説明

表面改質フィルムとその用途

【課題】 長期にわたって表面改質効果、特に、他の物質(例えば、樹脂フィルム)との接着性や、オーバーコートの容易性を、簡便に且つ高く維持できる表面改質フィルムとその用途を提供すること。
【解決手段】 本発明の表面改質フィルムは、フィルム基材の少なくとも片面が改質処理されてなり、当該改質面がポリエステル系フィルムで覆われてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面改質フィルムとその用途に関する。より詳細には、本発明は、改質面の表面自由エネルギーの水素結合成分(γh)を長期間にわたって高く維持できる表面改質フィルムとその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系樹脂やポリカーボネート系樹脂などは、化学的に不活性であり、廃棄後の焼却処理が比較的容易であることや、成形の容易性などの点から、樹脂フィルムとして種々の分野において使用されている。しかし、これらの樹脂は、カルボキシル基などの、化学的に反応性に富む官能基を有さないことから、他のフィルムと密着性良く貼り合わせることやオーバーコートなどの二次加工が困難であるという問題がある。
【0003】
このような問題を解消するために、コロナ放電処理やプラズマ処理などによる表面改質が提案されている(特許文献1、2参照)。しかし、これらの処理方法による表面改質においては、その改質効果を長期間にわたって高く維持することが困難であり、処理後の日数経過により表面改質効果が低下していく問題があった。このため、次工程での加工方法や加工日程などが制限される一因となっている。
【0004】
そこで、長期にわたって表面改質効果、具体的には、他の物質との高い密着性を維持するポリオレフィンフィルムを提供する技術として、ポリオレフィンフィルムの表面をコロナ放電処理および/または紫外線照射処理した後にオキサゾリン系の共重合体により表面改質層を形成させる技術が報告されている(特許文献3参照)。
【0005】
しかしながら、この技術においては、コロナ放電処理などに加えて、さらに特定の重合体による表面改質層を形成させなければならないため、表面改質処理の簡便性に欠けるとともに、用いる特定の共重合体の組成を厳密に制御しなければ均一な表面改質層を形成できないという問題がある。
【特許文献1】特開平9−127332号公報
【特許文献2】特開2002−082223号公報
【特許文献3】特開2000−159915号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、長期にわたって表面改質効果、特に、他の物質(例えば、樹脂フィルム)との接着性や、オーバーコートの容易性を、簡便に且つ高く維持できる表面改質フィルムとその用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
フィルム基材の少なくとも片面が改質処理されてなり、当該改質面がポリエステル系フィルムで覆われてなる、表面改質フィルム。
【0008】
好ましい実施形態においては、前記表面改質フィルムを25℃で2日間保存した後における前記改質面の表面自由エネルギーの水素結合成分(γh)が3mN/m以上である。
【0009】
好ましい実施形態においては、前記改質処理が、コロナ放電処理および/または紫外線照射処理である。
【0010】
好ましい実施形態においては、前記フィルム基材が、透明樹脂フィルムである。さらに好ましい実施形態においては、前記透明樹脂フィルムが、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、および、(A)側鎖に置換または無置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と(B)側鎖に置換または無置換フェニル基とニトリル基を有する熱可塑性樹脂とを含有する樹脂組成物から選ばれる少なくとも1種からなるフィルムである。
【0011】
好ましい実施形態においては、前記表面改質フィルムが、ロール状で保存されてなる。
【0012】
好ましい実施形態においては、前記表面改質フィルムが、偏光子保護フィルムである。
【0013】
本発明の別の局面によれば、偏光板が提供される。この偏光板は、前記偏光子保護フィルムである表面改質フィルムの改質面が、接着層を介して、偏光子の少なくとも片面に貼り合わされてなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、長期にわたって表面改質効果、特に、他の物質(例えば、樹脂フィルム)との接着性や、オーバーコートの容易性を、簡便に且つ高く維持できる表面改質フィルムを提供することができる。また、その用途、具体的には偏光板を提供することができる。そして、少なくとも片面が改質処理されてなるフィルム基材の当該改質面をポリエステル系フィルムで覆うという極めて簡便な方法によって、例えばロール状で保存した場合においても、長期にわたって表面改質効果を高く維持できるという、予期せぬ優れた効果を発揮させることができる。これまでは、ロール状で長期にわたって保存した表面改質フィルムは表面改質効果が低下してしまい、例えば、偏光子保護フィルムとして偏光板の製造に用いる場合に、接着性が低下する等の問題があったが、本発明によればこのような問題が解決された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0016】
本発明にかかる表面改質フィルムは、フィルム基材の少なくとも片面が改質処理されてなり、当該改質面がポリエステル系フィルムで覆われてなる。
【0017】
フィルム基材としては、特に限定されないが、光学用途に適用する場合等を考慮すると、透明なフィルム基材が好ましく、透明樹脂フィルムがより好ましい。
【0018】
透明樹脂フィルムとしては、特に限定されないが、本発明の効果を一層発揮させるためには、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂および、(A)側鎖に置換または無置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と(B)側鎖に置換または無置換フェニル基とニトリル基を有する熱可塑性樹脂とを含有する樹脂組成物から選ばれる少なくとも1種からなるフィルムであることが好ましい。
【0019】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイソブチレン樹脂、エチレン/α−オレフィン共重合体系樹脂、環状オレフィン系樹脂などが挙げられ、これらの1種のみ用いても良いし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
上記のポリオレフィン系樹脂の中でも、耐湿熱性に優れる等の理由から、環状オレフィン系樹脂が好ましい。環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報等に記載されている樹脂が挙げられる。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとの共重合体(代表的には、ランダム共重合体)、および、これらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト変性体、ならびに、それらの水素化物が挙げられる。環状オレフィンの具体例としては、ノルボルネン系モノマーが挙げられる。
【0021】
上記ノルボルネン系モノマーとしては、例えば、ノルボルネン、およびそのアルキルおよび/またはアルキリデン置換体、例えば、5−メチル−2−ノルボルネン、5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等、これらのハロゲン等の極性基置換体;ジシクロペンタジエン、2,3−ジヒドロジシクロペンタジエン等;ジメタノオクタヒドロナフタレン、そのアルキルおよび/またはアルキリデン置換体、およびハロゲン等の極性基置換体、例えば、6−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチリデン−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−クロロ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−シアノ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−ピリジル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−メトキシカルボニル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン等;シクロペンタジエンの3〜4量体、例えば、4,9:5,8−ジメタノ−3a,4,4a,5,8,8a,9,9a−オクタヒドロ−1H−ベンゾインデン、4,11:5,10:6,9−トリメタノ−3a,4,4a,5,5a,6,9,9a,10,10a,11,11a−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタアントラセン等が挙げられる。
【0022】
本発明の目的を損なわない範囲内において、環状オレフィンとして開環重合可能な他のシクロオレフィン類を併用することができる。このようなシクロオレフィンの具体例としては、例えば、シクロペンテン、シクロオクテン、5,6−ジヒドロジシクロペンタジエン等の反応性の二重結合を1個有する化合物が挙げられる。
【0023】
環状オレフィン系樹脂は、トルエン溶媒によるゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法で測定した数平均分子量(Mn)が好ましくは25,000〜200,000、さらに好ましくは30,000〜100,000、最も好ましくは40,000〜80,000である。数平均分子量が上記の範囲であれば、機械的強度に優れ、溶解性、成形性、操作性が良いものができる。
【0024】
環状オレフィン系樹脂がノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加して得られるものである場合には、水素添加率は、好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは95%以上であり、最も好ましくは99%以上である。このような範囲であれば、耐熱劣化性および耐光劣化性などに優れる。
【0025】
上記環状オレフィン系樹脂は、種々の製品が市販されている。具体例としては、日本ゼオン社製の商品名ゼオネックス、ゼオノア、JSR社製のアートン、TICONA社製のトーパスが挙げられる。
【0026】
ポリカーボネート系樹脂としては、例えば、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)をベースとする芳香族ポリカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートなどの脂肪族ポリカーボネートなどが挙げられ、これらの1種のみ用いても良いし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
(A)側鎖に置換または無置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と(B)側鎖に置換または無置換フェニル基とニトリル基を有する熱可塑性樹脂とを含有する樹脂組成物としては、例えば、特開2001−343529号公報に記載の高分子フィルムが挙げられ、具体例としては、イソブチレンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物から形成されるフィルムが挙げられる。
【0028】
本発明において用いうるフィルム基材、好ましくは透明樹脂フィルムの厚みは、代表的には500μm以下であり、好ましくは1〜300μmであり、さらに好ましくは5〜200μmである。
【0029】
本発明において用いうるフィルム基材の製造方法は、特に限定されないが、フィルム基材となる原料、好ましくは前述の透明樹脂フィルムとなる原料樹脂を押出機で押し出してフィルムを押出成形する方法が好ましい。押出成形としては、任意の適切な方法が採用され得る。押出機の形式としては、任意の適切な形式が採用され得る。例えば、単軸スクリュータイプの押出機を用いてもよく、2軸スクリュータイプの押出機を用いてもよい。押出機の設定温度(溶融温度)、混練時間、スクリュー速度等は、使用される原料樹脂の種類等に応じて適宜設定され得る。例えば、原料樹脂の溶融温度は、代表的には240〜300℃であり、好ましくは260〜280℃である。必要に応じて、原料樹脂に任意の適切な添加剤(例えば、可塑剤、酸化防止剤)が添加され得る。さらに、原料樹脂には、必要に応じて、粘着付与剤(例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂)、紫外線吸収剤、耐熱安定剤等が添加され得る。押出機にて溶融された原料樹脂は、Tダイから押し出されて冷却(例えば、水冷)して引き取ることにより、フィルムとなる。Tダイの温度もまた、使用される原料樹脂の種類等に応じて適宜設定され得る。Tダイ温度は、代表的には240〜300℃であり、好ましくは260〜280℃である。フィルムの厚みは、Tダイのクリアランスを調整することにより、適切に制御され得る。
【0030】
本発明にかかる表面改質フィルムは、上述のフィルム基材の少なくとも片面が改質処理されてなる。改質処理としては、本発明の表面改質フィルムの表面自由エネルギーを調整するための表面活性化処理であれば、特に限定されないが、例えば、コロナ放電処理、紫外線照射処理、プラズマ処理、レーザー処理、 火炎処理、高周波処理、グロー放電処理、オゾン酸化処理などが挙げられ、表面自由エネルギーの水素結合成分(γh)を高くできる点で、好ましくは、コロナ放電処理および/または紫外線照射処理である。
【0031】
本発明にかかる表面改質フィルムは、上述のフィルム基材の少なくとも片面、好ましくは改質面に易接着処理層を有していても良い。易接着処理層は、反応性官能基を有するシランを含むことが好ましい。このような易接着処理層を設けることにより、表面改質フィルムの接着性が顕著に改善され得る。反応性官能基を有するシランの具体例としては、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン等のイソシアネート基含有アルコキシシラン類;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビニルベンジル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基含有アルコキシシラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプト基含有アルコキシシラン類;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有アルコキシシラン類;β−カルボキシエチルトリエトキシシラン、β−カルボキシエチルフェニルビス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−β−(カルボキシメチル)アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のカルボキシ含有アルコキシシラン類;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクロイルオキシプロピルメチルトリエトキシシラン等のビニル型不飽和基含有アルコキシシラン類;γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等のハロゲン基含有アルコキシシラン類;トリス(トリメトキシシリル)イソシアヌレート等のイソシアヌレート基含有アルコキシシラン類、アミノ変性シリルポリマー、シリル化アミノポリマー、不飽和アミノシラン錯体、フェニルアミノ長鎖アルキルシラン、アミノシリル化シリコーン、シリル化ポリエステル、およびこれらの誘導体等が挙げられる。
【0032】
上記シランは、表面改質フィルムの種類、表面改質フィルムの接着に用いる接着剤の種類等に応じて適宜選択され得る。例えば、接着剤としてPVA系の水系接着剤を用いる場合には、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビニルベンジル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基含有アルコキシシラン類が好ましい。光線透過率、濡れ性および接着強度が良好な易接着処理層を形成しやすいからである。中でも、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシランが好ましい。特に優れた接着強度を有する易接着処理層を形成しやすいからである。
【0033】
易接着処理層の厚みは1〜100nmであり、好ましくは1〜50nmであり、さらに好ましくは10〜50nmである。易接着処理層の厚みを100nm以下とすることにより、得られる表面改質フィルムを用いた偏光板を高温・高湿下で使用した場合であっても、色抜け、浮き、ムラおよびスジが生じない。
【0034】
本発明にかかる表面改質フィルムは、上記改質処理による当該改質面がポリエステル系フィルムで覆われてなる。
【0035】
ポリエステル系フィルムとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルムなどが挙げられるが、本発明の効果を一層発揮させるためには、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである。
【0036】
ポリエステル系フィルムの厚みは、特に限定されないが、好ましくは10〜300μmであり、さらに好ましくは、30〜150μmである。ポリエステル系フィルムの厚みをこの範囲に設定することによって、本発明の効果がより一層発揮されることになる。
【0037】
上記改質処理による当該改質面をポリエステル系フィルムで覆う形態としては、特に限定されず、例えば、平面状態において2種のフィルム(表面改質フィルムとポリエステル系フィルム)を積層させる形態でも良いし、2種のフィルム(表面改質フィルムとポリエステル系フィルム)を積層させたものをロール状に巻き取った形態でも良い。保存のし易さ、製造のし易さ、特に高い製造効率の面などから、好ましくはロール状に巻き取った形態である。ロール状に巻き取った形態の場合、上記改質処理されたフィルムの少なくとも片面に接着層(易接着処理層)を形成した後、その接着層(易接着処理層)の反対側にポリエステル系フィルムを貼り付けてロール状に巻き取っても良いし、接着層(易接着処理層)面に合い紙として挟み込んでロール状に巻き取っても良い。
【0038】
このように、少なくとも片面が改質処理されてなるフィルム基材の当該改質面をポリエステル系フィルムで覆うことによって、極めて簡便に、本発明の効果が発揮させることができ、長期にわたって表面改質効果、特に、他の物質(例えば、樹脂フィルム)との接着性やオーバーコートの容易性を高く維持できる。
【0039】
本発明においては、(1)上記改質面の表面自由エネルギーの水素結合成分(γh)が長期にわたって3mN/m以上であること、(2)上記改質面の表面自由エネルギーの水素結合成分(γh)が25℃で2日間保存した後であっても高く維持できること、(3)上記改質面の表面自由エネルギーの水素結合成分(γh)が25℃で30日間保存した後であっても高く維持できること、が好ましい。その結果、長期にわたって表面改質効果、特に、他の物質(例えば、樹脂フィルム)との接着性やオーバーコートの容易性を高く維持できる。
【0040】
上記(1)の場合、表面改質フィルムを25℃で2日間保存した後における上記改質面の表面自由エネルギーの水素結合成分(γh)が3mN/m以上であることが好ましい。より好ましくは、25℃で5日間保存した後における上記改質面の表面自由エネルギーの水素結合成分(γh)が3mN/m以上であり、さらに好ましくは、25℃で10日間保存した後における上記改質面の表面自由エネルギーの水素結合成分(γh)が3mN/m以上であり、特に好ましくは、25℃で30日間保存した後における上記改質面の表面自由エネルギーの水素結合成分(γh)が3mN/m以上である。
【0041】
上記(2)の場合、25℃で2日間保存した後における上記改質面の表面自由エネルギーの水素結合成分(γh)が5mN/m以上であることが好ましく、さらに好ましくは、25℃で2日間保存した後における上記改質面の表面自由エネルギーの水素結合成分(γh)が7mN/m以上であり、特に好ましくは、25℃で2日間保存した後における上記改質面の表面自由エネルギーの水素結合成分(γh)が10mN/m以上である。
【0042】
上記(3)の場合、25℃で30日間保存した後における上記改質面の表面自由エネルギーの水素結合成分(γh)が5mN/m以上であることが好ましく、さらに好ましくは、25℃で30日間保存した後における上記改質面の表面自由エネルギーの水素結合成分(γh)が7mN/m以上であり、特に好ましくは、25℃で30日間保存した後における上記改質面の表面自由エネルギーの水素結合成分(γh)が10mN/m以上である。
【0043】
本発明の表面改質フィルムの厚みは、フィルム基材とポリエステル系フィルムを含めた厚みとして、好ましくは11〜800μm、より好ましくは15〜500μm、さらに好ましくは35〜350μmである。表面改質フィルムの厚みをこの範囲に設定することにより、本発明の効果がより一層発揮されることになる。特に、ロール状で保存する場合にその効果は顕著に発揮される。
【0044】
本発明の表面改質フィルムは、上記するような特徴を有するため、各種の用途に用いることができる。例えば、光学フィルム、包装用フィルムが挙げられるが、フィルム基材が透明樹脂フィルムである場合等には光学用途が好ましく、特に好ましくは、偏光子保護フィルムとしての使用である。
【0045】
偏光子保護フィルムにおいては、偏光子との接着性を長期にわたって良好に維持することが重要な課題のひとつであり、本発明の表面改質フィルムの特徴が有効に活用できる。
【0046】
偏光子としては、本発明の効果を損なわない範囲において任意の適切な偏光子が採用され得る。偏光子としては、通常、ポリマーフィルムを二色性物質(代表的には、ヨウ素、二色性染料)で染色して一軸延伸したものが用いられる。偏光子を形成するポリマーフィルムとしては、任意の適切なポリマーフィルムが使用され得る。ポリマーフィルムの代表例としては、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)系フィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムが挙げられる。PVA系フィルムが好ましい。二色性物質による染色性に優れるからである。ポリマーフィルムを構成するポリマーの重合度は、好ましくは100〜5000、さらに好ましくは1400〜4000である。偏光子を構成するポリマーフィルムは、任意の適切な方法(例えば、樹脂を水または有機溶媒に溶解した溶液を流延成膜する流延法、キャスト法、押出法)で成形され得る。偏光子の厚みは、偏光板が用いられるLCDの目的や用途に応じて適宜設定され得るが、代表的には5〜80μmである。
【0047】
偏光子の製造方法としては、目的、使用材料および条件等に応じて任意の適切な方法が採用され得る。代表的には、上記ポリマーフィルム(例えば、PVA系フィルム)を、膨潤、染色、架橋、延伸、水洗、および乾燥工程からなる一連の製造工程に供する方法が採用される。乾燥工程を除く各処理工程においては、それぞれの工程に用いられる溶液を含む浴中にポリマーフィルムを浸漬することにより処理を行う。膨潤、染色、架橋、延伸、水洗、および乾燥の各処理の順番、回数および実施の有無は、目的、使用材料および条件等に応じて適宜設定され得る。例えば、いくつかの処理を1つの工程で同時に行ってもよく、特定の処理を省略してもよい。より詳細には、例えば延伸処理は、染色処理の後に行ってもよく、染色処理の前に行ってもよく、膨潤処理、染色処理および架橋処理と同時に行ってもよい。また例えば、架橋処理を延伸処理の前後に行うことが、好適に採用され得る。また例えば、水洗処理は、すべての処理の後に行ってもよく、特定の処理の後のみに行ってもよい。
【0048】
膨潤工程は、代表的には、上記ポリマーフィルムを水で満たした処理浴(膨潤浴)中に浸漬することにより行われる。この処理により、ポリマーフィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄するとともに、ポリマーフィルムを膨潤させることで染色ムラ等の不均一性を防止し得る。膨潤浴には、グリセリンやヨウ化カリウム等が適宜添加され得る。膨潤浴の温度は、代表的には20〜60℃程度であり、膨潤浴への浸漬時間は、代表的には0.1〜10分程度である。
【0049】
染色工程は、代表的には、上記ポリマーフィルムを、ヨウ素等の二色性物質を含む処理浴(染色浴)中に浸漬することにより行われる。染色浴の溶液に用いられる溶媒は、水が一般的に使用されるが、水と相溶性を有する有機溶媒が適量添加されていてもよい。二色性物質は、溶媒100重量部に対して、代表的には0.1〜1.0重量部の割合で用いられる。二色性物質としてヨウ素を用いる場合には、染色浴の溶液は、ヨウ化物等の助剤をさらに含有することが好ましい。染色効率が改善されるからである。助剤は、溶媒100重量部に対して、好ましくは0.02〜20重量部、さらに好ましくは2〜10重量部の割合で用いられる。ヨウ化物の具体例としては、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタンが挙げられる。染色浴の温度は、代表的には20〜70℃程度であり、染色浴への浸漬時間は、代表的には1〜20分程度である。
【0050】
架橋工程は、代表的には、上記染色処理されたポリマーフィルムを、架橋剤を含む処理浴(架橋浴)中に浸漬することにより行われる。架橋剤としては、任意の適切な架橋剤が採用され得る。架橋剤の具体例としては、ホウ酸、ホウ砂等のホウ素化合物、グリオキザール、グルタルアルデヒド等が挙げられる。これらは、単独で、または組み合わせて使用され得る。架橋浴の溶液に用いられる溶媒は、水が一般的に使用されるが、水と相溶性を有する有機溶媒が適量添加されていてもよい。架橋剤は、溶媒100重量部に対して、代表的には1〜10重量部の割合で用いられる。架橋剤の濃度が1重量部未満の場合には、十分な光学特性を得ることができない場合が多い。架橋剤の濃度が10重量部を超える場合には、延伸時にフィルムに発生する延伸力が大きくなり、得られる偏光板が収縮してしまう場合がある。架橋浴の溶液は、ヨウ化物等の助剤をさらに含有することが好ましい。面内に均一な特性が得られやすいからである。助剤の濃度は、好ましくは0.05〜15重量%、さらに好ましくは0.5〜8重量%である。ヨウ化物の具体例は、染色工程の場合と同様である。架橋浴の温度は、代表的には20〜70℃程度、好ましくは40〜60℃である。架橋浴への浸漬時間は、代表的には1秒〜15分程度、好ましくは5秒〜10分である。
【0051】
延伸工程は、上記のように、いずれの段階で行ってもよい。具体的には、染色処理の後に行ってもよく、染色処理の前に行ってもよく、膨潤処理、染色処理および架橋処理と同時に行ってもよく、架橋処理の後に行ってもよい。ポリマーフィルムの累積延伸倍率は、5倍以上にすることが必要であり、好ましくは5〜7倍、さらに好ましくは5〜6.5倍である。累積延伸倍率が5倍未満である場合には、高偏光度の偏光板を得ることが困難となる場合がある。累積延伸倍率が7倍を超える場合には、ポリマーフィルム(偏光子)が破断しやすくなる場合がある。延伸の具体的な方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、湿式延伸法を採用した場合には、ポリマーフィルムを、処理浴(延伸浴)中で所定の倍率に延伸する。延伸浴の溶液としては、水または有機溶媒(例えば、エタノール)などの溶媒中に、各種金属塩、ヨウ素、ホウ素または亜鉛の化合物を添加した溶液が好適に用いられる。
【0052】
水洗工程は、代表的には、上記各種処理を施されたポリマーフィルムを、処理浴(水洗浴)中に浸漬することにより行われる。水洗工程により、ポリマーフィルムの不要残存物を洗い流すことができる。水洗浴は、純水であってもよく、ヨウ化物(例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム)の水溶液であってもよい。ヨウ化物水溶液の濃度は、好ましくは0.1〜10質量%である。ヨウ化物水溶液には、硫酸亜鉛、塩化亜鉛などの助剤を添加してもよい。水洗浴の温度は、好ましくは10〜60℃、さらに好ましくは30〜40℃である。浸漬時間は、代表的には1秒〜1分である。水洗工程は1回だけ行ってもよく、必要に応じて複数回行ってもよい。複数回実施する場合、各処理に用いられる水洗浴に含まれる添加剤の種類や濃度は適宜調整され得る。例えば、水洗工程は、ポリマーフィルムをヨウ化カリウム水溶液(0.1〜10質量%、10〜60℃)に1秒〜1分浸漬する工程と、純水ですすぐ工程とを含む。
【0053】
乾燥工程としては、任意の適切な乾燥方法(例えば、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥)が採用され得る。例えば、加熱乾燥の場合には、乾燥温度は代表的には20〜80℃であり、乾燥時間は代表的には1〜10分である。以上のようにして、偏光子が得られる。
【0054】
本発明の表面改質フィルムを偏光子保護フィルムとして用いる場合、表面改質フィルムからポリエステル系フィルムを剥離し、表面に露出した改質面を、接着層を介して、偏光子の少なくとも片面に貼り合わせることにより、本発明にかかる偏光板を提供することができる。
【0055】
図1は、本発明にかかる偏光板の好ましい実施形態を説明する概略断面図である。偏光板30は、偏光子31と、偏光子31の一方に接着剤層32を介して貼り合わされた偏光子保護フィルム33とを有する。偏光子保護フィルム33は、本発明の表面改質フィルムを偏光子保護フィルムとして用いたものである。実用的には、偏光板30は、偏光子31の偏光子保護フィルム33と反対の側にも、接着剤層34を介して貼り合わされた第2の偏光子保護フィルム35を有する。第2の偏光子保護フィルム35は、本発明の表面改質フィルムを偏光子保護フィルムとして用いたものであってもよく(すなわち、偏光子保護フィルム33と同一であってもよく)、任意の適切な別の保護フィルムであってもよい。
【0056】
第2の偏光子保護フィルム35として偏光子保護フィルム33とは別の偏光子保護フィルムを用いる場合には、当該第2の偏光子保護フィルム35を構成する材料の具体例としては、セルロース系ポリマー(例えば、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース)、アクリル系ポリマー(例えば、ポリメチルメタクリレート)、スチレン系ポリマー(例えば、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂))、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーが挙げられる。これらは、単独で、または2種以上を組み合わせて用いられ得る。さらに、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型または紫外線硬化型樹脂をフィルム化したものも使用可能である。
【0057】
第2の偏光子保護フィルム35の厚みは、代表的には500μm以下であり、好ましくは1〜300μmであり、さらに好ましくは5〜200μmである。
【0058】
上記偏光子保護フィルム33および35の偏光子を貼り合わせない面には、必要に応じて、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理や、拡散処理(アンチグレア処理ともいう)が施され得る。上記ハードコート処理は偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、任意の適切な紫外線硬化型樹脂(例えば、アクリル系、シリコーン系)による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を保護フィルムの表面に形成することにより行われる。上記反射防止処理は偏光板表面での外光の反射防止を目的に施される。上記スティッキング防止処理は隣接層との密着防止を目的に施される。上記アンチグレア処理は偏光板の表面で外光が反射して偏光板透過光の視認を阻害することの防止等を目的に施されるものであり、任意の適切な方式(例えば、サンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式、透明微粒子の配合方式)にて透明保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより行われる。アンチグレア層(アンチグレア処理により形成される層)は、偏光板透過光を拡散して視角などを拡大するための拡散層(視角拡大機能など)を兼ねるものであってもよい。
【0059】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例には限定されない。なお、特に示さない限り、実施例中の部およびパーセントは重量基準である。実施例における評価項目は以下の通りである。
【0060】
〈フィルム改質方法〉
フィルム表面にコロナ放電処理を施し、表面改質フィルムを得た。
放電量:133W・min/m
放電電力:2.0W
放電電極長:1.4m
シート処理速度:7m/分
シート/電極間距離:2mm
【0061】
〈表面自由エネルギーの水素結合成分(γh)測定方法〉
自動接触角計(CA−V型、協和界面科学株式会社製)を用いて、蒸留水、ジヨードメタン、1−ブロモナフタレンをフィルムに滴下し、1秒後の接触角を測定することにより接触角を求め、それから表面自由エネルギーの水素結合成分(γh)を算出した。算出は、例えば、「奈良県工業技術センター 研究報告 No.26、2000」の第1頁右下〜第2頁に記載の方法に従って行えばよい。
【0062】
〈表面改質フィルムの保存方法〉
コロナ放電処理を行ったフィルム面に、ポリエステル系フィルムの粘着剤面と反対側を合わせて、20cm×20cmの平らな板で挟み、10kgの重しをして保存した。
【0063】
〔実施例1〕
ポリオレフィン系フィルム(商品名:ゼオノア、日本ゼオン株式会社製)にコロナ処理を施し、コロナ処理面に、PETフィルム(商品名:ルミラー#S27、東レ株式会社製)を接触させ、ロール状に巻き取って保存した。
保存直後と保存から30日後の表面自由エネルギーの水素結合成分(γh)を測定した。
結果を表1に示す。
【0064】
〔実施例2〕
ポリカーボネート系フィルム(商品名:R−フィルム、カネカ製)にコロナ処理を施し、コロナ処理面に、PETフィルム(商品名:ルミラー#S27、東レ株式会社製)を接触させ、ロール状に巻き取って保存した。
保存直後と保存から30日後の表面自由エネルギーの水素結合成分(γh)を測定した。
結果を表1に示す。
【0065】
〔比較例1〕
ポリオレフィン系フィルム(商品名:ゼオノア、日本ゼオン株式会社製)にコロナ処理を施し、コロナ処理面の反対側の面に、プロテクトテープ(型番:6221F、積水化学工業株式会社製)を貼り付け、ロール状に巻き取ることにより、プロテクトテープの背面がコロナ処理面に接触するように保存した。
保存直後と保存から30日後の表面自由エネルギーの水素結合成分(γh)を測定した。
結果を表1に示す。
【0066】
〔比較例2〕
ポリカーボネート系フィルム(商品名:R−フィルム、カネカ製)にコロナ処理を施し、コロナ処理面の反対側の面に、プロテクトテープ(型番:6221F、積水化学工業株式会社製)を貼り付け、ロール状に巻き取ることにより、プロテクトテープの背面がコロナ処理面に接触するように保存した。
保存直後と保存から30日後の表面自由エネルギーの水素結合成分(γh)を測定した。
結果を表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
表1から明らかなように、本発明によれば、長期にわたって表面改質効果を、簡便に且つ高く維持できる表面改質フィルムを提供することができる。
【0069】
〔実施例3〕
偏光子保護フィルムとして、ポリオレフィン系フィルム(商品名:ゼオノア、日本ゼオン株式会社製)にコロナ処理を施し、易接着処理層を塗工して易接着処理面とした。易接着処理層は、日本ユニカー株式会社製のAPZ6601をコロナ処理面に塗工し、加熱して溶剤を気化させた。易接着処理面に、PETフィルム(商品名:ルミラー#S27、東レ株式会社製)を接触させ、ロール状に巻き取って保存した。
保存直後、保存から2日後、保存から11日後の表面自由エネルギーの水素結合成分(γh)を測定した。
結果を表2に示す。
また、保存から11日後において、偏光子と偏光子保護フィルムを用いて偏光板を作製したところ、偏光子と偏光子保護フィルムとの接着性は良好であった。
【0070】
〔実施例4〕
実施例3と同様にして易接着処理面を有する偏光子保護フィルムを作製した。
易接着処理面の反対側の面に、PETフィルム(商品名:PPF108T、日東電工株式会社製)を貼り付け、ロール状に巻き取って保存した。
保存直後、保存から2日後、保存から11日後の表面自由エネルギーの水素結合成分(γh)を測定した。
結果を表2に示す。
また、保存から11日後において、偏光子と偏光子保護フィルムを用いて偏光板を作成したところ、偏光子と偏光子保護フィルムとの接着性は良好であった。
【0071】
〔比較例3〕
実施例3と同様にして易接着処理面を有する偏光子保護フィルムを作製した。
易接着処理面の反対側の面に、ポリオレフィン系表面保護フィルム(商品名:トレテック7412、東レ合成フィルム株式会社製)を貼り付け、ロール状に巻き取って保存した。
保存直後、保存から2日後、保存から11日後の表面自由エネルギーの水素結合成分(γh)を測定した。
結果を表2に示す。
また、保存から2日後において、偏光子と偏光子保護フィルムを用いて偏光板を作成したところ、偏光子と偏光子保護フィルムとは接着しなかった。
【0072】
〔比較例4〕
実施例3と同様にして易接着処理面を有する偏光子保護フィルムを作製した。
易接着処理面の反対側の面に、ポリオレフィン系表面保護フィルム(商品名:サニテクトPAC3、サンエー化研株式会社製)を貼り付け、ロール状に巻き取って保存した。
保存直後、保存から2日後、保存から11日後の表面自由エネルギーの水素結合成分(γh)を測定した。
結果を表2に示す。
また、保存から2日後において、偏光子と偏光子保護フィルムを用いて偏光板を作成したところ、偏光子と偏光子保護フィルムとは接着しなかった。
【0073】
【表2】

【0074】
表2から明らかなように、本発明によれば、偏光子との接着性が良好な偏光子保護フィルムの表面状態を長期にわたって維持することができ、耐久性にすぐれた偏光板を提供することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の表面改質フィルムは、光学用途、特に、偏光子保護フィルムに好適であり、偏光子と組み合わせることで偏光板とすることもでき、これらは液晶表示装置(LCD)や自発光型表示装置などの画像表示装置にも好適に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の好ましい実施形態による偏光板の概略断面図である。
【図2】実施例3、4、比較例3、4における、表面自由エネルギーの水素結合成分(γh)の経時変化を示す図である。
【符号の説明】
【0077】
30 偏光板
31 偏光子
32 接着剤層
33 偏光子保護フィルム
34 接着剤層
35 第2の偏光子保護フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム基材の少なくとも片面が改質処理されてなり、当該改質面がポリエステル系フィルムで覆われてなる、表面改質フィルム。
【請求項2】
前記表面改質フィルムを25℃で2日間保存した後における前記改質面の表面自由エネルギーの水素結合成分(γh)が3mN/m以上である、請求項1に記載の表面改質フィルム。
【請求項3】
前記改質処理が、コロナ放電処理および/または紫外線照射処理である、請求項1または2に記載の表面改質フィルム。
【請求項4】
前記フィルム基材が、透明樹脂フィルムである、請求項1から3までのいずれかに記載の表面改質フィルム。
【請求項5】
前記透明樹脂フィルムが、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、および、(A)側鎖に置換または無置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と(B)側鎖に置換または無置換フェニル基とニトリル基を有する熱可塑性樹脂とを含有する樹脂組成物から選ばれる少なくとも1種からなるフィルムである、請求項4に記載の表面改質フィルム。
【請求項6】
ロール状で保存されてなる、請求項1から5までのいずれかに記載の表面改質フィルム。
【請求項7】
前記表面改質フィルムが、偏光子保護フィルムである、請求項1から6までのいずれかに記載の表面改質フィルム。
【請求項8】
請求項7に記載の表面改質フィルムの改質面が、接着層を介して、偏光子の少なくとも片面に貼り合わされてなる、偏光板。




【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−193632(P2006−193632A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−7211(P2005−7211)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】