライバIC3は、本
発明における「制御回路部」の一例である。
【0020】
液晶ドライバIC3は、液晶表示装置100全体を制御するように構成されている。ま
た、液晶ドライバIC3は、図2に示すように、外部から供給される約3Vの外部電源V
HHを約5Vに昇圧するとともに、この昇圧された電源(約5V)をPVDD電源として
パネル内蔵電源部5に供給するように構成されている。
【0021】
また、パネル内蔵電源部5は、昇圧回路6を含む。この昇圧回路6は、液晶ドライバI
C3を介して供給される約5Vの電源(PVDD)を、約10Vに昇圧してVHH電源と
して表示部4に出力する機能を有する。
【0022】
また、液晶ドライバIC3は、クロック信号(DCCLKおよびBDCCLK)を昇圧
回路6に供給する機能を有するとともに、昇圧回路6は、液晶ドライバIC3から供給さ
れるPVDD電源をDCCLK信号およびBDCCLK信号に基づいて昇圧する機能を有
する。なお、DCCLK信号およびBDCCLK信号は、本発明における「第1クロック
信号」および「第2クロック信号」の一例であるとともに、互いに位相の反転した約5V
の振幅を有する信号である。また、液晶ドライバIC3は、液晶駆動回路(図示せず)に
電源(液晶駆動用電源)を供給する機能を有する。なお、液晶駆動回路は、液晶(図示せ
ず)を駆動させるための回路であるとともに、たとえば、VドライバおよびHドライバな
どからなる。また、液晶ドライバIC3は、液晶駆動回路にスタート信号(STV)など
の液晶駆動用信号を供給する機能を有する。なお、液晶駆動用電源および液晶駆動用信号
は、それぞれ、約5Vの振幅を有する。
【0023】
また、昇圧回路6は、図3に示すように、コンデンサC1、コンデンサC2およびコン
デンサC3からなる昇圧用コンデンサと、n型MOSトランジスタTr1、p型MOSト
ランジスタTr2、n型MOSトランジスタTr3およびp型MOSトランジスタTr4
からなるスイッチング素子とにより構成されている。これらのスイッチング素子は、n型
MOSトランジスタTr1およびp型MOSトランジスタTr2からなるインバータ回路
と、n型MOSトランジスタTr3およびp型MOSトランジスタTr4からなるインバ
ータ回路とがクロスカップル接続された構成を有する。なお、コンデンサC1、コンデン
サC2およびコンデンサC3は、それぞれ、本発明における「第1コンデンサ」、「第2
コンデンサ」および「第3コンデンサ」の一例である。また、n型MOSトランジスタT
r1、p型MOSトランジスタTr2、n型MOSトランジスタTr3およびp型MOS
トランジスタTr4は、それぞれ、本発明における「第1トランジスタ」、「第2トラン
ジスタ」、「第3トランジスタ」および「第4トランジスタ」の一例である。
【0024】
具体的には、コンデンサC1の一方電極、n型MOSトランジスタTr1のソースおよ
びp型MOSトランジスタTr2のソースは、ノードND1において互いに共通接続され
ているとともに、n型MOSトランジスタTr3およびp型MOSトランジスタTr4の
各ゲートに接続されている。また、コンデンサC2の一方電極、n型MOSトランジスタ
Tr3のソースおよびp型MOSトランジスタTr4のソースは、ノードND2において
互いに共通接続されているとともに、n型MOSトランジスタTr1およびp型MOSト
ランジスタTr2の各ゲートに接続されている。また、n型MOSトランジスタTr1お
よびn型MOSトランジスタTr3の各ドレインは、互いに共通接続されているとともに
、PVDD電源が供給される電源電位端子6aに接続されている。また、p型MOSトラ
ンジスタTr2およびp型MOSトランジスタTr4の各ドレインは、互いに共通接続さ
れているとともに、VHH電源を供給するための電圧出力端子6bおよびコンデンサC3
の一方電極に接続されている。また、コンデンサC1の他方電極にはDCCLK信号が供
給されるとともに、コンデンサC2の他方電極にはBDCCLK信号が供給されるように
構成されている。また、コンデンサC3の他方電極は、接地されている。
【0025】
ここで、第1実施形態では、スイッチング素子は、液晶パネル2内に一体的に形成され
ているとともに、昇圧回路6の昇圧用コンデンサはフレキシブルプリント基板1上に形成
されている。
【0026】
昇圧回路6は、以上のような構成であるとともに、チャージポンプ方式により昇圧する
機能を有する。なお、昇圧回路6の昇圧動作については後述する。
【0027】
図4は、本発明の第1実施形態による液晶表示装置の昇圧回路における動作を説明する
ためのタイミングチャートである。図5および図6は、本発明の第1実施形態による液晶
表示装置の昇圧回路における動作を説明するための等価回路図である。図7は、本発明の
第1実施形態による液晶表示装置の起動時における動作を説明するためのタイミングチャ
ートである。図8は、昇圧回路における従来の昇圧動作を説明するためのタイミングチャ
ートである。次に、図4〜図8を参照して、本発明の第1実施形態による液晶表示装置1
00の昇圧回路6における昇圧動作について説明する。
【0028】
まず、本発明の第1実施形態による液晶表示装置100の昇圧回路6の動作について説
明する。
【0029】
まず、図4および図5に示すように、時刻t1において、昇圧回路6のコンデンサC1
には、HレベルのDCCLK信号が供給される。これにより、ノードND1の電位は、D
CCLK信号のHレベルに相当する分だけ底上げされて上昇する。そして、これに伴い、
ノードND1にゲートが接続されたn型MOSトランジスタTr3がオン状態に移行する
。また、ノードND1にゲートが接続されたp型MOSトランジスタTr4がオフ状態に
移行する。一方で、昇圧回路6のコンデンサC2には、LレベルのBDCCLK信号が供
給される。これにより、ノードND2の電位は低下する。そして、これに伴い、ノードN
D2にゲートが接続されたn型MOSトランジスタTr1がオフ状態に移行するとともに
、p型MOSトランジスタTr2がオン状態に移行する。
【0030】
このとき、電源電位端子6aから、PVDD電源がオン状態のn型MOSトランジスタ
Tr3を介してコンデンサC2に供給される。そして、コンデンサC2に電荷が蓄積され
る。
【0031】
次に、図4および図6に示すように、時刻t2において、昇圧回路6のコンデンサC1
には、LレベルのDCCLK信号が供給される。これにより、ノードND1の電位は低下
する。そして、これに伴い、n型MOSトランジスタTr3およびp型MOSトランジス
タTr4の各ゲートにはLレベルの信号が供給される。これにより、n型MOSトランジ
スタTr3がオフ状態に移行するとともに、p型MOSトランジスタTr4がオン状態に
移行する。一方で、昇圧回路6のコンデンサC2には、HレベルのBDCCLK信号が供
給される。これにより、ノードND2の電位がHレベルに相当する分だけ底上げされて上
昇する。そして、これに伴い、n型MOSトランジスタTr1がオン状態に移行するとと
もに、p型MOSトランジスタTr2がオフ状態に移行する。
【0032】
このとき、p型MOSトランジスタTr4がオン状態になることにより、コンデンサC
2に蓄積されていた電荷がコンデンサC3に向かって放電される。また、このとき、n型
MOSトランジスタTr1がオン状態に移行することにより、電源電位端子6aから出力
されたPVDD電源がn型MOSトランジスタTr1を介してコンデンサC1に供給され
る。そして、コンデンサC1に電荷が蓄積される。
【0033】
そして、次に、時刻t3において、上述したt1における動作と同様の動作(図5参照
)が行われる。ここで、再度、p型MOSトランジスタTr2がオン状態に移行ことによ
り、コンデンサC1に蓄積されていた電荷がコンデンサC3に向かって放電される。また
、p型MOSトランジスタTr4がオフ状態に移行することにより、コンデンサC2には
、再度、PVDD電源が供給されて電荷が蓄積される。以上のように、上述した動作を繰
り返し行うことにより、コンデンサC1およびコンデンサC2において交互に充放電され
るとともに、ノードND1およびノードND2における電位の上昇に基づいて昇圧された
電圧がコンデンサC3に蓄積される。
【0034】
次に、本発明の第1実施形態における液晶表示装置100の電源投入時における動作に
ついて説明する。
【0035】
ここで、第1実施形態では、図7に示すように、電源投入時において、昇圧回路6に供
給されるPVDD電源の電圧を、通常動作時の電圧(約5V)よりも低くするソフトスタ
ート期間が設けられている。なお、ソフトスタート期間は、本発明における「低電圧期間
」の一例である。具体的には、電源が投入された際、外部から約3VのVDD電源が液晶
ドライバIC3に供給される。そして、ソフトスタート期間において、液晶ドライバIC
3から昇圧回路6に対して、PVDD電源が徐々に通常動作時の電圧にまで立ち上がるよ
うにして供給される。そして、ソフトスタート期間の終了時においてPVDD電源が通常
動作時の電圧である約5Vの大きさにまで上昇するとともに、昇圧動作が完全にオン状態
になる。つまり、通常動作時の電圧における昇圧動作が開始される。
【0036】
次に、図8を参照して、昇圧回路により従来の比較例による昇圧動作を行った場合につ
いて説明する。
【0037】
図8に示すように、従来の比較例による昇圧動作を行った場合、電源投入時において、
昇圧回路6には最初から通常動作時の大きさのPVDD電源(約5V)が供給される。そ
して、PVDD電源は、昇圧回路6においてDCCLK信号およびBDCCLK信号に基
づいてVHH電源(約10V)に昇圧される。ここで、比較例では、ソフトスタート期間
を設けていない分、電源投入時に昇圧回路6に供給されるPVDD電圧が大きい。そして
、その分だけ比較例では、図7に示した第1実施形態よりもコンデンサC3に流れ込む突
入電流(PVDD電流)が大きいのがわかる。
【0038】
図9および図10は、それぞれ、本発明の第1実施形態による液晶表示装置を用いた電
子機器の一例および他の例を説明するための図である。次に、図9および図10を参照し
て、本発明の第1実施形態による液晶表示装置100を用いた電子機器について説明する

【0039】
本発明の一実施形態による液晶表示装置100は、図9および図10に示すように、携
帯電話50およびPC(パーソナルコンピュータ)60などに用いることが可能である。
図9の携帯電話50においては、表示画面50aに本発明の第1実施形態における液晶表
示装置100が用いられる。また、図10のPC60においては、キーボード60aなど
の入力部および表示画面60bなどに用いることが可能である。また、周辺回路を液晶パ
ネル内の基板に内蔵することにより部品点数を大幅に減らすとともに、装置本体の軽量化
および小型化を行うことが可能になる。
【0040】
第1実施形態では、上記のように、昇圧回路6の起動時に、昇圧回路6に供給されるP
VDD電源の電圧を通常動作時の電圧よりも低くするソフトスタート期間を設けることに
よって、液晶表示装置100本体の電源投入時に、昇圧回路6には通常動作時に比べて低
い電圧のPVDD電源が供給される。これにより、昇圧回路6にPVDD電源が供給され
た際に、コンデンサC3に流れ込む電流(突入電流)を小さくすることができる。つまり
、PVDD電源の電圧が小さい分だけ、コンデンサC3に流れ込む電流(突入電流)の大
きさも小さくなるので、突入電流が大きい場合と異なり、装置が誤動作するのを抑制する
ことができる。
【0041】
また、第1実施形態では、ソフトスタート期間において、液晶ドライバIC3によりP
VDD電源が通常動作時の電圧に徐々に立ち上がるようにして昇圧回路6に供給するよう
に構成する。これにより、ソフトスタート期間における昇圧回路6に対して、起動時直後
から通常動作時の電圧が供給される場合と比べて、低い電圧が供給されるとともに、この
電圧が徐々に通常動作時の電圧にまで大きくなる。したがって、昇圧回路6のコンデンサ
C3に流れ込む電流も電圧に対応して徐々に大きくなることにより、コンデンサC3に流
れ込む突入電流が大きくなるのを抑制しながら昇圧動作を行うことができる。
【0042】
また、第1実施形態では、液晶ドライバIC3および昇圧回路6のスイッチング素子(
Tr1〜Tr4)を液晶パネル2内に設けることによって、部品点数を減少させることが
できるとともに、液晶表示装置100の小型化を行うことができる。
【0043】
また、第1実施形態では、昇圧回路6を、昇圧用のコンデンサC1〜C3と、クロスカ
ップル接続されたスイッチング素子(Tr1〜Tr4)とからなるチャージポンプ方式の
昇圧回路として構成することによって、DCCLK信号およびBDCCLK信号により、
半サイクル毎にポンピング動作を行うことができる。したがって、効率的にポンピング動
作を行うことができるので、目標出力電圧に到達するまでの時間を短縮することができる

【0044】
(第2実施形態)
図11は、本発明の第2実施形態における液晶表示装置の電源投入時における動作を説
明するためのタイミングチャートである。図11を参照して、この第2実施形態では、電
源投入時にPVDD電源の電圧を徐々に立ち上げるように制御した第1実施形態とは異な
り、PVDD電源の電圧のみならずクロック信号の電圧も徐々に立ち上げるように制御す
る例について説明する。なお、第2実施形態における液晶表示装置200の構成(図1参
照)は、第1実施形態と同様である。
【0045】
ここで、第2実施形態では、図11に示すように、電源投入された際、外部から約3V
のVDD電源が液晶ドライバIC3に供給される。そして、ソフトスタート期間において
、液晶ドライバIC3から昇圧回路6に対して、PVDD電源、DCCLK信号およびB
DCCLK信号が、それぞれ、徐々に通常動作時の電圧にまで立ち上がるようにして供給
される。そして、ソフトスタート期間の終了時において、PVDD電源、DCCLK信号
およびBDCCLK信号が通常動作時の電圧である約5Vの大きさにまで上昇するととも
に、昇圧動作が完全にオン状態になる。つまり、通常動作時の電圧における昇圧動作が開
始される。
【0046】
以上により、第2実施形態において発生する突入電流の大きさも、比較例(図8参照)
において発生する突入電流よりも小さいことがわかる。
【0047】
第2実施形態では、上記のように、ソフトスタート期間には、クロック信号およびPV
DD電源の両方が、それぞれ、通常動作時におけるクロック信号の電圧およびPVDD電
源の電圧よりも低くなるように構成する。これにより、昇圧回路6の起動時に、昇圧回路
6に供給されるPVDD電源が通常動作時よりも低いので、コンデンサC3に流れ込む突
入電流が大きくなるのを抑制することができる。また、これに加えて、PVDD電源を昇
圧するためのクロック信号の電圧も通常動作時よりも低いので、その分、PVDD電源を
緩やかに昇圧することができる。したがって、PVDD電源を徐々に昇圧することができ
るので、その分、コンデンサC3に流れ込む突入電流が大きくなるのをより抑制すること
ができる。また、電源電圧およびクロック信号の電圧を徐々に立ち上げることにより、突
入電流が大きくなるのを抑制しながら確実に電源電圧を昇圧することができる。
【0048】
なお、第2実施形態のその他の効果は、第1実施形態の効果と同様である。
【0049】
(第3実施形態)
図12は、本発明の第3実施形態における液晶表示装置の電源投入時における動作を説
明するためのタイミングチャートである。図12を参照して、この第3実施形態では、P
VDD電源またはクロック信号を徐々に立ち上げるように制御した第1および第2実施形
態とは異なり、通常動作時よりも低い一定の大きさのPVDD電源およびクロック信号を
昇圧回路6に供給する例について説明する。なお、第3実施形態における液晶表示装置3
00の構成(図1参照)は、第1および第2実施形態と同様である。
【0050】
ここで、第3実施形態では、図12に示すように、電源投入された際、外部から約3V
のVDD電源が液晶ドライバIC3に供給される。そして、ソフトスタート期間において
、液晶ドライバIC3から通常動作時の電圧(約5V)よりも小さい一定の大きさの電圧
(約3V)のPVDD電源が昇圧回路6に供給される。また、このとき、液晶ドライバI
C3から昇圧回路6に対して、通常動作時の電圧よりも低い約3Vの大きさの振幅で、か
つ、通常動作時よりも約2倍高い周波数からなるDCCLK信号およびBDCCLK信号
が供給される。そして、ソフトスタート期間終了後に、通常動作に移行する。通常動作移
行後は、液晶ドライバIC3から昇圧回路6に対して、約5VのPVDD電源と、約5V
の振幅で、かつ、ソフトスタート期間における周波数の約1/2の高さの周波数からなる
DCCLK信号およびBDCCLK信号とが供給される。
【0051】
以上により、第3実施形態において発生する突入電流の大きさも、比較例(図8参照)
において発生する突入電流よりも小さいことがわかる。
【0052】
第3実施形態では、上記のように、ソフトスタート期間において、液晶ドライバIC3
から一定の大きさ(約3V)のPVDD電源が昇圧回路6に供給することによって、昇圧
回路6に常に通常動作時よりも低い電圧のPVDD電源およびクロック信号を供給するの
で、通常動作時の電圧において昇圧する場合と比べて、PVDD電源を緩やかに昇圧する
ことができる。その結果、コンデンサC3に流れ込む突入電流が大きくなるのを抑制する
ことができる。また、液晶ドライバIC3から昇圧回路6に対して、通常動作時の電圧よ
りも低い約3Vの大きさの振幅で、かつ、通常動作時よりも約2倍高い周波数からなるク
ロック信号を供給することによって、クロック信号の周波数を高くした分だけ一度の昇圧
動作の期間が短くなるので、その分、一度の昇圧動作におけるPVDD電源の昇圧分を小
さくすることができる。その結果、PVDD電源を緩やかに昇圧することができるので、
これによってもコンデンサC3に流れ込む突入電流が大きくなるのを抑制することができ
る。
【0053】
なお、第3実施形態の効果は、第1および第2実施形態のその他の効果と同様である。
【0054】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと
考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範
囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が
含まれる。
【0055】
たとえば、上記第1〜第3実施形態では、昇圧回路を用いた液晶表示装置に本発明を適
用する例を示したが、本発明はこれに限らず、昇圧回路を用いた表示装置であれば、有機
EL(Electro Luminescence)表示装置などの液晶表示装置以外の
表示装置にも適用可能である。
【0056】
また、上記第1および第2実施形態では、ソフトスタート期間において、クロック信号
およびPVDD電源の少なくとも一方を徐々に立ち上げる例を示したが、本発明はこれに
限らず、上記第1および第2実施形態に第3実施形態を適用することにより、クロック信
号の周波数を通常動作時よりも高い状態にしながら徐々に立ち上げる場合も適用可能であ
る。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1実施形態による液晶表示装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態による液晶表示装置の液晶パネルにおけるブロック図である。
【図3】本発明の第1実施形態による液晶表示装置の昇圧回路における等価回路図である。
【図4】本発明の第1実施形態による液晶表示装置の昇圧回路における動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図5】本発明の第1実施形態による液晶表示装置の昇圧回路における動作を説明するための等価回路図である。
【図6】本発明の第1実施形態による液晶表示装置の昇圧回路における動作を説明するための等価回路図である。
【図7】本発明の第1実施形態による液晶表示装置の起動時における動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図8】昇圧回路における従来の昇圧動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図9】本発明の第1実施形態による液晶表示装置を用いた電子機器の一例を示す図である。
【図10】本発明の第1実施形態による液晶表示装置を用いた電子機器の一例を示す図である。
【図11】本発明の第2実施形態による液晶表示装置の起動時における動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図12】本発明の第3実施形態による液晶表示装置の起動時における動作を説明するためのタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0058】
2 液晶パネル(表示パネル)
3 液晶ドライバIC(制御回路部)
6 昇圧回路
100、200、300 液晶表示装置(表示装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電圧をクロック信号により昇圧する昇圧回路と、
前記クロック信号を供給する制御回路部とを備え、
前記昇圧回路の起動時に、前記電源電圧または前記クロック信号の電圧の少なくとも一
方の電圧を通常動作時の電圧よりも低くする低電圧期間を設けるように構成されている、
表示装置。
【請求項2】
前記低電圧期間には、前記電源電圧が通常動作時の電圧に徐々に立ち上がるように構成
されている、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記低電圧期間には、前記電源電圧または前記クロック信号の電圧の少なくとも一方の
電圧は、通常動作時よりも低い一定の大きさの電圧になるように構成されている、請求項
1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記低電圧期間には、前記クロック信号の電圧および前記電源電圧の両方が、それぞれ
、通常動作時における前記クロック信号の電圧および前記電源電圧よりも小さくなるよう
に構成され、前記低電圧期間におけるクロック信号の周波数は、前記通常動作時における
クロック信号の周波数よりも高い、請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
表示パネルをさらに備え、
前記制御回路部および前記昇圧回路の少なくとも一部は、前記表示パネル内に設けられ
ている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記昇圧回路は、コンデンサとスイッチング素子とを含むチャージポンプ方式の昇圧回
路であり、
前記チャージポンプ方式の昇圧回路の少なくともスイッチング素子は、前記表示パネル
内に設けられている、請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記チャージポンプ方式の昇圧回路には、互いに位相の反転した第1クロック信号およ
び第2クロック信号からなる前記クロック信号が供給され、
前記昇圧回路のコンデンサは、第1ノードおよび第2ノードに、それぞれ、一方の端子
が接続される第1コンデンサおよび第2コンデンサと、昇圧された電圧を充電するととも
に前記表示パネルに供給する第3コンデンサとからなり、
前記スイッチング素子は、前記第1ノードにソース端子およびドレイン端子の一方が接
続され、他方が電源電位端子に接続される第1導電型の第1トランジスタと、前記第1ノ
ードにソース端子およびドレイン端子の一方が接続され、他方が電圧出力端子および前記
第3コンデンサの一方電極に接続される第2導電型の第2トランジスタと、前記第2ノー
ドにソース端子およびドレイン端子の一方が接続され、他方が電源電位端子に接続される
第1導電型の第3トランジスタと、前記第2ノードにソース端子およびドレイン端子の一
方が接続され、他方が電圧出力端子および前記第3コンデンサの一方電極に接続される第
2導電型の第4トランジスタとを備え、
前記昇圧回路において、前記第1トランジスタおよび前記第3トランジスタは電源電位
端子により共通接続され、前記第2トランジスタおよび前記第4トランジスタは電圧出力
端子および前記第3コンデンサの一方電極によりそれぞれ共通接続され、前記第1トラン
ジスタおよび前記第2トランジスタのゲート端子は共通接続されるとともに前記第2ノー
ドに接続され、前記第3トランジスタおよび前記第4トランジスタのゲート端子は共通接
続されるとともに前記第1ノードに接続されている、請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記低電圧期間には、前記電源電圧、前記第1クロック信号および前記第2クロック信
号が徐々に立ち上がるように構成されている、請求項7に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−201243(P2009−201243A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39744(P2008−39744)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(304053854)エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】