表面実装水晶振動子
【課題】小型化を実現しつつ、品質を高め、生産性を向上させることができる表面実装水晶振動子を提供する。
【解決手段】矩形のセラミックベース1の角部に形成された貫通孔の壁面にスルー端子5xが形成され、セラミックベース1の表面に水晶片2を両端で保持する両持ちタイプの水晶保持端子4の引出端子が対角のスルー端子5xに接続すると共に、セラミックベース1の裏面ではスルー端子5xに接続する実装端子5aが形成され、更に金属カバー3のセラミックベース1上に溶融樹脂8を介して接合する開口端面が傾斜面を備えたフランジ3aとした表面実装水晶振動子である。
【解決手段】矩形のセラミックベース1の角部に形成された貫通孔の壁面にスルー端子5xが形成され、セラミックベース1の表面に水晶片2を両端で保持する両持ちタイプの水晶保持端子4の引出端子が対角のスルー端子5xに接続すると共に、セラミックベース1の裏面ではスルー端子5xに接続する実装端子5aが形成され、更に金属カバー3のセラミックベース1上に溶融樹脂8を介して接合する開口端面が傾斜面を備えたフランジ3aとした表面実装水晶振動子である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面実装用の水晶振動子に係り、特に、生産性を向上させ、小型化を実現できる表面実装水晶振動子に関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
表面実装水晶振動子は小型・軽量であることから、特に携帯型の電子機器に周波数や時間の基準源として内蔵される。
従来の表面実装水晶振動子は、セラミック基板上に水晶片2を搭載し、凹状のカバーを逆さまにして被せて密閉封入したものがある。近年では、周波数偏差Δf/fが比較的緩く、例えば±150〜±250ppmの安価な民生用がある。
【0003】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開2007−158419号公報「表面実装水晶発振器」(日本電波工業株式会社)[特許文献1]、特開2003−179456号公報「水晶製品用表面実装容器及びこれを用いた水晶製品」(日本電波工業株式会社)[特許文献2]、特開2001−110925号公報「導電性キャップ、電子部品及び導電性キャップの絶縁被膜形成方法」(株式会社村田製作所)[特許文献3]がある。
【0004】
特許文献1には、表面実装水晶発振器において、ICチップ2上に水晶片3が搭載され、実装基板4上にICチップ2等が形成され、金属カバー5が設けられた構成が示されている。
また、特許文献2には、水晶製品用表面実装容器において、単層基板1A上に水晶端子6を介して水晶片3が設けられ、カバー2で密閉封入した構成が示されている。
また、特許文献3には、基板2上に形成された圧電素子4を覆う金属キャップ3の基板1との接触面を、内側側面が曲線となるようにした構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−158419号公報
【特許文献2】特開2003−179456号公報
【特許文献3】特開2001−110925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の表面実装水晶振動子では、近年益々小型化した水晶片を基板上に搭載し、更にカバーで密閉封入した構成とした場合に、不良の割合を減らして生産性を向上させ、品質を高くすることが難しいという問題点があった。
【0007】
具体的には、水晶片とカバーを小型化した場合、水晶片に導電性接着剤で接続すると共に、水晶振動子を保持する水晶保持端子と、その水晶保持端子から電極まで引き出される引出端子とが、電気的に短絡(ショート)しないよう工夫が必要であり、従来の構成では、十分に小型化に対応できていないものであった。
【0008】
また、特許文献3では、基板に接触する金属キャップについて記載があるが、小型化を考慮した引出端子との関係において適用したものとはなっていなかった。
【0009】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、小型化を実現しつつ、品質を高め、生産性を向上させることができる表面実装水晶振動子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、矩形のセラミック基板上に水晶片が第1及び第2の水晶保持端子で保持され、溶融樹脂の封止材を介して金属カバーで封止される表面実装水晶振動子であって、水晶片の一方の引出電極と他方の引出電極は、反対方向に引き出され、第1の水晶保持端子と第2の水晶保持端子は、基板の双方の短辺に沿って形成されると共に、水晶片の両端を保持する両持ちタイプとし、基板の角部に形成された貫通孔の壁面にスルー端子が形成され、基板の表面に第1の水晶保持端子から引き出された第1の引出端子が最短の角部のスルー端子に接続し、第2の水晶保持端子から引き出された第2の引出端子が第1の引出端子が引き出された方向とは逆方向の角部のスルー端子に接続すると共に、基板の裏面ではスルー端子に接続する実装端子が形成され、第1の水晶保持端子と水晶片の一方の引出電極とは、第1の引出端子が引き出される端部において導電性接着剤で接続され、第2の水晶保持端子と水晶片の他方の引出電極とは、第2の引出端子が引き出される端部において導電性接着剤で接続され、金属カバーのセラミック基板上に溶融樹脂を介して接合する開口端面が傾斜面を備えたフランジとなっていることを特徴とする。
【0011】
本発明は、上記表面実装水晶振動子において、金属カバーの開口端面のフランジが、内側から外側に下降する傾斜面、又は内側から外側に上昇する傾斜面を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明は、上記表面実装水晶振動子において、第1の水晶保持端子における導電性接着剤が形成されない側の端部は、一方の引出電極の端部より内側に短く形成され、第2の水晶保持端子における導電性接着剤が形成されない側の端部は、他方の引出電極の端部より内側に短く形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、水晶片の一方の引出電極と他方の引出電極は、反対方向に引き出され、第1の水晶保持端子と第2の水晶保持端子は、基板の双方の短辺に沿って形成されると共に、水晶片の両端を保持する両持ちタイプとし、基板の角部に形成された貫通孔の壁面にスルー端子が形成され、基板の表面に第1の水晶保持端子から引き出された第1の引出端子が最短の角部のスルー端子に接続し、第2の水晶保持端子から引き出された第2の引出端子が第1の引出端子が引き出された方向とは逆方向の角部のスルー端子に接続すると共に、基板の裏面ではスルー端子に接続する実装端子が形成され、第1の水晶保持端子と水晶片の一方の引出電極とは、第1の引出端子が引き出される端部において導電性接着剤で接続され、第2の水晶保持端子と水晶片の他方の引出電極とは、第2の引出端子が引き出される端部において導電性接着剤で接続され、金属カバーのセラミック基板上に溶融樹脂を介して接合する開口端面が傾斜面を備えたフランジとなっている表面実装水晶振動子としているので、小型化を実現しつつ、ショートを防止して品質を高め、生産性を向上させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る表面実装水晶振動子の断面説明図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る表面実装水晶振動子の平面説明図である。
【図3】水晶保持端子のパターンを説明するための平面概略図である。
【図4】実装端子のパターンを説明するための平面概略図である。
【図5】金属カバーの配置ずれを示す平面説明図である。
【図6】シート状のセラミック板にスルーホールとブレイクラインを形成した図である。
【図7】シート状のセラミック板に水晶保持端子のパターンを形成した図である。
【図8】シート状のセラミック板に実装端子のパターンを形成した図である。
【図9】第1の樹脂塗布工程を示す断面説明図でである。
【図10】第2の樹脂塗布工程を示す断面説明図である。
【図11】傾斜面を備えていないフランジの溶融樹脂への浸漬を示す断面説明図である。
【図12】傾斜面を備えていないフランジの溶融樹脂からの引き上げを示す断面説明図である。
【図13】別のフランジの形態を示す断面説明図である。
【図14】別の実施の形態に係る表面実装水晶振動子の平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る表面実装水晶振動子は、矩形のセラミック基板の角部に形成された貫通孔の壁面にスルー端子が形成され、基板の表面に水晶片を保持する水晶保持端子の引出端子が対角のスルー端子に接続すると共に、基板の裏面ではスルー端子に接続する実装端子が形成され、更に水晶片を覆う金属カバーの基板への接触面を改良したものであり、小型化を実現しつつ、ショートを防止して品質を高め、生産性を向上させるものである。
【0016】
[表面実装水晶振動子の構成:図1]
本発明の実施の形態に係る表面実装水晶振動子について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る表面実装水晶振動子の断面説明図である。
本発明の実施の形態に係る表面実装水晶振動子(本振動子)は、図1に示すように、セラミックベース(基板)1上に形成した水晶保持端子4に導電性接着剤7を介して水晶片2が搭載され、更に、凹状の金属カバー(カバー)3を逆さまにしてセラミックベース1上に接合して密閉封入したものである。
【0017】
また、基板1の側面にスルー端子5xが形成され、基板1の表面に形成された水晶保持端子4から引き出された引出端子4aに接続すると共に、基板1の裏面に形成された実装端子5aに接続されている。
スルー端子5xは、基板1に四隅に形成されたスルーホール(貫通孔)9の側壁に形成される。
更に、基板1とカバー3の接触部分との間には、絶縁性のある封止材8が形成されている。
【0018】
特に、カバー3の接触部分は、「L」字型とするのではなく、内側から外側に向けて斜め方向に開く形状となっている。
これは、カバー3と基板1との間に封止材8が容易に形成できると共にカバー3の配置が容易であり、塗布量も均一で密封性を保持し、封止材8の余剰分が内部の水晶片2に付着することがないようにするためである。
具体的な方法は後述する。
【0019】
[表面実装水晶振動子の平面的特徴:図2]
次に、本振動子の平面的な特徴について図2を参照にしながら説明する。図2は、本発明の実施の形態に係る表面実装水晶振動子の平面説明図である。
本振動子は、図2に示すように、セラミックベース(基板)1上に水晶片2の両端を保持するための水晶保持端子4が対向して形成され、水晶保持端子4の端部から最短の基板1の角部に向けて引出端子4aが引き出されて形成され、スルー端子5xに接続されている。つまり、2つの引出端子4aは、逆方向の角部のスルー端子5xに接続している。
【0020】
基板1の角部に引出端子4aを引き出して角部でスルー端子5xに接続するのは、基板1の水平方向又は垂直方向に引出端子を引き出す場合に比べて距離をとることができ、そのため金属カバー3の位置がずれたとしても、水晶保持端子4とスルー端子5xとが金属カバー3を介してショートするのを回避するためである。
【0021】
そして、水晶片2と水晶保持端子4とは、引出端子4aが引き出された水晶保持端子4の端部で導電性接着剤7により接続されている。
図2に示すように、水晶片2の両端部で水晶保持端子4が水晶片2を保持する構造であるため「両持ち」タイプと称される。
水晶保持端子4の特徴的パターンについては後述する。
【0022】
[表面実装水晶振動子の各部]
セラミックベース(基板)1は、矩形状の単板からなる平板状として一主面(表面)の両端側に水晶保持端子4が形成され、他主面(裏面)の四隅部に実装端子5a,5bが形成されている。
そして、裏面の四隅部に形成された実装端子5a,5bはスルーホール9の壁面に形成されたスルー端子5xに接続している。
ここで、実装端子5aは、スルー端子5xを介して引出端子4aに接続する端子であるが、実装端子5bは、スルー端子5xには接続するものの、引出端子4aには接続しない端子である。
【0023】
水晶片2は、ATカットとし、対向した励振電極6aが両主面に形成されている。
また、水晶片2は、励振電極6aからは互いに反対方向の両端部に延出して幅方向の全幅にわたって折り返された引出電極6bが形成されている。
そして、引出電極6bの延出した一組の対角部(端部)が導電材としての導電性接着剤7によって水晶保持端子4に固着して、引出電極6bと水晶保持端子4とを電気的・機械的に接続している。
【0024】
金属カバー3は、凹状の形状をしており、開口端面がL字より内側から外側に斜め方向に開いた形状で折曲し、基板1の外周表面に絶縁性の封止材8としての樹脂によって基板1に接合する。樹脂には溶融樹脂を用いる。
金属カバー3の開口部は、具体的には、外側の終端に向かって下降する勾配(傾斜面)としたフランジ3aを備えている。詳細は、図9,10で説明する。
【0025】
水晶保持端子4は、水晶片2を保持する構成であって、Ag(銀)Pd(パラジウム)合金で形成される。また、水晶保持端子4の端部から最短の基板1の角部へ引出端子4aが形成されている。
【0026】
スルー端子5xは、基板1の四隅に形成されたスルーホール(貫通孔)9の側壁に形成されるもので、水晶保持端子4と同様のAgPd合金で形成される。
また、引出端子4aは、基板1の四隅部分(角部)でスルー端子5xに接続している。
但し、引出端子4aは、基板1の対角線上に形成されているため、その対角線上の角部でスルー端子5xに接続するが、他の対角線上の角部では、スルー端子5xは引出端子4aには接続していない。
【0027】
基板1の裏面の四隅には実装端子5a,5bが形成され、基板1の角部でスルー端子5xに接続している。
上述したように、スルー端子5xには引出端子4aに接続しているものと、接続していないものがあり、基板1の裏面において、引出端子4aに接続するスルー端子5xに接続している実装端子5a同士を測定装置でコンタクトさせて励起させるテストを行い、後述する振動周波数の調整を行う。
【0028】
導電性接着剤7は、水晶片2の引出電極6bと水晶保持端子4とを電気的及び機械的に接続するものである。
封止材(溶融樹脂)8は、絶縁性で接合性の溶融樹脂により、基板1上にカバー3を固着させると共に、カバー3の接触面が引出端子4a等に接触(ショート)しないよう設けられている。
スルーホール(貫通孔)9は、基板1が分割される前のセラミックシートの状態で、ブレイクラインと同時に形成されるもので、分割される基板1の四隅部分(角部)で表面と裏面とを貫通するよう形成される。
【0029】
[水晶保持端子のパターン:図3]
次に、水晶保持端子4と引出端子4aの具体的パターンについて図3を参照しながら説明する。図3は、水晶保持端子のパターンを説明するための平面概略図である。
水晶保持端子4のパターンは、図3に示すように、基板1の中央に対向して形成され、引出端子4aが形成されていない端部が、従来の水晶保持端子に比べて長さLだけ短くなっている。これは、金属カバー3が一方の水晶保持端子4に接触しても、他方の水晶保持端子4に接触するのを防止して、ショートを回避するためのものである。
【0030】
[本振動子の裏面における実装端子5aのパターン:図4]
また、基板1の裏面において、実装端子5a,5bのパターンは、図4に示すようなパターンとなっており、基板1の四隅で矩形の金属パターンが貫通孔9の壁面に形成されたスルー端子5xに接続している。
図4は、実装端子のパターンを説明するための平面概略図である。
【0031】
[金属カバーの配置ずれ:図5]
次に、本振動子における金属カバー3の配置ずれについて図5を参照しながら説明する。図5は、金属カバーの配置ずれを示す平面説明図である。
図2の点線で示した箇所が、金属カバー3が正常に配置された場合の接触面を示しており、図5の点線で示した箇所が、金属カバー3の配置ずれを起した場合の接触面を示している。
【0032】
金属カバー3の配置ずれがあっても、水晶保持端子4を従来に比べて長さLだけ短くし、引出電極6bの長尺方向の端部より当該水晶保持端子4の端部を内側に短くしているので、金属カバー3が他方の水晶保持端子4に接触しても、当該水晶保持端子4の端部では金属カバー3と接触することがないため、一方の水晶保持端子4と他方の水晶保持端子4とが金属カバー3を介してショートすることを回避できる。
具体的には、図5において、金属カバー3の開口端面部の下側が一方の水晶振動子4に水平方向で接触しても、同じ水平方向において金属カバー3は他方の水晶保持端子4に接触することがないため、ショートを回避できる。
【0033】
[本振動子の製造方法:図6〜10]
次に、本振動子の製造方法について図6〜10を参照しながら説明する。図6は、シート状のセラミック板にスルーホールとブレイクラインを形成した図であり、図7は、シート状のセラミック板に水晶保持端子のパターンを形成した図であり、図8は、シート状のセラミック板に実装端子のパターンを形成した図であり、図9は、第1の樹脂塗布工程を示す断面説明図であり、図10は、第2の樹脂塗布工程を示す断面説明図である。
【0034】
[第1工程:図6/シート状セラミック生地焼成]
先ず、シート状セラミックベース1Aの元となるシート状セラミック生地を形成する。
シート状セラミック生地には、図6に示すように、個々のセラミックベース1に対応して隣接する領域同士区切るブレイクラインを形成すると共にその四隅部(角部)に貫通孔9を形成する。
そして、貫通孔9が形成されたシート状セラミック生地を焼成し、シート状セラミックベース1Aを得る。
【0035】
[第2工程:図7、図8/回路パターン形成]
次に、シート状セラミックベース1Aの回路パターンに対応した領域に、AgPd合金の金属ペーストを、マスクを用いた印刷によって形成する。
回路パターンは、一主面(表面)では、図7に示すように、水晶保持端子4のパターンが形成され、他主面(裏面)では、図8に示すように、実装端子5a,5bのパターンが形成され、更に、貫通孔9の壁面にはスルー端子5xが形成される。
【0036】
一主面(表面)の水晶保持端子4は、前述のように各セラミックベース1の中心に対して点対称とする。つまり、セラミックベース1の対角線上に引出端子4aが形成される。
また、他主面(裏面)の一組の対角に形成された実装端子5aは、水晶保持端子4とスルー端子5x、引出端子4aを経て電気的に接続する水晶外部端子とし、他組の対角に形成された実装端子5bは、ダミー端子とする。
そして、AgPd合金とした金属ペースを焼成し、回路パターンの形成されたシート状セラミックベース1Aを得る。
【0037】
尚、セラミックの焼成温度は約1500〜1600℃、AgPd合金はこれ以下の850℃となることから、セラミックの焼成後にAgPd合金ペーストを塗布して、セラミックとともにAgPd合金ペーストを焼成する。
これは、セラミック生地にAgPd合金ペーストを塗布してセラミックの焼成温度で焼成すると、AgPd合金ペーストは高温過ぎて塊粒になって回路パターンを形成できないことに起因する。
【0038】
[第3工程/水晶片搭載]
次に、回路パターンの形成されたシート状セラミックベース1Aの各水晶保持端子4に、励振電極6aから引出電極6bの延出した水晶片2の外周部を導電性接着剤7によって固着して搭載し、電気的・機械的に接続する。
ここでは、引出電極6bの延出した水晶片2における一組の対角部が固着される。
【0039】
[第4工程/周波数調整]
次に、シート状セラミックベース1Aに搭載(固着)された水晶振動子としての各水晶片2の振動周波数を質量負荷効果によって調整する。
具体的には、シート状セラミックベース1Aの裏面において、各水晶片2と電気的に接続した実装端子5aに測定器からの測定端子(プローブ)を接触させる。そして、板面が露出した水晶片2の表面側の励振電極6aにガスイオンを照射して表面を削り取り、励振電極6aの質量を減じて振動周波数を低い方から高い方に調整する。
但し、例えば、蒸着やスパッタによって励振電極6a上に金属膜を付加して、振動周波数を高い方から低い方に調整することもできる。
【0040】
[第5工程/金属カバー接合(密閉封入)]
次に、水晶片2が搭載されたシート状セラミックベース1Aの個々のセラミックベース1に対応した矩形状領域の外周表面に、凹状とした金属カバー3の開口端面を、封止材8を介して接合する。
以下に、本実施の形態に係る金属カバー3のシート状セラミックベース1Aへの接合方法を説明する。
【0041】
[浸漬:図9]
まず、図9に示すように、溶融樹脂液8Aの中に金属カバー3の開口端面を矢印方向(下方向)に浸漬する。ここでは、溶融樹脂液8Aの表面に対して、金属カバー3の開口端面が均一に接触するよう浸漬する。
開口部は、上述したように、外側終端に向かって下降する勾配(傾斜面)としたフランジ3aを備えており、フランジ3aの外周端面(厚み)の上端近傍まで浸漬する。つまり、フランジ3aの傾斜面の始端部(根元部)の下面が溶融樹脂液8Aの表面に接触する程度とする。
従って、フランジ3aの形状は、根元部の下面が溶融樹脂液8Aに接触して、外周端面が上面近傍まで溶融樹脂液8Aの中に浸漬する程度の傾斜とするものである。
【0042】
[引き上げ:図10]
次に、図10に示すように、金属カバー3の開口端面に溶融樹脂8を付着させた状態で、溶融樹脂液8Aの中から金属カバー3を矢印方向(上方向)に引き上げる。この場合、金属カバー3のフランジ3aの傾斜面に沿って下側にふくらむように溜まり部が形成される。従って、溶融樹脂8は、傾斜面に溜まり部に集中して、傾斜面の重心を中心として溶融樹脂8が表面張力により盛り上がる。
【0043】
そして、金属カバー3の開口端面(フランジ3aの傾斜面)に溶融樹脂8が付着した状態で、金属カバー3を移動させ、セラミックベース1の表面外周に開口端面を位置決めする。金属カバー3の自重又は軽い押圧により、開口端面をセラミックベース1の表面外周に接着する。
最後に、表面実装水晶振動子を全体的に加熱して溶融樹脂8を硬化させ、金属カバー3をセラミックベース1に接合して封止する。
【0044】
[第6工程/分割]
最後に、水晶振動子が集合化されたシート状セラミックベース1Aをブレイクラインに従って縦横に分割して、個々の表面実装水晶振動子を得る。
【0045】
本実施の形態の製造方法では、セラミックベース1の回路パターン(水晶保持端子4、スルー端子5x、実装端子5a)はAgPd合金として、貫通孔9を設けたシート状セラミック生地の焼成後にAgPd合金ペーストを塗布し、焼成によって形成する。
【0046】
従って、従来例でのシート状セラミック生地にW(タングステン)ペーストを塗布して焼成後に電解メッキによってNi(ニッケル)及びAu(金)を形成する場合に比較し、2回にわたる電解メッキ工程を不要とするので、製造工程数を少なくできる。
また、電解メッキ工程を不要にするので、例えば、セラミックベース1間の回路パターンを電気的に接続する電解メッキ用の配線路をも不要となるので、回路パターンをシンプルにして安価にできる効果がある。
【0047】
また、ここでは、回路パターンの形成されたシート状セラミックベース1Aの状態で、水晶片2の搭載(第3工程)、周波数調整(第4工程)及び金属カバー3の接合(第5工程)とする。
従って、シート状セラミックベース1Aの状態で、これらの工程を連続的に行えるので、生産性を向上させることができる効果がある。
【0048】
更に、本実施形態では、セラミックベース1の裏面の実装端子5a,5bは、それぞれが電気的に独立した4端子とする。一方、シート状セラミックベース1Aの状態では、隣接する矩形状領域の4つの角部における各実装端子5a,5b(4個)はスルー端子5xを経て電気的に共通接続する。
従って、4つの角部の各実装端子5a,5bが共通接続された状態でも、各セラミックベース1の水晶保持端子4に接続する一組の対角部の実装端子5aに測定端子を接触させて、水晶片2毎に振動周波数を調整できる効果がある。
【0049】
また、以上の製造方法によれば、フランジ3aを含む金属カバー3の開口端面を溶融樹脂液8Aの中に浸漬して溶融樹脂8を直接に付着させる。例えば、整形された樹脂を仮固着する場合と比較して、工程を少なくし、製造単価を低減できる。
【0050】
また、金属カバー3のフランジ3aの傾斜面に溶融樹脂8の溜まり部が形成されるため、適量の溶融樹脂8を均一に付着させることができ、溶融樹脂8の不足もなく、接合を十分にして気密を確実にできる。更に、溶融樹脂8の余剰分が内部に流入して水晶片2に付着することがなく、振動特性を良好に維持できる。
【0051】
[比較:図11,12]
図9,10との比較のために、フランジ部分が傾斜面を備えていない例を示して説明する。図11は、傾斜面を備えていないフランジの溶融樹脂への浸漬を示す断面説明図であり、図12は、傾斜面を備えていないフランジの溶融樹脂からの引き上げを示す断面説明図である。
図11,12に示すように、水平方向に平坦なフランジ3a′の場合、フランジ3a′の下面に付着する溶融樹脂8は溜まり部がほぼ均一に形成されるため、やや少なく、十分な量にはなっていないことが分かる。
【0052】
[別のフランジの形態:図13]
次に、金属カバー3のフランジ3aは、図1,9,10において、外終端に向けて下降する勾配としたが、これとは逆に上昇する勾配としても同様の効果が得られる。例えば、図13に示すように、フランジ3aの外終端が跳ね上がった形状となっている。
図13は、別のフランジの形態を示す断面説明図である。
【0053】
[片持ちタイプ:図14]
次に、別の実施の形態に係る表面実装水晶振動子について図14を参照しながら説明する。図14は、別の実施の形態に係る表面実装水晶振動子の平面説明図である。
別の実施の形態に係る表面実装水晶振動子(別の振動子)は、図14に示すように、水晶片2の片方の端部に引出電極6bを形成し、当該片方で導電性接着剤7を介して水晶保持端子4に接続し、一方の水晶保持端子4では最短の角部へ引出端子4aが形成され、他方の水晶保持端子4では引出端子4bが、水晶片2の下部を図14の水平方向に引き出され、水晶片2の角部から最短の角部に接続するよう形成されている。
図14の構成は、水晶片2の片方で保持するものであるため、「片持ち」タイプと称されるものである。
【0054】
図14の片持ちタイプであっても、本振動子の両持ちタイプと同様に対角線上の貫通孔9に形成されたスルー端子5xを介して裏面の実装端子5aに接続するものであり、裏面は、図8に示す実装端子5a,5bのパターンとなっている。
尚、図14における別の振動子の製造方法も、本振動子の製造方法と同様であり、生産性を向上できる効果がある。
また、裏面の実装端子5aに測定端子を接触させ、水晶片2毎に周波数調整を行うことも同様に可能である。
【0055】
更に、上記片持ちタイプにおいても、図1、9,10及び図13に示した特殊形状のフランジ3aを備えた金属カバー3を上述した製造方法によって接合して封止することで、溶融樹脂8を適正量とすることができ、安価かつ良好な製品とすることができる効果がある。
【0056】
[実施の形態の効果]
本振動子及び別の振動子によれば、セラミックベース1を単板とするので、基本的に製造単価を安くでき、水晶保持端子4を含む電極をAgPd合金とすることで、従来のW及びNi、Auとした場合よりも電極の材料費や工程数を減らして、さらに安価にできる効果がある。
【0057】
更に、本振動子及び別の振動子によれば、水晶保持端子4からの引出端子4aをセラミックベース1の対角線上の角部に引き出し、当該角部に形成した貫通孔9の壁面に形成したスルー端子5xを介して裏面の実装端子5aに接続するようにしているので、引出端子4aを水平方向又は垂直方向に引き出される場合に比べて長くすることができ、金属カバー3の開口端面部が一方の水晶保持端子4の一端側と接触しても、スルー端子5xまでは距離があるから、スルー端子5xへの接触を防止して電気的短絡(ショート)を回避できる効果がある。
【0058】
また、本振動子では、水晶保持端子4の端部を水晶片の引出電極6bより短くしているので、金属カバー3の一辺となる開口端面部が一方の水晶保持端子4と接触しても、他方の水晶保持端子4の同じ方向での接触を回避できる。
その結果、一対の水晶保持端子4が金属カバー3を経ての電気的に短絡するのを防止して、生産性を向上させることができる効果がある。
【0059】
また、別の振動子では、引出端子4bを水晶片2の下側を通過させて引出電極6bに接続するようにしているので、図14の垂直方向に対する一対の水晶保持端子4が金属カバー3を介してショートするのを防止できる効果がある。
但し、図14の垂直方向に水晶保持端子4が並んで配置されているため、図14の横方向のずれには注意する必要がある。
【0060】
また、本振動子及び別の振動子によれば、金属カバー3の配置すれに対して耐性を持たせることで、導電性接着剤7の固着状態の変化を抑制して安定にし、表面実装振動子のエージング特性を良好に維持できる効果がある。
【0061】
また、特殊形状のフランジ3aを含む金属カバー3の開口端面を溶融樹脂液8Aの中に浸漬して溶融樹脂8を直接に付着させ、フランジ3aの傾斜面に溶融樹脂8の溜まり部を形成し、基板1上に固着して接合し、封止するようにしているので、工程を少なくし、製造単価を低減でき、適量の溶融樹脂8を均一に付着させることで、溶融樹脂8の不足もなく、接合を十分にして気密を確実にでき、更に、溶融樹脂8の余剰分が内部に流入して水晶片2に付着することがなく、振動特性を良好に維持できるという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、小型化を実現しつつ、品質を高め、生産性を向上させることができる表面実装水晶振動子に好適である。
【符号の説明】
【0063】
1...セラミックベース(基板)、 1A...シート状セラミックベース、 2...水晶片、 3...金属カバー(カバー)、 3a...フランジ、 4...水晶保持端子、 4a,4b...引出端子、 5a,5b...実装端子、 5x...スルー端子、 6a...励振電極、 6b...引出電極、 7...導電性接着剤、 8...封止材(溶融樹脂)、 8A...溶融樹脂液、 9...スルーホール(貫通孔)
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面実装用の水晶振動子に係り、特に、生産性を向上させ、小型化を実現できる表面実装水晶振動子に関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
表面実装水晶振動子は小型・軽量であることから、特に携帯型の電子機器に周波数や時間の基準源として内蔵される。
従来の表面実装水晶振動子は、セラミック基板上に水晶片2を搭載し、凹状のカバーを逆さまにして被せて密閉封入したものがある。近年では、周波数偏差Δf/fが比較的緩く、例えば±150〜±250ppmの安価な民生用がある。
【0003】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開2007−158419号公報「表面実装水晶発振器」(日本電波工業株式会社)[特許文献1]、特開2003−179456号公報「水晶製品用表面実装容器及びこれを用いた水晶製品」(日本電波工業株式会社)[特許文献2]、特開2001−110925号公報「導電性キャップ、電子部品及び導電性キャップの絶縁被膜形成方法」(株式会社村田製作所)[特許文献3]がある。
【0004】
特許文献1には、表面実装水晶発振器において、ICチップ2上に水晶片3が搭載され、実装基板4上にICチップ2等が形成され、金属カバー5が設けられた構成が示されている。
また、特許文献2には、水晶製品用表面実装容器において、単層基板1A上に水晶端子6を介して水晶片3が設けられ、カバー2で密閉封入した構成が示されている。
また、特許文献3には、基板2上に形成された圧電素子4を覆う金属キャップ3の基板1との接触面を、内側側面が曲線となるようにした構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−158419号公報
【特許文献2】特開2003−179456号公報
【特許文献3】特開2001−110925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の表面実装水晶振動子では、近年益々小型化した水晶片を基板上に搭載し、更にカバーで密閉封入した構成とした場合に、不良の割合を減らして生産性を向上させ、品質を高くすることが難しいという問題点があった。
【0007】
具体的には、水晶片とカバーを小型化した場合、水晶片に導電性接着剤で接続すると共に、水晶振動子を保持する水晶保持端子と、その水晶保持端子から電極まで引き出される引出端子とが、電気的に短絡(ショート)しないよう工夫が必要であり、従来の構成では、十分に小型化に対応できていないものであった。
【0008】
また、特許文献3では、基板に接触する金属キャップについて記載があるが、小型化を考慮した引出端子との関係において適用したものとはなっていなかった。
【0009】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、小型化を実現しつつ、品質を高め、生産性を向上させることができる表面実装水晶振動子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、矩形のセラミック基板上に水晶片が第1及び第2の水晶保持端子で保持され、溶融樹脂の封止材を介して金属カバーで封止される表面実装水晶振動子であって、水晶片の一方の引出電極と他方の引出電極は、反対方向に引き出され、第1の水晶保持端子と第2の水晶保持端子は、基板の双方の短辺に沿って形成されると共に、水晶片の両端を保持する両持ちタイプとし、基板の角部に形成された貫通孔の壁面にスルー端子が形成され、基板の表面に第1の水晶保持端子から引き出された第1の引出端子が最短の角部のスルー端子に接続し、第2の水晶保持端子から引き出された第2の引出端子が第1の引出端子が引き出された方向とは逆方向の角部のスルー端子に接続すると共に、基板の裏面ではスルー端子に接続する実装端子が形成され、第1の水晶保持端子と水晶片の一方の引出電極とは、第1の引出端子が引き出される端部において導電性接着剤で接続され、第2の水晶保持端子と水晶片の他方の引出電極とは、第2の引出端子が引き出される端部において導電性接着剤で接続され、金属カバーのセラミック基板上に溶融樹脂を介して接合する開口端面が傾斜面を備えたフランジとなっていることを特徴とする。
【0011】
本発明は、上記表面実装水晶振動子において、金属カバーの開口端面のフランジが、内側から外側に下降する傾斜面、又は内側から外側に上昇する傾斜面を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明は、上記表面実装水晶振動子において、第1の水晶保持端子における導電性接着剤が形成されない側の端部は、一方の引出電極の端部より内側に短く形成され、第2の水晶保持端子における導電性接着剤が形成されない側の端部は、他方の引出電極の端部より内側に短く形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、水晶片の一方の引出電極と他方の引出電極は、反対方向に引き出され、第1の水晶保持端子と第2の水晶保持端子は、基板の双方の短辺に沿って形成されると共に、水晶片の両端を保持する両持ちタイプとし、基板の角部に形成された貫通孔の壁面にスルー端子が形成され、基板の表面に第1の水晶保持端子から引き出された第1の引出端子が最短の角部のスルー端子に接続し、第2の水晶保持端子から引き出された第2の引出端子が第1の引出端子が引き出された方向とは逆方向の角部のスルー端子に接続すると共に、基板の裏面ではスルー端子に接続する実装端子が形成され、第1の水晶保持端子と水晶片の一方の引出電極とは、第1の引出端子が引き出される端部において導電性接着剤で接続され、第2の水晶保持端子と水晶片の他方の引出電極とは、第2の引出端子が引き出される端部において導電性接着剤で接続され、金属カバーのセラミック基板上に溶融樹脂を介して接合する開口端面が傾斜面を備えたフランジとなっている表面実装水晶振動子としているので、小型化を実現しつつ、ショートを防止して品質を高め、生産性を向上させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る表面実装水晶振動子の断面説明図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る表面実装水晶振動子の平面説明図である。
【図3】水晶保持端子のパターンを説明するための平面概略図である。
【図4】実装端子のパターンを説明するための平面概略図である。
【図5】金属カバーの配置ずれを示す平面説明図である。
【図6】シート状のセラミック板にスルーホールとブレイクラインを形成した図である。
【図7】シート状のセラミック板に水晶保持端子のパターンを形成した図である。
【図8】シート状のセラミック板に実装端子のパターンを形成した図である。
【図9】第1の樹脂塗布工程を示す断面説明図でである。
【図10】第2の樹脂塗布工程を示す断面説明図である。
【図11】傾斜面を備えていないフランジの溶融樹脂への浸漬を示す断面説明図である。
【図12】傾斜面を備えていないフランジの溶融樹脂からの引き上げを示す断面説明図である。
【図13】別のフランジの形態を示す断面説明図である。
【図14】別の実施の形態に係る表面実装水晶振動子の平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る表面実装水晶振動子は、矩形のセラミック基板の角部に形成された貫通孔の壁面にスルー端子が形成され、基板の表面に水晶片を保持する水晶保持端子の引出端子が対角のスルー端子に接続すると共に、基板の裏面ではスルー端子に接続する実装端子が形成され、更に水晶片を覆う金属カバーの基板への接触面を改良したものであり、小型化を実現しつつ、ショートを防止して品質を高め、生産性を向上させるものである。
【0016】
[表面実装水晶振動子の構成:図1]
本発明の実施の形態に係る表面実装水晶振動子について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る表面実装水晶振動子の断面説明図である。
本発明の実施の形態に係る表面実装水晶振動子(本振動子)は、図1に示すように、セラミックベース(基板)1上に形成した水晶保持端子4に導電性接着剤7を介して水晶片2が搭載され、更に、凹状の金属カバー(カバー)3を逆さまにしてセラミックベース1上に接合して密閉封入したものである。
【0017】
また、基板1の側面にスルー端子5xが形成され、基板1の表面に形成された水晶保持端子4から引き出された引出端子4aに接続すると共に、基板1の裏面に形成された実装端子5aに接続されている。
スルー端子5xは、基板1に四隅に形成されたスルーホール(貫通孔)9の側壁に形成される。
更に、基板1とカバー3の接触部分との間には、絶縁性のある封止材8が形成されている。
【0018】
特に、カバー3の接触部分は、「L」字型とするのではなく、内側から外側に向けて斜め方向に開く形状となっている。
これは、カバー3と基板1との間に封止材8が容易に形成できると共にカバー3の配置が容易であり、塗布量も均一で密封性を保持し、封止材8の余剰分が内部の水晶片2に付着することがないようにするためである。
具体的な方法は後述する。
【0019】
[表面実装水晶振動子の平面的特徴:図2]
次に、本振動子の平面的な特徴について図2を参照にしながら説明する。図2は、本発明の実施の形態に係る表面実装水晶振動子の平面説明図である。
本振動子は、図2に示すように、セラミックベース(基板)1上に水晶片2の両端を保持するための水晶保持端子4が対向して形成され、水晶保持端子4の端部から最短の基板1の角部に向けて引出端子4aが引き出されて形成され、スルー端子5xに接続されている。つまり、2つの引出端子4aは、逆方向の角部のスルー端子5xに接続している。
【0020】
基板1の角部に引出端子4aを引き出して角部でスルー端子5xに接続するのは、基板1の水平方向又は垂直方向に引出端子を引き出す場合に比べて距離をとることができ、そのため金属カバー3の位置がずれたとしても、水晶保持端子4とスルー端子5xとが金属カバー3を介してショートするのを回避するためである。
【0021】
そして、水晶片2と水晶保持端子4とは、引出端子4aが引き出された水晶保持端子4の端部で導電性接着剤7により接続されている。
図2に示すように、水晶片2の両端部で水晶保持端子4が水晶片2を保持する構造であるため「両持ち」タイプと称される。
水晶保持端子4の特徴的パターンについては後述する。
【0022】
[表面実装水晶振動子の各部]
セラミックベース(基板)1は、矩形状の単板からなる平板状として一主面(表面)の両端側に水晶保持端子4が形成され、他主面(裏面)の四隅部に実装端子5a,5bが形成されている。
そして、裏面の四隅部に形成された実装端子5a,5bはスルーホール9の壁面に形成されたスルー端子5xに接続している。
ここで、実装端子5aは、スルー端子5xを介して引出端子4aに接続する端子であるが、実装端子5bは、スルー端子5xには接続するものの、引出端子4aには接続しない端子である。
【0023】
水晶片2は、ATカットとし、対向した励振電極6aが両主面に形成されている。
また、水晶片2は、励振電極6aからは互いに反対方向の両端部に延出して幅方向の全幅にわたって折り返された引出電極6bが形成されている。
そして、引出電極6bの延出した一組の対角部(端部)が導電材としての導電性接着剤7によって水晶保持端子4に固着して、引出電極6bと水晶保持端子4とを電気的・機械的に接続している。
【0024】
金属カバー3は、凹状の形状をしており、開口端面がL字より内側から外側に斜め方向に開いた形状で折曲し、基板1の外周表面に絶縁性の封止材8としての樹脂によって基板1に接合する。樹脂には溶融樹脂を用いる。
金属カバー3の開口部は、具体的には、外側の終端に向かって下降する勾配(傾斜面)としたフランジ3aを備えている。詳細は、図9,10で説明する。
【0025】
水晶保持端子4は、水晶片2を保持する構成であって、Ag(銀)Pd(パラジウム)合金で形成される。また、水晶保持端子4の端部から最短の基板1の角部へ引出端子4aが形成されている。
【0026】
スルー端子5xは、基板1の四隅に形成されたスルーホール(貫通孔)9の側壁に形成されるもので、水晶保持端子4と同様のAgPd合金で形成される。
また、引出端子4aは、基板1の四隅部分(角部)でスルー端子5xに接続している。
但し、引出端子4aは、基板1の対角線上に形成されているため、その対角線上の角部でスルー端子5xに接続するが、他の対角線上の角部では、スルー端子5xは引出端子4aには接続していない。
【0027】
基板1の裏面の四隅には実装端子5a,5bが形成され、基板1の角部でスルー端子5xに接続している。
上述したように、スルー端子5xには引出端子4aに接続しているものと、接続していないものがあり、基板1の裏面において、引出端子4aに接続するスルー端子5xに接続している実装端子5a同士を測定装置でコンタクトさせて励起させるテストを行い、後述する振動周波数の調整を行う。
【0028】
導電性接着剤7は、水晶片2の引出電極6bと水晶保持端子4とを電気的及び機械的に接続するものである。
封止材(溶融樹脂)8は、絶縁性で接合性の溶融樹脂により、基板1上にカバー3を固着させると共に、カバー3の接触面が引出端子4a等に接触(ショート)しないよう設けられている。
スルーホール(貫通孔)9は、基板1が分割される前のセラミックシートの状態で、ブレイクラインと同時に形成されるもので、分割される基板1の四隅部分(角部)で表面と裏面とを貫通するよう形成される。
【0029】
[水晶保持端子のパターン:図3]
次に、水晶保持端子4と引出端子4aの具体的パターンについて図3を参照しながら説明する。図3は、水晶保持端子のパターンを説明するための平面概略図である。
水晶保持端子4のパターンは、図3に示すように、基板1の中央に対向して形成され、引出端子4aが形成されていない端部が、従来の水晶保持端子に比べて長さLだけ短くなっている。これは、金属カバー3が一方の水晶保持端子4に接触しても、他方の水晶保持端子4に接触するのを防止して、ショートを回避するためのものである。
【0030】
[本振動子の裏面における実装端子5aのパターン:図4]
また、基板1の裏面において、実装端子5a,5bのパターンは、図4に示すようなパターンとなっており、基板1の四隅で矩形の金属パターンが貫通孔9の壁面に形成されたスルー端子5xに接続している。
図4は、実装端子のパターンを説明するための平面概略図である。
【0031】
[金属カバーの配置ずれ:図5]
次に、本振動子における金属カバー3の配置ずれについて図5を参照しながら説明する。図5は、金属カバーの配置ずれを示す平面説明図である。
図2の点線で示した箇所が、金属カバー3が正常に配置された場合の接触面を示しており、図5の点線で示した箇所が、金属カバー3の配置ずれを起した場合の接触面を示している。
【0032】
金属カバー3の配置ずれがあっても、水晶保持端子4を従来に比べて長さLだけ短くし、引出電極6bの長尺方向の端部より当該水晶保持端子4の端部を内側に短くしているので、金属カバー3が他方の水晶保持端子4に接触しても、当該水晶保持端子4の端部では金属カバー3と接触することがないため、一方の水晶保持端子4と他方の水晶保持端子4とが金属カバー3を介してショートすることを回避できる。
具体的には、図5において、金属カバー3の開口端面部の下側が一方の水晶振動子4に水平方向で接触しても、同じ水平方向において金属カバー3は他方の水晶保持端子4に接触することがないため、ショートを回避できる。
【0033】
[本振動子の製造方法:図6〜10]
次に、本振動子の製造方法について図6〜10を参照しながら説明する。図6は、シート状のセラミック板にスルーホールとブレイクラインを形成した図であり、図7は、シート状のセラミック板に水晶保持端子のパターンを形成した図であり、図8は、シート状のセラミック板に実装端子のパターンを形成した図であり、図9は、第1の樹脂塗布工程を示す断面説明図であり、図10は、第2の樹脂塗布工程を示す断面説明図である。
【0034】
[第1工程:図6/シート状セラミック生地焼成]
先ず、シート状セラミックベース1Aの元となるシート状セラミック生地を形成する。
シート状セラミック生地には、図6に示すように、個々のセラミックベース1に対応して隣接する領域同士区切るブレイクラインを形成すると共にその四隅部(角部)に貫通孔9を形成する。
そして、貫通孔9が形成されたシート状セラミック生地を焼成し、シート状セラミックベース1Aを得る。
【0035】
[第2工程:図7、図8/回路パターン形成]
次に、シート状セラミックベース1Aの回路パターンに対応した領域に、AgPd合金の金属ペーストを、マスクを用いた印刷によって形成する。
回路パターンは、一主面(表面)では、図7に示すように、水晶保持端子4のパターンが形成され、他主面(裏面)では、図8に示すように、実装端子5a,5bのパターンが形成され、更に、貫通孔9の壁面にはスルー端子5xが形成される。
【0036】
一主面(表面)の水晶保持端子4は、前述のように各セラミックベース1の中心に対して点対称とする。つまり、セラミックベース1の対角線上に引出端子4aが形成される。
また、他主面(裏面)の一組の対角に形成された実装端子5aは、水晶保持端子4とスルー端子5x、引出端子4aを経て電気的に接続する水晶外部端子とし、他組の対角に形成された実装端子5bは、ダミー端子とする。
そして、AgPd合金とした金属ペースを焼成し、回路パターンの形成されたシート状セラミックベース1Aを得る。
【0037】
尚、セラミックの焼成温度は約1500〜1600℃、AgPd合金はこれ以下の850℃となることから、セラミックの焼成後にAgPd合金ペーストを塗布して、セラミックとともにAgPd合金ペーストを焼成する。
これは、セラミック生地にAgPd合金ペーストを塗布してセラミックの焼成温度で焼成すると、AgPd合金ペーストは高温過ぎて塊粒になって回路パターンを形成できないことに起因する。
【0038】
[第3工程/水晶片搭載]
次に、回路パターンの形成されたシート状セラミックベース1Aの各水晶保持端子4に、励振電極6aから引出電極6bの延出した水晶片2の外周部を導電性接着剤7によって固着して搭載し、電気的・機械的に接続する。
ここでは、引出電極6bの延出した水晶片2における一組の対角部が固着される。
【0039】
[第4工程/周波数調整]
次に、シート状セラミックベース1Aに搭載(固着)された水晶振動子としての各水晶片2の振動周波数を質量負荷効果によって調整する。
具体的には、シート状セラミックベース1Aの裏面において、各水晶片2と電気的に接続した実装端子5aに測定器からの測定端子(プローブ)を接触させる。そして、板面が露出した水晶片2の表面側の励振電極6aにガスイオンを照射して表面を削り取り、励振電極6aの質量を減じて振動周波数を低い方から高い方に調整する。
但し、例えば、蒸着やスパッタによって励振電極6a上に金属膜を付加して、振動周波数を高い方から低い方に調整することもできる。
【0040】
[第5工程/金属カバー接合(密閉封入)]
次に、水晶片2が搭載されたシート状セラミックベース1Aの個々のセラミックベース1に対応した矩形状領域の外周表面に、凹状とした金属カバー3の開口端面を、封止材8を介して接合する。
以下に、本実施の形態に係る金属カバー3のシート状セラミックベース1Aへの接合方法を説明する。
【0041】
[浸漬:図9]
まず、図9に示すように、溶融樹脂液8Aの中に金属カバー3の開口端面を矢印方向(下方向)に浸漬する。ここでは、溶融樹脂液8Aの表面に対して、金属カバー3の開口端面が均一に接触するよう浸漬する。
開口部は、上述したように、外側終端に向かって下降する勾配(傾斜面)としたフランジ3aを備えており、フランジ3aの外周端面(厚み)の上端近傍まで浸漬する。つまり、フランジ3aの傾斜面の始端部(根元部)の下面が溶融樹脂液8Aの表面に接触する程度とする。
従って、フランジ3aの形状は、根元部の下面が溶融樹脂液8Aに接触して、外周端面が上面近傍まで溶融樹脂液8Aの中に浸漬する程度の傾斜とするものである。
【0042】
[引き上げ:図10]
次に、図10に示すように、金属カバー3の開口端面に溶融樹脂8を付着させた状態で、溶融樹脂液8Aの中から金属カバー3を矢印方向(上方向)に引き上げる。この場合、金属カバー3のフランジ3aの傾斜面に沿って下側にふくらむように溜まり部が形成される。従って、溶融樹脂8は、傾斜面に溜まり部に集中して、傾斜面の重心を中心として溶融樹脂8が表面張力により盛り上がる。
【0043】
そして、金属カバー3の開口端面(フランジ3aの傾斜面)に溶融樹脂8が付着した状態で、金属カバー3を移動させ、セラミックベース1の表面外周に開口端面を位置決めする。金属カバー3の自重又は軽い押圧により、開口端面をセラミックベース1の表面外周に接着する。
最後に、表面実装水晶振動子を全体的に加熱して溶融樹脂8を硬化させ、金属カバー3をセラミックベース1に接合して封止する。
【0044】
[第6工程/分割]
最後に、水晶振動子が集合化されたシート状セラミックベース1Aをブレイクラインに従って縦横に分割して、個々の表面実装水晶振動子を得る。
【0045】
本実施の形態の製造方法では、セラミックベース1の回路パターン(水晶保持端子4、スルー端子5x、実装端子5a)はAgPd合金として、貫通孔9を設けたシート状セラミック生地の焼成後にAgPd合金ペーストを塗布し、焼成によって形成する。
【0046】
従って、従来例でのシート状セラミック生地にW(タングステン)ペーストを塗布して焼成後に電解メッキによってNi(ニッケル)及びAu(金)を形成する場合に比較し、2回にわたる電解メッキ工程を不要とするので、製造工程数を少なくできる。
また、電解メッキ工程を不要にするので、例えば、セラミックベース1間の回路パターンを電気的に接続する電解メッキ用の配線路をも不要となるので、回路パターンをシンプルにして安価にできる効果がある。
【0047】
また、ここでは、回路パターンの形成されたシート状セラミックベース1Aの状態で、水晶片2の搭載(第3工程)、周波数調整(第4工程)及び金属カバー3の接合(第5工程)とする。
従って、シート状セラミックベース1Aの状態で、これらの工程を連続的に行えるので、生産性を向上させることができる効果がある。
【0048】
更に、本実施形態では、セラミックベース1の裏面の実装端子5a,5bは、それぞれが電気的に独立した4端子とする。一方、シート状セラミックベース1Aの状態では、隣接する矩形状領域の4つの角部における各実装端子5a,5b(4個)はスルー端子5xを経て電気的に共通接続する。
従って、4つの角部の各実装端子5a,5bが共通接続された状態でも、各セラミックベース1の水晶保持端子4に接続する一組の対角部の実装端子5aに測定端子を接触させて、水晶片2毎に振動周波数を調整できる効果がある。
【0049】
また、以上の製造方法によれば、フランジ3aを含む金属カバー3の開口端面を溶融樹脂液8Aの中に浸漬して溶融樹脂8を直接に付着させる。例えば、整形された樹脂を仮固着する場合と比較して、工程を少なくし、製造単価を低減できる。
【0050】
また、金属カバー3のフランジ3aの傾斜面に溶融樹脂8の溜まり部が形成されるため、適量の溶融樹脂8を均一に付着させることができ、溶融樹脂8の不足もなく、接合を十分にして気密を確実にできる。更に、溶融樹脂8の余剰分が内部に流入して水晶片2に付着することがなく、振動特性を良好に維持できる。
【0051】
[比較:図11,12]
図9,10との比較のために、フランジ部分が傾斜面を備えていない例を示して説明する。図11は、傾斜面を備えていないフランジの溶融樹脂への浸漬を示す断面説明図であり、図12は、傾斜面を備えていないフランジの溶融樹脂からの引き上げを示す断面説明図である。
図11,12に示すように、水平方向に平坦なフランジ3a′の場合、フランジ3a′の下面に付着する溶融樹脂8は溜まり部がほぼ均一に形成されるため、やや少なく、十分な量にはなっていないことが分かる。
【0052】
[別のフランジの形態:図13]
次に、金属カバー3のフランジ3aは、図1,9,10において、外終端に向けて下降する勾配としたが、これとは逆に上昇する勾配としても同様の効果が得られる。例えば、図13に示すように、フランジ3aの外終端が跳ね上がった形状となっている。
図13は、別のフランジの形態を示す断面説明図である。
【0053】
[片持ちタイプ:図14]
次に、別の実施の形態に係る表面実装水晶振動子について図14を参照しながら説明する。図14は、別の実施の形態に係る表面実装水晶振動子の平面説明図である。
別の実施の形態に係る表面実装水晶振動子(別の振動子)は、図14に示すように、水晶片2の片方の端部に引出電極6bを形成し、当該片方で導電性接着剤7を介して水晶保持端子4に接続し、一方の水晶保持端子4では最短の角部へ引出端子4aが形成され、他方の水晶保持端子4では引出端子4bが、水晶片2の下部を図14の水平方向に引き出され、水晶片2の角部から最短の角部に接続するよう形成されている。
図14の構成は、水晶片2の片方で保持するものであるため、「片持ち」タイプと称されるものである。
【0054】
図14の片持ちタイプであっても、本振動子の両持ちタイプと同様に対角線上の貫通孔9に形成されたスルー端子5xを介して裏面の実装端子5aに接続するものであり、裏面は、図8に示す実装端子5a,5bのパターンとなっている。
尚、図14における別の振動子の製造方法も、本振動子の製造方法と同様であり、生産性を向上できる効果がある。
また、裏面の実装端子5aに測定端子を接触させ、水晶片2毎に周波数調整を行うことも同様に可能である。
【0055】
更に、上記片持ちタイプにおいても、図1、9,10及び図13に示した特殊形状のフランジ3aを備えた金属カバー3を上述した製造方法によって接合して封止することで、溶融樹脂8を適正量とすることができ、安価かつ良好な製品とすることができる効果がある。
【0056】
[実施の形態の効果]
本振動子及び別の振動子によれば、セラミックベース1を単板とするので、基本的に製造単価を安くでき、水晶保持端子4を含む電極をAgPd合金とすることで、従来のW及びNi、Auとした場合よりも電極の材料費や工程数を減らして、さらに安価にできる効果がある。
【0057】
更に、本振動子及び別の振動子によれば、水晶保持端子4からの引出端子4aをセラミックベース1の対角線上の角部に引き出し、当該角部に形成した貫通孔9の壁面に形成したスルー端子5xを介して裏面の実装端子5aに接続するようにしているので、引出端子4aを水平方向又は垂直方向に引き出される場合に比べて長くすることができ、金属カバー3の開口端面部が一方の水晶保持端子4の一端側と接触しても、スルー端子5xまでは距離があるから、スルー端子5xへの接触を防止して電気的短絡(ショート)を回避できる効果がある。
【0058】
また、本振動子では、水晶保持端子4の端部を水晶片の引出電極6bより短くしているので、金属カバー3の一辺となる開口端面部が一方の水晶保持端子4と接触しても、他方の水晶保持端子4の同じ方向での接触を回避できる。
その結果、一対の水晶保持端子4が金属カバー3を経ての電気的に短絡するのを防止して、生産性を向上させることができる効果がある。
【0059】
また、別の振動子では、引出端子4bを水晶片2の下側を通過させて引出電極6bに接続するようにしているので、図14の垂直方向に対する一対の水晶保持端子4が金属カバー3を介してショートするのを防止できる効果がある。
但し、図14の垂直方向に水晶保持端子4が並んで配置されているため、図14の横方向のずれには注意する必要がある。
【0060】
また、本振動子及び別の振動子によれば、金属カバー3の配置すれに対して耐性を持たせることで、導電性接着剤7の固着状態の変化を抑制して安定にし、表面実装振動子のエージング特性を良好に維持できる効果がある。
【0061】
また、特殊形状のフランジ3aを含む金属カバー3の開口端面を溶融樹脂液8Aの中に浸漬して溶融樹脂8を直接に付着させ、フランジ3aの傾斜面に溶融樹脂8の溜まり部を形成し、基板1上に固着して接合し、封止するようにしているので、工程を少なくし、製造単価を低減でき、適量の溶融樹脂8を均一に付着させることで、溶融樹脂8の不足もなく、接合を十分にして気密を確実にでき、更に、溶融樹脂8の余剰分が内部に流入して水晶片2に付着することがなく、振動特性を良好に維持できるという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、小型化を実現しつつ、品質を高め、生産性を向上させることができる表面実装水晶振動子に好適である。
【符号の説明】
【0063】
1...セラミックベース(基板)、 1A...シート状セラミックベース、 2...水晶片、 3...金属カバー(カバー)、 3a...フランジ、 4...水晶保持端子、 4a,4b...引出端子、 5a,5b...実装端子、 5x...スルー端子、 6a...励振電極、 6b...引出電極、 7...導電性接着剤、 8...封止材(溶融樹脂)、 8A...溶融樹脂液、 9...スルーホール(貫通孔)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形のセラミック基板上に水晶片が第1及び第2の水晶保持端子で保持され、溶融樹脂の封止材を介して金属カバーで封止される表面実装水晶振動子であって、
前記水晶片の一方の引出電極と他方の引出電極は、反対方向に引き出され、
前記第1の水晶保持端子と前記第2の水晶保持端子は、前記基板の双方の短辺に沿って形成されると共に、前記水晶片の両端を保持する両持ちタイプとし、
前記基板の角部に形成された貫通孔の壁面にスルー端子が形成され、
前記基板の表面に前記第1の水晶保持端子から引き出された第1の引出端子が最短の角部のスルー端子に接続し、前記第2の水晶保持端子から引き出された第2の引出端子が前記第1の引出端子が引き出された方向とは逆方向の角部のスルー端子に接続すると共に、前記基板の裏面では前記スルー端子に接続する実装端子が形成され、
前記第1の水晶保持端子と前記水晶片の一方の引出電極とは、前記第1の引出端子が引き出される端部において導電性接着剤で接続され、
前記第2の水晶保持端子と前記水晶片の他方の引出電極とは、前記第2の引出端子が引き出される端部において導電性接着剤で接続され、
前記金属カバーの前記セラミック基板上に前記溶融樹脂を介して接合する開口端面が傾斜面を備えたフランジとなっていることを特徴とする表面実装水晶振動子。
【請求項2】
金属カバーの開口端面のフランジが、内側から外側に下降する傾斜面、又は内側から外側に上昇する傾斜面を備えることを特徴とする請求項1記載の表面実装水晶振動子。
【請求項1】
矩形のセラミック基板上に水晶片が第1及び第2の水晶保持端子で保持され、溶融樹脂の封止材を介して金属カバーで封止される表面実装水晶振動子であって、
前記水晶片の一方の引出電極と他方の引出電極は、反対方向に引き出され、
前記第1の水晶保持端子と前記第2の水晶保持端子は、前記基板の双方の短辺に沿って形成されると共に、前記水晶片の両端を保持する両持ちタイプとし、
前記基板の角部に形成された貫通孔の壁面にスルー端子が形成され、
前記基板の表面に前記第1の水晶保持端子から引き出された第1の引出端子が最短の角部のスルー端子に接続し、前記第2の水晶保持端子から引き出された第2の引出端子が前記第1の引出端子が引き出された方向とは逆方向の角部のスルー端子に接続すると共に、前記基板の裏面では前記スルー端子に接続する実装端子が形成され、
前記第1の水晶保持端子と前記水晶片の一方の引出電極とは、前記第1の引出端子が引き出される端部において導電性接着剤で接続され、
前記第2の水晶保持端子と前記水晶片の他方の引出電極とは、前記第2の引出端子が引き出される端部において導電性接着剤で接続され、
前記金属カバーの前記セラミック基板上に前記溶融樹脂を介して接合する開口端面が傾斜面を備えたフランジとなっていることを特徴とする表面実装水晶振動子。
【請求項2】
金属カバーの開口端面のフランジが、内側から外側に下降する傾斜面、又は内側から外側に上昇する傾斜面を備えることを特徴とする請求項1記載の表面実装水晶振動子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−191648(P2012−191648A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−115953(P2012−115953)
【出願日】平成24年5月21日(2012.5.21)
【分割の表示】特願2010−219149(P2010−219149)の分割
【原出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年5月21日(2012.5.21)
【分割の表示】特願2010−219149(P2010−219149)の分割
【原出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】
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