表面粗さ/形状測定装置及びそれを制御するプログラム
【課題】ワークの評価範囲の設定及び触針の評価範囲の開始位置への移動及び終了位置での移動停止が容易に且つ正確に行える表面粗さ/形状測定装置の実現。
【解決手段】触針28を有し、触針の変位信号を出力する測定子22と、測定子移動機構24とを備える表面粗さ/形状測定装置であって、オペレータの指示する評価範囲設定情報の入力部42,44と、評価範囲設定情報が入力された時の触針の被測定物の表面との初期接触位置Piから触針を接触させた状態で移動させて評価範囲設定情報に基づいて測定開始位置Psを決定する測定開始点検出部52と、触針を移動させ評価範囲設定情報に基づいて測定終了位置Peを決定する測定終了点検出部54と、評価範囲設定情報に基づいて評価範囲を決定する評価範囲決定部56とを備える。
【解決手段】触針28を有し、触針の変位信号を出力する測定子22と、測定子移動機構24とを備える表面粗さ/形状測定装置であって、オペレータの指示する評価範囲設定情報の入力部42,44と、評価範囲設定情報が入力された時の触針の被測定物の表面との初期接触位置Piから触針を接触させた状態で移動させて評価範囲設定情報に基づいて測定開始位置Psを決定する測定開始点検出部52と、触針を移動させ評価範囲設定情報に基づいて測定終了位置Peを決定する測定終了点検出部54と、評価範囲設定情報に基づいて評価範囲を決定する評価範囲決定部56とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面粗さ/形状測定装置及びそれを制御するプログラムに関し、特に測定データを解析する範囲の設定を容易にした表面粗さ/形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表面粗さ/形状測定装置は、被測定物(ワーク)表面に沿って、触針を有する測定子(ピックアップ)を移動させ、測定子の変位量を電気信号に変換してコンピュータ等の計算機に読み取ることで、被測定物(ワーク)表面の粗さ又は輪郭形状を測定する。表面粗さ/形状測定装置については、特許文献1から4などに記載されている。
【0003】
図1に、従来の表面粗さ/形状測定装置の基本構成を示す。
【0004】
表面粗さ/形状測定装置10は、測定部12と、制御部14と、入力装置(キーボード)16と、モニタ18と、から構成される。
【0005】
測定部12は、テーブル20上に載置されたワークの表面粗さを測定する測定子(ピックアップ)22を有し、この測定子22は駆動部24のホルダ24Aに支持されている。
【0006】
測定子22は、先端に触針を有するアーム26を有し、このアーム26の変位量が測定子22に内蔵された差動トランス(図示せず)などによって電気信号に変換される。そして、この電気信号の電圧値はA/D変換器によってディジタル信号に変換され、コンピュータ等で構成される制御部14に入力される。制御部14に入力された測定信号は、制御部14内のデータ処理部によって処理され、ワークの表面粗さを示す測定データが生成される。
【0007】
図1に示すとおり、駆動部24は、テーブル20に立設されたコラム30に取り付けられ、上記の制御部14からの指示に従ってモータが駆動されることにより、駆動部24はホルダ24Aをワークが載置されるテーブル面上の所定の1方向である左右方向(X方向)に移動させることが可能であり、駆動部24全体もまた、ワークの高さにあわせて、コラム30に沿ってテーブル面に垂直な上下方向(Z方向)に移動させることが可能である。このように、測定子22は2軸(XZ)方向に移動可能である。入力装置16又はテーブル20の前面に装着されたジョイスティック32によって、駆動部24を操作して、測定子22を2次元に移動させることが可能である。以下、ジョイスティック32により操作する場合を例として説明する。なお、Y方向にワークを移動させるY軸駆動用ユニットをテーブル20上に載置して、ワークをY方向に移動可能にし、結果として測定子22をワークに対して3軸方向に移動可能にする場合もある。
【0008】
測定を行う場合は、オペレータが、ワークをテーブル20の上に載置し、測定子22をワークに対して移動し、触針をワークの測定する面に接触させる。ここでは、触針の変位方向を測定子22の検出方向と称し、触針をワークの表面に接触させる時には、測定子22を検出方向に移動して近づけ、触針がワークの表面に接触し、検出信号が所定値になると、測定子の降下が停止する。この状態で測定を指示すると、測定子22がX軸方向に移動を開始し、あらかじめ設定されている距離だけ移動し、その間の触針の変位を移動位置に応じて記録する。
【0009】
表面粗さ/形状測定装置で測定を行う場合、測定種別(表面粗さ測定、断面形状測定、うねり測定など)、測定レンジ(Z方向検出可能範囲)、測定速度(X方向移動速度)、カットオフ値(粗さとうねりを分けるための基準波長)、評価長(解析し評価する部分の長さ)、傾斜補正方法(最小二乗直線補正、最小二乗多項式曲線補正、スプライン曲線補正など)など、各種の測定条件を設定して測定を行う必要がある。特許文献1から4は、表面粗さ/形状測定装置における測定条件の設定について記載している。
【0010】
【特許文献1】特開2002−107144号公報
【特許文献2】特開平10−103947号公報
【特許文献3】特開平10−103948号公報
【特許文献4】特開平10−19558号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1から4は、表面粗さ/形状測定装置における測定条件の設定について記載しているが、いずれの文献に記載された構成でも、触針をワークの接触位置に接触させる動作はオペレータの操作により行われる。オペレータは、ワークの測定範囲を確認し、解析し評価する評価範囲の長さである評価長を設定し、ジョイスティック32を操作して触針を評価範囲の端に移動させた後触針を降下させてワーク表面に接触させる。そして、測定開始を指示すると、駆動部24が測定子22を評価長分移動させて測定を行う。
【0012】
上記の操作において、オペレータは、触針を移動して、目視で触針がワークの評価範囲の端に接触することを確認するが、触針が見えにくく、ワークの所望の位置に触針を接触させるのが難しいという問題があった。そのため、評価範囲の位置がばらつくという問題があった。更に、ワークの評価範囲を確認する作業をオペレータが行うが、確認が難しく、ここでも評価範囲の位置がばらつくという問題があった。
【0013】
例えば、円筒状のワークの側面を中心軸に沿って測定する場合、ワークの中心軸が表面粗さ/形状測定装置のX方向に一致するようにした上で、円筒状のワークのもっとも高い位置に触針を接触させる必要があるが、上記のようにこれを手動操作で正確に行うのは難しい。
【0014】
また、表面粗さ/形状測定装置での測定では、ワークの表面を等間隔で同じ開始位置から平行に複数ラインに沿って測定を行う場合が頻繁に行われるが、この時、1つのラインの測定が終わると、ワークを載置した台をY方向に移動させ(コラムを移動させる場合もある)、ジョイスティックを操作して触針を開始位置に移動させるが、上記のようにこの作業は煩雑で、正確に行うのが難しいという問題があった。
【0015】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、ワークの評価範囲の設定及び触針の評価範囲の開始位置への移動及び終了位置での移動停止が容易に且つ正確に行える表面粗さ/形状測定装置の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を実現するため、本発明の表面粗さ/形状測定装置は、触針を接触位置から接触状態で移動させた時の触針の変位を、オペレータの指示する評価範囲設定情報に基づいて解析して測定開始位置及び測定終了位置を決定し、更に測定開始位置及び測定終了位置の間で評価範囲設定情報に基づいて評価範囲を決定する。
【0017】
すなわち、本発明の表面粗さ/形状測定装置は、触針を有し、触針の変位信号を出力する測定子と、前記測定子を被測定物に対して相対的に移動する測定子移動機構とを備え、前記触針を被測定物の表面に接触させた状態で、前記測定子を被測定物の表面に対して相対的に移動した時の前記触針の変位を検出することにより、被測定物の表面の粗さ又は形状を測定する表面粗さ/形状測定装置であって、オペレータの指示する評価範囲設定情報の入力部と、前記評価範囲設定情報が入力された時の前記触針の被測定物の表面との初期接触位置から、前記触針を被測定物の表面に接触させた状態で移動させ、前記評価範囲設定情報に基づいて前記触針の変位を解析して測定開始位置を決定する測定開始点検出部と、前記触針を前記測定開始位置から、被測定物の表面に接触させた状態で移動させ、前記評価範囲設定情報に基づいて前記触針の変位を解析して測定終了位置を決定する測定終了点検出部と、前記評価範囲設定情報に基づいて、決定した前記測定開始位置及び前記測定終了位置から評価範囲を決定する評価範囲決定部とを備えることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、触針を測定するライン上のいずれかの点に接触させて、評価範囲設定情報を指示すると、評価範囲設定情報に従って自動的に測定開始位置及び測定終了位置、更に評価範囲を決定する。従って、オペレータは、触針を測定するライン上のいずれかの点に接触させるだけで、X方向の接触位置精度は高い必要はない。評価範囲設定情報の指示は、複数種類の評価範囲設定情報に前述の測定条件を組み合わせた複数のグループをあらかじめ決めておき、ディスプレイなどに表示して選択するようにすれば容易に行える。
【0019】
評価範囲設定情報は、測定内容に応じて各種設定可能である。
【0020】
例えば、評価範囲設定情報は、設定種別と、開始点変位量と、終了点変位量と、評価範囲割合とを、備えるようにし、測定開始点検出部は、触針の変位が初期接触位置に対して開始点変位量以上変位した時に測定開始位置と判定し、測定終了点検出部は、触針の変位が初期接触位置に対して終了点変位量以上変位した時に測定終了位置と判定し、評価範囲決定部は、測定開始位置と測定終了位置の間の評価範囲割合の分を評価範囲として決定するようにする。開始点変位量と終了点変位量は異なる値でも、同じ値でもよく、正負どちらの値でも(絶対値で記載しても)よい。
【0021】
また、評価範囲設定情報は、設定種別と、開始点変化率と、終了点変化率と、評価範囲割合とを、備え、測定開始点検出部は、触針の変位の変化率が初期接触位置付近の変化率に対して開始点変化率以上異なった時に前記測定開始位置と判定し、測定終了点検出部は、触針の変位の変化率が初期接触位置付近の変化率に対して終了点変化率以上異なった時に測定終了位置と判定し、評価範囲決定部は、測定開始位置と測定終了位置の間の評価範囲割合の分を評価範囲として決定するようにしてもよい。
【0022】
更に、評価範囲設定情報は、設定種別と、評価範囲割合とを、備え、測定開始点検出部は、触針の変位が極大又は極小の一方になる点を測定開始位置と判定し、測定終了点検出部は、触針の変位が極大又は極小の他方になる点を測定開始位置と判定し、評価範囲決定部は、測定開始位置と測定終了位置の間の評価範囲割合の分を評価範囲として決定するようにしてもよい。
【0023】
更に、表面粗さ/形状測定装置が、測定子移動機構による移動方向と90度異なる副方向に、測定子を被測定物に対して相対的に移動する副移動機構を更に備える場合に、触針を決定された評価範囲の開始端に移動し、触針を被測定物の表面に接触させた状態で副方向に移動させて、触針の変位が極大又は極小になる点を補正測定開始位置として決定する補正測定開始点検出部と、触針を決定された評価範囲の終了端に移動し、触針を被測定物の表面に接触させた状態で副方向に移動させて、触針の変位が極大又は極小になる点を補正測定終了位置として決定する補正測定終了点検出部と、を設け、補正測定開始位置及び補正測定終了位置を評価範囲の両端としてその間で測定を行うようにしてもよい。
【0024】
測定開始位置及び測定終了位置が測定中に決定される場合も、測定開始位置、測定終了位置及び評価範囲を決定した後測定を行う場合もあり得る。一般に、評価対象の測定値を得る場合には、測定子を被検査物に対して低速度で相対的に移動させ、測定開始位置及び測定終了位置を決定する場合には、測定子を被検査物に対してある程度高速度で相対的に移動させることが可能である。
【0025】
そこで、測定開始位置及び測定終了位置が測定中に決定される場合には、測定開始点検出部は、触針を初期接触位置から測定開始位置まで高速で移動させ、その後測定終了点検出部は、触針を測定開始位置から測定終了位置まで測定精度に応じた速度で移動して評価対象の測定値を生成し、記測定開始位置から測定終了位置までの間の測定値を解析するようにする。
【0026】
測定開始位置、測定終了位置及び評価範囲を決定した後測定を行う場合には、測定開始点検出部は、触針を初期接触位置から測定開始位置まで高速で移動し、測定終了点検出部は、触針を測定開始位置から測定終了位置まで高速で移動する。これにより、測定開始位置及び測定終了位置が決定でき、評価範囲を決定できる。そこで、触針を、評価範囲内で測定精度に応じた速度で移動させて測定値を生成するようにする。
【0027】
なお、本発明の構成は、表面粗さ/形状測定装置の制御部を構成するコンピュータのプログラムに上記機能を実現するプログラムを付加することで実現できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の表面粗さ/形状測定装置によれば、ワークの評価範囲の設定及び触針の評価範囲の開始位置への移動及び終了位置での移動停止が容易に且つ正確に行えるようになり、操作性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施例の表面粗さ/形状測定装置を説明する。実施例の表面粗さ/形状測定装置は、図1に示すような、測定子を2次元(X方向、Z方向)で移動可能な装置である。
【0030】
図2は、実施例の表面粗さ/形状測定装置の制御部14の構成を示す図である。制御部14は、測定部12からの測定信号(測定子変位信号)を受ける測定子変位情報部40と、入力装置(キーボード)16からの信号を受けるキー入力部42と、ジョイスティック32からの信号を受けるジョイスティック入力部44と、ホストコンピュータなどと通信するための外部通信部46と、測定値を記憶する記憶装置48と、データ処理部50と、を有する。他にもモニタ18とのインターフェースなど従来と同様の要素が設けられるが図示は省略している。制御部14は、コンピュータシステムで実現される。
【0031】
データ処理部50は、測定子変位情報部40からの測定データを解析して表面粗さなどを算出する部分であり、本発明の特徴に関係する部分として、測定開始点検出部52と、測定終了点検出部54と、評価範囲決定部56とを有する。測定開始点検出部52は、オペレータにより評価範囲設定情報が入力された時に、その時点の触針の被測定物の表面との初期接触位置から、触針を被測定物の表面に接触させた状態で移動させ、評価範囲設定情報に基づいて触針の変位を解析して測定開始位置を決定する。同様に、測定終了点検出部54は、触針を測定開始位置から、被測定物の表面に接触させた状態で移動させ、評価範囲設定情報に基づいて触針の変位を解析して測定終了位置を決定する。評価範囲決定部56は、評価範囲設定情報に基づいて、決定した測定開始位置及び測定終了位置から評価範囲を決定する。オペレータは、入力装置16、ジョイスティック32などを利用するか、記憶装置48からの読み出し、または外部通信部46を介して評価範囲設定情報を入力する。
【0032】
図3は、評価範囲設定情報から測定開始点、測定終了点、及び評価範囲を決定する例を説明する図である。図3に示すように、ワークWは、中央が平坦で、両側が下降する面になっている。ここでは、評価範囲設定情報は、変位量差で範囲を規定することを示す設定種別と、開始点変位量Dsと、終了点変位量Deと、評価範囲割合Apとを、有する。評価範囲設定情報が設定された時に、アーム26の触針28がワークWの中央の平坦部分の任意の点(初期接触位置)Piに接触しており、測定子22を左方向(−X方向)64に移動させる。測定子22の変位信号の初期接触位置での値との差信号Drは、小さな値である状態が続くが、触針28が左側の下降する面に達すると、徐々に増加し、差信号Drが開始点変位量Ds以上になった点Psを測定開始点とする。次に、測定子22を測定開始点Psから右方向(+X方向)68に移動させ測定子22の変位信号を記録する。差信号Drは、触針28が左側の下降する面を右側に進むに従って減少し、中央の平坦な部分では小さな値になり、触針28が右側の下降する面に達すると、徐々に増加し、差信号Drが終了点変位量De以上になった点Peを測定終了点とする。そして、測定開始点Psと測定終了点Peの間の距離Mrに、評価範囲割合Apを乗じた距離Arの範囲(中央振り分け)を評価範囲として決定する。そして、測定開始点Psから測定終了点Peまでの移動の間に記録した測定信号のうち評価範囲内の測定信号を解析して評価する。なお、ここでは両側に下降する面を有する例を説明したが、両側に上昇する面を有する場合も同様であり、開始点変位量Ds、終了点変位量De及び差信号Drの値は絶対値で表すようにすればよい。
【0033】
図4及び図5は、実施例の表面粗さ/形状測定装置で、図3で説明した決定方法で測定開始点、測定終了点、及び評価範囲を決定する時の処理を示すフローチャートであり、図6は評価範囲設定情報の設定例を示す図である。
【0034】
まず、オペレータは、ワークWの測定しようとするライン上の任意の点(初期接触位置)に測定子22の触針28を接触させる。この操作は、例えばジョイスティック32を使用して行う。接触位置は測定しようとするライン上であることが必要であるが、X方向の位置は中央の平坦な部分であればどこでもよい。
【0035】
ステップ102では、オペレータが評価範囲設定情報を入力する。この操作は、例えば、図6に示すような、開始点変位量Aと、終了点変位量Bと、評価範囲割合Cについて、各種の組み合わせを決めて制御部14に記憶しておき、モニタ18上にいずれかの組み合わせを選択可能なように表示して、キーボード16やジョイスティック32を使用して選択する。なお、ここでは図示していないが、前述の他の各種の測定条件も合わせて組み合わせておくことも可能である。この操作方法は、同じ測定条件で測定を繰り返す場合などに操作が非常に簡単である。
【0036】
ステップ104では測定開始を指示する。この操作は、開始指示を入力してもよいが、例えば、評価範囲設定情報の入力の終了で代用することも可能である。
【0037】
ステップ106では、触針28がワークWに接触した状態で測定子22を−X方向に高速で移動する。一般に測定信号を記録する時には、検出信号のレスポンスの関係から測定レンジに応じて測定子22を低速で移動する必要がある。しかし、この場合の移動は測定開始点を決定するための移動であり、測定信号にあまり高い精度が要求されないので、高速で移動してスループットを改善することが望ましい。
【0038】
ステップ108では、測定開始位置の検出を、図5のフローチャートに従って行う。ステップ120で測定開始位置の検出が開始されると、ステップ122で測定子の変位信号を検出し、ステップ124で初期接触位置での変位信号と測定子の変位信号との差(絶対値)を算出して、判定値変位(ここでは開始点変位量A)と比較し、差が判定値変位以上であるかを判定する。差が判定値変位以上でなければステップ122に戻る。差が判定値変位以上であればステップ126に進んで、その時のX方向の位置を測定開始位置Psとして検出し、ステップ128で測定開始位置検出動作を終了して−X方向への移動を停止し、図4のフローに戻る。
【0039】
次にステップ110に進んで測定を開始し、ステップ112で測定子22を+X方向に測定レンジに応じた速度で移動させ、変位信号を記録する。この動作を行いながら、ステップ114に進んで、測定終了位置検出動作を行う。
【0040】
測定終了位置検出動作は、判定値変位として終了点変位量Bを使用する以外は図5のフローに示した測定開始位置検出動作と同じであり、測定終了位置Peを検出すると+X方向への移動を停止する。
【0041】
ステップ114が終了して測定終了位置が決定されると、ステップ116に進み、決定した測定開始位置Psと測定終了位置Peとの間の距離に評価範囲割合Cを乗じて評価範囲を決定し、ステップ118に進んで測定を終了する。
【0042】
そして、記録した測定信号のうち評価範囲内の測定信号を解析して評価する。
【0043】
上記の表面粗さ/形状測定装置における評価範囲の設定処理では、測定開始位置Psまでは高速に移動し、測定開始位置Psを決定した後は、測定開始位置Psから測定終了位置Peまで測定レンジに応じて低速で移動したが、評価範囲割合Cの割合が小さいと、評価対象外の部分を低速で移動して測定することになるので、スループットが低いという問題を生じる。そこで、次に説明する変形例では、高速で移動して測定開始位置Ps及び測定終了位置Peを決定し、それから評価範囲を決定した後、評価範囲について低速で移動して測定を行う。
【0044】
図7は、図3で説明した決定方法で測定開始位置Ps、測定終了位置Pe、及び評価範囲を決定する時の処理の変形例を示すフローチャートである。図7のステップ202から208は、図4のステップ102から108までと同じである。
【0045】
測定開始位置を決定した後、ステップ210では、測定子22を+X方向に高速で移動し、移動しながらステップ212で測定終了位置Peを検出する。測定終了位置の検出動作は上記の実施例と同じである。ステップ214では、上記の実施例と同様に評価範囲を決定する。
【0046】
ステップ216では、評価範囲の一方の端の評価開始位置へ移動し、ステップ218で測定レンジに応じて低速で移動しながら検出信号を記録し、これを評価範囲の他方の端まで行い、ステップ220で測定を終了する。
【0047】
評価範囲設定情報から測定開始点、測定終了点、及び評価範囲を決定する処理も各種の変形例が可能である。この変形例を図8を参照して説明する。
【0048】
まず、極大(ピーク)位置を検出する方法を説明する。ワークWが、図8の(A)に示すように、断面が円形の表面形状を有する場合を考える。評価範囲設定情報は、極大(ピーク)位置から極小(バレー)位置までを範囲とすることを示す設定種別と、評価範囲割合とを、有する。ここでは、評価範囲割合を1、すなわち、ピーク位置からバレー位置までを範囲評価とする。範囲設定情報が設定された時に、測定子22の触針28がワークWのピーク位置の右側の任意の点(初期接触位置)Piに接触しており、測定子22を−X方向に移動させ、ピークの位置を検出する。どちらに移動するかは初期接触位置における傾きから判定する。
【0049】
ピークの位置を検出するには、変位信号の値、すなわちZ値の傾き(ΔZ/ΔX)を検出する。図8の(B)は、図8の(A)のΔZ/ΔXの変化を示す。ΔZ/ΔXがゼロになる点が極大点であるので、ΔZ/ΔXがゼロになったら測定開始位置Psとする。
【0050】
ワークWの断面Sが、図8の(C)のように、極大(ピーク)位置Ps及び極小(バレー)位置Peを有するとする。触針28が初期接触位置Piに接触した状態から、測定子22を−X方向に移動させ、上記のように極大(ピーク)位置を検出して測定開始位置Psとする。次に、測定子22を+X方向に移動させ、同様に極小(バレー)位置を検出して測定終了位置Peとする。測定終了位置Peの検出は、ΔZ/ΔXが正の値からゼロになる点以外は測定開始位置Psを検出する場合と同じである。
【0051】
上記のように、評価範囲割合が1であれば、測定開始位置Psが評価開始位置に、測定終了位置Peが評価終了位置になる。
【0052】
次に、評価範囲設定情報から測定開始点、測定終了点、及び評価範囲を決定する別の変形例を、図9を参照して説明する。
【0053】
図9の(A)に示すように、ワークWの表面Sは、中央が平坦で、両側が上昇する面になっている。言い換えれば、図3と逆に中央が低い表面であるが、中央の平坦な部分が若干傾いている。このような表面において、中央の平坦な部分の両端、すなわちPsとPeの間を評価範囲として決定する場合を考える。ここでは、評価範囲設定情報は、傾き変化量差で範囲を規定することを示す設定種別と、開始点傾き変化量と、終了点傾き変化量と、評価範囲割合とを、有する。ここでは、評価範囲割合は1とする。
【0054】
図9の(B)は、図9の(A)の表面の傾きΔZ/ΔXの変化を示す。図示のように、PsとPeで傾きが大きく変化しており、その変化量はそれぞれ開始点傾き変化量と終了点傾き変化量以上であるので、その点を測定開始位置及び測定終了位置として決定する。他の説明は省略する。
【0055】
上記の実施例及び変形例では、測定子22はワークWに対して相対的にX方向及びZ方向に移動可能であるとしたが、更にY方向にも相対的に移動可能にした表面粗さ/形状測定装置が使用されており、以下本発明をこのような装置に適用した場合の例を説明する。
【0056】
測定子22はワークWに対してY方向にも相対的に移動可能にするには、図10の(A)に示すような載物台70をテーブル20上に設置する。載物台70は、テーブル20に固定されるベース72と、その上にY方向に移動可能に設けられたY移動台74と、Y移動台74の上に回転可能に設けられた回転台74と、を有する。Y移動台74及び回転台74を駆動するモータなども設けられているが、公知の構造であるので図示及び説明は省略する。
【0057】
また、図10の(B)に示すように、図1の駆動部24のホルダ24Aに、Y方向の移動機構80を取り付け、それに測定子22を取り付けてもよい。
【0058】
なお、コラム30をY方向に移動可能にして、測定子22をワークに対してY方向に移動可能にする場合もある。ここでは、図10の(A)の載物台70を使用した場合を例として説明する。
【0059】
図11の(A)に示すワークWの中心軸90に平行なラインに沿って表面形状を測定する場合を考える。このワークWは、中央が円筒状で、両端が円錐の一部になっている。ここでは中央の円筒状の部分の表面形状を測定する。
【0060】
ワークWを図10の(A)に示す載物台70に載置し、ワークWの中心軸90が移動部24の移動方向(X方向)に平行になり且つワークWの中心軸と触針28が同じXZ平面内に位置するように位置を調整する。しかし、実際にはこのような状態に調整するのは難しく、図11の(B)に示すように、ワークWの中心軸がXZ平面に対して若干傾いたとする。この状態で図3で説明した方法で測定を行うと、中心軸90を通るXZ平面上の点Q1に触針を接触させても、測定開始位置Q2、測定終了位置Q3、評価範囲の開始位置Q4及び評価範囲の終了位置Q5は中心軸90を通るXZ平面から外れた位置になる。そこで、図8で説明したピーク位置を検出する方法を、Q4及びQ5においてY軸方向に適用してピーク位置Q6及びQ7を検出する。Q6及びQ7は、中心軸90を通るXZ平面上の位置であるので、Q6及びQ7を評価範囲の開始位置及び終了位置とし、Q6及びQ7の間を測定する。測定は、図10の(A)の回転台76を回転してQ6とQ7を結ぶラインがX方向に平行になるようにして、触針28がQ6とQ7を結ぶライン上に位置するように図10の(A)のY移動台74の位置を調整する。
【0061】
図12は、上記の方法で測定を行う場合の処理を示すフローチャートである。図7のステップ214までを行った後、ステップ232で、評価開始位置Q4に移動する。ステップ234では、図8で説明した手順で評価開始位置Q4のY方向のピーク位置Q6を検出する。ステップ236では、評価終了位置Q5に移動する。ステップ238では、同様の手順で評価終了位置Q5のY方向のピーク位置Q7を検出する。ステップ240では、回転台76を回転してワークWのXY平面内での方向を調整する。もし触針28がQ6とQ7を結ぶライン上に位置していない時には、ワークWのY方向の位置も調整する。
【0062】
ステップ242では、触針が評価開始位置Q6に接触するように移動した後、ステップ246で測定レンジに対応した低速で測定を行う。そして、評価終了位置Q7まで測定を行った時に、ステップ248で終了する。
【0063】
なお、図10の(B)のY方向の移動機構80を使用する場合には、Q6とQ7を結ぶラインがX方向に平行になるようにすることはできないので、X方向の移動に同期してY方向も移動させて測定をX方向から若干傾けて行うようにする。
【0064】
以上本発明の実施例及び変形例を説明したが、更に各種の変形例が可能であることは当業者には明らかである。例えば、図10のY方向の移動機構を使用して、Y方向について図3から図9を参照して説明した方法を行うことができる。また、図11及び図12で説明した方法をX方向とY方向を替えて行なうこともできる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明により、表面粗さ/形状測定装置の作業性が改善されるので、これまで生産性の点から表面粗さ/形状測定装置使用できなかった分野でも表面粗さ/形状測定装置が使用できるようになり、表面粗さ/形状測定装置の使用分野が拡大する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】表面粗さ/形状測定装置の外観を示す図である。
【図2】本発明の実施例の表面粗さ/形状測定装置の構成を示す図である。
【図3】評価範囲を決定する例を説明する図である。
【図4】実施例の評価範囲決定動作を示すフローチャートである。
【図5】実施例の所定位置を検出する動作を示すフローチャートである。
【図6】評価範囲設定情報の入力方法の例を説明する図である。
【図7】評価範囲決定動作の変形例を示すフローチャートである。
【図8】評価範囲を決定する変形例を説明する図である。
【図9】評価範囲を決定する変形例を説明する図である。
【図10】変形例で使用するY方向の移動機構の例を示す図である。
【図11】評価範囲を決定する変形例を説明する図である。
【図12】評価範囲決定動作の変形例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0067】
10 表面粗さ/形状測定装置
12 測定部
14 制御部
16 入力装置(キーボード)
20 テーブル
22 測定子(ピックアップ)
24 駆動部
28 触針
50 データ処理部
52 測定開始点検出部
54 測定終了点検出部
56 評価範囲決定部
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面粗さ/形状測定装置及びそれを制御するプログラムに関し、特に測定データを解析する範囲の設定を容易にした表面粗さ/形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表面粗さ/形状測定装置は、被測定物(ワーク)表面に沿って、触針を有する測定子(ピックアップ)を移動させ、測定子の変位量を電気信号に変換してコンピュータ等の計算機に読み取ることで、被測定物(ワーク)表面の粗さ又は輪郭形状を測定する。表面粗さ/形状測定装置については、特許文献1から4などに記載されている。
【0003】
図1に、従来の表面粗さ/形状測定装置の基本構成を示す。
【0004】
表面粗さ/形状測定装置10は、測定部12と、制御部14と、入力装置(キーボード)16と、モニタ18と、から構成される。
【0005】
測定部12は、テーブル20上に載置されたワークの表面粗さを測定する測定子(ピックアップ)22を有し、この測定子22は駆動部24のホルダ24Aに支持されている。
【0006】
測定子22は、先端に触針を有するアーム26を有し、このアーム26の変位量が測定子22に内蔵された差動トランス(図示せず)などによって電気信号に変換される。そして、この電気信号の電圧値はA/D変換器によってディジタル信号に変換され、コンピュータ等で構成される制御部14に入力される。制御部14に入力された測定信号は、制御部14内のデータ処理部によって処理され、ワークの表面粗さを示す測定データが生成される。
【0007】
図1に示すとおり、駆動部24は、テーブル20に立設されたコラム30に取り付けられ、上記の制御部14からの指示に従ってモータが駆動されることにより、駆動部24はホルダ24Aをワークが載置されるテーブル面上の所定の1方向である左右方向(X方向)に移動させることが可能であり、駆動部24全体もまた、ワークの高さにあわせて、コラム30に沿ってテーブル面に垂直な上下方向(Z方向)に移動させることが可能である。このように、測定子22は2軸(XZ)方向に移動可能である。入力装置16又はテーブル20の前面に装着されたジョイスティック32によって、駆動部24を操作して、測定子22を2次元に移動させることが可能である。以下、ジョイスティック32により操作する場合を例として説明する。なお、Y方向にワークを移動させるY軸駆動用ユニットをテーブル20上に載置して、ワークをY方向に移動可能にし、結果として測定子22をワークに対して3軸方向に移動可能にする場合もある。
【0008】
測定を行う場合は、オペレータが、ワークをテーブル20の上に載置し、測定子22をワークに対して移動し、触針をワークの測定する面に接触させる。ここでは、触針の変位方向を測定子22の検出方向と称し、触針をワークの表面に接触させる時には、測定子22を検出方向に移動して近づけ、触針がワークの表面に接触し、検出信号が所定値になると、測定子の降下が停止する。この状態で測定を指示すると、測定子22がX軸方向に移動を開始し、あらかじめ設定されている距離だけ移動し、その間の触針の変位を移動位置に応じて記録する。
【0009】
表面粗さ/形状測定装置で測定を行う場合、測定種別(表面粗さ測定、断面形状測定、うねり測定など)、測定レンジ(Z方向検出可能範囲)、測定速度(X方向移動速度)、カットオフ値(粗さとうねりを分けるための基準波長)、評価長(解析し評価する部分の長さ)、傾斜補正方法(最小二乗直線補正、最小二乗多項式曲線補正、スプライン曲線補正など)など、各種の測定条件を設定して測定を行う必要がある。特許文献1から4は、表面粗さ/形状測定装置における測定条件の設定について記載している。
【0010】
【特許文献1】特開2002−107144号公報
【特許文献2】特開平10−103947号公報
【特許文献3】特開平10−103948号公報
【特許文献4】特開平10−19558号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1から4は、表面粗さ/形状測定装置における測定条件の設定について記載しているが、いずれの文献に記載された構成でも、触針をワークの接触位置に接触させる動作はオペレータの操作により行われる。オペレータは、ワークの測定範囲を確認し、解析し評価する評価範囲の長さである評価長を設定し、ジョイスティック32を操作して触針を評価範囲の端に移動させた後触針を降下させてワーク表面に接触させる。そして、測定開始を指示すると、駆動部24が測定子22を評価長分移動させて測定を行う。
【0012】
上記の操作において、オペレータは、触針を移動して、目視で触針がワークの評価範囲の端に接触することを確認するが、触針が見えにくく、ワークの所望の位置に触針を接触させるのが難しいという問題があった。そのため、評価範囲の位置がばらつくという問題があった。更に、ワークの評価範囲を確認する作業をオペレータが行うが、確認が難しく、ここでも評価範囲の位置がばらつくという問題があった。
【0013】
例えば、円筒状のワークの側面を中心軸に沿って測定する場合、ワークの中心軸が表面粗さ/形状測定装置のX方向に一致するようにした上で、円筒状のワークのもっとも高い位置に触針を接触させる必要があるが、上記のようにこれを手動操作で正確に行うのは難しい。
【0014】
また、表面粗さ/形状測定装置での測定では、ワークの表面を等間隔で同じ開始位置から平行に複数ラインに沿って測定を行う場合が頻繁に行われるが、この時、1つのラインの測定が終わると、ワークを載置した台をY方向に移動させ(コラムを移動させる場合もある)、ジョイスティックを操作して触針を開始位置に移動させるが、上記のようにこの作業は煩雑で、正確に行うのが難しいという問題があった。
【0015】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、ワークの評価範囲の設定及び触針の評価範囲の開始位置への移動及び終了位置での移動停止が容易に且つ正確に行える表面粗さ/形状測定装置の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を実現するため、本発明の表面粗さ/形状測定装置は、触針を接触位置から接触状態で移動させた時の触針の変位を、オペレータの指示する評価範囲設定情報に基づいて解析して測定開始位置及び測定終了位置を決定し、更に測定開始位置及び測定終了位置の間で評価範囲設定情報に基づいて評価範囲を決定する。
【0017】
すなわち、本発明の表面粗さ/形状測定装置は、触針を有し、触針の変位信号を出力する測定子と、前記測定子を被測定物に対して相対的に移動する測定子移動機構とを備え、前記触針を被測定物の表面に接触させた状態で、前記測定子を被測定物の表面に対して相対的に移動した時の前記触針の変位を検出することにより、被測定物の表面の粗さ又は形状を測定する表面粗さ/形状測定装置であって、オペレータの指示する評価範囲設定情報の入力部と、前記評価範囲設定情報が入力された時の前記触針の被測定物の表面との初期接触位置から、前記触針を被測定物の表面に接触させた状態で移動させ、前記評価範囲設定情報に基づいて前記触針の変位を解析して測定開始位置を決定する測定開始点検出部と、前記触針を前記測定開始位置から、被測定物の表面に接触させた状態で移動させ、前記評価範囲設定情報に基づいて前記触針の変位を解析して測定終了位置を決定する測定終了点検出部と、前記評価範囲設定情報に基づいて、決定した前記測定開始位置及び前記測定終了位置から評価範囲を決定する評価範囲決定部とを備えることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、触針を測定するライン上のいずれかの点に接触させて、評価範囲設定情報を指示すると、評価範囲設定情報に従って自動的に測定開始位置及び測定終了位置、更に評価範囲を決定する。従って、オペレータは、触針を測定するライン上のいずれかの点に接触させるだけで、X方向の接触位置精度は高い必要はない。評価範囲設定情報の指示は、複数種類の評価範囲設定情報に前述の測定条件を組み合わせた複数のグループをあらかじめ決めておき、ディスプレイなどに表示して選択するようにすれば容易に行える。
【0019】
評価範囲設定情報は、測定内容に応じて各種設定可能である。
【0020】
例えば、評価範囲設定情報は、設定種別と、開始点変位量と、終了点変位量と、評価範囲割合とを、備えるようにし、測定開始点検出部は、触針の変位が初期接触位置に対して開始点変位量以上変位した時に測定開始位置と判定し、測定終了点検出部は、触針の変位が初期接触位置に対して終了点変位量以上変位した時に測定終了位置と判定し、評価範囲決定部は、測定開始位置と測定終了位置の間の評価範囲割合の分を評価範囲として決定するようにする。開始点変位量と終了点変位量は異なる値でも、同じ値でもよく、正負どちらの値でも(絶対値で記載しても)よい。
【0021】
また、評価範囲設定情報は、設定種別と、開始点変化率と、終了点変化率と、評価範囲割合とを、備え、測定開始点検出部は、触針の変位の変化率が初期接触位置付近の変化率に対して開始点変化率以上異なった時に前記測定開始位置と判定し、測定終了点検出部は、触針の変位の変化率が初期接触位置付近の変化率に対して終了点変化率以上異なった時に測定終了位置と判定し、評価範囲決定部は、測定開始位置と測定終了位置の間の評価範囲割合の分を評価範囲として決定するようにしてもよい。
【0022】
更に、評価範囲設定情報は、設定種別と、評価範囲割合とを、備え、測定開始点検出部は、触針の変位が極大又は極小の一方になる点を測定開始位置と判定し、測定終了点検出部は、触針の変位が極大又は極小の他方になる点を測定開始位置と判定し、評価範囲決定部は、測定開始位置と測定終了位置の間の評価範囲割合の分を評価範囲として決定するようにしてもよい。
【0023】
更に、表面粗さ/形状測定装置が、測定子移動機構による移動方向と90度異なる副方向に、測定子を被測定物に対して相対的に移動する副移動機構を更に備える場合に、触針を決定された評価範囲の開始端に移動し、触針を被測定物の表面に接触させた状態で副方向に移動させて、触針の変位が極大又は極小になる点を補正測定開始位置として決定する補正測定開始点検出部と、触針を決定された評価範囲の終了端に移動し、触針を被測定物の表面に接触させた状態で副方向に移動させて、触針の変位が極大又は極小になる点を補正測定終了位置として決定する補正測定終了点検出部と、を設け、補正測定開始位置及び補正測定終了位置を評価範囲の両端としてその間で測定を行うようにしてもよい。
【0024】
測定開始位置及び測定終了位置が測定中に決定される場合も、測定開始位置、測定終了位置及び評価範囲を決定した後測定を行う場合もあり得る。一般に、評価対象の測定値を得る場合には、測定子を被検査物に対して低速度で相対的に移動させ、測定開始位置及び測定終了位置を決定する場合には、測定子を被検査物に対してある程度高速度で相対的に移動させることが可能である。
【0025】
そこで、測定開始位置及び測定終了位置が測定中に決定される場合には、測定開始点検出部は、触針を初期接触位置から測定開始位置まで高速で移動させ、その後測定終了点検出部は、触針を測定開始位置から測定終了位置まで測定精度に応じた速度で移動して評価対象の測定値を生成し、記測定開始位置から測定終了位置までの間の測定値を解析するようにする。
【0026】
測定開始位置、測定終了位置及び評価範囲を決定した後測定を行う場合には、測定開始点検出部は、触針を初期接触位置から測定開始位置まで高速で移動し、測定終了点検出部は、触針を測定開始位置から測定終了位置まで高速で移動する。これにより、測定開始位置及び測定終了位置が決定でき、評価範囲を決定できる。そこで、触針を、評価範囲内で測定精度に応じた速度で移動させて測定値を生成するようにする。
【0027】
なお、本発明の構成は、表面粗さ/形状測定装置の制御部を構成するコンピュータのプログラムに上記機能を実現するプログラムを付加することで実現できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の表面粗さ/形状測定装置によれば、ワークの評価範囲の設定及び触針の評価範囲の開始位置への移動及び終了位置での移動停止が容易に且つ正確に行えるようになり、操作性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施例の表面粗さ/形状測定装置を説明する。実施例の表面粗さ/形状測定装置は、図1に示すような、測定子を2次元(X方向、Z方向)で移動可能な装置である。
【0030】
図2は、実施例の表面粗さ/形状測定装置の制御部14の構成を示す図である。制御部14は、測定部12からの測定信号(測定子変位信号)を受ける測定子変位情報部40と、入力装置(キーボード)16からの信号を受けるキー入力部42と、ジョイスティック32からの信号を受けるジョイスティック入力部44と、ホストコンピュータなどと通信するための外部通信部46と、測定値を記憶する記憶装置48と、データ処理部50と、を有する。他にもモニタ18とのインターフェースなど従来と同様の要素が設けられるが図示は省略している。制御部14は、コンピュータシステムで実現される。
【0031】
データ処理部50は、測定子変位情報部40からの測定データを解析して表面粗さなどを算出する部分であり、本発明の特徴に関係する部分として、測定開始点検出部52と、測定終了点検出部54と、評価範囲決定部56とを有する。測定開始点検出部52は、オペレータにより評価範囲設定情報が入力された時に、その時点の触針の被測定物の表面との初期接触位置から、触針を被測定物の表面に接触させた状態で移動させ、評価範囲設定情報に基づいて触針の変位を解析して測定開始位置を決定する。同様に、測定終了点検出部54は、触針を測定開始位置から、被測定物の表面に接触させた状態で移動させ、評価範囲設定情報に基づいて触針の変位を解析して測定終了位置を決定する。評価範囲決定部56は、評価範囲設定情報に基づいて、決定した測定開始位置及び測定終了位置から評価範囲を決定する。オペレータは、入力装置16、ジョイスティック32などを利用するか、記憶装置48からの読み出し、または外部通信部46を介して評価範囲設定情報を入力する。
【0032】
図3は、評価範囲設定情報から測定開始点、測定終了点、及び評価範囲を決定する例を説明する図である。図3に示すように、ワークWは、中央が平坦で、両側が下降する面になっている。ここでは、評価範囲設定情報は、変位量差で範囲を規定することを示す設定種別と、開始点変位量Dsと、終了点変位量Deと、評価範囲割合Apとを、有する。評価範囲設定情報が設定された時に、アーム26の触針28がワークWの中央の平坦部分の任意の点(初期接触位置)Piに接触しており、測定子22を左方向(−X方向)64に移動させる。測定子22の変位信号の初期接触位置での値との差信号Drは、小さな値である状態が続くが、触針28が左側の下降する面に達すると、徐々に増加し、差信号Drが開始点変位量Ds以上になった点Psを測定開始点とする。次に、測定子22を測定開始点Psから右方向(+X方向)68に移動させ測定子22の変位信号を記録する。差信号Drは、触針28が左側の下降する面を右側に進むに従って減少し、中央の平坦な部分では小さな値になり、触針28が右側の下降する面に達すると、徐々に増加し、差信号Drが終了点変位量De以上になった点Peを測定終了点とする。そして、測定開始点Psと測定終了点Peの間の距離Mrに、評価範囲割合Apを乗じた距離Arの範囲(中央振り分け)を評価範囲として決定する。そして、測定開始点Psから測定終了点Peまでの移動の間に記録した測定信号のうち評価範囲内の測定信号を解析して評価する。なお、ここでは両側に下降する面を有する例を説明したが、両側に上昇する面を有する場合も同様であり、開始点変位量Ds、終了点変位量De及び差信号Drの値は絶対値で表すようにすればよい。
【0033】
図4及び図5は、実施例の表面粗さ/形状測定装置で、図3で説明した決定方法で測定開始点、測定終了点、及び評価範囲を決定する時の処理を示すフローチャートであり、図6は評価範囲設定情報の設定例を示す図である。
【0034】
まず、オペレータは、ワークWの測定しようとするライン上の任意の点(初期接触位置)に測定子22の触針28を接触させる。この操作は、例えばジョイスティック32を使用して行う。接触位置は測定しようとするライン上であることが必要であるが、X方向の位置は中央の平坦な部分であればどこでもよい。
【0035】
ステップ102では、オペレータが評価範囲設定情報を入力する。この操作は、例えば、図6に示すような、開始点変位量Aと、終了点変位量Bと、評価範囲割合Cについて、各種の組み合わせを決めて制御部14に記憶しておき、モニタ18上にいずれかの組み合わせを選択可能なように表示して、キーボード16やジョイスティック32を使用して選択する。なお、ここでは図示していないが、前述の他の各種の測定条件も合わせて組み合わせておくことも可能である。この操作方法は、同じ測定条件で測定を繰り返す場合などに操作が非常に簡単である。
【0036】
ステップ104では測定開始を指示する。この操作は、開始指示を入力してもよいが、例えば、評価範囲設定情報の入力の終了で代用することも可能である。
【0037】
ステップ106では、触針28がワークWに接触した状態で測定子22を−X方向に高速で移動する。一般に測定信号を記録する時には、検出信号のレスポンスの関係から測定レンジに応じて測定子22を低速で移動する必要がある。しかし、この場合の移動は測定開始点を決定するための移動であり、測定信号にあまり高い精度が要求されないので、高速で移動してスループットを改善することが望ましい。
【0038】
ステップ108では、測定開始位置の検出を、図5のフローチャートに従って行う。ステップ120で測定開始位置の検出が開始されると、ステップ122で測定子の変位信号を検出し、ステップ124で初期接触位置での変位信号と測定子の変位信号との差(絶対値)を算出して、判定値変位(ここでは開始点変位量A)と比較し、差が判定値変位以上であるかを判定する。差が判定値変位以上でなければステップ122に戻る。差が判定値変位以上であればステップ126に進んで、その時のX方向の位置を測定開始位置Psとして検出し、ステップ128で測定開始位置検出動作を終了して−X方向への移動を停止し、図4のフローに戻る。
【0039】
次にステップ110に進んで測定を開始し、ステップ112で測定子22を+X方向に測定レンジに応じた速度で移動させ、変位信号を記録する。この動作を行いながら、ステップ114に進んで、測定終了位置検出動作を行う。
【0040】
測定終了位置検出動作は、判定値変位として終了点変位量Bを使用する以外は図5のフローに示した測定開始位置検出動作と同じであり、測定終了位置Peを検出すると+X方向への移動を停止する。
【0041】
ステップ114が終了して測定終了位置が決定されると、ステップ116に進み、決定した測定開始位置Psと測定終了位置Peとの間の距離に評価範囲割合Cを乗じて評価範囲を決定し、ステップ118に進んで測定を終了する。
【0042】
そして、記録した測定信号のうち評価範囲内の測定信号を解析して評価する。
【0043】
上記の表面粗さ/形状測定装置における評価範囲の設定処理では、測定開始位置Psまでは高速に移動し、測定開始位置Psを決定した後は、測定開始位置Psから測定終了位置Peまで測定レンジに応じて低速で移動したが、評価範囲割合Cの割合が小さいと、評価対象外の部分を低速で移動して測定することになるので、スループットが低いという問題を生じる。そこで、次に説明する変形例では、高速で移動して測定開始位置Ps及び測定終了位置Peを決定し、それから評価範囲を決定した後、評価範囲について低速で移動して測定を行う。
【0044】
図7は、図3で説明した決定方法で測定開始位置Ps、測定終了位置Pe、及び評価範囲を決定する時の処理の変形例を示すフローチャートである。図7のステップ202から208は、図4のステップ102から108までと同じである。
【0045】
測定開始位置を決定した後、ステップ210では、測定子22を+X方向に高速で移動し、移動しながらステップ212で測定終了位置Peを検出する。測定終了位置の検出動作は上記の実施例と同じである。ステップ214では、上記の実施例と同様に評価範囲を決定する。
【0046】
ステップ216では、評価範囲の一方の端の評価開始位置へ移動し、ステップ218で測定レンジに応じて低速で移動しながら検出信号を記録し、これを評価範囲の他方の端まで行い、ステップ220で測定を終了する。
【0047】
評価範囲設定情報から測定開始点、測定終了点、及び評価範囲を決定する処理も各種の変形例が可能である。この変形例を図8を参照して説明する。
【0048】
まず、極大(ピーク)位置を検出する方法を説明する。ワークWが、図8の(A)に示すように、断面が円形の表面形状を有する場合を考える。評価範囲設定情報は、極大(ピーク)位置から極小(バレー)位置までを範囲とすることを示す設定種別と、評価範囲割合とを、有する。ここでは、評価範囲割合を1、すなわち、ピーク位置からバレー位置までを範囲評価とする。範囲設定情報が設定された時に、測定子22の触針28がワークWのピーク位置の右側の任意の点(初期接触位置)Piに接触しており、測定子22を−X方向に移動させ、ピークの位置を検出する。どちらに移動するかは初期接触位置における傾きから判定する。
【0049】
ピークの位置を検出するには、変位信号の値、すなわちZ値の傾き(ΔZ/ΔX)を検出する。図8の(B)は、図8の(A)のΔZ/ΔXの変化を示す。ΔZ/ΔXがゼロになる点が極大点であるので、ΔZ/ΔXがゼロになったら測定開始位置Psとする。
【0050】
ワークWの断面Sが、図8の(C)のように、極大(ピーク)位置Ps及び極小(バレー)位置Peを有するとする。触針28が初期接触位置Piに接触した状態から、測定子22を−X方向に移動させ、上記のように極大(ピーク)位置を検出して測定開始位置Psとする。次に、測定子22を+X方向に移動させ、同様に極小(バレー)位置を検出して測定終了位置Peとする。測定終了位置Peの検出は、ΔZ/ΔXが正の値からゼロになる点以外は測定開始位置Psを検出する場合と同じである。
【0051】
上記のように、評価範囲割合が1であれば、測定開始位置Psが評価開始位置に、測定終了位置Peが評価終了位置になる。
【0052】
次に、評価範囲設定情報から測定開始点、測定終了点、及び評価範囲を決定する別の変形例を、図9を参照して説明する。
【0053】
図9の(A)に示すように、ワークWの表面Sは、中央が平坦で、両側が上昇する面になっている。言い換えれば、図3と逆に中央が低い表面であるが、中央の平坦な部分が若干傾いている。このような表面において、中央の平坦な部分の両端、すなわちPsとPeの間を評価範囲として決定する場合を考える。ここでは、評価範囲設定情報は、傾き変化量差で範囲を規定することを示す設定種別と、開始点傾き変化量と、終了点傾き変化量と、評価範囲割合とを、有する。ここでは、評価範囲割合は1とする。
【0054】
図9の(B)は、図9の(A)の表面の傾きΔZ/ΔXの変化を示す。図示のように、PsとPeで傾きが大きく変化しており、その変化量はそれぞれ開始点傾き変化量と終了点傾き変化量以上であるので、その点を測定開始位置及び測定終了位置として決定する。他の説明は省略する。
【0055】
上記の実施例及び変形例では、測定子22はワークWに対して相対的にX方向及びZ方向に移動可能であるとしたが、更にY方向にも相対的に移動可能にした表面粗さ/形状測定装置が使用されており、以下本発明をこのような装置に適用した場合の例を説明する。
【0056】
測定子22はワークWに対してY方向にも相対的に移動可能にするには、図10の(A)に示すような載物台70をテーブル20上に設置する。載物台70は、テーブル20に固定されるベース72と、その上にY方向に移動可能に設けられたY移動台74と、Y移動台74の上に回転可能に設けられた回転台74と、を有する。Y移動台74及び回転台74を駆動するモータなども設けられているが、公知の構造であるので図示及び説明は省略する。
【0057】
また、図10の(B)に示すように、図1の駆動部24のホルダ24Aに、Y方向の移動機構80を取り付け、それに測定子22を取り付けてもよい。
【0058】
なお、コラム30をY方向に移動可能にして、測定子22をワークに対してY方向に移動可能にする場合もある。ここでは、図10の(A)の載物台70を使用した場合を例として説明する。
【0059】
図11の(A)に示すワークWの中心軸90に平行なラインに沿って表面形状を測定する場合を考える。このワークWは、中央が円筒状で、両端が円錐の一部になっている。ここでは中央の円筒状の部分の表面形状を測定する。
【0060】
ワークWを図10の(A)に示す載物台70に載置し、ワークWの中心軸90が移動部24の移動方向(X方向)に平行になり且つワークWの中心軸と触針28が同じXZ平面内に位置するように位置を調整する。しかし、実際にはこのような状態に調整するのは難しく、図11の(B)に示すように、ワークWの中心軸がXZ平面に対して若干傾いたとする。この状態で図3で説明した方法で測定を行うと、中心軸90を通るXZ平面上の点Q1に触針を接触させても、測定開始位置Q2、測定終了位置Q3、評価範囲の開始位置Q4及び評価範囲の終了位置Q5は中心軸90を通るXZ平面から外れた位置になる。そこで、図8で説明したピーク位置を検出する方法を、Q4及びQ5においてY軸方向に適用してピーク位置Q6及びQ7を検出する。Q6及びQ7は、中心軸90を通るXZ平面上の位置であるので、Q6及びQ7を評価範囲の開始位置及び終了位置とし、Q6及びQ7の間を測定する。測定は、図10の(A)の回転台76を回転してQ6とQ7を結ぶラインがX方向に平行になるようにして、触針28がQ6とQ7を結ぶライン上に位置するように図10の(A)のY移動台74の位置を調整する。
【0061】
図12は、上記の方法で測定を行う場合の処理を示すフローチャートである。図7のステップ214までを行った後、ステップ232で、評価開始位置Q4に移動する。ステップ234では、図8で説明した手順で評価開始位置Q4のY方向のピーク位置Q6を検出する。ステップ236では、評価終了位置Q5に移動する。ステップ238では、同様の手順で評価終了位置Q5のY方向のピーク位置Q7を検出する。ステップ240では、回転台76を回転してワークWのXY平面内での方向を調整する。もし触針28がQ6とQ7を結ぶライン上に位置していない時には、ワークWのY方向の位置も調整する。
【0062】
ステップ242では、触針が評価開始位置Q6に接触するように移動した後、ステップ246で測定レンジに対応した低速で測定を行う。そして、評価終了位置Q7まで測定を行った時に、ステップ248で終了する。
【0063】
なお、図10の(B)のY方向の移動機構80を使用する場合には、Q6とQ7を結ぶラインがX方向に平行になるようにすることはできないので、X方向の移動に同期してY方向も移動させて測定をX方向から若干傾けて行うようにする。
【0064】
以上本発明の実施例及び変形例を説明したが、更に各種の変形例が可能であることは当業者には明らかである。例えば、図10のY方向の移動機構を使用して、Y方向について図3から図9を参照して説明した方法を行うことができる。また、図11及び図12で説明した方法をX方向とY方向を替えて行なうこともできる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明により、表面粗さ/形状測定装置の作業性が改善されるので、これまで生産性の点から表面粗さ/形状測定装置使用できなかった分野でも表面粗さ/形状測定装置が使用できるようになり、表面粗さ/形状測定装置の使用分野が拡大する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】表面粗さ/形状測定装置の外観を示す図である。
【図2】本発明の実施例の表面粗さ/形状測定装置の構成を示す図である。
【図3】評価範囲を決定する例を説明する図である。
【図4】実施例の評価範囲決定動作を示すフローチャートである。
【図5】実施例の所定位置を検出する動作を示すフローチャートである。
【図6】評価範囲設定情報の入力方法の例を説明する図である。
【図7】評価範囲決定動作の変形例を示すフローチャートである。
【図8】評価範囲を決定する変形例を説明する図である。
【図9】評価範囲を決定する変形例を説明する図である。
【図10】変形例で使用するY方向の移動機構の例を示す図である。
【図11】評価範囲を決定する変形例を説明する図である。
【図12】評価範囲決定動作の変形例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0067】
10 表面粗さ/形状測定装置
12 測定部
14 制御部
16 入力装置(キーボード)
20 テーブル
22 測定子(ピックアップ)
24 駆動部
28 触針
50 データ処理部
52 測定開始点検出部
54 測定終了点検出部
56 評価範囲決定部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触針を有し、前記触針の変位を示す変位信号を出力する測定子と、前記測定子を被測定物に対して相対的に移動する測定子移動機構とを備え、前記触針を被測定物の表面に接触させた状態で、前記測定子を被測定物の表面に対して相対的に移動した時の前記触針の変位を検出することにより、被測定物の表面の粗さ又は形状を測定する表面粗さ/形状測定装置であって、
オペレータの指示する評価範囲設定情報の入力部と、
前記評価範囲設定情報が入力された時の前記触針の被測定物の表面との初期接触位置から、前記触針を被測定物の表面に接触させた状態で移動させ、前記評価範囲設定情報に基づいて前記触針の変位を解析して測定開始位置を決定する測定開始点検出部と、
前記触針を前記測定開始位置から、被測定物の表面に接触させた状態で移動させ、前記評価範囲設定情報に基づいて前記触針の変位を解析して測定終了位置を決定する測定終了点検出部と、
前記評価範囲設定情報に基づいて、決定した前記測定開始位置及び前記測定終了位置から評価範囲を決定する評価範囲決定部と、を備えることを特徴とする表面粗さ/形状測定装置。
【請求項2】
前記評価範囲設定情報は、
設定種別と、開始点変位量と、終了点変位量と、評価範囲割合とを、備え、
前記測定開始点検出部は、前記触針の変位が前記初期接触位置に対して前記開始点変位量以上変位した時に前記測定開始位置と判定し、
前記測定終了点検出部は、前記触針の変位が前記初期接触位置に対して前記終了点変位量以上変位した時に前記測定終了位置と判定し、
前記評価範囲決定部は、前記測定開始位置と前記測定終了位置の間の前記評価範囲割合の分を評価範囲として決定する請求項1に記載の表面粗さ/形状測定装置。
【請求項3】
前記評価範囲設定情報は、
設定種別と、開始点変化率と、終了点変化率と、評価範囲割合とを、備え、
前記測定開始点検出部は、前記触針の変位の変化率が前記初期接触位置付近の変化率に対して前記開始点変化率以上異なった時に前記測定開始位置と判定し、
前記測定終了点検出部は、前記触針の変位の変化率が前記初期接触位置付近の変化率に対して前記終了点変化率以上異なった時に前記測定終了位置と判定し、
前記評価範囲決定部は、前記測定開始位置と前記測定終了位置の間の前記評価範囲割合の分を評価範囲として決定する請求項1に記載の表面粗さ/形状測定装置。
【請求項4】
前記評価範囲設定情報は、
設定種別と、評価範囲割合とを、備え、
前記測定開始点検出部は、前記触針の変位が極大又は極小の一方になる点を前記測定開始位置と判定し、
前記測定終了点検出部は、前記触針の変位が極大又は極小の他方になる点を前記測定開始位置と判定し、
前記評価範囲決定部は、前記測定開始位置と前記測定終了位置の間の前記評価範囲割合の分を評価範囲として決定する請求項1に記載の表面粗さ/形状測定装置。
【請求項5】
当該表面粗さ/形状測定装置は、前記測定子移動機構による移動方向と90度異なる副方向に、前記測定子を被測定物に対して相対的に移動する副移動機構を更に備え、
前記触針を決定された前記評価範囲の開始端に移動し、前記触針を被測定物の表面に接触させた状態で副方向に移動させて、前記触針の変位が極大又は極小になる点を補正測定開始位置として決定する補正測定開始点検出部と、
前記触針を決定された前記評価範囲の終了端に移動し、前記触針を被測定物の表面に接触させた状態で副方向に移動させて、前記触針の変位が極大又は極小になる点を補正測定終了位置として決定する補正測定終了点検出部と、を備え、
前記補正測定開始位置及び前記補正測定終了位置を前記評価範囲の両端としてその間で測定を行う請求項1に記載の表面粗さ/形状測定装置。
【請求項6】
前記測定開始点検出部は、前記触針を前記初期接触位置から前記測定開始位置まで高速で移動し、
前記測定終了点検出部は、前記触針を前記測定開始位置から前記測定終了位置まで測定精度に応じた速度で移動し、
前記測定開始位置から前記測定終了位置までの間の測定値を解析する請求項1から4のいずれか1項に記載の表面粗さ/形状測定装置。
【請求項7】
前記測定開始点検出部は、前記触針を前記初期接触位置から前記測定開始位置まで高速で移動し、
前記測定終了点検出部は、前記触針を前記測定開始位置から前記測定終了位置まで高速で移動し、
前記触針を、前記評価範囲内で測定精度に応じた速度で移動させて測定値を生成する測定部を更に備える請求項1から5のいずれか1項に記載の表面粗さ/形状測定装置。
【請求項8】
触針を有する測定子と、前記触針の変位を検出する検出部と、前記測定子を被測定物に対して相対的に移動する測定子移動機構とを備え、前記触針を被測定物の表面に接触させた状態で、前記測定子を被測定物の表面に対して相対的に移動した時の前記触針の変位を検出することにより、被測定物の表面の粗さ又は形状を測定する表面粗さ/形状測定装置を制御するコンピュータに、自動的に評価範囲を決定させるように制御させるプログラムであって、
オペレータが評価範囲設定情報を入力するのに応じて、前記触針の被測定物の表面との初期接触位置から、前記触針を被測定物の表面に接触させた状態で移動させ、前記評価範囲設定情報に基づいて前記触針の変位を解析して測定開始位置を決定させ、
前記触針を前記測定開始位置から、被測定物の表面に接触させた状態で移動させ、前記評価範囲設定情報に基づいて前記触針の変位を解析して測定終了位置を決定させ、
前記評価範囲設定情報に基づいて、決定した前記測定開始位置及び前記測定終了位置から評価範囲を決定させることを特徴とするプログラム。
【請求項1】
触針を有し、前記触針の変位を示す変位信号を出力する測定子と、前記測定子を被測定物に対して相対的に移動する測定子移動機構とを備え、前記触針を被測定物の表面に接触させた状態で、前記測定子を被測定物の表面に対して相対的に移動した時の前記触針の変位を検出することにより、被測定物の表面の粗さ又は形状を測定する表面粗さ/形状測定装置であって、
オペレータの指示する評価範囲設定情報の入力部と、
前記評価範囲設定情報が入力された時の前記触針の被測定物の表面との初期接触位置から、前記触針を被測定物の表面に接触させた状態で移動させ、前記評価範囲設定情報に基づいて前記触針の変位を解析して測定開始位置を決定する測定開始点検出部と、
前記触針を前記測定開始位置から、被測定物の表面に接触させた状態で移動させ、前記評価範囲設定情報に基づいて前記触針の変位を解析して測定終了位置を決定する測定終了点検出部と、
前記評価範囲設定情報に基づいて、決定した前記測定開始位置及び前記測定終了位置から評価範囲を決定する評価範囲決定部と、を備えることを特徴とする表面粗さ/形状測定装置。
【請求項2】
前記評価範囲設定情報は、
設定種別と、開始点変位量と、終了点変位量と、評価範囲割合とを、備え、
前記測定開始点検出部は、前記触針の変位が前記初期接触位置に対して前記開始点変位量以上変位した時に前記測定開始位置と判定し、
前記測定終了点検出部は、前記触針の変位が前記初期接触位置に対して前記終了点変位量以上変位した時に前記測定終了位置と判定し、
前記評価範囲決定部は、前記測定開始位置と前記測定終了位置の間の前記評価範囲割合の分を評価範囲として決定する請求項1に記載の表面粗さ/形状測定装置。
【請求項3】
前記評価範囲設定情報は、
設定種別と、開始点変化率と、終了点変化率と、評価範囲割合とを、備え、
前記測定開始点検出部は、前記触針の変位の変化率が前記初期接触位置付近の変化率に対して前記開始点変化率以上異なった時に前記測定開始位置と判定し、
前記測定終了点検出部は、前記触針の変位の変化率が前記初期接触位置付近の変化率に対して前記終了点変化率以上異なった時に前記測定終了位置と判定し、
前記評価範囲決定部は、前記測定開始位置と前記測定終了位置の間の前記評価範囲割合の分を評価範囲として決定する請求項1に記載の表面粗さ/形状測定装置。
【請求項4】
前記評価範囲設定情報は、
設定種別と、評価範囲割合とを、備え、
前記測定開始点検出部は、前記触針の変位が極大又は極小の一方になる点を前記測定開始位置と判定し、
前記測定終了点検出部は、前記触針の変位が極大又は極小の他方になる点を前記測定開始位置と判定し、
前記評価範囲決定部は、前記測定開始位置と前記測定終了位置の間の前記評価範囲割合の分を評価範囲として決定する請求項1に記載の表面粗さ/形状測定装置。
【請求項5】
当該表面粗さ/形状測定装置は、前記測定子移動機構による移動方向と90度異なる副方向に、前記測定子を被測定物に対して相対的に移動する副移動機構を更に備え、
前記触針を決定された前記評価範囲の開始端に移動し、前記触針を被測定物の表面に接触させた状態で副方向に移動させて、前記触針の変位が極大又は極小になる点を補正測定開始位置として決定する補正測定開始点検出部と、
前記触針を決定された前記評価範囲の終了端に移動し、前記触針を被測定物の表面に接触させた状態で副方向に移動させて、前記触針の変位が極大又は極小になる点を補正測定終了位置として決定する補正測定終了点検出部と、を備え、
前記補正測定開始位置及び前記補正測定終了位置を前記評価範囲の両端としてその間で測定を行う請求項1に記載の表面粗さ/形状測定装置。
【請求項6】
前記測定開始点検出部は、前記触針を前記初期接触位置から前記測定開始位置まで高速で移動し、
前記測定終了点検出部は、前記触針を前記測定開始位置から前記測定終了位置まで測定精度に応じた速度で移動し、
前記測定開始位置から前記測定終了位置までの間の測定値を解析する請求項1から4のいずれか1項に記載の表面粗さ/形状測定装置。
【請求項7】
前記測定開始点検出部は、前記触針を前記初期接触位置から前記測定開始位置まで高速で移動し、
前記測定終了点検出部は、前記触針を前記測定開始位置から前記測定終了位置まで高速で移動し、
前記触針を、前記評価範囲内で測定精度に応じた速度で移動させて測定値を生成する測定部を更に備える請求項1から5のいずれか1項に記載の表面粗さ/形状測定装置。
【請求項8】
触針を有する測定子と、前記触針の変位を検出する検出部と、前記測定子を被測定物に対して相対的に移動する測定子移動機構とを備え、前記触針を被測定物の表面に接触させた状態で、前記測定子を被測定物の表面に対して相対的に移動した時の前記触針の変位を検出することにより、被測定物の表面の粗さ又は形状を測定する表面粗さ/形状測定装置を制御するコンピュータに、自動的に評価範囲を決定させるように制御させるプログラムであって、
オペレータが評価範囲設定情報を入力するのに応じて、前記触針の被測定物の表面との初期接触位置から、前記触針を被測定物の表面に接触させた状態で移動させ、前記評価範囲設定情報に基づいて前記触針の変位を解析して測定開始位置を決定させ、
前記触針を前記測定開始位置から、被測定物の表面に接触させた状態で移動させ、前記評価範囲設定情報に基づいて前記触針の変位を解析して測定終了位置を決定させ、
前記評価範囲設定情報に基づいて、決定した前記測定開始位置及び前記測定終了位置から評価範囲を決定させることを特徴とするプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−121146(P2007−121146A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−314821(P2005−314821)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(000151494)株式会社東京精密 (592)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(000151494)株式会社東京精密 (592)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]