説明

表面実装水晶発振器

【課題】樹脂封止による耐衝撃性や防水特性を確保しつつ、放熱特性を向上させることができる表面実装水晶発振器を提供する。
【解決手段】本発明の表面実装水晶発振器は、凹部13、14が形成された容器本体1と、容器本体1の凹部13内に収納された水晶片3と、水晶片3と電気的に接続され、かつ凹部14の底面14aに接合された平板状のICチップ2とを有する。ICチップ2の他主面2bには、放熱面積を拡大するための溝20が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面実装用の水晶発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
表面実装用の水晶発振器(以下、「表面実装水晶発振器」と呼ぶ。)は、小型、軽量であることから、例えば携帯型の電子機器に、周波数や時間の基準源として内蔵される。
【0003】
特許文献1には、積層セラミックからなる凹部を有する容器本体にICチップを超音波熱圧着によって固着し、水晶片とともに一体化したタイプの表面実装水晶発振器が開示されている。
【0004】
上記構成の表面実装水晶発振器では、ICチップの発熱温度によって、容器本体内の温度も上昇する。このため、水晶発振器の常温25℃近傍での発振周波数も変化し、公称周波数からのズレを生じる。従来では、発振器の組み立て後の公称周波数からのズレを見込んで、例えば水晶片の切断角度を代えて対応する必要があった。
【0005】
しかし、表面実装水晶発振器の小型化が進行するほど、ICチップの発熱の影響が大きくなり、水晶片の切断角度を単に変更するのみでは、充分に対応できずに生産性を低下させる場合があった。
【0006】
そこで、特許文献1の発明は、容器本体の外底面の面積を実質的に大きくする複数の切り欠きを、容器本体の外底面に設けた構成とすることで容器本体と外雰囲気との接触面積も大きくなって放熱効果を高めている。これにより、ICチップの発熱の影響を軽減でき、よって、周波数温度特性を本来の周波数温度特性が得られる。
【特許文献1】特開2008−252451号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された発明は、容器本体の外底面の面積を実質的に大きくすることで放熱効果を高めている。しかしながら、このような構成の場合、ICチップで生じた熱を放熱するのは容器本体である。つまり、特許文献1の放熱構造は、ICチップで生じた熱を外部に放熱するには必ず容器本体内を熱が伝導することとなるため、容器本体内に収納された水晶片に容器本体を介して熱が伝わりやすい構造であるといえる。よって、さらに効率的に放熱する構造とすることに対する要請があった。
【0008】
そこで、本発明は、電子部品で発生した熱をより効率的に放熱することができる表面実装水晶発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明の表面実装水晶発振器は、凹部が形成された容器本体と、容器本体内に収納された水晶片と、水晶片と電気的に接続されるとともに、凹部内に収納され、凹部の底面に接合された平板状の電子部品と、を有し、平板状の電子部品の主面であって、凹部の底面に対面する面とは反対側の面に少なくとも1つの溝が形成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電子部品で発生した熱をより効率的に放熱することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1に本実施形態のH型構造を有する表面実装水晶発振器の一例の断面図を、図2に図1に示す表面実装水晶発振器の平面図をそれぞれ示す。なお、図1は、後述するICチップ2に形成された溝20の長手方向を法線方向とする断面図である。
【0012】
本実施形態の表面実装水晶発振器は、容器本体1にICチップ2及び水晶片3を収容して一体化してなる。
【0013】
容器本体1は底壁層1aと枠壁層1bとの積層セラミックからなり、H型構造となっている。底壁層1aの一主面側1a1の凹部13内には水晶片3が収納され、他主面側1a2の凹部14内にはICチップ2が収納されている。H型構造とは、底壁層1aの両主面側1a1、1a2に枠壁層1bを設けて凹部13、14を形成することで容器本体1の断面形状がH字形状となった構造をいう。
【0014】
水晶片3は、水晶片3の一端部両側が、例えば熱硬化型の導電性接着剤8によって、一主面側1a1の底壁層1a上に形成された保持端子12に固着されている。水晶片3が収納された凹部13を形成する枠壁層1bの上面には溶接用の金属リング17が設けられている。凹部13の開口面は、例えばシーム溶接によって金属リング17に対して金属カバー10が接合されることで密閉される。金属カバー10と金属リング17との接合には、AuSn、AuGe、AuSi等の共晶合金を用いることができる。
【0015】
ICチップ2は、少なくとも発振回路を集積化しており、また、水晶片3の温度特性に対して温度補償を行うための温度補償機構を有する。この温度補償機構は、ICチップ2と水晶片3とが熱的に平衡な状態にて適切な温度補償が行えるように設定されている。ICチップ2は、超音波熱圧着によって底壁層1aの回路端子6に位置決めして固着される。ICチップ2の一主面2aにはバンプ7が設けられており、ICチップ2の他主面2b側から超音波による振動を加えながら加熱して圧着される。
【0016】
ICチップ2が搭載された側の枠壁層1b上には実装端子9が形成されている。実装端子9は、ICチップ2の端子と電気的に接続されている。また、水晶片3の保持端子12はビアホール11によってICチップ2と電気的に接続されている。
【0017】
ICチップ2の他主面2b、すなわち、凹部14の底面14aに対面する面とは反対側の面である他主面2bには複数の溝20が形成されている。図2では、X方向に向けて3本の溝20aが形成され、これらと直交するY方向に向けて5本の溝20bが形成された例が示されている。溝20の本数、形成方向、長手方向の形状、溝深さ、及び断面形状は、集積化された発振回路の動作に影響がなければ、どのようなものであってもよい。
【0018】
溝20の本数は、2本以上が好適であるが、1本であってもよい。
【0019】
また、溝20の形成方向は、X方向、Y方向、または斜め方向のいずれか1方向のみとしてもよい。図2の場合、長手方向がX方向となるように形成された溝20aと、長手方向がY方向となるように形成された溝20bとを有する。X方向の溝20aを所定の間隔を空けて形成すると、例えば、図2に示す場合、3本しか形成することができない。しかしながら、Y方向にも溝20bを形成することでさらに5本形成することができる。このように、所定の方向を長手方向とする溝の本数が制限されるような場合には、当該所定の方向と交差する方向を長手方向とする溝を形成することで溝数を増やし、放熱面積を広くすることができる。一方、ICチップ2の材質等の制限により、溝20同士を交差させるのが困難な場合は、図3に示すように、溝20同士を交差させることなく所定の方向のみに溝20を形成するのが好ましい。
【0020】
また、溝20は、図4(a)や図4(b)に示すように、溝20の端部21がICチップ2の端面2cに達していないものであってもよい。図4(a)に示す例では、溝20の両端部21がICチップ2の端面2cに達しておらず、図4(b)に示す例では、溝20の一方の端部21のみがICチップ2の端面2cに達していない。
【0021】
さらに、溝20の長手方向の形状は、直線的な形状のみに限定されるものではなく、曲線であってもよいし、直線及び曲線を組み合わせた形状であってもよい。
【0022】
また、本実施形態のICチップ2には、図5のように、端部を持たない閉じた形状の複数の溝20が入れ子状に形成されているものであってもよい。図5に示す溝20の平面形状は、略矩形状であり、辺の部分が直線形状であり、角部が曲線となるように形成されている。
【0023】
また、図6(a)に示すように、ICチップ2に複数の溝20a、20bが形成されている場合、溝20aの溝幅W1と、溝幅W1より広い溝幅W2の溝20bとが形成されているものであってもよい。あるいは、図6(b)に示すように、ICチップ2は、溝幅が幅W3の部分と、幅W3より広い幅W4の部分とを有する溝20cを有するものであってもよい。なお、図6(a)及び図6(b)は、本実施形態の表面実装水晶発振器の平面図であってICチップ2のみを図示したものである。
【0024】
また、溝20の深さについては、図1に示すように全て同一であってもよいし、あるいは、図6(c)や図6(d)にように異なる溝深さで形成されている溝20d〜20fが含まれていてもよい。図6(c)には、溝深さh1の溝20dと、溝深さh1よりも深い溝深さh2を有する溝20eが形成されたICチップ2が示されている。なお、図6(c)は、溝の長手方向を法線方向とするICチップ2の断面図であるが、他主面2bが上方を向くようにして描かれている。また、図6(d)には、溝深さh3の部分と、溝深さh3よりも深い溝深さh3の部分とを有する溝20fが形成されたICチップ2が示されている。なお、図6(d)は、ICチップ2の透過側面図であるが、溝の長手方向と直交する方向からみた図である。
【0025】
ICチップ2内の集積回路の配置によっては、溝幅や溝深さを一定にできない場合がある。このような場合、集積回路を回避するため、上述のように溝幅や溝深さを適宜変更することで対処しうる。
【0026】
また、ICチップ2には、図6(e)に示すように、断面形状が、矩形形状の溝20g、U字形状の溝20hや溝20iが形成されているものであってもよい。U字形状の場合、溝20の断面形状に角部をなくすことで応力集中を回避することができる。なお、図6(e)も、図6(c)と同様に溝の長手方向を法線方向とするICチップ2の一部断面図であり、他主面2bが上方を向くようにして描かれたものである。
【0027】
ICチップ2の他主面2bの表面積は、上述したような溝20が形成されたことにより、溝20が形成されていない場合に比べて増加している。ICチップ2が駆動されることで生じる熱は、ICチップ2の他主面2bから外部に放熱されるが、本実施形態のICチップ2の他主面2bは、複数の溝20が形成されていることで放熱面積が、溝20が形成されていない場合に比べて増加していることとなる。このため、本実施形態のICチップ2の他主面2bからの放熱効率は、溝20が形成されていない場合に比べて高いものとなる。
【0028】
また、本実施形態の場合、ICチップ2で生じた熱であって他主面2bから放熱する熱を、容器本体1を通じて外部に放熱されるのではなく、他主面2bから直接外部に放熱する構成となっている。このため、他主面2bから放熱される熱が容器本体1を介して容器本体1内に収納された水晶片3に伝わってしまうことがない。
【0029】
以上説明したように、本実施形態の表面実装水晶発振器は、ICチップ2自体に放熱効率を高めるための溝20が形成されている。このため、効率的な放熱が可能であるとともに、溝20が形成されたICチップ2の他主面2bから容器本体1を介して水晶片3へと熱が伝わるのを防止することができる。
【0030】
なお、本明細書においては、表面実装水晶発振器に実装される平板状の電子部品としてICチップを一例に挙げ、その一主面に溝が形成された構成を説明した。しかしながら、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、駆動により発熱するICチップ以外の平板状の電子部品にも適用可能である。
【0031】
以上、本発明の望ましい実施形態について提示し、詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない限り、さまざまな変更及び修正が可能であることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係る表面実装水晶発振器の断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る表面実装水晶発振器の平面図である。
【図3】所定の方向のみに溝が形成されたICチップを備えた、本発明の一実施形態に係る表面実装水晶発振器の平面図である。
【図4】溝の端部がICチップの端面に達していない溝が形成されたICチップの平面図である。
【図5】端部を持たない閉じた形状の複数の溝が入れ子状に形成されたICチップの平面図である。
【図6】各種溝幅、各種溝深さ、及び各種断面形状を有する溝が形成されたICチップの平面図、断面図及び透過側面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 容器本体
1a 底壁層
1b 枠壁層
1a1 一主面側
1a2 他主面側
2 ICチップ
2a 一主面
2b 他主面
2c 端面
3 水晶片
6 回路端子
7 バンプ
8 導電性接着剤
9 実装端子
10 金属カバー
11 ビアホール
12 保持端子
13、14 凹部
14a 底面
17 金属リング
20、20a〜20i 溝
21 端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部が形成された容器本体と、
前記容器本体内に収納された水晶片と、
前記水晶片と電気的に接続されるとともに、前記凹部内に収納され、前記凹部の底面に接合された平板状の電子部品と、を有し、
前記平板状の電子部品の主面であって、前記凹部の前記底面に対面する面とは反対側の面に少なくとも1つの溝が形成されている表面実装水晶発振器。
【請求項2】
前記溝は、一の溝幅と、前記一の溝幅とは異なる幅である他の溝幅とを有する、請求項1に記載の表面実装水晶発振器。
【請求項3】
前記溝は、一の溝深さと、前記一の溝深さとは異なる深さである他の溝深さとを有する、請求項1または2に記載の表面実装水晶発振器。
【請求項4】
前記溝の長手方向を法線方向とする前記電子部品の断面における前記溝の断面形状が矩形状である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の表面実装水晶発振器。
【請求項5】
前記溝の長手方向を法線方向とする前記電子部品の断面における前記溝の断面形状がU字形状である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の表面実装水晶発振器。
【請求項6】
一の方向を長手方向とする前記溝と、前記一の方向とは異なる方向である他の方向を長手方向とする前記溝と、を含む複数の前記溝を有する、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の表面実装水晶発振器。
【請求項7】
前記電子部品はICチップである、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の表面実装水晶発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−124377(P2010−124377A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297993(P2008−297993)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】