説明

被検査体の検査システム

【課題】被検査体に対して精度の高い電気的特性検査を実施し、被検査体における部品の実装不良などを的確に発見する。
【解決手段】基板検査システム10Aにおいて、ラインセンサ30は、基板の画像を撮像する。外観検査部86は、撮像された画像を解析して基板の部品の実装位置を示す部品位置情報取得し、取得した部品位置情報が示す部品の実装位置が適正なものか否かを判定することにより基板の部品の実装状態を検査する。プローブ54は、基板に接触して基板の電気的特性を検出する。プローブ制御部102は、取得された部品位置情報が示す部品の実装位置に応じて、基板におけるプローブ54を接触させるべき位置を補正し、補正した位置にプローブ54を接触させるようプローブ54の移動を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査体の検査システムに関し、特に、被検査体の外観検査と電気的特性検査の双方を実施する被検査体の検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、あらゆる機器にプリント基板(以下「基板」という)が実装されるようになっている。プリント基板には様々な素子などの部品が高密度で実装されており、基板の実装状態を検査する技術として、基板を撮像することにより得られる光学画像を利用する外観検査技術が知られている。
【0003】
しかし、例えばリード先端の処理が不十分であり、ハンダコートがされていないリードにハンダ付けする場合、合金層が形成されず、剥離につながる可能性がある状態で部品が実装される場合がある。このような場合、外観からはリードが充分にハンダ付けされているように見え、外観検査において正常と判定されるような場合であっても、実際にはハンダとリードとが充分に接合しておらず、充分な電気的導通が得られない可能性がある。また、リード部分の根本でブリッジが形成されることにより、本来導通すべきでないリード間が電気的に導通する場合もある。このような不良が生じた場合、外観検査では不良の検出が困難となる可能性がある。このため、基板上の部品のリードや基板にプリントされた配線にプローブを当接させて基板の電気的特性を測定するインサーキットテスタが知られている。近年、基板への部品の実装不良などを的確に発見するため、一つの基板に対して外観検査装置による外観検査とインサーキットテスタによる電気的特性検査の双方を実施するニーズが高まっている。
【0004】
そこで、電気部品測定手段および基板画像判別手段の測定および判別の結果を分析し表示する測定結果表示手段を備えたプロント基板の検査装置が提案されている(例えば、特許文献1)。一方、一つの基板に対して外観検査および電気的特性検査の双方を実施した場合に、その検査結果が異なる場合が生じ得る。このため、例えば、外観検査を実施後、インサーキットテスタにより再検査し、再検査データと自動ベリファイ用テストデータとを比較することにより最終の不良判定結果を出力するプリント板ユニットの外観検査方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。さらに、電気検査に移る前に、接触子の当接位置を指定することにより接触子が当接する部品の端子などのハンダ面を画像処理で認識し、認識データを基準データと比較して接触子による当接の可否を判定するプリント配線基板ユニット検査システムが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開昭61−293000号公報
【特許文献2】特開平9−172300号公報
【特許文献3】特開平6−207908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、移動機構を使ってプローブを移動させて基板に当接させ、基板の電気的特性を測定する移動プローブ式のインサーキットテスタの開発が進められている。しかし、例えば基板のセット位置のずれや基板上の部品のずれが生じた場合、基板上の適切の箇所からずれた位置にプローブが当接する結果、基板の電気的特性を適切に測定困難となる可能性がある。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、被検査体に対して精度の高い電気的特性検査を実施し、被検査体における部品の実装不良などを的確に発見することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の被検査体の検査システムは、被検査体の画像を撮像する撮像部と、撮像された画像を解析して外観検査情報を取得し、取得した外観検査情報を利用して被検査体の部品の実装状態を検査する外観検査部と、被検査体に接触して被検査体の電気的特性を検出するプローブと、プローブの移動を制御するプローブ制御部と、検出された被検査体の電気的特性を利用して被検査体の部品の実装状態を検査するインサーキット検査部と、を備える。プローブ制御部は、外観検査部によって取得された外観検査情報を利用して、被検査体におけるプローブを接触させるべき位置を補正し、補正した位置にプローブを接触させるようプローブの移動を制御する。
【0008】
この態様によれば、インサーキット検査部は、プローブを被検査体の適切な箇所に当接させることができ、被検査体における部品の実装不良を的確に発見することが可能となる。また、外観検査において用いられた外観検査情報を利用することにより、プローブを適切な箇所に当接させるために新たに画像を解析する必要性を低減させることができ、プローブの当接箇所を円滑に補正することが可能となる。
【0009】
外観検査部は、撮像された画像を解析して被検査体の部品の実装位置を示す部品位置情報を外観検査情報として取得し、取得した部品位置情報が示す部品の実装位置が適正なものか否かを判定することにより被検査体の部品の実装状態を検査し、プローブ制御部は、取得された部品位置情報が示す部品の実装位置に応じて、プローブを接触させるべき位置を補正してもよい。
【0010】
この態様によれば、被検査体において部品の実装位置が本来配置させるべき位置からずれた位置に実装されている場合においても、プローブをその部品の実装位置のずれに応じた適切な箇所に簡易に当接させることができる。
【0011】
外観検査部は、撮像された画像を解析して被検査体の形状を示す形状情報を外観検査情報として取得し、取得した形状情報が示す被検査体の形状が適正なものか否かを判定することにより被検査体の部品の実装状態を検査し、プローブ制御部は、取得された形状情報が示す被検査体の形状に応じて、プローブを接触させるべき位置を補正してもよい。
【0012】
この態様によれば、被検査体において、例えばリードが変形している場合や異物が存在する場合など、被検査体の形状が本来の形状と異なるような場合においても、プローブを被検査体の形状に応じた適切な箇所に簡易に当接させることができる。
【0013】
外観検査部は、撮像された画像を解析して被検査体の部品が存在するか否か示す欠品情報を外観検査情報として取得し、取得した欠品情報が被検査体のいずれかの部品が存在しない旨を示すものである場合、当該部品の実装状態は正常でないと判定し、プローブ制御部は、取得した欠品情報が被検査体のいずれかの部品が存在しない旨を示すものである場合、プローブを当該部品に接触させるように移動させない。
【0014】
この態様によれば、ある部品にプローブを当接させてその部品の電気的特性を検査すべきであるところ、その部品が何かしらの理由により被検査体に実装されていなかった場合に、プローブをその部品に接触させるように移動させることを回避することができる。これによって、必要のないプローブの移動による検査時間の増大を抑制することができ、被検査体に対する円滑な電気的特性検査を実施することができる。
【0015】
外観検査部は、撮像された画像を解析して被検査体の位置を示す被検査体位置情報を外観検査情報として取得し、取得した被検査体位置情報が示す被検査板の位置と被検査体が位置しているべき基準位置とのずれを利用して、被検査板の部品の実装状態を検査し、プローブ制御部は、取得した被検査体位置情報が示す被検査板の位置に応じて、被検査体におけるプローブを接触させるべき位置を補正してもよい。
【0016】
この態様によれば、被検査体自体のセット位置のずれによって、プローブが適切な位置に当接させることができなくことを回避することができる。また、外観検査においても利用される被検査体位置情報を利用することにより、被検査体に対する円滑な電気的特性検査を実施することができる。
【0017】
本発明のある態様の被検査体の検査システムは、被検査体の外観に関する外観基準データを格納する記憶部と、格納された外観基準データを管理するデータ管理部と、をさらに備えてもよい。外観検査部は、取得した外観検査情報と格納された外観基準データとを比較することにより、被検査体の部品の実装状態を検査し、データ管理部は、外観検査部によって被検査体のある部品の実装状態が正常でないと判定されたにもかかわらずインサーキット検査部によって当該部品の実装状態が正常と判定された場合、外観検査部による当該判定に用いられた画像と比較したときに当該部品の実装状態が正常と判定されるよう、格納された外観基準データを変更してもよい。
【0018】
外観検査において、例えば同一の部品であるにもかかわらず外観や形状が予定していた部品と異なる部品が基板に実装される場合がある。このような場合、外観検査では本来正常と判定されるべきであるにもかかわらず正常でないと判定される誤判定が発生する可能性がある。この態様によれば、外観検査におけるこのような誤判定の発生を抑制することができ、精度のよい外観検査を実施することが可能となる。
【0019】
本発明のある態様の被検査体の検査システムは、ユーザによって入力された、電気的特性を検出すべき被検査体の箇所を示す指定検査箇所情報を取得する検査箇所取得部をさらに備えてもよい。プローブ制御部は、外観検査部によって取得された外観検査情報を利用して、指定検査箇所情報が示す被検査体の箇所における、プローブを接触させるべき位置を補正してもよい。この態様によれば、ユーザが電気的特性を検出すべきとして指定した各々の箇所について、プローブを適切に接触させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、被検査体に対して精度の高い電気的特性検査を実施し、被検査体における部品の実装不良などを的確に発見することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(以下、「実施形態」という。)について説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る基板検査システム10Aの模式的な全体構成図である。基板検査システム10Aは、外観検査装置12およびインサーキットテスタ14、および検査結果表示装置62を備える。
【0023】
外観検査装置12は、マスターPC16、ディスプレイ18、スレーブPC20、照明ユニット26、ラインセンサ30、搬送テーブル23、および搬送モータ24などを有する。検査対象となる基板2は、まず外観検査装置12の搬送テーブル23上にセットされる。搬送テーブル23にはクランプ(図示せず)が設けられており、このクランプが搬送テーブル23上に載置された基板2を上方から押圧し、基板2の形状を矯正しながら搬送テーブル23に固定する。
【0024】
搬送テーブル23は、搬送モータ24が作動することにより、ボールネジ機構(図示せず)を介して基板搬送路22上を水平方向に移動する。第1の実施形態に係る基板検査システム10Aでは、基板搬送路22はインサーキットテスタ14における基板検査位置まで伸びており、外観検査装置12で外観検査が実施された基板2は、そのままインサーキットテスタ14の基板検査位置に搬送することが可能となっている。搬送モータ24はマスターPC16に接続されており、搬送モータ24の作動、すなわち基板2の搬送はマスターPC16によって制御される。なお、図示されていないが、マスターPC16にはキーボードおよびマウスなどの入力装置が接続されている。
【0025】
照明ユニット26は、基板搬送路22の上方に配置される。照明ユニット26は、第1光源32、第2光源34、第3光源36、アクリルシート42、ハーフミラー40、およびテレセントリックレンズ38を有する。
【0026】
第1光源32は、外観検査装置12によって検査可能な基板の最大幅以上に複数列が列ぶLED(発光ダイオード)群により構成される。第1光源32は、被撮像面である基板2の上面における後述するラインセンサ30による走査ラインに鉛直に落射光を投ずることができるよう、基板2上面の走査ラインの真上に配置される。このとき第1光源32は、基板2の搬送方向(以下、「搬送方向」という)と垂直な方向、すなわちラインセンサ30の走査方向(以下、「走査方向」という)と、LEDの列の方向が平行となるように配置される。また、なお、効率的に検査中の走査ラインへ落射光を投ずるために、LED群を取り付ける基板を中央からふたつのサブ基板に分け、それぞれのサブ基板に走査方向に列んだLED群を構成してもよい。
【0027】
第2光源34もまた、外観検査装置12によって検査可能な基板の最大幅以上に複数列が列ぶLED群により構成される。第2光源34は、基板2の搬送方向と垂直な方向とLEDの列の方向が平行となり、さらに基板2上面の走査ラインに斜めに落射光を投ずることができるよう、走査ラインを挟んで撮像時における基板2の搬送方向上流側(以下、「上流側」という)、および搬送方向下流側(以下、「下流側」という)にそれぞれ1つずつ配置される。
【0028】
第3光源36もまた、外観検査装置12によって検査可能な基板の最大幅以上に複数列が列ぶLED群により構成される。第3光源36は、基板2の搬送方向と垂直な方向とLEDの列の方向が平行となり、さらに基板2上面の走査ラインに、基板2上面に対する落射角度が第2光源34よりも鋭角な斜めの落射光を投ずることができるよう、走査ラインを挟んで上流側および下流側にそれぞれ1つずつ配置される。
【0029】
第1光源32は緑色の光を落射し、第2光源34は白色の光を落射し、第3光源36は青色の光を落射する。各々の光源は、異なる入射角度で被検査体である基板2に落射光を投ずる。このように、照明ユニット26は、被検査体である基板2に複数の入射角度の光を落射する複合光源として機能する。第1光源32、第2光源34、および第3光源36の各々はマスターPC16に接続されており、各々の点灯および消灯はマスターPC16によって制御される。
【0030】
ハーフミラー40は、第1光源32の鉛直下方に設けられる。第1光源32からの落射光は、ハーフミラー40を通過して基板2の検査面へ入射角がほぼゼロで投じられる。走査ラインからの反射光はハーフミラー40で反射し、テレセントリックレンズ38、レンズ28を通過してラインセンサ30へ入射する。
【0031】
第2光源34および第3光源36と走査ラインの間にはアクリルシート42が設けられる。第2光源34および第3光源36は点光源であるLEDの集合体であるため、スポット的な光が画像データに写り込んで検査精度に影響を与える可能性がある。このようにアクリルシート42を設けることにより、第2光源34および第3光源36からの光を拡散し、このような検査精度への影響を抑制している。
【0032】
ラインセンサ30は照明ユニット26の上流側に設けられ、ラインセンサ30と照明ユニット26との間にはレンズ28が配置される。ラインセンサ30はライン状の光学画像を撮像する撮像部として機能する一次元センサであり、入射した光を走査することによりライン状の光学画像を撮像し、画像データを生成する。ラインセンサ30はマスターPC16に接続されており、ラインセンサ30による画像の撮像はマスターPC16により制御される。また、ラインセンサ30はスレーブPC20にも接続されており、生成された画像データはスレーブPC20に出力される。なお、基板の撮像はラインセンサなどの一次元センサに限られないことは勿論であり、例えば2次元の平面画像を撮像するCCDセンサを用いて基板を撮像してもよい。マスターPC16、およびスレーブPC20はハブ44に接続されている。また、マスターPC16にはディスプレイ18が接続されている。
【0033】
ここで、「走査する」は、走査ヘッドがラインセンサ30の撮像素子の並び方向に対して垂直の方向に駆動する動作を示す。また、「撮像する」は、ラインセンサ30の場合、一走査単位を走査することを示す。一走査単位とは、例えば基板の一方の端部から他方の端部までの1回の一方向の走査や1回の往復の走査など、ラインセンサ30の走査の単位をいう。
【0034】
インサーキットテスタ14は、ICT(インサーキットテスタ)検査PC50、ディスプレイ52、2つのプローブ54、2つの移動機構58、および測定部60を有する。2つのプローブ54の各々は、プローブ指示部材56を介して移動機構58に取り付けられている。移動機構58の各々は、取り付けられたプローブ54を水平方向および垂直方向に移動させる。移動機構58の各々はICT検査PC50に接続されており、移動機構58による2つのプローブ54の各々の移動はICT検査PC50によって制御される。移動機構58は周知の技術であるため、移動機構58の構成に関する具体的な説明は省略する。ICT検査PC50はハブ44に接続されている。ディスプレイ52はICT検査PC50に接続されている。
【0035】
測定部60は、2本のプローブ54の各々に接続されており、基板に接触したときの2本のプローブ54の間における静電容量を測定することにより、基板の電気的特性を測定する。測定部60はICT検査PC50に接続されており、測定部60による測定結果はICT検査PC50に出力される。
【0036】
なお、プローブ54は4本設けられてもよい。2本のプローブ54を用いた2端子法で基板検査を実施した場合、ヘッドの配線抵抗や、接触抵抗、PCRの内部抵抗なども同時に測定されることになり、基板のみの抵抗を精度よく測定することは困難となる。プローブ54を用いた4端子法を用いることにより、測定結果がこれらの影響を受けることを抑制することができ、精度のよいICT検査を実施することが可能となる。プローブ54を4本設けた場合、プローブ指示部材56および移動機構58も4つ設けられ、プローブ54の各々が独立して移動制御されることは勿論である。
【0037】
検査結果表示装置62は、検査結果表示PC64、およびディスプレイ66を有する。検査結果表示PC64はハブ44に接続されている。
【0038】
図2は、第1の実施形態に係る基板検査システム10Aの機能ブロック図である。なお、図2においてマスターPC16、スレーブPC20、ICT検査PC50、および検査結果表示PC64は、それぞれが各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAMなどのハードウェア、およびソフトウェアの連携によって実現される機能ブロックが描かれている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェアおよびソフトウェアの組合せによって様々な形で実現することができる。
【0039】
マスターPC16は、照明制御部70、撮像制御部72、搬送制御部74、表示制御部76、設定内容取得部77、および送受信部78を有する。照明制御部70は、照明ユニット26の第1光源32、第2光源34、および第3光源36の各々のスイッチをオンまたはオフにすることにより、これらの点灯および消灯を制御する。撮像制御部72は、ラインセンサ30に撮像開始信号を供給することなどにより、ラインセンサ30に基板上面の走査ラインを走査させて基板の光学画像を撮像させる。搬送制御部74は、搬送モータ24に入力するパルス信号を制御することにより搬送モータ24の作動を制御し、基板の搬送速度や搬送長さを制御する。
【0040】
マスターPC16には外観検査およびICT検査の双方における検査内容を設定するための検査内容設定プログラムがインストールされている。表示制御部76は、例えば検査内容設定プログラムが実行されたときの検査内容設定画面をディスプレイ18に表示させる。ユーザは、ディスプレイ18に表示された検査内容設定画面を見ながらマウス(図示せず)またはキーボード(図示せず)などの入力装置を使って設定操作することにより、例えば、どのような検査項目の外観検査を実施するかを選択するなど、外観検査を実施するための様々な設定内容を設定することができる。このように、検査内容設定画面によって外観検査の設定内容を設定するための、キーボード、マウス、ディスプレイ18、および表示制御部76などの構成は、外観検査の設定内容をユーザが設定するための外観検査設定部として機能する。
【0041】
設定内容取得部77は、ディスプレイ18に表示された検査内容設定画面を見ながらマウスまたはキーボードなどの入力装置を使ってユーザにより入力された、外観検査の設定内容の設定内容を取得する。送受信部78は、スレーブPC20、ICT検査PC50、および検査結果表示PC64にデータを送信し、スレーブPC20、ICT検査PC50、および検査結果表示PC64からデータを受信する。
【0042】
スレーブPC20は、メモリ82、記憶部84、外観検査部86、データ管理部88、および送受信部90を有する。メモリ82は、ラインセンサ30から入力された画像データを格納する。ラインセンサ30は非常に高精細な画像を撮像し、また、1回の撮像工程で基板の上面全体の画像を撮像するため、メモリ82に格納される画像データの容量は膨大なものとなる。このため、メモリ82には容量が大きいものが採用される。記憶部84はハードディスクによって構成され、検査対象となる基板の外観に関する外観基準データが予め格納されている。
【0043】
外観検査部86は、メモリ82に格納された画像データを解析して、基板の外観検査に利用する外観検査情報を取得する。具体的には、外観検査部86は、検査対象となる基板の全上面の画像データを解析することにより、基板に設けられた基準マークの位置を示す基板位置情報、基板に実装される各部品の位置を示す部品位置情報、基板に実装される各部品や基板自体の形状を示す形状情報、基板に実装されるべき部品が基板上に存在するか否かを示す欠品情報、基板に実装される部品の色を示す部品色情報、基板の表面に付されたバーコードなどの識別画像を解析することにより得られる基板識別情報などを外観検査情報として取得する。
【0044】
このうち例えば部品位置情報については、外観検査部86は、まず検査対象となる基板の全上面の画像データを解析することにより、基板に実装される各部品の位置を暫定的に特定し、次に、暫定的に特定した各部品の位置に対して、取得した基板位置情報を利用して検査対象となる基板の基準位置からのずれや傾きに応じた補正を施して、各部品の位置を最終的に特定して部品位置情報を取得する。画像データを解析してこれらの外観検査情報を取得する技術は周知であるため、画像データの解析方法に関する説明は省略する。
【0045】
外観検査部86は、取得した外観検査情報と記憶部84に格納された外観基準データとを比較することにより、基板の実装状態を検査する。なお基板の実装状態には、基板に実装される様々な素子などの部品の有無、位置、適正な部品か等だけではなく、ハンダの有無、ハンダの量、ブリッジの有無等が含まれる。
【0046】
データ管理部88は、記憶部84に格納される外観基準データなどのデータを管理する。送受信部90は、マスターPC16、ICT検査PC50、および検査結果表示PC64にデータを送信し、マスターPC16、ICT検査PC50、および検査結果表示PC64からデータを受信する。
【0047】
ICT検査PC50は、記憶部100、プローブ制御部102、ICT検査部104、表示制御部106、および送受信部108を有する。記憶部100はハードディスクによって構成され、ICT基準データおよび標準検査箇所データが予め格納されている。ICT基準データは、検査対象となる基板のICT検査の対象となり得る箇所の基準となる電気的特性を示すデータである。標準検査箇所データは、検査対象となる基板においてICT検査を実施することが可能な箇所を示すデータであり、検査対象の基板のハードウェア設計情報であるCAD情報(CAD:Computer Aided Design)に基づいて作成されたものである。
【0048】
プローブ制御部102は、移動機構58のアクチュエータに動作信号を供給することなどによって移動機構58の動作を制御し、2本のプローブ54の各々の移動を制御する。ICT検査部104は、測定部60から入力された各々のICT検査箇所の電気的特性と、記憶部100に格納されたICT基準データとを比較することにより、検査対象となる基板の各々のICT検査箇所の電気的特性を検査する。表示制御部106は、例えばICT検査の検査結果をディスプレイ52に表示させる。送受信部108は、マスターPC16、スレーブPC20、および検査結果表示PC64にデータを送信し、マスターPC16、スレーブPC20、および検査結果表示PC64からデータを受信する。
【0049】
検査結果表示装置62の検査結果表示PC64は、表示制御部109および送受信部110を有する。表示制御部109は、例えば、マスターPC16から受信した外観検査結果データを利用して外観検査の結果をディスプレイ66に表示し、またはICT検査PC50から受信したICT検査結果データを利用してICT検査の結果をディスプレイ66に表示する。送受信部110は、マスターPC16、スレーブPC20、およびICT検査PC50にデータを送信し、マスターPC16、スレーブPC20、およびICT検査PC50からデータを受信する。
【0050】
図3は、第1の実施形態に係る外観検査装置12による基板の外観検査の手順を示すフローチャートである。マスターPC16の表示制御部76は基板検査画面(図示せず)をディスプレイ18に表示し、この基板検査画面にはスタートボタンが表示されている。ユーザによりこのスタートボタンがマウスでクリックされることにより、外観検査の実施が開始される。このように、基板検査画面に表示されたスタートボタンやマウスなどの入力装置は、基板の実装状態の検査開始指示がユーザにより入力される検査開始指示入力部を構成する。本フローチャートにおける処理は、ユーザによりこのスタートボタンがマウスでクリックされたとき、すなわち基板検査処理が開始されたときに開始する。
【0051】
照明制御部70、撮像制御部72、および搬送制御部74は、検査対象となる基板の撮像処理を実施する(S10)。基板の撮像処理では、まず照明制御部70は第2光源34を点灯させて基板の上面に白色の光を落射させ、ラインセンサ30は基板によるその反射光を撮像する。次に照明制御部70は第1光源32を点灯させて緑色の光を基板の上面に落射させ、ラインセンサ30は基板によるその反射光を撮像する。次に照明制御部70は第3光源36を点灯させて基板の上面に青色の光を落射させ、ラインセンサ30は基板によるその反射光を撮像する。このように、照明制御部70は、一走査単位につき3回異なる色の落射光を基板に投じ、ラインセンサ30は、各々の色の落射光の基板による反射光を撮像する。これを以下、1ラインの撮像という。
【0052】
1ラインの撮像が終了すると、搬送制御部74は、基板を搬送方向に所定の走査ライン間隔だけ移動させ、照明制御部70およびラインセンサ30は再び1ラインの撮像を実施する。照明制御部70、撮像制御部72、および搬送制御部74は、基板の撮像処理においてこの動作を繰り返すことにより、検査対象となる基板の全上面を撮像する。ラインセンサ30によってこのように撮像され、生成された画像データは、スレーブPC20に出力され、メモリ82に格納される。
【0053】
外観検査部86は、基板の撮像処理が終了すると、外観検査部86は、撮像処理により取得されメモリ82に格納された、基板の全上面の画像データを解析して外観検査情報を取得する(S12)。外観検査情報を取得すると、外観検査部86は、取得した外観検査情報を、記憶部84に格納された外観基準データと比較することにより、外観検査を実施する(S14)。
【0054】
例えば、外観検査部86は、取得した外観検査情報に含まれる部品位置情報が示す部品の実装位置と、外観基準データによって特定されるその部品の基準位置とのずれが所定の閾値より大きい場合には、その部品の実装位置が適正でないことから、その部品の実装状態は異常と判定する。また、例えば、外観検査部86は、取得した外観検査情報に含まれる形状情報が示す部品や基板自体の形状と、外観基準データによって特定される部品の基準形状や基板自体の基準形状との差が所定の閾値より大きい場合、リードの変形や異物が存在する可能性があり、基板の実装状態は異常と判定する。また、例えば、外観検査部86は、取得した外観検査情報に含まれる欠品情報が、基板に実装されるべきある部品が存在しない旨を示すものである場合、その部品の実装状態は異常と判定する。また、例えば、外観検査部86は、取得した外観検査情報に含まれる部品色情報が示すある部品の色が、外観基準データによって特定されるその部品の基準の色と異なる場合、その部品は適切な部品でないと判定し、その部品の実装状態は異常と判定する。なお、外観検査部86は、外観検査情報に含まれる基板識別情報に基づいて、搬送テーブル23にセットされている基板が検査対象の基板か否かを判定し、検査対象の基板ではない場合、その後の外観検査を中止する。送受信部90は、外観検査が終了すると、外観検査の検査結果を示す外観検査結果データを、外観検査情報および検査対象となる基板の画像データと共にマスターPC16に送信する(S16)。
【0055】
マスターPC16の表示制御部76は、受信した外観検査結果データを利用して検査対象の基板の実装状態に異常があるか否かを判定する(S18)。異常がある場合(S18のY)、異常箇所の画像とともに、当該箇所が異常である旨をディスプレイ18に表示させる(S20)。異常がない場合(S18のN)、外観検査の結果、異常がなかった旨をディスプレイ18に表示させる(S22)。検査対象となる基板の外観検査を終了すると、送受信部90は、外観検査結果データを検査結果表示PC64に送信する(S23)。
【0056】
マスターPC16の表示制御部76は、検査内容設定画面において、ICT検査チェックボックスを表示する。ユーザは、マウスまたはキーボードを使って基板検査画面のICT検査チェックボックスをオンにすることにより、インサーキットテスタ14による電気的特性の検査であるICT検査の実施を指定することができる。設定内容取得部77は、ユーザによってICT検査チェックボックスがオンにされたかオフのままかに応じた、ICT検査を実施するか否かを示すICT実施可否データを取得する。
【0057】
表示制御部76は、ICT検査チェックボックスがオンにされた場合、ICT検査PC50の記憶部100に格納されている標準検査箇所データから、検査対象となっている基板の標準検査箇所データを検索する。検査対象となっている基板の標準検査箇所データがある場合、その標準検査箇所データによって特定される、プローブ54を接触させてICT検査を実施することが可能な箇所をディスプレイ18に表示させる。なお、標準検査箇所データの指定は、ユーザにより行われてもよい。ユーザは、マウスやキーボードを使って、格納された標準検査箇所データの中から検査対象となる基板の標準検査箇所データを指定することができる。ユーザによっていずれかの標準検査箇所データが指定された場合、表示制御部76は、指定された標準検査箇所データを取得し、指定された標準検査箇所データが示すICT検査による検査箇所をディスプレイ18に表示させる。
【0058】
さらにユーザは、指定した標準検査箇所データが示す、ICT検査を実施することが可能な箇所から、ICT検査を望む箇所を、基板検査設定画面においてマウスやキーボードを使って指定することが可能となっている。ユーザによってICT検査箇所が指定された場合、設定内容取得部77は、指定された箇所を示す指定検査箇所データを生成する。このとき、表示制御部76は、プローブ54を接触させることが困難なため標準検査箇所データによって特定される検査可能箇所に含まれていない箇所がICT検査箇所としてユーザによって指定された場合に、当該箇所は電気的特性を検出することが困難である旨の警告をディスプレイ18に表示させ、ユーザにその旨を報知する。また、表示制御部76は、そのような箇所がICT検査箇所として指定する入力がユーザによってされた場合においても、そのような箇所をICT検査箇所として指定できないよう表示することにより、そのような箇所をICT検査箇所として設定することを禁止する。
【0059】
また、ユーザは、マウスやキーボードを用いて、ディスプレイ18に表示された検査内容設定画面における基板画面上に、指定した外観検査の各々検査項目について、その検査項目の対象となる領域を示す検査枠を設定することができる。第1の実施形態に係る基板検査システム10ではさらに、ユーザは、ディスプレイ18に表示された検査内容設定画面における基板画面上においてICT検査の検査枠を設定することができる。表示制御部76は、指定されたいずれかの外観検査の検査項目について検査枠が設定された場合、検査内容設定画面における基板画面上に、設定された検査枠を表示する。また、表示制御部76は、ICT検査について検査枠が設定された場合においても、検査内容設定画面における基板画面上に、設定された検査枠を表示する。これによりユーザは、ディスプレイ18を見ることにより設定した検査枠を容易に確認することができる。
【0060】
また、マスターPC16内のハードディスクなどの記憶部、またはICT検査PC50の記憶部100には、様々な部品して実施可能なICT検査項目を示すデータが格納されている。例えば、検査対象の基板についての標準検査箇所データがない場合、表示制御部76は、このICT検査項目を示すデータを参照し、検査枠内の部品に対するICT検査項目を、検査内容設定画面に含まれる基板画像のICT検査の検査枠の横に表示する。ユーザにより設定されたICT検査項目を示すデータは、ICT検査の検査枠を示すデータに対応付けられてマスターPC16内の記憶部またはICT検査の記憶部100に格納され、検査部品ライブラリを構築する。
【0061】
外観検査結果データが検査結果表示PC64に送信されると、送受信部78は、取得されたICT実施可否データを利用して、ユーザによりICT検査の実施が指定されているか否かを判定する(S24)。ICT検査が指定されている場合(S24のY)、送受信部78は、外観検査情報およびICT検査結果データをICT検査PC50に送信し(S25)、搬送制御部74は、搬送モータ24を作動させてプローブ54の下方の基板検査箇所まで基板を搬送する。ICT検査が指定されていない場合(S24のN)、送受信部78は、外観検査情報およびICT検査結果データをICT検査PC50に送信しない。なお、外観検査情報およびICT検査結果データのICT検査PC50への送信は、マスターPC16の記憶部またはICT検査PC50の記憶部100の所定アドレスに外観検査情報およびICT検査結果データを格納し、ICT検査PC50がこの所定のアドレスに格納されたICT検査結果データのICT検査PC50を取得することにより行われてもよい。
【0062】
図4は、図3のS25において送信された外観検査情報及び指定検査箇所データを受信した後におけるICT検査PC50の処理手順を示すフローチャートである。外観検査情報及び指定検査箇所データを受信した場合、プローブ制御部102は、受信した外観検査情報を利用して、受信した指定検査箇所データによって特定されるICT検査箇所の電気的特性を検出するためにプローブ54を接触させるべき位置(以下、「プローブ接触位置」という)を補正する(S26)。具体的には、プローブ制御部102は、外観検査情報に含まれる部品位置情報が示す部品の実装位置に応じて、指定検査箇所データによって特定される、プローブ接触位置を補正する。また、プローブ制御部102は、外観検査情報に含まれる形状情報が示す被検査体の形状に応じてプローブ54の接触位置を補正する。さらに、プローブ制御部102は、外観検査情報に含まれる基板位置情報が示す基板の位置に応じてプローブ54の接触位置を補正する。
【0063】
基板における部品の実装位置やリードの形状は、実際には標準の実装位置や形状と少し異なる場合がある。さらにインサーキットテスタ14における基板自体の実際のセット位置も、標準的なセット位置から少しずれたり傾いていたりしている場合がある。このように部品の実際の実装位置や形状などに応じてプローブ54の接触位置を補正することにより、プローブ54を基板上の部品や基板自体の正確な位置に接触させることができ、精度のよいICT検査を実現することができる。
【0064】
プローブ接触位置の補正が終了すると、プローブ制御部102は、補正したプローブ接触位置にプローブ54を接触させるようプローブ54の移動を制御し(S27)、ICT検査部104は、ICT検査が指定された各々の箇所における基板の電気的特性を測定部60から取得する(S28)。このとき、プローブ制御部102は、外観検査情報に含まれる欠品情報が検査対象の基板のいずれかの部品が存在しない旨を示すものである場合、ICT検査箇所としてその部品が指定されている場合であっても、プローブ54をその部品に接触させるように移動させない。これによって、プローブ54に無駄な動作をさせることを回避することができ、効率的なICT検査を実現することができる。
【0065】
ICT検査が指定された各々の箇所の電気的特性を取得すると、ICT検査部104は、取得した各々の箇所の電気的特性と、記憶部100に格納されたICT基準データとを比較し、ICT基準データが示す基準の電気的特性に対して異常な電気的特性が検出された箇所を特定するICT検査を実施し(S30)、その検査結果であるICT検査結果データを生成する。このように、第1の実施形態に係る基板検査システム10Aでは、ユーザによって基板検査画面のスタートボタンがクリックされることにより、外観検査装置12およびインサーキットテスタ14は、検査対象となる各々の被検査体に対して、外観検査および電気的特性検査を連続的に実施する。
【0066】
ICT検査が終了すると、表示制御部106は、基板の実装状態に異常があるか否かを判定する(S32)。基板の実装状態に異常が認められない場合(S32のN)、表示制御部106は、ICT検査の結果からは検査した基板に異常が認められない旨をディスプレイ52に表示する(S40)。ICT検査の結果、基板の実装状態に何かしら異常があると判定された場合(S32のY)、送受信部108は、異常があると判定された箇所の画像データの送信を要求する要求情報をスレーブPC20に送信する(S34)。スレーブPC20送受信部90は、そのような要求情報を受信した場合、要求された箇所の画像データをICT検査PC50に送信する(S36)。なお、ICT検査PC50の送受信部108は、検査対象の基板の全面についての画像データの送信を要求してもよく、スレーブPC20の送受信部90は、そのような要求情報を受信した場合、要求された基板全面についての画像データをICT検査PC50に送信してもよい。
【0067】
マスターPC16の送受信部108によって、要求された箇所の画像データが受信された場合、表示制御部106は、受信した画像データを利用して、ICT検査によって異常があると判定された箇所の画像とともに当該箇所に異常がある旨をディスプレイ52に表示させる(S38)。ICT検査の結果がディスプレイ52に表示されると、送受信部108は、生成されたICT検査結果データを、スレーブPC20および検査結果表示PC64に送信する(S42)。
【0068】
図5は、検査結果表示PC64において外観検査またはICT検査の検査結果を表示させる表示手順を示すフローチャートである。本フローチャートに係る処理は、検査結果表示PC64において、検査結果を表示させるための検査結果表示プログラムが実行されたときに開始し、その後、検査結果表示プログラムの実行が停止するまで所定の時間毎に繰り返し実施される。
【0069】
表示制御部109は、外観検査結果データを新たに受信したか否かを所定時間毎に判定し(S44)、外観検査結果データを新たに受信した場合(S44のY)、表示制御部109は、検査結果表示プログラムが実行されることによりディスプレイ66に表示される検査結果表示画面において、受信した外観検査結果データが示す外観検査の結果を表示する(S46)。外観検査結果データを新たに受信しなかった場合(S44のN)、表示制御部109は、検査結果表示画面をそのまま維持する。
【0070】
また、表示制御部109は、ICT検査結果データを新たに受信したか否かを所定時間毎に判定し(S48)、ICT検査結果データを新たに受信した場合(S48のY)、表示制御部109は、検査結果画面において、受信したICT検査結果データが示すICT検査の結果を、外観検査の結果に併記する態様で表示する(S50)。ICT検査結果データを新たに受信しなかった場合(S48のN)、表示制御部109は、検査結果表示画面をそのまま維持する。
【0071】
ユーザは、このようにディスプレイ66に表示された外観検査またはICT検査の検査結果を見ることにより、外観検査の結果とICT検査の結果とを比較しながら、検査対象の基板に異常があるか否かを判断する。ユーザは、例えば、ある部品の実装状態について、外観検査の結果およびICT検査の結果がともに正常と判定された場合に、その部品の実装状態は正常と判断することができる。また、ユーザは、例えば、ある部品の実装状態について、外観検査の結果正常と判定された場合であっても、ICT検査の結果異常と判定された場合には、その部品の実装状態は異常と判定することができる。さらにユーザは、例えば、ある部品の実装状態について、外観検査の結果異常と判定された場合であっても、ICT検査の結果正常と判定された場合には、その部品の実装状態は正常と判定することができる。
【0072】
図6は、ICT検査を受信したときのスレーブPC20の処理手順を示すフローチャートである。スレーブPC20のデータ管理部88は、ICT検査結果データが示すICT検査結果が正常であるにもかかわらず、外観検査結果データが示す外観検査結果が異常となっている誤判定箇所があるか否かを判定する(S52)。そのような誤判定箇所がある場合(S52のY)、再び同様の外観検査を実施した場合に、受信したデータによって特定される誤判定箇所を外観検査部86が正常と判定することができるよう、外観基準データを修正する(S54)。外観検査による誤判定箇所がない場合(S52のN)、データ管理部88は、外観検査結果データの修正を行わない。
【0073】
例えば、部品の供給元のメーカが異なることから、規格が同一にもかかわらず形状や色が異なる部品が基板に実装される場合がある。このような場合、本来実装されるべき部品の形状や色と異なる部品が実装されていることにより、基板への品質に関する影響がないにもかかわらず、外観検査において実装されている部品が適切なものではないと判定され得る。このように外観基準データを修正しておくことにより、外観検査装置12における誤判定を抑制することができる。なお、送受信部110は、外観検査結果データおよびICT検査結果データを、他の目視検査装置に送信することができる。また、マスターPC16が外観検査結果データを、ICT検査PC50がICT検査結果データを、直接他の目視検査装置に送信することも可能である。
【0074】
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態に係る基板検査システム10Bの模式的な全体構成図である。なお、第1の実施形態と同様の箇所は、同一の符号を付して説明を省略する。基板検査システム10Bは、外観検査装置112およびインサーキットテスタ114を備える。
【0075】
外観検査装置112は、マスターPC16がマスターPC116となった以外は、第1の実施形態に係る外観検査装置12と同様である。インサーキットテスタ114は、2つのプローブ54、2つの移動機構58、および測定部60を有する。移動機構58の各々はマスターPC116に接続されており、移動機構58による2つのプローブ54の各々の移動はマスターPC116によって制御される。
【0076】
図8は、第2の実施形態に係る基板検査システム10Bの機能ブロック図である。なお、図2においてマスターPC116およびスレーブPC20は、それぞれがCPU、ROM、およびRAMなどのハードウェア、およびソフトウェアの連携によって実現される機能ブロックが描かれている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェアおよびソフトウェアの組合せによって様々な形で実現することができる。
【0077】
マスターPC116は、照明制御部70、撮像制御部72、搬送制御部74、表示制御部76、設定内容取得部77、および送受信部78の他に、記憶部100、プローブ制御部102、ICT検査部104、および最終判定部80を有する。第2の実施形態では、インサーキットテスタ14に、マスターPC116のプローブ制御部102およびICT検査部104が加わり、基板の電気的特性を検出する電気的特性検出装置として機能する。このように、外観検査の制御およびICT検査の制御をマスターPC16によって行うことにより、外観検査の制御部とICT検査の制御部とを別々の機器に設ける場合に比べ、基板検査システム10Bの構成をシンプルにすることができる。
【0078】
図9は、第2の実施形態に係る外観検査装置112による基板の外観検査の手順を示すフローチャートである。マスターPC116の表示制御部76は基板検査画面(図示せず)をディスプレイ18に表示し、この基板検査画面にはスタートボタンが表示されている。本フローチャートにおける処理は、ユーザによりこのスタートボタンがマウスでクリックされたとき、すなわち基板検査処理が開始されたときに開始する。
【0079】
S110〜S116の処理は、図3におけるS10〜S16の処理と同様である。外観検査結果データを受信すると、プローブ制御部102は、外観検査の実施が終了したと判定し、ICT検査を指定するチェックボックスがオンにされたか否かに応じて取得されるICT実施可否データを利用して、ユーザによりICT検査の実施が指定されているか否かを判定する(S118)。ICT検査が指定されていない場合(S118のN)、S120〜S126の処理をスキップしてS128の処理に移行する。
【0080】
ICT検査が指定されていると判定された場合(S118のY)、搬送制御部74は、搬送モータ24を作動させてプローブ54の下方の基板検査箇所まで基板を搬送する。次に、プローブ制御部102は、取得された外観検査情報に含まれる部品位置情報や形状情報、基板位置情報などを利用して、指定検査箇所データによって特定されるプローブ54の接触位置を補正する(S120)。
【0081】
プローブ接触位置の補正が終了すると、プローブ制御部102は、補正したプローブ接触位置にプローブ54を接触させるようプローブ54の移動を制御し(S122)、ICT検査部104は、ICT検査が指定された各々の箇所における基板の電気的特性を測定部60から取得する(S124)。このとき、外観検査情報に含まれる欠品情報が検査対象の基板のいずれかの部品が存在しない旨を示すものである場合、プローブ制御部102がプローブ54をその部品に接触させるように移動させない点は、第1の実施形態と同様である。
【0082】
ICT検査が指定された各々の箇所の電気的特性を取得すると、ICT検査部104は、取得した各々の箇所の電気的特性と、記憶部100に格納されたICT基準データとを比較することによりICT検査を実施し(S126)、その検査結果であるICT検査結果データを生成し、記憶部100に格納する。
【0083】
マスターPC116の最終判定部80は、外観基準データおよびICT基準データを利用して、検査対象の基板に異常があるか否かの最終判定を実施する(S128)。このとき、最終判定部80は、まずICT検査結果データが記憶部100に格納されているか否かを判定することにより、外観検査のみが実施されているか、または外観検査とICT検査の双方が実施されているかを、判定する。ICT検査が実施されておらず、外観検査のみが実施されている場合、外観検査結果データが示す基板の検査結果を最終的な基板の検査結果とする。
【0084】
外観検査とICT検査の双方が実施されている場合であって、外観検査結果データが示す基板の検査結果とICT検査結果データが示す基板の検査結果が異なる場合、最終判定部80は、ICT検査結果データが示す基板の検査結果を採用する。例えば、外観検査結果データが、基板上のある部品の実装状態が正常であることを示すものである場合においても、ICT検査結果データが、その部品の実装状態が異常であることを示すものである場合、最終判定部80は、その部品の実装状態は異常であると判定する。表示制御部76は、最終判定部80による最終判定結果を含む基板の検査結果をディスプレイ18に表示する(S130)。このとき、表示制御部76は、異常と判定された箇所の画像をディスプレイ18に表示する。
【0085】
また、最終判定部80は、ICT検査結果データが示すICT検査結果が正常であるにもかかわらず、外観検査結果データが示す外観検査結果が異常となっている誤判定箇所があるか否かを判定する(S132)。誤判定箇所がある場合(S132のY)、送受信部78はスレーブPC20に、外観検査による誤判定箇所を示すデータを送信する。スレーブPC20のデータ管理部88は、そのようなデータを受信した場合、再び同様の外観検査を実施した場合に、受信したデータによって特定される誤判定箇所を外観検査部86が正常と判定することができるよう、外観基準データを修正する(S134)。外観検査による誤判定箇所がない場合(S132のN)、データ管理部88は、外観検査結果データの修正を行わない。
【0086】
本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、各実施形態の各要素を適宜組み合わせたものも、本発明の実施形態として有効である。また、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうる。以下、そうした例をあげる。
【0087】
ある変形例では、ラインセンサ30は、走査方向に複数並設されていてもよい。これにより、より高精細な基板の光学画像を撮像することができる。
【0088】
また、ある別の変形例では、外観検査が実施される箇所と、ICT検査が実施される箇所とを、分けておき、外観検査部86およびICT検査部104は、同じ検査対象となる基板において、別々の箇所について実装状態を検査してもよい。このとき、外観検査部86は、マスターPC116の記憶部100に格納される指定検査箇所データを参照し、ICT検査が実施される箇所の外観検査を実施しなくてもよい。外観検査を実施しても、同一の箇所についてICT検査が実施される場合、ICT検査の検査結果が優先されることから、そのような箇所について外観検査を実施しなくても基板検査に与える影響は低いと考えられる。また、外観検査の検査箇所を削減することで、外観検査の工数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】第1の実施形態に係る基板検査システムの模式的な全体構成図である。
【図2】第1の実施形態に係る基板検査システムの機能ブロック図である。
【図3】第1の実施形態に係る外観検査装置による基板の外観検査の手順を示すフローチャートである。
【図4】図3のS25において送信された外観検査情報及び指定検査箇所データを受信した後におけるICT検査PCの処理手順を示すフローチャートである。
【図5】検査結果表示PCにおいて外観検査またはICT検査の検査結果を表示させる表示手順を示すフローチャートである。
【図6】ICT検査を受信したときのスレーブPCの処理手順を示すフローチャートである。
【図7】第2の実施形態に係る基板検査システムの模式的な全体構成図である。
【図8】第2の実施形態に係る基板検査システムの機能ブロック図である。
【図9】第2の実施形態に係る外観検査装置による基板の外観検査の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0090】
10 基板検査システム、 12 外観検査装置、 14 インサーキットテスタ、 16 マスターPC、 18 ディスプレイ、 20 スレーブPC、 30 ラインセンサ、 54 プローブ、 56 プローブ指示部材、 58 移動機構、 60 測定部、 80 最終判定部、 86 外観検査部、 88 データ管理部、 102 プローブ制御部、 104 ICT検査部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査体の画像を撮像する撮像部と、
撮像された画像を解析して外観検査情報を取得し、取得した外観検査情報を利用して被検査体の部品の実装状態を検査する外観検査部と、
被検査体に接触して被検査体の電気的特性を検出するプローブと、
前記プローブの移動を制御するプローブ制御部と、
検出された被検査体の電気的特性を利用して被検査体の部品の実装状態を検査するインサーキット検査部と、
を備え、
前記プローブ制御部は、前記外観検査部によって取得された外観検査情報を利用して、被検査体における前記プローブを接触させるべき位置を補正し、補正した位置に前記プローブを接触させるよう前記プローブの移動を制御することを特徴とする被検査体の検査システム。
【請求項2】
前記外観検査部は、撮像された画像を解析して被検査体の部品の実装位置を示す部品位置情報を外観検査情報として取得し、取得した部品位置情報が示す部品の実装位置が適正なものか否かを判定することにより被検査体の部品の実装状態を検査し、
前記プローブ制御部は、取得された部品位置情報が示す部品の実装位置に応じて、前記プローブを接触させるべき位置を補正することを特徴とする請求項1に記載の被検査体の検査システム。
【請求項3】
前記外観検査部は、撮像された画像を解析して被検査体の形状を示す形状情報を外観検査情報として取得し、取得した形状情報が示す被検査体の形状が適正なものか否かを判定することにより被検査体の部品の実装状態を検査し、
前記プローブ制御部は、取得された形状情報が示す被検査体の形状に応じて、前記プローブを接触させるべき位置を補正することを特徴とする請求項1または2に記載の被検査体の検査システム。
【請求項4】
前記外観検査部は、撮像された画像を解析して被検査体の部品が存在するか否か示す欠品情報を外観検査情報として取得し、取得した欠品情報が被検査体のいずれかの部品が存在しない旨を示すものである場合、当該部品の実装状態は正常でないと判定し、
前記プローブ制御部は、取得した欠品情報が被検査体のいずれかの部品が存在しない旨を示すものである場合、前記プローブを当該部品に接触させるように移動させないことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の被検査体の検査システム。
【請求項5】
前記外観検査部は、撮像された画像を解析して被検査体の位置を示す被検査体位置情報を外観検査情報として取得し、取得した被検査体位置情報が示す被検査板の位置と被検査体が位置しているべき基準位置とのずれを利用して、被検査板の部品の実装状態を検査し、
前記プローブ制御部は、取得した被検査体位置情報が示す被検査板の位置に応じて、被検査体における前記プローブを接触させるべき位置を補正することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の被検査体の検査システム。
【請求項6】
被検査体の外観に関する外観基準データを格納する記憶部と、
格納された外観基準データを管理するデータ管理部と、
をさらに備え、
前記外観検査部は、取得した外観検査情報と格納された外観基準データとを比較することにより、被検査体の部品の実装状態を検査し、
前記データ管理部は、外観検査部によって被検査体のある部品の実装状態が正常でないと判定されたにもかかわらずインサーキット検査部によって当該部品の実装状態が正常と判定された場合、当該判定に用いられた外観検査情報と比較したときに当該部品の実装状態が正常と判定されるよう、格納された外観基準データを変更することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の被検査体の検査システム。
【請求項7】
ユーザによって入力された、電気的特性を検出すべき被検査体の箇所を示す指定検査箇所情報を取得する検査箇所取得部をさらに備え、
前記プローブ制御部は、前記外観検査部によって取得された外観検査情報を利用して、指定検査箇所情報が示す被検査体の箇所における、前記プローブを接触させるべき位置を補正することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の被検査体の検査システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−298489(P2008−298489A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−142639(P2007−142639)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(595039014)株式会社サキコーポレーション (31)
【Fターム(参考)】