説明

被処理物焼却システムと被処理物焼却方法

【課題】下水汚泥のような水分の極めて多い被処理物焼却システムからの熱利用率を、一層高めた実用性の高い被処理物焼却システムと焼却方法を提供する。
【解決手段】 被処理物を焼却する流動層ボイラ10と、この流動層ボイラ10から得られた高温蒸気を送給して電力と熱源を取り出す蒸気タービン装置13とを有する。蒸気タービン装置13から熱源を吸収式冷凍機16に送給し、この吸収式冷凍機16から冷熱源を取り出し利用する被処理物焼却システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被処理物焼却システムと被処理物焼却方法に関し、詳しくは、下水汚泥のような、特に水分の多い被処理物を焼却処理する被処理物焼却システムと被処理物焼却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理場などから発生する水分の多い下水汚泥は、減量減容化および無害化のため、一般に焼却処理されている。例えば、図4に示すように、予め脱水された下水汚泥は、焼却炉1に送給されて加熱焼却されることになるが、その際、水分(70〜80%程度)の多い下水汚泥は、発熱量が低いため、焼却炉1に対して都市ガスや重油などを補助燃料として使用し、燃焼しているのが現状である。そして、補助燃料の消費量を幾分でも低減するため、焼却炉1の後段に空気予熱器2を設置して、発生する排ガスからの熱回収を行うようにしている。
【0003】
しかし、この方式は補助燃料の消費量をかなり多く必要とするため、図5に示すように、焼却炉1の後段に廃熱ボイラ3を設置すると共に、廃熱ボイラ3から発生した排ガスを熱回収した蒸気を利用し、蒸気タービン4による発電を行ったり、熱供給したりするシステムが提案されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特表2001−520360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術の汚泥焼却システムによって廃熱ボイラから発生した排ガスを熱回収したとしても、発電量、熱利用率共に低い水準にあり、投じた設備コストの割に利点は少なく、実用性に乏しいのが現状である。また、熱利用についても、空調や温水プール等に使用されるが、これらの利用は季節による熱需要量に大きな変動があり、年間を通して稼働している下水汚泥焼却炉の熱利用用途しては限定されたものとなり、決して利用効率は高くない。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の有する事情に鑑みて、下水汚泥のような水分の極めて多い被処理物焼却システムからの熱利用率を、一層高めた実用性の高い被処理物焼却システムと焼却方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、各請求項記載の発明により達成される。すなわち、本発明に係る被処理物焼却システムの特徴構成は、被処理物を焼却する焼却設備と、この焼却設備から得られた高温蒸気を送給して電力と熱源を取り出すタービン装置とを有する焼却システムであって、前記タービン装置から熱源を吸収式冷凍機に送給し、この吸収式冷凍機から冷熱源を取り出し利用することにある。
【0007】
この構成によれば、季節による熱需要の変動の少ない冷凍設備などに、吸収式冷凍機から発生した冷熱源を利用することができ、恒常的に発生する被処理物の焼却による熱利用を高く維持することができて、年間を通じて熱の利用効率を高くすることができる。
【0008】
その結果、下水汚泥のような水分の極めて多い被処理物焼却システムからの熱利用率を、一層高めた実用性の高い被処理物焼却システムを提供することができた。
【0009】
前記焼却設備が流動層ボイラであり、前記タービン装置からの熱源を、過熱器を介して前記吸収式冷凍機に送給すると共に、この過熱器の熱源を空気予熱器に送給し、この空気予熱器により予熱された空気を前記流動層ボイラに送給することが好ましい。
【0010】
この構成によれば、被処理物の焼却により生じた熱を流動層ボイラから蒸気として効率よく利用でき、しかも、タービン装置からの熱源を、過熱器を介して吸収式冷凍機に送給し、この過熱器の熱源を空気予熱器に送給すると共に、更に予熱空気を流動層ボイラに送給することから、システム全体としての熱効率を極めて高いものにできる。
【0011】
ガスタービンが並設されていると共に、このガスタービンから排出される排ガスを前記過熱器と空気予熱器に送給することが好ましい。
【0012】
この構成によれば、更に、システム全体の熱利用率を高めることができる。
【0013】
前記吸収式冷凍機がアンモニア吸収式冷凍機であり、このアンモニア吸収式冷凍機から冷熱源を冷凍施設に取り出し利用すると共に、前記アンモニア吸収式冷凍機から発生する温熱源を前記被処理物の乾燥装置に送給して、前記流動層ボイラに投入する前の前記被処理物の乾燥処理に利用することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、アンモニア吸収式冷凍機により一層省エネルギーを達成できると共に、被処理物の乾燥装置に利用して流動層ボイラに使用する補助燃料の使用量を一層低減できることになる。
【0015】
前記流動層ボイラとは別に、前記過熱器の上流側に補助ボイラを設けていて、この補助ボイラからの高温蒸気を前記過熱器あるいは蒸気タービンに送給・指示する制御装置が設けられていることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、流動層ボイラの保守点検などにより一時的に流動層ボイラを休止したり、あるいは機能低下などが生じたりした場合などであっても、年間を通じて常時安定に電力、冷熱、あるいは温熱源を提供できる。
【0017】
又、本発明に係る被処理物焼却方法の特徴構成は、焼却設備により被処理物を焼却し、この焼却設備による焼却によって得られた高温蒸気をタービン装置に送給して電力と熱源を取り出す焼却方法であって、前記タービン装置から熱源を吸収式冷凍機に送給し、この吸収式冷凍機から冷熱源を取り出し利用することにある。
【0018】
この構成によれば、下水汚泥のような水分の極めて多い被処理物焼却システムからの熱利用率を、一層高めた実用性の高い被処理物焼却方法を提供することができる。
【0019】
前記焼却設備が流動層ボイラであり、前記タービン装置からの熱源を、過熱器を介して前記吸収式冷凍機に送給すると共に、この過熱器の熱源を空気予熱器に送給し、この空気予熱器により予熱された空気を前記流動層ボイラに送給することが好ましい。
【0020】
この構成によれば、システム全体としての熱効率を一層高いものにできる。
【0021】
ガスタービンが並設されていると共に、このガスタービンから排出される排ガスを前記過熱器と空気予熱器に送給することが好ましい。
【0022】
この構成によれば、更に、システム全体としての熱効率を高いものにできる。
【0023】
前記吸収式冷凍機がアンモニア吸収式冷凍機であり、このアンモニア吸収式冷凍機から冷熱源を冷凍施設に取り出し利用すると共に、前記アンモニア吸収式冷凍機から発生する温熱源を前記被処理物の乾燥装置に送給して、前記流動層ボイラに投入する前の前記被処理物の乾燥処理に利用することが好ましい。
【0024】
この構成によれば、システム全体としての熱効率を更に高くすることができる。
【0025】
前記流動層ボイラとは別に、前記過熱器の上流側に補助ボイラを設け、この補助ボイラからの高温蒸気を制御装置により前記過熱器あるいは蒸気タービンに送給・指示することが好ましい。
【0026】
この構成によれば、保守点検などにより流動層ボイラを一時的に停止する事態が生じたとしても、年間を通じて常時安定に電力、冷熱、あるいは温熱源を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る被処理物焼却システムの概略構成を示す。必要に応じて、重力濃縮や機械濃縮。更には各主脱水機などを用いて予め脱水された被処理物である下水汚泥は、焼却設備の1種である流動層ボイラ10により加熱されつつ焼却される。流動層ボイラ10は、下部に砂などからなる流動層があり、上部に燃焼室が設けられていると共に、燃焼室に隣接してボイラ設備が配置されているため、燃焼室から発生する熱を蒸気として効率よく回収できる。このようにすることにより、従来技術のように焼却炉から熱を放散させるシステムに比べて、有効に熱利用を図れることになって好ましい。熱回収された蒸気は、配管11を通して独立の過熱器12に送給され、更に蒸気タービン13に送給されるようにしている。
【0028】
また、ガスタービン14が並設されており、このガスタービン14から排出される排ガスを独立過熱器12と、これに続く空気予熱器15に送給している。このようにして、独立過熱器12から蒸気タービン13に送給する蒸気を加熱することに利用し、蒸気タービン13の出力を高めるようにしていると共に、空気予熱器15に導入される空気の加熱に利用できるようにしている。排ガスは、空気予熱器15に熱交換した後、必要に応じて無害化処理され、煙突(図示略)などから大気に放出される。
【0029】
蒸気タービン13から発生した高温蒸気(約200℃程度)は、更にアンモニア吸収式冷凍機16に送給されて、アンモニア吸収式冷凍機16を作動させる駆動源として利用される。もっとも、吸収式冷凍機としては、必ずしもアンモニア吸収式冷凍機に限定されるものではないが、アンモニア吸収式冷凍機を用いると、省エネルギーが図られて都合がよい。そして、アンモニア吸収式冷凍機16から発生した冷熱(−40℃程度)は、冷凍倉庫のような冷凍施設に供給されて利用され、熱利用率が高められている。このような施設であると、季節による需要変動がほとんどなく、恒常的に発生する下水汚泥の焼却時に発生する熱の利用が図れて都合がよい。
【0030】
更に、ガスタービン14と蒸気タービン13に接続された発電機17から電力あるいは熱源を出力させて、この電力あるいは熱源を常時使用される下水処理場の駆動電源、熱源として利用する他、更に余剰の電力あるいは熱源を各種用途に利用するようになっている。特に、下水処理場は都市内の市街地、工場周辺などに立地していることが多いため、電力あるいは熱源を有効に利用し易い。
【0031】
下水汚泥は、一般に有機物が主体であり、重金属類は少ないため、焼却された後(灰など)は、セメントに混入されたり、土壌中に埋設されたりして処分される。
【実施例】
【0032】
水分77%、固形物当たりの低位発熱量17,200kJ/kgの下水汚泥300t/日を、図1に示す焼却システムによって処理した。その際、使用した都市ガスは、約1,850Nm3/hであり、蒸気タービンにより得られた発電量は2,500kWであり、ガスタービンによる発電量は4,660kWであった。そして、アンモニア吸収式冷凍機を稼働して、7.6GJ/hの冷熱を得て、容量(約230,000m3)の冷凍冷蔵庫を−30〜−20℃に長期間保持することができた。
【0033】
〔別実施の形態〕
(1)上記実施形態において、保守点検などにより流動層ボイラ10を一時的に停止する事態が生じることを考慮して、図2に示すように、流動層ボイラ10とは別に、独立過熱器12の上流側に補助ボイラ18を設けるようにしてもよい。すなわち、流動層ボイラ10の操業状態を把握すると共に、補助ボイラ18からの高温蒸気を独立過熱器12あるいは蒸気タービン13に送給すべく指示する制御装置Cを設けておき、システム全体を高効率で操業するようにする。このようにすることにより、流動層ボイラ10を休止したり、あるいは機能低下などが生じたりした場合などであっても、年間を通じて常時安定に電力、冷熱、あるいは温熱源を提供できることになる。
(2)更に、流動層ボイラ10に下水汚泥を投入するに先立って、脱水すると共に、あるいは単独で下水汚泥を乾燥機20により乾燥するようにし、その際、図3に示すように、アンモニア吸収式冷凍機16から発生する加温蒸気(約200℃程度)を乾燥機20に導入して乾燥用熱源として利用するようにしてもよい。これにより、流動層ボイラ10で消費される都市ガス等の補助燃料の使用量を一層低減でき、システム全体として一層熱利用効率が高められることになる。もとより、図3に示すシステムに、図2に示す補助ボイラを設けるようにしてもよい。
(3)上記実施形態では、被処理物として下水汚泥を例に挙げて説明したが、水分の多いものであれば、下水汚泥以外の焼却にも本発明を有効に適用することができる。
(4)上記実施形態では、被処理物を焼却するのに流動層ボイラを用いた例を示したが、焼却設備としてはこれに限定されるものではなく、ガス化溶融炉、その他の溶融炉などを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係る被処理物焼却システムの概略全体構成図
【図2】本発明の別実施形態に係る被処理物焼却システムの概略全体構成図
【図3】本発明の更に別実施形態に係る被処理物焼却システムの概略全体構成図
【図4】従来技術に係る下水汚泥焼却処理システムを示す概略構成図
【図5】従来技術に係る他の下水汚泥焼却処理システムを示す概略構成図
【符号の説明】
【0035】
10 焼却設備
12 過熱器
13 タービン装置
14 ガスタービン
15 空気予熱器
16 吸収式冷凍機
18 補助ボイラ
20 乾燥機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を焼却する焼却設備と、この焼却設備から得られた高温蒸気を送給して電力と熱源を取り出すタービン装置とを有する被処理物焼却システムであって、前記タービン装置から熱源を吸収式冷凍機に送給し、この吸収式冷凍機から冷熱源を取り出し利用することを特徴とする被処理物焼却システム。
【請求項2】
前記焼却設備が流動層ボイラであり、前記タービン装置からの熱源を、過熱器を介して前記吸収式冷凍機に送給すると共に、この過熱器の熱源を空気予熱器に送給し、この空気予熱器により予熱された空気を前記流動層ボイラに送給する請求項1に記載の被処理物焼却システム。
【請求項3】
ガスタービンが並設されていると共に、このガスタービンから排出される排ガスを前記過熱器と空気予熱器に送給する請求項2に記載の被処理物焼却システム。
【請求項4】
前記吸収式冷凍機がアンモニア吸収式冷凍機であり、このアンモニア吸収式冷凍機から冷熱源を冷凍施設に取り出し利用すると共に、前記アンモニア吸収式冷凍機から発生する温熱源を前記被処理物の乾燥装置に送給して、前記流動層ボイラに投入する前の前記被処理物の乾燥処理に利用する請求項2又は3に記載の被処理物焼却システム。
【請求項5】
前記流動層ボイラとは別に、前記過熱器の上流側に補助ボイラを設けていて、この補助ボイラからの高温蒸気を前記過熱器あるいは蒸気タービンに送給・指示する制御装置が設けられている請求項2〜4のいずれか1項に記載の被処理物焼却システム。
【請求項6】
焼却設備により被処理物を焼却し、この焼却設備による焼却によって得られた高温蒸気をタービン装置に送給して電力と熱源を取り出す被処理物焼却方法であって、前記タービン装置から熱源を吸収式冷凍機に送給し、この吸収式冷凍機から冷熱源を取り出し利用することを特徴とする被処理物焼却方法。
【請求項7】
前記焼却設備が流動層ボイラであり、前記タービン装置からの熱源を、過熱器を介して前記吸収式冷凍機に送給すると共に、この過熱器の熱源を空気予熱器に送給し、この空気予熱器により予熱された空気を前記流動層ボイラに送給する請求項6に記載の被処理物焼却方法。
【請求項8】
ガスタービンが並設されていると共に、このガスタービンから排出される排ガスを前記過熱器と空気予熱器に送給する請求項7に記載の被処理物焼却方法。
【請求項9】
前記吸収式冷凍機がアンモニア吸収式冷凍機であり、このアンモニア吸収式冷凍機から冷熱源を冷凍施設に取り出し利用すると共に、前記アンモニア吸収式冷凍機から発生する温熱源を前記被処理物の乾燥装置に送給して、前記流動層ボイラに投入する前の前記被処理物の乾燥処理に利用する請求項7又は8に記載の被処理物焼却方法。
【請求項10】
前記流動層ボイラとは別に、前記過熱器の上流側に補助ボイラを設け、この補助ボイラからの高温蒸気を制御装置により前記過熱器あるいは蒸気タービンに送給・指示する請求項7〜9のいずれか1項に記載の被処理物焼却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−144633(P2006−144633A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−334602(P2004−334602)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(000220675)東京都下水道サービス株式会社 (98)
【出願人】(000133032)株式会社タクマ (308)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【Fターム(参考)】