製品、特にプレート材または棒材を大気圧で連続的にプラズマ処理およびプラズマコーティングの少なくともいずれかをする方法
本発明は、製品の裏面にプラズマ処理またはプラズマコーティングする方法に関する。処理する製品の運動方向と直交する方向に設け少なくとも製品の表面の幅以上の大きさの少なくとも一つの高圧電極の下に、高圧電極から間隔を介して製品を設置する。高圧電極および製品の相対的な運動方向が異なるように配置する。交流電圧による高電圧を高圧電極に印加する。高圧電極と製品との間の第1の空間に第1の大気を充填する。高圧電極とは反対側の製品の裏側の第2の空間に第1の空間とは異なる第2の大気を充填する。高電圧、第1の大気および第2の大気を、第2の大気内でプラズマ放電が発生するように調節する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1または請求項6に記載の製品、特にプレート材または棒材を大気圧で連続的にプラズマ処理およびプラズマコーティングの少なくともいずれかをする方法に関する。本発明のプラズマ処理とは、プラズマコーティングをも意味する。
【背景技術】
【0002】
大気圧下でのプラズマ処理は、コロナ処理ともいわれ、メッキ業界やプラスチックフィルム製造業では、製品の表面に大気圧下でプラズマ処理をしている。通常、事業規模のコロナ処理設備は、一つの高圧電極と、円柱状に形成され表面にプラスチックフィルムを密着させた一つの対極電極とで構成されている。この高圧電極は、対極電極と平行に設置されている。また、この高圧電極には、約20kHz以上40kHz以下で約10kVの電圧が印加され、対極電極はアースに接続されている。さらに、この高圧電極と対極電極との間には、数ミリメートル程度の隙間が設けられており、プラスチックフィルムが設置された対極電極には、高圧電極との間の電位差によって、通常1kW/m以上5kW/m以下の出力のコロナ放電が発生する。そして、プラスチックフィルムは、コロナ放電にて反応して表面が酸化する。
【0003】
この反応によって、プラスチックフィルムの表面の電圧が上昇し、塗料や接着剤を確実に固着できる。
【0004】
そして、この固着の効果を高めるためは、プラズマ反応の後に、プラスチックフィルムの上から下地剤(プライマー)を塗布する必要がある。この下地剤は、固着性能を高める成分と大部分の溶剤とで構成されている。そして、この下地剤を塗布した後には、ローラーなどで擦って溶剤を除去する必要があり、この溶剤は、乾燥路を通する方法で除去される。さらに、この溶剤が有機溶剤の場合には、この有機溶剤を焼却しなければならない。
【0005】
この溶剤を除去する工程では、架台、乾燥機および後処理用燃焼装置などの各種の設備が必要となり、初期投資やランニングコストの面からコストが掛かる。
【0006】
このため、ウエット化学的な方法によるプライマー塗布方法を、溶剤を使わずに大気圧下でプラズマコーティングする方法が知られている。この方法では、乾燥工程と燃焼による後処理工程とが不要になる。架台としては、大気圧プラズマコーティングユニットが代用される。
【0007】
さらに、大気圧下でプラズマ放電するユニットの内部には、空気、窒素または稀ガスなどのキャリアガスや、これらのガスにテトラメトキシシラン(Tetramethylorthosilikat)またはヘクサメチレンジシロキサン(Hexamethylendisiloxan)などの材料物質を混ぜた混合ガスを電極システムに導入して、アースした対極電極に下地を設け、この下地で対向電極が被覆されるように構成されている。
【0008】
このとき、この下地の他に電極システム自体もコーティングされてしまうため、本来電極システムと対極電極システムとの間に確保する必要がある空間が、電極自体のコーティングによって塞がれてしまい、結果的にコーティング工程を中断して洗浄しなければならない事態が生じ得る。ところが、この事態は、連続処理工程では受け入れ難い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、製品の電極とは反対側の面に大気圧でプラズマ処理およびプラズマ放電の少なくともいずれかができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題は、請求項1の構成を備えた大気圧で連続的にプラズマ処理およびプラズマコーティングの少なくともいずれかをする方法によって解決される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、製品の高圧電極側の少なくとも一つの面と、この製品の高圧電極とは反対側の面とに、異なる大気を作り出すことができる。この異なる二つの大気と高電圧とを調節することによって、第2の大気、すなわち製品の高圧電極とは反対側の面上の大気内にプラズマ放電を発生できる。また、製品の裏面の処理やコーティングも可能となる。
【0012】
特に、プラズマコーティングの場合には、少なくとも一つの高圧電極自体のコーティングを防止でき、空間の洗浄や維持管理などの必要性を回避できる。
【0013】
また、請求項2のように、互いに異なるガスおよび混合ガスのいずれかとしたり、請求項3のように、互いに異なる気圧にしたりすることによって、異なる第1の大気と第2の大気とを調節できる。ここで、「大気圧」とは、通常の大気圧である約1013ヘクトパスカル(ミリバール)よりわずかに高い気圧、またはわずかに低い気圧を意味する。この場合に、大気圧より±100ヘクトパスカル程度の気圧でも大気圧に含まれるものとする。
【0014】
さらに、異なる気圧にする方法としては、請求項2のように、種類の異なるガスおよび混合ガスのいずれかによって気圧を調節する。例えば、製品の裏面のみ、すなわち第2の大気内にプラズマ放電が必要な場合は、このプラズマ放電が比較的高い電圧経路を自由に通過させる必要があるから、第1の大気より低い電圧でプラズマ放電が発生するガスおよび混合ガスのいずれかを製品の裏面側に導入する。種類の異なる混合ガスとしては、一方が材料物質を含む混合ガスで、他方が材料物質を含まない同一成分の混合ガスの場合も含まれる。この気圧の調節によって、製品の裏面側の第2の大気内のみに材料物質を導入してコーティングし、この製品の前面、すなわち高圧電極側の面にはプラズマ処理しないなども可能となる。
【0015】
また、請求項4のように、第1の大気および第2の大気と、少なくとも一つの高圧電極の高電圧とを調節することによって、第2の大気内でのみプラズマ放電を発生させて、プラズマ処理およびプラズマコーティングの少なくともいずれかをできる。さらに、第1の大気および第2の大気と、少なくとも一つの高圧電極に印加される高電圧とを調節することによって、これら第1の大気および第2の大気のそれぞれでプラズマ放電を発生させることも可能である。
【0016】
特に、請求項5のように、製品の裏面、すなわち第2の大気が存在する側のみに、プラズマコーティングするための原料として化学反応剤である材料物質を導入することにより、この製品の裏面のみにプラズマコーティングすることも可能である。
【0017】
さらに、請求項6のように、少なくとも二つ一組の高圧電極を、第1の大気内に設置された製品の同一側に設置してプラズマ放電およびコロナ放電のいずれかを発生させる。
【0018】
また、高圧電極としては、請求項7のバリア電極または請求項8の金属電極を用いたり、これらバリア電極および金属電極などを組み合わせた電極を用いたりできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の方法を用いた装置の一実施の形態を図1を参照して説明する。各図面では、同一または同種の構成要素に同じ番号が付されている。この装置には、製品3の表面から間隔を介して設置され、特に交流の高電圧が印加される二つ1組のバリア電極1が取り付けられている。このバリア電極1の内部には、保護材によって周囲から電気的に絶縁された導電体2が設けられている。この保護材としては、酸化アルミニウムセラミックが好ましく、特に耐久性に優れているものがより好ましい。また、一組のバリア電極1と、例えばプレート状の製品3の表面との間の第1の空間は、第1の大気で満たされている。そして、バリア電極1とは反対側の製品3の裏面側には、ハウジング5が取り付けられており、このハウジング5内は、第2の大気で満たされた第2の空間が設けられている。この第2の空間は、各矢印にて示すように、プロセスガス7と、必要に応じて材料物質6とが導入されている。この結果、このハウジング5内の第2の空間では、バリア電極1と製品3との間の第1の空間とは異なる大気を作り出すことができる。すなわち、この第2の空間の大気を変えて高圧を適度に調節することによって、製品3の裏面上の所望する位置にプラズマ放電4を発生できる。そして、この発生したプラズマ放電4は、純粋なプラズマ放電としてプロセスガス7内でのプラズマ処理が可能となる。また、材料物質6を添加することにより、製品3の裏面にプラズマコーティングできる。運動方向を示す矢印Pが示すように、製品3は、装置によって矢印Pの方向に連続的に送り出され、この製品3の裏面がプラズマ処理またはプラズマコーティングされる。吸引装置8は、プロセスガス7、残留する材料物質6がある場合にはこの材料物質6、およびプラズマ放電4で発生した物質をまとめて吸引し、後続の図示しない排ガス処理装置へ送り、特にオゾンなどの有害なプラズマ生成物が外部へ放出されないようにする。ここで、材料物質6は、ハウジング5の内部、すなわち第2の大気へ必ず導入するものではない。この材料物質6を用いずにプロセスガス7のみを用いても、製品3の裏面をプラズマ処理できる。
【0020】
図1に示す一実施の形態は、製品3の一方の面のみに選択的にプラズマ処理またはプラズマコーティングをし、この製品3の他方の面にはプラズマ処理またはプラズマコーティングをしない。また、梱包業での密封作業などの多くの保護梱包工程などで使用するポリマーフィルムが製品3の場合には、このポリマーフィルムの表面が未処理であることが絶対条件となるため、この一実施の形態の構成は極めて重要である。
【0021】
図1に示す二つのバリア電極1は、一体的に高圧電極を形成しており、間に空間が設けられて互いに離間された位置に設置されている。ここで、これらバリア電極1の間の空間または距離は、大き過ぎても長すぎても良くなく、製品3の裏面にプラズマ放電4が連続的に発生するように調節されている。図1に示す一実施の形態の空間は、当業者の専門知識や実験に基づいて調節される。
【0022】
ここで、電極の構造は、図1に示すバリア電極1の構成に限定されるものではない。この図1に示す空間の各面に複数のバリア電極1を並列に設置することも可能である。また、この図1に示す空間にて分けられた二つ以上のバリア電極1を電極して用いることも可能である。
【0023】
また、プロセスガス7としては、空気、窒素、二酸化炭素、水素またはアルゴンなどの稀ガスや、これらガスの混合気体が適している。材料物質6には、気相のテトラメトキシシラン(Tetramethylorthosilikat)、ヘクサメチレンジシロキサン(Hexamethylendisiloxan)、またはシランなどのガス状の材料物質が適している。これらの材料物質6を用いることにより、数ナノメータからマイクロメータまでの厚さの二酸化シリコン層を製品3の裏面にコーティングできる。ここで、この二酸化シリコン層は、ウエット化学的な下地に変わる機能を有している。また、材料物質6の種類を変えることで層の機能を変化でき、抗接着機能、抗擦過機能または保護機能などの各種の機能を備えた層をもコーティングできる。
【0024】
上記一実施の形態のバリア電極1は、数メートルの長さになる場合がある。異なる電位の導電体2によって高電圧が印加されると、これらバリア電極1の間に電位差が生じ、この電位差によってバリア電極1に金属粉末が詰まったり、これらバリア電極1の内部に金属のコーティング層ができたりする場合がある。これらバリア電極1には、一つ以上の管路を備えた矩形管状のものが好ましい。
【0025】
また、この一実施の形態では、周波数が1kHz以上100kHz以下、好ましくは5kHz以上30kHz以下の10kV以上60kV以下の交流電圧を用いている。ここで、この交流電圧をパルス状にすることも可能である。
【0026】
図2ないし図5には、本発明の一実施の形態の変形例が別の実施の形態として示されている。これら図2ないし図5に示す各実施の形態に限定されるものではないが、これら図2ないし図5に示す各実施の形態の電極以外の構成は、上記一実施の形態と同様である。図2に示す実施の形態は、図1に示す一実施の形態に似ているが、バリア電極1の代わりに金属電極9で高圧電極が構成されている。また、図3ないし図5に示す実施の形態では、バリア電極1と金属電極9とで高圧電極が構成されている。
【0027】
さらに、図6ないし図9には、バリア電極1と金属電極9とで構成された本発明のさらに別の実施の形態が示されている。
【0028】
この実施の形態については、図6を用いて原理および機能を説明する。これら図6ないし図9に示す実施の形態の場合も、電極の構成は異なるが、原理や機能は同じである。
【0029】
これら図6ないし図9に示す実施の形態では、製品3の裏面と電極側の表面とのそれぞれにハウジング5が設けられており、これら各ハウジング5は、それぞれ一つの空間、具体的に表面側は第1の空間を、裏面側は第2の空間を有している。ここで、第2の空間は、図1ないし図5に示す各実施の形態と同様に、プロセスガス7と、必要に応じて材料物質6とが導入されており、吸引装置8が接続されている。このため、この実施の形態の場合も、製品3の裏面のみに限定的にプラズマ放電4を発生できる。
【0030】
この実施の形態では、上記各実施の形態とは異なり、ハウジング5で囲まれ電極が取り付けられている側の空間である第1の空間の内部の第1の大気は、印加される高電圧と適合するように調節され、この第1の空間内でもプラズマ放電10が発生するように調節されている。この第1の空間にも同様に、プロセスガスが導入されているが、このプロセスガスは、ハウジング5にて覆われ製品3の裏面側の空間に導入されるプロセスガス7とは成分が異なる。ハウジング5にて覆われ製品3の電極側の第1の空間には、吸引装置8が接続されており、この第1の空間の内部でのプラズマ放電10によって生成した、例えばオゾンなどの反応生成物を排出して無害化できるように構成されている。
【0031】
ここで、この実施の形態では、バリア電極1または金属電極9にて構成された高圧電極自体がコーティングされないように、材料物質6が製品3の裏面側のみに導入され、電極側でのプラズマ放電10には材料物質6を導入しない。
【0032】
この実施の形態の装置を用いることにより、製品3の裏面と電極側の表面とで同時にプラズマ処理およびプラズマコーティングの少なくともいずれかをできる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の方法を用い、二つのバリア電極が高圧電極として用いられ、製品のバリア電極とは反対側の面にプラズマ放電され、かつ材料物質を用いて連続的に処理およびコーティングの少なくともいずれかをする製品の搬送装置の一実施の形態を示す概略断面図である。
【図2】バリア電極に代えて金属電極を用いた本発明の別の実施の形態を示す概略断面図である。
【図3】金属電極とバリア電極と組み合わせた電極を用いた本発明のさらに別の実施の形態を示す概略断面図である。
【図4】二つのバリア電極の間に一つの金属電極を配置した一対の電極を用いた本発明のさらに別の実施の形態を示す概略断面図である。
【図5】二つの金属電極の間に一つのバリア電極を配置した一対の電極を用いた本発明のさらに別の実施の形態を示す概略断面図である。
【図6】図1に示す装置を用いて製品の両側でプラズマ放電を発生させる方法を示す概略断面図である。
【図7】図3に示す装置を用いて製品の両側でプラズマ放電を発生させる方法を示す概略断面図である。
【図8】図4に示す装置を用いて製品の両側でプラズマ放電を発生させる方法を示す概略断面図である。
【図9】図5に示す装置を用いて製品の両側でプラズマ放電を発生させる方法を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 バリア電極
2 導電体
3 製品
4 プラズマ放電
5 ハウジング
6 材料物質
7 プロセスガス
8 吸引装置
9 金属電極
10 プラズマ放電
P 運動方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1または請求項6に記載の製品、特にプレート材または棒材を大気圧で連続的にプラズマ処理およびプラズマコーティングの少なくともいずれかをする方法に関する。本発明のプラズマ処理とは、プラズマコーティングをも意味する。
【背景技術】
【0002】
大気圧下でのプラズマ処理は、コロナ処理ともいわれ、メッキ業界やプラスチックフィルム製造業では、製品の表面に大気圧下でプラズマ処理をしている。通常、事業規模のコロナ処理設備は、一つの高圧電極と、円柱状に形成され表面にプラスチックフィルムを密着させた一つの対極電極とで構成されている。この高圧電極は、対極電極と平行に設置されている。また、この高圧電極には、約20kHz以上40kHz以下で約10kVの電圧が印加され、対極電極はアースに接続されている。さらに、この高圧電極と対極電極との間には、数ミリメートル程度の隙間が設けられており、プラスチックフィルムが設置された対極電極には、高圧電極との間の電位差によって、通常1kW/m以上5kW/m以下の出力のコロナ放電が発生する。そして、プラスチックフィルムは、コロナ放電にて反応して表面が酸化する。
【0003】
この反応によって、プラスチックフィルムの表面の電圧が上昇し、塗料や接着剤を確実に固着できる。
【0004】
そして、この固着の効果を高めるためは、プラズマ反応の後に、プラスチックフィルムの上から下地剤(プライマー)を塗布する必要がある。この下地剤は、固着性能を高める成分と大部分の溶剤とで構成されている。そして、この下地剤を塗布した後には、ローラーなどで擦って溶剤を除去する必要があり、この溶剤は、乾燥路を通する方法で除去される。さらに、この溶剤が有機溶剤の場合には、この有機溶剤を焼却しなければならない。
【0005】
この溶剤を除去する工程では、架台、乾燥機および後処理用燃焼装置などの各種の設備が必要となり、初期投資やランニングコストの面からコストが掛かる。
【0006】
このため、ウエット化学的な方法によるプライマー塗布方法を、溶剤を使わずに大気圧下でプラズマコーティングする方法が知られている。この方法では、乾燥工程と燃焼による後処理工程とが不要になる。架台としては、大気圧プラズマコーティングユニットが代用される。
【0007】
さらに、大気圧下でプラズマ放電するユニットの内部には、空気、窒素または稀ガスなどのキャリアガスや、これらのガスにテトラメトキシシラン(Tetramethylorthosilikat)またはヘクサメチレンジシロキサン(Hexamethylendisiloxan)などの材料物質を混ぜた混合ガスを電極システムに導入して、アースした対極電極に下地を設け、この下地で対向電極が被覆されるように構成されている。
【0008】
このとき、この下地の他に電極システム自体もコーティングされてしまうため、本来電極システムと対極電極システムとの間に確保する必要がある空間が、電極自体のコーティングによって塞がれてしまい、結果的にコーティング工程を中断して洗浄しなければならない事態が生じ得る。ところが、この事態は、連続処理工程では受け入れ難い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、製品の電極とは反対側の面に大気圧でプラズマ処理およびプラズマ放電の少なくともいずれかができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題は、請求項1の構成を備えた大気圧で連続的にプラズマ処理およびプラズマコーティングの少なくともいずれかをする方法によって解決される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、製品の高圧電極側の少なくとも一つの面と、この製品の高圧電極とは反対側の面とに、異なる大気を作り出すことができる。この異なる二つの大気と高電圧とを調節することによって、第2の大気、すなわち製品の高圧電極とは反対側の面上の大気内にプラズマ放電を発生できる。また、製品の裏面の処理やコーティングも可能となる。
【0012】
特に、プラズマコーティングの場合には、少なくとも一つの高圧電極自体のコーティングを防止でき、空間の洗浄や維持管理などの必要性を回避できる。
【0013】
また、請求項2のように、互いに異なるガスおよび混合ガスのいずれかとしたり、請求項3のように、互いに異なる気圧にしたりすることによって、異なる第1の大気と第2の大気とを調節できる。ここで、「大気圧」とは、通常の大気圧である約1013ヘクトパスカル(ミリバール)よりわずかに高い気圧、またはわずかに低い気圧を意味する。この場合に、大気圧より±100ヘクトパスカル程度の気圧でも大気圧に含まれるものとする。
【0014】
さらに、異なる気圧にする方法としては、請求項2のように、種類の異なるガスおよび混合ガスのいずれかによって気圧を調節する。例えば、製品の裏面のみ、すなわち第2の大気内にプラズマ放電が必要な場合は、このプラズマ放電が比較的高い電圧経路を自由に通過させる必要があるから、第1の大気より低い電圧でプラズマ放電が発生するガスおよび混合ガスのいずれかを製品の裏面側に導入する。種類の異なる混合ガスとしては、一方が材料物質を含む混合ガスで、他方が材料物質を含まない同一成分の混合ガスの場合も含まれる。この気圧の調節によって、製品の裏面側の第2の大気内のみに材料物質を導入してコーティングし、この製品の前面、すなわち高圧電極側の面にはプラズマ処理しないなども可能となる。
【0015】
また、請求項4のように、第1の大気および第2の大気と、少なくとも一つの高圧電極の高電圧とを調節することによって、第2の大気内でのみプラズマ放電を発生させて、プラズマ処理およびプラズマコーティングの少なくともいずれかをできる。さらに、第1の大気および第2の大気と、少なくとも一つの高圧電極に印加される高電圧とを調節することによって、これら第1の大気および第2の大気のそれぞれでプラズマ放電を発生させることも可能である。
【0016】
特に、請求項5のように、製品の裏面、すなわち第2の大気が存在する側のみに、プラズマコーティングするための原料として化学反応剤である材料物質を導入することにより、この製品の裏面のみにプラズマコーティングすることも可能である。
【0017】
さらに、請求項6のように、少なくとも二つ一組の高圧電極を、第1の大気内に設置された製品の同一側に設置してプラズマ放電およびコロナ放電のいずれかを発生させる。
【0018】
また、高圧電極としては、請求項7のバリア電極または請求項8の金属電極を用いたり、これらバリア電極および金属電極などを組み合わせた電極を用いたりできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の方法を用いた装置の一実施の形態を図1を参照して説明する。各図面では、同一または同種の構成要素に同じ番号が付されている。この装置には、製品3の表面から間隔を介して設置され、特に交流の高電圧が印加される二つ1組のバリア電極1が取り付けられている。このバリア電極1の内部には、保護材によって周囲から電気的に絶縁された導電体2が設けられている。この保護材としては、酸化アルミニウムセラミックが好ましく、特に耐久性に優れているものがより好ましい。また、一組のバリア電極1と、例えばプレート状の製品3の表面との間の第1の空間は、第1の大気で満たされている。そして、バリア電極1とは反対側の製品3の裏面側には、ハウジング5が取り付けられており、このハウジング5内は、第2の大気で満たされた第2の空間が設けられている。この第2の空間は、各矢印にて示すように、プロセスガス7と、必要に応じて材料物質6とが導入されている。この結果、このハウジング5内の第2の空間では、バリア電極1と製品3との間の第1の空間とは異なる大気を作り出すことができる。すなわち、この第2の空間の大気を変えて高圧を適度に調節することによって、製品3の裏面上の所望する位置にプラズマ放電4を発生できる。そして、この発生したプラズマ放電4は、純粋なプラズマ放電としてプロセスガス7内でのプラズマ処理が可能となる。また、材料物質6を添加することにより、製品3の裏面にプラズマコーティングできる。運動方向を示す矢印Pが示すように、製品3は、装置によって矢印Pの方向に連続的に送り出され、この製品3の裏面がプラズマ処理またはプラズマコーティングされる。吸引装置8は、プロセスガス7、残留する材料物質6がある場合にはこの材料物質6、およびプラズマ放電4で発生した物質をまとめて吸引し、後続の図示しない排ガス処理装置へ送り、特にオゾンなどの有害なプラズマ生成物が外部へ放出されないようにする。ここで、材料物質6は、ハウジング5の内部、すなわち第2の大気へ必ず導入するものではない。この材料物質6を用いずにプロセスガス7のみを用いても、製品3の裏面をプラズマ処理できる。
【0020】
図1に示す一実施の形態は、製品3の一方の面のみに選択的にプラズマ処理またはプラズマコーティングをし、この製品3の他方の面にはプラズマ処理またはプラズマコーティングをしない。また、梱包業での密封作業などの多くの保護梱包工程などで使用するポリマーフィルムが製品3の場合には、このポリマーフィルムの表面が未処理であることが絶対条件となるため、この一実施の形態の構成は極めて重要である。
【0021】
図1に示す二つのバリア電極1は、一体的に高圧電極を形成しており、間に空間が設けられて互いに離間された位置に設置されている。ここで、これらバリア電極1の間の空間または距離は、大き過ぎても長すぎても良くなく、製品3の裏面にプラズマ放電4が連続的に発生するように調節されている。図1に示す一実施の形態の空間は、当業者の専門知識や実験に基づいて調節される。
【0022】
ここで、電極の構造は、図1に示すバリア電極1の構成に限定されるものではない。この図1に示す空間の各面に複数のバリア電極1を並列に設置することも可能である。また、この図1に示す空間にて分けられた二つ以上のバリア電極1を電極して用いることも可能である。
【0023】
また、プロセスガス7としては、空気、窒素、二酸化炭素、水素またはアルゴンなどの稀ガスや、これらガスの混合気体が適している。材料物質6には、気相のテトラメトキシシラン(Tetramethylorthosilikat)、ヘクサメチレンジシロキサン(Hexamethylendisiloxan)、またはシランなどのガス状の材料物質が適している。これらの材料物質6を用いることにより、数ナノメータからマイクロメータまでの厚さの二酸化シリコン層を製品3の裏面にコーティングできる。ここで、この二酸化シリコン層は、ウエット化学的な下地に変わる機能を有している。また、材料物質6の種類を変えることで層の機能を変化でき、抗接着機能、抗擦過機能または保護機能などの各種の機能を備えた層をもコーティングできる。
【0024】
上記一実施の形態のバリア電極1は、数メートルの長さになる場合がある。異なる電位の導電体2によって高電圧が印加されると、これらバリア電極1の間に電位差が生じ、この電位差によってバリア電極1に金属粉末が詰まったり、これらバリア電極1の内部に金属のコーティング層ができたりする場合がある。これらバリア電極1には、一つ以上の管路を備えた矩形管状のものが好ましい。
【0025】
また、この一実施の形態では、周波数が1kHz以上100kHz以下、好ましくは5kHz以上30kHz以下の10kV以上60kV以下の交流電圧を用いている。ここで、この交流電圧をパルス状にすることも可能である。
【0026】
図2ないし図5には、本発明の一実施の形態の変形例が別の実施の形態として示されている。これら図2ないし図5に示す各実施の形態に限定されるものではないが、これら図2ないし図5に示す各実施の形態の電極以外の構成は、上記一実施の形態と同様である。図2に示す実施の形態は、図1に示す一実施の形態に似ているが、バリア電極1の代わりに金属電極9で高圧電極が構成されている。また、図3ないし図5に示す実施の形態では、バリア電極1と金属電極9とで高圧電極が構成されている。
【0027】
さらに、図6ないし図9には、バリア電極1と金属電極9とで構成された本発明のさらに別の実施の形態が示されている。
【0028】
この実施の形態については、図6を用いて原理および機能を説明する。これら図6ないし図9に示す実施の形態の場合も、電極の構成は異なるが、原理や機能は同じである。
【0029】
これら図6ないし図9に示す実施の形態では、製品3の裏面と電極側の表面とのそれぞれにハウジング5が設けられており、これら各ハウジング5は、それぞれ一つの空間、具体的に表面側は第1の空間を、裏面側は第2の空間を有している。ここで、第2の空間は、図1ないし図5に示す各実施の形態と同様に、プロセスガス7と、必要に応じて材料物質6とが導入されており、吸引装置8が接続されている。このため、この実施の形態の場合も、製品3の裏面のみに限定的にプラズマ放電4を発生できる。
【0030】
この実施の形態では、上記各実施の形態とは異なり、ハウジング5で囲まれ電極が取り付けられている側の空間である第1の空間の内部の第1の大気は、印加される高電圧と適合するように調節され、この第1の空間内でもプラズマ放電10が発生するように調節されている。この第1の空間にも同様に、プロセスガスが導入されているが、このプロセスガスは、ハウジング5にて覆われ製品3の裏面側の空間に導入されるプロセスガス7とは成分が異なる。ハウジング5にて覆われ製品3の電極側の第1の空間には、吸引装置8が接続されており、この第1の空間の内部でのプラズマ放電10によって生成した、例えばオゾンなどの反応生成物を排出して無害化できるように構成されている。
【0031】
ここで、この実施の形態では、バリア電極1または金属電極9にて構成された高圧電極自体がコーティングされないように、材料物質6が製品3の裏面側のみに導入され、電極側でのプラズマ放電10には材料物質6を導入しない。
【0032】
この実施の形態の装置を用いることにより、製品3の裏面と電極側の表面とで同時にプラズマ処理およびプラズマコーティングの少なくともいずれかをできる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の方法を用い、二つのバリア電極が高圧電極として用いられ、製品のバリア電極とは反対側の面にプラズマ放電され、かつ材料物質を用いて連続的に処理およびコーティングの少なくともいずれかをする製品の搬送装置の一実施の形態を示す概略断面図である。
【図2】バリア電極に代えて金属電極を用いた本発明の別の実施の形態を示す概略断面図である。
【図3】金属電極とバリア電極と組み合わせた電極を用いた本発明のさらに別の実施の形態を示す概略断面図である。
【図4】二つのバリア電極の間に一つの金属電極を配置した一対の電極を用いた本発明のさらに別の実施の形態を示す概略断面図である。
【図5】二つの金属電極の間に一つのバリア電極を配置した一対の電極を用いた本発明のさらに別の実施の形態を示す概略断面図である。
【図6】図1に示す装置を用いて製品の両側でプラズマ放電を発生させる方法を示す概略断面図である。
【図7】図3に示す装置を用いて製品の両側でプラズマ放電を発生させる方法を示す概略断面図である。
【図8】図4に示す装置を用いて製品の両側でプラズマ放電を発生させる方法を示す概略断面図である。
【図9】図5に示す装置を用いて製品の両側でプラズマ放電を発生させる方法を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 バリア電極
2 導電体
3 製品
4 プラズマ放電
5 ハウジング
6 材料物質
7 プロセスガス
8 吸引装置
9 金属電極
10 プラズマ放電
P 運動方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的に絶縁された製品、特にプレート材または棒材を大気圧で連続的にプラズマ処理およびプラズマコーティングの少なくともいずれかをする方法であって、
処理する前記製品の運動方向と直交する方向に設けられ少なくとも前記製品の表面の幅以上の大きさの少なくとも一つの高圧電極と前記製品との相対的な運動方向を異ならせて、前記高圧電極から間隔を介して前記製品を設置し、
前記高圧電極に、特に交流電圧による高電圧を印加し、
前記高圧電極と前記製品との間の第1の空間に、第1の大気を充填し、
前記高圧電極とは反対側の前記製品の裏側の第2の空間に、前記第1の空間とは異なる第2の大気を充填し、
前記高電圧、第1の大気および第2の大気を調節して、この第2の大気内でプラズマ放電を発生させる
ことを特徴とする製品、特にプレート材または棒材を大気圧で連続的にプラズマ処理およびプラズマコーティングの少なくともいずれかをする方法。
【請求項2】
第1の大気および第2の大気は、互いに異なるガスおよび混合ガスのいずれかである
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
第1の大気および第2の大気は、互いに異なる気圧である
ことを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
高電圧、第1の大気および第2の大気を調節して、第2の空間内でのみプラズマ放電を発生させる
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載の方法。
【請求項5】
第2の空間内に、製品の裏面にプラズマコーティングするための原料として化学反応剤である材料物質を導入する
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか記載の方法。
【請求項6】
製品の同一面側に、プラズマ放電およびコロナ放電のいずれかを発生させる少なくとも二つ一組の高圧電極を設置する
ことを特徴とする請求項1ないし5いずれか記載の方法。
【請求項7】
少なくとも一つの高圧電極として、少なくとも一つのバリア電極を用いる
ことを特徴とする請求項1ないし6いずれか記載の方法。
【請求項8】
少なくとも一つの高圧電極として、少なくとも一つの金属電極を用いる
ことを特徴とする請求項1ないし7いずれか記載の方法。
【請求項1】
電気的に絶縁された製品、特にプレート材または棒材を大気圧で連続的にプラズマ処理およびプラズマコーティングの少なくともいずれかをする方法であって、
処理する前記製品の運動方向と直交する方向に設けられ少なくとも前記製品の表面の幅以上の大きさの少なくとも一つの高圧電極と前記製品との相対的な運動方向を異ならせて、前記高圧電極から間隔を介して前記製品を設置し、
前記高圧電極に、特に交流電圧による高電圧を印加し、
前記高圧電極と前記製品との間の第1の空間に、第1の大気を充填し、
前記高圧電極とは反対側の前記製品の裏側の第2の空間に、前記第1の空間とは異なる第2の大気を充填し、
前記高電圧、第1の大気および第2の大気を調節して、この第2の大気内でプラズマ放電を発生させる
ことを特徴とする製品、特にプレート材または棒材を大気圧で連続的にプラズマ処理およびプラズマコーティングの少なくともいずれかをする方法。
【請求項2】
第1の大気および第2の大気は、互いに異なるガスおよび混合ガスのいずれかである
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
第1の大気および第2の大気は、互いに異なる気圧である
ことを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
高電圧、第1の大気および第2の大気を調節して、第2の空間内でのみプラズマ放電を発生させる
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載の方法。
【請求項5】
第2の空間内に、製品の裏面にプラズマコーティングするための原料として化学反応剤である材料物質を導入する
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか記載の方法。
【請求項6】
製品の同一面側に、プラズマ放電およびコロナ放電のいずれかを発生させる少なくとも二つ一組の高圧電極を設置する
ことを特徴とする請求項1ないし5いずれか記載の方法。
【請求項7】
少なくとも一つの高圧電極として、少なくとも一つのバリア電極を用いる
ことを特徴とする請求項1ないし6いずれか記載の方法。
【請求項8】
少なくとも一つの高圧電極として、少なくとも一つの金属電極を用いる
ことを特徴とする請求項1ないし7いずれか記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2008−547166(P2008−547166A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−517388(P2008−517388)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【国際出願番号】PCT/EP2006/005838
【国際公開番号】WO2007/000255
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(505381415)ソフタル エレクトロニック エリック ブルーメンフェルト ゲーエムベーハ− ウント コー カーゲー (2)
【氏名又は名称原語表記】SOFTAL electronic Erik Blumenfeld GmbH & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Konig−Georg−Stieg 1 21107 Hamburg Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【国際出願番号】PCT/EP2006/005838
【国際公開番号】WO2007/000255
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(505381415)ソフタル エレクトロニック エリック ブルーメンフェルト ゲーエムベーハ− ウント コー カーゲー (2)
【氏名又は名称原語表記】SOFTAL electronic Erik Blumenfeld GmbH & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Konig−Georg−Stieg 1 21107 Hamburg Germany
【Fターム(参考)】
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