説明

表面加熱部材及び表面加熱部材の製造方法

【課題】効率的で、柔軟に寸法設計及び使用することができる表面加熱部材及び表面加熱部材の製造方法を提供すること。
【解決手段】導電糸及び非導電糸を有する織物を含む表面加熱部材は、糸の少なくとも一部が導電糸2として設計され、互いに離間した状態で延在する導電糸群がそれぞれ接合された少なくとも2つの加熱帯4(21,22,23)が設けられ、各群の導電糸2が開始部5と終了部6において平面接続手段7を介して電気的に接続され、加熱帯4が平面接続手段7を介して電気的に配線されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面加熱部材に関する。本発明に係る表面加熱部材は横方向と縦方向の糸を有する織物を含み、糸の少なくとも一部を導電糸として設計する。
【0002】
また、本発明は、表面加熱部材を製造するための方法であって、少なくとも一部が導電糸である糸で織物を織る方法に関する。
【背景技術】
【0003】
表面加熱部材は、例えば自動車のシート加熱部材に使用されている。シートを加熱する場合には、通常はワイヤー束(いわゆる撚り線)を織物に織り込む。これらの撚り線は担体材料上で螺旋状(spirally;helically)に延在し、多くの場合には単一の連続した導電体からなる。導電体は担体材料の全面に配置する。熱を発生させるために、導電体の両端に電圧を印加する。撚り線の抵抗及び撚り線に流れる電流によってシートを加熱するための熱が発生する。ワイヤーの織り込みには多大な手間が必要であり、担体材料の全面にわたって均一な加熱効果を得ることも極めて困難である。
【0004】
撚り線を使用する際に生じる別の問題は、表面加熱部材の一部で過熱が生じる可能性があることである。多くの場合、ワイヤー束が近接し過ぎていることが原因で過熱が生じる。また、織り込まれた撚り線がずれ、隣接する撚り線との距離や撚り線の配置を正確に維持することができないことも原因である。
【0005】
また、ワイヤーは比較的大きな直径を有しているため、ワイヤー束が織り込まれた担体材料の可撓性が低下する。その結果、シートの装飾材の内部又は上部に担体材料を配置することが極めて困難となる。また、多くの場合には、加熱用電流の短絡又はリークを防ぐために担体材料上に電気絶縁層を設ける。絶縁層によって可撓性はさらに低下することになる。
【0006】
シート加熱部材を製造するための別の方法が、例えば特許文献1に記載されている。特許文献1では、比較的高い電気抵抗を有する炭素繊維からなる発熱毛布として織物を使用している。発熱毛布に電流を供給するために、給電線又は接触線を両端に設ける。接触線の一方を接地した状態で、他方に電圧を印加する。電位差が生じると、電流が織物の炭素繊維を介して接地された接触線に流れ、熱が発生する。
【0007】
理論的には、このような発熱毛布によって表面全体にわたって均一かつ一定の熱を放出することができる。しかし、この発熱毛布では特定の箇所で集中的に熱を発生させることはできない。また、非常に均一に熱を分布させるためには、炭素繊維織物を非常に均一に分布させなければならないという問題がある。
【0008】
特許文献2は別の表面加熱部材を開示している。特許文献2では、発熱導電体として機能する正弦曲線状の横糸を網織物ベース材料内に設けている。発熱導電体に電気を供給するために、発熱導電体が接続された給電導電体が設けられている。特許文献2に記載されているように、発熱導電体と給電導電体との接続には特に注意が必要である。特許文献2では、長い接続経路によって発熱導電体と給電導電体との接触を試みている。しかし、発熱導電体と給電導電体との機械的接続は考慮されていない。
【特許文献1】ドイツ特許第4233118 A1号
【特許文献2】ドイツ特許第4136425 A1号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、特に効率的で、柔軟に寸法設計及び使用することができる表面加熱部材及び表面加熱部材の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、特許請求の範囲に記載した表面加熱部材及び表面加熱部材の製造方法によって達成される。
【0011】
好適な実施形態は、明細書、図面に記載されている。
【0012】
本発明に係る表面加熱部材は、横方向及び縦方向に糸を有する織物を含み、前記糸の少なくとも一部が導電糸として設計され、互いに離間した状態で延在する導電糸群がそれぞれ接合された少なくとも2つの加熱帯が設けられていることを特徴とする。また、各群の導電糸を開始部と終了部において平面接続装置を介して電気的に接続し、加熱帯を接続手段を介して電気的に配線する。
【0013】
本発明の基本的な着想は、複数の導電糸を加熱帯に接合し、導電糸を共通接続することにある。互いに離間した状態で延在する隣接する導電糸を接合することによって、糸が断線した場合に回路が完全に中断しないという利点がある。螺旋状に配置された撚り線を有する従来のシート加熱部材では、撚り線が1箇所で断線した場合に回路の中断が発生する。一方、本発明では、加熱帯の複数の導電糸が断線した場合でも、熱を十分に発生させることができる。従って、加熱帯内の例えば36本の導電糸の1本が断線しても加熱効果に対する影響は全くない。
【0014】
加熱帯を使用することによる別の利点は、細いワイヤーを使用することができることである。周知のとおり、導電体の抵抗値は導電体の直径が小さくなるにつれて上昇する。その結果、低電圧であっても、非常に細い導電糸を使用する場合には、抵抗値が上昇して導電体又は糸の過熱及び溶解が生じることがある。一方で、太い導電体を使用すると製造される織物の可撓性が大幅に低下してしまうため、優れた可撓性を有する表面加熱部材を得るために導電体として非常に細い糸を使用することが有利である。複数の細い導電体が加熱帯に並列に接合されている場合には、加熱帯の絶対抵抗値が減少し、加熱帯の抵抗値は各導電糸よりも小さくなる。従って、抵抗値の減少により、熱の発生も減少する。その結果、導電体が溶解する可能性が大きく減少する。
【0015】
例えば40本というような多数の導電体を加熱帯に設ける場合には、1本又は2本の導電体が破損しても加熱帯の抵抗値には大きな影響が生じないため、全抵抗値の変化に関して生じる不具合に対する耐性が向上する。
【0016】
本発明に係る表面加熱部材の別の基本的な着想は、各群の導電糸を開始部と終了部において平面接続手段を介して電気的に接続するという点にある。また、接続手段は機械的接続部としても機能する。織物に設けられる接続手段によって加熱帯と導電糸との接触が非常に容易となり、織物に設けられるリード線よりも信頼できる方法で接続を行なうことができる。
【0017】
本発明に係る表面加熱部材によって実現される別の基本的な着想は、平面接続手段を介して様々な方法で加熱帯を配線することができるという点にある。例えば、耐断線性を向上させるために、複数の加熱帯を並列に配線することができる。また、表面加熱部材の抵抗値及び発熱量も決定することができる。例えば、複数の加熱帯を直列に接続すると、抵抗値が上昇し、全体的な加熱効果が増加する。
【0018】
原則として、導電糸は絶縁体を有する必要はない。ただし、本発明に係る加熱部材のさらなる加工時には、導電糸が外表面に沿って絶縁体を有していることが有利である。例えば、薄い絶縁ワニス被覆として絶縁体を形成することができる。各導電糸に絶縁体を設けることによって、互いに接触する危険性を伴わずに、加熱帯内で導電糸を近接して配置することができる。複数の導電糸の接触又は摩擦は、加熱帯の抵抗値及び加熱効果に影響を与える導伝ブリッジが生じるために望ましくない。また、接触点において導電糸が燃焼する危険性が増加する。
【0019】
導電糸に絶縁体を設ける場合には、例えば表面加熱部材をシートに組み込む際に、フリース、ダム(damming)又は絶縁材料によって表面加熱部材を被覆する必要はない。その結果、材料を節約し、軽量化することができると共に、表面加熱部材が発生する熱を良好に放出させることができ、追加の絶縁材料によって熱が減少することもない。
【0020】
加熱部材の有利な実施形態では、網目幅は織物の全面にわたって一定である。また、隣接する導電糸及び/又は加熱帯間の距離を可変とすることができる。従って、熱を発生する導電ワイヤーの数によって、単位面積当たりの加熱効果を変化させることができる。同様に、加熱帯間の距離によって加熱効果を変更及び決定することができる。
【0021】
織物の全面にわたって網目幅を一定とすることにより、導電糸の位置ずれを防止することができる。位置ずれ防止のために、例えば約0.1mmの網目開口部を設ける。そのため、非常に小さな直径を有するフィリグリー糸を使用する。加熱効果は、例えば、横糸を1つおき又は2つおきに導電糸とすることによって変化させることができる。ここで、導電糸間の非導電糸の数は必要に応じて変更することができる。また、特に高い表面加熱効果を得るために、導電糸のみを使用することも可能である。
【0022】
導電糸及び非導電糸の直径は、本発明に係る表面加熱部材の基本的な構想に影響を与えることはない。ただし、製造時及び連続運転における耐久性に関して、導電糸及び非導電糸が実質的に同じ直径を有することが有利である。この場合には、太さが異なる糸によって追加的な応力を受けることがない非常に均一な織物を製造することができる。
【0023】
別の実施形態では、糸の直径は特に10μm〜100μmである。直径が40μm〜50μm、特に約40μmであることが特に好ましい。このような寸法とすることにより、製造される織物を非常に微細にすることができると共に、ワイヤーは機械的応力に抵抗する十分な安定性を示す。基本的に、より細い糸を使用することもできるが、その場合には、機械的応力を吸収するために安定化用の糸を追加することが必要となる場合がある。細い糸を使用することによって織物の可撓性が大きく向上する。
【0024】
導電糸の材料は、任意に選択される導電材料からなることができる。例えば、金属、合金、導電性プラスチック又は炭素繊維を使用することができる。導電糸として銅線を使用することが特に有利である。銅には、銅製ワイヤーの比抵抗値が全長にわたって一定であり、比抵抗値を非常に正確に決定することができるという利点がある。非導電糸としては、例えば、プラスチック又は天然繊維からなる糸を使用することができる。より好ましくは、ポリエステル等のポリマーを使用することができる。本発明で使用する非常に小さな直径を有する場合に、これらの材料は機械的応力及び導電ワイヤーが発生する熱に対して高い安定性を有する。
【0025】
原則として、織物に織り込んだ別の直線状ワイヤーによって導電糸又は加熱帯を接続することができる。しかし、このようなワイヤーは給電線又は放電線となるため、織物に含まれる他の糸よりも大きな直径を有していなければならず、織物の製造及び耐荷重性(load−bearing capacity)に影響を与える。さらに、給電/放電ワイヤーを使用する場合には、従来技術で発生する接触の問題が生じる。
【0026】
従って、平面接続装置を圧力と熱によって加熱帯、すなわち導電糸に接続することが特に好ましい。この場合、接続のための別の材料を必要としない熱溶着を使用することができる。そのような熱溶着により接続手段を導電ワイヤーに接続することによって、良好な電気伝導性が得られ、比較的容易に製造プロセスに組み込むことができる。また、接続手段と導電ワイヤーとの間の電気伝導性が良好となる。ただし、はんだ付け又は導電接着剤を用いる接着等のその他の接続方法も使用することができる。
【0027】
平面接続手段を設計する際には、フレキシブルプリント回路基板の薄い導電部として設計することが有利である。導電部は金属材料等で製造することができ、熱溶着が容易となる。基本的に、その他の導電材料も導電部の材料として好適である。薄いフレキシブルプリント回路基板としては、例えばフレックスプリント(Flexprint)を使用することができる。フレックスプリントは、導電被覆を有するプラスチック状担体層からなる。各導電部を形成するために、導電性材料を所定の部分でエッチングすることができる。ただし、個別の導電性薄板のみを使用することもできる。プリント回路基板の導電部を適切に配置することによって、加熱帯を選択的に配線することができる。また、薄いプリント回路基板の上方に被覆及び/又は絶縁テープを接着等によって配置することができる。このようなテープによって、薄いプリント回路基板又はその導電部と導電ワイヤーとの間の接触点が機械的に安定し、保護される。被覆テープは、例えばプラスチックによってプラスチックフィルム状に形成することができる。被覆テープは、取付が容易な自己接着性テープであってもよい。
【0028】
また、平面接続手段は、例えば薄い金属テープとして設けることができ、金属テープはプリント回路基板を形成するために部分的に中断する。
【0029】
ここまでの説明では糸という用語に言及してきた。横糸方向及び縦糸方向に設けられている糸は、モノフィラメント糸及びマルチフィラメント糸であってもよい。好適な実施形態では、モノフィラメント糸を導電糸として特に使用する。なぜなら、糸の直径を特に良好に決定することができ、抵抗値をより正確に決定できるためである。
【0030】
特に有利な実施形態では、表面加熱部材は、例えば自動車のシート加熱部材の一部として使用する。従来技術で使用されるシート加熱部材と比較すると、本発明の表面加熱部材は軽量で、優れた可撓性及び引張強度を有するため、特に容易に加工することができる。同様に、本発明に係る表面加熱部材によって、所望の表面加熱効果を特に容易に設定し、達成することができる。
【0031】
驚いたことに、エネルギー消費量が同じ場合に、従来のシート加熱部材では所望の温度に達するまでに少なくとも3分を要するが、本発明に係る表面加熱部材では約45秒で所望の温度に達する。これは、織物全面にわたって発熱性織物の分布を向上させた結果によるものと考えることができる。また、導電糸を良好かつ正確に配置することによって、加熱効果が得られる位置を正確に決定することができ、特に均一な加熱を行なうことができる。同様に、絶縁性織物を追加しなくてもよいことも重要である。
【0032】
また、表面加熱部材が非常に軽量で可撓性を有しているため、シート加熱部材の重量を減少させることができる。本発明に係る表面加熱部材が発生する電力は最大100kW/kgであり、公知のシート加熱部材よりもはるかに優れている。
【0033】
本発明に係る表面加熱部材の製造方法は、互いに離間した状態で延在する導電糸群がそれぞれ接合された少なくとも2つの加熱帯を形成することを特徴とする。また、各群の導電糸を開始部と終了部で平面接続装置を介して電気的に接続し、加熱帯を接続手段を介して電気的に配線する。
【0034】
本発明に係る方法の基本的な着想は、隣接する複数の導電糸を加熱帯に接合し、表面加熱部材の破損安全性を向上させることにある。従って、各導電糸が断線しても、装置全体に大きな影響を及ぼすことはない。
【0035】
別の基本的な着想は、外部接続手段を使用することによって、各導電糸を特に良好に接触させることができるという点にある。また、接続手段によって必要に応じて各加熱帯を配線することができる。従って、選択的な並列、直列又はその他の組合せ接続によって表面加熱部材の全抵抗値と加熱効果を変化させることができる。
【0036】
表面加熱部材を製造する際には、導電糸が外表面に沿って電気絶縁体を有していることが特に有利である。絶縁体を設ける場合には、接続手段の部分で絶縁体を取り除き、接続手段と導電糸との間の良好な電気的伝導を確保する。ただし、原則として、このような絶縁体は必ずしも必要ではない。絶縁体には導電糸を互いに絶縁することができるという利点があり、ワイヤーの望ましくない相互接触、それに伴う電流の流れ又はクリーピングを防止又は大幅に最小化させることができる。その結果、大量の熱によって引き起こされるワイヤーの望ましくない燃焼を著しく防止することができる。
【0037】
基本的に、導電接触が生じる限りにおいて、平面接続手段は任意に選択される方法によって導電糸に設けることができる。平面接続手段を圧力と熱によって糸に熱溶着することにより接続を行なうことが特に有利である。この方法では、接触点の部分で必要に応じて設けられる糸の絶縁体を除去する。例えば、熱溶着に使用する熱によって絶縁体を蒸発又は分解させることができる。通常、例えば適当な酸又は機械的補助手段によって絶縁体を予め除去することもでき、この場合には、はんだ付け及び接着によって導電糸を接触させることができる。
【0038】
別の有利な実施形態では、テープに沿って平面接続部材を離間して配置し、平面接続手段を有するテープを織物に貼り付ける。この場合、テープは平面接続手段の織物とは反対側を向く側に配置する。例えば、フレックスプリント等の薄いフレキシブルプリント回路基板として実現することができる。ここでは、薄い導電フィルム(平らな薄板)を担体材料に設ける。導電フィルムの一部を除去して導電部を設ける。また、接着等によって織物に貼り付けることができる被覆テープを使用することにより、平面接続手段及び薄いフレキシブルプリント回路基板全体を保護し、接触点の領域における表面加熱部材の機械的安定性を向上させることができる。
【0039】
また、平面接続手段の部分における導電糸の位置ずれが防止され、接続装置と導電糸との間の導電接続が維持される。平面接続部をフレックスプリント等のテープに設け、導電部をエッチング法によって形成することが特に有利である。その後、熱溶着によって平面接続手段を導電糸に接続することができる。この工程の前後に、製造した織物に被覆テープを配置し、接着等によって付着させる。
【0040】
その際に、平面接続装置を所望の大きさに調節し、加熱帯を所望に応じて配線することができる。
【0041】
製造する表面加熱部材の加熱効果を決定するために、様々な方法を使用することができる。例えば、異なる比抵抗率を有する導電糸を使用して加熱効果を変化させることができる。同様に、導電糸の直径を変化させることによって抵抗値及び発熱量を変化させることができる。別の好適な方法では、隣接する導電糸間の距離を変化させる。複数の導電糸を直接隣接して設けることによって高い表面加熱効果を得ることができ、多数の非導電糸を隣接する複数の導電糸間に設ける場合には表面加熱効果を減少させることができる。
【0042】
ただし、導電絶縁糸を、例えば横方向と縦方向で交差するように使用することもできる。ここでは、独立して制御することができる2つの加熱部材を形成する点を除いては、上述した方法と同様に配線することができる。従って、横糸と縦糸との間の接続がないため、1本の加熱部材を横方向に設け、独立した2本目の加熱部材を縦方向に設けることができる。
【0043】
本発明を、図面に概略的に示す好適な実施形態によってさらに詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
図1は、本発明に係る表面加熱部材1の非常に簡略化した構造例を示す。図示する実施形態では、表面加熱部材1は横糸及び縦糸からなる織物を有する。ここでは、導電糸2及び非導電糸3を使用する。図示する実施形態では、導電糸2を縦糸方向のみに使用する。なお、導電糸2を横糸方向のみに設けたり、横糸方向及び縦糸方向の両方に設けることもできる。
【0045】
図示する織物の断面部分では、異なる3種類の加熱帯4を例として示している。加熱帯21は、他の2つの加熱帯22及び23と比較して最も高い表面加熱効果を有する。加熱帯21では、導電糸2が実質的に互いに平行に延びるように、直接隣接して位置している。
【0046】
一方、加熱帯22では、導電糸2の間に非導電糸3が一本ずつ設けられている。従って、加熱帯21と比較すると、表面加熱効果は減少している。また、導電糸2の間に複数の非導電糸3が設けられているため、加熱帯23の表面加熱効果はさらに減少している。基本的に、加熱帯4の表面加熱効果をさらに減少させるために、図1に示すよりも多くの非導電糸3を導電糸2の間に設けることができる。
【0047】
加熱帯4の各導電糸2は平面接続装置7を介して接続されている。また、平面接続装置7は、所望の方法で各加熱帯を配線する役割を担う。織物13の終了部6では、平面接続装置7は被覆テープ9及びプリント回路基板8によって被覆されていない状態で示されている。平面接続装置7は、例えば薄い銅板等の薄板として設計することができる。
【0048】
開始部5では、平面接続装置7及びプリント回路基板8は被覆テープ9によって被覆されている。平面接続手段7はプリント回路基板8上に形成され導電性の平らな薄板である。プリント回路基板8の位置は実線によって示し、平面接続装置7の位置は点線によって示している。被覆テープ9は、既に取り付けられたプリント回路基板8及び織物13に、例えば接着剤によって設けることができる。また、最初にプリント回路基板8を被覆テープ9上に配置し、次にプリント回路基板8及び接続手段7が配置された被覆テープ9を織物13に付着させることも可能である。被覆テープ9は、例えばプリント回路基板8を絶縁することもできる。ただし、プリント回路基板8は必ずしも必要ではない。
【0049】
接続手段7は、例えば熱溶着によって、織物13、特に導電糸2に取付けることができる。この種の接続では、圧力及び熱によって導電糸2とプリント回路基板8の導電部として設計された接続手段7とを導電接続することができる。その結果、導電糸2を導電部に「マイクロ」溶着することができる。
【0050】
導電糸2が絶縁層で被覆されている場合には、例えば熱の作用によって溶着時に絶縁層を除去することができる。導電糸2を絶縁することにより、望ましくない糸の相互接触を防止すると共に、絶縁性織物層等の絶縁体をさらに設ける必要がないため、例えばシート加熱部材に本発明に係る表面加熱部材を容易に取り付けることができる。
【0051】
図1に示す本発明に係る表面加熱部材1の断面部分は非常に拡大して示している。糸2,3の直径が40μmであれば、約0.1mmの網目開口部11が設けられる。このような表面加熱部材は1cm当たり10〜200本、さらに好ましくは60〜150本、特に約70本の糸を含む。
【0052】
図2は、自動車のシートに取付けるための本発明に係る簡易型表面加熱部材1を示す。表面加熱部材1は、2つの異なる加熱帯31,32を有する。加熱帯31,32は、異なる間隔で配置された導電糸2によって異なる表面加熱効果を有する。図2に示す表面加熱部材1の場合には、織物13を形成する糸2,3の密度及び数は、自動車のシート当たり3000〜4000本であり、表面加熱部材1の全長は40〜50cmである。加熱帯31では、例えば約110本の糸が設けられている。
【0053】
加熱帯31,32間には、導電糸2を含まない部分が存在する。これらの部分によって、加熱帯4を良好に分離させることができると共に、例えば装飾材を固定させる部分を設けることができる。これは、不要なエネルギーの消費及び過熱を避けるために装飾材に加熱しない溝が設けられている場合に該当する。
【0054】
図示する表面加熱部材1では、加熱帯4が直列に接続されている。プリント回路基板8の接続手段7は点線で示している。プリント回路基板8は実線で示している。プリント回路基板8の上部の被覆テープ9の両端には電源との接続のための接触点36が設けられている。図2に概略的に示す表面加熱部材1は、好ましくは12Vの自動車用車載電源と接続するように設計されている。ただし、各加熱帯4の寸法と各加熱帯4の配線は柔軟に決定することができるため、その他の電圧も容易に採用することができる。
【0055】
本発明に係る表面加熱部材は、シート加熱以外の用途にも同様に好適である。例えば、衣服内に表面加熱部材を設けて衣服を温めることもできる。同様に、例えば、本発明に係る表面加熱部材をスキーブーツ内に設けて使用前にスキーブーツを快適な温度に温めることもできる。
【0056】
本発明に係る表面加熱部材によって、例えばシート加熱等のために表面部材を容易、柔軟かつ非常に効果的に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る表面加熱部材の非常に簡略化した構造例を示す。
【図2】シート加熱のために取付けられる本発明に係る簡易型表面加熱部材を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向及び縦方向に糸を有する織物を含み、
前記糸の少なくとも一部が導電糸として設計され、
互いに離間した状態で延在する導電糸群がそれぞれ接合された少なくとも2つの加熱帯が設けられ、
各群の前記導電糸が開始部と終了部において平面接続手段を介して電気的に接続され、
前記加熱帯が前記接続手段を介して電気的に配線されている表面加熱部材。
【請求項2】
請求項1において、前記導電糸が外表面に沿って絶縁体を有する表面加熱部材。
【請求項3】
請求項1において、網目幅が前記織物の表面にわたって一定であり、加熱効果を変化させるために隣接する導電糸及び/又は加熱帯間の距離が異なっている表面加熱部材。
【請求項4】
請求項1において、前記織物内で前記導電糸が非導電糸と実質的に同じ直径を有し、前記糸の直径が10μm〜100μmである表面加熱部材。
【請求項5】
請求項1において、前記導電糸が銅線として設計され、非導電糸がポリマーとして設計されている表面加熱部材。
【請求項6】
請求項1において、前記平面接続手段が圧力と熱によって前記加熱帯に接続されている表面加熱部材。
【請求項7】
請求項1において、前記平面接続手段が平らな薄板として設計され、前記平面接続手段がテープに沿って互いに離間して配置され、前記平らな薄板が前記織物上に配置され、前記導電糸と電気的に接続されている表面加熱部材。
【請求項8】
請求項1に記載の表面加熱部材を含むシート加熱部材。
【請求項9】
表面加熱部材の製造方法であって、
少なくとも一部が導電糸である糸で織物を織り、
互いに離間した状態で延在する導電糸群がそれぞれ接合された少なくとも2つの加熱帯を形成し、
各群の前記導電糸を開始部と終了部において平面接続装置を介して電気的に接続し、
前記加熱帯を前記接続手段を介して電気的に配線する表面加熱部材の製造方法。
【請求項10】
請求項9において、前記導電糸が外表面に沿って電気絶縁体を有し、前記平面接続装置の部分で前記絶縁体を除去する表面加熱部材の製造方法。
【請求項11】
請求項9において、前記平面接続装置を絶縁された前記導電糸に貼り付け、圧力と熱によって前記導電糸に接続することで前記糸の前記絶縁体を当該部分で除去する表面加熱部材の製造方法。
【請求項12】
請求項9において、前記平面接続部材をテープに沿って離間して配置し、前記平面接続手段を有する前記テープを前記織物に貼り付け、前記テープを前記平面接続手段の前記織物とは反対側を向く側に配置する表面加熱部材の製造方法。
【請求項13】
請求項9において、前記加熱効果を調節するために隣接する導電糸間の距離を変化させる表面加熱部材の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−227384(P2007−227384A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−43191(P2007−43191)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(506161108)シーファー アーゲー (3)
【氏名又は名称原語表記】SEFAR AG
【Fターム(参考)】