表面性状測定装置
【課題】傾斜を有する被測定物表面を高精度に倣い測定する表面性状測定装置を提供する。
【解決手段】 測定部210により被測定物表面を倣い走査する。測定部210は、接触部212を先端に有するスタイラス211と、接触部212が被測定物表面に当接した際のスタイラス軸方向の測定力を検出する測定力検出手段を有する。移動機構は、測定力を一定にしながら測定部210を被測定物表面に対して相対移動させる。
移動機構は、接触部210を回転中心として測定部210を回転させてスタイラス211を被測定物表面に垂直にする回転機構400を備える。
【解決手段】 測定部210により被測定物表面を倣い走査する。測定部210は、接触部212を先端に有するスタイラス211と、接触部212が被測定物表面に当接した際のスタイラス軸方向の測定力を検出する測定力検出手段を有する。移動機構は、測定力を一定にしながら測定部210を被測定物表面に対して相対移動させる。
移動機構は、接触部210を回転中心として測定部210を回転させてスタイラス211を被測定物表面に垂直にする回転機構400を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面性状測定装置に関する。
例えば、接触式プローブにより被測定物表面を検出して被測定物表面形状を測定する表面性状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定物表面を走査して被測定物の立体的形状や粗さやうねり等の表面性状を測定する測定装置が知られ、例えば、粗さ測定機、輪郭形状測定機、真円度測定機、三次元測定機などが知られている。このような測定装置において、被測定物表面を検出するセンサとしてのプローブが使用される(特許文献1)。
図5に、プローブ200を利用した表面性状測定装置100の構成を示す。
表面性状測定装置100は、プローブ200と、このプローブ200を被測定物表面Sに沿って三次元的に移動させる移動機構としての三次元駆動機構300と、を備えている。
【0003】
プローブ200は、図6に示されるように、先端に接触部212を有するスタイラス211と、このスタイラス211を支持するスタイラスホルダ213と、スタイラス211を軸方向に固有振動数で定常振動させる加振手段214と、スタイラス211の振動変化を検出して検出信号を出力する検出手段217と、を備える加振型接触式プローブである。
加振手段214は、スタイラスホルダ213に設けられスタイラス211を振動させる圧電素子215と、この圧電素子215に所定周波数の出力信号(パルスあるいは正弦波信号など)を印加する加振回路216と、で構成されている。
検出手段217は、スタイラス211の振動を電圧変換する圧電素子218と、この圧電素子218からの電圧を検出して検出信号を出力する検出回路219と、で構成されている。
【0004】
三次元駆動機構300は、従来の三次元測定装置に用いられるX、YおよびZ方向スライド機構を備えたものが利用される。三次元駆動機構300の各軸には駆動量を検出するリニアエンコーダが設けられている。
【0005】
このような構成において、図7に示されるように接触部212を被測定物表面Sに沿って移動させると、接触部212と被測定物表面Sとの位置関係により、図8(D)に示されるような検出信号の変化が生じる。
接触部212がフリーの状態(A)から接触部212が被測定物表面Sに接触を開始し(B)、所定の測定力で接触部212が被測定物表面Sに接触したとき(C)、接触部212の振動が束縛されて、検出信号が予め設定された参照レベルに達する。
【0006】
なお、測定力とは、接触部212を被測定物表面Sに接触させて被測定物表面Sを検出する際に、接触部212を被測定物表面Sに押し当てるときの力をいう。
【0007】
検出信号値が参照レベルとなるように接触部212を被測定物表面Sに押し当てた状態で接触部212を被測定物表面Sに沿って倣い移動させ、検出信号が参照レベルに達したときのプローブ200の位置情報を三次元駆動機構300のX、Y、Z軸スライド量からサンプリングする。サンプリングされたプローブ200の位置情報から接触部212と被測定物表面Sとの接点を算出することにより、被測定物表面Sの形状を知ることができる。
【0008】
ここで、接触部212と被測定物表面Sとが接触する角度によって検出信号の減衰の仕方が異なる。つまり、スタイラス211が軸方向に振動するように加振されるので、スタイラス211の軸方向から接触部212が被測定物表面Sに当接する場合(例えば図7中のA)と、スタイラス211の軸方向からずれた方向で接触部212が被測定物表面Sに当接する場合(例えば図7中のB)と、では、スタイラス211の振動を束縛する程度が異なってくる。
【0009】
そこで、加振型接触プローブ200では、スタイラス211の軸方向から被測定物に接触することを前提として、検出信号の参照レベルが設定されている。したがって、スタイラス211の軸方向から接触部212が被測定物表面Sに接触する場合には検出信号を参照レベルとするように加振型接触プローブ200を倣い移動させて、測定力一定で被測定物表面Sを走査することができる。
【0010】
【特許文献1】特開2004−61322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、被測定物表面Sの傾斜状態によっては、スタイラス軸方向からではなく、スタイラス211の軸方向からずれた方向で接触部212が被測定物表面Sに当接することになる(例えば図7中のB)。
この場合、被測定物表面Sからプローブ200にかかる力(Fv)のうち検出信号の変化にはスタイラス軸方向の分力(Fz)しか反映されない。そのため、検出信号を参照レベルに制御しようとすると被測定物に対する接触部212の押し込みが強くなり、測定力を一定に保つことができない。このように測定力を一定に保てないと、強い押し込みにより被測定物表面Sが損傷したり、また、スタイラス211が湾曲して正確に被測定物表面Sを検出できなくなる。そのため、加振型接触プローブ200による被測定物表面Sの測定では、表面が略平面である被測定物に限定されていた。
【0012】
また、被測定物表面が傾斜していた場合、プローブ200の接触部212のうち被測定物表面に当接する部分が異なってくる。例えば、図7のAに示されるように、被測定物表面Sが水平であれば接触部212の最下点で被測定物表面に当接するが、被測定物表面が傾斜してくると、接触部212のうち最下点ではなくて側面寄りの点で被測定物表面と当接することになる(図7中のB)。
このように接触部212のうちどの点で被測定物表面に当接するかわからないので、接触部212の形状によって測定データの信頼性が異なってくる。そこで、測定精度を保証するためには、接触部212を非常に高精度の真球にするか、あるいは基準となるマスタ(基準球等)を測定した結果に基づいて基準球からの接触部212のずれを補正しなければならない。
【0013】
しかしながら、接触部212を真球に形成することは困難である。また、被測定物表面を測定する際に求められる測定精度が高度化する近年にあっては、求められる測定精度以上の精度で較正されたマスタ(基準球)を常に入手することは困難であり、また、基準球の真球度にも限界がある。したがって、測定精度を保証するには、接触部212のうちのどの点で被測定物に当接するかを限定する必要があり、この点においても従来では略平面である被測定物に測定対象が限定されていた。
【0014】
本発明の目的は、傾斜を有する被測定物表面を高精度に倣い測定する表面性状測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の表面性状測定装置は、被測定物表面に接触する接触部を先端に有するスタイラスおよび前記接触部が被測定物表面に当接した際のスタイラス軸方向の測定力を検出する測定力検出手段を有し前記被測定物表面を倣い走査する測定部と、前記測定力を一定にしながら前記測定部を前記被測定物表面に対して相対移動させる移動機構と、を備え、前記移動機構は、前記接触部を回転中心として前記測定部を回転させて前記スタイラスを前記被測定物表面に垂直にする回転機構を備えることを特徴とする。
【0016】
このような構成において、移動機構により測定部が被測定物表面を倣い走査する。このとき、スタイラス軸方向に作用する測定力が測定力検出手段にて検出され、この測定力を一定とするように移動機構は測定部を移動させる。倣い走査中に、回転機構により測定部が回転調整されてスタイラスが被測定物表面に垂直になるように調整される。このようにしてスタイラスを被測定物表面に垂直とした状態で倣い走査が行われ、所定ピッチでサンプリングされる座標値により被測定物の表面形状が求められる。
【0017】
このような構成によれば、回転機構を備えているので、測定部を回転させてスタイラスを被測定物表面に対して垂直にすることができる。
例えば、被測定物表面が傾斜を有する場合であっても、回転機構による測定部の回転角度調整によりスタイラスを被測定物表面に対して垂直にすることができる。スタイラスが被測定物表面に対して垂直となるように調整されることにより、測定力検出手段は接触部と被測定物表面との間に作用する測定力を正確に検出することができる。測定力検出手段により測定力を正確に検出できることにより、測定力を一定とする倣い測定を高精度に行うことができ、さらに、傾斜を有する被測定物表面に対しても高精度な倣い測定を実行することができる。
【0018】
回転機構による測定部の回転において、回転の中心は接触部であるので、回転機構によって測定部が回転されても接触部は変位しない。よって、回転機構による測定部の回転が行われても接触部が被測定物表面に当接している接触点(測定点)はずれない。したがって、倣い走査中に回転機構によって測定部を回転させて被測定物表面に対するスタイラスの角度を随時調整しながら倣い走査を継続することができる。
【0019】
回転機構によって測定部が回転されることによりスタイラスが被測定物表面に対して垂直となるので、接触部はスタイラス軸方向から被測定物表面に当接することになる。接触部が被測定物表面に当接する方向がスタイラス軸方向からのみに限定されるので、接触部が被測定物表面と接する点が一点に限定される。よって、接触部の全体を高精度の真球にしたり、接触部の全体を高精度に較正する必要がなくなるので、測定作業の簡便化および低コスト化を図ることができる。
また、被測定物表面に接する一点についてのみ接触部の較正を行うことで測定精度を向上させることができる。
【0020】
なお、回転機構による測定部の回転は、予め決められた一平面内における回転であってもよく、あるいは、一平面内における回転に限定されず、接触部を含む総ての面内において回転可能であってもよい。
【0021】
本発明では、前記移動機構の駆動量を所定のサンプリングピッチでサンプリングするカウンタと、カウンタのカウント値に基づいて被測定物表面の法線の角度を算出するとともに前記スタイラスを前記法線と平行するための調整角度を算出する調整角度算出部と、を備えることが好ましい。
【0022】
このような構成において、調整角度算出部により被測定物表面の法線が算出される。そして、この被測定物表面の法線とスタイラスとの角度差が調整角度として算出される。この調整角度分だけ回転機構により測定部が回転されることにより、スタイラスが被測定物表面に垂直になるように調整される。倣い走査の実行中に取得したカウント値に基づいて調整角度を算出できるので、スタイラスが被測定物表面に垂直になるように随時調整しながら倣い走査を実行することができる。
【0023】
本発明では、前記調整角度算出部は、現在の測定点と前の測定点とを結んだ直線に垂直な線に基づいて現在の測定点における前記被測定物表面の法線を算出することが好ましい。
【0024】
このような構成において、調整角度算出部により現在の測定点と前の測定点とを結んだ直線が算出される。そして、現在の測定点における前記直線の垂線が算出される。現在の測定点と前の測定点とのサンプリングピッチが短ければ、現在の測定点と前の測定点とを結んだ直線は現在の測定点における被測定物表面の曲率円の接線に近似する直線となる。したがって、この直線の垂線により、現在の測定点における被測定物表面の法線に近似した直線を求めることができる。
そして、前記垂線とスタイラスとが平行となるように回転機構によって測定部を回転させることでスタイラスを被測定物表面に対して垂直にすることができる。
【0025】
なお、現在の測定点と一つ前の測定点とに基づいて被測定物表面の法線を求めてもよく、あるいは、現在の測定点と現在の測定点からみて過去の複数の測定点とに基づいて被測定物表面の法線を算出してもよい。
【0026】
また、被測定物の設計データ等に基づいて被測定物表面の形状データを予め調整角度算出部に設定入力し、被測定物表面上の各点においてスタイラスを被測定物表面に対して垂直にするための調整角度を予め求めておいてもよい。
そして、倣い測定の実行中には、予め算出した調整角度を逐次読み出すとともに回転機構により測定部を回転させてもよい。
【0027】
本発明では、前記測定力検出手段は、前記スタイラスを軸方向に固有振動数で定常振動させる加振手段と、前記スタイラスの振動変化を検出して検出信号を出力する検出手段と、を備えることが好ましい。
【0028】
このような構成において、加振手段によりスタイラスが軸方向に振動される。
そして、接触部が被測定物表面に接触すると、スタイラスの振動が束縛されて振動が小さくなる。このスタイラスの振動変化が検出手段によって検出される。
このような構成によれば、スタイラスの軸方向の振動を束縛する力、すなわち、スタイラスの軸方向からスタイラスに作用する力を検出することができる。そして、回転機構によりスタイラスが被測定物表面に垂直になる状態が維持されるので、倣い走査において測定力はスタイラス軸方向に作用する。したがって、倣い走査中の測定力を高精度に検出することができ、測定力を一定とする倣い測定を高精度に実行することができる。
【0029】
本発明では、前記移動手段は、前記測定部を微小変位させる微動機構と、前記微動機構とともに前記測定部を前記微動機構よりも大変位させる粗動機構と、を備えることが好ましい。
【0030】
ここで、例えば、微動機構としては応答速度が速い駆動機構であることが望ましく、例えば、圧電素子を用いた圧電アクチュエータが例として挙げられる。
また、粗動機構としては、電磁アクチュエータを用いることが例として挙げられる。
【0031】
このような構成によれば、微動機構と粗動機構とを備えているので、倣い測定において、被測定物表面の微小凹凸に対しては応答速度が速い微動機構にて接触部を迅速に微小変位させることができ、被測定物表面の大きな形状変化(うねり等)に対しては大きな変位を許容できる粗動機構によって対応できる。その結果、接触部を高精度かつ高速に被測定物表面に沿って倣い移動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
(第1実施形態)
本発明の表面性状測定装置に係る第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の表面性状測定装置100に係る第1実施形態の構成を示す図である。
なお、第1実施形態としては、表面が略平らな被測定物を略水平に配置し、この被測定物表面Sの上方からプローブ200を被測定物表面Sにアプローチさせて測定する場合について説明する。
【0033】
表面性状測定装置100は、被測定物表面Sに当接する測定部210を上下駆動機構220により上下方向に移動させながら被測定物表面Sを検出するプローブ200と、プローブ200を三次元的に移動させる三次元駆動機構300と、プローブ200を回転させてプローブ200を被測定物表面に対して垂直にする回転機構400と、上下駆動機構220を駆動制御する上下駆動機構制御部500と、全体の動作制御を行うコントローラ部600と、を備えている。
【0034】
プローブ200は、被測定物表面Sに接触して被測定物表面Sに対する測定力を検出する測定部210と、被測定物表面Sの形状に応じて測定部210を上下動させる上下駆動機構220と、測定部210の上下変位量を検出する変位量検出センサ230と、を備える。
【0035】
測定部210は、背景技術で説明した加振型接触式プローブ200であり、
先端に接触部212を有するスタイラス211と、このスタイラス211を支持するスタイラスホルダ213と、スタイラス211を軸方向に固有振動数で定常振動させる加振手段214と、スタイラス211の振動変化を検出して測定力信号を出力する検出手段217と、を備える。
加振手段214は、スタイラスホルダ213に設けられスタイラス211を振動させる圧電素子215と、この圧電素子215に所定周波数の出力信号(パルスあるいは正弦波信号など)を印加する加振回路216と、を備える。
検出手段217は、スタイラス211の振動を電圧変換する圧電素子218と、
この圧電素子218からの電圧を検出して測定力信号を出力する測定力検出回路219と、を備える。
【0036】
測定力検出回路219は、圧電素子218からの電圧を検出するところ、接触部212がフリーで振動する状態で検出される電圧と、被測定物表面Sに接触して接触部212が束縛された状態で検出される電圧との差分を接触部212が被測定物表面Sから受けている測定力の情報として出力する。
例えば、図8を参照すると、非接触の時の電圧レベルL1から所定測定力で接触部212を被測定物表面Sに押し込んだときの電圧レベルである参照値L2を減じた値が測定力検出回路219で検出される測定力である。
【0037】
上下駆動機構220は、測定部210を微小範囲で変位させる微動機構221と、この微動機構221とともに測定部210を大変位させる粗動機構222と、を備える。そして、応答速度が速い微動機構221と可動範囲が大きい粗動機構222とにより、被測定物表面の微小な凹凸には微動機構221にて迅速に対応し、うねり等の大きな変化には粗動機構222で対応して、倣い測定の際に接触部212を被測定物表面に沿って高精度かつ迅速に倣い移動させる。
【0038】
微動機構221は、例えば圧電素子で構成され、粗動機構222の可動部223に取り付けられる。
測定部210は、微動機構221の下端により支持されている。
【0039】
粗動機構222は、例えば、筐体であるハウジング224に固定された永久磁石とこの磁石の磁界中を上下方向に移動する可動コイルとを備えた電磁アクチュエータで構成される。そして、この場合、可動コイルには可動コイルと一体的に移動する可動部223が設けられる。
【0040】
変位量検出センサ230は、測定部210と一体となって上下動するスケール231と、スケール231の変位を検出する検出ヘッド232と、を備えたリニアエンコーダで構成されている。変位量検出センサ230は、ハウジング224に対する測定部210の変位量を検出する。すなわち、変位量検出センサ230は、粗動機構222および微動機構221の合成変位量を検出することになる。
変位量検出センサ230による検出結果は変位量信号として出力される。
【0041】
三次元駆動機構300は、(図1には明示しないが)背景技術において説明した構成と同様であり(図5参照)、X、YおよびZ方向スライド機構を備えたものが利用される。
具体的には、三次元駆動機構300は、載物台310に対して前後にスライド移動可能に立設された門型フレーム320と、この門型フレーム320の梁部321を左右にスライド移動可能に設けられたZコラム330と、このZコラム330内を上下にスライド可能に設けられたZスピンドル340と、を備える。
このZスピンドル340にプローブ200が回転機構400を介して取り付けられる。また、三次元駆動機構300の各軸には駆動量を検出するエンコーダ(不図示)が設けられている。
【0042】
回転機構400は、図2に示されるように、Zスピンドル340の側面に設けられた円弧形状のガイドレール410と、プローブ200に設けられガイドレール410に沿って摺動可能であるスライダ420と、を備える。
ガイドレール410は、円弧状であって、この円弧は、接触部212を中心とする円Cの一部である。
なお、この円弧の半径rとしては、粗動機構222および微動機構221の変位量がゼロである状態でガイドレール410の取り付け位置から接触部212までの長さを半径にとる。
スライダ420は、ガイドレール410に跨乗するように設けられている(図1参照)。このスライダ420がガイドレール410を摺動すると、接触部212を回転中心としてプローブ200が回動し、プローブ200が傾斜する。そして、ガイドレール410とスライダ420との間には、スライダ420のスライド量を検出するエンコーダが設けられている。
【0043】
ここに、上下駆動機構220と、三次元駆動機構300と、回転機構400と、により移動機構が構成されている。
また、加振手段214と検出手段217とにより測定力検出手段が構成されている。
【0044】
上下駆動機構制御部500は、微動機構221を駆動制御する微動機構制御部510と、粗動機構222を駆動制御する粗動機構制御部520と、を備える。
【0045】
微動機構制御部510は、測定力検出回路219で検出される測定力を指定測定力で一定にするための微動機構221の変位量を微動変位情報算出回路511で算出し、微動機構駆動回路512を介して微動機構221に電圧等の制御信号を印加する。
粗動機構制御部520は、微動機構221の変位量が予め決められたバランス変位となるための粗動機構222の変位量を算出して、粗動機構駆動アンプ550を介して粗動機構222に電流等の制御信号を印加する。
【0046】
なお、微動機構制御部510は、測定力比較器513、微動変位情報算出回路511および微動機構駆動回路512により測定力を指定作用力で一定とするためのフィードバックループとなっている。
また、粗動機構制御部520は、位置比較器531と位置補償器532とを有する粗動変位制御部530から粗動速度制御部540を経由して粗動機構駆動アンプ550に至る位置の制御ループと、プローブカウンタ541から変位比較器542、微分回路543、速度比較器544を経由して速度補償器545に至る速度の制御ループと、を備えている。
【0047】
コントローラ部600は、三次元駆動機構制御部610と、カウンタ部620と、形状解析部630と、調整角度算出部640と、回転機構制御部650と、CPU660と、を備えている。
【0048】
三次元駆動機構制御部610は、三次元駆動機構300を駆動制御してプローブ200をX方向、Y方向およびZ方向に移動させる。
例えば、倣い測定を実行する場合には、プローブ200を所定の倣い方向に向けて移動させる。
【0049】
カウンタ部620は、三次元カウンタ621と、回転量カウンタ622と、を備える。
三次元カウンタ621は、三次元駆動機構300の駆動量をX方向、Y方向、Z方向でそれぞれカウントする。
回転量カウンタ622は、スライダ420の変位量を検出することによりプローブ200の回転角度をカウントする。
【0050】
形状解析部630は、プローブカウンタ541およびカウンタ部620にてカウントされる上下駆動機構220、三次元駆動機構300および回転機構400の駆動量に基づいて被測定物表面形状を算出する。
すなわち、形状解析部630は、上下駆動機構220、三次元駆動機構300の駆動量を合成して接触部212の変位量を算出するとともに、プローブ200の回転角に基づいて接触部212の変位量を補正して接触部212の移動軌跡を算出する。
この接触部212の移動軌跡が被測定物表面形状となる。
【0051】
調整角度算出部640は、プローブ200は被測定物表面に対して垂直にするためにプローブ200を回転させる調整角度を算出する。調整角度算出部640は、まず、現在の測定点と前の測定点とを結んだ直線に垂直な線によって現在の測定点における被測定物表面の法線を算出する。そして、算出された被測定物表面の法線とスタイラス211と平行にするために必要なプローブ200の回転角度を調整角度として算出する。
【0052】
例えば、図3は、プローブ200が点P0から点P1に移動した状態を示す図である。点P0から点P1に移動して、現在の測定点であるP1においてスタイラス211を被測定物表面に対して垂直にする場合について説明する。
まず、一つ前の測定点ある点P0と現在の測定点である点P1とを結ぶ直線l1を算出する。
次に、この直線l1に対して点P1における垂線n1を算出する。
そして、現在のプローブ200と垂線n1とのなす角θ1を求める。
この角θ1が点P1における調整角度となる。
【0053】
回転機構制御部650は、回転機構400を駆動制御してプローブ200を調整角度に応じて回転させる。すなわち、回転機構制御部650は、調整角度算出部640にて算出された調整角度に従って回転機構400を駆動させてプローブ200を被測定物表面に対して垂直にする。
【0054】
なお、CPU660は、コントローラ部600を制御するとともに、測定力比較器513に向けて倣い指定測定力の指令を出力する。
【0055】
このような構成を備える第1実施形態の動作を説明する。
まず、測定力比較器513に入力する指定測定力と、位置比較器531に入力する微動機構221のバランス変位量を設定する。そして、三次元駆動機構制御部610による駆動制御にて三次元駆動機構300が駆動され、接触部212が被測定物表面に当接した状態で移動する。このとき、被測定物の設計データおよび倣い測定における測定部位等のデータが三次元駆動制御部に予め入力されており、プローブ200が被測定物表面を倣い走査するように三次元駆動機構制御部610により三次元駆動機構300は制御される。測定力検出回路219にて測定力が検出される。この検出される測定力が指定測定力で一定となるように上下駆動機構220(微動機構221、粗動機構222)が上下駆動機構制御部500によって駆動制御され、測定部210が被測定物表面の凹凸に従って上下動される。
【0056】
ここで、測定力検出回路219は、スタイラス211の軸方向に作用する測定力のみを検出可能であるため、倣い走査中にスタイラス211が被測定物表面に対して垂直になるように回転機構400によりプローブ200が回転駆動される。
【0057】
図3および図4を参照して、被測定物表面の傾斜に応じてプローブ角度が調整される動作について説明する。
図3および図4において、プローブ200は、点P0→点P1→点P2の順に被測定物表面を測定したとする。
図3において、点P0から点P1にプローブ200が移動する際には、まず、点P0の位置でプローブ200が被測定物表面に対して垂直である状態からスタートする。三次元駆動機構300および上下駆動機構220(微動機構221、粗動機構222)により次の測定点である点P1まで測定力一定で倣い走査が行われる。
点P1に至ったところで、点P1の座標値が検出される。すなわち、三次元カウンタ621でカウントされる三次元駆動機構300の駆動量とプローブカウンタ541でカウントされる上下駆動機構220の駆動量が形状解析部630により合成されて点P1の座標値が求められる。
【0058】
点P1において、プローブ200の角度が被測定物表面に垂直になるように調整される。このとき、一つ前の測定点である点P0の座標値と現在の測定点である点P1の座標値が形状解析部630から調整角度算出部640に出力される。
そして、調整角度算出部640において、まず、点P0と点P1とを結ぶ直線l1が算出される。
続いて、調整角度算出部640において、点P1における直線l1の垂線n1が算出される。そして、この垂線n1とプローブ200との角度差θ1が調整角度として算出される。
【0059】
算出された調整角度θ1は回転機構制御部650に出力される。回転機構制御部650は、調整角度θ1だけ回転機構400を駆動させ、スライダ420をスライド移動させる。すると、点P1の位置でプローブ200が接触部212を中心として回転し、プローブ200が被測定物表面に対して垂直になる。
【0060】
なお、プローブ200が接触部212を中心とした回転運動を行うため、回転機構制御部650が回転機構400を駆動するのは、回転機構400が接触部212までの距離が回転機構400の駆動半径rに等しいときであり、すなわち、粗動機構222および微動機構221の変位量がゼロであるときである。
したがって、必要に応じて、回転機構400の駆動の前に上下駆動機構220が駆動されて接触部212と回転機構400との距離が調整される。
【0061】
このように点P1でプローブ200が被測定物表面に垂直になった状態で、次にプローブ200が点P2に倣い移動される。そして、点P2において座標値が検出されるとともに、点P2においてプローブ200が被測定物表面に垂直になるようにプローブ200の角度が調整される。すなわち、調整角度算出部640によって点P1と点P2とを結ぶ直線l2が算出され、点P2におけるこの直線l2の垂線n2が算出される。そして、調整角度算出部640により垂線n2とプローブ200との角度差θ2が算出されて、この角度差θ2に基づいてプローブ200が被測定物表面に対して垂直になるように回転機構制御部650により回転機構400が駆動される。
【0062】
このようにプローブ200による被測定物表面の倣い走査が行われ、三次元カウンタ621およびプローブカウンタ541のカウント値に基づいて形状解析部630により被測定物の表面形状が求められる。
【0063】
このような構成を備える第1実施形態によれば、次の効果を奏することができる。
(1)回転機構400を備えているので、プローブ200を回転させてスタイラス211を被測定物表面に対して垂直にすることができる。従って、被測定物表面が傾斜を有する場合であっても、回転機構400によるプローブ200の回転角度調整によりスタイラス211を被測定物表面に対して垂直にすることができる。スタイラス211を被測定物表面に対して垂直となるように調整することにより、接触部212と被測定物表面との間に作用する測定力を正確に検出することができる。測定力を正確に検出できることにより、測定力を一定とする倣い測定を高精度に行うことができ、さらに、傾斜を有する被測定物表面に対しても高精度な倣い測定を実行することができる。
【0064】
(2)回転機構400によるプローブ200の回転において、回転の中心を接触部212とするので、回転機構400によってプローブ200を回転しても接触部212が変位しない。よって、回転機構400によるプローブ200の回転を行っても接触部212が被測定物表面に当接している接触点(測定点)はずれない。したがって、倣い走査中に回転機構400によってプローブ200を回転させて被測定物表面に対するスタイラス211の角度を随時調整しながら倣い走査を継続することができる。
【0065】
(3)回転機構400によってプローブ200を回転することによりスタイラス211が被測定物表面に対して垂直となるので、接触部212はスタイラス軸方向から被測定物表面に当接することになる。接触部212が被測定物表面に当接する方向をスタイラス軸方向からのみに限定するので、接触部212が被測定物表面と接する点を一点に限定することができる。よって、接触部212の全体を高精度の真球にしたり、接触部212の全体を高精度に較正する必要がなくなるので、測定作業の簡便化および低コスト化を図ることができる。また、被測定物表面に接する一点についてのみ接触部212の較正を行うことで測定精度を向上させることができる。
【0066】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
例えば、回転機構の構成としては上記実施形態に限定されず、接触部を回転中心としてプローブを回転させる構成であればよい。なお、回転機構による測定部の回転は、予め決められた一平面内における回転であってもよく、あるいは、一平面内における回転に限定されず、接触部を含む総ての面内において回転可能であってもよい。具体的には、ガイドレール410のガイド方向とは直交する面内においてさらに円弧状のガイドレールを設けて、プローブ200が直交する2平面内において回転する構成としてもよい。
また、回転機構としてガイドレール410に代えて球面軸受けを用い、プローブ200を任意方向に回転可能に保持することにより、スタイラス211の軸線方向をワーク表面の法線方向に一致させることが可能な構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、表面性状測定装置に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の表面性状測定装置に係る第1実施形態の構成を示す図。
【図2】回転機構によりプローブが回転される様子を示す図。
【図3】プローブが点P0から点P1に移動した状態を示す図。
【図4】プローブが点P1から点P2に移動した状態を示す図。
【図5】プローブを利用した表面性状測定装置の構成を示す図。
【図6】加振型接触式プローブを示す図。
【図7】プローブにて被測定物表面を倣い走査する様子を示す図。
【図8】プローブと被測定物表面との位置に対する検出信号の変化を示す図。
【符号の説明】
【0069】
100…表面性状測定装置、200…プローブ、210…測定部、211…スタイラス、212…接触部、213…スタイラスホルダ、214…加振手段、215…圧電素子、216…加振回路、217…検出手段、218…圧電素子、219…測定力検出回路、220…上下駆動機構、221…微動機構、222…粗動機構、223…可動部、224…ハウジング、230…変位量検出センサ、231…スケール、232…検出ヘッド、300…三次元駆動機構、310…載物台、320…門型フレーム、321…梁部、330…Zコラム、340…Zスピンドル、400…回転機構、410…ガイドレール、420…スライダ、500…上下駆動機構制御部、510…微動機構制御部、511…微動変位情報算出回路、512…微動機構駆動回路、513…測定力比較器、520…粗動機構制御部、530…粗動変位制御部、531…位置比較器、532…位置補償器、540…粗動速度制御部、541…プローブカウンタ、542…変位比較器、543…微分回路、544…速度比較器、545…速度補償器、550…粗動機構駆動アンプ、600…コントローラ部、610…三次元駆動機構制御部、620…カウンタ部、621…三次元カウンタ、622…回転量カウンタ、630…形状解析部、640…調整角度算出部、650…回転機構制御部、660…CPU。
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面性状測定装置に関する。
例えば、接触式プローブにより被測定物表面を検出して被測定物表面形状を測定する表面性状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定物表面を走査して被測定物の立体的形状や粗さやうねり等の表面性状を測定する測定装置が知られ、例えば、粗さ測定機、輪郭形状測定機、真円度測定機、三次元測定機などが知られている。このような測定装置において、被測定物表面を検出するセンサとしてのプローブが使用される(特許文献1)。
図5に、プローブ200を利用した表面性状測定装置100の構成を示す。
表面性状測定装置100は、プローブ200と、このプローブ200を被測定物表面Sに沿って三次元的に移動させる移動機構としての三次元駆動機構300と、を備えている。
【0003】
プローブ200は、図6に示されるように、先端に接触部212を有するスタイラス211と、このスタイラス211を支持するスタイラスホルダ213と、スタイラス211を軸方向に固有振動数で定常振動させる加振手段214と、スタイラス211の振動変化を検出して検出信号を出力する検出手段217と、を備える加振型接触式プローブである。
加振手段214は、スタイラスホルダ213に設けられスタイラス211を振動させる圧電素子215と、この圧電素子215に所定周波数の出力信号(パルスあるいは正弦波信号など)を印加する加振回路216と、で構成されている。
検出手段217は、スタイラス211の振動を電圧変換する圧電素子218と、この圧電素子218からの電圧を検出して検出信号を出力する検出回路219と、で構成されている。
【0004】
三次元駆動機構300は、従来の三次元測定装置に用いられるX、YおよびZ方向スライド機構を備えたものが利用される。三次元駆動機構300の各軸には駆動量を検出するリニアエンコーダが設けられている。
【0005】
このような構成において、図7に示されるように接触部212を被測定物表面Sに沿って移動させると、接触部212と被測定物表面Sとの位置関係により、図8(D)に示されるような検出信号の変化が生じる。
接触部212がフリーの状態(A)から接触部212が被測定物表面Sに接触を開始し(B)、所定の測定力で接触部212が被測定物表面Sに接触したとき(C)、接触部212の振動が束縛されて、検出信号が予め設定された参照レベルに達する。
【0006】
なお、測定力とは、接触部212を被測定物表面Sに接触させて被測定物表面Sを検出する際に、接触部212を被測定物表面Sに押し当てるときの力をいう。
【0007】
検出信号値が参照レベルとなるように接触部212を被測定物表面Sに押し当てた状態で接触部212を被測定物表面Sに沿って倣い移動させ、検出信号が参照レベルに達したときのプローブ200の位置情報を三次元駆動機構300のX、Y、Z軸スライド量からサンプリングする。サンプリングされたプローブ200の位置情報から接触部212と被測定物表面Sとの接点を算出することにより、被測定物表面Sの形状を知ることができる。
【0008】
ここで、接触部212と被測定物表面Sとが接触する角度によって検出信号の減衰の仕方が異なる。つまり、スタイラス211が軸方向に振動するように加振されるので、スタイラス211の軸方向から接触部212が被測定物表面Sに当接する場合(例えば図7中のA)と、スタイラス211の軸方向からずれた方向で接触部212が被測定物表面Sに当接する場合(例えば図7中のB)と、では、スタイラス211の振動を束縛する程度が異なってくる。
【0009】
そこで、加振型接触プローブ200では、スタイラス211の軸方向から被測定物に接触することを前提として、検出信号の参照レベルが設定されている。したがって、スタイラス211の軸方向から接触部212が被測定物表面Sに接触する場合には検出信号を参照レベルとするように加振型接触プローブ200を倣い移動させて、測定力一定で被測定物表面Sを走査することができる。
【0010】
【特許文献1】特開2004−61322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、被測定物表面Sの傾斜状態によっては、スタイラス軸方向からではなく、スタイラス211の軸方向からずれた方向で接触部212が被測定物表面Sに当接することになる(例えば図7中のB)。
この場合、被測定物表面Sからプローブ200にかかる力(Fv)のうち検出信号の変化にはスタイラス軸方向の分力(Fz)しか反映されない。そのため、検出信号を参照レベルに制御しようとすると被測定物に対する接触部212の押し込みが強くなり、測定力を一定に保つことができない。このように測定力を一定に保てないと、強い押し込みにより被測定物表面Sが損傷したり、また、スタイラス211が湾曲して正確に被測定物表面Sを検出できなくなる。そのため、加振型接触プローブ200による被測定物表面Sの測定では、表面が略平面である被測定物に限定されていた。
【0012】
また、被測定物表面が傾斜していた場合、プローブ200の接触部212のうち被測定物表面に当接する部分が異なってくる。例えば、図7のAに示されるように、被測定物表面Sが水平であれば接触部212の最下点で被測定物表面に当接するが、被測定物表面が傾斜してくると、接触部212のうち最下点ではなくて側面寄りの点で被測定物表面と当接することになる(図7中のB)。
このように接触部212のうちどの点で被測定物表面に当接するかわからないので、接触部212の形状によって測定データの信頼性が異なってくる。そこで、測定精度を保証するためには、接触部212を非常に高精度の真球にするか、あるいは基準となるマスタ(基準球等)を測定した結果に基づいて基準球からの接触部212のずれを補正しなければならない。
【0013】
しかしながら、接触部212を真球に形成することは困難である。また、被測定物表面を測定する際に求められる測定精度が高度化する近年にあっては、求められる測定精度以上の精度で較正されたマスタ(基準球)を常に入手することは困難であり、また、基準球の真球度にも限界がある。したがって、測定精度を保証するには、接触部212のうちのどの点で被測定物に当接するかを限定する必要があり、この点においても従来では略平面である被測定物に測定対象が限定されていた。
【0014】
本発明の目的は、傾斜を有する被測定物表面を高精度に倣い測定する表面性状測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の表面性状測定装置は、被測定物表面に接触する接触部を先端に有するスタイラスおよび前記接触部が被測定物表面に当接した際のスタイラス軸方向の測定力を検出する測定力検出手段を有し前記被測定物表面を倣い走査する測定部と、前記測定力を一定にしながら前記測定部を前記被測定物表面に対して相対移動させる移動機構と、を備え、前記移動機構は、前記接触部を回転中心として前記測定部を回転させて前記スタイラスを前記被測定物表面に垂直にする回転機構を備えることを特徴とする。
【0016】
このような構成において、移動機構により測定部が被測定物表面を倣い走査する。このとき、スタイラス軸方向に作用する測定力が測定力検出手段にて検出され、この測定力を一定とするように移動機構は測定部を移動させる。倣い走査中に、回転機構により測定部が回転調整されてスタイラスが被測定物表面に垂直になるように調整される。このようにしてスタイラスを被測定物表面に垂直とした状態で倣い走査が行われ、所定ピッチでサンプリングされる座標値により被測定物の表面形状が求められる。
【0017】
このような構成によれば、回転機構を備えているので、測定部を回転させてスタイラスを被測定物表面に対して垂直にすることができる。
例えば、被測定物表面が傾斜を有する場合であっても、回転機構による測定部の回転角度調整によりスタイラスを被測定物表面に対して垂直にすることができる。スタイラスが被測定物表面に対して垂直となるように調整されることにより、測定力検出手段は接触部と被測定物表面との間に作用する測定力を正確に検出することができる。測定力検出手段により測定力を正確に検出できることにより、測定力を一定とする倣い測定を高精度に行うことができ、さらに、傾斜を有する被測定物表面に対しても高精度な倣い測定を実行することができる。
【0018】
回転機構による測定部の回転において、回転の中心は接触部であるので、回転機構によって測定部が回転されても接触部は変位しない。よって、回転機構による測定部の回転が行われても接触部が被測定物表面に当接している接触点(測定点)はずれない。したがって、倣い走査中に回転機構によって測定部を回転させて被測定物表面に対するスタイラスの角度を随時調整しながら倣い走査を継続することができる。
【0019】
回転機構によって測定部が回転されることによりスタイラスが被測定物表面に対して垂直となるので、接触部はスタイラス軸方向から被測定物表面に当接することになる。接触部が被測定物表面に当接する方向がスタイラス軸方向からのみに限定されるので、接触部が被測定物表面と接する点が一点に限定される。よって、接触部の全体を高精度の真球にしたり、接触部の全体を高精度に較正する必要がなくなるので、測定作業の簡便化および低コスト化を図ることができる。
また、被測定物表面に接する一点についてのみ接触部の較正を行うことで測定精度を向上させることができる。
【0020】
なお、回転機構による測定部の回転は、予め決められた一平面内における回転であってもよく、あるいは、一平面内における回転に限定されず、接触部を含む総ての面内において回転可能であってもよい。
【0021】
本発明では、前記移動機構の駆動量を所定のサンプリングピッチでサンプリングするカウンタと、カウンタのカウント値に基づいて被測定物表面の法線の角度を算出するとともに前記スタイラスを前記法線と平行するための調整角度を算出する調整角度算出部と、を備えることが好ましい。
【0022】
このような構成において、調整角度算出部により被測定物表面の法線が算出される。そして、この被測定物表面の法線とスタイラスとの角度差が調整角度として算出される。この調整角度分だけ回転機構により測定部が回転されることにより、スタイラスが被測定物表面に垂直になるように調整される。倣い走査の実行中に取得したカウント値に基づいて調整角度を算出できるので、スタイラスが被測定物表面に垂直になるように随時調整しながら倣い走査を実行することができる。
【0023】
本発明では、前記調整角度算出部は、現在の測定点と前の測定点とを結んだ直線に垂直な線に基づいて現在の測定点における前記被測定物表面の法線を算出することが好ましい。
【0024】
このような構成において、調整角度算出部により現在の測定点と前の測定点とを結んだ直線が算出される。そして、現在の測定点における前記直線の垂線が算出される。現在の測定点と前の測定点とのサンプリングピッチが短ければ、現在の測定点と前の測定点とを結んだ直線は現在の測定点における被測定物表面の曲率円の接線に近似する直線となる。したがって、この直線の垂線により、現在の測定点における被測定物表面の法線に近似した直線を求めることができる。
そして、前記垂線とスタイラスとが平行となるように回転機構によって測定部を回転させることでスタイラスを被測定物表面に対して垂直にすることができる。
【0025】
なお、現在の測定点と一つ前の測定点とに基づいて被測定物表面の法線を求めてもよく、あるいは、現在の測定点と現在の測定点からみて過去の複数の測定点とに基づいて被測定物表面の法線を算出してもよい。
【0026】
また、被測定物の設計データ等に基づいて被測定物表面の形状データを予め調整角度算出部に設定入力し、被測定物表面上の各点においてスタイラスを被測定物表面に対して垂直にするための調整角度を予め求めておいてもよい。
そして、倣い測定の実行中には、予め算出した調整角度を逐次読み出すとともに回転機構により測定部を回転させてもよい。
【0027】
本発明では、前記測定力検出手段は、前記スタイラスを軸方向に固有振動数で定常振動させる加振手段と、前記スタイラスの振動変化を検出して検出信号を出力する検出手段と、を備えることが好ましい。
【0028】
このような構成において、加振手段によりスタイラスが軸方向に振動される。
そして、接触部が被測定物表面に接触すると、スタイラスの振動が束縛されて振動が小さくなる。このスタイラスの振動変化が検出手段によって検出される。
このような構成によれば、スタイラスの軸方向の振動を束縛する力、すなわち、スタイラスの軸方向からスタイラスに作用する力を検出することができる。そして、回転機構によりスタイラスが被測定物表面に垂直になる状態が維持されるので、倣い走査において測定力はスタイラス軸方向に作用する。したがって、倣い走査中の測定力を高精度に検出することができ、測定力を一定とする倣い測定を高精度に実行することができる。
【0029】
本発明では、前記移動手段は、前記測定部を微小変位させる微動機構と、前記微動機構とともに前記測定部を前記微動機構よりも大変位させる粗動機構と、を備えることが好ましい。
【0030】
ここで、例えば、微動機構としては応答速度が速い駆動機構であることが望ましく、例えば、圧電素子を用いた圧電アクチュエータが例として挙げられる。
また、粗動機構としては、電磁アクチュエータを用いることが例として挙げられる。
【0031】
このような構成によれば、微動機構と粗動機構とを備えているので、倣い測定において、被測定物表面の微小凹凸に対しては応答速度が速い微動機構にて接触部を迅速に微小変位させることができ、被測定物表面の大きな形状変化(うねり等)に対しては大きな変位を許容できる粗動機構によって対応できる。その結果、接触部を高精度かつ高速に被測定物表面に沿って倣い移動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
(第1実施形態)
本発明の表面性状測定装置に係る第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の表面性状測定装置100に係る第1実施形態の構成を示す図である。
なお、第1実施形態としては、表面が略平らな被測定物を略水平に配置し、この被測定物表面Sの上方からプローブ200を被測定物表面Sにアプローチさせて測定する場合について説明する。
【0033】
表面性状測定装置100は、被測定物表面Sに当接する測定部210を上下駆動機構220により上下方向に移動させながら被測定物表面Sを検出するプローブ200と、プローブ200を三次元的に移動させる三次元駆動機構300と、プローブ200を回転させてプローブ200を被測定物表面に対して垂直にする回転機構400と、上下駆動機構220を駆動制御する上下駆動機構制御部500と、全体の動作制御を行うコントローラ部600と、を備えている。
【0034】
プローブ200は、被測定物表面Sに接触して被測定物表面Sに対する測定力を検出する測定部210と、被測定物表面Sの形状に応じて測定部210を上下動させる上下駆動機構220と、測定部210の上下変位量を検出する変位量検出センサ230と、を備える。
【0035】
測定部210は、背景技術で説明した加振型接触式プローブ200であり、
先端に接触部212を有するスタイラス211と、このスタイラス211を支持するスタイラスホルダ213と、スタイラス211を軸方向に固有振動数で定常振動させる加振手段214と、スタイラス211の振動変化を検出して測定力信号を出力する検出手段217と、を備える。
加振手段214は、スタイラスホルダ213に設けられスタイラス211を振動させる圧電素子215と、この圧電素子215に所定周波数の出力信号(パルスあるいは正弦波信号など)を印加する加振回路216と、を備える。
検出手段217は、スタイラス211の振動を電圧変換する圧電素子218と、
この圧電素子218からの電圧を検出して測定力信号を出力する測定力検出回路219と、を備える。
【0036】
測定力検出回路219は、圧電素子218からの電圧を検出するところ、接触部212がフリーで振動する状態で検出される電圧と、被測定物表面Sに接触して接触部212が束縛された状態で検出される電圧との差分を接触部212が被測定物表面Sから受けている測定力の情報として出力する。
例えば、図8を参照すると、非接触の時の電圧レベルL1から所定測定力で接触部212を被測定物表面Sに押し込んだときの電圧レベルである参照値L2を減じた値が測定力検出回路219で検出される測定力である。
【0037】
上下駆動機構220は、測定部210を微小範囲で変位させる微動機構221と、この微動機構221とともに測定部210を大変位させる粗動機構222と、を備える。そして、応答速度が速い微動機構221と可動範囲が大きい粗動機構222とにより、被測定物表面の微小な凹凸には微動機構221にて迅速に対応し、うねり等の大きな変化には粗動機構222で対応して、倣い測定の際に接触部212を被測定物表面に沿って高精度かつ迅速に倣い移動させる。
【0038】
微動機構221は、例えば圧電素子で構成され、粗動機構222の可動部223に取り付けられる。
測定部210は、微動機構221の下端により支持されている。
【0039】
粗動機構222は、例えば、筐体であるハウジング224に固定された永久磁石とこの磁石の磁界中を上下方向に移動する可動コイルとを備えた電磁アクチュエータで構成される。そして、この場合、可動コイルには可動コイルと一体的に移動する可動部223が設けられる。
【0040】
変位量検出センサ230は、測定部210と一体となって上下動するスケール231と、スケール231の変位を検出する検出ヘッド232と、を備えたリニアエンコーダで構成されている。変位量検出センサ230は、ハウジング224に対する測定部210の変位量を検出する。すなわち、変位量検出センサ230は、粗動機構222および微動機構221の合成変位量を検出することになる。
変位量検出センサ230による検出結果は変位量信号として出力される。
【0041】
三次元駆動機構300は、(図1には明示しないが)背景技術において説明した構成と同様であり(図5参照)、X、YおよびZ方向スライド機構を備えたものが利用される。
具体的には、三次元駆動機構300は、載物台310に対して前後にスライド移動可能に立設された門型フレーム320と、この門型フレーム320の梁部321を左右にスライド移動可能に設けられたZコラム330と、このZコラム330内を上下にスライド可能に設けられたZスピンドル340と、を備える。
このZスピンドル340にプローブ200が回転機構400を介して取り付けられる。また、三次元駆動機構300の各軸には駆動量を検出するエンコーダ(不図示)が設けられている。
【0042】
回転機構400は、図2に示されるように、Zスピンドル340の側面に設けられた円弧形状のガイドレール410と、プローブ200に設けられガイドレール410に沿って摺動可能であるスライダ420と、を備える。
ガイドレール410は、円弧状であって、この円弧は、接触部212を中心とする円Cの一部である。
なお、この円弧の半径rとしては、粗動機構222および微動機構221の変位量がゼロである状態でガイドレール410の取り付け位置から接触部212までの長さを半径にとる。
スライダ420は、ガイドレール410に跨乗するように設けられている(図1参照)。このスライダ420がガイドレール410を摺動すると、接触部212を回転中心としてプローブ200が回動し、プローブ200が傾斜する。そして、ガイドレール410とスライダ420との間には、スライダ420のスライド量を検出するエンコーダが設けられている。
【0043】
ここに、上下駆動機構220と、三次元駆動機構300と、回転機構400と、により移動機構が構成されている。
また、加振手段214と検出手段217とにより測定力検出手段が構成されている。
【0044】
上下駆動機構制御部500は、微動機構221を駆動制御する微動機構制御部510と、粗動機構222を駆動制御する粗動機構制御部520と、を備える。
【0045】
微動機構制御部510は、測定力検出回路219で検出される測定力を指定測定力で一定にするための微動機構221の変位量を微動変位情報算出回路511で算出し、微動機構駆動回路512を介して微動機構221に電圧等の制御信号を印加する。
粗動機構制御部520は、微動機構221の変位量が予め決められたバランス変位となるための粗動機構222の変位量を算出して、粗動機構駆動アンプ550を介して粗動機構222に電流等の制御信号を印加する。
【0046】
なお、微動機構制御部510は、測定力比較器513、微動変位情報算出回路511および微動機構駆動回路512により測定力を指定作用力で一定とするためのフィードバックループとなっている。
また、粗動機構制御部520は、位置比較器531と位置補償器532とを有する粗動変位制御部530から粗動速度制御部540を経由して粗動機構駆動アンプ550に至る位置の制御ループと、プローブカウンタ541から変位比較器542、微分回路543、速度比較器544を経由して速度補償器545に至る速度の制御ループと、を備えている。
【0047】
コントローラ部600は、三次元駆動機構制御部610と、カウンタ部620と、形状解析部630と、調整角度算出部640と、回転機構制御部650と、CPU660と、を備えている。
【0048】
三次元駆動機構制御部610は、三次元駆動機構300を駆動制御してプローブ200をX方向、Y方向およびZ方向に移動させる。
例えば、倣い測定を実行する場合には、プローブ200を所定の倣い方向に向けて移動させる。
【0049】
カウンタ部620は、三次元カウンタ621と、回転量カウンタ622と、を備える。
三次元カウンタ621は、三次元駆動機構300の駆動量をX方向、Y方向、Z方向でそれぞれカウントする。
回転量カウンタ622は、スライダ420の変位量を検出することによりプローブ200の回転角度をカウントする。
【0050】
形状解析部630は、プローブカウンタ541およびカウンタ部620にてカウントされる上下駆動機構220、三次元駆動機構300および回転機構400の駆動量に基づいて被測定物表面形状を算出する。
すなわち、形状解析部630は、上下駆動機構220、三次元駆動機構300の駆動量を合成して接触部212の変位量を算出するとともに、プローブ200の回転角に基づいて接触部212の変位量を補正して接触部212の移動軌跡を算出する。
この接触部212の移動軌跡が被測定物表面形状となる。
【0051】
調整角度算出部640は、プローブ200は被測定物表面に対して垂直にするためにプローブ200を回転させる調整角度を算出する。調整角度算出部640は、まず、現在の測定点と前の測定点とを結んだ直線に垂直な線によって現在の測定点における被測定物表面の法線を算出する。そして、算出された被測定物表面の法線とスタイラス211と平行にするために必要なプローブ200の回転角度を調整角度として算出する。
【0052】
例えば、図3は、プローブ200が点P0から点P1に移動した状態を示す図である。点P0から点P1に移動して、現在の測定点であるP1においてスタイラス211を被測定物表面に対して垂直にする場合について説明する。
まず、一つ前の測定点ある点P0と現在の測定点である点P1とを結ぶ直線l1を算出する。
次に、この直線l1に対して点P1における垂線n1を算出する。
そして、現在のプローブ200と垂線n1とのなす角θ1を求める。
この角θ1が点P1における調整角度となる。
【0053】
回転機構制御部650は、回転機構400を駆動制御してプローブ200を調整角度に応じて回転させる。すなわち、回転機構制御部650は、調整角度算出部640にて算出された調整角度に従って回転機構400を駆動させてプローブ200を被測定物表面に対して垂直にする。
【0054】
なお、CPU660は、コントローラ部600を制御するとともに、測定力比較器513に向けて倣い指定測定力の指令を出力する。
【0055】
このような構成を備える第1実施形態の動作を説明する。
まず、測定力比較器513に入力する指定測定力と、位置比較器531に入力する微動機構221のバランス変位量を設定する。そして、三次元駆動機構制御部610による駆動制御にて三次元駆動機構300が駆動され、接触部212が被測定物表面に当接した状態で移動する。このとき、被測定物の設計データおよび倣い測定における測定部位等のデータが三次元駆動制御部に予め入力されており、プローブ200が被測定物表面を倣い走査するように三次元駆動機構制御部610により三次元駆動機構300は制御される。測定力検出回路219にて測定力が検出される。この検出される測定力が指定測定力で一定となるように上下駆動機構220(微動機構221、粗動機構222)が上下駆動機構制御部500によって駆動制御され、測定部210が被測定物表面の凹凸に従って上下動される。
【0056】
ここで、測定力検出回路219は、スタイラス211の軸方向に作用する測定力のみを検出可能であるため、倣い走査中にスタイラス211が被測定物表面に対して垂直になるように回転機構400によりプローブ200が回転駆動される。
【0057】
図3および図4を参照して、被測定物表面の傾斜に応じてプローブ角度が調整される動作について説明する。
図3および図4において、プローブ200は、点P0→点P1→点P2の順に被測定物表面を測定したとする。
図3において、点P0から点P1にプローブ200が移動する際には、まず、点P0の位置でプローブ200が被測定物表面に対して垂直である状態からスタートする。三次元駆動機構300および上下駆動機構220(微動機構221、粗動機構222)により次の測定点である点P1まで測定力一定で倣い走査が行われる。
点P1に至ったところで、点P1の座標値が検出される。すなわち、三次元カウンタ621でカウントされる三次元駆動機構300の駆動量とプローブカウンタ541でカウントされる上下駆動機構220の駆動量が形状解析部630により合成されて点P1の座標値が求められる。
【0058】
点P1において、プローブ200の角度が被測定物表面に垂直になるように調整される。このとき、一つ前の測定点である点P0の座標値と現在の測定点である点P1の座標値が形状解析部630から調整角度算出部640に出力される。
そして、調整角度算出部640において、まず、点P0と点P1とを結ぶ直線l1が算出される。
続いて、調整角度算出部640において、点P1における直線l1の垂線n1が算出される。そして、この垂線n1とプローブ200との角度差θ1が調整角度として算出される。
【0059】
算出された調整角度θ1は回転機構制御部650に出力される。回転機構制御部650は、調整角度θ1だけ回転機構400を駆動させ、スライダ420をスライド移動させる。すると、点P1の位置でプローブ200が接触部212を中心として回転し、プローブ200が被測定物表面に対して垂直になる。
【0060】
なお、プローブ200が接触部212を中心とした回転運動を行うため、回転機構制御部650が回転機構400を駆動するのは、回転機構400が接触部212までの距離が回転機構400の駆動半径rに等しいときであり、すなわち、粗動機構222および微動機構221の変位量がゼロであるときである。
したがって、必要に応じて、回転機構400の駆動の前に上下駆動機構220が駆動されて接触部212と回転機構400との距離が調整される。
【0061】
このように点P1でプローブ200が被測定物表面に垂直になった状態で、次にプローブ200が点P2に倣い移動される。そして、点P2において座標値が検出されるとともに、点P2においてプローブ200が被測定物表面に垂直になるようにプローブ200の角度が調整される。すなわち、調整角度算出部640によって点P1と点P2とを結ぶ直線l2が算出され、点P2におけるこの直線l2の垂線n2が算出される。そして、調整角度算出部640により垂線n2とプローブ200との角度差θ2が算出されて、この角度差θ2に基づいてプローブ200が被測定物表面に対して垂直になるように回転機構制御部650により回転機構400が駆動される。
【0062】
このようにプローブ200による被測定物表面の倣い走査が行われ、三次元カウンタ621およびプローブカウンタ541のカウント値に基づいて形状解析部630により被測定物の表面形状が求められる。
【0063】
このような構成を備える第1実施形態によれば、次の効果を奏することができる。
(1)回転機構400を備えているので、プローブ200を回転させてスタイラス211を被測定物表面に対して垂直にすることができる。従って、被測定物表面が傾斜を有する場合であっても、回転機構400によるプローブ200の回転角度調整によりスタイラス211を被測定物表面に対して垂直にすることができる。スタイラス211を被測定物表面に対して垂直となるように調整することにより、接触部212と被測定物表面との間に作用する測定力を正確に検出することができる。測定力を正確に検出できることにより、測定力を一定とする倣い測定を高精度に行うことができ、さらに、傾斜を有する被測定物表面に対しても高精度な倣い測定を実行することができる。
【0064】
(2)回転機構400によるプローブ200の回転において、回転の中心を接触部212とするので、回転機構400によってプローブ200を回転しても接触部212が変位しない。よって、回転機構400によるプローブ200の回転を行っても接触部212が被測定物表面に当接している接触点(測定点)はずれない。したがって、倣い走査中に回転機構400によってプローブ200を回転させて被測定物表面に対するスタイラス211の角度を随時調整しながら倣い走査を継続することができる。
【0065】
(3)回転機構400によってプローブ200を回転することによりスタイラス211が被測定物表面に対して垂直となるので、接触部212はスタイラス軸方向から被測定物表面に当接することになる。接触部212が被測定物表面に当接する方向をスタイラス軸方向からのみに限定するので、接触部212が被測定物表面と接する点を一点に限定することができる。よって、接触部212の全体を高精度の真球にしたり、接触部212の全体を高精度に較正する必要がなくなるので、測定作業の簡便化および低コスト化を図ることができる。また、被測定物表面に接する一点についてのみ接触部212の較正を行うことで測定精度を向上させることができる。
【0066】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
例えば、回転機構の構成としては上記実施形態に限定されず、接触部を回転中心としてプローブを回転させる構成であればよい。なお、回転機構による測定部の回転は、予め決められた一平面内における回転であってもよく、あるいは、一平面内における回転に限定されず、接触部を含む総ての面内において回転可能であってもよい。具体的には、ガイドレール410のガイド方向とは直交する面内においてさらに円弧状のガイドレールを設けて、プローブ200が直交する2平面内において回転する構成としてもよい。
また、回転機構としてガイドレール410に代えて球面軸受けを用い、プローブ200を任意方向に回転可能に保持することにより、スタイラス211の軸線方向をワーク表面の法線方向に一致させることが可能な構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、表面性状測定装置に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の表面性状測定装置に係る第1実施形態の構成を示す図。
【図2】回転機構によりプローブが回転される様子を示す図。
【図3】プローブが点P0から点P1に移動した状態を示す図。
【図4】プローブが点P1から点P2に移動した状態を示す図。
【図5】プローブを利用した表面性状測定装置の構成を示す図。
【図6】加振型接触式プローブを示す図。
【図7】プローブにて被測定物表面を倣い走査する様子を示す図。
【図8】プローブと被測定物表面との位置に対する検出信号の変化を示す図。
【符号の説明】
【0069】
100…表面性状測定装置、200…プローブ、210…測定部、211…スタイラス、212…接触部、213…スタイラスホルダ、214…加振手段、215…圧電素子、216…加振回路、217…検出手段、218…圧電素子、219…測定力検出回路、220…上下駆動機構、221…微動機構、222…粗動機構、223…可動部、224…ハウジング、230…変位量検出センサ、231…スケール、232…検出ヘッド、300…三次元駆動機構、310…載物台、320…門型フレーム、321…梁部、330…Zコラム、340…Zスピンドル、400…回転機構、410…ガイドレール、420…スライダ、500…上下駆動機構制御部、510…微動機構制御部、511…微動変位情報算出回路、512…微動機構駆動回路、513…測定力比較器、520…粗動機構制御部、530…粗動変位制御部、531…位置比較器、532…位置補償器、540…粗動速度制御部、541…プローブカウンタ、542…変位比較器、543…微分回路、544…速度比較器、545…速度補償器、550…粗動機構駆動アンプ、600…コントローラ部、610…三次元駆動機構制御部、620…カウンタ部、621…三次元カウンタ、622…回転量カウンタ、630…形状解析部、640…調整角度算出部、650…回転機構制御部、660…CPU。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物表面に接触する接触部を先端に有するスタイラスおよび前記接触部が被測定物表面に当接した際のスタイラス軸方向の測定力を検出する測定力検出手段を有し前記被測定物表面を倣い走査する測定部と、
前記測定力を一定にしながら前記測定部を前記被測定物表面に対して相対移動させる移動機構と、を備え、
前記移動機構は、前記接触部を回転中心として前記測定部を回転させて前記スタイラスを前記被測定物表面に垂直にする回転機構を備える
ことを特徴とする表面性状測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表面性状測定装置において、
前記移動機構の駆動量を所定のサンプリングピッチでサンプリングするカウンタと、
カウンタのカウント値に基づいて被測定物表面の法線の角度を算出するとともに前記スタイラスを前記法線と平行するための調整角度を算出する調整角度算出部と、
を備えることを特徴とする表面性状測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の表面性状測定装置において、
前記調整角度算出部は、
現在の測定点と前の測定点とを結んだ直線に垂直な線に基づいて現在の測定点における前記被測定物表面の法線を算出する
ことを特徴とする表面性状測定装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の表面性状測定装置において、
前記測定力検出手段は、
前記スタイラスを軸方向に固有振動数で定常振動させる加振手段と、
前記スタイラスの振動変化を検出して検出信号を出力する検出手段と、を備える
ことを特徴とする表面性状測定装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の表面性状測定装置において、
前記移動手段は、前記測定部を微小変位させる微動機構と、
前記微動機構とともに前記測定部を前記微動機構よりも大変位させる粗動機構と、を備える
ことを特徴とする表面性状測定装置。
【請求項1】
被測定物表面に接触する接触部を先端に有するスタイラスおよび前記接触部が被測定物表面に当接した際のスタイラス軸方向の測定力を検出する測定力検出手段を有し前記被測定物表面を倣い走査する測定部と、
前記測定力を一定にしながら前記測定部を前記被測定物表面に対して相対移動させる移動機構と、を備え、
前記移動機構は、前記接触部を回転中心として前記測定部を回転させて前記スタイラスを前記被測定物表面に垂直にする回転機構を備える
ことを特徴とする表面性状測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表面性状測定装置において、
前記移動機構の駆動量を所定のサンプリングピッチでサンプリングするカウンタと、
カウンタのカウント値に基づいて被測定物表面の法線の角度を算出するとともに前記スタイラスを前記法線と平行するための調整角度を算出する調整角度算出部と、
を備えることを特徴とする表面性状測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の表面性状測定装置において、
前記調整角度算出部は、
現在の測定点と前の測定点とを結んだ直線に垂直な線に基づいて現在の測定点における前記被測定物表面の法線を算出する
ことを特徴とする表面性状測定装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の表面性状測定装置において、
前記測定力検出手段は、
前記スタイラスを軸方向に固有振動数で定常振動させる加振手段と、
前記スタイラスの振動変化を検出して検出信号を出力する検出手段と、を備える
ことを特徴とする表面性状測定装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の表面性状測定装置において、
前記移動手段は、前記測定部を微小変位させる微動機構と、
前記微動機構とともに前記測定部を前記微動機構よりも大変位させる粗動機構と、を備える
ことを特徴とする表面性状測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2007−114095(P2007−114095A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−307041(P2005−307041)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】
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