説明

補償を伴う磁気センサ

【課題】列状の磁気センサの長さが磁石の長さに対して整合していなくても、正確な出力波形を実現し得る検知装置を提供する。
【解決手段】検知アセンブリ。該検知アセンブリは磁石長を有する磁石から離間されると共に、該アセンブリは、補償モジュールと、列長を有する一列の磁気センサとを含む。各磁気センサは、複数の磁気センサ群へとグループ化される。上記磁気センサの各々は、上記磁石に基づき夫々の中間信号を生成する。上記補償モジュールは、上記磁石長と上記列長との間の差に基づき複数の夫々の利得を夫々の磁気センサ群に対して割当てると共に、夫々の利得を夫々の磁気センサ群の夫々の中間信号に対して適用することで夫々の調節済み信号を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は2006年1月12日に提出された米国仮出願第60/758,315号の特典を主張するものであり、その全ての内容は言及したことにより本明細書中に援用される。
本発明の実施例は、概略的には磁気センサに関し、特に磁気的列状センサ(magnetic string sensor)に関する。
【背景技術】
【0002】
多極磁石により生成された磁界内に一列のセンサすなわち列状センサが位置されたとき、各センサは上記磁界に起因する正弦信号および余弦信号を生成する。上記正弦信号および余弦信号は次に、各センサの位置的情報を検出すべく使用され得る。特に、各センサは最初に複数区画のセンサへと分割されると共に、各区画のセンサの出力は合計されると共に相互から減算されることで正弦信号および余弦信号を形成する。
【0003】
各センサの出力から形成された上記正弦信号および余弦信号はは、他のプロセスおよびパラメータにより影響される。たとえば、もし多極磁石の長さとセンサ列の長さが不適切に整合されるなら、正弦信号および余弦信号の夫々の振幅は不整合となる。付加的に、正弦信号および余弦信号の夫々の振幅は、該正弦信号および余弦信号が補間される前に整合されねばならない。典型的に、正弦信号および余弦信号の夫々の振幅は、該正弦信号および余弦信号の夫々の振幅が均一化され又は正規化される如く各区画のセンサの出力を利得係数により減衰もしくは増幅することにより、整合される。
【特許文献1】なし
【非特許文献1】なし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
列状センサの長さが多極磁石の長さに対して不適切に整合されたとき、正弦信号および余弦信号の夫々の振幅を均一化するために補償プロセスが使用され得る。たとえば、正弦信号および余弦信号の両方を補償する2チャネル補償プロセスが、正弦信号および余弦信号の夫々の振幅を均一化する。特に、上記2チャネル補償プロセスは、各センサの出力を減衰および増幅することにより正弦信号および余弦信号を補償する。上記2チャネル補償プロセスはまた、調節を行う毎に均一な刻みサイズの利得係数を利用する。付加的に、単一の出力信号のみを補償する単一チャネル補償プロセスは概略的に、均一な刻みサイズを利用する。しかし、上記単一チャネル補償プロセスの間にはノイズが導入され、不正確な出力波形に帰着し得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の各実施例は、複数の列状センサの出力振幅を適切に整合または均一化する方法およびシステムに関する。ひとつの形態において本発明は、磁石長を有する磁石から離間された検知アセンブリを提供する。該検知アセンブリは、一列の磁気センサと、補償モジュールとを含む。上記一列の磁気センサは列長を有する。上記各磁気センサは、複数の磁気センサ群へとグループ化される。上記磁気センサの各々は、上記磁石に基づく夫々の中間信号を生成する。上記補償モジュールは、上記磁石長と上記列長との間の差に基づき夫々の磁気センサ群に対して複数の夫々の利得を割当てると共に、夫々の利得を夫々の上記磁気センサ群の夫々の中間信号に対して適用して夫々の調節済み信号を生成する。
【0006】
別の形態において本発明は、磁石と、複数のセンサを有するセンサ列との間の寸法差を補償する方法を提供する。該方法は、上記磁石に対して基準点を割当てる段階と、上記センサの各々と上記基準点との間の夫々の距離を決定する段階と、夫々の距離に基づき、上記センサの各々に対して夫々の重みを割当てる段階とを含む。該方法はまた、割当てられた夫々の重みを、上記センサの夫々の出力に対して適用する段階も含む。
【0007】
更に別の形態において本発明は、磁石と、複数のセンサを有する隣接センサ列との間の寸法差を補償する方法を提供する。該方法は、上記磁石と上記センサ列との間の寸法差を測定する段階と、上記各センサを複数のセンサ群へとグループ化する段階とを含む。該方法はまた、上記磁石に基づき、上記センサの各々にて夫々の中間信号を生成する段階、および、上記寸法差および上記各群に基づき、夫々の中間信号に対して利得を適用する段階も含む。
【0008】
本明細書における各実施例は、補償プロセスの間において本質的に同一の群利得(group gain)を維持し乍ら、本質的に対称的な振幅を有する出力を生成する。特に上記補償プロセスは、所定数の区画のセンサにおいて、本質的に等しく且つ本質的に逆符号の補償量を生成し得る。各センサの出力は群利得により調節され、正弦信号および余弦信号を形成する。上記補償プロセスはまた、上記正弦信号および余弦信号の精度を最大化する一方、該正弦信号および余弦信号のノイズレベルを低減する。付加的に、上記補償プロセスはひとつの群内のセンサに対して同一の群利得を利用することから、各実施例は少ない個数または最少の個数の構成要素を利用し得る。更に、上記補償プロセスの間に導入される誤差またはノイズは、上記利得係数を列状センサの全体に亙り分散させることにより相殺、低減または最小化され得る。
【0009】
本発明の他の見地は、詳細な説明および添付図面を考慮することにより明らかとなろう。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、列状の磁気センサの長さが磁石の長さに対して整合していなくても、正確な出力波形を実現し得る検知装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の一切の実施例が詳細に説明される前に、本発明はその適用性において、以下の記述中に示された又は添付図面に示された構成要素の構成および配置の詳細に限定されないことを理解すべきである。本発明は他の実施例が可能であると共に、種々の様式で実用化または実施され得る。また本明細書中で使用される表現および語句は記述を目的としており、限定的と解釈されてはならないことも理解されるべきである。本明細書中における“含む”、“から成る”または“有する”という語句およびそれらの変化形が使用されたときには、その後に列挙される項目およびその均等物ならびに付加的な項目を包含することが意味される。また、別様に特定または限定されなければ、“取付けられた”、“接続された”、“支持された”および“連結された”という語句およびその変化形は広範囲に使用されると共に、直接的および間接的な取付け、接続、支持および連結の両方を包含する。更に、“接続された”および“連結された”という語句は、物理的または機械的な接続または連結に限定されるものでない。
【0012】
本発明の各実施例は、検知アセンブリにより高分解能信号を生成する方法に関する。一定の実施例において検知装置は、異なる長さを有する一列のセンサと多極磁石とを有する。上記方法は、一列のセンサを異なる群のセンサへと分離もしくは分割する段階と、各群の寸法的パラメータを決定する段階とを含む。上記方法はまた、夫々の寸法的パラメータに基づき各群の利得の値、係数もしくは重みを決定する段階も含む。上記方法はまた、各群の出力を利得係数により補償する段階も含む。特定実施例において、各群の寸法的パラメータを決定する段階は、各群と多極磁石との間の距離差を決定する段階を含む。
【0013】
本発明の各実施例はまた、一列のセンサと多極磁石とを含むセンサ装置も提供する。一定の実施例において上記一列のセンサおよび上記多極磁石は異なる長さを有する。上記多極磁石は、該多極磁石の各磁極に関する磁界を生成する。該磁界は、上記多極磁石の各磁極に対して異なる位置にて列状センサの各々を囲繞する。結果として上記列状センサは本質的に、上記多極磁石に起因して異なる出力を生成する。上記センサ装置はまた、上記列状センサの夫々の出力の振幅が均一化される如く該出力を補償する補償モジュールも含む。
【0014】
図1は、一列のセンサ104A、104B、104C、104D、104E、104F、104G、104H、104I、104J、104Kおよび104Lを有する検知装置100の概略図を示しており、本明細書においてこれらのセンサは集合的に、各センサ、列状センサ、または、一列のセンサ104と称される。列状センサ104は合計で12個の個別的センサを含むが、検知装置100は列状センサ104において他の任意の個数のセンサを有し得る。一定の実施例においてセンサ104は、ホール(Hall)センサもしくはデバイス、他の磁気センサ、または、それらの組み合わせである。検知装置100はまた、第1および第2磁極112、116の回りに磁界を生成する多極磁石108も含む。センサ104の各々は、上記磁界に反応し、夫々のセンサ104により検出された磁界の強度および方向に基づく出力を生成する。第1磁極112および第2磁極116は多極磁石108のN極およびS極として夫々示されるが、第1磁極112および第2磁極116はまた夫々S極およびN極ともされ得る。
【0015】
図1はまた、一列のセンサ104が多極磁石108とは異なる長さを有することも示している。特に、一列のセンサ104は集合的センサ長120を有するが、多極磁石108は磁極間隔すなわち磁石長124を有する。センサ104は第1および第2磁極112、116に関して比較的に対称的に配置されるが、センサ104はまた、第1および第2磁極112、116に関して比較的に非対称的ともされ得る。斯かる場合に検知装置100は、以下に詳述される如く、第1および第2磁極112、116に関してセンサ長120を2つの部分へと分割することにより非対称的な差を補償する。
【0016】
検知装置100はまた補償モジュール128も含み、該モジュールは、磁石長124およびセンサ長120の両方を記憶し、センサ104の各々の出力を収集し、センサ104の各々の出力を処理し、且つ、検知装置100の出力を生成する。補償モジュール128は、ソフトウェアおよび/またはハードウェアにより実現され得るプロセスを実施する。更に、補償モジュール128および他のモジュールにより実施されるプロセスは、マイクロプロセッサもしくは類似デバイスにより実行されるソフトウェアにおいて実現され得るか、または、たとえば特定用途集積回路(“ASIC”)などの種々の構成要素を使用するハードウェアにおいて実現され得る。図1に示された実施例において補償モジュール128は、各センサ104を、集合的に群132と称されるセンサの群すなわちセンサ群132A、132B、132C、132Dおよび132Eへとグループ化または分割する。特に、センサ群132Aはセンサ104A、104Bを含み、センサ群132Bはセンサ104C、140Dを含み、センサ群132Cはセンサ104E、104F、104G、104Hを含み、センサ群132Dはセンサ104I、104Jを含み、且つ、センサ群132Eはセンサ104K、104Lを含む。図1に示された実施例は5つのセンサ群を含むが、他の実施例において補償モジュール128はまた、異なる個数のセンサを異なる個数のセンサ群へとグループ化し得る。
【0017】
補償モジュール128はまた、センサ104の各々と、センサ104に対する多極磁石108上の基準点との間の距離も測定する。多極磁石108上の代表的な基準点は、第1磁極112である。一定の実施例において上記距離は、センサ104と、第1および第2磁極112、116を結ぶことで形成される磁極線136との間の直角もしくは直交距離である。他の実施例において上記距離は、センサ104と、第1および第2磁極112、116の一方との間の最小距離として定義される。代替的に上記距離は、センサの群と、第1および第2磁極112、116の一方との間における最小距離もしくは直交距離として定義される。更なる他の実施例において上記距離は、他の公知技術により測定または決定され得る。
【0018】
図1に示された実施例において補償モジュール128は、磁極線136からの距離に基づき、群132の各々に対する重み又は利得係数を決定する。一定の実施例において補償モジュール128は、一群の所定の利得係数に対して距離を関連付ける利得関数と、センサ長120と磁石長124との間の差を定義する長さオフセットとから、利得係数を決定する。たとえば上記利得関数は、夫々の群と磁極線136との間の距離が最大であるときに最大利得係数を、且つ、夫々の群と磁極線136との間の距離が最小であるときに最小利得係数を割当てる線形利得関数であり得る。斯かる場合、他の群に対する利得係数はその後に線形に補間される。一定の場合に上記最小利得係数は、最大利得係数と等しいが符号が逆であるという値を有する。各センサの出力の振幅が等しい様に、非線形関数および特定の階段関数の如き他の形式の利得関数も使用され得る。
【0019】
図1に示された実施例において、補償モジュール128がセンサ104を5個の群132に分割した後、群132の各々に対しては以下の如く重みが割当てられる。外側センサ群132Aのセンサ104A、104Bに対してはXの値を有する第1利得係数が割当てられ、中央センサ群132Bのセンサ104C、140Dに対しては1の値の第2利得係数が割当てられ、且つ、内側センサ群132Cのセンサ104E、104F、104G、104Hに対しては−Xの値の第3利得係数が割当てられる。同様に、第2外側センサ群132Eのセンサ104K、104Lに対しては上記第1利得係数が割当てられ、且つ、第2中央センサ群132Dのセンサ104I、104Jに対しては上記第2利得係数が割当てられる。すなわち、外側センサ群132Aのセンサ104A、104Bの出力、および、第2外側センサ群132Eのセンサ104K、104Lの出力は、更に長寸の磁極に対して増幅される。同様に、中央センサ群132Bのセンサ104C、140Dの出力および第2中央センサ群132Dのセンサ104I、104Jの出力は同一のままである一方、内側センサ群132Cのセンサ104E、104F、104G、104Hの出力は減衰される。内側センサ群132Cのセンサ104E、104F、104G、104Hは負の値を有する第3利得係数が割当てられるが、該内側センサ群132Cのセンサ104E、104F、104G、104Hは、線形利得関数を満足する別の正の利得係数も割当てられ得る。次に補償モジュール128は、各センサ104の補償済み出力を(たとえば制御器などの)出力モジュール140に対して送信する。図1に示された補償モジュール128および出力モジュール140は別体のモジュールであるが、補償モジュール128および出力モジュール140は単一のモジュール内にも含まれ得る。
【0020】
各センサ104が第1および第2磁極112、116に関して比較的に非対称的である場合、補償モジュール128は各センサ104を、第1および第2の長手部分へと分割する。たとえば、第1長手部分は、第1の集合的部分長を有するセンサ104A、104B、104C、104D、104E、104Fから成る。同様に、第2長手部分は、第2の集合的部分長を有するセンサ104G、104H、104I、104J、104K、104Lから成る。その場合に補償モジュール128は、上記第1の集合的部分長に基づく第2利得関数、および、上記第2の集合的部分長に基づく第3利得関数を適用する。補償モジュール128は次に、上記第2および第3の利得関数に依存し、各センサ104に対して利得係数を割当てる。一定の実施例において上記各利得関数は、装置100内に事前プログラムされる。他の実施例において上記各利得関数は、各利得関数が経時的に調節される如く、周期的に又は要求に応じて決定される。
【0021】
一定の実施例においては、正弦信号および余弦信号の振幅を均一化するために補償モジュール128は、磁極間隔もしくは長さの不整合の量に基づき、上記列の特定の群に対して特定の量の増幅もしくは減衰を必要とする。特に磁石長124およびセンサ長120が特定量だけ異なるのであれば、正弦信号および余弦信号の間の対応振幅差は、その量により事前決定されると共に、夫々の利得係数を生成するために補償モジュール128に記憶される。たとえば、磁石長124およびセンサ長120が約20%だけ異なるなら、合計で12個のセンサ104がシングルエンド型の列構成にて使用される場合、正弦信号および余弦信号の振幅間には約±8.2%の差が在る。その場合に補償モジュール128は、その差に依る夫々の増幅もしくは減衰係数を展開もしくは生成する。たとえば、シングルエンド型の列構成において使用される12個のセンサに対して8.2%の差が決定されたときには、約11%の増幅係数(+11%)または約11%の減衰係数(−11%)が使用され得る。斯かる場合、各利得係数は±1.11である。
【0022】
各センサ104の出力が調節もしくは補償された後、出力モジュール140は、列状センサ104の異なる区画の出力を加算および減算することにより、正弦信号および余弦信号の形態の補償済み出力信号を生成する。たとえば出力モジュール140は各センサ104を、第1および第2区画144、148へとグループ化する。その場合に第1補償区画144はセンサ104A、104B、104C、104D、104E、104Fを含む一方、第2補償区画148はセンサ104G、104H、104I、104J、104K、104Lを含む。そのときに出力モジュール140は、第1補償区画144の出力を第2補償区画148の出力に対して加算し、公知様式で正弦信号を獲得する。同様に出力モジュール140は、第1補償区画144の出力から第2補償区画148の出力を減算し、公知様式で余弦信号を獲得する。一実施例において各センサは、利得補償の目的で複数の群にグループ化される。そのときに各センサは、正弦信号および余弦信号の振幅を均一化する目的で複数の区画へと分割される。特に図1は、各センサ104が5個の群132および2個の区画144、148にグループ化または分割されることを示している。群132の各々は、夫々の利得係数が割当てられる。区画144、148の各々の出力は、相互に対して合計され且つ相互から減算されることで、均一化された振幅の正弦信号および余弦信号が獲得される。本明細書において“群”および“区画”という語句は、種々のグループ化プロセスの考察を促進するためにのみ使用されており、互換的に使用され得る。
【0023】
図1Aは、図1の補償モジュール128の詳細な実施例を示している。補償モジュール128は、磁石108およびセンサ列104の間の長さの差に基づいて事前決定された複数の群利得を記憶するメモリモジュール152を含む。次に利得調節モジュール156は、先に論じられた如く複数の調節済み信号を獲得すべくセンサが割当てられた群に基づく磁気センサ104の出力を調節する。合計モジュール160は上記群に基づく調節済み信号を加算および減算することで、正弦および余弦関数の形態の複数の出力信号を獲得する。補間モジュール164は、一定の実施例においては概略的にアナログ信号であるという上記出力信号を、複数のデジタル化信号へと変換する。
【0024】
図2は、磁石長212を有する多極磁石208の近傍に位置された一列のセンサ104を有する第2の検知装置200の概略図を示しており、同様の部材を表すべく同様の参照番号が使用される。示された実施例において、センサ長120は磁石長212より短い。図1に示された実施例と同様に補償モジュール128は、一列のセンサ104を5個の群132に分割し、第4利得関数を生成し、且つ、群132の各々に対して利得係数を割当てる。特に上記第4利得関数は、磁極線136から最も遠い群132を減衰し、且つ、磁極線136に最も近い群132を増幅する。たとえば補償モジュール128が各センサ104を5個の群132へと分割した後、群132の各々には以下の如く値が割当てられる。外側センサ群132Aのセンサ104A、104Bには−Xの値を有する第3利得係数が割当てられ、中央センサ群132Bのセンサ104C、140Dには1の値の第2利得係数が割当てられ、且つ、内側センサ群132Cのセンサ104E、104F、104G、104HにはXの値の上記第1利得係数が割当てられる。同様に、第2外側センサ群132Eのセンサ104K、104Lには上記第3利得係数が割当てられ、且つ、第2中央センサ群132Dのセンサ104I、104Jには上記第2利得係数が割当てられる。すなわち、外側センサ群132Aのセンサ104A、104Bおよび第2外側センサ群132Eのセンサ104K、104Lの出力は、更に短寸の磁極に対して減衰される。同様に、中央センサ群132Bのセンサ104C、140Dおよび第2中央センサ群132Dのセンサ104I、104Jの出力は同一のままである一方、内側センサ群132Cのセンサ104E、104F、104G、104Hの出力は増幅される。内側センサ群132Cのセンサ104E、104F、104G、104Hは正の値を有する上記第1利得係数が割当てられるが、該内側センサ群132Cのセンサ104E、104F、104G、104Hは、上記第4利得関数を満足する別の負の利得係数も割当てられ得る。
【0025】
そのときに出力モジュール140は、列状センサ104の異なる区画の出力を加算および減算することにより、正弦および余弦波の形態の補償済み出力信号を生成する。たとえば出力モジュール140は再び、各センサ104を記述された如く第1および第2区画144、148にグループ化する。その場合に出力モジュール140は、第1補償区画144の出力を第2補償区画148の出力に加算することで、公知様式で正弦信号を獲得する。同様に、出力モジュール140は、第2補償区画148の出力を第1補償区画144の出力から減算することで、公知様式で余弦信号を獲得する。
【0026】
図3は、一列の24個のセンサ304と、適切に整合された多極磁石308とを有する第3検知装置300の概略図を示している。図3において補償モジュール128および出力モジュール140は示されないが、検知装置300は、補償モジュール128、出力モジュール140、または、類似のモジュールも含んでいる。特に図3は、磁石長124およびセンサ長120が適切に整合していることを示している。一列のセンサ304が夫々の出力を生成した後、補償モジュール128は各センサ304を、記述された如く多数の群に分割すると共に、各群のセンサ304の出力を夫々の利得係数により調節もしくは補償する。但し、磁石長124およびセンサ長120は適切に整合しているので、各群の利得係数は1の値である。すなわち、各センサ304の出力は、1の利得を以て補償される。そのときに補償モジュール128は、センサ304の群を等しい長さの補償済み区画312A、312B、312C、312Dへとグループ化する出力モジュール140に対し、各センサ304の補償済み出力を送信する。そのときに出力モジュール140は、列状センサ304の異なる区画312の出力を加算および減算することにより正弦および余弦波の形態の補償済み出力信号を生成する。第1補償済み区画312Aはセンサ304A、304B、304C、304D、304E、304Fを含む一方、第2補償済み区画312Bはセンサ304G、304H、304I、304J、304K、304Lを含む。同様に、第3補償済み区画312Cはセンサ304M、304N、304O、304P、304Q、304Rを含む一方、第4補償済み区画312Dはセンサ304S、304T、304U、304V、304W、304Xを含む。そのときに出力モジュール140は公知様式で、第1および第2補償済み区画312A、312Bの出力の合計から、第3および第4補償区画312C、312Dの出力の合計を減算し、正弦信号を獲得する。同様に出力モジュール140は公知様式で、第1および第4補償区画312A、312Dの出力の合計から、第2および第3補償区画312B、312Cの出力の合計を減算し、余弦信号を獲得する。
【0027】
図4は、図3の第3検知装置300の例示的な補償済み信号出力グラフ400を示している。信号グラフ400は、各センサ304の出力404、408が本質的に等しい振幅を有すると共に正弦および余弦波の形態であることを示している。
【0028】
図5は、一列の24個のセンサ304と、差動構成で不適切に整合された多極磁石504とを有する第4検知装置500の概略図である。すなわち磁石長124およびセンサ長120は異なっている。一列のセンサ304が記述された如く夫々の出力を生成した後、補償モジュール128は記述された如く各センサ304を所定数の群に分割すると共に、各群のセンサ304の出力を夫々の利得係数により調節もしくは補償する。次に補償モジュール128は各センサ304の補償済み出力を、該センサ304の群を等しい長さの4個の補償済み区画312A、312B、312C、312Dへとグループ化する出力モジュール140に対して送信する。そのときに出力モジュール140は、記述された如く列状センサ304の異なる区画312の出力を加算および減算することにより、正弦および余弦波の形態の補償済み出力信号を生成する。
【0029】
図6は、図5の検知装置500の例示的な出力グラフ600を示し、各利得係数は補償モジュール128において1に強制もしくは事前設定されている。信号グラフ600は、センサ504の出力604、608が等しくない振幅を有することを示している。
【0030】
図7は、各利得係数が補償モジュール128により決定された例示的な出力グラフ700を示している。信号グラフ700はまた、センサ504の出力704、708が等しい振幅を有する正弦信号および余弦信号の形態であることも示している。
【0031】
図8は、本明細書における幾つかの実施例において行われるプロセスを更に例証するフローチャート800を含んでいる。ブロック804および808にては夫々、列状センサの長さおよび多極磁石の長さが測定される。ブロック812にて、各長さが異なると決定されたなら、ブロック816にて各センサは複数個のセンサ群にグループ化される。ブロック820にては、図1および図2に関して記述された如く、センサ群の各々に対する利得係数または重みが決定もしくは生成される。ブロック824にては、各センサの出力が夫々の利得係数により調節もしくは補償される。またブロック812にて各長さが等しいと決定されたなら、または、ブロック824にて各センサの出力が補償された後、各センサは複数のセンサ区画へと再びグループ化される。次にブロック832、836にて、図5に関して記述された如く、各区画の出力は相互に合計かつ相互から減算される。次にブロック840にては、正弦信号および余弦信号の形態の出力が生成される。
【0032】
本明細書における各実施例は、操舵輪位置または車輪位置を検出すべく使用され得ると共に、他の重要な角度位置検知用途、ロボット用途、梱包用途、および、製造組立て用途において使用され得る。更に、本明細書における各実施例は、農業機器、土木機器、オフロード機器、フォークリフト、および、路上車両の如き他の機器においても使用され得る。
【0033】
図9は、負帰還を用いる検知アセンブリ100、200または300を取入れた汎用モータ制御システム900を示している。制御システム900は、モータ904と、該モータ904の速度および/または方向の情報を監視する(検知アセンブリ100の如き)モータセンサ、列状エンコーダ、すなわち、列状センサ908とを含む。(不図示の)制御器またはプロセッサからの外部制御信号を受信した後、制御システム900は合計ノード912にて、制御信号と、列状センサ908からの情報を用いて決定された複数の帰還信号との間の差を決定する。特に列状エンコーダ908の帰還信号は第1利得モジュール916にて調節されることで、複数の調節済み出力が獲得される。制御システム900が制御信号と調節済み信号との間の差を決定した後、該制御システム900は上記差を第2利得モジュール920により修正することで、修正済みの差を獲得する。制御システム900は引き続き、該制御システム900がモータ904の動作を調節し得る如く、修正済みの差をモータ904に対して送る。
【産業上の利用可能性】
【0034】
故に本発明は、特に、角度検知装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】一列のセンサおよび多極磁石を有する検知装置の概略図である。
【図1A】図1の検知装置の詳細図である。
【図2】第2の検知装置の概略図である。
【図3】第3の検知装置の概略図である。
【図4】図3の第3の検知装置の代表的な信号出力グラフである。
【図5】第4の検知装置の概略図である。
【図6】補償なしでの図5の第4の検知装置の代表的な出力グラフである。
【図7】補償ありでの図5の第4の検知装置の代表的な出力グラフである。
【図8】本発明の各実施例において実施される処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明の検知装置を備えた負帰還式モータ制御システムを示す図である。
【符号の説明】
【0036】
100 検知装置/検知アセンブリ
104 列状センサ/磁気センサ
104A〜104L センサ
108 多極磁石
112 第1磁極
116 第2磁極
120 集合的センサ長
124 磁極間隔/磁石長
128 補償モジュール
132 群
132A 外側センサ群
132B 中央センサ群
132C 内側センサ群
132D 第2中央センサ群
132E 第2外側センサ群
136 磁極線
140 出力モジュール
144 第1補償区画
148 第2補償区画
152 メモリモジュール
156 利得調節モジュール
160 合計モジュール
164 補間モジュール
200 第2の検知装置
208 多極磁石
212 磁石長
300 第3検知装置
304 列状センサ
304A〜304X センサ
308 多極磁石
312A 第1補償済み区画
312B 第2補償済み区画
312C 第3補償済み区画
312D 第4補償済み区画
400 補償済み信号出力グラフ
404、408 出力
500 第4検知装置
504 多極磁石
600 出力グラフ
604、608 出力
700 出力グラフ
704、708 出力
800 フローチャート
804、808、812、816、820、824、832、836、840 ブロック
900 汎用モータ制御システム
904 モータ
908 列状センサ
912 合計ノード
916 第1利得モジュール
920 第2利得モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石長を有する磁石から離間され得る検知アセンブリであって、
列長を有する一列の磁気センサであって、該磁気センサは複数の磁気センサ群へとグループ化され、該磁気センサの各々は磁石に基づく夫々の中間信号を生成すべく構成されるという一列の磁気センサと、
上記磁石長と上記列長との間の差に基づき夫々の磁気センサ群に対して夫々の利得を割当てると共に、夫々の利得を夫々の上記磁気センサ群の夫々の中間信号に対して適用して夫々の調節済み信号を生成すべく構成された補償モジュールとを備えて成る、
検知アセンブリ。
【請求項2】
前記磁気センサ群に基づく夫々の調節済み信号を合計して複数の正弦信号および余弦信号を生成すべく構成された出力モジュールを更に備えて成る、請求項1記載の検知アセンブリ。
【請求項3】
前記磁石は複数の磁極を備え、且つ、
前記各磁気センサは上記各磁極に関して比較的に対称的に配置される、請求項1記載の検知アセンブリ。
【請求項4】
前記一列のセンサは、前記各磁極に最も近い複数のセンサを含むべく構成された内側群と、上記各磁極から最も遠い複数のセンサを含むべく構成された外側群と、上記内側群および上記外側群との間における複数のセンサを含むべく構成された中間群とにグループ化される、請求項3記載の検知アセンブリ。
【請求項5】
前記磁石長が前記列長より小さいとき、前記内側群の夫々の中間信号は利得値により増幅され、
上記磁石長が上記列長より小さいとき、前記外側群の夫々の中間信号は上記利得値により減衰され、
上記磁石長が上記列長よりも大きいとき、上記内側群の夫々の中間信号は利得値により減衰され、且つ、
上記磁石長が上記列長よりも大きいとき、上記外側群の夫々の中間信号は上記利得値により増幅される、請求項4記載の検知アセンブリ。
【請求項6】
前記補償モジュールは夫々の利得を記憶すべく構成されたメモリを備えて成る、請求項1記載の検知アセンブリ。
【請求項7】
前記磁気センサの各群は等しい長さを有する、請求項1記載の検知アセンブリ。
【請求項8】
磁石と、複数のセンサを有するセンサ列との間の寸法差を補償する方法であって、
上記磁石に対して基準点を割当てる段階と、
上記センサの各々と上記基準点との間の夫々の距離を決定する段階と、
夫々の距離に基づき、上記センサの各々に対して夫々の重みを割当てる段階と、
割当てられた夫々の重みを、上記センサの夫々の出力に対して適用する段階とを備えて成る、
方法。
【請求項9】
前記割当てられた夫々の重みを夫々の出力に対して適用する前記段階は複数の調節済み信号に帰着し、
当該方法は、上記複数の調節済み信号を合計することで複数の正弦信号および余弦信号を生成する段階を更に備えて成る、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記磁石は複数の磁極を備え、且つ、
上記磁石に基準点を割当てる段階は、上記各磁極に関して比較的に対称的に基準点を割当てる段階を備える、請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記各センサの長さと前記磁石の長さとの間の差を決定する段階を更に備えて成る、請求項10記載の方法。
【請求項12】
夫々の距離に基づき前記センサの各々に対して夫々の重みを割当てる前記段階は、
前記磁石長が前記列長より小さいとき、比較的に短い距離を有する複数の夫々のセンサに対しては増幅係数を割当てる段階と、
上記磁石長が上記列長より小さいとき、比較的に大きい距離を有する複数の夫々のセンサに対しては減衰係数を割当てる段階と、
上記磁石長が上記列長より大きいとき、比較的に短い距離を有する複数の夫々のセンサに対しては減衰係数を割当てる段階と、
上記磁石長が上記列長より大きいとき、比較的に大きい距離を有する複数の夫々のセンサに対しては増幅係数を割当てる段階とを備えて成る、請求項11記載の方法。
【請求項13】
磁石と、複数のセンサを有する隣接センサ列との間の寸法差を補償する方法であって、
上記磁石と上記センサ列との間の寸法差を測定する段階と、
上記各センサを複数のセンサ群へとグループ化する段階と、
上記磁石に基づき、上記センサの各々にて夫々の中間信号を生成する段階と、
上記寸法差および上記各群に基づき、夫々の中間信号に対して利得を適用する段階とを備えて成る、
方法。
【請求項14】
前記夫々の中間信号に対して利得を適用する前記段階は複数の調節済み信号に帰着し、
当該方法は、上記複数の調節済み信号を合計することで複数の正弦信号および余弦信号を生成する段階を更に備えて成る、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記磁石は複数の磁極を備え、且つ、
当該方法は、前記各磁気センサを上記各磁極に関して比較的に対称的に配置する段階を更に備えて成る、請求項13記載の方法。
【請求項16】
前記各センサを複数のセンサ群にグループ化する前記段階は、
前記各磁極に最も近い複数のセンサを内側群へとグループ化する段階と、
上記各磁極から最も遠い複数のセンサを外側群へとグループ化する段階とを備えて成る、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記寸法差は長さの差から成り、
前記寸法差および前記各群に基づき夫々の中間信号に対して利得を適用する前記段階は、
前記磁石長が前記列長より小さいとき、前記内側群に対しては増幅係数を割当てる段階と、
上記磁石長が上記列長より小さいとき、前記外側群に対しては減衰係数を割当てる段階と、
上記磁石長が上記列長より大きいとき、上記外側群に対しては減衰係数を割当てる段階と、
上記磁石長が上記列長より大きいとき、上記内側群に対しては増幅係数を割当てる段階とを備えて成る、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記センサ群は夫々、等しい個数のセンサを備える、請求項13記載の方法。

【図1】
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【図1A】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−524019(P2009−524019A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−550436(P2008−550436)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/000887
【国際公開番号】WO2007/087179
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(505391713)ティムケン ユーエス コーポレーション (21)
【Fターム(参考)】