説明

被測定物検出装置

【課題】電磁波を周囲空間に走査することによって形成される平面状の走査領域の形態を、容易に変更可能な被測定物検出装置を提供する。
【解決手段】電磁波を周囲空間に走査して平面状の走査領域を形成し、走査領域内で反射して戻ってきた電磁波に基づいて走査領域内に存する被測定物を検出する被測定物検出装置本体2の周囲空間に、電磁波を反射して走査領域の形態を変更する反射部3を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波を周囲空間に走査して平面状の走査領域を形成し、この走査領域内で反射して戻ってきた電磁波に基づいて走査領域内に存する被測定物を検出する被測定物検出装置の改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、例えば無人搬送台車(AGV)に搭載して走行領域内での障害物等の被測定物を検出する被測定物検出装置としては、電磁波を周囲空間に走査して平面状の走査領域を形成し、この走査領域内で反射して戻ってきた電磁波に基づいて走査領域内に存する被測定物を検出するものが利用されている(以下の特許文献1、2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−221336号公報
【特許文献2】特開2005−55226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の被測定物検出装置は、近年多岐に亘る分野で利用されており、これに伴って検出対象となる被測定物も多種多様なものとなっているのが実情である。そのため、この種の被測定物検出装置に要求される電磁波の走査領域も、平面状のみならず、検出対象となる被測定物に応じた種々の形態を取ることが要請されるに至っている。
【0005】
そこで、上記の要請に応じる対策の一例としては、上記の特許文献1及び2に開示されているように、被測定物検出装置の全体を所定周期で傾斜振動させることで、平面状の走査領域を上下鉛直方向に振ることで、周囲空間を3次元走査することが挙げられる。
【0006】
しかしながら、被測定物検出装置の全体を傾斜振動させるためには、被測定物検出装置を振動させる駆動部を別途設ける必要があり、製造コストの高騰を招くと共に、制御面での負担が増大するため、実用的な対策とはなり得ない。
【0007】
本発明の課題は、電磁波を周囲空間に走査することによって形成される平面状の走査領域の形態を、容易に変更可能な被測定物検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために創案された本発明は、電磁波を周囲空間に走査して平面状の走査領域を形成し、該走査領域内で反射して戻ってきた電磁波に基づいて前記走査領域内に存する被測定物を検出する被測定物検出装置において、前記周囲空間に配置され、電磁波を反射して前記走査領域の形態を変更する反射部を更に備えたことに特徴づけられる。なお、上記の「平面状の走査領域」には、走査領域が実質的に平面とみなせる場合も含まれる(以下、同様)。
【0009】
上記の構成によれば、周囲空間に配置された反射部で電磁波を反射することで、平面状の走査領域の形態を容易に変更することが可能となる。
【0010】
上記の構成において、前記反射部によって変更された前記走査領域の形態を、円錐面状又は円筒面状としてもよい。
【0011】
この場合、前記反射部の電磁波を反射する反射面は、円錐面で形成されたものを採用することができる。
【0012】
上記の構成において、前記反射部によって変更された前記走査領域の形態を、扇面状としてもよい。
【0013】
この場合、前記反射部の電磁波を反射する反射面は、平面で形成されたものを採用することができる。
【0014】
また、上記の構成において、前記反射部は、複数設けられていてもよい。
【0015】
以上の構成において使用される電磁波は、光又は電波であることが好ましい。なお、光の光源としては、例えばレーザダイオード(LD)や、発光ダイオード(LED)等を利用することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のような本発明によれば、周囲空間に配置された反射部で電磁波を反射することで、検出対象となる被測定物の要求仕様に応じて、周囲空間に形成される平面状の走査領域の形態を容易に変更することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の第一実施形態に係る被測定物検出装置を図1〜4に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本発明の第一実施形態に係る被測定物検出装置の全体構成を示す概略斜視図である。同図に示すように、この被測定物検出装置1は、電磁波としてレーザ光を利用したもので、走査軸Zを中心としてレーザ光を周囲空間に走査して平面状の走査領域を形成し、この走査領域内で反射して戻ってきたレーザ光に基づいて走査領域内に存する被測定物を検出する被測定物検出装置本体2(詳細については、例えば上記の特許文献1、2を参照)と、被測定物検出装置本体2の周囲空間に配置され、レーザ光を反射して平面状の走査領域の形態を変更する反射部3とを備えている。以下では、本発明の要旨となる反射部3について詳細に説明する。
【0019】
上記の反射部3は、全体として部分円錐状をなし、被測定物検出装置本体2の周囲空間を取り囲むように配置されている。そして、被測定物検出装置本体2の走査によって周囲空間に形成された平面状の走査領域は、反射部3の内周面で反射され、円錐面状の走査領域に変更されるようになっている。
【0020】
以上のように、第一実施形態に係る被測定物検出装置1によれば、平面状の走査領域を、反射部3によって円錐面状の走査領域に変更することが可能となる。したがって、例えば円錐面状の走査領域内に障害物が侵入した場合には、その障害物を検出することが可能となるため、被測定物検出装置1を円錐面状の走査領域内の安全を確保する安全センサとして利用することができる。また、例えば、不整地等を走行する全方向移動ロボットに、かかる被測定物検出装置1を取り付けると共に、反射部3によって全方向移動ロボットの周囲を取り囲むように円錐面状の走査領域を形成すれば、一台の被測定物検出装置1によって、全方向移動ロボットの走行領域での地表面形状データを容易に取得することが可能となる。
【0021】
なお、上記の第一実施形態では、走査軸Zに対して一定の広がり角を有する部分円錐状に形成した反射部3を例示したが、この反射部3に代えて、図2に示すように、走査軸Zに対する広がり角が互いに異なる部分円錐4a、4bを走査軸Z方向に2段以上連ねて形成される反射部4を採用してもよい。この場合、図3に示すように、反射部4と被測定物検出装置本体2とを走査軸Z方向に相対移動させれば、円錐面状の走査領域の径方向寸法を容易に切り替えることが可能となる。
【0022】
また、図4に示すように、レーザ光の光軸が交差するように、走査軸Zに対する広がり角が調整された部分円錐状の反射部5を採用すれば、反射部の径方向寸法を大型化することなく、円錐状の走査領域の径方向寸法を拡大することができる。さらに、図示しないが、部分円錐状の反射部の走査軸Zに対する広がり角を45度に設定すれば、反射部で反射したレーザ光の走査領域を円筒面状にすることもできる。
【0023】
次に、本発明の第二実施形態に係る被測定物検出装置を図5〜7に基づいて説明する。
【0024】
図5は、本発明の第二実施形態に係る被測定物検出装置を示す概略斜視図である。同図に示すように、この被測定物検出装置10は、走査軸Zが略水平方向を向くように被測定物検出装置本体2が配置されており、この被測定物検出装置本体2の周囲空間を囲むように3つの平板状の反射部11a、11b、11cが配置されている。詳述すると、本実施形態では、被測定物検出装置本体2の両側端に略鉛直方向に沿って長尺な平板状の反射部11a、11bが配置されると共に、被測定物検出装置本体2の下端に略水平方向に長尺な平板状の反射部11cが配置されている。更に、各平板状の反射部11a、11b、11cは、被測定物検出装置本体2の周囲空間に形成される平面状のレーザ光の走査領域に対して約45度で傾斜した状態となっている。そして、被測定物検出装置本体2によって形成される平面状の走査領域は、各平板状の反射部11a、11b、11cで反射され、走査軸Zと略平行な扇状の走査領域に分割され、全体として上方が開口した断面略コ字状で走査軸Zに沿って延びる走査領域に変更される。
【0025】
以上のように、第二実施形態に係る被測定物検出装置10によれば、平板状の反射部11a、11b、11cでレーザ光を反射することで、被測定物検出装置本体2によって形成される平面状の走査領域を、断面略コ字状で走査軸Zに沿って延びる走査領域に容易に変更することが可能となる。そのため、かかる被測定物検出装置10を、例えばAGVの前方障害物センサとして使用した場合には、一台の被測定物検出装置10で、前方の障害物だけでなく、両側方向から侵入する障害物をも検出することが可能となる。
【0026】
なお、図6に示すように、被測定物検出装置本体2の両側端に配置された平板状の反射部11a、11bによって反射されたレーザ光の光軸が交差するように、反射部11a、11bの傾斜角度を調整すれば、被測定物検出装置10の両側方に位置する障害物等の被測定物の形状データを容易に取得することが可能となる。
【0027】
次に、本発明の第三実施形態に係る被測定物検出装置を図7〜図8に基づいて説明する。
【0028】
図7は、本発明の第三実施形態に係る被測定物検出装置を示す概略正面図であって、図8は、その概略側面図である。図7に示すように、この被測定物検出装置20は、被測定物検出装置本体2の周囲空間に計4つの平板状の反射部21a、21b、21c、21dが配置されている。そして、反射部21bと反射部21cには、被測定物検出装置本体2によって走査されるレーザ光が直接入射するようになっている。一方、反射部21aと反射部21dには、被測定物検出装置本体2によって形成される平面状の走査領域に対して直交するように配置されたミラー22、23を介してレーザ光が入射するようになっている。この際、各反射部21a、21b、21c、21dに入射する扇状の走査領域の中心線l、m、n、oがそれぞれ平行になると共に、かかる走査領域によって各反射部21a、21b、21c、21dの反射面上に描かれるレーザ光の軌跡が、それぞれ平行となるようになっている。なお、図7中の24、25は遮光部材であって、被測定物検出装置本体2によって周囲空間に走査されるレーザ光が、各反射部21a、21b、21c、21dに不当に入射するのを防止している。
【0029】
さらに、本実施形態では、図8に示すように、被測定物検出装置本体2の走査軸Zが略水平方向を向くように配置されており、鉛直方向に対して上述の各反射部21a、21b、21c、21dが、相互に異なる傾斜角θ、θ、θ、θで傾斜している。したがって、被測定物検出装置本体2によって形成される平面状の走査領域が、各反射部21a、21b、21c、21dで、鉛直方向に対して傾斜角の異なる4つの扇状の走査領域に分割される。
【0030】
以上のように第三実施形態に係る被測定物検出装置20によれば、被測定物検出装置本体2を周囲に1回走査する毎に、反射部21a、21b、21c、21dによって傾斜角度の異なる4つの扇状の走査領域に分割されるため、特定領域の立体形状データを容易に取得することが可能となる。
【0031】
なお、上記の第三実施形態では、反射部21a、21b、21c、21dの傾斜角度θ、θ、θ、θを相互に異なる傾斜角度に設定したものを例示したが、例えば、θ=θ=θ=θ=45°に設定してもよい。このようにすれば、各反射部21a、21b、21c、21dで反射された扇状の走査領域がほぼ同一水平面上に位置することとなり、被測定物検出装置本体2を周囲に1回走査する毎に、水平面が計4回走査されるため、反射部21a、21b、21c、21dによって形成される扇状の走査領域内の走査速度を高速化することが可能となる。また、同様に、θ=θ=90°−θ=90°−θに設定すれば、被測定物検出装置本体2を周囲に1回走査する毎に、水平面に対して任意の傾斜角で傾斜する平面を計4回走査することが可能となる。
【0032】
さらに、各平板状の反射部21a、21b、21c、21dの反射面を、各反射部21a、21b、21c、21cに入射する扇状の走査領域の幅方向に亘って湾曲する円筒面状の凸面とすれば、走査領域は平面ではなくなるが、これを拡大することができる。また、反射部21a、21b、21c、21dの反射面を、各反射部21a、21b、21c、21dに入射する扇状の走査領域の幅方向に亘って湾曲する円筒面状の凹面にすれば、走査領域は平面ではなくなるが、これを縮小することができる。
【0033】
また、上記の第三実施形態では、被測定物検出装置本体2の周囲空間に計4つの反射部21a、21b、21c、21dを配置したものを例示したが、反射部の配置個数は、2つ以上であれば特に限定されるものではなく、要求仕様に応じて適宜変更することができる。
【0034】
更に、本発明の第四実施形態に係る被測定物検出装置を図9に基づいて説明する。
【0035】
図9は、本発明の被測定物検出装置に係る第四実施形態を示す概略側面図である。同図に示すように、この被測定物検出装置30は、レールに沿って天井を走行する移動台車Xの下端面に、走査軸Zが略鉛直方向を向くように配置された被測定物検出装置本体2と、移動台車Xの後方側に配置されると共に、被測定物検出装置本体2によって形成される平面状の走査領域に対して45度で傾斜した平板状の反射部31とを備えている。このようにすれば、被測定物検出装置本体2から走査軸Zを中心として周囲空間に走査される平面状の走査領域が略水平面となるため、移動台車Xの前方方向の障害物を検出することができる。また、平面状の走査領域の一部は、反射部31によって鉛直方向下向きに反射され、扇状の走査領域に変更されるため、移動台車Xの下方方向の障害物を検出することも可能となる。
【0036】
なお、上記の実施形態において、平板状の反射部31の反射面を、反射部31に入射する扇状の走査領域の幅方向に亘って湾曲する円筒面状の凸面とすれば、走査領域は平面ではなくなるが、これを拡大することができる。また、反射部31の反射面を、反射部31に入射する扇状の走査領域の幅方向に亘って湾曲する円筒面状の凹面にすれば、走査領域は平面ではなくなるが、これを縮小することができる。
【0037】
以上、本発明の被測定物検出装置に係る第一実施形態〜第四実施形態を、電磁波としてレーザ光を利用した場合について説明したが、レーザ光に代えて、例えば電波等の電磁波を利用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第一実施形態に係る被測定物検出装置を示す概略斜視図である。
【図2】第一実施形態に係る被測定物検出装置の変形例を示す概略縦断面図である。
【図3】図2に示す被測定物検出装置の動作状態を表す概略縦断面図である。
【図4】第一実施形態に係る被測定物検出装置の別の変形例を示す概略縦断面図である。
【図5】本発明の第二実施形態に係る被測定物検出装置を示す概略斜視図である。
【図6】第二実施形態に係る被測定物検出装置の変形例を示す概略平面図である。
【図7】本発明の第三実施形態に係る被測定物検出装置を示す概略正面図である。
【図8】図7に示す被測定物検出装置の概略側面図である。
【図9】本発明の第四実施形態に係る被測定物検出装置を示す概略側面図である。
【符号の説明】
【0039】
1、10、20、30 被測定物検出装置
2 被測定物検出装置本体
3、11a、11b、11c、21a、21b、21c、21d、31 反射部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を周囲空間に走査して平面状の走査領域を形成し、該走査領域内で反射して戻ってきた電磁波に基づいて前記走査領域内に存する被測定物を検出する被測定物検出装置において、
前記周囲空間に配置され、電磁波を反射して前記走査領域の形態を変更する反射部を更に備えたことを特徴とする被測定物検出装置。
【請求項2】
前記反射部によって変更された前記走査領域の形態が、円錐面状又は円筒面状をなすことを特徴とする請求項1に記載の被測定物検出装置。
【請求項3】
前記反射部の電磁波を反射する反射面が、円錐面で形成されていることを特徴とする請求項2に記載の被測定物検出装置。
【請求項4】
前記反射部によって変更された前記走査領域の形態が、扇面状をなすことを特徴とする請求項1に記載の被測定物検出装置。
【請求項5】
前記反射部の電磁波を反射する反射面が、平面で形成されていることを特徴とする請求項4に記載の被測定物検出装置。
【請求項6】
前記反射部が、複数設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の被測定物検出装置。
【請求項7】
電磁波が、光又は電波であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の被測定物検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−139648(P2007−139648A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−335895(P2005−335895)
【出願日】平成17年11月21日(2005.11.21)
【出願人】(000242600)北陽電機株式会社 (37)
【Fターム(参考)】