表面処理方法及びその装置
【課題】 プラズマダメージがない状態で被処理体の表面を改質させる処理ができ、しかも被処理体の設置場所の自由度が大きい表面処理方法及びその装置を提供すること。
【解決手段】 N2O、NO、NO2のいずれかの窒素酸化物を含む処理ガスを表面処理ユニット30にて生成し、その処理ガスを給気連結管20及び給気部22を介して被処理体10の表面に形成された金属酸化物に接触させて、その窒素酸化物により被処理体10の金属酸化物を還元し、または、窒素酸化物により被処理体の金属酸化物を置換して、被処理体の表面を処理する。
【解決手段】 N2O、NO、NO2のいずれかの窒素酸化物を含む処理ガスを表面処理ユニット30にて生成し、その処理ガスを給気連結管20及び給気部22を介して被処理体10の表面に形成された金属酸化物に接触させて、その窒素酸化物により被処理体10の金属酸化物を還元し、または、窒素酸化物により被処理体の金属酸化物を置換して、被処理体の表面を処理する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、水晶発振子、回路基板又は線材などの被処理体を表面処理して、被処理体の表面を改質させる表面処理方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、真空プラズマにより生成される水素原子により金属表面を清浄化させる方法(特開平2−190489)や、真空プラズマクリーニングにより基板の半田の濡れ性を改善する方法(特開平3−174972)が提案されている。
【0003】
本願出願人は、従来の真空プラズマに代えて、大気圧プラズマによりガスを活性化し、イオン、励起種等の活性種により、半田付けされるワークの濡れ性を向上させる技術を既に提案している(WO94/22628、特願平7−2950)。
【0004】
ここで、上述した真空プラズマ及び大気圧プラズマを利用した処理では、いずれもプラズマにより励起された活性種により表面処理を行っている。
【0005】
ここで、被処理体をプラズマに晒す直接放電処理方式では、プラズマダメージに起因した被処理体の物理的性質の破壊が生じやすく、好ましくない。特に、被処理体の被処理面が金属であると、突起した部分に集中的に強いプラズマが生成され、被処理面全体を均一に処理できなくなる。
【0006】
一方、プラズマ発生部にて生成された活性種を、プラズマに晒されない位置に配置された被処理体に導いて処理する間接放電処理方式も提案されている。この場合には、上述したプラズマダメージは生じない。
【0007】
しかし、この活性種には寿命があり、この寿命が比較的短いため、被処理体をプラズマ発生部より離れた位置に置くことで、表面処理が不能になるか、あるいは処理効率が大幅に低下してしまう。従って、この間接放電処理方式は、被処理体の設置場所に制約が生じて実用的でない。
【0008】
また、例えばCF4を放電分解して得られるフッ素F2を用いて表面処理する方法もあるが、腐蝕ガスであるフッ素を大気に放出せずに回収する場合には、酸化アルミニウムを含むトラップ装置を用いてする。このトラップ装置では、フッ素を酸化アルミニウムでトラップすることで、フッ化アルミニウムが生成される。このフッ化アルミニウムは、専門の業者でしか廃棄できないので、排気処理に手間とコストがかかるという問題もあった。
【特許文献1】特開平2−190489号公報
【特許文献2】特開平3−174972号公報
【特許文献3】WO94/22628号公報
【特許文献4】特願平7−2950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の目的とするところは、プラズマダメージがない状態で被処理体の表面を改質させる処理ができ、しかも被処理体の設置場所の自由度が大きい表面処理方法及びその装置を提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、安価に入手できるガス、液体から低ランニングコストにて被処理体の表面を改質させる表面処理が可能な表面処理装置及びその方法を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、被処理体を酸化させるオゾンの発生を抑制しながら、被処理体の表面を改質することができる表面処理方法及びその装置を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、排気された処理ガスをトラップした後の処理が容易で、ランニングコストを低減できる表面処理方法及びその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、窒素酸化物を含む処理ガスを被処理体の表面に形成された金属酸化物に接触させて、前記被処理体の表面を処理することを特徴とする。
【0014】
これらの窒素酸化物は、被処理体の表面に形成された酸化物を還元して、被処理体の表面を改質することができる。あるいはこの窒素酸化物は、被処理体の表面に形成された酸化物を、該表面を形成する物質と結合された窒素酸化物に置換して、被処理体の表面を改質することができる。
【0015】
この窒素酸化物を含む処理ガスとして、N2O、NO、NO2を挙げることができる。
【0016】
被処理体の表面を予め半田処理した場合であって、半田処理後に酸化されてしまった表面を、上記の処理ガスによって改質する場合を例に挙げて説明する。この場合、被処理体の表面には、酸化鉛PbO又は酸化スズSnOが形成されている。上記の窒素酸化物は、これらの酸化物と下記の通り反応して、被処理体の表面を改質させる。例えば、処理ガスとしてNO2を用いると、
2PbO+2NO2→Pb(NO3)2+Pb …(1)
となり、被処理体表面の酸化物PbOが窒素酸化物Pb(NO3)2に置換される。
【0017】
また、処理ガスとしてN2Oを用いると、
PbO+N2O→2NO+Pb …(2)
となり、この場合は、被処理体表面の酸化物PbOが還元されてPbとなる。このとき、NOが発生し、これがさらに被処理体表面の改質に寄与する。
【0018】
処理ガスとして、NOを用いると、
PbO+NO→NO2+Pb …(3)
となり、この場合も被処理体表面の酸化物PbOが還元されてPbとなる。このとき、NO2が発生し、これがさらに上述の通り被処理体表面の改質に寄与する。
【0019】
ここで、酸化物PbOが還元されてPbとなると、例えば半田の濡れ性が向上する。酸化物PbOを窒素酸化物Pb(NO3)2に置換することでも、還元の場合ほどではないが半田の濡れ性は向上する。窒素酸化物Pb(NO3)2に置換した場合には、本発明の表面処理後に比較的長い時間大気に放置しても酸化されない点で優れている。以上のことは、酸化物SnO等の他の酸化物についても同様に成立する。
【0020】
以上の通り、本発明ではN2O、NO、NO2等の窒素酸化物を処理ガスとして用いることで、被処理体の表面を改質できることが分かる。
【0021】
この窒素酸化物を含む他の処理ガスとして、HNO3、HNO2、H2N2O2等の酸を含むガスを挙げることができる。
【0022】
処理ガスとしてHNO3を含むガスを用いると、
PbO+2HNO3→Pb(NO3)2+H2O …(4)
となり、被処理体表面の酸化物PbOが窒素酸化物Pb(NO3)2に置換される。
【0023】
また、処理ガスとしてHNO2を含むガスを用いると、
PbO+HNO2→Pb+HNO3 …(5)
となり、この場合は被処理体表面の酸化物PbOが還元されてPbとなる。このとき、HNO3が発生し、これがさらに被処理体の改質に寄与する。
【0024】
処理ガスとして、H2N2O2を含むガスを用いると、
2PbO+H2N2O2→2Pb+2HNO2 …(6)
となり、この場合も被処理体表面の酸化物PbOが還元されてPbとなる。このとき、HNO2が発生し、これがさらに被処理体の改質に寄与する。
【0025】
本発明は、上述した処理ガスをボンベより直接被処理体に向けて供給しても良いが、下記のいずれかの方法により処理ガスを生成して供給することでも良い。
【0026】
処理ガスを生成する一つの方法として、酸素原子(O)と窒素原子(N)とを含む供給ガスが供給される雰囲気中にて放電を生成して、前記処理ガスを生成することができる。供給ガスとしては、例えば酸素ガスO2及び窒素ガスN2を挙げることができる。他の供給ガスとして、酸素ガスO2及び窒素ガスN2に水H2O特に純水を加えたものを挙げることができる。さらに、他の供給ガスとして、窒素ガスN2と水H2O、あるいは圧縮空気と水H2Oを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
これらの供給ガスは放電により分解され、酸素原子(O)と窒素原子(N)との結合により、N2O、NO、NO2が生成される。従って、上述の式(1)〜(3)のいずれか1以上の反応が生じて、被処理体の表面を改質できる。
【0028】
さらに、水H2Oの添加により水素原子(H)が存在すると、下記の通りの反応により、HNO3、HNO2、H2N2O2も生成され得る。
【0029】
2NO+4H2O→2HNO3+3H2 …(7)
2NO+2H2O→2HNO2+H2 …(8)
2NO+2H2O→H2N2O2+H2+O2 …(9)
従って、水の添加により、(1)〜(3)のいずれか1以上の反応と、(4)〜(6)のいずれか1以上の反応とが行われて、被処理体の表面を改質することが分かる。このため、被処理体の表面を改質処理の効率が高まるという利点がある。なお、式(7)の反応は、式(8)(9)に比べて起きにくい。このため、HNO3は生成され難く、HNO2、H2N2O2が比較的多く生成されるので、上述の式(5)(6)の反応により、酸化物が還元されるので、被処理体の表面の改質処理の効率がさらに高まる。
【0030】
この供給ガスを励起させる放電を生成するために、大気圧又はその近傍の圧力下で、50kHz以下の低周波数の交流電圧又は直流電圧が印加される一対の電極を用いることができる。
【0031】
上述の低周波数の交流電圧又は直流電圧を一対の電極間に印加すると、放電電圧のピーク ツー ピーク電圧を比較的大きくでき、プラズマ生成用ガスであるHe等を供給しなくても、安定して放電を生成することができる。このような安定した大気圧プラズマを生成するのに、必ずしもHeを用いる必要が無くなり、ランニングコストを低減できる。
【0032】
処理ガスを生成する他の一つの方法として、酸素原子(O)と窒素原子(N)とを含む供給ガスが供給される雰囲気を加熱して、前記処理ガスを生成することができる。供給ガスとしては放電分解の場合と同じものを採用できる。この供給ガスは熱エネルギーにより分解され、N2O、NO、NO2が生成される。この場合も、水素原子(H)が存在すると、HNO3より多くのHNO2、H2N2O2が生成され、処理効率が高まる。
【0033】
ここで、プラズマ生成用の一対の電極は、誘電体を挟んで配置される第1、第2の電極を有し、この第1、第2の電極は、誘電体と対面する各面の互いに非対向となる位置に第1、第2の凹部が形成され、前記第1、第2の凹部の少なくとも一方に供給ガスが導入されることが好ましい。
【0034】
こうすると、第1,第2の電極間の浮遊容量が減少する。その浮遊容量にて消費されていた分の電力を放電電力として使用できるので、安定したプラズマを維持でき、あるいはプラズマ密度を高めることができ、処理レートを向上させることかできる。
【0035】
処理ガスを生成するさらに他の一つの方法として、酸素原子(O)と窒素原子(N)とを含む供給ガスが供給される雰囲気に光を照射して、前記処理ガスを生成することができる。この場合の供給ガスも上記の場合と同じでよく、この供給ガスが光分解され、N2O、NO、NO2が生成される。この場合も、水素原子(H)が存在すると、HNO3より多くのHNO2、H2N2O2が生成され、処理効率が高まる。
【0036】
上記の3つの方法のいずれにおいても、供給ガスとして、酸素(O2)ガスと窒素(N2)ガスとを用い、かつ、窒素ガスをキャリアガスとして兼用することが好ましい。窒素ガスは安価であるので、キャリアガスとして大量に用いてもランニングコストを低減できる。
【0037】
供給ガス中に水H2Oを含ませる方法として、少なくとも1種の供給ガスを、その供給途中にて水と接触させると良い。供給ガスに水が含まれていると、処理ガス生成雰囲気の湿度が高まり、被処理体を酸化させるオゾンの発生を抑制できる利点もある。
【0038】
ここで、酸素ガスと窒素ガスとの流量比の設定を変えることで、生成される処理ガスの種類を変更することができる。本発明者等の実験によれば、酸素ガスの供給量を15体積%以下とすると、NOを発生させることができることが確認された。処理ガスとしてのNOは、例えば上述の式(3)の通り被処理体表面の改質に寄与する。
【0039】
さらに、本発明者等の実験によれば、酸素ガスの供給量が10体積%を越えると、処理ガスとしてNO2が発生することが確認された。処理ガスとしてのNO2は、上述の式(1)の通り、被処理体表面の酸化物を窒素酸化物に置換して、被処理体表面を改質することができる。この場合、例えば半田の濡れ性を改善する際には還元の場合と比べて効果が劣るため、NO2の発生量を低減するために、酸素の供給利用を10体積%以下にすればよい。
【0040】
さらに、本発明書等の実験によれば、酸素ガスの供給量が3体積%以下であると、処理ガスとしてN2Oが発生することが確認された。処理ガスとしてのN2Oは、上述した式(2)の通り、被処理体表面を改質することができる。ただし、酸素ガスの供給量が3体積%以下だと供給される酸素の絶対量が少なく、発生するN2Oの量も少ないため、処理レートは低くなる。
【0041】
以上のことを考慮すると、酸素の供給量は、好ましくは15体積%以下、さらに好ましくは10体積%以下とするのがよい。さらに好ましくは、5〜10体積%とするのが良く、この範囲を外れた酸素供給量の場合よりも、被処理体表面の改質効率が優れることが分かった。酸素の供給量の最適値は、NO2の発生量が最大となる10体積%前後である。
【0042】
処理ガスを生成するさらに他の方法は、アルカリ金属と窒素化合物から成る塩の水溶液を電気分解して、窒素化合物を生成することである。この電気分解により、HNO3、HNO2、H2N2O2を生成できる。
【0043】
処理ガスを生成するさらに他の方法は、H2N2O2、HNO2、HNO3のいずれかの酸の水溶液にキャリアガスを接触させることである。このキャリアガスが上記の酸を含むことで、例えば上述した式(4)〜(6)のいずれかの反応により、被処理体の表面を改質することができる。
【0044】
本発明では、被処理体に向けて供給された処理ガス及び反応生成物を強制排気する工程と、その排気途中にて、処理ガス及び反応生成物をトラップする工程と、
をさらに有することが好ましい。このために、本発明装置では、強制排気手段とトラップ手段とを備える。これにより、窒素酸化物など大気に散乱させずに回収できる。特に、窒化物等を回収する触媒、活性炭等の浄化手段は、廃棄することが容易であり、ランニングコストを低減できる。
【0045】
この種の処理に適する被処理体として、回路基板、集積回路(IC)などの電子部品、半田付けされる線材、あるいは水晶振動子を挙げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、本発明の表面処理方法及び表面処理装置について、図面を参照して具体的に説明する。
【0047】
<処理ガスの生成方法について>
本発明では、窒素酸化物N2O、NO、NO2、H2N2O2、HNO2、HNO3などを含む処理ガスを被処理体に接触させ、この反応性の高い処理ガスにより、被処理体の表面を改質させる処理をしている。この反応性の高い処理ガスは、ボンベから供給管を介して被処理体に供給してもよいが、処理ガスを第1図〜第6図の6通りの方法のいずれかの方法で生成することもできる。
【0048】
第1図〜第6図において、共通する構成として、処理ガス生成用容器1と、生成された処理ガスを被処理体に向けて導く処理ガス供給管2とを有する。
【0049】
(放電分解方式)
第1図の実施例では、処理ガス供給管2及び供給ガス供給管3が連結された処理ガス生成用容器1内にて、処理ガスである酸素原子(O)及び窒素原子(N)を含む供給ガスを、大気圧又はその近傍の圧力下での放電により分解して、処理ガスを生成している。このために、処理ガス生成用容器1内に、一対の電極を備えたプラズマ発生部4を設けている。
【0050】
第1図の装置を用いて、供給ガスとして、窒素ガスN2を5リットル/minで、酸素ガスを200cc/minでそれぞれ供給し、一対の電極に供給される電源周波数を約10kHzとし、放電電圧のピーク ツー ピーク電圧がAC10kVppで放電を生じさせた。このとき、本実施例では酸素の供給量がほぼ3.85体積%(100×200/5200)であり、酸素と窒素が分解されて、NOを発生することができた。このNOを処理ガスとして被処理体に供給することで、上述の式(2)の通り、被処理体の表面を改質することができた。
【0051】
なお、上述した通り、酸素の供給量を変更することで、NOの発生量を増大させることができ、あるいは他の窒素酸化物であるN2O、NO2などを発生させることもできる。
【0052】
また、上記のように、電源周波数を10kHzと低周波数を用いることで、Heを供給しなくても安定して放電を起こすことができた。この結果、ランニングコストを低減できる。なお、Heを供給せずに放電を安定して起こすためには、低周波数を用いて放電電圧のピーク ツー ピーク電圧がある値以上大きいことが必要である。本発明者等の実験によれば、直流電圧、10kHz、30kHz、40kHzの各交流電圧で上述の放電が確認でき、放電電圧のピーク ツー ピーク電圧を大きく確保できる観点から、50kHz以下の低周波数の交流電圧又は直流電圧が有用であることが分かった。
【0053】
(熱分解方式)
第2図では、第1図の加熱器4に代えて、供給ガス例えば酸素ガスO2と窒素ガスN2が導入される処理ガス生成用容器1内を加熱する加熱器5を設けている。
【0054】
そして、第2図では、処理ガス生成用容器1内にて、供給ガスを熱エネルギーにより熱分解して、窒素酸化物N2O、NO、NO2を含む処理ガスを生成している。
【0055】
本実施例では、供給ガスとして、第1図の実施例と同じ種類のガスを同じ流量比にて供給した。加熱器5の設定温度を800℃としたところ、第1図の実施例と同じく、処理ガスとしてNOを生成することができた。この場合も、酸素の供給量を変更することで、NOの発生量を増大させることができ、あるいは他の窒素酸化物であるN2O、NO2などを発生させることもできる。
【0056】
(光分解方式)
第3図の実施例では、処理ガス供給管2及び原料ガス供給管3が連結された処理ガス生成用容器1内にて、供給ガスである例えば酸素ガスと窒素ガスとを光分解して、処理ガスを生成している。このために、処理ガス生成用容器1内に光例えば紫外線を照射するUVランプ6を設けている。
【0057】
供給ガスとして酸素及び窒素ガスを第1図,第2図の実施例と同じ流量比で導入し、UVランプ6のランプ出力を100mW/cm2とし、出射される光の波長を400nmとしたところ、第1図,第2図の実施例と同じく、処理ガスとしてNOを生成することができた。この場合も、酸素の供給量を変更することで、NOの発生量を増大させることができ、あるいは他の窒素酸化物であるN2O、NO2などを発生させることもできる。
【0058】
(電気分解方式)
第4図の実施例は、処理ガス供給管2が連結された処理ガス生成用容器1内にて、アルカリ金属と窒素化合物から成る塩の水溶液を電気分解して、処理ガスを生成している。このために、処理ガス生成用容器1内に上記塩の水溶液の水溶液を収容し、仕切り板7にて仕切られた各領域に電極8a,8bを配置した。この電極8a,8bに例えばDC24Vを印加したところ、HNO3、HNO2、H2N2O2を含む処理ガスを生成できた。
【0059】
なお、電気分解に適する塩の水溶液としては、NaNO3、KNO3などの硝酸塩、NaNO2などの亜硝酸塩、NaNOなどの次亜硝酸塩の水溶液を挙げることができる。
【0060】
(酸の水溶液とキャリアガスとの接触方式について)
第5図の実施例は、キャリアガス供給管を兼ねる処理ガス供給管2は、キャリアガスを処理ガス生成用容器1内に導く第1の分岐管2aと、処理ガス生成用容器1内にて発生した処理ガスを導出する第2の分岐管2bとを有する。キャリアガスをHNO3、HNO2又はH2N2O2の酸の水溶液と接触させ、その酸の液体を含む処理ガスを生成している。この酸の液体を含むキャリアガスを被処理体に接触させることで、上述の式(4)〜(6)のいずれかの反応式により、被処理体の表面を改質することができる。
【0061】
(供給ガスと水との接触方式について)
ここで、第1図〜第3図の実施例では、処理容器1内に水H2Oを導入することが好ましい。第1図の実施例の変形例を示す第6図では、水を収容した容器酸素ガス及び窒素ガスの一方のガスを直接に処理ガス生成用容器1に供給する第1のガス供給管3aと、その他方のガスを供給する第2のガス供給管3bと、第2のガス供給管3b途中にて他方のガスを水と接触させる容器9とを設けている。従って、他方のガスは水を含んだ状態で、処理ガス生成用容器1に導入される。この結果、上述した式(8)(9)の反応が主に生じて、処理ガスとしてHNO2又はH2N2O2が含まれることになる。この結果、上述した式(5)(6)の反応が主に生じて、被処理体の表面処理を促進できる。
【0062】
また、供給ガスに水が含まれていると、処理ガス生成用容器1内での湿度が高まり、この結果、被処理体を酸化させるオゾンの発生が抑制される。
【0063】
(被処理体の濡れ性向上の評価について)
ここで、被処理体をICのリードフレームとし、表面処理されたリードフレーム12の濡れ性について評価してみた。この評価結果を第7図に示す。第7図では、リードフレームの濡れ性の評価値を、リードフレームに作用する浮力の値で示している。この濡れ性を反映する浮力の値は、例えば第8図に模式的に示す測定装置で測定した値である。
【0064】
第8図の測定装置は、表面処理されたリードフレーム12の一方の端に弾性体であるバネ701を接続し、リードフレーム12の他方の端を容器702内の半田703内に浸して釣り下げたときの、バネ701に対するリードフレーム12の張力を浮力として測定している。半田の濡れ性が悪いときには、半田がリードフレーム12をはじいて、リードフレーム12は矢印aの方向に移動する。このときのバネ701に対する張力はマイナスの値となる。一方、半田の濡れ性が良いときには、リードフレーム12は矢印bの方向に移動する。このときのバネ701に対する張力はプラスの値となる。
【0065】
この第8図の測定装置にて、供給ガスの種類を変えて処理した複数のリードフレーム12について測定した。第7図に示すように、リードフレーム12に対して表面処理を行わない無処理のときには、半田の濡れ性が悪く、浮力はマイナスの値となった。
【0066】
一方、供給ガスとして酸素と水素を用い、かつ、酸素の供給量(体積%)を変えた場合、いずれも浮力はプラスの値となり、半田の濡れ性が向上していることが分かる。特に、酸素の供給量が10体積%の時に浮力の値が最大となり、半田の濡れ性が最も改善されるたことが分かる。さらに、酸素の供給量が5〜10体積%のとき、それ以外の供給量の場合よりも半田の濡れ性が改善されたことが分かる。
【0067】
さらに、窒素及び酸素(15体積%)を供給し、さらに水を添加したところ、水の添加の無い場合と比較して、浮力のプラス値が大きくなった。これは、上述した通り、処理ガスとしてHNO2又はH2N2O2が含まれることになり、半田の濡れ性がさらに向上したことを示している。
【0068】
また、供給ガスをN2+H2Oとした場合、及び供給ガスを圧縮空気+H2Oとした場合のそれぞれについても、浮力がプラス値となり、半田の濡れ性が向上したことを示している。
【0069】
ここで、本発明の処理ガス生成用容器1にて生成された処理ガスは、その処理ガスの高い反応性を、被処理体に暴露させるまで維持できる。一方、従来のようにプラズマ発生部にて生成されたフッ素ラジカル等の活性種は、プラズマ発生部外に配置した被処理体に暴露される途中にて、その寿命が途絶えてしまう。このことについて、本発明者などは下記の実験を行った。
【0070】
プラズマ発生部に連結される処理ガス供給管として、一般に配管チューブとしていられている1/4径サイズ(外径6.35mm、内径3.17mm)を使用した場合、供給ガス流量とチューブ断面積とから、処理ガスの流速を求めてみた。供給ガスの流量を100cc/minとした場合、処理ガスの流速は21.12cm/sとなる。フッ素ラジカルの寿命は1/1000s以下であるので、プラズマ発生部から0.0211cm離れた位置でフッ素ラジカル消滅してしまうことが分かる。
【0071】
<実施例装置全体の全体構成>
第9図は、本実施例にかかる表面処理装置の全体構成を示す概略説明図である。
【0072】
第9図に示す実施例において、半田付けされるワークをIC10とし、IC10は、例えばコンベアライン14上に載置され、図面の裏面から表面に向かう方向に順次搬送される。ここで、IC10のリードフレーム12は、予め半田メッキ処理されている。従って、リードフレーム12の表面は、鉛Pb及びスズSnで覆われているが、これが酸化されることで、酸化鉛PbO及び酸化スズSnOとなっている。本実施例は、このリードフレーム12の表面に形成された酸化鉛PbO及び酸化スズSnOを還元することで、リードフレーム12の半田の濡れ性の向上を図っている。このIC10のリードフレーム12を表面処理するために、表面処理ユニット30と、それに連結される給気連結管20及び排気連結管24が設けられている。
【0073】
給気連結管20には、表面処理ユニット30内部にて生成された処理ガスが導入され、IC10の上方にて傘上に広がる給気部22を介して、その処理ガスをIC10の特にリードフレーム12に暴露させている。排気連結管24は、リードフレーム12に暴露された処理ガスを吸引して、表面処理ユニット30を介して強制排気するためのものである。
【0074】
表面ユニット30には、供給ガス生成部600からの供給ガスが供給される。この供給ガス生成部600には、ガス出力部619、第1のガス供給管657、第2のガス供給管658、水蒸気混合器659が設けられている。
【0075】
ガス出力部619からは酸素及び窒素、窒素のみ、あるいは圧縮空気が、供給ガスとして供給される。
【0076】
ガス出力部619には、第1のガス供給管657、及び2本のガス供給管658a、658bから成る第2のガス供給管658が接続される。
【0077】
第1のガス供給管657には、供給ガスの出力をON/OFFするバルブ662、供給ガスの流量を調整する流量計664が設けられている。ガス出力部619からの窒素及び酸素、窒素、あるいは圧縮空気は、第1のガス供給管657のバルブ662を介して、流量計664で流量調整される。
【0078】
第2のガス供給管658のうちのガス供給管658aには、供給ガスの出力をON/OFFするバルブ663が設けられ、ガス供給管658bには、供給ガスの流量を調整する流量計665が設けられる。ガス出力部619からの供給ガスは、ガス供給管658aのバルブ663を介して水蒸気混合器659に導入される。
【0079】
水蒸気混合器659では、水、例えば純水660がヒーター661で熱せられ、水蒸気となっている。これにより、水蒸気混合器659に導入された供給ガスは、水蒸気を含む。この水分を含んだ供給ガスは、ガス供給管658bに導入されて、流量計665でその流量が調整される。
【0080】
このように、第1のガス供給管657では、水を含まない供給ガスが導かれ、第2のガス供給管658では、水を含む供給ガスが導かれる。なお、表面処理ユニット30に供給される、水を含まない供給ガスと、水を供給ガスとの割合は、第1のガス供給管657のバルブ652のON/OFF及び流量計664の流量調整、及び第2のガス供給管658のバルブのON/OFF及び流量計665の流量調整により、任意に調整することができる。
【0081】
第9図の構成によって表面処理することにより、ワークであるIC10のリードフレーム12の濡れ性を向上させることができる。
【0082】
(表面処理ユニット30の構造)
この表面処理ユニット30は、第10図に示すように、1つの筺体32内部に、ガス給気管40、電源50、プラズマ発生部60、排気管70及びトラップ手段である触媒80を搭載している。
【0083】
ガス給気管40は、第10図に示すプラズマ発生部60の上流側及び下流側にそれぞれ連結され、上流側のガス給気管40の途中には、流量計42が配設されている。このガス給気管40には、工場内の設備を利用して、上述した供給ガスが導入される。また、ガス給気管40の下流側の開口端は、第9図に示す給気連結管20に接続されている。
【0084】
プラズマ発生部60は、電源50からの電源供給を受けて、大気圧又はその近傍の圧力下にてプラズマを発生するものである。このプラズマ発生部60は、第11図に示すように、一対の電極62a及び62bの間に誘電体例えば多孔質絶縁体64が配置されることで、各電極62a及び62bが対向配置されている。一方の電極62aには電源50が接続され、他方の電極62bは接地されて、50kHz以下の比較的低周波数の交流電圧又は直流電圧が各電極間に印加される。
【0085】
電源50は、50kHz以下好ましくは0〜50kHzの比較的低周波数の交流電圧又は直流電圧を、一対の電極62a、62bに印加するもので、コンセントに差し込まれるプラグ52を有する。
【0086】
このように、電源50にて比較的低周波数の交流電圧が出力される理由は、下記の通りである。
【0087】
即ち、従来より大気圧プラズマを生成するためには、比較的プラズマの立ち易いヘリウムガスHeを大量に必要としていた。この場合には、一対の電極間に印加される交流電圧の周波数を、商用周波数である13.56MHzとすることができた。しかしながら、比較的高価なヘリウムガスを用いずに、窒素及び酸素又は圧縮空気等の雰囲気では、商用周波数である13.56MHzの交流電圧では大気圧プラズマを生成することができない。ところが、低周波数の交流電圧の場合、そのpeak to peak電圧を大きくすることができ、結果としてプラズマの生成に寄与するエネルギーを確保できると推測される。よって、0〜50kHzの比較的低周波数の交流電圧又は直流電圧を一対の電極に印加することで、大気圧プラズマを安定して生成できる。
【0088】
しかも、安価な窒素及び酸素、あるいは圧縮空気を用いて、大気圧又はその近傍の圧力下にて安定してプラズマを生成することができる。
【0089】
表面処理ユニット30の筺体32内部には、リードフレーム12に暴露された処理ガスを強制排気するための排気管70が設けられている。この表面処理ユニット30内の排気管70は、第9図に示す排気連結管24と接続される。
【0090】
さらに、この排気管70には、処理ガスを浄化する浄化手段、例えば触媒80が設けられている。ここで、被処理体に暴露される処理ガス中にはNOXが存在する。このNOXはIC10のリードフレーム12の表面処理に寄与するが、その表面処理に寄与しなかったNOX、あるいは処理時の反応により新たに生じた反応生成物が排気される。この排気ガスを触媒80に接触させ、処理ガスを化学的に浄化することができる。しかも、この触媒の特別な処理をせずに廃棄できる。
【0091】
特に、例えば吸着作用を備える活性炭を用いれば、排気成分を活性炭に吸着させることができる。この活性炭は、焼却して廃棄することができる。このように、活性炭を用いると、従来、処理ガスとしてCF4を使用し、トラップ手段としてアルミナを用いた場合と比較して、ランニングコストを低下させることができる。
【0092】
(第10図の表面処理ユニットを用いた表面処理方法)
第10図に示す実施例では、供給ガスが、工場内に配置された設備を用いて、表面処理ユニット30のガス給気管40にそれぞれ導入される。この供給ガスは、ガス給気管40に途中に設けられた流量計42により流量調整されている。流量調整された供給ガスは、プラズマ発生部60に導入される。プラズマ発生部60内に設けられた一対の電極62a、62bには、10〜50kHzの比較的低周波数の交流電圧が印加されている。
【0093】
プラズマ発生部60内では、供給ガスが励起されて分解され、窒素酸化物を含む処理ガスとなる。表面処理ユニット30のガス給気管40より導出された処理ガスは、この表面処理ユニット30に連結された給気連結管20を介して、給気部22よりIC10の表面に暴露される。これにより、IC10のリードフレーム12が、表面処理される。
【0094】
一方、リードフレーム12に暴露された処理ガスは、排気連結管24を介して表面処理ユニット30の内部に導入される。表面処理ユニット30では、排気管70を介して上記ガスを触媒80に導いている。
【0095】
なお、水分を含む処理ガスを生成するには、第9図に示した処理ガス生成部600の他に、第12図に示すように、ガス供給管658aが、水蒸気混合器659内の純水660と接触する構成を付加すればよい。第12図のガス供給管658aに導かれる供給ガスは、純水内に導かれて、純水と直接接触された後に、水分を含んだガスとして送出される。この場合、送出されるガス中の水分濃度を高めることが期待でき、効率の良い表面処理を行うことができる。
【0096】
さらに、第13図に示すように、ガス出力部619から供給ガスを導くガス供給管を1本とし、ガス供給管658aからバルブ663を介して導かれる供給ガスを純水に通すようにしてもよい。
【0097】
また、第9図、第12図に示す処理ガス生成部のうちの水蒸気混合器を、第9図の表面処理ユニット30内に搭載することも可能である。
【0098】
次に、各種の供給ガスをプラズマ放電により励起して分解し、窒素酸化物である処理ガスを生成し、それをワークに暴露した後の排気ガス中に含まれる成分について、表1に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
表1において、実験1〜4はいずれも本実施例のものであり、電極の種類A,Bについては後述する。
【0101】
まず、実験3と実験4とを比較する。実験4で使用した圧縮空気のみから成る処理ガスよりも、実験3で使用した水分を含む圧縮空気の処理ガスのほうが、NO2−が多く発生されており、実験3の場合のほうが濡れ性が良いことがわかった。
【0102】
ここで、ワークに暴露される処理ガス中のNO−は、ワーク表面の酸化物を還元してNO2−に成り易く、排気ガス中にNO2−が多く存在するほど半田の濡れ性が向上すると考えられる。すなわち、NO2−が多く発生することにより、リードフレーム12の表面に存在する酸化物の還元が促進されて、リードフレーム12の濡れ性を高めることができる。
【0103】
次に、同じ処理ガスを用いているが、電極が異なる場合として、実験1と実験3とを比較する。
【0104】
この比較では、Aタイプの電極を用いた実験1におけるNO2−、NO3−の発生量よりも、Bタイプの電極を用いた実験3におけるNO2−、NO3−の発生量のほうが多く、実験3のほうが半田の濡れ性がより改善されることがわかった。
【0105】
ここで、プラズマ条件の電極に用いているAタイプ電極の概略的な構成を第14図に示し、Bタイプの電極の概略的な構成を第15図に示す。
【0106】
第14図のAタイプの電極は、電源50が接続された電極65aと、接地された電極65bとから成る一対の電極である。この一対の電極65a、65bの間には誘電体64が配置されている。電極65aの、誘電体64に対向する面には、図面の表裏方向に貫通する凹部66が形成されている。大気圧又はその近傍の圧力下にて、電源50からの電源供給を受けることにより、凹部66を供給ガスが通過することで、凹部66内にてプラズマ放電が生成される。
【0107】
また、第15図のBタイプの電極は、誘電体64を挟んで配置される第1の電極67aと第2の電極67bを有する。第14図の電極とは異なり、第1、第2の電極67a、67bがそれぞれ誘電体64と対向する各面に、第1、第2の凹部68a、68bが形成されている。この第1、第2の凹部68a、68bは、図面の表裏面方向で貫通している。さらに、この第1、第2の凹部68a、68bは、互いに対向しない位置に形成されている。この第1、第2の凹部68a、68bのいずれか一方又は双方に供給ガスを通過させると、第1、第2の凹部68a、68b内でプラズマが生成され、供給ガスが分解されて窒素酸化物を含む処理ガスが生成される。
【0108】
第15図に示すBタイプの電極を用いた方が、NO2−、NO3−の発生量が多い理由は下記の通りである。すなわち、第15図に示すBタイプの電極のほうが、一対の電極間の浮遊容量が減少し、この浮遊容量にて消費される分の電力を、沿面放電のための電力として使用できるので、プラズマ密度が高まり、分解レートが高いからと考えられる。
【0109】
このように、排気ガス中にNO2−、NO3−が多いほど、被処理体表面の酸化物を還元する表面処理が促進されたと考えられる。よって、Bタイプの電極を用いてプラズマ放電を生成する実験3の表面処理のほうが、実験1の表面処理よりも濡れ性が良くなると考えられる。なお、表1の発生ガスは、処理ガスを触媒と接触させて浄化することで、10−2〜10−1mg/m3のオーダまで低下させることができた。
【0110】
(第9図の表面処理ユニットの変形例)
次に、第9図の表面処理ユニット30の他の構成を、第16図及び第17図を参照して説明する。
【0111】
第16図に示す表面処理ユニット110と、第10図に示す表面処理ユニット30との相違点は、筺体32内にさらにガス給気管41を搭載した点である。ポンプからの圧縮空気、又はボンベからの窒素が、このガス給気管41に導入されて、プラズマ生成部60に供給される。一方、ガス給気管40からは水蒸気が供給されるので、濡れ性の高い、表面処理を行うことができる。
【0112】
また、第17図に示すように、表面処理ユニット120内に、予めガス出力部619を搭載しておくことも可能である。このガス生成部619からの供給ガスをガス給気管40で導いて、流量計42で流量調整し、プラズマ生成部60に供給する。
【0113】
<表面処理ユニットの各種タイプについて>
次に、上述した表面処理ユニット30,100及び110の形状もしくはそれらに連結される給気連結管20、排気連結管24の形状を変更した各種タイプについて、第18図以降を参照して説明する。
【0114】
(1)ラインタイプ
第18図及び第19図に示すラインタイプの表面処理ユニット160は、コンベアライン14により搬送される例えば板状のワーク500と対向する上方位置に、設けられている。この表面処理ユニット160は、筺体161の下部に給排気部162を備えている。この給排気部162は、給気管164及び排気管166にて二重間構造を構成している。本実施例では、中心部に給気管164を配置し、その周囲に排気管166を配置し、排気管166の下端部は、傘状に広がる形状となっている。
【0115】
コンベアライン14によりワーク500が間欠的にあるいは連続的に搬送されると、このワーク500が表面処理ユニットの給排気部162と対向することで、ワーク500の表面が表面処理されることになる。これにより、表面処理ユニット160を固定しながらも、ワーク500の全面について、多数のワーク500を連続的に表面処理することが可能となる。
【0116】
(2)スタンドタイプ
第20図に示すスタンドタイプの表面処理ユニット200は、載置可能な底面を有する筺体201を有している。この筺体201内部には、上述した通り処理ガスが導入され、触媒を経由して排気ガスが排気される。この筺体201には、上方に伸びる給気連結管210及び排気連結管230が設けられている。給気連結管210は屈曲され、下端にて開口する給気部220を有する。この給気部220の周囲には、処理ガスの拡散を防止するための傘状の拡散防止板222が設けられている。一方、排気連結管230は、拡散防止板222と対向する位置に、上方に向かうに従い開口面積の増大する傘状の排気吸引部240が形成されている。
【0117】
そして、第20図及び第21図に示すとおり、ワークとして例えば端部の被覆材がはがされた線材250の先端部を表面する処理に際して、この線材250の予めメッキ処理された先端部252を給気部220の直下の位置に配置する。こうすると、給気部220より導出される処理ガスにより線材250の先端部252が表面処理され、その曝露された処理ガスは排気吸引部240及び排気連結管230を介して筺体201内の触媒に導かれることになる。
【0118】
このように、スタンドタイプの表面処理ユニット200を用いることで、空気中に局所的な処理ガスの雰囲気を作ることができ、線材250などのワークを容易に表面処理することが可能となる。
【0119】
(3)棒状タイプ
第22図及び第23図に示す実施例は、表面処理ユニット300自体を、例えば半田ごてのような筒状の筺体301にて構成したものである。この筺体301に連結された給気連結管310及び排気連結管320は二重管構造となっており、内側の給気連結管310により処理ガスがワーク500に向けて導出され、外側の排気連結管320よりその曝露された処理ガスが筺体301内部に導かれる。排気連結管320の先端部は、排気領域を拡大する観点から、第22図及び第23図に示すとおり、傘状に広がる形状とすることが好ましい。
【0120】
このように、表面処理ユニット300自体を棒状タイプに構成すれば、この表面処理ユニット300自体を手で操作して、各種ワークの表面処理を行うことが可能となる。
【0121】
(4)トースタータイプ
第24図及び第25図に示す表面処理ユニット400は、筺体401の一面例えばその上面に、板状のワーク500を挿入できるスリット状の挿入部410を有している。このスリット状の挿入部410には排気管420が連結されている。一方、スリット状の挿入部410の例えば両側壁には、該側壁にて一端が開口する処理ガス給気管430が設けられている。
【0122】
この構成によれば、板状のワーク500を、筺体401の上面に設けられたスリット状の挿入部410内部に挿入することで、このワーク500の両面より処理ガスが吹き付けられ、板状のワーク500の両面を同時に表面処理することが可能となる。なお、ワーク500の片面のみが表面処理されるものにあっては、処理ガス給気管430をスリット状の挿入部410の一方の側壁のみに開口させればよい。
【0123】
(5)バッチ処理タイプ
第26図は、多数のワークをバッチ式で処理する装置を示している。この装置は、上述の表面処理ユニット30(又は110又は120)に接続された給気連結管20及び排気連結管24を、バッチ処理ボックス450に連結している。このバッチ処理ボックス450は、内部に多数のワーク510を収容するものである。バッチ処理されるワーク510としては、上述のIC10、線材250、板状のワーク500の他、例えばロール状に巻回されたTABテープであってもよい。
【0124】
このバッチ処理タイプによれば、一度に多数のワーク510を表面処理することが可能となる。なお、本発明の処理方法に表面処理されたワークは、改善されたその半田の濡れ性を、表面処理後比較的長い時間維持することができるため、バッチ処理後半田付けまでワークをストックしておいても、良好な半田付けを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】放電分解方式にて処理ガスを生成する本発明の実施例を示す概略説明図である。
【図2】熱分解方式にて処理ガスを生成する本発明の実施例を示す概略説明図である。
【図3】光分解方式にて処理ガスを生成する本発明の実施例を示す概略説明図である。
【図4】電気分解方式にて処理ガスを生成する本発明の実施例を示す概略説明図である。
【図5】酸の水溶液とキャリアガスとを接触させて処理ガスを生成する本発明の実施例を示す概略説明図である。
【図6】供給ガスを水と接触させて処理ガスを生成する本発明の実施例を示す概略説明図である。
【図7】本発明の実施例により表面処理されたワークの半田の濡れ性を示す特性図である。
【図8】第7図の半田の濡れ性を測定を説明する模式図である。
【図9】本発明の実施例に係る表面処理装置の全体構成を示す概略説明図である。
【図10】第9図に示す表面処理ユニットの内部構成を示す概略説明図である。
【図11】第10図に示すプラズマ発生部の構成を示す概略説明図である。
【図12】第9図に示す処理ガス生成部の他の第1実施例を示す概略説明図である。
【図13】第9図に示す処理ガス生成部の他の第2実施例を示す概略説明図である。
【図14】プラズマ発生部の他の第1の構成を示す概略説明図である。
【図15】プラズマ発生部の他の第2の構成を示す概略説明図である。
【図16】第9図に示す表面処理ユニットの他の第1の内部構成を示す概略説明図である。
【図17】第9図に示す表面処理ユニットの他の第2の内部構成を示す概略説明図である。
【図18】表面処理ユニットによりラインタイプの処理装置を構成した実施例を示す概略説明図である。
【図19】第18図に示す表面処理ユニットの給排気部を示す概略断面図である。
【図20】表面処理ユニットによりスタンドタイプの処理装置を構成した実施例を示す概略説明図である。
【図21】第20図に示す表面処理ユニットの給排気部を示す概略断面図である。
【図22】表面処理ユニットにより棒状タイプの処理装置を構成した実施例を示す概略説明図である。
【図23】第22図に示す表面処理ユニットの給排気部を示す概略断面図である。
【図24】表面処理ユニットによりトースタータイプの処理装置を構成した実施例を示す概略説明図である。
【図25】第24図に示す表面処理ユニットの給排気部を示す概略断面図である。
【図26】表面処理ユニットによりバッチ処理タイプの処理装置を構成した実施例を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0126】
1 処理用ガス生成容器、2 処理ガス供給管、3 供給ガス供給管、4,5 加熱器、6 UVランプ、7 仕切り板、8a,8b 電極、10,500 ワーク、12 リードフレーム、14 コンベアライン、20 給気連結管、22 給気部、24 排気連結管、30,100,110,120,160,200,300,400 表面処理ユニット、32,161,201,301,401 筐体、40 ガス供給管、50 電源、60 プラズマ発生部、62a,62b 一対の電極、64 誘電体(多孔質絶縁体)、65a,65b 一対の電極、66 凹部、67a,67b 一対の電極、68a,68b 凹部、70 排気管、80 トラップ手段、600 供給ガス生成部、657 第1のガス供給管、658 第2のガス供給管、659 水蒸気混合器
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、水晶発振子、回路基板又は線材などの被処理体を表面処理して、被処理体の表面を改質させる表面処理方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、真空プラズマにより生成される水素原子により金属表面を清浄化させる方法(特開平2−190489)や、真空プラズマクリーニングにより基板の半田の濡れ性を改善する方法(特開平3−174972)が提案されている。
【0003】
本願出願人は、従来の真空プラズマに代えて、大気圧プラズマによりガスを活性化し、イオン、励起種等の活性種により、半田付けされるワークの濡れ性を向上させる技術を既に提案している(WO94/22628、特願平7−2950)。
【0004】
ここで、上述した真空プラズマ及び大気圧プラズマを利用した処理では、いずれもプラズマにより励起された活性種により表面処理を行っている。
【0005】
ここで、被処理体をプラズマに晒す直接放電処理方式では、プラズマダメージに起因した被処理体の物理的性質の破壊が生じやすく、好ましくない。特に、被処理体の被処理面が金属であると、突起した部分に集中的に強いプラズマが生成され、被処理面全体を均一に処理できなくなる。
【0006】
一方、プラズマ発生部にて生成された活性種を、プラズマに晒されない位置に配置された被処理体に導いて処理する間接放電処理方式も提案されている。この場合には、上述したプラズマダメージは生じない。
【0007】
しかし、この活性種には寿命があり、この寿命が比較的短いため、被処理体をプラズマ発生部より離れた位置に置くことで、表面処理が不能になるか、あるいは処理効率が大幅に低下してしまう。従って、この間接放電処理方式は、被処理体の設置場所に制約が生じて実用的でない。
【0008】
また、例えばCF4を放電分解して得られるフッ素F2を用いて表面処理する方法もあるが、腐蝕ガスであるフッ素を大気に放出せずに回収する場合には、酸化アルミニウムを含むトラップ装置を用いてする。このトラップ装置では、フッ素を酸化アルミニウムでトラップすることで、フッ化アルミニウムが生成される。このフッ化アルミニウムは、専門の業者でしか廃棄できないので、排気処理に手間とコストがかかるという問題もあった。
【特許文献1】特開平2−190489号公報
【特許文献2】特開平3−174972号公報
【特許文献3】WO94/22628号公報
【特許文献4】特願平7−2950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の目的とするところは、プラズマダメージがない状態で被処理体の表面を改質させる処理ができ、しかも被処理体の設置場所の自由度が大きい表面処理方法及びその装置を提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、安価に入手できるガス、液体から低ランニングコストにて被処理体の表面を改質させる表面処理が可能な表面処理装置及びその方法を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、被処理体を酸化させるオゾンの発生を抑制しながら、被処理体の表面を改質することができる表面処理方法及びその装置を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、排気された処理ガスをトラップした後の処理が容易で、ランニングコストを低減できる表面処理方法及びその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、窒素酸化物を含む処理ガスを被処理体の表面に形成された金属酸化物に接触させて、前記被処理体の表面を処理することを特徴とする。
【0014】
これらの窒素酸化物は、被処理体の表面に形成された酸化物を還元して、被処理体の表面を改質することができる。あるいはこの窒素酸化物は、被処理体の表面に形成された酸化物を、該表面を形成する物質と結合された窒素酸化物に置換して、被処理体の表面を改質することができる。
【0015】
この窒素酸化物を含む処理ガスとして、N2O、NO、NO2を挙げることができる。
【0016】
被処理体の表面を予め半田処理した場合であって、半田処理後に酸化されてしまった表面を、上記の処理ガスによって改質する場合を例に挙げて説明する。この場合、被処理体の表面には、酸化鉛PbO又は酸化スズSnOが形成されている。上記の窒素酸化物は、これらの酸化物と下記の通り反応して、被処理体の表面を改質させる。例えば、処理ガスとしてNO2を用いると、
2PbO+2NO2→Pb(NO3)2+Pb …(1)
となり、被処理体表面の酸化物PbOが窒素酸化物Pb(NO3)2に置換される。
【0017】
また、処理ガスとしてN2Oを用いると、
PbO+N2O→2NO+Pb …(2)
となり、この場合は、被処理体表面の酸化物PbOが還元されてPbとなる。このとき、NOが発生し、これがさらに被処理体表面の改質に寄与する。
【0018】
処理ガスとして、NOを用いると、
PbO+NO→NO2+Pb …(3)
となり、この場合も被処理体表面の酸化物PbOが還元されてPbとなる。このとき、NO2が発生し、これがさらに上述の通り被処理体表面の改質に寄与する。
【0019】
ここで、酸化物PbOが還元されてPbとなると、例えば半田の濡れ性が向上する。酸化物PbOを窒素酸化物Pb(NO3)2に置換することでも、還元の場合ほどではないが半田の濡れ性は向上する。窒素酸化物Pb(NO3)2に置換した場合には、本発明の表面処理後に比較的長い時間大気に放置しても酸化されない点で優れている。以上のことは、酸化物SnO等の他の酸化物についても同様に成立する。
【0020】
以上の通り、本発明ではN2O、NO、NO2等の窒素酸化物を処理ガスとして用いることで、被処理体の表面を改質できることが分かる。
【0021】
この窒素酸化物を含む他の処理ガスとして、HNO3、HNO2、H2N2O2等の酸を含むガスを挙げることができる。
【0022】
処理ガスとしてHNO3を含むガスを用いると、
PbO+2HNO3→Pb(NO3)2+H2O …(4)
となり、被処理体表面の酸化物PbOが窒素酸化物Pb(NO3)2に置換される。
【0023】
また、処理ガスとしてHNO2を含むガスを用いると、
PbO+HNO2→Pb+HNO3 …(5)
となり、この場合は被処理体表面の酸化物PbOが還元されてPbとなる。このとき、HNO3が発生し、これがさらに被処理体の改質に寄与する。
【0024】
処理ガスとして、H2N2O2を含むガスを用いると、
2PbO+H2N2O2→2Pb+2HNO2 …(6)
となり、この場合も被処理体表面の酸化物PbOが還元されてPbとなる。このとき、HNO2が発生し、これがさらに被処理体の改質に寄与する。
【0025】
本発明は、上述した処理ガスをボンベより直接被処理体に向けて供給しても良いが、下記のいずれかの方法により処理ガスを生成して供給することでも良い。
【0026】
処理ガスを生成する一つの方法として、酸素原子(O)と窒素原子(N)とを含む供給ガスが供給される雰囲気中にて放電を生成して、前記処理ガスを生成することができる。供給ガスとしては、例えば酸素ガスO2及び窒素ガスN2を挙げることができる。他の供給ガスとして、酸素ガスO2及び窒素ガスN2に水H2O特に純水を加えたものを挙げることができる。さらに、他の供給ガスとして、窒素ガスN2と水H2O、あるいは圧縮空気と水H2Oを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
これらの供給ガスは放電により分解され、酸素原子(O)と窒素原子(N)との結合により、N2O、NO、NO2が生成される。従って、上述の式(1)〜(3)のいずれか1以上の反応が生じて、被処理体の表面を改質できる。
【0028】
さらに、水H2Oの添加により水素原子(H)が存在すると、下記の通りの反応により、HNO3、HNO2、H2N2O2も生成され得る。
【0029】
2NO+4H2O→2HNO3+3H2 …(7)
2NO+2H2O→2HNO2+H2 …(8)
2NO+2H2O→H2N2O2+H2+O2 …(9)
従って、水の添加により、(1)〜(3)のいずれか1以上の反応と、(4)〜(6)のいずれか1以上の反応とが行われて、被処理体の表面を改質することが分かる。このため、被処理体の表面を改質処理の効率が高まるという利点がある。なお、式(7)の反応は、式(8)(9)に比べて起きにくい。このため、HNO3は生成され難く、HNO2、H2N2O2が比較的多く生成されるので、上述の式(5)(6)の反応により、酸化物が還元されるので、被処理体の表面の改質処理の効率がさらに高まる。
【0030】
この供給ガスを励起させる放電を生成するために、大気圧又はその近傍の圧力下で、50kHz以下の低周波数の交流電圧又は直流電圧が印加される一対の電極を用いることができる。
【0031】
上述の低周波数の交流電圧又は直流電圧を一対の電極間に印加すると、放電電圧のピーク ツー ピーク電圧を比較的大きくでき、プラズマ生成用ガスであるHe等を供給しなくても、安定して放電を生成することができる。このような安定した大気圧プラズマを生成するのに、必ずしもHeを用いる必要が無くなり、ランニングコストを低減できる。
【0032】
処理ガスを生成する他の一つの方法として、酸素原子(O)と窒素原子(N)とを含む供給ガスが供給される雰囲気を加熱して、前記処理ガスを生成することができる。供給ガスとしては放電分解の場合と同じものを採用できる。この供給ガスは熱エネルギーにより分解され、N2O、NO、NO2が生成される。この場合も、水素原子(H)が存在すると、HNO3より多くのHNO2、H2N2O2が生成され、処理効率が高まる。
【0033】
ここで、プラズマ生成用の一対の電極は、誘電体を挟んで配置される第1、第2の電極を有し、この第1、第2の電極は、誘電体と対面する各面の互いに非対向となる位置に第1、第2の凹部が形成され、前記第1、第2の凹部の少なくとも一方に供給ガスが導入されることが好ましい。
【0034】
こうすると、第1,第2の電極間の浮遊容量が減少する。その浮遊容量にて消費されていた分の電力を放電電力として使用できるので、安定したプラズマを維持でき、あるいはプラズマ密度を高めることができ、処理レートを向上させることかできる。
【0035】
処理ガスを生成するさらに他の一つの方法として、酸素原子(O)と窒素原子(N)とを含む供給ガスが供給される雰囲気に光を照射して、前記処理ガスを生成することができる。この場合の供給ガスも上記の場合と同じでよく、この供給ガスが光分解され、N2O、NO、NO2が生成される。この場合も、水素原子(H)が存在すると、HNO3より多くのHNO2、H2N2O2が生成され、処理効率が高まる。
【0036】
上記の3つの方法のいずれにおいても、供給ガスとして、酸素(O2)ガスと窒素(N2)ガスとを用い、かつ、窒素ガスをキャリアガスとして兼用することが好ましい。窒素ガスは安価であるので、キャリアガスとして大量に用いてもランニングコストを低減できる。
【0037】
供給ガス中に水H2Oを含ませる方法として、少なくとも1種の供給ガスを、その供給途中にて水と接触させると良い。供給ガスに水が含まれていると、処理ガス生成雰囲気の湿度が高まり、被処理体を酸化させるオゾンの発生を抑制できる利点もある。
【0038】
ここで、酸素ガスと窒素ガスとの流量比の設定を変えることで、生成される処理ガスの種類を変更することができる。本発明者等の実験によれば、酸素ガスの供給量を15体積%以下とすると、NOを発生させることができることが確認された。処理ガスとしてのNOは、例えば上述の式(3)の通り被処理体表面の改質に寄与する。
【0039】
さらに、本発明者等の実験によれば、酸素ガスの供給量が10体積%を越えると、処理ガスとしてNO2が発生することが確認された。処理ガスとしてのNO2は、上述の式(1)の通り、被処理体表面の酸化物を窒素酸化物に置換して、被処理体表面を改質することができる。この場合、例えば半田の濡れ性を改善する際には還元の場合と比べて効果が劣るため、NO2の発生量を低減するために、酸素の供給利用を10体積%以下にすればよい。
【0040】
さらに、本発明書等の実験によれば、酸素ガスの供給量が3体積%以下であると、処理ガスとしてN2Oが発生することが確認された。処理ガスとしてのN2Oは、上述した式(2)の通り、被処理体表面を改質することができる。ただし、酸素ガスの供給量が3体積%以下だと供給される酸素の絶対量が少なく、発生するN2Oの量も少ないため、処理レートは低くなる。
【0041】
以上のことを考慮すると、酸素の供給量は、好ましくは15体積%以下、さらに好ましくは10体積%以下とするのがよい。さらに好ましくは、5〜10体積%とするのが良く、この範囲を外れた酸素供給量の場合よりも、被処理体表面の改質効率が優れることが分かった。酸素の供給量の最適値は、NO2の発生量が最大となる10体積%前後である。
【0042】
処理ガスを生成するさらに他の方法は、アルカリ金属と窒素化合物から成る塩の水溶液を電気分解して、窒素化合物を生成することである。この電気分解により、HNO3、HNO2、H2N2O2を生成できる。
【0043】
処理ガスを生成するさらに他の方法は、H2N2O2、HNO2、HNO3のいずれかの酸の水溶液にキャリアガスを接触させることである。このキャリアガスが上記の酸を含むことで、例えば上述した式(4)〜(6)のいずれかの反応により、被処理体の表面を改質することができる。
【0044】
本発明では、被処理体に向けて供給された処理ガス及び反応生成物を強制排気する工程と、その排気途中にて、処理ガス及び反応生成物をトラップする工程と、
をさらに有することが好ましい。このために、本発明装置では、強制排気手段とトラップ手段とを備える。これにより、窒素酸化物など大気に散乱させずに回収できる。特に、窒化物等を回収する触媒、活性炭等の浄化手段は、廃棄することが容易であり、ランニングコストを低減できる。
【0045】
この種の処理に適する被処理体として、回路基板、集積回路(IC)などの電子部品、半田付けされる線材、あるいは水晶振動子を挙げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、本発明の表面処理方法及び表面処理装置について、図面を参照して具体的に説明する。
【0047】
<処理ガスの生成方法について>
本発明では、窒素酸化物N2O、NO、NO2、H2N2O2、HNO2、HNO3などを含む処理ガスを被処理体に接触させ、この反応性の高い処理ガスにより、被処理体の表面を改質させる処理をしている。この反応性の高い処理ガスは、ボンベから供給管を介して被処理体に供給してもよいが、処理ガスを第1図〜第6図の6通りの方法のいずれかの方法で生成することもできる。
【0048】
第1図〜第6図において、共通する構成として、処理ガス生成用容器1と、生成された処理ガスを被処理体に向けて導く処理ガス供給管2とを有する。
【0049】
(放電分解方式)
第1図の実施例では、処理ガス供給管2及び供給ガス供給管3が連結された処理ガス生成用容器1内にて、処理ガスである酸素原子(O)及び窒素原子(N)を含む供給ガスを、大気圧又はその近傍の圧力下での放電により分解して、処理ガスを生成している。このために、処理ガス生成用容器1内に、一対の電極を備えたプラズマ発生部4を設けている。
【0050】
第1図の装置を用いて、供給ガスとして、窒素ガスN2を5リットル/minで、酸素ガスを200cc/minでそれぞれ供給し、一対の電極に供給される電源周波数を約10kHzとし、放電電圧のピーク ツー ピーク電圧がAC10kVppで放電を生じさせた。このとき、本実施例では酸素の供給量がほぼ3.85体積%(100×200/5200)であり、酸素と窒素が分解されて、NOを発生することができた。このNOを処理ガスとして被処理体に供給することで、上述の式(2)の通り、被処理体の表面を改質することができた。
【0051】
なお、上述した通り、酸素の供給量を変更することで、NOの発生量を増大させることができ、あるいは他の窒素酸化物であるN2O、NO2などを発生させることもできる。
【0052】
また、上記のように、電源周波数を10kHzと低周波数を用いることで、Heを供給しなくても安定して放電を起こすことができた。この結果、ランニングコストを低減できる。なお、Heを供給せずに放電を安定して起こすためには、低周波数を用いて放電電圧のピーク ツー ピーク電圧がある値以上大きいことが必要である。本発明者等の実験によれば、直流電圧、10kHz、30kHz、40kHzの各交流電圧で上述の放電が確認でき、放電電圧のピーク ツー ピーク電圧を大きく確保できる観点から、50kHz以下の低周波数の交流電圧又は直流電圧が有用であることが分かった。
【0053】
(熱分解方式)
第2図では、第1図の加熱器4に代えて、供給ガス例えば酸素ガスO2と窒素ガスN2が導入される処理ガス生成用容器1内を加熱する加熱器5を設けている。
【0054】
そして、第2図では、処理ガス生成用容器1内にて、供給ガスを熱エネルギーにより熱分解して、窒素酸化物N2O、NO、NO2を含む処理ガスを生成している。
【0055】
本実施例では、供給ガスとして、第1図の実施例と同じ種類のガスを同じ流量比にて供給した。加熱器5の設定温度を800℃としたところ、第1図の実施例と同じく、処理ガスとしてNOを生成することができた。この場合も、酸素の供給量を変更することで、NOの発生量を増大させることができ、あるいは他の窒素酸化物であるN2O、NO2などを発生させることもできる。
【0056】
(光分解方式)
第3図の実施例では、処理ガス供給管2及び原料ガス供給管3が連結された処理ガス生成用容器1内にて、供給ガスである例えば酸素ガスと窒素ガスとを光分解して、処理ガスを生成している。このために、処理ガス生成用容器1内に光例えば紫外線を照射するUVランプ6を設けている。
【0057】
供給ガスとして酸素及び窒素ガスを第1図,第2図の実施例と同じ流量比で導入し、UVランプ6のランプ出力を100mW/cm2とし、出射される光の波長を400nmとしたところ、第1図,第2図の実施例と同じく、処理ガスとしてNOを生成することができた。この場合も、酸素の供給量を変更することで、NOの発生量を増大させることができ、あるいは他の窒素酸化物であるN2O、NO2などを発生させることもできる。
【0058】
(電気分解方式)
第4図の実施例は、処理ガス供給管2が連結された処理ガス生成用容器1内にて、アルカリ金属と窒素化合物から成る塩の水溶液を電気分解して、処理ガスを生成している。このために、処理ガス生成用容器1内に上記塩の水溶液の水溶液を収容し、仕切り板7にて仕切られた各領域に電極8a,8bを配置した。この電極8a,8bに例えばDC24Vを印加したところ、HNO3、HNO2、H2N2O2を含む処理ガスを生成できた。
【0059】
なお、電気分解に適する塩の水溶液としては、NaNO3、KNO3などの硝酸塩、NaNO2などの亜硝酸塩、NaNOなどの次亜硝酸塩の水溶液を挙げることができる。
【0060】
(酸の水溶液とキャリアガスとの接触方式について)
第5図の実施例は、キャリアガス供給管を兼ねる処理ガス供給管2は、キャリアガスを処理ガス生成用容器1内に導く第1の分岐管2aと、処理ガス生成用容器1内にて発生した処理ガスを導出する第2の分岐管2bとを有する。キャリアガスをHNO3、HNO2又はH2N2O2の酸の水溶液と接触させ、その酸の液体を含む処理ガスを生成している。この酸の液体を含むキャリアガスを被処理体に接触させることで、上述の式(4)〜(6)のいずれかの反応式により、被処理体の表面を改質することができる。
【0061】
(供給ガスと水との接触方式について)
ここで、第1図〜第3図の実施例では、処理容器1内に水H2Oを導入することが好ましい。第1図の実施例の変形例を示す第6図では、水を収容した容器酸素ガス及び窒素ガスの一方のガスを直接に処理ガス生成用容器1に供給する第1のガス供給管3aと、その他方のガスを供給する第2のガス供給管3bと、第2のガス供給管3b途中にて他方のガスを水と接触させる容器9とを設けている。従って、他方のガスは水を含んだ状態で、処理ガス生成用容器1に導入される。この結果、上述した式(8)(9)の反応が主に生じて、処理ガスとしてHNO2又はH2N2O2が含まれることになる。この結果、上述した式(5)(6)の反応が主に生じて、被処理体の表面処理を促進できる。
【0062】
また、供給ガスに水が含まれていると、処理ガス生成用容器1内での湿度が高まり、この結果、被処理体を酸化させるオゾンの発生が抑制される。
【0063】
(被処理体の濡れ性向上の評価について)
ここで、被処理体をICのリードフレームとし、表面処理されたリードフレーム12の濡れ性について評価してみた。この評価結果を第7図に示す。第7図では、リードフレームの濡れ性の評価値を、リードフレームに作用する浮力の値で示している。この濡れ性を反映する浮力の値は、例えば第8図に模式的に示す測定装置で測定した値である。
【0064】
第8図の測定装置は、表面処理されたリードフレーム12の一方の端に弾性体であるバネ701を接続し、リードフレーム12の他方の端を容器702内の半田703内に浸して釣り下げたときの、バネ701に対するリードフレーム12の張力を浮力として測定している。半田の濡れ性が悪いときには、半田がリードフレーム12をはじいて、リードフレーム12は矢印aの方向に移動する。このときのバネ701に対する張力はマイナスの値となる。一方、半田の濡れ性が良いときには、リードフレーム12は矢印bの方向に移動する。このときのバネ701に対する張力はプラスの値となる。
【0065】
この第8図の測定装置にて、供給ガスの種類を変えて処理した複数のリードフレーム12について測定した。第7図に示すように、リードフレーム12に対して表面処理を行わない無処理のときには、半田の濡れ性が悪く、浮力はマイナスの値となった。
【0066】
一方、供給ガスとして酸素と水素を用い、かつ、酸素の供給量(体積%)を変えた場合、いずれも浮力はプラスの値となり、半田の濡れ性が向上していることが分かる。特に、酸素の供給量が10体積%の時に浮力の値が最大となり、半田の濡れ性が最も改善されるたことが分かる。さらに、酸素の供給量が5〜10体積%のとき、それ以外の供給量の場合よりも半田の濡れ性が改善されたことが分かる。
【0067】
さらに、窒素及び酸素(15体積%)を供給し、さらに水を添加したところ、水の添加の無い場合と比較して、浮力のプラス値が大きくなった。これは、上述した通り、処理ガスとしてHNO2又はH2N2O2が含まれることになり、半田の濡れ性がさらに向上したことを示している。
【0068】
また、供給ガスをN2+H2Oとした場合、及び供給ガスを圧縮空気+H2Oとした場合のそれぞれについても、浮力がプラス値となり、半田の濡れ性が向上したことを示している。
【0069】
ここで、本発明の処理ガス生成用容器1にて生成された処理ガスは、その処理ガスの高い反応性を、被処理体に暴露させるまで維持できる。一方、従来のようにプラズマ発生部にて生成されたフッ素ラジカル等の活性種は、プラズマ発生部外に配置した被処理体に暴露される途中にて、その寿命が途絶えてしまう。このことについて、本発明者などは下記の実験を行った。
【0070】
プラズマ発生部に連結される処理ガス供給管として、一般に配管チューブとしていられている1/4径サイズ(外径6.35mm、内径3.17mm)を使用した場合、供給ガス流量とチューブ断面積とから、処理ガスの流速を求めてみた。供給ガスの流量を100cc/minとした場合、処理ガスの流速は21.12cm/sとなる。フッ素ラジカルの寿命は1/1000s以下であるので、プラズマ発生部から0.0211cm離れた位置でフッ素ラジカル消滅してしまうことが分かる。
【0071】
<実施例装置全体の全体構成>
第9図は、本実施例にかかる表面処理装置の全体構成を示す概略説明図である。
【0072】
第9図に示す実施例において、半田付けされるワークをIC10とし、IC10は、例えばコンベアライン14上に載置され、図面の裏面から表面に向かう方向に順次搬送される。ここで、IC10のリードフレーム12は、予め半田メッキ処理されている。従って、リードフレーム12の表面は、鉛Pb及びスズSnで覆われているが、これが酸化されることで、酸化鉛PbO及び酸化スズSnOとなっている。本実施例は、このリードフレーム12の表面に形成された酸化鉛PbO及び酸化スズSnOを還元することで、リードフレーム12の半田の濡れ性の向上を図っている。このIC10のリードフレーム12を表面処理するために、表面処理ユニット30と、それに連結される給気連結管20及び排気連結管24が設けられている。
【0073】
給気連結管20には、表面処理ユニット30内部にて生成された処理ガスが導入され、IC10の上方にて傘上に広がる給気部22を介して、その処理ガスをIC10の特にリードフレーム12に暴露させている。排気連結管24は、リードフレーム12に暴露された処理ガスを吸引して、表面処理ユニット30を介して強制排気するためのものである。
【0074】
表面ユニット30には、供給ガス生成部600からの供給ガスが供給される。この供給ガス生成部600には、ガス出力部619、第1のガス供給管657、第2のガス供給管658、水蒸気混合器659が設けられている。
【0075】
ガス出力部619からは酸素及び窒素、窒素のみ、あるいは圧縮空気が、供給ガスとして供給される。
【0076】
ガス出力部619には、第1のガス供給管657、及び2本のガス供給管658a、658bから成る第2のガス供給管658が接続される。
【0077】
第1のガス供給管657には、供給ガスの出力をON/OFFするバルブ662、供給ガスの流量を調整する流量計664が設けられている。ガス出力部619からの窒素及び酸素、窒素、あるいは圧縮空気は、第1のガス供給管657のバルブ662を介して、流量計664で流量調整される。
【0078】
第2のガス供給管658のうちのガス供給管658aには、供給ガスの出力をON/OFFするバルブ663が設けられ、ガス供給管658bには、供給ガスの流量を調整する流量計665が設けられる。ガス出力部619からの供給ガスは、ガス供給管658aのバルブ663を介して水蒸気混合器659に導入される。
【0079】
水蒸気混合器659では、水、例えば純水660がヒーター661で熱せられ、水蒸気となっている。これにより、水蒸気混合器659に導入された供給ガスは、水蒸気を含む。この水分を含んだ供給ガスは、ガス供給管658bに導入されて、流量計665でその流量が調整される。
【0080】
このように、第1のガス供給管657では、水を含まない供給ガスが導かれ、第2のガス供給管658では、水を含む供給ガスが導かれる。なお、表面処理ユニット30に供給される、水を含まない供給ガスと、水を供給ガスとの割合は、第1のガス供給管657のバルブ652のON/OFF及び流量計664の流量調整、及び第2のガス供給管658のバルブのON/OFF及び流量計665の流量調整により、任意に調整することができる。
【0081】
第9図の構成によって表面処理することにより、ワークであるIC10のリードフレーム12の濡れ性を向上させることができる。
【0082】
(表面処理ユニット30の構造)
この表面処理ユニット30は、第10図に示すように、1つの筺体32内部に、ガス給気管40、電源50、プラズマ発生部60、排気管70及びトラップ手段である触媒80を搭載している。
【0083】
ガス給気管40は、第10図に示すプラズマ発生部60の上流側及び下流側にそれぞれ連結され、上流側のガス給気管40の途中には、流量計42が配設されている。このガス給気管40には、工場内の設備を利用して、上述した供給ガスが導入される。また、ガス給気管40の下流側の開口端は、第9図に示す給気連結管20に接続されている。
【0084】
プラズマ発生部60は、電源50からの電源供給を受けて、大気圧又はその近傍の圧力下にてプラズマを発生するものである。このプラズマ発生部60は、第11図に示すように、一対の電極62a及び62bの間に誘電体例えば多孔質絶縁体64が配置されることで、各電極62a及び62bが対向配置されている。一方の電極62aには電源50が接続され、他方の電極62bは接地されて、50kHz以下の比較的低周波数の交流電圧又は直流電圧が各電極間に印加される。
【0085】
電源50は、50kHz以下好ましくは0〜50kHzの比較的低周波数の交流電圧又は直流電圧を、一対の電極62a、62bに印加するもので、コンセントに差し込まれるプラグ52を有する。
【0086】
このように、電源50にて比較的低周波数の交流電圧が出力される理由は、下記の通りである。
【0087】
即ち、従来より大気圧プラズマを生成するためには、比較的プラズマの立ち易いヘリウムガスHeを大量に必要としていた。この場合には、一対の電極間に印加される交流電圧の周波数を、商用周波数である13.56MHzとすることができた。しかしながら、比較的高価なヘリウムガスを用いずに、窒素及び酸素又は圧縮空気等の雰囲気では、商用周波数である13.56MHzの交流電圧では大気圧プラズマを生成することができない。ところが、低周波数の交流電圧の場合、そのpeak to peak電圧を大きくすることができ、結果としてプラズマの生成に寄与するエネルギーを確保できると推測される。よって、0〜50kHzの比較的低周波数の交流電圧又は直流電圧を一対の電極に印加することで、大気圧プラズマを安定して生成できる。
【0088】
しかも、安価な窒素及び酸素、あるいは圧縮空気を用いて、大気圧又はその近傍の圧力下にて安定してプラズマを生成することができる。
【0089】
表面処理ユニット30の筺体32内部には、リードフレーム12に暴露された処理ガスを強制排気するための排気管70が設けられている。この表面処理ユニット30内の排気管70は、第9図に示す排気連結管24と接続される。
【0090】
さらに、この排気管70には、処理ガスを浄化する浄化手段、例えば触媒80が設けられている。ここで、被処理体に暴露される処理ガス中にはNOXが存在する。このNOXはIC10のリードフレーム12の表面処理に寄与するが、その表面処理に寄与しなかったNOX、あるいは処理時の反応により新たに生じた反応生成物が排気される。この排気ガスを触媒80に接触させ、処理ガスを化学的に浄化することができる。しかも、この触媒の特別な処理をせずに廃棄できる。
【0091】
特に、例えば吸着作用を備える活性炭を用いれば、排気成分を活性炭に吸着させることができる。この活性炭は、焼却して廃棄することができる。このように、活性炭を用いると、従来、処理ガスとしてCF4を使用し、トラップ手段としてアルミナを用いた場合と比較して、ランニングコストを低下させることができる。
【0092】
(第10図の表面処理ユニットを用いた表面処理方法)
第10図に示す実施例では、供給ガスが、工場内に配置された設備を用いて、表面処理ユニット30のガス給気管40にそれぞれ導入される。この供給ガスは、ガス給気管40に途中に設けられた流量計42により流量調整されている。流量調整された供給ガスは、プラズマ発生部60に導入される。プラズマ発生部60内に設けられた一対の電極62a、62bには、10〜50kHzの比較的低周波数の交流電圧が印加されている。
【0093】
プラズマ発生部60内では、供給ガスが励起されて分解され、窒素酸化物を含む処理ガスとなる。表面処理ユニット30のガス給気管40より導出された処理ガスは、この表面処理ユニット30に連結された給気連結管20を介して、給気部22よりIC10の表面に暴露される。これにより、IC10のリードフレーム12が、表面処理される。
【0094】
一方、リードフレーム12に暴露された処理ガスは、排気連結管24を介して表面処理ユニット30の内部に導入される。表面処理ユニット30では、排気管70を介して上記ガスを触媒80に導いている。
【0095】
なお、水分を含む処理ガスを生成するには、第9図に示した処理ガス生成部600の他に、第12図に示すように、ガス供給管658aが、水蒸気混合器659内の純水660と接触する構成を付加すればよい。第12図のガス供給管658aに導かれる供給ガスは、純水内に導かれて、純水と直接接触された後に、水分を含んだガスとして送出される。この場合、送出されるガス中の水分濃度を高めることが期待でき、効率の良い表面処理を行うことができる。
【0096】
さらに、第13図に示すように、ガス出力部619から供給ガスを導くガス供給管を1本とし、ガス供給管658aからバルブ663を介して導かれる供給ガスを純水に通すようにしてもよい。
【0097】
また、第9図、第12図に示す処理ガス生成部のうちの水蒸気混合器を、第9図の表面処理ユニット30内に搭載することも可能である。
【0098】
次に、各種の供給ガスをプラズマ放電により励起して分解し、窒素酸化物である処理ガスを生成し、それをワークに暴露した後の排気ガス中に含まれる成分について、表1に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
表1において、実験1〜4はいずれも本実施例のものであり、電極の種類A,Bについては後述する。
【0101】
まず、実験3と実験4とを比較する。実験4で使用した圧縮空気のみから成る処理ガスよりも、実験3で使用した水分を含む圧縮空気の処理ガスのほうが、NO2−が多く発生されており、実験3の場合のほうが濡れ性が良いことがわかった。
【0102】
ここで、ワークに暴露される処理ガス中のNO−は、ワーク表面の酸化物を還元してNO2−に成り易く、排気ガス中にNO2−が多く存在するほど半田の濡れ性が向上すると考えられる。すなわち、NO2−が多く発生することにより、リードフレーム12の表面に存在する酸化物の還元が促進されて、リードフレーム12の濡れ性を高めることができる。
【0103】
次に、同じ処理ガスを用いているが、電極が異なる場合として、実験1と実験3とを比較する。
【0104】
この比較では、Aタイプの電極を用いた実験1におけるNO2−、NO3−の発生量よりも、Bタイプの電極を用いた実験3におけるNO2−、NO3−の発生量のほうが多く、実験3のほうが半田の濡れ性がより改善されることがわかった。
【0105】
ここで、プラズマ条件の電極に用いているAタイプ電極の概略的な構成を第14図に示し、Bタイプの電極の概略的な構成を第15図に示す。
【0106】
第14図のAタイプの電極は、電源50が接続された電極65aと、接地された電極65bとから成る一対の電極である。この一対の電極65a、65bの間には誘電体64が配置されている。電極65aの、誘電体64に対向する面には、図面の表裏方向に貫通する凹部66が形成されている。大気圧又はその近傍の圧力下にて、電源50からの電源供給を受けることにより、凹部66を供給ガスが通過することで、凹部66内にてプラズマ放電が生成される。
【0107】
また、第15図のBタイプの電極は、誘電体64を挟んで配置される第1の電極67aと第2の電極67bを有する。第14図の電極とは異なり、第1、第2の電極67a、67bがそれぞれ誘電体64と対向する各面に、第1、第2の凹部68a、68bが形成されている。この第1、第2の凹部68a、68bは、図面の表裏面方向で貫通している。さらに、この第1、第2の凹部68a、68bは、互いに対向しない位置に形成されている。この第1、第2の凹部68a、68bのいずれか一方又は双方に供給ガスを通過させると、第1、第2の凹部68a、68b内でプラズマが生成され、供給ガスが分解されて窒素酸化物を含む処理ガスが生成される。
【0108】
第15図に示すBタイプの電極を用いた方が、NO2−、NO3−の発生量が多い理由は下記の通りである。すなわち、第15図に示すBタイプの電極のほうが、一対の電極間の浮遊容量が減少し、この浮遊容量にて消費される分の電力を、沿面放電のための電力として使用できるので、プラズマ密度が高まり、分解レートが高いからと考えられる。
【0109】
このように、排気ガス中にNO2−、NO3−が多いほど、被処理体表面の酸化物を還元する表面処理が促進されたと考えられる。よって、Bタイプの電極を用いてプラズマ放電を生成する実験3の表面処理のほうが、実験1の表面処理よりも濡れ性が良くなると考えられる。なお、表1の発生ガスは、処理ガスを触媒と接触させて浄化することで、10−2〜10−1mg/m3のオーダまで低下させることができた。
【0110】
(第9図の表面処理ユニットの変形例)
次に、第9図の表面処理ユニット30の他の構成を、第16図及び第17図を参照して説明する。
【0111】
第16図に示す表面処理ユニット110と、第10図に示す表面処理ユニット30との相違点は、筺体32内にさらにガス給気管41を搭載した点である。ポンプからの圧縮空気、又はボンベからの窒素が、このガス給気管41に導入されて、プラズマ生成部60に供給される。一方、ガス給気管40からは水蒸気が供給されるので、濡れ性の高い、表面処理を行うことができる。
【0112】
また、第17図に示すように、表面処理ユニット120内に、予めガス出力部619を搭載しておくことも可能である。このガス生成部619からの供給ガスをガス給気管40で導いて、流量計42で流量調整し、プラズマ生成部60に供給する。
【0113】
<表面処理ユニットの各種タイプについて>
次に、上述した表面処理ユニット30,100及び110の形状もしくはそれらに連結される給気連結管20、排気連結管24の形状を変更した各種タイプについて、第18図以降を参照して説明する。
【0114】
(1)ラインタイプ
第18図及び第19図に示すラインタイプの表面処理ユニット160は、コンベアライン14により搬送される例えば板状のワーク500と対向する上方位置に、設けられている。この表面処理ユニット160は、筺体161の下部に給排気部162を備えている。この給排気部162は、給気管164及び排気管166にて二重間構造を構成している。本実施例では、中心部に給気管164を配置し、その周囲に排気管166を配置し、排気管166の下端部は、傘状に広がる形状となっている。
【0115】
コンベアライン14によりワーク500が間欠的にあるいは連続的に搬送されると、このワーク500が表面処理ユニットの給排気部162と対向することで、ワーク500の表面が表面処理されることになる。これにより、表面処理ユニット160を固定しながらも、ワーク500の全面について、多数のワーク500を連続的に表面処理することが可能となる。
【0116】
(2)スタンドタイプ
第20図に示すスタンドタイプの表面処理ユニット200は、載置可能な底面を有する筺体201を有している。この筺体201内部には、上述した通り処理ガスが導入され、触媒を経由して排気ガスが排気される。この筺体201には、上方に伸びる給気連結管210及び排気連結管230が設けられている。給気連結管210は屈曲され、下端にて開口する給気部220を有する。この給気部220の周囲には、処理ガスの拡散を防止するための傘状の拡散防止板222が設けられている。一方、排気連結管230は、拡散防止板222と対向する位置に、上方に向かうに従い開口面積の増大する傘状の排気吸引部240が形成されている。
【0117】
そして、第20図及び第21図に示すとおり、ワークとして例えば端部の被覆材がはがされた線材250の先端部を表面する処理に際して、この線材250の予めメッキ処理された先端部252を給気部220の直下の位置に配置する。こうすると、給気部220より導出される処理ガスにより線材250の先端部252が表面処理され、その曝露された処理ガスは排気吸引部240及び排気連結管230を介して筺体201内の触媒に導かれることになる。
【0118】
このように、スタンドタイプの表面処理ユニット200を用いることで、空気中に局所的な処理ガスの雰囲気を作ることができ、線材250などのワークを容易に表面処理することが可能となる。
【0119】
(3)棒状タイプ
第22図及び第23図に示す実施例は、表面処理ユニット300自体を、例えば半田ごてのような筒状の筺体301にて構成したものである。この筺体301に連結された給気連結管310及び排気連結管320は二重管構造となっており、内側の給気連結管310により処理ガスがワーク500に向けて導出され、外側の排気連結管320よりその曝露された処理ガスが筺体301内部に導かれる。排気連結管320の先端部は、排気領域を拡大する観点から、第22図及び第23図に示すとおり、傘状に広がる形状とすることが好ましい。
【0120】
このように、表面処理ユニット300自体を棒状タイプに構成すれば、この表面処理ユニット300自体を手で操作して、各種ワークの表面処理を行うことが可能となる。
【0121】
(4)トースタータイプ
第24図及び第25図に示す表面処理ユニット400は、筺体401の一面例えばその上面に、板状のワーク500を挿入できるスリット状の挿入部410を有している。このスリット状の挿入部410には排気管420が連結されている。一方、スリット状の挿入部410の例えば両側壁には、該側壁にて一端が開口する処理ガス給気管430が設けられている。
【0122】
この構成によれば、板状のワーク500を、筺体401の上面に設けられたスリット状の挿入部410内部に挿入することで、このワーク500の両面より処理ガスが吹き付けられ、板状のワーク500の両面を同時に表面処理することが可能となる。なお、ワーク500の片面のみが表面処理されるものにあっては、処理ガス給気管430をスリット状の挿入部410の一方の側壁のみに開口させればよい。
【0123】
(5)バッチ処理タイプ
第26図は、多数のワークをバッチ式で処理する装置を示している。この装置は、上述の表面処理ユニット30(又は110又は120)に接続された給気連結管20及び排気連結管24を、バッチ処理ボックス450に連結している。このバッチ処理ボックス450は、内部に多数のワーク510を収容するものである。バッチ処理されるワーク510としては、上述のIC10、線材250、板状のワーク500の他、例えばロール状に巻回されたTABテープであってもよい。
【0124】
このバッチ処理タイプによれば、一度に多数のワーク510を表面処理することが可能となる。なお、本発明の処理方法に表面処理されたワークは、改善されたその半田の濡れ性を、表面処理後比較的長い時間維持することができるため、バッチ処理後半田付けまでワークをストックしておいても、良好な半田付けを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】放電分解方式にて処理ガスを生成する本発明の実施例を示す概略説明図である。
【図2】熱分解方式にて処理ガスを生成する本発明の実施例を示す概略説明図である。
【図3】光分解方式にて処理ガスを生成する本発明の実施例を示す概略説明図である。
【図4】電気分解方式にて処理ガスを生成する本発明の実施例を示す概略説明図である。
【図5】酸の水溶液とキャリアガスとを接触させて処理ガスを生成する本発明の実施例を示す概略説明図である。
【図6】供給ガスを水と接触させて処理ガスを生成する本発明の実施例を示す概略説明図である。
【図7】本発明の実施例により表面処理されたワークの半田の濡れ性を示す特性図である。
【図8】第7図の半田の濡れ性を測定を説明する模式図である。
【図9】本発明の実施例に係る表面処理装置の全体構成を示す概略説明図である。
【図10】第9図に示す表面処理ユニットの内部構成を示す概略説明図である。
【図11】第10図に示すプラズマ発生部の構成を示す概略説明図である。
【図12】第9図に示す処理ガス生成部の他の第1実施例を示す概略説明図である。
【図13】第9図に示す処理ガス生成部の他の第2実施例を示す概略説明図である。
【図14】プラズマ発生部の他の第1の構成を示す概略説明図である。
【図15】プラズマ発生部の他の第2の構成を示す概略説明図である。
【図16】第9図に示す表面処理ユニットの他の第1の内部構成を示す概略説明図である。
【図17】第9図に示す表面処理ユニットの他の第2の内部構成を示す概略説明図である。
【図18】表面処理ユニットによりラインタイプの処理装置を構成した実施例を示す概略説明図である。
【図19】第18図に示す表面処理ユニットの給排気部を示す概略断面図である。
【図20】表面処理ユニットによりスタンドタイプの処理装置を構成した実施例を示す概略説明図である。
【図21】第20図に示す表面処理ユニットの給排気部を示す概略断面図である。
【図22】表面処理ユニットにより棒状タイプの処理装置を構成した実施例を示す概略説明図である。
【図23】第22図に示す表面処理ユニットの給排気部を示す概略断面図である。
【図24】表面処理ユニットによりトースタータイプの処理装置を構成した実施例を示す概略説明図である。
【図25】第24図に示す表面処理ユニットの給排気部を示す概略断面図である。
【図26】表面処理ユニットによりバッチ処理タイプの処理装置を構成した実施例を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0126】
1 処理用ガス生成容器、2 処理ガス供給管、3 供給ガス供給管、4,5 加熱器、6 UVランプ、7 仕切り板、8a,8b 電極、10,500 ワーク、12 リードフレーム、14 コンベアライン、20 給気連結管、22 給気部、24 排気連結管、30,100,110,120,160,200,300,400 表面処理ユニット、32,161,201,301,401 筐体、40 ガス供給管、50 電源、60 プラズマ発生部、62a,62b 一対の電極、64 誘電体(多孔質絶縁体)、65a,65b 一対の電極、66 凹部、67a,67b 一対の電極、68a,68b 凹部、70 排気管、80 トラップ手段、600 供給ガス生成部、657 第1のガス供給管、658 第2のガス供給管、659 水蒸気混合器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N2O、NO、NO2のいずれかの窒素酸化物を含む処理ガスを被処理体の表面に形成された金属酸化物に接触させて、前記窒素酸化物により前記被処理体の金属酸化物を還元し、または、前記窒素酸化物により前記被処理体の金属酸化物を置換して、前記被処理体の表面を処理することを特徴とする表面処理方法。
【請求項2】
請求項1において、
大気圧又はその近傍の圧力下で、酸素原子(O)と窒素原子(N)とを含む供給ガスし、50kHz以下の低周波数の交流電圧又は直流電圧が印加される一対の電極により、前記供給ガスを励起して放電を生成して、前記処理ガスを生成する工程をさらに有することを特徴とする表面処理方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記一対の電極は、誘電体を挟んで配置される第1、第2の電極を有し、
前記第1、第2の電極は、前記誘電体と対面する各面の互いに非対向となる位置に第1、第2の凹部が形成され、
前記第1、第2の凹部の少なくとも一方に前記供給ガスが導入されることを特徴とする表面処理装置。
【請求項4】
請求項1において、
酸素原子(O)と窒素原子(N)とを含む供給ガスが供給される雰囲気を加熱して、前記処理ガスを生成する工程をさらに有することを特徴とする表面処理方法。
【請求項5】
請求項1において、
酸素原子と窒素原子とを含む供給ガスが供給される雰囲気に光を照射して、前記処理ガスを生成する工程をさらに有することを特徴とする表面処理方法。
【請求項6】
請求項1において、
酸素原子と窒素原子と水素原子とを含む供給ガスが供給される雰囲気に光を照射して、前記処理ガスを生成する工程をさらに有することを特徴とする表面処理方法。
【請求項7】
請求項2又は4又は5において、
前記供給ガスとして、酸素(O2)ガスと窒素(N2)ガスとを供給し、前記窒素ガスをキャリアガスとして兼用することを特徴とする表面処理方法。
【請求項8】
請求項7において、
前記酸素ガスの供給量を、15体積%以下としたことを特徴とする表面処理方法。
【請求項9】
請求項7において、
前記酸素ガスの供給量を、10体積%以下としたことを特徴とする表面処理方法。
【請求項10】
請求項7において、
前記酸素ガスの供給量を、5〜10体積%としたことを特徴とする表面処理方法。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかにおいて、
前記被処理体に向けて供給された前記処理ガス及び反応生成物を強制排気する工程と、
排気途中にて、前記処理ガス及び反応生成物をトラップする工程と、
をさらに有することを特徴とする表面処理方法。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかにおいて、
前記処理ガスを前記被処理体の表面に接触させて、前記表面での半田の濡れ性を向上させることを特徴とする表面処理方法。
【請求項13】
NO、NO2、N2Oの中から選ばれる一又は複数の窒素酸化物を含む処理ガスを被処理体の表面に形成された金属酸化物に導く処理ガス供給手段を有し、前記窒素酸化物により前記被処理体の金属酸化物を還元し、または、前記窒素酸化物により前記被処理体の金属酸化物を置換して、被処理体の表面を処理することを特徴とする表面処理装置。
【請求項14】
請求項13において、
前記処理ガス供給手段に接続され、酸素原子(O)と窒素原子(N)とを含む供給ガスが供給される雰囲気中にて放電を生成して、前記処理ガスのうちNO、NO2、N2Oのいずれかを生成する処理ガス生成手段をさらに有することを特徴とする表面処理装置。
【請求項15】
請求項13において、
前記処理ガス供給手段に接続され、酸素原子(O)と窒素原子(N)とを含む供給ガスが供給される雰囲気を加熱して、前記処理ガスのうちNO、NO2、N2Oのいずれかを生成する処理ガス生成手段をさらに有することを特徴とする表面処理装置。
【請求項16】
請求項13において、
前記処理ガス供給手段に接続され、酸素原子(O)と窒素原子(N)とを含む供給ガスが供給される雰囲気に光を照射して、前記処理ガスのうちNO、NO2、N2Oのいずれかを生成する処理ガス生成手段をさらに有することを特徴とする表面処理装置。
【請求項1】
N2O、NO、NO2のいずれかの窒素酸化物を含む処理ガスを被処理体の表面に形成された金属酸化物に接触させて、前記窒素酸化物により前記被処理体の金属酸化物を還元し、または、前記窒素酸化物により前記被処理体の金属酸化物を置換して、前記被処理体の表面を処理することを特徴とする表面処理方法。
【請求項2】
請求項1において、
大気圧又はその近傍の圧力下で、酸素原子(O)と窒素原子(N)とを含む供給ガスし、50kHz以下の低周波数の交流電圧又は直流電圧が印加される一対の電極により、前記供給ガスを励起して放電を生成して、前記処理ガスを生成する工程をさらに有することを特徴とする表面処理方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記一対の電極は、誘電体を挟んで配置される第1、第2の電極を有し、
前記第1、第2の電極は、前記誘電体と対面する各面の互いに非対向となる位置に第1、第2の凹部が形成され、
前記第1、第2の凹部の少なくとも一方に前記供給ガスが導入されることを特徴とする表面処理装置。
【請求項4】
請求項1において、
酸素原子(O)と窒素原子(N)とを含む供給ガスが供給される雰囲気を加熱して、前記処理ガスを生成する工程をさらに有することを特徴とする表面処理方法。
【請求項5】
請求項1において、
酸素原子と窒素原子とを含む供給ガスが供給される雰囲気に光を照射して、前記処理ガスを生成する工程をさらに有することを特徴とする表面処理方法。
【請求項6】
請求項1において、
酸素原子と窒素原子と水素原子とを含む供給ガスが供給される雰囲気に光を照射して、前記処理ガスを生成する工程をさらに有することを特徴とする表面処理方法。
【請求項7】
請求項2又は4又は5において、
前記供給ガスとして、酸素(O2)ガスと窒素(N2)ガスとを供給し、前記窒素ガスをキャリアガスとして兼用することを特徴とする表面処理方法。
【請求項8】
請求項7において、
前記酸素ガスの供給量を、15体積%以下としたことを特徴とする表面処理方法。
【請求項9】
請求項7において、
前記酸素ガスの供給量を、10体積%以下としたことを特徴とする表面処理方法。
【請求項10】
請求項7において、
前記酸素ガスの供給量を、5〜10体積%としたことを特徴とする表面処理方法。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかにおいて、
前記被処理体に向けて供給された前記処理ガス及び反応生成物を強制排気する工程と、
排気途中にて、前記処理ガス及び反応生成物をトラップする工程と、
をさらに有することを特徴とする表面処理方法。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかにおいて、
前記処理ガスを前記被処理体の表面に接触させて、前記表面での半田の濡れ性を向上させることを特徴とする表面処理方法。
【請求項13】
NO、NO2、N2Oの中から選ばれる一又は複数の窒素酸化物を含む処理ガスを被処理体の表面に形成された金属酸化物に導く処理ガス供給手段を有し、前記窒素酸化物により前記被処理体の金属酸化物を還元し、または、前記窒素酸化物により前記被処理体の金属酸化物を置換して、被処理体の表面を処理することを特徴とする表面処理装置。
【請求項14】
請求項13において、
前記処理ガス供給手段に接続され、酸素原子(O)と窒素原子(N)とを含む供給ガスが供給される雰囲気中にて放電を生成して、前記処理ガスのうちNO、NO2、N2Oのいずれかを生成する処理ガス生成手段をさらに有することを特徴とする表面処理装置。
【請求項15】
請求項13において、
前記処理ガス供給手段に接続され、酸素原子(O)と窒素原子(N)とを含む供給ガスが供給される雰囲気を加熱して、前記処理ガスのうちNO、NO2、N2Oのいずれかを生成する処理ガス生成手段をさらに有することを特徴とする表面処理装置。
【請求項16】
請求項13において、
前記処理ガス供給手段に接続され、酸素原子(O)と窒素原子(N)とを含む供給ガスが供給される雰囲気に光を照射して、前記処理ガスのうちNO、NO2、N2Oのいずれかを生成する処理ガス生成手段をさらに有することを特徴とする表面処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2006−342432(P2006−342432A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−224232(P2006−224232)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【分割の表示】特願平9−519601の分割
【原出願日】平成8年11月22日(1996.11.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【分割の表示】特願平9−519601の分割
【原出願日】平成8年11月22日(1996.11.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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