説明

表面検査装置の検査システム

【課題】従来よりもユーザに掛かる負担を軽減し、表面検査装置による検査作業の自動化及び省力化を促進させることが可能な表面検査装置の検査システムを提供する。
【解決手段】ヘッド本体16Aの先端に着脱可能に設けられ、かつミラー18が組み込まれる軸状の走査部16Bとを備えた検査ヘッド16を軸線AXの回りに回転させつつ軸線AXに沿って移動させ、検査ヘッド16内に軸線AXに沿って入射した検査光の光路をミラー18により変更してワークWに照射し、ワークWから検査ヘッド16に返される反射光の光量に基づいてワークWの表面を検査する表面検査装置1に適用され、検査ヘッド16の異常の有無を診断する検査システム100において、検査ヘッド16の異常の有無を診断する診断装置200と、診断装置200が検査ヘッド16に異常があると判断した場合に検査ヘッド16の走査部16Bを交換する交換装置300とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面検査装置の検査ヘッドの異常の有無を診断する検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
円筒状の被検査物の内周面を検査する装置として、中空軸状の検査ヘッドをその軸線の回りに回転させつつ軸線方向に送り出して被検査物の内部に検査ヘッドを挿入し、その検査ヘッドの外周から検査光としてのレーザ光を被検査物に照射してその被検査物の内周面をその軸線方向一端から他端まで逐次走査し、その走査に対応した被検査物からの反射光を検査ヘッドを介して受光し、その受光した反射光の光量に基づいて被検査物の内周面の状態、例えば欠陥等の有無を判別する表面検査装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−281582号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した表面検査装置においては、検査ヘッドの検査光を照射したり反射光を受光したりする部分が汚れると、検査光の光量が低下したり反射光の受光感度が変化して検査精度が低下する。しかしながら、従来の表面検査装置にはこのような異常の有無を自己診断する機能が設けられていないので、表面検査装置のユーザが自らの視覚等によって異常の有無を判別している。また、従来の表面検査装置では、このように異常が発生した場合、ユーザが部品の交換を行っている。そのため、ユーザに掛かる負担が大きい。
【0005】
そこで、本発明は、従来よりもユーザに掛かる負担を軽減し、表面検査装置による検査作業の自動化及び省力化を促進させることが可能な表面検査装置の検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の検査システムは、ヘッド本体(16A)と、前記ヘッド本体の先端に着脱可能に設けられ、かつ光路変更手段(18)が組み込まれる軸状の走査部(16B)とを備えた検査ヘッドを回転駆動手段(40)により軸線(AX)の回りに回転させつつ直線駆動手段(30)により前記軸線に沿って移動させるとともに、前記検査ヘッド内に前記軸線に沿って入射した検査光の光路を前記光路変更手段により変更し、該光路が変更された検査光を被検査物(W)に照射し、前記被検査物から前記検査ヘッドに返される反射光を受光し、該反射光の光量に基づいて前記被検査物の表面を検査する表面検査装置(1)に適用され、前記検査ヘッドの異常の有無を診断する検査システム(100)において、前記検査ヘッドの異常の有無を診断する診断装置(200)と、前記診断装置が前記検査ヘッドに異常があると判断した場合に前記検査ヘッドの前記走査部を交換する交換装置(300)と、を備えることにより、上述した課題を解決する。
【0007】
本発明の検査システムによれば、診断装置にて検査ヘッドの異常の有無を診断でき、また診断装置が検査ヘッドに異常があると判断した場合は交換装置にて走査部が交換されるので、従来よりもユーザに掛かる負担を軽減することができる。また、このように検査ヘッドの診断及び走査部の交換を装置で行うことにより、ユーザによる診断作業及び交換作業をそれぞれ低減、又は省略することができるので、表面検査装置による検査作業の自動化及び省力化を促進させることができる。
【0008】
本発明の検査システムの一形態においては、前記表面検査装置にて前記被検査物を検査する際の前記検査ヘッドの移動経路上に配置されるとともに内周面に疑似欠陥(220b〜220e)が設けられ、かつ前記検査ヘッドが通過可能な貫通孔(220a)を有するサンプルピース(220)をさらに備え、前記診断装置は、前記表面検査装置に前記サンプルピースの内周面を検査させた検査結果に基づいて前記検査ヘッドの異常の有無を診断してもよい。この場合、形状や大きさが既知の疑似欠陥を表面検査装置に検査させ、その検査結果と実際の疑似欠陥とを比較することにより、検査ヘッドに異常があるか否か診断することができる。
【0009】
この形態において、前記診断装置は、前記表面検査装置が前記被検査物を検査する毎に前記表面検査装置に前記サンプルピースの内周面を検査させて前記検査ヘッドの異常の有無を診断してもよい。このように被検査物を検査する毎に異常の有無の診断を行うことにより、検査ヘッドの異常を速やかに見つけることができる。そのため、表面検査装置の検査結果の信頼性を向上させることができる。
【0010】
本発明の検査システムの一形態においては、前記被検査物の検査対象部分に応じた形状に形成され、疑似欠陥が設けられるテスト検査部(233A、233B、233C)を有するテストピース(231A、231B、231C)と、前記表面検査装置を前記表面検査装置が前記被検査物の前記検査対象部分の検査を行うことが可能な検査位置(P1)と前記表面検査装置が前記テストピースの前記テスト検査部の検査を行うことが可能な診断位置(P2)とに駆動可能な移動手段(210)と、をさらに備え、前記診断装置は、所定の診断条件が成立した場合、前記表面検査装置が前記診断位置に駆動されるように前記移動手段を制御し、前記表面検査装置に前記テストピースを検査させ、その検査結果に基づいて前記検査ヘッドの異常の有無を診断してもよい。このような形状のテスト検査部を用いて検査ヘッドの異常の有無を診断することにより、この診断結果の信頼性を向上させることができる。
【0011】
この形態において、前記所定の診断条件は、前記表面検査装置にて前記被検査物を連続して所定数検査した場合に成立させてもよい。この場合、所定数を適切に設定することにより、表面検査装置を診断位置に移動させる回数を少なく抑えつつ異常の有無の診断結果の信頼性を向上させることができる。そのため、表面検査装置による検査効率を向上させることができる。
【0012】
また、前記テスト検査部と前記検査対象部分とは同じ形状であり、前記前記テスト検査部には、前記検査対象部分において欠陥が発生すると予想される位置と同じ位置に疑似欠陥が設けられていてもよい。被検査物において欠陥が発生する場所は、被検査物の加工方法又は検査対象部分の形状によって予想することができる。そのため、テスト検査部のこのような位置(以下、予想位置と称することがある。)に疑似欠陥を設け、表面検査装置がこの予想位置の疑似欠陥を検出可能か否か診断することにより、表面検査装置による被検査物の検査精度を向上させることができる。また、テストピースを使用した診断結果の信頼性をさらに向上させることができる。
【0013】
本発明の検査システムの一形態において、前記ヘッド本体の先端には、前記走査部を把持する把持状態と前記走査部を解放する解放状態とに切り替え可能なチャック機構(22)が設けられ、前記交換装置は、前記チャック機構の状態を前記把持状態及び前記解放状態に切り替え可能な操作機構(320)と、前記操作機構にて前記解放状態に切り替えられた前記チャック機構に対して前記走査部を保持して前記走査部の除去及び挿入を行う事が可能な走査部着脱機構(330)と、前記走査部着脱機構と前記走査部の受け渡しが可能であり、前記ヘッド本体から除去された走査部を前記走査部着脱機構から受け取るとともに交換用の走査部を前記走査部着脱機構に渡して保持させる走査部入れ替え機構(340)と、まず前記チャック機構が前記解放状態に切り替わるように前記操作機構を制御した後に前記チャック機構から前記走査部が除去されるように前記走査部着脱機構を制御し、次に前記走査部着脱機構が前記交換用の走査部を保持するように前記走査部入れ替え機構を制御し、その後前記交換用の走査部が前記チャック機構に挿入されるように前記走査部着脱機構を制御するとともに前記交換用の走査部が挿入された前記チャック機構が前記把持状態に切り替えられるように前記操作機構を制御する制御手段(400)と、を備えていてもよい。このように交換装置の各機構を制御することにより、走査部を交換することができる。
【0014】
本発明の検査システムの一形態において、前記チャック機構は、先端側から前記ヘッド本体内に押し込まれることにより前記解放状態に切り替わり、その押し込む力が除去されると前記把持状態に切り替わるチャック部材(23)を備え、前記操作機構は、前記チャック部材を前記ヘッド本体内に押し込むための治具(321)と、前記治具が前記チャック部材に当接するように前記治具を前記検査ヘッドの前方に配置させ、その状態で前記治具を前記検査ヘッドの軸線方向に移動させる治具移動手段(322、324)と、を備えてもよい。この場合、操作機構は、治具を検査ヘッドの前方に位置させる動作及び治具を検査ヘッドの軸線方向に移動させる動作のみでチャック機構の状態を把持状態及び解放状態に切り替えることができる。そのため、比較的簡素な構成で操作機構を設けることができる。
【0015】
なお、以上の説明では本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0016】
以上に説明したように、本発明の検査システムによれば、検査ヘッドの異常の有無を診断する診断装置、及び診断装置が検査ヘッドに異常があると判断した場合に走査部を交換する交換装置を備えるので、ユーザによる診断作業及び交換作業をそれぞれ低減、又は省略することができる。そのため、従来よりもユーザに掛かる負担を軽減することができる。また、表面検査装置による検査作業の自動化及び省力化を促進させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本発明の一形態に係る検査システムの概略構成を示している。検査システム100は、被検査物としてのワークWに設けられた円筒形の穴Hの内周面Fを検査する表面検査装置1の異常の有無を診断するシステムであり、表面検査装置1の検査ヘッド16の異常の有無を診断する診断装置200と、検査ヘッド16の走査部16Bを交換するための交換装置300とを備えている。
【0018】
表面検査装置1によるワークWの検査方法の概要について説明する。ワークWは、搬送装置101にて所定の搬送ライン上を搬送される。搬送装置101上においてワークWは、転倒防止治具102にて穴Hの開口部が上を向くように固定される。搬送ラインの上方には、検査ヘッド16の先端が下を向くように表面検査装置1が移動装置210に支持されている。そして、搬送ライン上には、表面検査装置1にて検査を行う際にワークWを停止させる検査位置Dが設定されている。搬送装置101は、搬送しているワークWが検査位置Dに到達した時点でその搬送を一時中止し、ワークWをその検査位置Dに一時停止させる。表面検査装置1は、検査位置Dに停止しているワークWの穴H内に検査ヘッド16を挿入して穴Hの内周面Fの検査を行う。この検査の詳細については後述する。表面検査装置1による検査の終了後、搬送装置101は検査が終了したワークWを検査位置Dから搬出するとともに次のワークWを検査位置Dに搬送する。以下、上述した動作が繰り返し行われ、これにより複数のワークWの検査が行われる。
【0019】
図2を参照して表面検査装置1について説明する。図2は表面検査装置1の概略構成を示している。表面検査装置1は、検査を実行するための検査機構2と、その検査機構2の動作制御、検査機構2による測定結果の処理等を実行するための制御部3とを備えている。さらに、検査機構2は、ワークWに対して検査光を投光し、かつワークWからの反射光を受光するための検出手段としての検出ユニット5と、その検出ユニット5に所定の動作を与えるための駆動ユニット6とを備えている。
【0020】
検出ユニット5は、検査光の光源としてのレーザダイオード(以下、LDと呼ぶ。)11と、ワークWからの反射光を受光し、その反射光の単位時間当りの光量(反射光強度)に応じた電流又は電圧の信号を出力するフォトディテクタ(以下、PDと呼ぶ。)12と、LD11から射出される検査光をワークWに向かって導く投光ファイバ13と、ワークWからの反射光をPD12に導くための受光ファイバ14と、それらのファイバ13、14を束ねた状態で保持する保持筒15と、その保持筒15の外側に同軸的に設けられる中空軸状の検査ヘッド16とを備えている。検査ヘッド16は保持筒15の外側に設けられるヘッド保持筒(不図示)に回転自在に支持されている。
【0021】
保持筒15の先端には、投光ファイバ13を介して導かれた検査光を検査ヘッド16の軸線AXの方向(以下、軸線方向と呼ぶ。)に沿ってビーム状に射出させ、かつ検査ヘッド16の軸線方向に沿って検査光とは逆向きに進む反射光を受光ファイバ14に集光するレンズ17が設けられている。検査ヘッド16の先端部(図1において右端部)には、光路変更手段としてのミラー18が固定され、検査ヘッド16の外周にはそのミラー18と対向するようにして透光窓16aが設けられている。ミラー18は、レンズ17から射出された検査光の光路を透光窓16aに向けて変更し、かつ、透光窓16aから検査ヘッド16内に入射した反射光の光路をレンズ17に向かって進む方向に変更する。
【0022】
駆動ユニット6は、直線駆動機構30と、回転駆動機構40と、焦点調節機構50とを備えている。直線駆動機構30は検査ヘッド16をその軸線方向に移動させる直線駆動手段として設けられている。そのような機能を実現するため、直線駆動機構30は、ベース31と、そのベース31に固定された一対のレール32と、レール32に沿って検査ヘッド16の軸線方向に移動可能なスライダ33と、そのスライダ33の側方に検査ヘッド16の軸線AXと平行に配置された送りねじ34と、その送りねじ34を回転駆動する電動モータ35とを備えている。スライダ33は検出ユニット5の全体を支持する手段として機能する。すなわち、LD11及びPD12はスライダ33に固定され、検査ヘッド16は回転駆動機構40を介してスライダ33に取り付けられ、保持筒15は焦点調節機構50を介してスライダ33に取り付けられている。さらに、スライダ33にはナット36が固定され、そのナット36には送りねじ34がねじ込まれている。従って、電動モータ35にて送りねじ34を回転駆動することにより、スライダ33がレール32に沿って検査ヘッド16の軸線方向に移動し、それに伴ってスライダ33に支持された検出ユニット5の全体が検査ヘッド16の軸線方向に移動する。直線駆動機構30を用いた検出ユニット5の駆動により、ワークWの内周面Fに対する検査光の照射位置(走査位置)を検査ヘッド16の軸線方向に関して変化させることができる。
【0023】
回転駆動機構40は検査ヘッド16を軸線AXの回りに回転させる回転駆動手段として設けられている。そのような機能を実現するため、回転駆動機構40は、回転駆動源としての電動モータ41と、その電動モータ41の回転を検査ヘッド16に伝達する伝達機構42とを備えている。伝達機構42には、ベルト伝達装置、歯車列等の公知の回転伝達機構を利用してよいが、この形態ではベルト伝達装置が利用される。電動モータ41の回転を伝達機構42を介して検査ヘッド16に伝達することにより、検査ヘッド16がその内部に固定された光路変更手段としてのミラー18を伴って軸線AXの回りに回転する。回転駆動機構40を用いた検査ヘッド16の回転により、ワークWの内周面Fに対する検査光の照射位置をワークWの周方向に関して変化させることができる。そして、検査ヘッド16の軸線方向への移動と軸線AXの回りの回転とを組み合わせることにより、ワークWの内周面Fをその全面に亘って検査光で走査することが可能となる。なお、検査ヘッド16の回転時において、保持筒15は回転しない。さらに、回転駆動機構40には、検査ヘッド16が所定の単位角度回転する毎にパルス信号を出力するロータリエンコーダ43が設けられている。ロータリエンコーダ43から出力されるパルス信号の個数は検査ヘッド16の回転量(回転角度)に相関し、そのパルス信号の周期は検査ヘッド16の回転速度に相関する。
【0024】
焦点調節機構50は、検査光がワークWの内周面Fにて焦点を結ぶように保持筒15を軸線AXの方向に駆動する焦点調整手段として設けられている。その機能を実現するため、焦点調節機構50は、保持筒15の基端部に固定された支持板51と、直線駆動機構30のスライダ33と支持板51との間に配置されて支持板51を検査ヘッド16の軸線方向に案内するレール52と、検査ヘッド16の軸線AXと平行に配置されて支持板51にねじ込まれた送りねじ53と、その送りねじ53を回転駆動する電動モータ54とを備えている。電動モータ54にて送りねじ53を回転駆動することにより、支持板51がレール52に沿って移動して保持筒15が検査ヘッド16の軸線方向に移動する。これにより、検査光がワークWの内周面F上で焦点を結ぶようにレンズ17からミラー18を経て内周面Fに至る光路の長さを調節することができる。
【0025】
次に制御部3について説明する。制御部3は、表面検査装置1による検査工程の管理、検出ユニット5の測定結果の処理等を実行するコンピュータユニットとしての演算処理部60と、その演算処理部60の指示に従って検出ユニット5の各部の動作を制御する動作制御部61と、PD12の出力信号に対して所定の処理を実行する信号処理部62と、演算処理部60に対してユーザが指示を入力するための入力部63と、演算処理部60が処理した検査結果等をユーザに提示するための出力部64と、演算処理部60にて実行すべきコンピュータプログラム、及び、測定されたデータ等を記憶する記憶部65とを備えている。演算処理部60、入力部63、出力部64及び記憶部65はパーソナルコンピュータ等の汎用コンピュータ機器を利用してこれらを構成することができる。この場合、入力部63にはキーボード、マウス等の入力機器が設けられ、出力部64にはモニタ装置が設けられる。プリンタ等の出力機器が出力部64に追加されてもよい。記憶部65には、ハードディスク記憶装置、あるいは記憶保持が可能な半導体記憶素子等の記憶装置が用いられる。動作制御部61及び信号処理部62はハードウエア制御回路によって実現されてもよいし、コンピュータユニットによって実現されてもよい。
【0026】
表面検査装置1によるワークWの検査方法の詳細を説明する。ワークWの内周面Fの表面を検査する場合、演算処理部60、動作制御部61及び信号処理部62のそれぞれは次の通り動作する。検査の開始にあたって、演算処理部60は入力部63からの指示に従って動作制御部61にワークWの内周面Fを検査するために必要な動作の開始を指示する。その指示を受けた動作制御部61は、LD11を所定の強度で発光させるとともに、検査ヘッド16が軸線方向に移動し、かつ軸線AXの回りに一定速度で回転するようにモータ35及び41の動作を制御する。さらに、動作制御部61は、検査光が被検査面としての内周面F上で焦点を結ぶようにモータ54の動作を制御する。このような動作制御により、内周面Fがその一端から他端まで検査光によって走査される。なお、検査ヘッド16の軸線方向の駆動に関しては、一定速度の送り動作としてもよいし、検査ヘッド16が一回転する毎に所定ピッチずつ移動する間欠的な送り動作としてもよい。
【0027】
上述した内周面Fの走査に連係して信号処理部62にはPD12の出力信号が順次導かれる。信号処理部62は、PD12の出力信号を演算処理部60にて処理するために必要なアナログ信号処理を実施し、さらに、その処理後のアナログ信号を所定のビット数でA/D変換し、得られたデジタル信号を反射光信号として演算処理部60に出力する。演算処理部60にて実行する信号処理としては、PD12が検出した反射光の明暗差を拡大するようにその出力信号を非線形に増幅する処理、出力信号からノイズ成分を除去する処理といった各種の処理を適宜に用いてよい。高速フーリエ変換処理、逆フーリエ変換処理等を適宜に組み合わせることも可能である。また、信号処理部62によるA/D変換は、ロータリエンコーダ43から出力されるパルス列をサンプリングクロック信号として利用して行われる。これにより、検査ヘッド16が所定角度回転する間のPD12の受光量に相関した階調のデジタル信号が生成されて信号処理部62から出力される。
【0028】
信号処理部62から反射光信号を受け取った演算処理部60は、その取り込んだ信号を記憶部65に記憶する。さらに、演算処理部60は、記憶部65が記憶する反射光信号を利用してワークWの内周面Fを平面的に展開した2次元画像を生成する。その2次元画像は、例えばワークWの周方向をx軸方向、検査ヘッド16の軸線方向をy軸方向とする直交2軸座標系で定義される平面上に内周面Fを展開した画像に相当する。なお、演算処理部60における2次元画像の生成時には、反射光信号から得られる原画像に対して、エッジ処理、二値化処理等を施すことにより、検出すべき欠陥等を強調した2次元画像を生成してもよい。そして、演算処理部60は、得られた画像を所定のアルゴリズムで処理することにより、内周面Fに許容限度を超える欠陥等が存在するか否か等を判定し、その判定結果を出力部64に出力する。
【0029】
図3を参照して検査ヘッド16の詳細について説明する。図3は、検査ヘッド16の先端部分の断面を拡大して示した図である。なお、図3において検査ヘッド16の右側が先端側、左側が基端側にそれぞれ対応する。検査ヘッド16は、保持筒15と検査ヘッド16との間に配置される不図示のヘッド保持筒にて回転可能に支持されるヘッド本体16Aと、ヘッド本体16Aの先端に着脱可能に設けられる走査部16Bとを備えている。ヘッド本体16Aの先端からは保持筒15に装着されるレンズパイプ15aが突出しており、図3に示したように走査部16Bはこのレンズパイプ15aに被せるようにヘッド本体16Aに装着される。
【0030】
走査部16Bは、ヘッド本体16Aに支持される支持部20と、ミラー18及び透光窓16aが設けられる光路変更部21とを備えている。支持部20及び光路変更部21は、それぞれ筒状であり、かつ同軸に設けられる。支持部20には、ヘッド本体16Aに挿入される側から順に所定の外径で形成される挿入部20aと、その挿入部20aよりも外径が大きい大径部20bとが設けられている。挿入部20aはヘッド本体16Aのチャック機構22にて把持される部分である。
【0031】
図3に示したようにヘッド本体16Aの先端には、走査部16Bの支持部20を把持するチャック機構22が設けられている。チャック機構22は、軸線方向に移動可能に設けられるチャック部材23と、チャック部材23とヘッド本体16Aとの間に設けられる拘束部材24と、チャック部材23をヘッド本体16Aの先端側(図3において右側)に付勢するスプリング25と、チャック部材23及び拘束部材24がスプリング25の付勢力によってヘッド本体16Aの先端から飛び出る事を防止するための押さえリング26とを備えている。チャック部材23及び拘束部材24としては、コレットチャックが設けられる。スプリング25は、チャック部材23を先端側(図3において右側)に付勢するようにある程度縮められた状態であり、かつチャック部材23が基端側(図3において左側)に押し込まれた際に縮むことが可能なように所定分の縮み代が設けられた状態で取り付けられる。スプリング25としては、例えばコイルバネ又は皿バネが使用される。
【0032】
図3に示したように拘束部材24の内周には、基端側(図2において左側)に向かうに従って内径が漸次増大するテーパ面24aが形成されている。チャック部23の外周には、拘束部材24のテーパ面24aと同一方向に傾斜してそのテーパ面24aと面接触するテーパ面23aが形成されている。また、チャック部材23の中心には、走査部16Bが挿入される挿入孔23bが貫通している。挿入孔23bの内径としては、例えば走査部16Bの挿入部20aの外径より若干大きく、かつ大径部20bの外径より小さい値が設定される。なお、挿入孔23bの内径としては、走査部16Bの挿入部20aの外径とほぼ同じ値が設定されてもよい。チャック部材23には先端側端部23cから複数のすり割り(不図示)が軸線方向に設けられている。そのため、チャック部材23がスプリング25によって拘束部材24の内部に押し込まれると楔作用によって軸線方向への運動が各テーパ面23a、24aによって半径方向中心側の運動に変換され、挿入孔23bの内径が小さくなる。
【0033】
チャック部材23に設けられるすり割りの大きさは、スプリング25によってチャック部材25が拘束部材24の内部に押し込まれたときにチャック部材23の先端側端部23cが拘束部材24の先端側端部24bよりも先端側に突出し、挿入孔23bの内径が走査部16Bの支持部20の外径よりも小さくなるように設定される。そのため、このように挿入孔23bの内径が縮められた際に挿入孔23bに走査部16Bが挿入されていれば、この走査部16Bをチャック部材23で掴んで拘束することができる。以降、この状態を拘束状態と称することがある。一方、チャック部材23の先端側端部23cと拘束部材24の先端側端部24bとが揃う位置、又はその位置よりも基端側(図3における左側)にチャック部材23を移動させると、チャック部材23に作用していた半径方向中心側への力が無くなるので、挿入孔23bの内径が元の大きさ、すなわち走査部16Bの支持部20の外径とほぼ同じ径に戻る。そのため、走査部16Bを容易に取り外したり、挿入したりすることができる。以降、この状態を解放状態と称することがある。
【0034】
拘束部材24にも、基端側端部から複数のすり割り(不図示)が軸線方向に設けられている。そのため、スプリング25によってチャック部材23が拘束部材24の内部に押し込まれると拘束部材24の外径が拡がる。これにより、拘束部材24の外周とヘッド本体16Aの内周とを密着させることができるので、チャック部材23に把持された走査部16Bをヘッド本体16Aとともに回転させることができる。一方、チャック部材23がヘッド本体16A内に押し込まれると拘束部材24に作用していた半径方向外周側への力が無くなるため、拘束部材24の外周がヘッド本体16Aの内周から離間する。
【0035】
図1に戻って検査システム100の説明を続ける。診断装置200は、表面検査装置1の異常の有無を診断する装置であり、表面検査装置1が搬送ライン上に設定された検査位置Dの上方に配置される検査位置P1と表面検査装置1が複数(図1では3個)のテストピース231A、231B、231Cを備えた検査テスト装置230の上方に配置される診断位置P2(図4参照)との間で移動ベース211を駆動する移動装置210と、移動ベース211の下端に表面検査装置1の検査ヘッド16と同軸に設けられるサンプルピース220と、移動ベース211が診断位置P2にあるときにいずれかのテストピース231A、231B、231Cが検査ヘッド16と同軸になるようにこれらテストピース231A、231B、231Cを支持する検査テスト装置230とを備えている。図4に移動ベース211を診断位置P2に移動させたときの検査システム100の状態を示す。検査位置P1としては、搬送ライン上に設定されたワークWの検査位置DにおけるワークWの穴Hの中心と検査ヘッド16の軸線AXとがほぼ同軸になる位置が設定される。
【0036】
移動装置210は、搬送装置101の搬送ラインと交差する方向に延び、移動ベース211を支持する一対のレール212と、移動ベース211をレール212に沿って移動させるアクチュエータ213とを備えている。移動ベース211は、一対のレール212に沿って移動可能なようにこれらのレール212にそれぞれ支持されている。表面検査装置1は移動ベース211上に軸線方向に移動可能に支持されており、移動ベース211には表面検査装置1を軸線方向に移動させるための駆動機構213が設けられている。駆動機構213は、表面検査装置1を前進端P3と後退端P4との間で移動させる。前進端P3としては、検査ヘッド16を移動ベース211の下端よりも下方に突出させてワークWの検査を行うことが可能な位置が設定される。後退端P4としては、検査ヘッド16を装置内に最も引き込ませた状態において交換装置300の各部の動作への検査ヘッド16の干渉が防止可能な位置が設定される。駆動機構213としては、例えば上述した表面検査装置1の直線駆動機構30と同様に送りねじを使用した駆動機構が設けられる。なお、以降では、図1の下方に移動させることを前進と称し、図1の上方に移動させることを後退と称することがある。
【0037】
サンプルピース220は、移動ベース211に移動不能に固定されており、その中心線上には検査ヘッド16と同軸の貫通孔220aが設けられている。貫通孔220aは、検査ヘッド16が通過可能な内径を有しており、検査ヘッド16はその貫通孔220aを通過して移動ベース211の下端より下方へと繰り出される。図5はサンプルピース220の中心線に沿った断面図である。図5に示したように貫通孔220aの内周面には中心線CL(検査ヘッド16の軸線AXに相当する。)に沿って複数の疑似欠陥220b、220c、220d、220eが形成されている。また、貫通孔220aの一方の端部の口元には面取部220fが形成されている。貫通孔220aの内周面は研磨加工等を利用して一定の反射率を有する滑らかな面に加工され、疑似欠陥220b〜220eの反射率は貫通孔220aの内周面よりも顕著に低く設定されている。疑似欠陥220b〜220eの大きさ及び形状は適宜でよい。この形態では、一例として、疑似欠陥220b〜220eがいずれも円形であり、かつそれらの大きさ(直径)は面取部220fから中心線CLの方向に離れるほど大きくなるように設定されている。サンプルピース220は、その面取部220fが検出ユニット5の側を向くようにして移動ベース211に取り付けられる。従って、検査ヘッド16を移動ベース211の下端より下方に前進させる場合、その検査ヘッド16は図5の矢印F方向に沿って貫通孔220aを通過する。
【0038】
検査テスト装置230は、不図示のアクチュエータにて回転駆動される回転円板232を備えている。各テストピース231A、231B、231Cは、回転円板232の同一周上に等間隔に設けられている(図6参照)。また、各テストピース231A、231B、231Cは、移動ベース211が診断位置P2にあるときにいずれかが検査ヘッド16と同軸になるように回転円板232に支持されている。図1及び図4に示したように各テストピース231A、231B、231Cは、互いに異なる形状のテスト検査部233A、233B、233Cを有している。なお、この形態で示したテストピース231A、231B、231Cでは、それぞれのテスト検査部233A、233B、233Cの深さが互いに異なっている。これらテスト検査部233A、233B、233Cの形状は、表面検査装置1で検査するワークWに応じて設定される。例えば、表面検査装置1で穴Hの形状が互いに異なる3種類のワークWを検査する場合、これらのワークWの穴Hの形状に応じた3種類のテスト検査部233A、233B、233Cを有するテストピース231A、231B、231Cが設けられる。この場合、テスト検査部233A、233B、233Cは、表面検査装置1で検査する3種類のワークWの穴Hの形状と同じ形状に形成される。そして、各テスト検査部233A、233B、233Cには、形状が対応するワークWの穴Hにおいて欠陥が発生すると予想される位置と同じ位置に疑似欠陥が設けられる。なお、以降、各テストピース231A、231B、231Cを区別する必要がない場合は単にテストピース231と表記する。また、テスト検査部233A、233B、233Cも同様に区別する必要がない場合は単にテスト検査部233と表記する。
【0039】
次に図1、図4及び図6を参照して交換装置300について説明する。なお、図6は、診断位置P2における移動ベース211を図4の下方から見た図である。また、図4及び図6においては中央制御装置400の図示を省略した。交換装置300は、交換用の走査部16Bが保持される走査部保持機構310と、検査ヘッド16のチャック機構22を解放状態に切り替えるための治具321を駆動する操作機構としての治具駆動機構320と、検査ヘッド16に走査部16Bを着脱するための走査部着脱機構330と、検査ヘッド16から取り外した走査部16Bと検査ヘッド16に装着する走査部16Bとを入れ替える走査部入れ替え機構340と、走査部保持機構310と走査部入れ替え機構340との間の走査部16Bの受け渡しを行う走査部移動機構350とを備えている。なお、交換用の走査部16Bには、未使用のものの他に透光窓16aの洗浄などのメンテナンスを行って再使用可能にしたものも含まれる。図1に示したように治具駆動機構320、走査部着脱機構330、走査部入れ替え機構340、及び走査部移動機構350は、移動ベース211上に設けられている。一方、走査部保持機構310は、移動装置210の一対のレール212の一端に設けられている。また、走査部保持機構310は、移動ベース211が診断位置P2にある場合に走査部移動機構350と走査部16Bの受け渡しが可能なように設けられる。
【0040】
走査部保持機構310は、回転軸を有するアクチュエータ311と、アクチュエータ311の回転軸に一体に回転するように取り付けられるアーム312と、アーム312の両端にそれぞれ設けられ、走査部16Bを保持することが可能な一対のホルダ313と、アクチュエータ311を検査ヘッド16の軸線AXと平行に移動させるための直線駆動アクチュエータ314とを備えている。図6に示したようにアーム312は、その中央を中心に回転するようにアクチュエータ311の回転軸に取り付けられている。アクチュエータ311は、一対のホルダ313の一方が表面検査装置1側に位置するようにアーム312を移動ベース211に対して略平行にする第1位置P11と一方のホルダ313の他方が表面検査装置1側に位置するようにアーム312を移動ベース211に対して略平行にする第2位置P12とにアーム312の位置を切り替える。直線駆動アクチュエータ314は、アクチュエータ311を前進端P13と後退端P14との間で移動させる。前進端P13は、第1位置P11及び第2位置P12において表面検査装置1側に位置するホルダ313に保持されている走査部16Bを走査部移動機構350の開閉チャック353に把持させることが可能な位置が設定される。なお、図4には、ホルダ313に走査部16Bを保持させた状態でアクチュエータ311を前進端P13まで移動させたときの走査部16Bを想像線で示した。後退端P14は、第1位置P11及び第2位置P12において表面検査装置1側に位置するホルダ313に保持されている走査部16Bが走査部移動機構350の開閉チャック353の移動に干渉しない位置が設定される。
【0041】
ホルダ313は、走査部16Bの支持部20が挿入される貫通孔313aと、貫通孔313aに挿入された走査部16Bの支持部20を把持する把持部材313bとを備えている。把持部材313bは、貫通孔313aの周方向に等間隔で複数設けられる。また、把持部材313bは、その先端が貫通孔313a内に突出する位置と先端が貫通孔313aの内周面とほぼ同じ位置とに移動可能に設けられ、不図示のバネによって貫通孔313a内に突出するように付勢されている。そのため、ホルダ313の貫通孔313a内に走査部16Bの支持部20が挿入されるとその支持部20に対して周方向から各把持部材313bの先端が当接し、これにより走査部16Bを把持することができる。また、走査部16Bの把持はバネの付勢力で行われているため、貫通孔313aに挿入されている走査部16Bを光路変更部21側から引き抜くことにより、走査部16Bをホルダ313から取り外すことができる。
【0042】
図1及び図6に示したように治具駆動機構320は、回転軸を有するアクチュエータ322と、一端に治具321が設けられ、他端がアクチュエータ322の回転軸に取り付けられるアーム323と、アクチュエータ322を表面検査装置1の軸線AXと平行に移動させる直線駆動アクチュエータ324とを備えている。治具321は、その中心線上に検査ヘッド16が通過可能な内径の貫通孔321aを備えた円筒形状を有しており、その上端部はチャック部材23の先端側端部のみと当接してチャック部材23を検査ヘッド16内に押し込むことが可能な形状に形成されている。アクチュエータ322は、治具321の貫通孔321aの中心と検査ヘッド16の軸線AXが同軸になるようにアーム323を移動ベース211とほぼ平行にする操作位置P21と表面検査装置1の各動作に対する治具321及びアーム323の干渉を防止可能なようにアーム323を移動ベース211に対してほぼ垂直にする退避位置P22との間でアーム323を回転させる。直線駆動アクチュエータ324はアクチュエータ322を前進端P23と後退端P24との間で駆動する。前進端P23としては、操作位置P21のアーム323の治具321が前進端P3における表面検査装置1のチャック部材23を検査ヘッド16内に押し込み、チャック機構22を解放状態にする位置が設定される。後退端P24としては、前進端P23に対して走査部16Bの挿入部20aの長さ分よりも若干高い位置が設定される。この治具駆動機構320においては、アクチュエータ322及び直線駆動アクチュエータ324によって治具321を移動させるので、これらのアクチュエータ322、324が本発明の治具移動手段に相当する。
【0043】
走査部着脱機構330は、回転軸を有するアクチュエータ331と、アクチュエータ331の回転軸に一体に回転するように取り付けられるアーム332と、アーム332の先端に設けられ、走査部16Bを把持する把持状態と走査部16Bを解放する解放状態とに切替可能な開閉チャック333とを備えている。アーム332は、一端がアクチュエータ331の回転軸に取り付けられ、他端に開閉チャック333が設けられている。アクチュエータ331は、開閉チャック333に把持されている走査部16Bの中心と検査ヘッド16の軸線AXとが同軸になるようにアーム332を移動ベース211とほぼ平行にする挿入位置P31と開閉チャック333に把持されている走査部16Bを走査部入れ替え機構340に受け渡す事が可能なようにアーム332を移動ベース211に対してほぼ垂直にする受け渡し位置P32との間でアーム332を回転させる。図1に示したように走査部着脱機構330は、アーム332及び開閉チャック333の可動範囲が治具駆動機構320の治具321及びアーム323の可動範囲と重ならないように治具駆動機構320よりも下方にずらして配置される。
【0044】
走査部入れ替え機構340は、回転軸を有するアクチュエータ341と、アクチュエータ341の回転軸に一体に回転するように取り付けられるアーム342と、アーム342の両端にそれぞれ設けられ、走査部16Bを保持することが可能な一対のホルダ343と、アクチュエータ341を検査ヘッド16の軸線AXと平行に移動させるための直線駆動アクチュエータ344とを備えている。アーム342は、その中央を中心に回転するようにアクチュエータ341の回転軸に取り付けられている。ホルダ343は、走査部保持機構310のホルダ313と同じものである。アクチュエータ341は、アーム342を回転させることにより、走査部着脱機構330に走査部16Bを受け渡すことが可能な第1受け渡し位置P41と走査部移動機構350に走査部16Bを受け渡すことが可能な第2受け渡し位置P42とに各ホルダ343の位置を切り替える。なお、一対のホルダ343はアーム342の両端に設けられているため、一方のホルダ343の位置が第1受け渡し位置P41に切り替えられると他方のホルダ343の位置は第2受け渡し位置P42になり、一方のホルダ343の位置が第2受け渡し位置P42に切り替えられると他方のホルダ343の位置は第1受け渡し位置P41になる。
【0045】
図6に示したように走査部入れ替え機構340は、走査部着脱機構330のアーム332が受け渡し位置P32にあるときに開閉チャック333に把持されている走査部16Bの中心と第1受け渡し位置P41又は第2受け渡し位置P42において走査部着脱機構330側に位置するホルダ343の中心とが同軸になるように移動ベース211を基準として走査部着脱機構330よりも高い位置に配置される。直線駆動アクチュエータ344は、前進端P43と後退端P44との間でアクチュエータ341を駆動する。前進端P43としては、ホルダ343に保持されている走査部16Bを走査部着脱機構330の開閉チャック333又は走査部移動機構350の開閉チャック353に把持させることが可能な位置が設定される。後退端P44としては、各ホルダ343に保持されている走査部16Bが走査部着脱機構330の開閉チャック333及び走査部移動機構350の開閉チャック353の移動に干渉しない位置が設定される。
【0046】
走査部移動機構350は、走査部着脱機構330と同じものであり、回転軸を有するアクチュエータ351と、アクチュエータ351の回転軸に一体に回転するように取り付けられるアーム352と、アーム352の先端に設けられ、走査部16Bを把持する把持状態と走査部16Bを解放する解放状態に切替可能な開閉チャック353とを備えている。また、走査部移動機構350は走査部着脱機構330と同じ高さに配置され、そのアーム352は走査部着脱機構330のアーム332と同じ高さに回転する。アーム352は、一端がアクチュエータ351の回転軸に取り付けられ、他端に開閉チャック353が設けられている。アクチュエータ351は、走査部保持機構310との間で走査部16Bの受け渡しを行うことが可能なように移動ベース211に対してアーム352をほぼ平行にする第1移送位置P51と走査部入れ替え機構340との間で走査部16Bの受け渡しを行うことが可能なように移動ベース211に対してアーム352をほぼ垂直にする第2移送位置P52とにアーム352の位置を切り替える。
【0047】
診断装置200の駆動機構213及び交換装置300の各機構310、320、330、340、350の動作は、コンピュータユニットとしての中央制御装置400にてそれぞれ制御されている。また、この中央制御装置400は、検査テスト装置230のアクチュエータを制御して回転円板232の回転位置を制御する。さらに、中央制御装置400は、表面検査装置1の制御部3に指令を出力し、制御部3を介して表面検査装置1の各機構の動作も制御する。中央制御装置400は、制御部3に指令を出力して表面検査装置1にワークWの検査を行わせたり、診断装置200に検査ヘッド16の異常の有無を診断させたりする。例えば、中央制御装置400は、表面検査装置1にワークWの検査を行わせるため、駆動機構213を制御して移動ベース211を検査位置P1に移動させる。また、表面検査装置1の各動作に対して交換装置300の治具駆動機構320及び走査部着脱機構330が干渉しないように、治具駆動機構320のアーム323が退避位置P22に移動するようにアクチュエータ322を制御するとともに走査部着脱機構330のアーム332が受け渡し位置P32に移動するようにアクチュエータ331を制御する。さらに、駆動機構213の動作を制御して表面検査装置1を前進端P3に移動させる。以下、この状態を準備完了状態と称することがある。そして、これらの制御が完了した後、中央制御装置400は、上述したように表面検査装置1にてワークWの内周面Fの検査が行われるように制御部3に指令を出力する。
【0048】
図7及び図8は、表面検査装置1にてワークWの検査を実施しているときに検査ヘッド16の異常の有無を診断するために中央制御装置400が所定の間隔で繰り返し実行する異常診断ルーチンを示すフローチャートである。図7は、サンプルピース220を使用してワークWの検査毎に検査ヘッド16の診断を行うべく中央制御装置400が実行する第1異常診断ルーチンである。図8は、所定の診断条件が成立した場合にテストピース231を使用して検査ヘッド16の診断を行うべく中央制御装置400が実行する第2異常診断ルーチンである。図7及び図8に示した各ルーチンは、互いに並行に、かつ中央制御装置400が実行する他のルーチンに対しても並行に実行される。
【0049】
まず、図7の第1異常診断ルーチンについて説明する。図7の第1異常診断ルーチンにおいて中央制御装置400は、まずステップS11で表面検査装置1によるワークWの検査が行われているか否か判断する。例えば表面検査装置1又は搬送装置101など検査に必要な装置が停止している場合などに表面検査装置1による検査が中止されていると判断する。ワークWの検査が中止されていると判断した場合は、今回のルーチンを終了する。一方、表面検査装置1によるワークWの検査が行われていると判断した場合はステップS12に進み、中央制御装置400はサンプルピース220を使用した検査前診断処理を実行する。上述したようにサンプルピース220は、移動ベース211の下端に検査ヘッド16と同軸に設けられている。そして、ワークWの検査を行う際、表面検査装置1は検査ヘッド16を移動ベース211の下端よりも下方に突出させて検査ヘッド16をワークWの穴Hに挿入する。そのため、検査ヘッド16はこのサンプルピース220の貫通孔220aを通過してワークWの穴Hに挿入される。そこで、検査ヘッド16がサンプルピース220の貫通孔220aを通過するときに表面検査装置1にこの貫通孔220aの内周面を検査させ、その検査結果に基づいて検査ヘッド16の異常の有無を診断する。以下、この診断を検査前診断と称することがある。この検査前診断は、表面検査装置1によってワークWの検査を行う毎に実施される。
【0050】
上述したようにサンプルピース220の貫通孔220aの内周面には、疑似欠陥220b〜220eが設けられている。そこで、これら疑似欠陥220b〜220eの形状及び大きさを制御部3の記憶部65に予め記憶させておく。そして、検査前診断は、表面検査装置1によってサンプルピース220の貫通孔220aの内周面を検査した結果と記憶部65に記憶させておいた内容とを比較することによって行う。例えば、検査ヘッド16の透光窓16aが汚れていた場合、透光窓16aからの検査光及びワークWからの反射光が透光窓16aの汚れで弱くなるため、実際の疑似欠陥220b〜220eの形状及び大きさとは異なる値が検出されるおそれがある。また、検査ヘッド16の回転に振れが生じている場合には、その振れ程度に応じて疑似欠陥220b〜220eの画像に歪みが生じて形状あるいは大きさが変化する。そこで、表面検査装置1で検出した疑似欠陥220b〜220eの形状及び大きさが、予め記憶部65に与えられている疑似欠陥220b〜220eの実際の形状及び大きさに対して所定の許容範囲内にあれば検査ヘッド16が正常であると判断し、許容範囲外であれば検査ヘッド16に異常があると判断する。
【0051】
次のステップS13において中央制御装置400は、検査前診断の結果、検査ヘッド16に異常があったか否か判断する。検査ヘッド16が正常であった場合はステップS14に進み、中央制御装置400は表面検査装置1によるワークWの検査を継続して行うように制御部3に指令を出力する。なお、この際例えば移動ベース211が診断位置P2にある場合など表面検査装置1、診断装置200、及び交換装置300の状態が表面検査装置1にてワークWの検査を実施出来ない状態の場合は表面検査装置1の位置、診断装置200の状態及び交換装置300の状態を準備完了状態に変更し、その後表面検査装置1によるワークWの検査を継続させる。以下、この処理を検査継続処理と称することがある。一方、検査ヘッド16に異常があった場合はステップS15に進み、中央制御装置400は診断装置200及び交換装置300を制御して検査ヘッド16の走査部16Bの交換を行う。
【0052】
図1、図4及び図6を参照して検査ヘッド16の交換方法について説明する。検査ヘッド16を交換する場合、中央制御装置400は、制御部3に指令を出力し、LD11及びPD12の動作を停止させるとともに直線駆動機構30にて検査ヘッド16を装置内に最も引き込ませる。次に、中央制御装置400は、駆動機構213の動作を制御して表面検査装置1を後退端P4まで移動させ、その後移動装置210の動作を制御して移動ベース211を診断位置P2に移動させる。中央制御装置400は、これらの制御と並行して交換装置300の走査部保持機構310のアクチュエータ311を後退端P14に移動させる。また、交換用の走査部16Bを保持しているホルダ313が表面検査装置1側に移動するようにアーム312を第1位置P11又は第2位置P12に切り替える。
【0053】
移動ベース211を診断位置P2に移動させた後、中央制御装置400は、治具駆動機構320のアクチュエータ322を前進端P23に移動させるとともにアーム323を操作位置P21に移動させる。また、走査部着脱機構330のアーム332を挿入位置P31に移動させるとともに開閉チャック333を解放状態に切り替える。さらに、走査部移動機構350のアーム352を第1移送位置P51に移動させるとともに開閉チャック353を解放状態に切り替える。これらの制御と並行して中央制御装置400は、走査部入れ替え機構340のアクチュエータ341を後退端P44に移動させるとともに、一方のホルダ343が第1受け渡し位置P41に切り替わり、他方のホルダ343が第2受け渡し位置P42に切り替わるように走査部入れ替え機構340のアーム342を回転させる。
【0054】
その後、中央制御装置400は、駆動機構213の動作を制御して表面検査装置1を前進端P3に移動させる。これにより、治具321にてチャック部材23を検査ヘッド16内に押し込み、チャック機構22を解放状態に切り替えることができる。図4には、この状態における表面検査装置1の検査ヘッド16を想像線で示した。次に走査部着脱機構330の開閉チャック333を把持状態に切り替える。これにより、この開閉チャック333に検査ヘッド16に装着されている走査部16Bを把持させることができる。続いて中央制御装置400は、表面検査装置1を後退端P4に移動させるとともに表面検査装置1と同じ速度で治具駆動機構320のアクチュエータ322を後退端P24に移動させる。これにより検査ヘッド16から走査部16Bを取り外すことができる。中央制御装置400は、これらの制御と並行して走査部保持機構310のアクチュエータ311を前進端P13に移動させ、その後走査部移動機構350の開閉チャック353を把持状態に切り替える。そして、走査部移動機構350の開閉チャック353を把持状態にしたまま走査部保持機構310のアクチュエータ311を後退端P14まで移動させる。これにより、走査部移動機構350の開閉チャック353を交換用の走査部16Bを把持させることができる。
【0055】
走査部着脱機構330の開閉チャック333にそれまで検査ヘッド16に装着されていた走査部16Bを把持させるとともに走査部移動機構350の開閉チャック353に交換用の走査部16Bを把持させた後、中央制御装置400は、走査部着脱機構330のアーム332を受け渡し位置P32に移動させるとともに走査部移動機構350のアーム352を第2移送位置P52に移動させる。続いて、走査部入れ替え機構340のアクチュエータ341を前進端P43に移動させ、その後走査部着脱機構330の開閉チャック333及び走査部移動機構350の開閉チャック353をそれぞれ解放状態に切り替える。これにより、走査部着脱機構330に把持されていた走査部16Bを一方のホルダ343に、走査部移動機構350に把持されていた走査部16Bを他方のホルダ343に保持させることができる。
【0056】
次に中央制御装置400は、走査部入れ替え機構340のアクチュエータ341を後退端P44に移動させる。続いて中央制御装置400は、走査部入れ替え機構340のアーム342を180°回転させ、一方のホルダ343を第2受け渡し位置P42に他方のホルダ343を第1受け渡し位置P1にそれぞれ移動させる。すなわち、走査部着脱機構330に交換用の走査部16Bが送られ、走査部移動機構350にそれまで検査ヘッド16に装着されていた走査部16Bが送られるようにこれらの走査部16Bの位置を入れ替える。その後、中央制御装置400は、走査部入れ替え機構340のアクチュエータ341を前進端P43に移動させ、次に走査部着脱機構330の開閉チャック333を把持状態に切り替える。続いて中央制御装置400は、走査部入れ替え機構340のアクチュエータ341を後退端P44に移動させる。これにより、走査部着脱機構330の開閉チャック333に交換用の走査部16Bを把持させることができる。一方、それまで検査ヘッド16に装着されていた走査部16Bは、走査部入れ替え機構340のホルダ343に保持される。
【0057】
走査部着脱機構330の開閉チャック333に交換用の走査部16Bを把持させた後、中央制御装置400は、走査部着脱機構330のアーム332を挿入位置P31に移動させる。次に治具駆動機構320のアクチュエータ322を前進端P23に移動させ、続いて表面検査装置1を前進端P3に移動させる。これにより、検査ヘッド16のチャック機構22に交換用の走査部16Bを挿入することができる。その後、中央制御装置400は、走査部着脱機構330の開閉チャック333を解放状態に切り替え、続いて表面検査装置1を後退端P4に移動させる。これにより、チャック機構22が拘束状態に切り替えられ、交換後の走査部16Bが検査ヘッド16に装着される。検査ヘッド16に走査部16Bを装着した後、中央制御装置400は、走査部着脱機構330のアーム332を受け渡し位置P32に移動させるとともに、治具駆動機構320のアーム323を退避位置P22に移動させる。これにより走査部16Bの交換作業が終了する。なお、このように交換装置300の各機構310〜350の動作を制御することにより、中央制御装置400が本発明の制御手段として機能する。
【0058】
図7に戻って第1異常診断ルーチンの説明を続ける。走査部16Bを交換した後、次のステップS16において中央制御装置400は、サンプルピース220及びテストピース231を使用して検査ヘッド16に異常があるか否か診断する異常診断処理を実行する。この処理は、走査部16Bを交換した検査ヘッド16で検査を継続することが可能か否か診断するために行う。サンプルピース220を使用した診断方法は、上述した検査前診断と同じであるため、説明を省略する。そのため、ここではテストピース231を使用した診断方法について説明する。テストピース231を用いて検査ヘッド16の異常の有無を診断する場合、中央制御装置400は、まずテストピース231A、231B、231Cのうち表面検査装置1で次に検査するワークWの穴Hと同じ形状のテスト検査部233を有するテストピース231が検査ヘッド16と同軸の位置に移動するように検査テスト装置230の回転円板232を制御する。続いて中央制御装置400は、表面検査装置1に検査ヘッド16と同軸の位置にあるテストピース231のテスト検査部233を検査させる。この際、中央制御装置400は、ワークWの穴Hを検査するときと同様の検査方法でテスト検査部233が行われるように表面検査装置1を制御する。
【0059】
次に中央制御装置400は、検査ヘッド16の異常の有無を診断する。上述したようにテスト検査部233にはサンプルピース220の貫通孔220aと同様に疑似欠陥が設けられている。そこで、このテスト検査部233の疑似欠陥の形状及び大きさを制御部3の記憶部65に予め記憶させておき、この記憶させておいた内容と検査結果とを比較することにより、検査ヘッド16の異常の有無を診断する。上述したように検査ヘッド16の透光窓16aの汚れ又は検査ヘッド16の回転の振れなどが発生していると実際のテスト検査部233の疑似欠陥の形状及び大きさとは異なる値が検出されるおそれがある。そこで、表面検査装置1で検出したテスト検査部233の疑似欠陥の大きさ及び形状が、予め記憶部65に与えられているテスト検査部233の疑似欠陥の実際の形状及び大きさに対して所定の許容範囲内にあれば検査ヘッド16が正常であると判断し、許容範囲外であれば検査ヘッド16に異常があると判断する。
【0060】
続くステップS17において中央制御装置400は、検査ヘッド16に異常があったか否か判断する。検査ヘッド16が正常であった場合はステップS14に進み、検査継続処理を実行して表面検査装置1によるワークWの検査を継続する。その後、今回のルーチンを終了する。一方、検査ヘッド16に異常があった場合はステップS18に進み、中央制御装置400は異常対応処理を実行する。異常対応処理としては、まず表面検査装置1による検査を中止させる処理が行われる。この他、ユーザに対して表面検査装置1に異常があることを知らせる警告処理が行われる。警告処理としては、例えば警告音を鳴らしたり、制御部3の出力部64に警告を出力してもよい。その後、今回のルーチンを終了する。
【0061】
次に図8を参照して第2異常診断ルーチンについて説明する。なお、図8において図7と同じ処理については同一の参照符号を付して説明を省略する。なお、図8のルーチンは中央制御装置400が実行する他のルーチンと並行に実行される。図8のルーチンにおいて中央制御装置400は、まずステップS11で表面検査装置によるワークWの検査が行われているか否か判断する。ワークWの検査が中止されていると判断した場合は、今回のルーチンを終了する。一方、表面検査装置1によるワークWの検査が行われていると判断した場合はステップS21に進み、中央制御装置400は所定の診断条件が成立したか否か判断する。所定の診断条件は、例えば所定個数(例えば10個)のワークWを表面検査装置1で連続して検査した場合に成立したと判断される。診断条件が不成立と判断した場合は、今回のルーチンを終了する。
【0062】
一方、診断条件が成立したと判断した場合はステップS22に進み、中央制御装置400は走査部16Bを交換したことを示すフラグをリセットし、このフラグをオフの状態に切り替える。次のステップS16において中央制御装置40は、異常診断処理を実行することが可能なように移動ベース211を診断位置P2に移動させる診断準備処理を実行する。この診断準備処理において中央制御装置400は、まず制御部3に指令を出力し、LD11及びPD12の動作を停止させるとともに直線駆動機構30にて検査ヘッド16を装置内に最も引き込ませる。次に駆動機構213の動作を制御して表面検査装置1を後退端P4まで移動させ、続いて移動装置210の動作を制御して移動ベース211を診断位置P2に移動させる。その後、表面検査装置1を前進端P3まで移動させる。これらの操作によりテストピース231による検査ヘッド16の診断の準備が完了する。
【0063】
次のステップS16において中央制御装置400は、異常診断処理を実行する。続くステップS17において中央制御装置400は、検査ヘッド16に異常があったか否か判断する。検査ヘッド16が正常であった場合はステップS14に進み、検査継続処理が実行される。その後、今回のルーチンを終了する。一方、検査ヘッド16に異常があった場合はステップS24に進み、中央制御装置400は走査部16Bが交換済みであることを示すフラグがオンの状態か否か判断する。フラグがオフの状態であると判断した場合はステップS15に進み、中央制御装置400は走査部16Bを交換する走査部交換処理を実行する。次のステップS25において中央制御装置400は、フラグをオンの状態に切り替える。その後、ステップS16に処理を戻し、再度検査ヘッド16に異常があるか否か診断を行う。
【0064】
一方、ステップS24でフラグがオンの状態であると判断した場合はステップS18に進み、中央制御装置400は異常対応処理を実行する。その後、今回のルーチンを終了する。
【0065】
以上に説明したように、本発明の検査システム100によれば、診断装置200によって定期的に検査ヘッド16の異常の有無が診断され、検査ヘッド16に異常があった場合は走査部16Bの交換が交換装置300にて行われる。走査部16Bに起因する異常は、検査ヘッド16の他の部分に起因する異常よりも発生頻度が高い。そのため、このように走査部16Bの交換を交換装置300で行うことができるようにすることで、従来よりもユーザに掛かる負担を軽減できる。また、表面検査装置1による検査作業の自動化及び省力化を促進させることができる。ユーザは、走査部保持機構310に交換用の走査部16Bを補充する補充作業、及び走査部入れ替え機構340に保持されている走査部16Bを取り除く除去作業を適宜の間隔で行えばよい。
【0066】
この検査システム100では、搬送装置101にて搬送するワークWの形状及び大きさは同一でなくてもよい。例えば、形状や大きさの異なるワークWを搬送装置101に搬送させ、これらのワークWに対して表面検査装置1で検査を行ってもよい。この場合、走査部保持機構310に各ワークWに対応する形状の走査部16Bを保持させておき、検査する対象のワークWに合わせて走査部16Bを交換する。また、テストピース231を使用した検査ヘッド16の診断は、それまで検査していたワークWとは形状や大きさが異なるワークWを表面検査装置1で検査するために走査部16Bを交換した場合に行ってもよい。
【0067】
表面検査装置1の制御部3は、異常診断を行って検査ヘッド16が正常であった場合、異常診断時に検査ヘッド16が検出したサンプルピース220の検出結果やテストピース231の検出結果に基づいてワークWの検出結果を補正してもよい。例えば、サンプルピース220で検査ヘッド16の異常の有無を診断した場合、そのときの検出結果と記憶部65に記憶されている疑似欠陥220b〜220eの実際の大きさ及び形状とに基づいて補正係数を算出し、ワークWの検査を行った際に検査ヘッド16が検出した値にこの補正係数を掛けた値を検出結果として出力してもよい。このように補正を行うことにより、表面検査装置1の検査結果の信頼性を向上させることができる。
【0068】
本発明は、上述した形態に限定されることなく、種々の形態にて実施してよい。例えば、検査ヘッドの異常の有無の診断は、サンプルピース及びテストピースを使用した診断に限定されない。例えば、検査ヘッドに検査ヘッドの回転振れの状態を検出する振動センサなどのセンサを設け、このセンサが検出した検出値に基づいて検査ヘッドの異常の有無を診断してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の一形態に係る検査システムの概略構成を示す図。
【図2】表面検査装置の概略構成を示す図。
【図3】検査ヘッドの先端の内部を拡大して示す図。
【図4】移動ベースを診断位置に移動させた状態の検査システムを示す図。
【図5】サンプルピースの中心線に沿った断面図。
【図6】図4に示した状態の検査システムを図4の下方から見た図。
【図7】中央制御装置が実行する第1異常診断ルーチンを示すフローチャート。
【図8】中央制御装置が実行する第2異常診断ルーチンを示すフローチャート。
【符号の説明】
【0070】
1 表面検査装置
16 検査ヘッド
16A ヘッド本体
16B 走査部
18 ミラー(光路変更手段)
22 チャック機構
23 チャック部材
30 直線駆動機構(直線駆動手段)
40 回転駆動機構(回転駆動手段)
100 検査システム
200 診断装置
220 サンプルピース
220a 貫通孔
220b、220c、220d、220e 疑似欠陥
231A、231B、231C テストピース
233A、233B、233C テスト検査部
300 交換装置
320 治具駆動機構(操作機構)
321 治具
322 アクチュエータ(治具移動手段)
324 直線駆動アクチュエータ(治具移動手段)
330 走査部着脱機構
340 走査部入れ替え機構
400 中央制御装置(制御手段)
W ワーク(被検査物)
AX 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド本体と、前記ヘッド本体の先端に着脱可能に設けられ、かつ光路変更手段が組み込まれる軸状の走査部とを備えた検査ヘッドを回転駆動手段により軸線の回りに回転させつつ直線駆動手段により前記軸線に沿って移動させるとともに、前記検査ヘッド内に前記軸線に沿って入射した検査光の光路を前記光路変更手段により変更し、該光路が変更された検査光を被検査物に照射し、前記被検査物から前記検査ヘッドに返される反射光を受光し、該反射光の光量に基づいて前記被検査物の表面を検査する表面検査装置に適用され、前記検査ヘッドの異常の有無を診断する検査システムにおいて、
前記検査ヘッドの異常の有無を診断する診断装置と、前記診断装置が前記検査ヘッドに異常があると判断した場合に前記検査ヘッドの前記走査部を交換する交換装置と、を備えることを特徴とする表面検査装置の検査システム。
【請求項2】
前記表面検査装置にて前記被検査物を検査する際の前記検査ヘッドの移動経路上に配置されるとともに内周面に疑似欠陥が設けられ、かつ前記検査ヘッドが通過可能な貫通孔を有するサンプルピースをさらに備え、
前記診断装置は、前記表面検査装置に前記サンプルピースの内周面を検査させた検査結果に基づいて前記検査ヘッドの異常の有無を診断することを特徴とする請求項1に記載の表面検査装置の検査システム。
【請求項3】
前記診断装置は、前記表面検査装置が前記被検査物を検査する毎に前記表面検査装置に前記サンプルピースの内周面を検査させて前記検査ヘッドの異常の有無を診断することを特徴とする請求項2に記載の表面検査装置の検査システム。
【請求項4】
前記被検査物の検査対象部分に応じた形状に形成され、疑似欠陥が設けられるテスト検査部を有するテストピースと、前記表面検査装置を前記表面検査装置が前記被検査物の前記検査対象部分の検査を行うことが可能な検査位置と前記表面検査装置が前記テストピースの前記テスト検査部の検査を行うことが可能な診断位置とに駆動可能な移動手段と、をさらに備え、
前記診断装置は、所定の診断条件が成立した場合、前記表面検査装置が前記診断位置に駆動されるように前記移動手段を制御し、前記表面検査装置に前記テストピースの前記テスト検査部を検査させ、その検査結果に基づいて前記検査ヘッドの異常の有無を診断することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の表面検査装置の検査システム。
【請求項5】
前記所定の診断条件は、前記表面検査装置にて前記被検査物を連続して所定数検査した場合に成立することを特徴とする請求項4に記載の表面検査装置の検査システム。
【請求項6】
前記テスト検査部と前記検査対象部分とは同じ形状であり、
前記前記テスト検査部には、前記検査対象部分において欠陥が発生すると予想される位置と同じ位置に疑似欠陥が設けられることを特徴とする請求項4又は5に記載の表面検査装置の検査システム。
【請求項7】
前記ヘッド本体の先端には、前記走査部を把持する把持状態と前記走査部を解放する解放状態とに切り替え可能なチャック機構が設けられ、
前記交換装置は、前記チャック機構の状態を前記把持状態及び前記解放状態に切り替え可能な操作機構と、前記操作機構にて前記解放状態に切り替えられた前記チャック機構に対して前記走査部を保持して前記走査部の除去及び挿入を行う事が可能な走査部着脱機構と、前記走査部着脱機構と前記走査部の受け渡しが可能であり、前記ヘッド本体から除去された走査部を前記走査部着脱機構から受け取るとともに交換用の走査部を前記走査部着脱機構に渡して保持させる走査部入れ替え機構と、まず前記チャック機構が前記解放状態に切り替わるように前記操作機構を制御した後に前記チャック機構から前記走査部が除去されるように前記走査部着脱機構を制御し、次に前記走査部着脱機構が前記交換用の走査部を保持するように前記走査部入れ替え機構を制御し、その後前記交換用の走査部が前記チャック機構に挿入されるように前記走査部着脱機構を制御するとともに前記交換用の走査部が挿入された前記チャック機構が前記把持状態に切り替えられるように前記操作機構を制御する制御手段と、を備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の表面検査装置の検査システム。
【請求項8】
前記チャック機構は、先端側から前記ヘッド本体内に押し込まれることにより前記解放状態に切り替わり、その押し込む力が除去されると前記把持状態に切り替わるチャック部材を備え、
前記操作機構は、前記チャック部材を前記ヘッド本体内に押し込むための治具と、前記治具が前記チャック部材に当接するように前記治具を前記検査ヘッドの前方に配置させ、その状態で前記治具を前記検査ヘッドの軸線方向に移動させる治具移動手段と、を備えることを特徴とする請求項7に記載の表面検査装置の検査システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−128157(P2009−128157A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−302839(P2007−302839)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(390014661)キリンテクノシステム株式会社 (126)
【出願人】(505216449)株式会社 KTSオプティクス (17)
【Fターム(参考)】