説明

製袋包装充填機のシール装置

【課題】一対のヒータロール間のクリアランスを容易に調整して、再現性を有することのできる製袋包装充填機のシール装置を提供すること。
【解決手段】シール装置10は、対向する一対のヒータロール11A・11Bを備えている。ヒータロール11には、包装フィルムを挟持して熱シールするシール部111と、シール部111より小径の基準軸部112とを有し、それぞれの基準軸部112・112間に、基準ゲージ20を挿入してゼロ値を設定可能にする。一方、ヒータロール11Bに空気圧シリンダ13を接続し、また、空気圧シリンダ13に差動歯車機構14を接続している。空気圧シリンダ13でヒータロール11Bを押圧してゼロ値を設定した後、差動歯車機構14を操作することによって、ヒータローラ11Bをヒータローラ11Aに接近する方向に微小移動させて、ヒータローラ11A・11B間のクリアランスを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体等の内容物を封入した分包品を製造する製袋包装充填機において、相互に逆回転する一対のヒータロールにより、一対の対向する包装フィルムを挟持しつつ、包装フィルム間に内容物を充填して、相互の包装フィルムの周縁を熱シールして分包品を製造するシール装置に関し、さらに、一対のヒータロール間のクリアランスの調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体等の内容物を封入した分包品を製造する製袋包装充填機のシール装置は、相互に逆回転する一対のヒータロールを備えている。このヒータロールで一対の対向する包装フィルムを挟持しつつ、包装フィルム間に内容物を充填して、相互の包装フィルムの周縁を熱シールして分包品を製造していた。このようなシール装置は、一般的に、確実なシールを行うためのシールの三要素として、シール温度、シール圧力、シール時間の管理が重要な要素となっていた。それに加えて、さらに安定したシールを確保するためには、ヒータロール間のクリアランスを管理することも必要となっていた。
【0003】
一方、包装フィルムには、包装フィルムの種類や構成により厚みの違いがあり、また内容物は多種類にわたることから、ヒータロール間のクリアランス次第では熱シール後の包装フィルムにしわが発生したりピンホールが生じたりしていた。そのため、包装フィルムの厚みや内容物によってヒータロール間のクリアランスを、都度、慎重に調整しなければならなかった。
【0004】
従来、この課題を解決することが特許文献1によって知られている。
【0005】
これによると、シール装置は、一対のヒータロールと、一方のヒータロールを他方のヒータロールに接近・離隔する方向に移動させる空気圧シリンダと、空気圧シリンダに接続して一方のヒータロールを微小移動させる微小角度調整機構を備えて構成されていた。このクリアランスの調整は、空気圧シリンダで一方のヒータロールを他方のヒータロールに圧接してゼロ値を設定した後、微小角度調整機構を操作して、一方のヒータロールを他方のヒータロールから離れる方向に徐々に移動させることによって、所定のクリアランスに調整していた。
【特許文献1】実開平6−44706号公報(7〜12頁、図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の製袋包装充填機のシール装置では、ヒータロール間のクリアランスを容易に調整できるようになったものの、ゼロ基準を設定する際に、一対のヒータロールどうしを圧接して行うようにしていたことから、ヒータロール自体に疵の付く虞れが生じていた。
【0007】
つまり、ヒータロールに疵が付くと、ヒータロール自体を修理あるいは交換することとなり新たな費用が発生することから、ゼロ基準設定の際に、できるだけ一対のヒータロールどうしを圧接する作業を除くことが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、一対のヒータロールどうしを圧接することなくゼロ基準出しを行える製袋包装充填機のシール装置を提供することを目的とする。
【0009】
本発明に係る製袋包装充填機のシール装置は、上記の目的を達成するために、以下のように構成するものである。すなわち、
請求項1記載の発明では、一対の包装フィルムの周縁を熱シールするために相互に逆回転する一対のヒータロールと、一方のヒータロールを他方のヒータロールに接近・離隔する方向に移動させる流体圧シリンダと、前記流体圧シリンダに連結して前記流体圧シリンダ側のヒータロールを微小移動させる差動歯車機構とを備えて、一対のヒータロール間のクリアランスを微調整可能に構成する製袋包装充填機のシール装置であって、
前記一対のヒータロールは、前記包装フィルムを挟持して熱シールするためのシール目を有するシール部と、前記シール部の両側に形成されて前記シール部より小径の基準軸部と、を有し、
前記一対のヒータロールのそれぞれの基準軸部間に挿入可能な基準ゲージを有することを特徴とするものである。
【0010】
請求項2記載の発明では、前記ヒータロールは、両端部が軸受部材で支持されるとともに、一方の軸受部材が、組立て基準用に適した軸受部材であり、他方の軸受部材が熱膨張の自動吸収用に適した軸受部材であることを特徴としている。
【0011】
請求項3記載の発明では、前記差動歯車機構が、操作側の外リングと、出力側の内リングとを有して構成され、前記外リングと前記内リングとの回転比が、約100:1であることを特徴としている。
【0012】
請求項4記載の発明では、前記差動歯車機構には、前記差動歯車機構で駆動される側のヒータロールの移動量を測定する距離センサが配設されていることを特徴としている。
【0013】
請求項5記載の発明では、前記距離センサが接触型であることを特徴としている。
【0014】
請求項6記載の発明では、前記センサは、出力信号を表示手段に伝達するとともに、前記表示手段は、前記一方のヒータロールの移動量を表示可能に配設されていることを特徴としている。
【0015】
また、この発明にかかわる製袋包装充填機のシール装置におけるロール間クリアランス調整方法は、請求項7記載の発明では、一対の包装フィルムの周縁を熱シールするために相互に逆回転する一対のヒータロールと、一方のヒータロールを他方のヒータロールに接近・離隔する方向に移動させる流体圧シリンダと、前記流体圧シリンダに連結して前記流体圧シリンダ側のヒータロールを微小移動させる差動歯車機構とを備えて、一対のヒータロール間のクリアランスを微調整可能に構成する方法であって、
前記一対のヒータロールは、前記包装フィルムを挟持して熱シールするためのシール目を有するシール部と、前記シール部の両側に形成して前記シール部より小径の基準軸部と、を有し、
前記一対のヒータロールのそれぞれの基準軸部間に基準ゲージを挿入してゼロ値を設定し、前記差動歯車機構の操作で前記シール部間のクリアランスを調整可能とすることを特徴とするものである。
【0016】
請求項8記載の発明では、前記一対のヒータロールのクリアランスを調整するための一方のヒータロールの移動量が、デジタル表示されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明によれば、一対の包装フィルムの周縁を熱シールするために相互に逆回転する一対のヒータロールには、それぞれシール目を有するシール部と、シール部の両側に配置されて基準ゲージを挿入する基準軸部と、が形成されている。所定の分包品を製造する際、所定の分包品におけるクリアランスを設定するために、基準ゲージを一対のヒータロールの基準軸部間に挿入した後、流体圧シリンダで一方のヒータロールを他方のヒータロールに向けて移動させる。そして、一対のヒータロールの基準軸部で基準ゲージを挟持した位置をゼロ値としてセットする。これによって一対のヒータロールどうしを接触させないことから、ゼロ基準の際に、ヒータロール自体を傷つける虞れがない。ヒータロールに疵が付かなければ、包装フィルムに疵を付ける虞れがないことから、これによるシール不良とならずに安定した製品を提供することができる。
【0018】
このゼロ値を基準にして差動歯車機構の作用で、基準ゲージを脱着した後、差動歯車機構で駆動される側のヒータロールを、他のヒータロールに接近する方向に微小移動させる。微小移動することによって、ヒータロールの移動量をほぼ正確に把握できることから、これによって所定のクリアランスを容易に調整することができる。そのために、例えば、メンテナンス時における作業時間を大幅に短縮することができる。
【0019】
請求項2記載の発明によれば、前記ヒータロールの端部を支持する、一方の軸受部材に、組立て基準用に適した軸受部材を使用することにより、軸受のガタを少なくすることができ組立精度を向上することができる。また、他方の軸受部材が熱膨張(特に、軸方向に対する熱膨張)の自動吸収用に適していることから、軸受部材の熱膨張があっても、ヒータロールの軸部は回転運動を妨げられることがなく駆動される。
【0020】
請求項3記載の発明によれば、差動歯車機構の外リングを回転させると、その1/100の回転比で出力側の内リングが回転される。つまり、外リングをθ回転させることによって内リング内を挿通する軸部を微小移動させることとなり、差動歯車機構側のヒータロールを、固定している他方のヒータロールに対して、接近する方向に微小移動させることができる。従って、ヒータロールの移動量をほぼ正確に把握できることから、クリアランス調整作業を容易に行うことができる。
【0021】
請求項4又は6記載の発明によれば、差動歯車機構の作用で一方のヒータロールが微小移動すると、差動歯車機構に設けられた距離センサがその距離を測定する。距離センサが表示手段に信号を送ることによって、表示手段ではその測定値をヒータロールの移動量として表示することができる。その結果、一旦、調整された移動量を記録することによって、例えば、メンテナンス時に、記録された移動量に合わせてヒータロールを移動すれば、再現性を確保することができる。
【0022】
請求項5記載の発明によれば、距離センサが接触型であることから、距離センサのセンサヘッドを被接触部材の中心軸部に当接させることによって、測定誤差を小さくすることができる。つまり、非接触型のセンサでは、センサ取付部材のぶれによって測定誤差が大きくなりやすく精度を低下させやすいことから、被接触部材の中心軸部に当接させる接触型では、測定誤差を小さくすることができることとなる。
【0023】
請求項7記載の発明によれば、まず、一対のヒータロール間を開いた状態で、基準ゲージを一対のヒータロールの基準軸部間に挿入する。そして、流体圧シリンダの作用により流体圧シリンダのピストンロッドを伸張させて一方のヒータロールを他方のヒータロールに向かって移動させる。一対のヒータロールの基準軸部が基準ゲージを挟持した位置においてゼロ値をセットする。そして、基準ゲージを脱着後、差動歯車機構を操作して差動歯車で駆動される側のヒータロールを他方のヒータロール側に向かって接近する方向に微小移動させる。このヒータロールの微小移動によって一対のヒータロール間のクリアランスが調整される。
【0024】
上記のように、基準ゲージを使用することによって、それぞれのヒータロールのシール部どうしを接触させないように基準出しを行うことができるから、ヒータロールに疵を付ける虞れがない。
【0025】
しかも、ヒータロールの移動を微小に行うことから、移動量をほぼ正確に把握することができ、その結果、一対のヒータロール間のクリアランス調整を容易な作業で行うことができる。
【0026】
請求項8記載の発明によれば、一方のヒータロールの移動量をデジタル表示することから、一旦、調整された移動量を記録することによって、例えば、メンテナンス時に、記録された移動量に合わせてヒータロールを移動すれば、再現性を確保して作業時間を大幅に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に、本発明による製袋包装充填機のシール装置の一形態を図面に基づいて説明する。図1〜4は実施形態のシール装置を示すものであり、まず、このシール装置を装着した製袋包装充填機を図5に示して説明する。
【0028】
なお、一実施形態による製袋包装充填機1では、図5〜7に示すように、図例においては3個の単一分包品Bを連接してなる分包体Uを製造するとともに、分包体Uを図例においては7重にしてテープTでバンディングし、箱詰めして製造するものである。
【0029】
製袋包装充填機1は、機枠2に支持されたシール装置10、計量充填装置3、カッタ装置4、計量装置5、集積装置6、バンディング装置7、単包計量装置8を備えて構成されている。シール装置10は、計量充填装置3の下方に配置され、一対のリール9、9に巻装されて搬送された包装フィルムFを、内容物を充填しつつ熱シールして連続した分包体U(図7参照)を形成する。シール装置10の詳細の構成は後述する。
【0030】
計量充填装置3は、一定量の内容物を計量してホッパ31からシール装置10に供給するものである。計量供給装置3にはホッパ31から供給された内容物をシール装置10に挿入するノズル32が配置されている。
【0031】
カッタ装置4は、シール装置10の下方に配置され、シール装置10で熱シールされて連続的に接続された分包体Uの両端をカットするとともに、スリットS又はアイノッチIを形成して、さらに1個ずつの分包品Bに分離させるカット、等を行うものである。
【0032】
計量装置5は、計量充填装置3の計量を調整するものであり、集積装置6は、分包体Uを7重に集積するものであり、バンディング装置7は、7重に集積した分包体UをテープTで巻きつけるものであり、テープTでバンディングされた7重の分包体Uは包装箱内に箱詰めされる。
【0033】
また、カッタ装置4で分包体Uから1包ずつ分離された分包品Bは、計量装置5側に搬送される方向と逆の方向に搬送され、単包計量装置8で1包ずつの分包品Bが計量される。これによって、計量充填装置3の封量が調整される。
【0034】
実施形態のシール装置10は、図1〜4に示すように、機枠2に軸受部材12を介して回動可能に支持されている一対のヒータロール11(11A、11B)と、一方のヒータロール11Bに接続され、ヒータロール11Bを他方のヒータロール11A側に移動可能に配置される空気圧シリンダ13と、空気圧シリンダ13に接続して一方のヒータロール11Bを微小移動させる差動歯車機構14と、差動歯車機構14に接続して一方のヒータロール11Bの微小移動を計測する距離センサ15とを備えている。一対のヒータロール11A、11Bの両端間には後述の基準ゲージ20、20が挿入される。
【0035】
なお、ヒータロール11Bを支持して移動する機構は、ヒータロール11Bの両端に一対配置されているが、図2において、左側に配置されている側を奥側といい、右側に配置されている側を手前側という。そして、以下の説明にあたっては、奥側と手前側の機構は同一に構成されていることから、符号も同一とし、いずれか一方の側で説明するものとする。
【0036】
各ヒータロール11は、貫通孔114を有して筒状に形成され、内部に図示しない熱源を備えるとともに、中央部にシール目111aを有するシール部111と、シール部111の両側に形成されてシール部111より小径の基準軸部112、112と、基準軸部112、112の両側に形成されて基準軸部112、112より小径の支持軸部113、113とを有している。シール部111には、さらに、熱シールされる分包品Bの周縁部BCを圧接する凸部111bと、分包品Bにおける内容物を充填する充填部BJを形成するための凹部111cとが形成されている。なお、一方のヒータロール11Aの基準軸部112、112と他方のヒータロール11Bの基準軸部112、112との間には、基準ゲージ20が挿入される。
【0037】
また、各ヒータロール11A・11Bのシール部111・111に形成されたシール目111a・111aはそれぞれ凹凸状に形成されていて、ヒータロール11Aのシール目111aとヒータロール11Bのシール目111aとは、それぞれの凹部と凸部とが対向するように、1/2ピッチがずれて配置されている。
【0038】
そして、一対のヒータロール11A・11Bのうち空気圧シリンダ13に接続されている側の一方のヒータロール11Bは、機枠2に摺動可能に配置された支持部材16に軸受部材12を介して支持され、機枠2に対して移動可能に配置されている。また、他方のヒータロール11Aは、機枠2に固定された支持部材17に軸受部材12を介して支持されているため、機枠2に対して移動可能には配置されていない。
【0039】
図2に示すように、それぞれのヒータロール11の支持軸部113を支持する軸受部材12において、それぞれ、一方の支持軸部113aに対応する軸受部材12aは、組付基準に適したアンギュラ玉軸受が2個並列して使用され、他方の支持軸113bに対応する軸受部材13bは、ヒータロール11の軸方向に対する熱膨張による熱の自動吸収に適したローラ軸受が2個並列して使用されている。
【0040】
つまり、アンギュラ玉軸受は、ラジアル荷重と一方向のアキシャル荷重を負荷することができることから、軸受のガタをなくすことができ組付基準とすることができるとともに高速回転に有利に働く。また、ローラ軸受は、内輪と外輪がアキシャル方向に相対移動可能に構成されていることから、ヒータロール11による軸方向の熱膨張の発生の際に、内輪が外輪に対してアキシャル方向に移動してずれることができる。従って、ヒータロール11の回転を損ねることなくヒータロール11の支持軸部113bを支持することができる。
【0041】
支持部材16は、図3に示すように、軸受部材12の周りを覆って矩形板状に形成され、上下面に摺動部161、162を有している。そして摺動部161、162が、逆コ字形に形成された支持ブラケット18の内部摺動面181、182に摺動可能に対向するように配置されている。
【0042】
支持部材17は、ヒータロール11Aの支持軸部113を回動可能に支持した状態で、その下面171が支持ブラケット18の内部摺動面182に固定して装着されている。
【0043】
なお、ヒータロール11A・11Bにおける奥側の支持部材16・17の先方には、ヒータロール11を駆動する図示しない駆動源に接続された歯車25A・25Bがそれぞれ歯合して装着されている。
【0044】
空気圧シリンダ13は、一方のフランジ部131aが支持ブラケット18に取り付けられ、ピストンロッド133の一端が支持部材16に螺着して取り付けられるとともに、空気圧シリンダ13の軸方向に往復移動可能に配置されている。空気圧シリンダ13には、シリンダ室132から両側に向かって延設する一対のピストンロッド133、134が配置され、一方のピストンロッド133が前述の支持部材16に装着される。従って、ピストンロッド133の往復移動により、支持部材16を介して軸受部材12Bに支持されたヒータロール11Bが往復移動されることによって、ヒータロール11Bはヒータロール11Aに対して接近・離隔することとなる。
【0045】
空気圧シリンダ13に接続された差動歯車機構14は、ヒータロール11Aのシール部111とヒータロール11Bとのシール部111とのクリアランスを調整するために、ヒータロール11Aに対して接近する方向に微小移動させるものである。
【0046】
つまり、差動歯車機構14は、楕円状の内周面を有する外ケース141に内嵌されて内歯を形成した外リング142と、外リング142の内歯に歯合される外歯を有する一対のスプライン部材(内リング)143、144とを備えて構成されている。外リング142に内嵌される一対のスプライン部材143、144は、外リング142の軸方向に沿って並設して配置されている。一方のスプライン部材143は空気圧シリンダ13の他方のフランジ部131に固定され、他方のスプライン部材144は、スプライン部材144とスプラインで結合されたナット部材145を介して他方のピストンロッド134の雄ねじ部134aにねじ結合されている。
【0047】
スプライン部材143と外リング142との歯数は同じに形成され、スプライン部材144は外リング142に対して少ない歯数(実施形態では2枚少ない)で形成されている。従って、その歯数の差分、スプライン部材144が、スプライン部材143より遅れて回転することによって、外リング142と相対的に逆方向に回転することとなる。そして、スプライン部材144と一体的に装着されたナット部材145が回転することによってピストンロッド134をヒータロール11Aに対して、押し込むこととなり、ヒータロール11Bをヒータロール11Aに向かって接近する方向に移動させることとなる。
【0048】
なお、実施形態においては、外リング142とスプライン部材144とは、約100:1の回転比であり、それによるピストンロッド134(又はヒータロール11B)の移動量は、約1/100mmとなる。
【0049】
そして、ピストンロッド134の反ヒータロール11B側の先端面に距離センサ15のセンサヘッド152が当接されている。
【0050】
距離センサ15は、センサ本体151とセンサヘッド152とを有し、センサ本体151が、空気圧シリンダ13の他方のフランジ部131bに支持されたブラケット19に支持され、センサヘッド152は、前述のように、ピストンロッド134先端面の中心軸部に当接している。そして、センサヘッド152の移動量がデジタル表示される。
【0051】
ヒータロール11A・11Bの各基準軸部112・112間に挿入される基準ゲージ20、20は、各ヒータロール11A・11Bの両基準軸部112・112間にそれぞれ挿入され、剛性の高い金属材料で形成されるとともに耐摩耗性に優れた材料で形成されている。また、基準ゲージ20は、上部に配置される手持ち部21と下部に配置されるゲージ部22とを有してT字状に形成され、ゲージ部22の当接面22a・22bに熱処理がされている。
【0052】
次に、まず上述のように構成されたシール装置10における一対のヒータロール11A・11Bのロール間クリアランスの調整のための基準出しについて説明する。
【0053】
まず、一対のヒータロール11A・11Bの温度を設定温度(実施形態では、例えば約120°まで上昇して安定させる。次に、空気圧シリンダに接続された図示しない排気弁をOFFにして、ヒータロール11Bを押圧する空気圧力を0Paにする。
【0054】
この状態でヒータロール11Bをヒータロール11Aより離隔させて、一対のヒータロール11A・11Bの両端における各基準軸部112・112間に隙間を形成後、基準ゲージ20のゲージ部22をそれぞれ挿入する。基準ゲージ20が一対のヒータロール11A・11Bの基準軸部112・112間に挿入した状態で、排気弁をONして所定の空気圧力に設定する。手で容易に抜けなくなれば、セロ値セットをして、クリアランス表示を0にする。この際、各シール部111・111間には、僅かなクリアランスが生じている。
【0055】
次に、ヒータロール11Aとヒータロール11Bのクリアランスの調整作用を行う。この作用は、差動歯車機構14の外ケース141を外リング142とともに一方の方向に回転させて、ヒータロール11Bをヒータロール11Aに対して接近する方向に移動させることになる。
【0056】
つまり、再び、排気弁をOFFにして基準ゲージ20を取り除いた後、所定のクリアランスに調整するために、奥側・手前側の差動歯車機構14、14を順に操作して一方のヒータロール11Bを他方のヒータロール11Aに微笑移動させる。
【0057】
一方、一対のヒータロール11A・11Bのシール部111・111間のクリアランスは、包装フィルムFの厚みや、分包品B内に充填される内容物によって設定される。
【0058】
その設定されたクリアランスに対して、差動歯車機構14の外ケース141を一方の方向に回転する。外ケース141の回転により、スプライン部材144が逆回転することとなって、空気圧シリンダ13のピストンロッド134をヒータロール11Aに向かって接近する方向に移動させる。すると、本実施形態においては、外ケース141(外リング142)の1回転ごとに、ヒータロール11Bはヒータロール11Aに向かって約1/100mmごと移動する。ヒータロール11Bの移動量は距離センサ15によって測定されデジタル表示される。なお、一旦測定されたヒータロールの移動量は、包装材料の条件ごとに記録しておけば、次に調整する際、予め記録されているヒータロールの移動量に合わせて、外ケース141を回転すれば、再現性を確保できて容易な作業となる。
【0059】
ヒータロール11Bの移動量が記録された移動量と一致することによって、クリアランス調整作業は終了することとなり、その後、製袋包装充填機1を運転して分包体Uを製造することとなる。
【0060】
一実施形態の製袋包装充填機1の作用においては、リール9から供給された一対の包装フィルムFは、シール装置10で熱シールされながら計量充填装置3から供給された内容物を充填して分包体Uを形成する。そして、分包体Uが、順にカッタ装置4、シール装置10、計量装置5、集積装置6、バンディング装置7を経て、それぞれの順にしたがって作用されることによって、製品として製造されることとなる。一方、単体の分包品Bの内容物を単包計量装置8で計量することによって、計量装置5の充填封量を調整することができる。
【0061】
上述のように、実施形態のシール装置では、一対のヒータロール11A・11B間のシール部111・111のクリアランスを調整する際、ヒータロール11A・11Bの基準軸部112・112間に基準ゲージ20を挿入して基準出しを行うことから、熱シールするシール部111にクリアランスを設けることができる。そのため、一対のヒータロール11A・11Bが圧接することがないことから、各ヒータロールには疵が付く虞れを生じない。それによって、シール不良を発生させずに、製造された包装袋の品質を維持することができる。
【0062】
また、一対のヒータロール11A・11B間のシール部111・111のクリアランスを調整する際、差動歯車機構14を設置してヒータロール11Bを微小移動させることができることから、予め設定されたクリアランスに合わせたヒータロール11Bの移動量をほぼ正確に送ることができる。また、このヒータロール11Bの移動量をデジタル表示することによって、ヒータロール11Bの移動量をデジタル表示の数値に合わせて送ることができることから、何度でも繰り返して作業することができ再現性を確保することができる。
【0063】
なお、本発明は、製袋包装充填機におけるシール装置を示すものであり、製袋包装充填機におけるシール装置以外の他の装置に関して、上記の形態は、あくまで一形態を示すものであり限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一形態のシール装置を示す斜視図である。
【図2】図1のシール装置の平面断面図である。
【図3】図2の一部を示す拡大図である。
【図4】基準ゲージの装着状態を示す側面断面図である。
【図5】製袋包装充填機を示す正面図である。
【図6】図5の製袋包装充填機で製造されて集積された分包体を示す斜視図である。
【図7】各分包体を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0065】
1、製袋包装充填機
2、機枠
10、シール装置
11、ヒータロール
111、シール部
111a、シール目
112、基準軸部
113、支持軸部
12a(12)、アンギュラ軸受(軸受部材)
12b(12)、ローラ軸受(軸受部材)
13、空気圧シリンダ(流体圧シリンダ)
14、差動歯車機構
141、外ケース
142、外リング
143、スプライン部材(内リング)
144、スプライン部材(内リング)
15、距離センサ
152、センサヘッド
16、支持部材(可動側)
17、支持部材(固定側)
20、基準ゲージ
B、分包品
U、分包体
F、包装フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の包装フィルムの周縁を熱シールするために相互に逆回転する一対のヒータロールと、一方のヒータロールを他方のヒータロールに接近・離隔する方向に移動させる流体圧シリンダと、前記流体圧シリンダに連結して前記流体圧シリンダ側のヒータロールを微小移動させる差動歯車機構とを備えて、一対のヒータロール間のクリアランスを微調整可能に構成する製袋包装充填機のシール装置であって、
前記一対のヒータロールは、前記包装フィルムを挟持して熱シールするためのシール目を有するシール部と、前記シール部の両側に形成されて前記シール部より小径の基準軸部と、を有し、
前記一対のヒータロールのそれぞれの基準軸部間に挿入可能な基準ゲージを有することを特徴とする製袋包装充填機のシール装置。
【請求項2】
前記ヒータロールは、両端部が軸受部材で支持されるとともに、一方の軸受部材が、組立て基準用に適した軸受部材であり、他方の軸受部材が熱膨張の自動吸収用に適した軸受部材であることを特徴とする請求項1記載の製袋包装充填機のシール装置。
【請求項3】
前記差動歯車機構が、操作側の外リングと、出力側の内リングとを有して構成され、前記外リングと前記内リングとの回転比が、約100:1であることを特徴とする請求項1又は2記載の製袋包装充填機のシール装置。
【請求項4】
前記差動歯車機構には、前記差動歯車機構で駆動される側のヒータロールの移動量を測定する距離センサが配設されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の製袋包装充填機のシール装置。
【請求項5】
前記距離センサが接触型であることを特徴とする請求項4記載の製袋包装充填機のシール装置。
【請求項6】
前記距離センサは、出力信号を表示手段に伝達するとともに、前記表示手段は、前記一方のヒータロールの移動量を表示可能に配設されていることを特徴とする請求項4又は5記載の製袋包装充填機のシール装置。
【請求項7】
一対の包装フィルムの周縁を熱シールするために相互に逆回転する一対のヒータロールと、一方のヒータロールを他方のヒータロールに接近・離隔する方向に移動させる流体圧シリンダと、前記流体圧シリンダに連結して前記流体圧シリンダ側のヒータロールを微小移動させる差動歯車機構とを備えて、一対のヒータロール間のクリアランスを微調整可能に構成する製袋包装充填機のシール装置におけるロール間クリアランス調整方法であって、
前記一対のヒータロールは、前記包装フィルムを挟持して熱シールするためのシール目を有するシール部と、前記シール部の両側に形成して前記シール部より小径の基準軸部と、を有し、
前記一対のヒータロールのそれぞれの基準軸部間に基準ゲージを挿入してゼロ値を設定し、前記差動歯車機構の操作で前記シール部間のクリアランスを調整可能とすることを特徴とする製袋包装充填機のシール装置におけるロール間クリアランス調整方法。
【請求項8】
前記一対のヒータロール間のクリアランスを調整するための一方のヒータロールの移動量が、デジタル表示されることを特徴とする請求項7記載の製袋包装充填機のシール装置におけるロール間クリアランス調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−131265(P2006−131265A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−322543(P2004−322543)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(592242660)株式会社東陽機械製作所 (20)
【Fターム(参考)】