説明

表面検査装置

【課題】表面の異物の影響を受けずに欠陥を検出し、なおかつ、画像処理すべき範囲を的確に絞り込むことで検査に要する時間を短縮可能とする。
【解決手段】シリンダブロック5にボーリング加工により形成され研磨されたボア3の内側表面3Aを、レーザ光を照射するセンサヘッド7で走査し、前記レーザ光の反射像に基づいて前記内側表面3Aのデジタル輝度画像71を生成し、該デジタル輝度画像71に対して前記内側表面3Aの欠陥を検出するための画像処理を施して前記内側表面3Aを検査する表面検査装置9において、前記内側表面3Aを走査する渦流探傷センサ26と、前記渦流探傷センサ26の出力に基づいて欠陥箇所Pを特定し、該欠陥箇所Pを含んで画像処理範囲Tを決定する画像処理範囲決定部67と、を備え、前記画像処理範囲Tに対して前記画像処理を施して前記内側表面3Aの欠陥を検出する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの表面を検査する表面検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の製造工程では、エンジンのシリンダブロックにボアを切削加工し、その後、シリンダヘッドやクランクケース等をシリンダブロックに組み付けることが行われる。ボーリング加工では、ボーリング用バイトを回転させながらシリンダブロックに対して進退させてボアを形成するため、ボアの内側表面には螺旋状の加工痕が生じ、エンジンオイルの通り道(オイルピット)として利用されている。
また、ボアの内側表面はピストンの摺動面となるため、摺動抵抗を抑えてエンジンに所望の性能を発揮させるべく、該摺動面を適切な表面粗さ及び面性状に維持する必要がある。そこで、ボーリング加工後には、ボアの内側表面を、オイルピットが残る程度に研磨仕上げするためのホーニング加工が行われる。そして、ホーニング加工後には、摺動抵抗の要因となる研磨残りを検査するために、ボアの内側表面の平滑状態の検査が行われる。
【0003】
この検査は、ボア内に光学ユニットを挿入し、この光学ユニットから発したレーザ光の反射像を該光学ユニットを介してカメラで撮影し、ボアの内側表面のデジタル画像を生成し、このデジタル画像に対して例えば2値化処理やパワースペクトル処理といった平滑状態を検出するための画像処理を施して、該平滑状態を評価する、という手順で行われている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特特開2004−132900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ボアの内側表面の全域に亘るデジタル画像に対して画像処理を施すため、検査に要する時間が長くなり、エンジン生産性の向上を阻む要因となっていた。これに加え、ボアの内側表面に水滴や塵等の異物が付着していた場合、この異物がデジタル画像に映って欠陥として誤判定される、という問題がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、表面の異物の影響を受けず、なおかつ、画像処理すべき範囲を的確に絞り込むことで検査に要する時間を短縮することができる表面検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、ワークの表面を、該表面にレーザ光を照射するセンサヘッドで走査し、前記レーザ光の反射像に基づいて前記表面のデジタル画像を生成し、該デジタル画像に対して前記表面の欠陥を検出するための画像処理を施して前記表面を検査する表面検査装置において、前記表面を走査する渦流探傷センサと、前記渦流探傷センサの出力に基づいて前記ワークの欠陥箇所を特定し、該欠陥箇所を含んで画像処理範囲を決定する画像処理範囲決定手段と、を備え、前記画像処理範囲に対して前記画像処理を施して前記表面の欠陥を検出することを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、ワークの表面の欠陥箇所が渦流探傷センサにより、表面の水滴や塵等の異物の影響を受けることなく検出される。また、検出された欠陥の大きさ、及び、欠陥が表面欠陥或いは鋳巣等の内部欠陥のどちらであるかといったことは渦流探傷センサの出力からは判定できないものの、該欠陥箇所を含む画像処理範囲に対して画像処理が施されるため、欠陥の大きさなどを判定することができる。したがって、表面の異物の有無に影響されることなく欠陥を検出可能となり、なおかつ、画像処理を施すべき範囲が画像処理範囲に絞り込まれることで検査に要する時間を短縮しつつ欠陥の大きさなどを判別することができる。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、シリンダブロックに切削加工により形成され研磨されたボアの内側表面を、レーザ光を照射するセンサヘッドで走査し、前記レーザ光の反射像に基づいて前記内側表面のデジタル画像を生成し、該デジタル画像に対して前記内側表面の欠陥を検出するための画像処理を施して前記内側表面を検査する表面検査装置において、前記内側表面を走査する渦流探傷センサと、前記渦流探傷センサの出力に基づいて欠陥箇所を特定し、該欠陥箇所を含んで画像処理範囲を決定する画像処理範囲決定手段と、を備え、前記画像処理範囲に対して前記画像処理を施して前記内側表面の欠陥を検出することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ボアの内側表面の欠陥箇所が渦流探傷センサの出力により、この内側表面の水滴や塵等の異物の影響を受けることなく検出される。検出された欠陥の正確な大きさ、及び、欠陥が表面欠陥或いは鋳巣等の内部欠陥のどちらであるかといったことを渦流探傷センサの出力からは判定できないものの、該欠陥箇所を含む画像処理範囲に対して画像処理が施されるため、欠陥の大きさなどを判定し、打痕や研磨残り、オイルピット等を判別することができる。これにより、表面の異物の有無に影響されることなく欠陥を検出可能となり、なおかつ、画像処理を施すべき範囲が画像処理範囲に絞り込まれることで検査に要する時間を短縮しつつ、打痕や研磨残り、オイルピット等を判別することができる。
【0009】
上記発明において、前記センサヘッドに、前記渦流探傷センサを設けても良い。
この構成によれば、ワーク表面のデジタル画像と渦流探傷センサによる欠陥検出を1度の走査で行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ワークの表面に付着した水滴や塵等の異物の影響を受けることなく渦流探傷センサによりワークの欠陥を検出できる。また、この欠陥箇所を含む画像処理範囲に限定して画像処理を施すことができるため、欠陥の大きさを判定することができるとともに、検査に要する時間を短縮することができる。
また、シリンダブロックのボアの内側表面を検査する際には、オイルピットと、打痕や研磨残り等の有害な欠陥と効率良く判別し、不良なボアを選別することができる。
また、センサヘッドに渦流探傷センサを設けることで、ワーク表面のデジタル画像と渦流探傷センサによる欠陥検出を1度の走査で行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るボア内面検査システム1と、検査対象となるボア3が形成されたシリンダブロック5の概略構成を示す図である。
ボア3は、回転軸に設けたボーリングヘッドに切削バイトを径方向に突設し、該ボーリングヘッドを回転させながらワークとしてのアルミニウム合金の鋳物製のシリンダブロック5に対して進退させる、いわゆるボーリング加工により形成される。このボーリング加工により、ボア3の内側表面3Aには、方向性を有する螺旋状の切削加工痕ができる。その後、ボア3の内側表面3Aに対して、オイルピットを残しつつ、エンジンの所望の性能を発揮可能な表面粗さ及び面性状を得るべく、ホーニング用砥石を配設した加工ヘッドを用いてホーニング加工が施されている。
【0012】
ボア内面検査システム1は、ボア3の内側表面3Aを撮影したデジタル画像に基づいて、該内側表面3Aの欠陥を検出し、該ボア3の良否を評価する。
すなわち、ボア内面検査システム1は、ボア3の内側表面3Aを走査するセンサヘッド7と、このセンサヘッド7の出力信号に基づいてボア3の内側表面3Aの欠陥を検出し良否を評価する表面検査装置9と、センサヘッド7を移動駆動する駆動機構11とを備えている。
センサヘッド7は、ボア3に進入可能な円筒状に形成され、中心軸線12の回りに回転可能かつ中心軸線12の方向に移動可能に上記駆動機構11に取り付けられている。
センサヘッド7は、周面に設けた開口15からレーザ光をボア3の内側表面3Aに向けて照射し、内側表面3Aの凹凸形状に応じた反射光量を検出して表面検査装置9に出力するとともに、ボア3の内側表面3Aに渦電流を流し、発生する電磁誘導を検出して表面検査装置9に出力する。
【0013】
具体的には、センサヘッド7は、光源としてのLD(レーザダイオード)17、光ファイバ19及び集光光学ユニット21を備え、LED17の光を光ファイバ19で集光光学ユニット21に導き、集光光学ユニット21で集光して開口15からレーザ光を出射する。また、センサヘッド7は、反射光を受光する受光センサ23を備えるとともに、集光光学ユニット21を介して戻ってくる反射光を受光センサ23に導く複数の光ファイバ25が光ファイバ19に隣接して配設されている。
【0014】
さらに、センサヘッド7には渦流探傷センサ26が内蔵されている。この渦流探傷センサ26は、ボア3の内側表面3Aに渦電流を流し、発生する電磁誘導による電流を検出するためのコイルを備え、かかる電流がETアンプ28で増幅されて表面検査装置9に入力される。すなわち、電磁誘導による電流は、ボア3の内側表面3Aの凹凸及び内部空洞の有無によって変化することから、電磁誘導による電流が変化する箇所を検出することで欠陥が検出されることとなる。また電磁誘導による電流は、ボア3の内側表面3Aに付着した水滴や塵等の影響を受けにくいため、レーザ光照射による欠陥判定に比べ、水滴や塵等による誤判定を防止できる。
上記渦流探傷センサ26は、上記レーザ光の照射位置と同一高さ位置を検出可能にセンサヘッド7に設けられている。これにより、ボア3の同じ高さ位置でのデジタル画像生成と渦流探傷センサ26による欠陥検出とを1度の走査で同時に行うことができる。
【0015】
駆動機構11は、センサヘッド7を回転させる回転駆動機構31と、この回転駆動機構31を進退させる進退機構33とを備えている。
回転駆動機構31は、ハウジング34と、先端に上記センサヘッド7が取り付けられハウジング34を上下に貫通して設けられたシャフト35と、表面検査装置9の制御の下、シャフト35を回転駆動するシャフトモータ37と、シャフト35の回転速度および回転角を検出し表面検査装置9に出力するロータリエンコーダ39とを備えている。
進退機構33は、送りねじ機構であり、ねじが刻設された軸部41と、この軸部41を回転駆動する進退モータ43と、軸部41の回転速度および回転角を検出し表面検査装置9に出力するロータリエンコーダ45とを備える。軸部41は、ハウジング34のナット部36に螺合されており、進退モータ43を駆動することにより軸部41が回転し、回転駆動機構31を進退させる。
【0016】
表面検査装置9は、駆動機構11を制御してセンサヘッド7の位置を制御する位置制御部51と、渦流探傷センサ26の検出信号に基づいてボア3の欠陥を検出する渦流探傷部53と、センサヘッド7の受光信号に基づいてボア3の内側表面3Aのデジタル画像を生成し、該デジタル画像に基づいてボア3の良否を評価するレーザ検査部55とを備えている。かかる表面検査装置9は、例えばパーソナルコンピュータに、各部を実現するためのプログラムを実行させることで構成可能である。
【0017】
表面検査装置9の各部についてより詳細に説明すると、位置制御部51は、シャフトモータ37及び進退モータ43を駆動するサーボ機構を内蔵し、センサヘッド7の中心軸線12上の位置と回転角を制御する。すなわち、位置制御部51は、検査開始時に、センサヘッド7をボア3に挿入し、開口15及び渦流探傷センサ26を検査範囲Kの下端位置Kaに位置させる。そして、ボーリング加工時のボーリング用バイトの軌跡に倣うように、センサヘッド7を中心軸線12の回りに回転させながら上昇させる動作を、センサヘッド7の開口15及び渦流探傷センサ26が検査範囲Kの上端位置Kbに至るまで行い、該センサヘッド7で検査範囲Kの全表面を螺旋状に走査する。この検査範囲Kは、シリンダとの摺動面として機能する範囲により決定される。
【0018】
渦流探傷部53は、センサヘッド7の渦流探傷センサ26の検出信号をA/D変換し、欠陥の有無に応じた強度値のデジタル信号として出力するA/D変換ボード57と、このデジタル信号に基づいて欠陥マップ画像70を生成する画像化部59と、この欠陥マップ画像70に基づいて欠陥箇所Pを検出する欠陥検出部61とを備えている。
欠陥マップ画像70は、図2(A)に示すように、渦流探傷センサ26の検出信号を検査位置と対応させて画像化したものであり、本実施形態では、センサヘッド7の高さ位置Xとセンサヘッド7の回転角θをそれぞれ縦軸及び横軸として画像化している。この欠陥マップ画像70においては、ボア3の内側表面3Aの打痕や切削加工痕、鋳巣等の欠陥により渦流探傷センサ26の検出信号が変化した箇所が欠陥箇所Pとして出現する。かかる欠陥箇所Pが欠陥検出部61によって検出され、高さ位置X及び回転角θで規定した位置座標(X、θ)がレーザ検査部55に出力される。
【0019】
レーザ検査部55は、センサヘッド7からの受光信号をA/D変換し、輝度を示すデジタル信号として出力するA/D変換ボード63と、このデジタル信号に基づいてデジタル輝度画像71を生成する画像化部65と、上記渦流探傷部53の欠陥検出部61によって検出された欠陥箇所Pの位置座標に基づいて、デジタル輝度画像71に対する画像処理範囲Tを決定する画像処理範囲決定部67と、この画像処理範囲Tに対して画像処理を施し、この画像処理の結果に基づいてボア3の良否を評価する評価部69とを備えている。
デジタル輝度画像71は、図2(B)に示すように、ボア3内の各検査位置でセンサヘッド7により得られる反射光強度を該検査位置と対応させて画像化したものであり、本実施形態では、欠陥マップ画像70と同様に、センサヘッド7の高さ位置Xとセンサヘッド7の回転角θをそれぞれ縦軸及び横軸として画像化している。
【0020】
ここで、センサヘッド7をボア3内で下端位置Kaから上端位置Kbまで移動させる間には、レーザ光照射と渦流探傷センサ26による検出の両方が同時に行われる。したがって、レーザ光照射位置と渦流探傷センサ26の検出位置の間には、開口15と渦流探傷センサ26の取付間隔に応じた位相差αが生じる。そこで画像化部65は、デジタル輝度画像71を生成する際、位置座標が欠陥マップ画像70の位置座標と等しくなるように、位相差αで検出位置の回転角θを補正して画像化する。
【0021】
かかるデジタル輝度画像71には、図2(B)に示すように、ボーリング加工時の切削加工痕Qや、ボーリング用バイト等の工具が衝突してできた打痕Rなどが映し出される。従来の表面検査においては、かかるデジタル輝度画像71の全体に対して2値化処理やパワースペクトル算出処理を施して、検出された切削加工痕Qからオイルピットを除外し、研磨残りなどの切削加工痕Qや打痕R等の有害な欠陥を抽出するため、処理に時間を要する。
これに対して、本実施形態では、上記のように、画像処理範囲決定部67が画像処理を施す範囲を欠陥箇所Pに制限することで、処理の高速化を可能としている。
【0022】
詳述すると、画像処理範囲決定部67は、渦流探傷センサ26によって検出された欠陥箇所Pの位置座標(X、θ)が欠陥検出部61から入力されると、この位置座標(X、θ)を中心とした所定範囲の矩形領域を画像処理範囲Tとして規定する。
これにより、例えば図2(C)に示すように、ボア3の内側表面3Aに打痕Rが存在する場合には、この打痕Rを含む範囲が画像処理範囲Tとして決定される。また、渦流探傷においては、打痕Rや切削加工痕Q等の表面の欠陥の他に、鋳巣等の内部欠陥も検出され、渦流探傷の結果だけでは、これらを区別することはできない。このため、鋳巣等の内部欠陥が渦流探傷部53により検出された場合には、図2(C)に示すように、デジタル輝度画像71では、打痕Rや切削加工痕Q等の目立った凹凸が見られない範囲に対しても画像処理範囲Tが決定される。
【0023】
なお、画像処理範囲Tの大きさは固定値でも可変値でもいずれでも良い。すなわち、欠陥検出部61から欠陥箇所Pの大まかな範囲を画像処理範囲決定部67に入力するように構成した場合には、該範囲を含むように画像処理範囲Tが可変される。また、欠陥検出部61から欠陥箇所Pの例えば中心位置だけを画像処理範囲決定部67に入力するように構成した場合には、通常生じ得る打痕Rや研磨残りを考慮して予め規定した範囲(例えば10μm単位四方)の画像処理範囲Tが用いられる。
【0024】
評価部69は、それぞれの画像処理範囲Tについて画像処理を施すことで、表面の欠陥と内部欠陥とを判別し、また打痕Rや切削加工痕Qなどの表面の欠陥だけを抽出する。そして、これら打痕Rや切削加工痕Q等の大きさ(寸法)を画像処理により求め、これらがオイルピットであるか、或いは、摺動面の機能を阻害する有害な欠陥であるかを識別し、有害な欠陥の場合には、ボア3が不良と評価されることとなる。
【0025】
評価部69の画像処理には、例えば打痕Rや切削加工痕Qが存在する場合の輝度値を閾値として画像を二値化し、打痕Rや切削加工痕Qの有無を示す画像を得る二値化処理を用いることができ、この二値化処理により、打痕Rや切削加工痕Qの有無の検出、及び、それらの大きさを特定することができる。この二値化処理により、打痕Rや切削加工痕Qが検出されない場合には、渦流探傷により鋳巣等の内部欠陥が検出されたことになり、内部欠陥を区別することができる。
また二値化処理の他にも、画像処理範囲Tについてパワースペクトラム画像を求め、該パワースペクトラム画像に基づいて、画像処理範囲Tの凹凸を判定して、該凹凸が生じている割合に応じてボア3の評価を行うこともできる。
【0026】
図3は、ボア内面検査システム1によるボア内面検査処理のフローチャートである。
検査対象のボア3が形成されたシリンダブロック5を駆動機構11の直下の所定位置にセットした後、位置制御部51によりセンサヘッド7をボア3に進入させ、回転させながら進退させることでボア3の内側表面3Aを検査範囲Kに亘って走査する(ステップS1)。そして、この走査中により得られた渦流探傷センサ26の検出信号に基づいて渦流探傷部53が欠陥マップ画像70を生成し、レーザ光の反射光量に基づいてレーザ検査部55がデジタル輝度画像71を生成する(ステップS2)。
【0027】
次いで、渦流探傷部53により、欠陥マップ画像70から欠陥箇所Pと、該欠陥箇所Pの位置情報(X、θ)が検出され(ステップS3)、レーザ検査部55に出力される。そしてレーザ検査部55により、欠陥箇所Pの位置情報(X、θ)に基づいて、画像処理すべき画像処理範囲Tが欠陥箇所Pを含むように決定され(ステップS4)、評価部69により、画像処理範囲Tに対して、欠陥を検出するための二値化処理等の画像処理が施される(ステップS5)。この画像処理により、打痕Rや研磨残り等の切削加工痕Qといった比較的大きな欠陥であって摺動面の機能を阻害する有害な欠陥が検出された場合には(ステップS6:YES)、ボア3が不良と判定され(ステップS7)、有害な欠陥が検出されない場合には(ステップS6:NO)、ボア3が良品と判定される(ステップS8)。
【0028】
このように、本実施形態によれば、ボア3の内側表面3Aを渦流探傷センサ26で走査したため、この内側表面3Aに水滴や塵等の異物が付着している場合でも、該異物の影響を受けることなく欠陥を検出することができる。
さらに、渦流探傷により検出された欠陥の正確な大きさ、及び、欠陥が表面傷或いは鋳巣等の内部欠陥のどちらであるかといったことは渦流探傷センサ26の検出信号から判定できないものの、該欠陥箇所Pを含む画像処理範囲Tに対して画像処理が施されるため、欠陥の大きさが判定可能となり、検出された切削加工痕Qをオイルピットと研磨残りとに区別することができる。これにより、研磨残りや打痕R等の有害な欠陥のみを正確に判定することが可能となり、なおかつ、画像処理を施すべき範囲が画像処理範囲Tに絞り込まれることで検査に要する時間を短縮することができる。
【0029】
また本実施形態によれば、センサヘッド7に、渦流探傷センサ26を設けたため、レーザ光照射によるデジタル輝度画像71の生成と渦流探傷センサ26による欠陥検出を1度の走査で行うことができる。
【0030】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形可能である。
例えば、実施形態では、ボア3の内側表面3Aを検査する装置について例示したが、本発明は、ボア3のような穴の機械加工面を検査する装置に限らない。すなわち、ワークの平面な表面を検査する装置にも適用可能である。この場合、表面が平面であるため、カメラ等で表面全体を1度に撮影してデジタル輝度画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係るボア内面検査システムと、検査対象となるボアが形成されたシリンダブロックの概略構成を示す図である。
【図2】ボア内面検査で生成される画像を検査の流れに沿って示した図である。
【図3】ボア内面検査処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0032】
1 ボア内面検査システム
3 ボア
3A内側表面
5 シリンダブロック
7 センサヘッド
9 表面検査装置
26 渦流探傷センサ
51 位置制御部
53 渦流探傷部
55 レーザ検査部
61 欠陥検出部
67 画像処理範囲決定部
69 評価部
70 欠陥マップ画像
71 デジタル輝度画像
P 欠陥箇所
Q 切削加工痕
R 打痕
T 画像処理範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの表面を、該表面にレーザ光を照射するセンサヘッドで走査し、前記レーザ光の反射像に基づいて前記表面のデジタル画像を生成し、該デジタル画像に対して前記表面の欠陥を検出するための画像処理を施して前記表面を検査する表面検査装置において、
前記表面を走査する渦流探傷センサと、
前記渦流探傷センサの出力に基づいて前記ワークの欠陥箇所を特定し、該欠陥箇所を含んで検査範囲を決定する検査範囲決定手段と、を備え、
前記検査範囲に対して前記画像処理を施して前記表面の欠陥を検出することを特徴とする表面検査装置。
【請求項2】
シリンダブロックに切削加工により形成され研磨されたボアの内側表面を、レーザ光を照射するセンサヘッドで走査し、前記レーザ光の反射像に基づいて前記内側表面のデジタル画像を生成し、該デジタル画像に対して前記内側表面の欠陥を検出するための画像処理を施して前記内側表面を検査する表面検査装置において、
前記内側表面を走査する渦流探傷センサと、
前記渦流探傷センサの出力に基づいて欠陥箇所を特定し、該欠陥箇所を含んで画像処理範囲を決定する画像処理範囲決定手段と、を備え、
前記画像処理範囲に対して前記画像処理を施して前記内側表面の欠陥を検出することを特徴とする表面検査装置。
【請求項3】
前記センサヘッドに、前記渦流探傷センサを設けたことを特徴とする請求項1に記載の表面検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−271177(P2010−271177A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123144(P2009−123144)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】