説明

表面実装用の水晶発振器

【課題】低背化に適して水晶検査端子を有する表面実装用の温度補償発振器を提供する。
【解決手段】第1凹部15aと第2凹部15bを平面的に並設した底壁1aと枠壁1bを有する積層セラミックからなる容器本体1と、前記第1凹部15aに収容されて金属カバー14によって密閉封入された水晶片3と、前記第2凹部15bに収容されて開口端面を未封止として発振回路を集積化したICチップ2とを有する表面実装発振器において、前記水晶片3の励振電極8(ab)から延出した引出電極9a、9bと電気的に接続した水晶検査端子18a、18bを前記第2凹部15bの枠壁上面に設けた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高さ寸法を小さくした表面実装用の水晶発振器(以下、表面実装発振器とする)を技術分野とし、特にSIMカード(携帯電話用)やPCカード(パソコン用)等の厚みの薄い電子カードに実装される表面実装発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
電子カード例えばSIMカードは、使用許可情報や電話番号等の個人情報を登録して認証カードとする。近年では、SIMカードにGPS機能を取り込むことが検討され、これに対応した高さの小さい温度補償型とした表面実装発振器(以下、温度補償発振器とする)が求められている。この場合、SIMカードは厚みを例えば0.76mmとすることから、温度補償発振器は厚みを0.5mm〜0.4mm以下にすることが求められる。
【0003】
(従来技術の一例、特許文献)
第6図は一従来例を説明する温度補償発振器の図で、同図(a)は断面図、同図(b)はICチップの平面図である。
【0004】
温度補償発振器は、構造的に見ると、一般には、図に示す一部屋型、又は図示しないH型や接合型がある。温度補償発振器のうちの一部屋型は、積層セラミックからなる凹状とした容器本体1にICチップ2と水晶片3とを収容する。ICチップ2は少なくとも発振回路(但し、水晶振動子を除く)と温度補償機構とを集積化する。ICチップ2の回路機能面(一主面)にはIC端子4を有し、バンプ5を用いた超音波熱圧着によって内底面の回路端子6に固着される。
【0005】
IC端子4は電源、出力、アース、AFC端子(周波数自動制御端子)及び一対の水晶端子4を両側の長辺に有する。一対の水晶端子4(xy)は例えば両辺側の中央に、残りのIC端子4は角部に設けられる。IC端子4のうちの電源、出力、アース及びAFC端子は図示しない配線路によって容器本体1の積層面を経て外底面の実装端子7に電気的に接続する。
【0006】
水晶片3は両主面に励振電極8(ab)を有し、一端部両側に引出電極9(ab)を延出する「第7図(b)参照」。引出電極9(ab)の延出した水晶片3の一端部両側は、容器本体1の内壁段部に設けた一対の水晶保持端子10に導電性接着剤11によって固着される。導電性接着剤11は容器本体1の底面に塗布されて基本的に水晶片3の下面のみとし、上面には塗布しない。
【0007】
水晶保持端子10はIC端子4のうちの水晶端子4(xy)に図示しない配線路によって電気的に接続する。さらに、水晶保持端子10は容器本体1の外側面に設けた水晶検査端子12に電気的に接続する。容器本体1の開口端面には金属リング13が設けられ、金属カバー14をシーム溶接して水晶片3及びICチップ2を密閉封入する。
【0008】
温度補償発振器のうちのH構造型は、容器本体1を図示しないH状として、上側凹部に水晶片3を収容して密閉封入し、開口端面に実装端子7を有する下側凹部にICチップ2を収容する。水晶検査端子12は例えば前述同様に容器本体1の外側面や、下側凹部の底面に設けられる。
【0009】
また、接合型は水晶片3を密閉封入した水晶振動子の下面に、ICチップ2を収容して実装端子を有する図示しない実装基板を接合する。ICチップ2と水晶片3及び実装基板の実装端子とは前述同様に結線される。この場合、水晶検査端子12は水晶振動子の実装端子がそのまま適用される。
【0010】
そして、これらいずれの温度補償発振器でも、例えば書込端子を兼用した電源等の実装端子7から温度補償機構には温度補償データが書き込まれ、水晶振動子に起因した周波数温度補償特性を補償する。あるいは、容器本体1の外側面に設けた書込端子を併用して温度補償データを書き込む。
【特許文献1】特開2002−330027号公報
【特許文献2】特開平9−83248号公報
【特許文献3】特開2003−32042号公報
【特許文献4】特開2003−51719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
(従来技術の問題点)
しかしながら、上記構成の温度補償発振器では、基本的には、いずれも、ICチップ2と水晶片3とを垂直方向に配置した構造とするので、高さ寸法は0.8mm程度が限度であり、0.5mm以下としたSIMカード用には適さない。このことから、第7図(ab)の断面図及び平面図に示したように、ICチップ2と水晶片3とを水平方向に並設して高さ寸法を小さくすることが検討されている「特許文献2」。
【0012】
この場合には、温度補償発振器は水晶片3よりも厚みの大きいICチップ2の高さに依存して高さ寸法を0.5mm程度までに小さくできるものの、バンプ5を含めたICチップ2の高さ、及びICチップ2と金属カバー14との間隔、さらには金属カバー14の厚みを考慮すると、0.5mm以下にするには限界があった。なお、バンプ5を用いたフリップチップボンディング以外のワイヤーボンディングによってICチップ2を実装する場合でも同様である。
【0013】
さらに、容器本体1の高さが小さくなることによって、水晶検査端子12の高さも小さくなって、図示しない測定器からのプローブの当接を困難にする。なお、水晶検査端子12は容器本体1の最下位層及び最上位層を除いて形成され、セット基板や金属リング13との電気的短絡を防止する。これにより、水晶検査端子12は容器本体1の高さよりも小さくなる。
【0014】
(発明の目的)
本発明はICチップと水晶片とを水平方向に配置して高さ寸法を小さくし、水晶検査端子へのプローブの当接を容易にした表面実装発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(着目技術及び発明の構成)
本発明は、特許文献3及び4等に示される技術に着目した。すなわち、第1と第2の凹部を並設して第1凹部には水晶片を密閉封入し、第2凹部にはICチップを収容した技術に着目した。
【0016】
(解決手段)
本発明は、特許請求の範囲(請求項1)に示したように、第1凹部と第2凹部を平面的に並設した底壁と枠壁を有する積層セラミックからなる容器本体と、前記第1凹部に収容されて金属カバーによって密閉封入された水晶片と、前記第2凹部に収容されて開口端面を未封止として発振回路を集積化したICチップとを有する表面実装発振器において、前記水晶片の励振電極と電気的に接続した水晶検査端子を前記第2凹部の枠壁上面に設けた構成とする。
【0017】
このような構成であれば、ICチップを独立して第2凹部に収容して未封止とするので、ICチップの底壁からの高さは、基本的に、ICチップの厚みに依存し、例えば超音波熱圧着とした場合はバンプを加えた合計の高さになる。この場合、従来例でのICチップから金属カバーまでの距離及び金属カバーの厚み分を小さくできる。
【0018】
これらにより、表面実装発振器の高さは第1凹部に水晶片を密閉封入した水晶振動子の高さとなる。したがって、表面実装発振器の高さ寸法を従来例よりも小さくできる。そして、ICチップを収容する枠壁上面には水晶検査端子を設けるので、水晶振動子の振動特性を容易に測定できる。
【0019】
(実施態様項)
本発明の請求項2では、請求項1において、前記第2凹部の少なくとも一辺の枠壁幅は前記第1凹部の枠壁幅よりも大きく、前記少なくとも一辺の枠壁の上面に前記水晶検査端子を有する。これにより、第2凹部の枠壁幅を大きくするので、水晶検査端子を形成しやすい。
【0020】
同請求項3では、請求項1において、前記第2凹部の外周となるいずれか一辺を除去して平坦面とする。これにより、第1凹部又は及び第2凹部における内底面の面積を大きくできる。これにより、水晶片又は及びICチップの平面外形を大きくできて、水晶振動子の設計を容易にしたり、ICチップを高機能化できたりする。
【0021】
同請求項3では、請求項1において、前記金属カバーは共晶合金によって接合される。これにより、第1凹部の開口端面を封止できる。なお、シーム溶接の場合は第1凹部と第2凹部との境界部分に電極ローラを当接することが困難となるのに対して、共晶合金であれば金属カバーによる封止を容易にする。また、共晶合金以外に電子ビーム等の封止も採用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
第1図は本発明の一実施形態を説明する温度補償発振器の図で、同図(a)は断面図、同図(b)はカバーを除く平面図である。なお、前従来例と同一部分には同番号を付与してその説明は簡略又は省略する。
【0023】
温度補償発振器は積層セラミックからなる容器本体1にICチップ2と水晶片3とを搭載する。容器本体1は底壁1aと枠壁1bからなり、底壁1aは平坦として二層とする。枠壁1bは並設した開口部を有して底壁1a上に積層され、第1凹部15aと第2凹部15bを形成する。容器本体の外形寸法はデファクトスタンダードの3.2×2.5mmとし、各枠壁1bの枠幅Wは0.425mmとする。
【0024】
第1凹部15aの開口端面(枠壁上面)には金属膜16を有し、内底面には一対の水晶保持端子10(ab)を有する。そして、励振電極8(ab)から引出電極9(ab)の延出した水晶片3の一端部両側が導電性接着剤11によって固着される。また、第1凹部15aの開口端面には図示しない共晶合金を用いたロウ付けによって金属カバー14が接合し、水晶片3を密閉封入される。
【0025】
第2凹部15bの内底面には水晶端子6(xy)を含む回路端子6を有する。そして、水晶端子6(xy)は第1凹部15aの水晶保持端子10(ab)とビアホールや積層面の配線路17を経て電気的に接続する。水晶端子6(xy)を除く、電源、出力、アース及びAFC端子等の回路端子6は容器本体1の外底面に設けた実装端子7に図示しないビアホールや配線路を経て電気的に接続する。
【0026】
そして、第2凹部15bの枠壁上面には一対の水晶検査端子18(ab)を有し、水晶保持端子10(ab)及び水晶端子6(xy)とビアホールや配線路17によって電気的に接続する。水晶検査端子18(ab)は枠幅W(0.425mm)内となる例えば0.4×0.4mmとする。そして、バンプ5を用いた超音波熱圧着によって、ICチップ2の回路機能面が各回路端子6と電気的に接続して固着される。
【0027】
この場合、ICチップ2の回路機能面とは反対面となる上面は、枠壁1bの上面を突出して金属カバー14以内の高さとなる。これにより、第2凹部15bは開口端面を未封止とする。なお、底壁1aの積層面には配線路17等を除いて全面的にシールド電極19が形成される。図では、シールド電極19は便宜的に配線路17と重複して示している。
【0028】
ちなみに、容器本体1の底壁1aの厚みは各層ともに65μmで計130μm、枠壁は130μm、金属カバー14は60μmとする。そして、実装端子7や金属膜16及び図示しない共晶合金の厚みを45μmとして、全体の高さ寸法を365μm(≒0.37mm)とする。また、水晶片3(但し、ATカット)の厚みは例えば振動周波数を26MHzで64μmとして平面外形を1.35×0.85mmとし、ICチップ2の厚みは120μmとして平面外形を1×1.1mmとする。
【0029】
このような構成であれば、ICチップ2を水晶片3とは別個の第2凹部15bに収容したので、温度補償発振器の高さは第1凹部15aに水晶片3を密閉封入した水晶振動子の高さに依存する。したがって、前述のように、温度補償発振器の高さを水晶振動子に依存した0.4mm以内にでき、例えばSIMカードの要求する規格(0.5〜0.4mm以下)を満足する。
【0030】
そして、水晶検査端子18(ab)は第2凹部15bの枠壁上面に設けたので、水晶振動子の振動特性を容易に測定できる。なお、容器本体1の底面に設けることも可能であるが、図示しないカード基板の配線パターンとの間による浮遊容量によって発振周波数を変化させる。また、第2凹部15bは底壁1aのみならず、枠壁1bを設けたので、底壁自体の厚みが小さくなっても強度を維持できる。
【0031】
なお、第2図(断面図)に示したように、ICチップ2を収容する第2凹部15bには回路機能面を保護する樹脂20を注入してもよい。但し、電子カード化する際に樹脂コートされるので、樹脂の種類に応じて適宜に決定される。
【0032】
(第2実施形態)
第3図は本発明の第2実施形態を説明する温度補償発振器の金属カバーを除く平面図である。なお、前実施形態と同一部分には同番号を付与してその説明は省略又は簡略できる。
【0033】
第2実施形態ではICチップ2を収容する容器本体1における第2凹部15bの一辺例えば図の下辺の枠幅W1を他の枠幅Wよりも大きくする。そして、水晶検査端子18(ab)を下辺の枠壁上面に形成する。このようにすれば、水晶検査端子18(ab)をさらに大きくできるので、プローブの接触を確実にする。
【0034】
(第3実施形態)
第4図(ab)は本発明の第3実施形態を説明する温度補償発振器の金属カバーを除く平面図である。なお、前実施形態と同一部分の説明は省略又は簡略する。
【0035】
第3実施形態では、ICチップ2を収容する容器本体1における第2凹部15bの外周となる一辺例えば長さ方向の一端側となる枠壁1bを除いて平坦面とする「第3図(a)」。このようにすれば、第2凹部15bにおける内底面の面積を大きくできる。この場合、例えば付加価値を高める回路をICチップ2に集積化して大型化できて多機能化を図れる。
【0036】
また、これとは逆に、例えばICチップ2の大きさを一定とすれば、第1凹部15aと第2凹部15bの共通する枠壁1bを第2凹部15b側に移動すれば「第3図(b)」、第1凹部15aにおける内底面の面積を大きくできる。したがって、水晶片2を大きくできるので、振動特性を良好にする上での設計を容易にする。そして、いずれの場合でも、外周の一辺を除去するのみで、他の外周の2辺には枠壁1bを有するので、底壁1aの強度を維持できる
【0037】
(他の事項)
上記実施形態では、第1凹部15a及び第2凹部15bのいずれでも底壁1aは二層としたが、例えば第5図に示したように、第2凹部15bは一層としてもよい。この場合、第2凹部15bの一層目のみで厚みが65μmと薄くなって強度が低下するので、枠壁1bの幅を広げることによって強度を補える。そして、ICチップ2の上面を容器本体1の開口端面以下にできる。この場合、シールド電極19は外底面に形成される。
【0038】
また、ICチップ2はバンプを用いた超音波熱圧着としたが、例えばワイヤーボンディングを用いた実装としてもよい。この場合、ワイヤー線のループ高さがバンプの高さ(40μm)と同等以下であれば、各実施形態と同様の効果を得られる。さらに、温度補償発振器として説明したが、温度補償機構を有しない表面実装発振器でも適用できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1実施形態を説明する温度補償発振器の図で、同図(a)は断面図、同図(b)はカバーを除く平面図である。
【図2】本発明の第1実施形態を説明する温度補償発振器の断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態を説明する温度補償発振器の金属カバーを除く平面図である。
【図4】本発明の第3実施形態を説明する図で、同図(ab)ともに温度補償発振器の金属カバーを除く平面図である。
【図5】本発明の他の例を説明する温度補償発振器の断面図である。
【図6】従来例を説明する温度補償発振器の図で、同図(a)は断面図、同図(b)はICチップの平面図である。
【図7】従来例の他例を説明する温度補償発振器の図で、同図(a)は断面図、同図(b)は金属カバーを除く平面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 容器本体、2 ICチップ、3 水晶片、4 IC端子、5 バンプ、6 回路端子、7 実装端子、8 励振電極、9 引出電極、10 水晶保持端子、11 導電性接着剤、12、18 水晶検査端子、13 金属リング、14 金属カバー、15凹部、16 金属膜、17 配線路、19 シールド電極、20 樹脂。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1凹部と第2凹部を平面的に並設した底壁と枠壁を有する積層セラミックからなる容器本体と、前記第1凹部に収容されて金属カバーによって密閉封入された水晶片と、前記第2凹部に収容されて発振回路を集積化したICチップとを有する表面実装発振器において、前記水晶片の励振電極と電気的に接続した水晶検査端子を前記第2凹部の枠壁上面に設けたことを特徴とする表面実装用の水晶発振器。
【請求項2】
請求項1において、前記第2凹部の少なくとも一辺の枠壁幅は前記第1凹部の枠壁幅よりも大きく、前記少なくとも一辺の枠壁の上面に前記水晶検査端子を有する表面実装用の水晶発振器。
【請求項3】
請求項1において、前記第2凹部の外周となるいずれか一辺を除去して平坦面とした表面実装用の水晶発振器。
【請求項4】
請求項1において、前記金属カバーは共晶合金によって接合された表面実装用の水晶発振器。

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−194725(P2009−194725A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−34853(P2008−34853)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】