説明

被膜形成装置および被膜形成方法

【課題】 表面平坦性に優れる被膜を形成可能な被膜形成装置および被膜形成方法を提供する。
【解決手段】 本実施形態の被膜形成装置10は、回転台30と、加熱器50と、を備えている。この回転台30は、上面に基板11を載せるものである。この加熱器50は、該回転台30の上面30aと対向して配置される。この加熱器50は、回転台30の回転の中心部の発熱温度に比べて当該回転台30の回転の外周部の発熱温度が高くなるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被膜形成装置および被膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の基板に微細加工する方法として、リソグラフィ技術が用いられている。このリソグラフィ技術では、レジストを基板上に均一の厚みで塗布するために、スピンコートが利用されている。しかし、レジストは、スピンコートを利用して塗布することによって厚み均一性が向上するものの、乾燥する際の熱で対流が生じてしまい、中心部の厚みに比べて外周部の厚みが厚くなってしまっていた。そこで、レジストを乾燥する際の温度均一性を高めることによって、レジストの厚み均一性を保つ技術が開発され、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−161168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載された技術では、基板を別の装置に移して乾燥させるため、当該装置に移すまでに、レジストの厚みが変動する場合があった。
【0005】
本発明は、上述の事情のもとで考え出されたものであって、表面平坦性に優れる被膜を形成可能な被膜形成装置および被膜形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の被膜形成装置は、上面に基板を載せる回転台と、該回転台の前記上面と対向して配置される加熱器と、を備えており、前記加熱器は、前記回転台の回転の中心部の発熱温度に比べて当該回転台の回転の外周部の発熱温度が高くなるように構成されている。
【0007】
本発明の被膜形成方法は、基板を回転させて、当該基板の表面の上にある被膜の表面の平坦性を高める工程と、前記基板を回転させながら、前記被膜を表面から加熱する工程と、前記被膜を表面から加熱し続けながら、前記被膜を前記基板側から加熱する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、表面平坦性に優れる被膜を形成可能な被膜形成装置および被膜形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る被膜形成装置の1つの実施形態の概略構成を示す部分断面視図である。
【図2】図1に示した被膜形成装置の平面視図である。
【図3】本発明に係る被膜形成方法の1つの実施形態の1つの工程を示す概略図である。
【図4】図3に示した工程の次の工程を示す概略図である。
【図5】図4に示した工程の次の工程を示す概略図である。
【図6】図5に示した工程の次の工程を示す概略図である。
【図7】図6に示した工程の次の工程を示す概略図である。
【図8】図7に示した工程を部分断面視した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<回転塗布装置>
本発明の被膜形成装置の実施形態の一例である被膜形成装置10について図面を参照しつつ、説明する。図1に示した被膜形成装置10は、筐体20、回転台30、供給機構40、および加熱器50を含んで構成されている。なお、図1には、形成する被膜としてレジスト12を採用し、被膜を形成する対象物として基板11を示しているが、基板11およびレジスト12は、被膜形成装置10の構成要素として含まれるものではない。また、図2は、図1を上方からみた平面視図である。
【0011】
筐体20は、被膜形成装置10の各構成の支持部材である。本実施形態の筐体20は、下部筐体21と、側部筐体22と、上部筐体23とを含んで構成されている。この側部筐体22および上部筐体23は、図1において部分断面として示している。この下部筐体21は、面方向に広がっている板状体である。この下部筐体21の上面には、側部筐体22が配置される。側部筐体22は、塗布する液体が外部に飛散するのを低減するものである。この側部筐体22は筒状をしており、上下に開口している。この側部筐体22の下側の開口は下部筐体21によって塞がれ、上側の開口は上部筐体23によって塞がれている。この上部筐体23は、側部筐体22の開口の上から移動可能に構成されている。この側部筐体22の内側には、回転台30が位置している。
【0012】
回転台30は、上面30aの上に基板11が載置される。回転台30は、上面30aが回転するように構成されている。この回転台30は、基板11の主面上に供給するレジストを、回転の遠心力で塗布することができる。遠心力で塗布されたレジストの一部は、回転台20の周囲に飛散する。この飛散したレジストは、筐体20によって被膜形成装置10の周囲に飛散するのが低減される。
【0013】
この回転台30は、上面30aに開口を有している。この回転台30は、開口からの吸入によって、基板11を上面30aに吸着するように構成されている。基板11は、回転台30が高速に回転した場合でも、回転台30に吸着されることによって上面30aに密着され、回転台30と一緒に回転する。なお、本実施形態の回転台30では、基板11を固定する手段として吸着を採用しているが、他の手段を採用してもよい。例えば、基板11を機械的に固定する方法、および静電気力による電気的に吸着する方法などが挙げられる。
【0014】
本実施形態の回転台30は、内部に第2の加熱器31を有している。この第2の加熱器31によって上面30aが加熱され、基板11に伝熱される。この第2の加熱器31は、上面30aを略均等に加熱するように構成されている。つまり、基板11の主面に塗布されたレジスト12は、第2の加熱器31の発する熱によって加熱される。本実施形態では、基板11と同程度の大きさの回転台30を採用して、回転台30から基板11に熱を均等に伝えている。なお、図1では、第2の加熱器31を抵抗器の記号で示しているが、抵抗器に限られるものではない。
【0015】
供給機構40は、基板11の主面にレジスト12を供給する機能を担っている。ここでは、基板11の主面にレジスト12を滴下する構成を採用している。この供給機構40は、供給ノズル41を有しており、この供給ノズル41からレジスト12を滴下する構成となっている。供給ノズル41から滴下されるレジスト12は、上部筐体23に設けられた貫通孔23aを通過して供給される。この上部筐体23の貫通孔23aは、回転台30の回転の中心軸の上方に位置している。回転の中心軸に滴下されたレジスト12は、回転台
30の回転によって周囲に塗布される。この供給ノズル41は、レジスト12を滴下する際に回転台30の上方に移動し、他の工程の際に側部筐体22の外側に移動可能に構成されている。
【0016】
加熱器50は、基板11に塗布されたレジスト12を加熱する機能を担っている。この加熱器50は、回転台30の上方に移動可能に構成されている。この加熱器50を回転台30の上方に移動する際には、側部筐体22の上側開口から上部筐体23が移動される。回転台30の上方に移動した加熱器50は、回転台30および基板11と離隔した状態で保持される。なお、この加熱器50は、供給ノズル41と相互に連係して、当たらないように移動するように構成されている。
【0017】
この加熱器50は、発熱する温度に偏りを有しており、回転台30の回転の中心軸側に比べて回転の外周側の温度が高くなるように構成されている。本実施形態の加熱器50は、中心側から外周側に向かって温度が漸次高くなるように構成されている。この加熱器50の発熱温度の偏りは、種々の方法によって実現可能である。例えば、加熱器50の熱源として電熱器を採用する場合は、外周側の抵抗値を大きくしたり、外周側の発熱抵抗体の密度を高めたりすることで実現可能である。
【0018】
この加熱器50によって、基板11の主面上のレジスト12の外周側の温度を高くして、外周側の溶媒を多く気化することができる。レジスト12の溶媒を多く気化することによって、レジスト12の表面側の粘度を高くし、外周部が高く盛り上がるのを低減することができる。また、第2の加熱器31に加えて加熱器50によって基板11を加熱することで、上下の温度差でレジスト12に対流が生じるのを低減することができる。
【0019】
<レジストの塗布方法>
本発明の被膜形成方法の実施形態の一例について図面を参照しつつ、説明する。この実施形態では、上述の被膜形成装置10を使用してレジスト12を塗布する。本実施形態では、被膜としてレジスト12を採用し、レジスト12として、溶質を溶媒中に溶かしたものを採用している。
【0020】
まず、図3に示したように、上部筐体23、供給ノズル41、および加熱器50を側部筐体22の上方からズラして配置する。次に、レジスト12を塗布する基板11を準備し、図4に示したように、回転台30の上面30aに載置する。この基板11は、回転台30の上面30aに真空チャックによって吸着される。
【0021】
次に、図5に示したように、上部筐体23および供給ノズル41を配置する。上部筐体23は、側部筐体22の上に載置する。この上部筐体23は、貫通孔23aが回転台30の回転の軸の上方に位置するように載置される。供給機構40の供給ノズル41は、上部筐体23の貫通孔23aを通じて、回転台30の回転軸と対向させて配置する。
【0022】
次に、回転台30をゆっくりと回転させる。回転台30を回転させながら供給ノズル41からレジスト12を滴下し、上部筐体23の貫通孔23aを通じて基板11の上面に着滴させる。この基板11の上面に着滴したレジスト12は、回転台30の回転によって、図6に示したように基板11の上面全体に広がる。回転台30の回転を速くすることによって、レジスト12が基板11の上面全体に均一に広がる。この回転台30の回転によって、レジスト12の一部は、基板11の上面から周囲に飛散したり、側部筐体22の内壁面に被着したりする。
【0023】
次に、図7、8に示したように、側部筐体22の上から供給ノズル41および上部筐体23を移動させ、基板11の上方に加熱器50を移動させる。この移動は、回転台30を
回転させ続けながら行う。移動した加熱器50を発熱させ、基板11の上面のレジスト12に熱を加える。この加熱は、回転台30を回転させ続けながら行う。この回転台30の回転速度は、レジスト12を上面全体に塗布する際に比べて速度を落とすことが可能である。熱を加えられたレジスト12は、表面から溶媒が気化し、表面側の粘度が大きくなる。レジスト12の表面側の粘度を大きくすることによって、表面形状に変化が生じるのを低減することができる。
【0024】
また、この加熱器50は、温度に偏りをもって発熱し、回転台30の回転の中心軸側に比べて回転の外周側の温度が高くなる。本実施形態の加熱器50は、中心側から外周側に向かって温度が漸次高くなるように発熱する。そのため、基板11の上面のレジスト12は、中心側の溶媒に比べて外周側の溶媒が多く気化し、中心側の粘度に比べて外周側の粘度が大きくなる。外周側の粘度を相対的に高くすることで、外周部のレジスト12が盛り上がるのを低減することができる。
【0025】
次に、加熱器50での加熱を続けながら、回転台30に内蔵される第2の加熱器31でレジスト12を加熱する。つまり、レジスト12は、加熱器50によって表面から加熱され、第2の加熱器31によって基板側から加熱される。レジスト12を表裏面から加熱することによって、上下の温度差でレジスト12に対流が生じるのを低減することができる。この加熱をレジスト12の溶媒が気化するまで行う。
【0026】
上述の工程を経て、基板11の上面にレジスト12が塗布され、基板11の上面に被膜が形成される。
【0027】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を施すことは何等差し支えない。
【0028】
上述の実施形態では、例えば、上部筐体23と加熱器50とが別々に構成されているが、一体的に構成されていてもよい。この構成を採用した場合、レジストの塗布面が外雰囲気に晒される時間が短縮され、ゴミが付着するのを低減することができる。
【0029】
上述の実施形態では、第2の加熱器31が回転台30の上面30aを略均等に加熱するように構成されているが、この構成に限られない。例えば、回転の中心側に比べて外周側が高温になるように発熱する構成を採用してもよい。この構成を採用することで、外周側の温度ムラを低減し、レジスト12の外周側が盛り上がるのを低減することが可能である。
【0030】
上述の基板11は、半導体基板に限定されるものではなく、例えば、圧電基板、絶縁基板、金属板を含む種々の基板を採用可能である。
【符号の説明】
【0031】
10・・・被膜形成装置
11・・・基板
12・・・レジスト
20・・・筐体
21・・・下部筐体
22・・・側部筐体
23・・・上部筐体
23a・・・貫通孔
30・・・回転台
30a・・・上面
31・・・第2の加熱器
40・・・供給機構
50・・・加熱器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に基板を載せる回転台と、該回転台の前記上面と対向して配置される加熱器と、を備えており、
前記加熱器は、前記回転台の回転の中心部の発熱温度に比べて当該回転台の回転の外周部の発熱温度が高くなるように構成されている、被膜形成装置。
【請求項2】
前記回転台は、第2の加熱器を有している、請求項1に記載の被膜形成装置。
【請求項3】
前記第2の加熱器は、前記回転台の回転の中心部の発熱温度に比べて当該回転台の回転の外周部の発熱温度が高くなるように構成されている、請求項2に記載の被膜形成装置。
【請求項4】
基板を回転させて、当該基板の表面の上にある被膜の表面の平坦性を高める工程と、
前記基板を回転させながら、前記被膜を表面から加熱する工程と、
前記被膜を表面から加熱し続けながら、前記被膜を前記基板側から加熱する工程と、を含む、被膜形成方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−164751(P2012−164751A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22874(P2011−22874)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】