説明

表面処理銅箔およびその製造方法ならびに銅張積層板

【課題】導体パターンの微細化と、より強力な接合力の確保とを、共に達成可能とした表面処理銅箔およびその製造方法ならびに銅張積層板を提供する。
【解決手段】表面処理銅箔は、銅箔基材1と、前記銅箔基材1の上に、炭素繊維が混入されて当該炭素繊維の一部が表面から突出するように設けられた銅または銅合金からなる粗化処理層2と、前記粗化処理層2の上に、外部の絶縁性基材7に対する化学的な接合力を増強するために設けられた後処理層8として、防錆層3と亜鉛めっき層4とクロム化成処理層5とシランカップリング処理層6とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理銅箔およびその製造方法ならびに銅張積層板に係り、例えばプリント配線板等に好適な、表面処理銅箔およびその製造方法ならびに銅張積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化に伴い、それに用いられるフレキシブルプリント配線板(以下、FPC;Flexible Print Circuit-boardとも呼ぶ)やリジッドプリント配線板においても、銅配線の配線ピッチや線幅に対する微細化要求が益々強くなってきている。
【0003】
プリント配線板の製造方法としては、一般に、サブトラクティブ法が用いられる。サブトラクティブ法では、例えばポリイミド樹脂やガラスエポキシ樹脂のような樹脂系の絶縁性基材の表面に銅箔や銅薄板を導体層として張り合わせるなどして形成された銅張積層板を用い、その導体層をいわゆるフォトエッチング法によりパターン加工することで、配線パターンや接続パッド等の各種導体パターンを形成する。より具体的には、エッチングレジスト膜を露光・現像し、エッチングマスクとしてのレジストパターンを形成する。そしてそのレジストパターンで覆われていない部分の導体層をウェットエッチングプロセス等によりエッチング除去(サブトラクト)することで、所望の配線パターン等の導体パターンを形成するようにしている。
【0004】
このようなプリント配線板の製造に用いられる銅張積層板は、CCL(Copper Clad Laminate)と呼ばれている。特にFPC用のCCLには、銅箔と樹脂製絶縁性基材とを、接着剤層を介して張り合わせる3層CCLと、接着剤層を介さずに銅箔と樹脂製絶縁性基材とを熱圧着法等により張り合わせる2層CCLとがある。
CCLに用いられる銅箔は、樹脂製絶縁性基材との接合力を高めるために、粗化処理が施されることが一般的となっている。粗化処理とは、銅めっき液中で限界電流密度以上の電流密度に設定しためっきプロセスを行って、銅箔の表面に所望の大きさの凹凸形状を形成することにより、そのめっき処理後の出来上がりの表面粗さを、処理前の平滑な状態よりも大きくする処理方法である。出来上がりの銅箔の表面粗さが大きいほど、その銅箔と樹脂製絶縁性基材との接合力が向上することとなる。
【0005】
また、近年では、銅箔の樹脂製絶縁性基材に対する接合力を増強させる技術として、カーボンナノチューブのような微細な炭素繊維を混入・分散させた電解銅箔をプリント配線板用の銅張積層板の導体層として用いることにより、樹脂製の絶縁性基材に対する接合力(密着性)の増強を図る、という技術が提案されている(特許文献1)。また、そのような微細な炭素繊維を、銅のような金属からなる母材中に、より均一に分散させる技術等も提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−211305号公報
【特許文献2】特開2007−9333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、近年、配線パターンをはじめとする各種導体パターンの微細化に伴って、銅箔の表面粗さを小さくすることが望まれるようになってきた。
これは、銅箔の表面粗さが大きいと、エッチングによって配線パターン等を形成したと
きに、そのパターンに無視できないアンダーカットが生じて、出来上がった配線の寸法精度が低下することが、導体パターンの微細化に伴って益々強くなる傾向にあるためである。
ここで、アンダーカットとは、エッチングレジストの真下へと、つまり導体パターンの側面からそのパターンの内側に向かって、エッチングが必要以上に進行する現象である。斯様なアンダーカットが生じると、配線パターンの底部での直線性を低下させ、延いては特に配線パターンにおける寸法精度の深刻な悪化を引き起こす虞がある。
ところが、上記のようなアンダーカットの発生を回避しようとして銅箔の表面粗さを小さくすると、樹脂製絶縁性基材との接合力が低下することとなる。
このように、従来の表面処理を施してその表面粗さを大きくした表面処理銅箔やそれを樹脂製の絶縁性基材に張り合わせてなる銅張積層板では、接合力の増強の要請と導体パターンの微細化の要請との両方を共に満たすことが困難ないしは不可能であるという問題があった。
【0008】
また、近年提案された、カーボンナノチューブのような微細な炭素繊維を混入・分散させた電解銅箔をプリント配線板用の銅張積層板の導体層として用いるという技術についても、我々は種々の実験およびそれに対する考察等を鋭意行ったが、その結果、ある程度までは接合力の増強を図ることが可能であるものの、例えば1N/mm以上のピール強度のような、より強力な接合力を得ることは困難であるということが判明した。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みて成されたもので、その目的は、導体パターンの微細化と、より強力な接合力の確保とを、共に達成することを可能とした表面処理銅箔およびその製造方法ならびに銅張積層板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の表面処理銅箔は、銅箔からなる基材と、前記基材の上に、炭素繊維が混入されて当該炭素繊維の一部が表面から突出するように設けられた銅または銅合金からなる粗化処理層と、前記粗化処理層の上に、外部の絶縁性基材に対する化学的な接合力を増強するために設けられた後処理層とを備えたことを特徴としている。
また、本発明の表面処理銅箔の製造方法は、銅箔からなる基材の表面上に、電気めっき法により、銅または銅合金をめっき金属の母材として用い、当該母材のめっき液に炭素繊維を混入して当該炭素繊維の一部が表面から突出するように銅めっきを施すことで、前記炭素繊維の混入によって当該銅めっきの少なくとも表面を褶曲した状態にしてなる粗化処理層を形成する工程と、前記粗化処理層の上に、外部の絶縁性基材に対する化学的な接合力を増強するための後処理層を形成する工程とを含むことを特徴としている。
また、本発明の銅張積層板は、銅箔からなる基材と、前記基材の上に、炭素繊維が混入されて当該炭素繊維の一部が表面から突出するように設けられた銅または銅合金からなる粗化処理層と、前記粗化処理層の上に、外部の絶縁性基材に対する化学的な接合力を増強するために設けられた後処理層とを備えた表面処理銅箔を、樹脂製の絶縁性基材の表面に張り合わせて積層してなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、銅箔からなる基材の上に、炭素繊維を混入することでその炭素繊維の一部が表面から突出するように設けられた銅または銅合金からなる粗化処理層を形成し、その粗化処理層の上に、外部の絶縁性基材に対する化学的な接合力を増強するために設けられた後処理層を形成するようにしたので、粗化処理層における表面から突出した炭素繊維による機械的なアンカー作用と、その粗化処理層の上に設けられた後処理層による化学的なアンカー作用とが相まって、樹脂製の絶縁性基材に対する強力な接合力を確保することが可能となる。かつ、その表面粗化のための主な手段として突出している炭素繊維は、金属からなるものではなく炭素系の材質からなるものであることから、この表面処理銅箔
におけるエッチング法によるパターン加工の際には、パターン寸法精度の低下を引き起こす虞がないので、導体パターンの微細化の達成を妨げることがない。このようにして、本発明によれば、より強力な接合力の確保と導体パターンの微細化との、両立が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る表面処理銅箔の主要な構成を示す図である。
【図2】図1に示した表面処理銅箔における、粗化処理層の表面から炭素繊維が突出している部分近傍を抽出し拡大して示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る表面処理銅箔の製造方法の主要な工程の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施の形態に係る表面処理銅箔およびその製造方法ならびに銅張積層板の製造方法について、図面を参照して説明する。
この表面処理銅箔は、銅箔基材1の表面上に、粗化処理層2と、防錆層3と、亜鉛めっき層4と、クロム化成処理層5と、シランカップリング処理層6とを、この順に形成してなるものである。
また、本発明の実施の形態に係る銅張積層板は、上記のような表面処理銅箔のシランカップリング処理層6が形成された側の表面を、ポリイミド樹脂フィルムのような樹脂製の絶縁性基材7の表面に張り合わせて積層してなるものである。
【0014】
銅箔基材1は、圧延銅箔または電解銅箔からなる基材である。この銅箔基材1自体の表面には(上記の粗化処理層2等が設けられる以前の、素材の段階では)、例えば電解めっき法等による粗化処理は施されていない。この銅箔基材1としては、圧延銅箔または電解銅箔のどちらも用いることが可能であるが、表面の平坦性や折り曲げ性の点で、より優れているという理由から、圧延銅箔を用いることが、より望ましい。
【0015】
粗化処理層2は、銅箔基材1の上に設けられたもので、その一部分10を図2に抽出・拡大して示したように、微細な炭素繊維9が銅または銅合金からなる母材に混入されて、その炭素繊維9の一部が母材の表面から突出するように設けられたものである。炭素繊維9としては、より具体的には、カーボンナノチューブまたはカーボンナノチューブの誘導体を用いることが望ましい。
【0016】
防錆層3は、ニッケル、コバルト、タングステン、チタン、セリウム、モリブデン、バナジウム、ルテニウム、インジウム、またはそれらの合金のうちの、少なくとも一種類以上の材質からなり、その下層の粗化処理層2や銅箔基材1を錆びの発生・進行から守るために設けられたものである。
【0017】
亜鉛めっき層4は、防錆層3の上に設けられて、これ自体が犠牲層となって、その下層の粗化処理層2や銅箔基材1を錆の進行から守るためのものである。
【0018】
クロム化成処理層5は、亜鉛めっき層4の上に設けられて、耐酸化変色性や耐湿変色性等のような点での防錆能力を発揮するように設定されたものである。
【0019】
シランカップリング処理層6は、クロム化成処理層5の上に設けられて、この表面処理銅箔が外部の樹脂製の絶縁性基材7の表面に張り合わされて接合される際に、その絶縁性基材7に対する接合力を増強するためのものである。
【0020】
ここで、上記の各層のうちの、防錆層3、亜鉛めっき層4、クロム化成処理層5、シラ
ンカップリング処理層6を、合わせて後処理層8と呼ぶこととする。後処理層8は、それら各層の有する防錆効果や犠牲層的機能や接合力増強機能が相まって、この表面処理銅箔を外部の例えばポリイミド樹脂のような樹脂製の絶縁性基材7に対して張り合わせた際の、両者の間での主に化学的な接合力(接合強度およびその継続性・耐久性)を増強することが可能なものとなっている。
【0021】
そして、本発明の実施の形態に係る表面処理銅箔の最表面における表面粗さは、JIS94の規定に則した表面粗さRzで1μm以上3μm以下となっている。
【0022】
本発明の実施の形態に係る表面処理銅箔の製造方法の概要は、銅箔基材1の表面上に、電気めっき法により、銅または銅合金をめっき金属の母材として用い、その母材のめっき液に炭素繊維9を混入して、その炭素繊維9の一部が母材の表面から突出するように銅めっき膜を形成する。このようにすることで、炭素繊維9の混入によって銅めっき膜の少なくとも表面が褶曲したような状態となり、これが、あたかも銅めっき膜に粗化処理を施したような適度に荒れた表面状態を有する粗化処理層2となる。
そして、その粗化処理層2の上に、外部の絶縁性基材7に対する化学的な接合力を増強するための後処理層8として、防錆層3、亜鉛めっき層4、クロム化成処理層5、シランカップリング処理層6を形成する工程とを、その主要な工程として含んでいる。
【0023】
さらに具体的には、本発明の実施の形態に係る表面処理銅箔の製造方法は、次のようなものとすることが可能である。
まず、銅箔基材1として、圧延銅箔または電解銅箔を用意する。この銅箔基材1の厚さ、表面の粗さ、形態等の各種仕様については、特に限定されるべきものはなく、必要に応じて所望のものを用いることが可能である。例えば、配線パターンの線幅やピッチのさらなるファイン化が強く要請される場合には、それに見合った厚さや高度な平坦性を有している圧延銅箔を用いる、というようにすればよい。
【0024】
用意した銅箔基材1の表面を清浄化するために、脱脂処理を行う(図3の工程a)。この脱脂処理は、例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液中で陰極電解することにより行うことが可能である。
【0025】
続いて、銅箔基材1の表面に残存するアルカリの中和および銅酸化膜の除去のために、酸洗処理を行う。この酸洗処理は、硫酸等の酸性水溶液に浸漬することで行うことができる(図3の工程b)。
この酸洗処理用の液剤としては、例えば銅エッチング液を用いることが可能である。
【0026】
続いて、必要に応じて下地めっき処理を行う(図3の工程c)。
この下地めっきを行って、下地めっき層(図1、図2では省略)を形成することで、銅箔基材1の表面を平坦化することができ、その後には、より均一な粗化処理等を施すことが可能となる。
この下地めっき処理は、硫酸銅や硫酸を主成分とする銅めっき液を用いると共に銅箔基材1自体を陰極として用いた電解めっき処理によって行うことができる。この下地めっき処理による平坦な銅めっき層を設けるための、硫酸銅、硫酸浴の液組成、液温、電解条件は、広い範囲で選択可能であり、特に限定されるものではないが、下記の範囲から選択されることが望ましい。
硫酸銅五水和物:20〜300g/dm
硫酸:10〜200g/dm
炭素繊維:0.1〜1g/dm
分散剤:0.001〜10g/dm
液温:20〜50℃
めっき電流密度:0.1〜30A/dm(限界電流密度未満)
めっき時間:1〜20秒
また、下地銅めっき層を形成する際には、平滑化のための添加剤を添加するようにしてもよい。その際の添加剤としては、塩酸、3−メルカプト−1−スルホン酸やビス(3−スルホプロピル)ジスルフィドなどの、メルカプト基を持つ化合物、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどの界面活性剤、塩化物イオンなどを、組み合わせて用いることができる。
また、プリント配線板などに用いられる各種銅めっき用添加剤を用いることも可能である。銅めっき用添加剤としては、例えば、荏原ユージライト社製CU−BRITE TH
−RIII、奥野製薬社製トップルチナLS、メルテックス社製カパーグリームCLX、上村工業社製スルカップEUCなどを用いることが可能である。生産性向上の観点からは、このときのめっき電流密度は、限界電流密度以下の範囲内で、できるだけ高くすることが望ましい。
【0027】
続いて、粗化処理として、硫酸銅や硫酸を主成分とし炭素繊維9および分散剤を含む酸性銅めっき浴により、銅箔基材1自体を陰極として用いて、めっき液の限界電流密度を超える電流値で電解処理することにより、粗化処理層2を形成する(図3の工程d)。
この工程で用いる硫酸銅、硫酸浴の液組成、液温、電解条件は、広い範囲で選択可能であり、特に限定されるものではないが、下記の範囲から選択されることが望ましい。
硫酸銅五水和物:20〜300g/dm
硫酸:10〜200g/dm
炭素繊維:0.1〜1g/dm
分散剤:0.001〜10g/dm
液温:20〜50℃
めっき電流密度:限界電流密度以上、30〜100A/dm
めっき時間:1〜10秒
炭素繊維9としては、カーボンナノチューブまたはその誘導体などを用いることができる。また、より均一に、ムラなく炭素繊維9を母材となる銅または銅合金の電解めっき液中に分散させるための分散剤としては、ゼラチン、コラーゲンペプチド、膠などの蛋白質や、ポリアクリル酸等のポリカルボン酸もしくはその塩、カチオン系またはノニオン系の界面活性剤などを、好適に用いることができる。また、銅以外の金属元素、例えばモリブデン、鉄、コバルト、タングステンなどを添加することも望ましい。
【0028】
引き続き、必要に応じて、粗化処理層2の脱落防止処理として、めっき液の限界電流密度未満の電流により、粗化処理層2の上に平滑な銅めっき層(図1、2では省略)を、被せめっき層として形成する(図3の工程e)。
この被せめっき層を形成するための硫酸銅、硫酸浴の液組成、液温、電解条件は広い範囲で選択可能であり、特に限定されるものではないが、下記の範囲から選択されることが好ましい。この被せめっき層にも、炭素繊維9を混入させるようにすることが望ましい。その炭素繊維9および分散剤は、上記の工程dで用いたものと同じものを用いることができる。
硫酸銅五水和物:20〜300g/dm
硫酸:10〜200g/dm
炭素繊維:0.1〜1g/dm
分散剤:0.001〜10g/dm
液温:20〜50℃
めっき電流密度:1〜20 A/dm(限界電流密度未満)
めっき時間:1〜20秒
【0029】
被せめっき層を形成した後、防錆層3を形成する(図3の工程f)。
この防錆層3としては、ニッケル、コバルト、タングステン、チタン、セリウム、モリブデン、バナジウム、ルテニウム、インジウムおよびこれらの合金を用いることができる。特に、プリント配線板用の表面処理銅箔の場合には、ニッケル−コバルト合金めっきを用いることができる。ニッケル−コバルト合金めっきは、ワット浴やスルファミン酸浴のニッケルめっき液に一定濃度のコバルト塩を溶解し、電気めっきによってニッケルとコバルトを同時に電析させる方法が一般的である。ニッケル−コバルトめっきの付着量は、5μg/cm≦Ni+Co≦20μg/cm、かつ皮膜中のコバルト濃度が60質量%以上80質量%以下であることが望ましい。コバルト濃度60質量%未満では、プリント配線板用基材との接着性は低下する。逆に、80質量%より高い濃度のコバルトを添加してもプリント配線板用基材との接着性はさほど変化せず、ニッケルに比べてコバルトが非常に高価であるために、コスト面で不利になる。このニッケル−コバルトめっきを行うための処理条件の一例を次に示す。
ニッケル:78g/L
コバルト:20g/L
液温:40℃
pH:4.3〜4.5
電流密度:1.0〜3.0A/dm
処理時間:2〜5秒
【0030】
続いて、亜鉛めっき層4を形成する(図3の工程g)。
このとき使用する亜鉛めっき液としては、硫酸浴、アルカリジンケート浴、塩化物浴などが好適である。この亜鉛めっきを行うための処理条件の一例を次に示す。
硫酸亜鉛(II)七水和物:20g/dm
液温:17〜22℃
pH:2.8〜3.0
電流密度:0.3〜1.5A/dm
処理時間:2〜5秒
プリント配線板用の表面処理銅箔における、いわゆる犠牲防錆層として亜鉛めっきを施す場合には、その付着金属量は、0.5μg/cm以上3μg/cm以下とすることが望ましい。0.5μg/cm未満ではその後のクロム付着量の制御が困難になり、3μg/cmより大きいと、絶縁性基材と張り合わせた後、エッチングにより配線パターン等を形成した際に、その配線パターンの側面に露出した亜鉛がプリント配線板の製造工程中の塩酸や無電解スズめっき液によって溶出しやすくなり、絶縁性基材との接着面積が減少して、接合力(密着力)が低下する虞が高くなるからである。
【0031】
亜鉛めっき層4を形成した後、その亜鉛めっき層4の表面上に、クロメート処理と呼ばれるクロム化成処理を行って、クロム化成処理層5を形成する(図3の工程h)。
但し、この工程では、環境や人体への影響を考えると、有害な6価クロムを含まない液組成のものを使うことが強く望まれる。例えば3価クロムとすることなどが望ましい。その場合に使用される3価クロム化成処理液としては、6価クロムイオンを実質的に含まず、3価クロムイオンが金属クロム換算で70mg/L以上500mg/L未満を含有し、pHが3.0〜4.5である水溶液を使用する。また、pH>4.5とすると、めっき液中におけるクロムイオンの安定性(溶解度)が低下して水酸化物等の形で析出・沈殿し易く、クロム皮膜形成の制御が困難となる。この3価クロムイオンは、硝酸クロム、硫酸クロム、塩化クロムのいずれから与えられても良い。化成処理液のpHを低くする(酸性度を強める)方向の調整は、硝酸水溶液を用いて行うことが望ましい。他方、pHを高くする(酸性度を弱める)方向の調整は、水酸化ナトリウム水溶液を用いて行うことが望ましい。化成処理は銅箔を処理液に浸漬することで行う。処理温度は、室温程度(15〜40℃程度)が望ましい。また、処理時間は特に限定されないが、製造ライン速度の観点から1〜20秒程度で調整することが望ましい。クロムの付着量としては、金属クロム換算で
0.5μg/cm以上2.5μg/cm以下とすることが望ましい。クロムの付着量が0.5μg/cm未満では、耐酸化変色性、耐湿変色性といった防錆能力が不足する虞が高くなる。
【0032】
そしてその後、シランカップリング処理を行って、この作製途中の表面処理銅箔の最表面に、シランカップリング処理層6を形成する(図3の工程i)。
このシランカップリング処理層6の形成のためのシランカップリング処理剤としては、様々な種類のものを用いることが可能であるが、それぞれに特質があるので、張り合わせる相手側の絶縁性基材7に適したものを選択することが望ましい。特に、絶縁性基材7としてポリイミド樹脂フィルムを使用する場合には、アミノシラン、望ましくはアミノプロピルトリメトキシシランが好適である。
このシランカップリング処理を施した後、直ちに乾燥処理を行う。このとき、乾燥時に加熱し過ぎると、結合したシラノールが熱によって分解し、そこが脆弱な界面となって、絶縁性基材7との接合力を低下させてしまうこととなる。乾燥温度と乾燥時間は、装置の構成や製造工程の処理速度に依存するが、好適な範囲としては、乾燥温度を150〜300℃、乾燥時間を15〜35秒とすることが望ましい。
このようにして、本発明の実施の形態に係る表面処理銅箔が製造される。
【0033】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る表面処理銅箔およびその製造方法ならびに銅張積層板によれば、炭素繊維9を表面に突出させた粗化処理層2による機械的なアンカー機能と、シランカップリング処理層6などからなる後処理層8による化学的なアンカー機能とが相まって、表面処理銅箔と樹脂製の絶縁性基材7との接合力の増強を達成することが可能となる。また、樹脂製の絶縁性基材7の材質は一般に、有機材料であるから炭素系化合物であり、炭素繊維9も同類の炭素系物質である。従って、このことからも、本発明の実施の形態に係る表面処理銅箔およびその製造方法ならびに銅張積層板は、樹脂製の絶縁性基材7に対する接合力をさらに確実に増強できるものである。
【0034】
ここで、上記の実施の形態に係る製造方法の説明では、粗化処理層2の下層として下地めっき層(図示省略)を形成すると共に上層として被せめっき層(図示省略)を形成する場合の一例を挙げたが、この場合、下地めっき層も被せめっき層も、実質的に、粗化処理層2に不可分的に付帯して設けられるものであるから、それら3者を合わせて粗化処理層2として定義することも可能である。すなわち、上記の実施の形態に係る製造方法では、粗化処理層2を形成する工程で炭素繊維9を混入するようにした場合について説明したが、それ以外にも、例えば下地めっき層を形成する工程、または被せめっき層を形成する工程、もしくは、それら両方の工程で、あるいは3つの工程全部で、炭素繊維9を混入するようにしてもよい。
なお、本発明に係る表面処理銅箔およびその製造方法ならびに銅張積層板は、上記に説明した材質およびその組み合わせのみには限定されないことは言うまでもない。
例えば、図3に基づいて説明した製造方法の主要な流れにおける、例えば下地銅めっき層のような、必要に応じて形成可能であると説明した部分については、要求される接合力や耐久性のレベルと比べてそれが無くても構わない場合(つまり実質的に不要である場合)などには、省略することも可能である。
また、上記の実施の形態では、後処理層8として、防錆層3と、亜鉛めっき層4と、クロム化成処理層5と、シランカップリング処理層6とを形成するようにしているが、これらの有する防錆機能や接合力増強機能が相まって、樹脂製の絶縁性基材との接合力の増強およびその継続性・耐久性の確保が、上記の実施の形態と同等あるいはそれ以上に可能となるのであれば、上記のような防錆層3、亜鉛めっき層4、クロム化成処理層5、シランカップリング処理層6の全てを組み合わせることのみには限定されない。
例えば、基材として、表面にさびか生じやすい傾向にある銅または銅合金からなる銅箔基材1ではなく、銅/ニッケル合金のような防錆力を有する材質のものを用いた場合や、
その他、用途に応じて錆の進行についてはそれほど心配のない場合などには、防錆層3は省略することも可能である。
また、クロム化成処理プロセスによって形成されるクロム化成処理層5の代りに、電解クロメート処理によって形成されるクロム処理層を設けるようにすることなども可能である。
また、絶縁性基材7の組成と炭素繊維9の組成とを同一または類似のものとすることにより、接合力のさらなる増強を図ることができる。例えば、フッ素系樹脂からなる絶縁性基材7に本発明に係る表面処理銅箔が張り合わされる場合には、炭素繊維9としてフッ素誘導体を含んだものを用いることにより、本発明に係る表面処理銅箔とフッ素系樹脂からなる絶縁性基材7との接合力のさらなる向上を達成することが可能となる。
【実施例】
【0035】
上記の実施の形態で説明したような表面処理銅箔を実施例の試料として作製した(実施例1〜5)。また、それとの比較のために、比較例の試料(比較例1〜3)を作製した。そして、それらの各試料について、最表面の表面粗さ(Rz)と、絶縁性基材7に張り合わせ接合した状態でのピール強度とを、それぞれ測定し、各試料についての表面粗さおよび接合力の強さを評価した。
【0036】
実施例1の試料:
銅箔基材1としては、厚さ17μmの圧延銅箔を用いた。この圧延銅箔の表面を清浄化するために、電解脱脂、酸洗処理を施した。電解脱脂処理は、水酸化ナトリウム40g/dm、炭酸ナトリウム20g/dmを含む水溶液中で温度40℃、電流密度10A/dm、10秒間処理した。酸洗処理は硫酸150g/dmを含む水溶液で25℃、5秒間処理した。その後、この作製途中の表面処理銅箔を流水で水洗した。
続いて、この作製途中の表面処理銅箔の表面を硫酸銅五水和物180g/dm、硫酸100g/dmを含む水溶液を用いてめっき液温45℃、めっき電流密度20A/dmで2秒間めっきをして下地銅めっき層を形成した。
そして、この作製途中の表面処理銅箔を水洗し、硫酸銅五水和物75g/dm 、硫
酸150g/dm、カーボンナノチューブ0.1g/dm、ゼラチン0.01g/dm、硫酸鉄七水和物20g/dm、モリブデン酸ナトリウム0.5g/dm、温度30℃に調整しためっき浴を用いて、電流密度50A/dmで2秒間電解処理し、粗化処理層2を形成した。
続いて、この作製途中の表面処理銅箔を水洗し、硫酸銅五水和物150g/dm、硫酸100g/dm、温度40℃に調整しためっき液を用いて、電流密度10A/dmで5秒間電解処理し、被せ銅めっき層を形成した。
次いで、この作製途中の表面処理銅箔に、硫酸ニッケル六水和物70g/dm、塩化ニッケル10g/dm、硫酸コバルト15g/dm、硼酸50g/dm、温度50℃に調整しためっき液を用いて、電流密度1.5A/dmで5秒間電解処理し、防錆層3としてニッケルめっき層を10μg/cm形成した。
引き続いて、この作製途中の表面処理銅箔を水洗し、硫酸亜鉛90g/dm、硫酸ナトリウム70g/dm、温度30℃に調整しためっき液を用いて、電流密度1.5A/dmで4秒間電解処理し、亜鉛めっき層4を1.0μg/cm形成した。
続いて、この作製途中の表面処理銅箔を水洗し、硫酸クロム0.5wt%、硝酸5wt%に調整した3価クロメート液に室温で10秒間浸漬して、クロム化成処理層5を形成した。
次いで、この作製途中の表面処理銅箔を水洗し、3−アミノプロピルトリメトキシシラン10%のシランカップリング液に室温で10秒間浸漬して直ちに150℃の温度で乾燥し、シランカップリング処理層6を形成した。
このようにして、実施例1に係る表面処理銅箔を作製した。そしてそれを、樹脂製の絶縁性基材7である、FR−4グレードのガラスエポキシ製のプリント配線板用絶縁性基板
の表面に張り合わせて、実施例1の試料とした。
【0037】
実施例2の試料:
被せ銅めっき層を形成する際に、硫酸銅五水和物150g/dm、硫酸100g/dm、カーボンナノチューブ0.1/dm、ゼラチン0.01g/dmを含むめっき液で電気めっきしたこと以外は、実施例1と同様の仕様および方法で、表面処理銅箔を作製した。そしてそれを実施例1と同様にFR−4グレードのガラスエポキシ製のプリント配線板用絶縁性基板の表面に張り合わせて、実施例2の試料とした。
【0038】
実施例3の試料:
粗化処理層の形成を電流密度60A/dmで3秒間電解処理したこと以外は、実施例1と同様の仕様および方法で、表面処理銅箔を作製した。そしてそれを実施例1と同様にFR−4グレードのガラスエポキシ製のプリント配線板用絶縁性基板の表面に張り合わせて、実施例3の試料とした。
【0039】
実施例4の試料:
粗化処理層の形成を電流密度60A/dmで6秒間電解処理したこと以外は、実施例1と同様の仕様および方法で、表面処理銅箔を作製した。そしてそれを実施例1と同様にFR−4グレードのガラスエポキシ製のプリント配線板用絶縁性基板の表面に張り合わせて、実施例4の試料とした。
【0040】
実施例5の試料:
銅箔基材1として厚さ17μmの圧延銅箔の代りに、同じ厚さであるが電解銅箔を用い、それ以外は実施例4と同様の仕様および方法で、表面処理銅箔を作製した。そしてそれを実施例1と同様にFR−4グレードのガラスエポキシ製のプリント配線板用絶縁性基板の表面に張り合わせて、実施例5の試料とした。
【0041】
比較例1の試料:
炭素繊維9およびその分散剤を全く含まない銅めっき液で粗化処理を行って粗化処理層2を形成したこと以外は実施例1と同様の仕様および方法で、表面処理銅箔を作製した。そしてそれを実施例1と同様にFR−4グレードのガラスエポキシ製のプリント配線板用絶縁性基板の表面に張り合わせて、比較例1の試料とした。すなわち、この比較例1の試料は、シランカップリング処理層6などの後処理層8は備えているが、粗化処理層2を備えていない構成のものとした。
【0042】
比較例2の試料:
比較例2に係る表面処理銅箔は、電解銅箔からなる銅箔基材1自体を、炭素繊維9を混入してなるものとすると共に、粗化処理層2および後処理層8を全く有さない構成とした。そしてその他については実施例2と同じ仕様および方法で作製した。
【0043】
比較例3の試料:
比較例3に係る表面処理銅箔は、圧延銅箔からなる銅箔基材1自体を、炭素繊維9を混入してなるものとすると共に、粗化処理層2および後処理層8を全く有さない構成とした。そしてその他については実施例5と同じ仕様および方法で作製した。
【0044】
このような実施例1〜5および比較例1〜3の構成および評価結果を、表1に纏めて示す。
【0045】
【表1】

【0046】
粗化処理後の銅箔表面粗さの評価には、JIS B0601−1994準拠の表面粗さRzを用いた。その測定は、小坂研究所社製SE500表面粗さ測定機を用いて行った。
【0047】
樹脂製の絶縁性基材7(実質的にはプリント配線板用絶縁性基板)との接合力の指標としたピール強度の評価については、FR−4グレードのガラスエポキシ樹脂含浸基板に、各表面処理銅箔をそれぞれ張り合わせ、40kgf/cmの圧力を印加しつつ170℃の加熱を60分間継続するというプロセス条件設定でプレス積層法により積層してなる銅張積層板を試料として用い、JIS C 6481「プリント配線板用銅貼積層板試験方法」の5.7に準拠して、常態ピール強度を測定した。この測定に際しては、ピール強度試験の対象とする表面処理銅箔の幅を、度の試料についても等しく1mmとした。
【0048】
表1に示した結果から明白なように、炭素繊維9を混入してなる粗化処理層2を備えると共に、防錆層3、亜鉛めっき層4、クロム化成処理層5、シランカップリング処理層6からなる後処理層8を備えた、実施例1〜5に係る試料の場合には、そのいずれもが、表面粗さRzは3.4以下であるにも関わらず、ピール強度は1.0N/mm超であり、接合力が極めて高いものとなることが確認できた。
【0049】
他方、それとは対照的に、後処理層8は備えているが、粗化処理層2に炭素繊維9を全く混入させていない、従来の一般的な銅箔の典型的な構成である比較例1の試料の場合には、表面処理銅箔における最表面の表面粗さ(表1ではこれを簡潔化して「銅箔表面粗さRz」と表記してある)は1.1であり、実施例1、2の場合よりも粗さが大きいものとなったが、ピール強度は0.60N/mmであり、接合力は低いものに止まってしまうことが確認された。
また、特許文献1にて提案された複合電解銅箔の場合のような、電解銅箔からなる銅箔基材1自体に炭素繊維9を混入させているが、それとは別の粗化処理層2および後処理層8は全く有していない構成である、比較例2の試料の場合には、表面粗さRzは実施例1〜5のいずれよりも大きな(つまり、どの実施例よりも粗い)ものとなったが、それにも関らず、ピール強度は1.0N/mm未満であり、どの実施例1〜5よりも低いものとなった。
また、比較例3の試料の場合には、比較例2における電解銅箔の代りに圧延銅箔からなる銅箔基材1としたところ、表面粗さRzは0.7と小さく、かつピール強度も0.12N/mmと極めて低いものとなった。
【0050】
このような実施例1〜5の評価結果と比較例1〜3の評価結果とを対照・比較して検討すると、次のようなことが分かる。
すなわち、本発明によれば、炭素繊維9を混入してなる粗化処理層2と後処理層8とを備えるようにしたので、それらの機械的なアンカー機能と化学的なアンカー機能とが相まって、表面処理銅箔の最表面の表面粗さ(Rz)は0.8〜3.4程度であっても、樹脂製の絶縁性基材7に対する接合力は、ピール強度で1.0N/mm以上(1.04〜1.90N/mm)と極めて強力なものとすることができる。
特に、本発明に係る、炭素繊維9を混入してなる粗化処理層2と後処理層8とを備えた構成の表面処理銅箔や銅張積層板においては、銅箔基材1として圧延銅箔を用いることにより、その圧延銅箔自体の表面が平滑であることから、表面処理銅箔の最表面の表面粗さ(Rz)については電解銅箔の場合よりも小さくすることができ、かつピール強度については銅箔基材1として電解銅箔を用いた場合と同等に極めて高いものとすることができる。そしてこのことから、特に銅箔基材1として圧延銅箔を用いることで、導体パターンやその寸法精度のさらなるファイン化に対応することが可能となると共に、そのようなファイン化に対応可能なほどに表面粗さが小さくても、樹脂製の絶縁性基材7との接合力・継続性・耐久性のさらなる向上を達成することが可能となる。
【0051】
なお、このような本発明に係る表面処理銅箔およびその製造方法ならびに銅張積層板の特質を生かすことが可能な用途先としては、上記のようなFPCなどのプリント配線板のみには限定されない。その他にも、例えばプラズマディスプレイ用電磁波シールド材や、ICカードのアンテナなどへの適用も可能である。あるいはその他にも、例えばリチウムイオン電池用の電極材料等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 銅箔基材
2 粗化処理層
3 防錆層
4 亜鉛めっき層
5 クロム化成処理層
6 シランカップリング処理層
7 絶縁性基材
8 後処理層
9 炭素繊維

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅箔からなる基材と、
前記基材の上に、炭素繊維が混入されて当該炭素繊維の一部が表面から突出するように設けられた銅または銅合金からなる粗化処理層と、
前記粗化処理層の上に、外部の絶縁性基材に対する化学的な接合力を増強するために設けられた後処理層と
を備えたことを特徴とする表面処理銅箔。
【請求項2】
請求項1記載の表面処理銅箔において、
前記炭素繊維が、カーボンナノチューブまたはカーボンナノチューブの誘導体からなるものである
ことを特徴とする表面処理銅箔。
【請求項3】
請求項1または2記載の表面処理銅箔において、
前記後処理層が、前記粗化処理層の上に、ニッケル、コバルト、タングステン、チタン、セリウム、モリブデン、バナジウム、ルテニウム、インジウム、またはそれらの合金のうちの、少なくとも一種類以上の材質からなる防錆層と、
前記防錆層の上に設けられた亜鉛めっき層と、
前記亜鉛めっき層の上に設けられたクロム化成処理層と、
前記クロム化成処理層の上に設けられたシランカップリング処理層と
を、この順に形成してなるものである
ことを特徴とする表面処理銅箔。
【請求項4】
請求項1ないし3のうちいずれか1つの項に記載の表面処理銅箔において、
前記基材が、圧延銅箔である
ことを特徴とする表面処理銅箔。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちいずれか1つの項に記載の表面処理銅箔において、
当該表面処理銅箔の最表面における表面粗さが、JIS94の規定に則した表面粗さRzで1μm以上3μm以下である
ことを特徴とする表面処理銅箔。
【請求項6】
銅箔からなる基材の表面上に、電気めっき法により、銅または銅合金をめっき金属の母材として用い、当該母材のめっき液に炭素繊維を混入して当該炭素繊維の一部が表面から突出するように銅めっきを施すことで、前記炭素繊維の混入によって当該銅めっきの少なくとも表面を褶曲した状態にしてなる粗化処理層を形成する工程と、
前記粗化処理層の上に、外部の絶縁性基材に対する化学的な接合力を増強するための後処理層を形成する工程と
を含むことを特徴とする表面処理銅箔の製造方法。
【請求項7】
銅箔からなる基材と、前記基材の上に、炭素繊維が混入されて当該炭素繊維の一部が表面から突出するように設けられた銅または銅合金からなる粗化処理層と、前記粗化処理層の上に、外部の絶縁性基材に対する化学的な接合力を増強するために設けられた後処理層とを備えた表面処理銅箔を、樹脂製の絶縁性基材の表面に張り合わせて積層してなる
ことを特徴とする銅張積層板。
【請求項8】
請求項7記載の銅張積層板において、
前記炭素繊維が、カーボンナノチューブまたはカーボンナノチューブの誘導体である
ことを特徴とする銅張積層板。
【請求項9】
請求項7または8記載の銅張積層板において、
前記表面処理銅箔が、前記後処理層として、前記粗化処理層の上に、ニッケル、コバルト、タングステン、チタン、セリウム、モリブデン、バナジウム、ルテニウム、インジウム、またはそれらの合金のうちの、少なくとも一種類以上の材質からなる防錆層を形成し、前記防錆層の上に、亜鉛めっき層を形成し、前記亜鉛めっき層の上に、クロム化成処理層を形成し、前記クロム化成処理層の上に、シランカップリング処理層を形成してなるものである
ことを特徴とする銅張積層板。
【請求項10】
請求項7ないし9のうちいずれか1つの項に記載の銅張積層板において、
前記基材が、圧延銅箔である
ことを特徴とする銅張積層板。
【請求項11】
請求項7ないし10のうちいずれか1つの項に記載の銅張積層板において、
前記表面処理銅箔として、最表面における表面粗さがJIS94の規定に則した表面粗さRzで1μm以上3μm以下のものを用いて、当該表面処理銅箔を前記樹脂製の絶縁性基材の表面に張り合わせてなる
ことを特徴とする銅張積層板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−180454(P2010−180454A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25268(P2009−25268)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】