説明

複合成形体および複合成形体の製造方法

【課題】オレフィン系熱可塑性エラストマー成形体同士が十分な強度で融着されてなる複合成形体および複合成形体の製造方法を提供すること。
【解決手段】シクロヘキサン抽出分が5重量%未満であり、圧縮永久歪が35%未満であるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(A')を含有するオレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(A)と、非共役ジエンの単位の含有量が6〜15wt%であるエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム(b−1)100重量部あたり、鉱物油系軟化剤(b−2)40〜150重量部、オレフィン系樹脂(b−3)5〜150重量部、架橋剤(b−4)0.01〜20重量部を配合して動的に熱処理することにより得られるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(B’)を含有するオレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(B)とが融着されてなることを特徴とする複合成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン系熱可塑性エラストマー成形体同士が融着されてなる複合成形体および複合成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
棒状部材とコーナー部材とが融着されてなるウェザーストリップ材の一般的な製造方法としては、一般的にエチレン・プロピレン・非共役ジエン三元共重合体のゴム配合物からなる未加硫ゴムを異形押出、加硫することにより棒状部材を作製し、該棒状部材を金型の一方または双方から装填した後、前記金型キャビティに、エチレン・プロピレン・非共役ジエン三元共重合体のゴム配合物からなる未加硫ゴムを注入して加硫型成形することによりコーナー部分を加硫し、前記棒状部材と融着する、いわゆるインサート成形により製造する方法が知られている。しかしながらこの方法では、加硫工程が2回必要であり、複雑で作業時間も長く、省力化、生産性の向上、軽量化等の観点から改善が強く望まれている。そこで近年、成形工程を簡略化し、作業時間を短縮するために、ゴム配合物に換えて、加硫を必要としない熱可塑性エラストマー組成物が使用され始めている。
【0003】
しかしながら、前記方法において熱可塑性エラストマー組成物を用いると、棒状部材とコーナー部材との融着強度に劣ることがあった。特許文献1には、融着性の改良されたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物として、結晶性ポリ−1−ブテンを配合したオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を用いることが記載されているが、その効果は不十分であった。
【0004】
【特許文献1】特開昭59−221347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる現状に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、オレフィン系熱可塑性エラストマー成形体同士が十分な強度で融着されてなる複合成形体および複合成形体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明の第一は、シクロヘキサン抽出分が5重量%未満であり、圧縮永久歪(JIS K6262 70℃、22時間)が35%未満であるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(A')を含有するオレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(A)と、非共役ジエンの単位の含有量が6〜15wt%であるエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム(b−1)100重量部あたり、鉱物油系軟化剤(b−2)40〜150重量部、オレフィン系樹脂(b−3)5〜150重量部、架橋剤(b−4)0.01〜20重量部を配合して動的に熱処理することにより得られるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(B’)を含有するオレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(B)とが融着されてなる複合成形体にかかるものである。
【0007】
さらに本発明の第二は、金型内にオレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(A)を装填した後、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(B’)を前記金型内に注入して、前記オレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(A)と融着させる前記複合成形体の製造方法にかかるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の複合成形体は、十分な強度で融着されてなる。また本発明の複合成形体の製造方法によれば、十分な強度で融着されてなる複合成形体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の複合成形体は、シクロヘキサン抽出分が5重量%未満であり、圧縮永久歪(JIS K6262 70℃、22時間)が35%未満であるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(A')を含有するオレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(A)と、非共役ジエンの単位の含有量が6〜15wt%であるエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム(b−1)100重量部あたり、鉱物油系軟化剤(b−2)40〜150重量部、オレフィン系樹脂(b−3)5〜150重量部、架橋剤(b−4)0.01〜20重量部を配合して動的に熱処理することにより得られるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(B’)を含有するオレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(B)とが融着されてなる。
【0010】
本発明におけるオレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(A)は、シクロヘキサン抽出分が5重量%未満であり、圧縮永久歪(JIS K6262 70℃、22時間)が35%未満であるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(A’)を用いて成形された成形体である。オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(A’)は、オレフィン系樹脂とエチレン・α−オレフィン系共重合ゴムを、架橋剤、さらに必要に応じて架橋助剤と共に混練機等を用いて混練しながら熱的処理を行って作製されるものであり、オレフィン系樹脂中にエチレン・α−オレフィン系共重合ゴムが粒子を形成する構造である。
【0011】
該オレフィン系樹脂は、エチレンおよび/またはα−オレフィンを重合して得られる樹脂であり、例えば、エチレン単位を70重量%以上含むエチレン系樹脂や、プロピレン単位を50重量%以上含むプロピレン系樹脂が挙げられる。好ましくは、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体である。
【0012】
プロピレン系樹脂の立体構造として、アイソタクチック構造、シンジオタクチック構造、およびこれら両構造が混合した構造を例示することができる。好ましくは、主たる構造がアイソタクチック構造であることが好ましい。
【0013】
プロピレン系樹脂のメルトフローレート(JIS K6758に従って、21.18Nの荷重下、温度230℃で測定される。)は、好ましくは0.1〜300g/10分であり、より好ましくは0.5〜200g/10分である。
【0014】
プロピレン系樹脂は、重合触媒としてチーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒等を用いた公知の重合方法で製造することができる。該重合方法としては、溶液重合法、バルク重合法、スラリー重合法、気相重合法などをあげることができ、これらは2種以上組み合わせてもよい。
【0015】
エチレン・α−オレフィン系共重合ゴムは、エチレン単位とα−オレフィン単位とを有し、JIS K−6253のA硬度が85以下の共重合体である。以下、本発明において「エチレン単位」のような用語は、モノマーを重合して得られたゴム、あるいは樹脂中に存在するモノマー由来の構成単位を意味する。
【0016】
上記α−オレフィンとしては、炭素原子数3〜20のα−オレフィンが好ましく、プロピレン、1−ブテン、2−メチルプロピレン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、および1−オクテン等;ならびに、これらの2以上の組合せを例示することができる。中でも、入手容易性の観点から、プロピレンまたは1−ブテンが好ましく、プロピレンがより好ましい。
【0017】
エチレン−α−オレフィン系共重合ゴムは、エチレン単位およびα−オレフィン単位に加え、他のモノマー単位を有していてもよい。該他のモノマー単位を形成するモノマーとしては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、1,3−ペンタジエンおよび2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンのような炭素原子数4〜8の共役ジエン;ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ジシクロオクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエンおよび5−ビニル−2−ノルボルネンのような炭素原子数5〜15の非共役ジエン;酢酸ビニルのようなビニルエステル化合物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸エチルのような不飽和カルボン酸エステル;アクリル酸およびメタクリル酸のような不飽和カルボン酸を例示することができ、これらは1種でもよく、2種以上であってもよい。入手容易性の観点から、好ましくは、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエンである。
【0018】
エチレン・α−オレフィン系共重合ゴムのエチレン単位の含有量は、通常30〜85重量%、好ましくは40〜80重量%、炭素原子数3〜10のα−オレフィン単位の含有量は、通常5〜70重量%、好ましくは15〜60重量%、エチレン単位およびα−オレフィン単位以外の他の単量体単位の含有量は、通常0〜30重量%、好ましくは0〜20重量%である(これらの単位の合計を100重量%とする)。
【0019】
エチレン−α−オレフィン系共重合ゴムとして、エチレン・プロピレン共重合体ゴム、エチレン・1−ブテン共重合体ゴム、エチレン・1−ヘキセン共重合体ゴム、エチレン・1−オクテン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・1−ヘキセン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・1−オクテン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・1,4−ヘキサジエン共重合体ゴム、およびエチレン・プロピレン・5−ビニル−2−ノルボルネン共重合体ゴムを例示することができる。これらは1種で用いられてもよく、2種以上組み合わせ用いられてもよい。中でも、エチレン・プロピレン共重合体ゴムまたはエチレン・プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴムが好ましく、エチレン単位の含有量が40〜80重量%、プロピレン単位の含有量が15〜60重量%、5−エチリデン−2−ノルボルネン単位の含有量が0〜20重量%であるエチレン・プロピレン共重合体ゴムまたはエチレン・プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴムがより好ましい。
【0020】
エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムのムーニー粘度(ML1+4100℃)は、好ましくは10〜350、より好ましくは30〜300である。ムーニー粘度が前記範囲にあるようなエチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムを用いて得られるオレフィン系熱可塑性エラストマーは、成形した際に、機械的強度に優れ、かつ極めて外観良好な成形品を与えることができる。該ムーニー粘度(ML1+4100℃)は、JIS K6300に従って測定される。
【0021】
エチレン・α−オレフィン系共重合ゴムの135℃テトラリン中で測定した極限粘度は、成形体の機械的強度を高める観点から、好ましくは0.5dl/g以上であり、より好ましくは1dl/g以上である。また、成形体の外観を高める観点から、好ましくは8dl/g以下であり、より好ましくは6dl/g以下である。
【0022】
エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムは公知の方法で重合して得ることができる。該重合方法として、チーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒のような重合触媒を用いて、ヘキサンやヘプタン、トルエン、キシレンのような不活性溶媒中で重合する方法を例示することができる。
【0023】
架橋剤としては、後述の有機過酸化物、フェノール樹脂、硫黄、含硫黄化合物、p−キノン、p−キノンジオキシムの誘導体、ビスマレイミド化合物、エポキシ化合物、シラン化合物、およびアミノ樹脂を例示することができる。中でも、フェノール樹脂が好ましい。
【0024】
架橋剤として用いられるフェノール樹脂としては、ゴム用架橋剤として一般的に使用されている下式で表される化合物を例示することができる(米国特許3287440号公報および同3709840号公報参照):


式中、nは0〜10の整数;XおよびYはそれぞれ独立に水酸基、ハロゲン化アルキル基またはハロゲン原子であり;Rは炭素原子数1〜15の飽和炭化水素基である。該化合物は、置換フェノールとアルデヒドとをアルカリ触媒で縮重合させることによって製造することができる。
【0025】
上記のフェノール樹脂としてまた、アルキルフェノ−ルホルムアルデヒドや、臭素化アルキルフェノ−ルホルムアルデヒドを例示することができる。
【0026】
架橋剤としてフェノール樹脂を使用する場合には、架橋反応の速度を調節するために、架橋促進剤と組合せてもよい。架橋促進剤として、塩化第一スズおよび塩化第二鉄のような金属ハロゲン化物;ならびに、塩素化ポリプロピレン、臭化ブチルゴムおよびクロロプレンゴムのような有機ハロゲン化物を例示することができる。
【0027】
フェノール樹脂は、金属酸化物(たとえば、酸化亜鉛)およびステアリン酸のような分散剤と組合せて用いることが好ましい。
【0028】
架橋剤の存在下でのオレフィン系樹脂とエチレン・α−オレフィン系共重合ゴムとの熱的処理は、バンバリーミキサーのような公知の密閉式混練機;または、押出し機およびオープンロールのような公知の溶融混練機で、溶融状態で混練することにより行われる。溶融混練における温度は、通常150〜250℃であり、時間は通常1〜30分間である。
【0029】
オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(A’)の製造における架橋剤の存在下でのオレフィン系樹脂とエチレン・α−オレフィン系共重合ゴムとの熱的処理においては、オレフィン系樹脂とエチレン・α−オレフィン系共重合ゴムとに加えて、必要に応じて、プロセスオイル等の軟化剤、可塑剤、低分子量重合体、顔料や充填剤等の添加剤などを併用してもよい。
【0030】
オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(A')のシクロヘキサン抽出分は、5重量%未満であり、好ましくは、3重量%未満である。該シクロヘキサン抽出分を小さくするには、架橋剤の使用量を多くすることが好ましい。また、エチレン単位の量が大きなエチレン・α−オレフィン系共重合ゴムを原料として用いることも有効である。
【0031】
シクロヘキサン抽出分とは、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(A’)の製造に用いられた原料エチレン・α−オレフィン系共重合ゴムの重量を100重量%として、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(A’)中の原料エチレン・α−オレフィン系共重合ゴム由来のシクロヘキサン可溶分の重量割合であり、次の方法で求められる。オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(A')約1gを、23℃のシクロヘキサン100mlに48時間浸漬し、乾燥残留物の重量を測定する。オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(A’)に、エチレン・α−オレフィン系共重合ゴム以外の成分に、シクロヘキサン不溶成分(例えば、充填剤など)が含まれている場合には、乾燥残留物の重量からシクロヘキサン不溶成分の重量を減じて、乾燥残留物の重量を補正する。シクロヘキサンに浸漬したオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(A')の重量と、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(A')の原料組成から、シクロヘキサンに浸漬したオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(A')の重量あたりのオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(A')の重量をもとめて、初期重量とする。初期重量と乾燥残留物の重量(補正する必要がある場合には、補正された乾燥残留物の重量)との差を抽出分重量とし、初期重量に対する該抽出分重量の重量割合(重量%)を算出してシクロヘキサン抽出分(重量%)とする。
【0032】
オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(A')の圧縮永久歪は、35%未満である。該圧縮永久歪は、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(A')を、200〜250℃の条件で射出成形して、厚み2mmのシートを製造し、該シートから直径29mmの試験片を打ち抜き、該試験片を6枚重ねて、JIS K6262に従い、圧縮率25%、70℃、22時間の条件で、該シートの圧縮永久歪を測定することにより求められる。該圧縮永久歪を小さくするには、架橋剤の使用量を多くすることが好ましい。また、架橋剤としてはフェノール樹脂が好ましい。エチレン単位およびジエン単位の量が大きなエチレン・α−オレフィン系共重合ゴムを原料として用いることも有効である。
【0033】
オレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(A)は、押出成形、射出成形、圧縮成形などの公知の成形方法により、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(A')を成形することにより得られる。
【0034】
前記したオレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(A)と融着させるオレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(B)は、非共役ジエンの単位の含有量が6〜15wt%であるエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム(b−1)100重量部あたり、鉱物油系軟化剤(b−2)40〜150重量部、オレフィン系樹脂(b−3)5〜150重量部、架橋剤(b−4)0.01〜20重量部を配合して動的に熱処理することにより得られるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(B’)を含有する。
【0035】
前記エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム(b−1)は、非共役ジエンの単位の含有量が6〜15wt%である。本発明におけるエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム(b−1)とは、JIS K−6253のA硬度が85以下のエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムである。
【0036】
上記α−オレフィンとしては、炭素原子数3〜20のα−オレフィンが好ましく、プロピレン、1−ブテン、2−メチルプロピレン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、および1−オクテン等;ならびに、これらの2以上の組合せを例示することができる。中でも、入手容易性の観点から、プロピレンまたは1−ブテンが好ましく、プロピレンがより好ましい。
【0037】
上記非共役ジエンとしては、1,4−ヘキサジエン、1,6−オクタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、および7−メチル−1,6−オクタジエンのような鎖状非共役ジエン;ならびに、シクロへキサジエン、ジシクロペンタジエン、メチルテトラヒドロインデン、5−ビニルノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、および6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネンのような環状非共役ジエン;2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ナノジエン等のトリエンを例示することができる。中でも、5−エチリデン−2−ノルボルネンまたはジシクロペンタジエンが好ましい。
【0038】
エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム(b−1)に含まれるエチレン単位、炭素原子数3〜20のα−オレフィン単位、および非共役ジエン単位の合計を100重量%とするとき、該エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム(b−1)に含まれるエチレン単位の量は、通常30〜80重量%、好ましくは40〜80重量%であり、炭素原子数3〜20のα−オレフィン単位の量は、通常5〜50重量%、好ましくは15〜60重量%である。エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム(b−1)に含まれる非共役ジエン単位の量は、6〜15重量%、好ましくは8〜12重量%である(これら3種類のモノマー単位の合計を100重量%とする)。エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム(b−1)として、具体的には、エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン・プロピレン・1,4−ヘキサジエン共重合体、およびエチレン・プロピレン・5−ビニル−2−ノルボルネン共重合体;ならびにこれらの2以上の組合せを例示することができる。中でも、エチレン単位の含有量が40〜80重量%、プロピレン単位の含有量が15〜55重量%、5−エチリデン−2−ノルボルネン単位の含有量が8〜12重量%のエチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体が好ましい。
【0039】
エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムに含まれるエチレン単位、炭素原子数3〜20のα−オレフィン単位、および非共役ジエン単位の量は、赤外分光法(IR法)により求めることができる。具体的には、エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴムでは、共重合体ゴムを厚み約0.5mmのフィルムに成形し、ついで赤外分光光度計を用いて、該フィルムの5−エチリデン−2−ノルボルネン由来のピーク(1688cm-1の吸収ピーク)を測定して、共重合体ゴム中の5−エチリデン−2−ノルボルネン単位量を算出する。次に、共重合体ゴムを厚み約0.1mmのフィルムに成形し、赤外分光光度計により該フィルムの赤外吸収スペクトルを測定し、文献(赤外吸収スペクトルによるポリエチレンのキャラクタリゼーション 高山、宇佐美 等著 又は Die Makromolekulare Chemie,177,461(1976)Mc Rae,M.A.,MadamS,W.F.等著)記載の方法に従って、エチレン単位とプロピレン単位との割合を求め、該割合と5−エチリデン−2−ノルボルネン単位量とから、エチレン単位とプロピレン単位の量を算出する。
【0040】
前記エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム(b−1)は公知の方法で重合して得ることができる。該重合方法として、チーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒のような重合触媒を用いて、ヘキサンやヘプタン、トルエン、キシレンのような不活性溶媒中で重合する方法を例示することができる。
【0041】
エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム(b−1)のムーニー粘度(ML1+4100℃)は、好ましくは10〜350、より好ましくは30〜300である。ムーニー粘度が前記範囲にあるようなエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムを用いて得られるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は、成形した際に、機械的強度に優れ、かつ極めて外観良好な成形品を与えることができる。該ムーニー粘度(ML1+4100℃)は、JIS K6300に従って測定される。
【0042】
本発明における鉱物油系軟化剤(b−2)としては、アロマ系鉱物油、ナフテン系鉱物油、およびパラフィン系鉱物油のような石油の高沸点留分(平均分子量が300〜1500、流動点が0℃以下)を例示することができる。中でも、パラフィン系鉱物油が好ましい。
【0043】
鉱物油系軟化剤(b−2)は、伸展油としてエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム(b−1)へ添加することが好ましい。該添加の方法は、公知の方法でよく、例えば、(1)ロールやバンバリーミキサーのような混練装置を用い、両者を機械的に混練する方法、(2)溶液状として製造された成分(A)の溶液に成分(C)を添加し、次いで、スチームストリッピングのような方法によって脱溶媒する方法、が挙げられる。
【0044】
本発明におけるオレフィン系樹脂(b−3)とは、エチレンおよび/またはα−オレフィンを重合して得られる樹脂であり、例えば、エチレン単位を70重量%以上含むエチレン系樹脂や、プロピレン単位を50重量%以上含むプロピレン系樹脂が挙げられる。
【0045】
本発明においてオレフィン系樹脂(b−3)として用いられるプロピレン系樹脂としては、プロピレン単位を50〜100重量%、好ましくは80〜100重量%含有する、プロピレンの単独重合体、またはプロピレンと、エチレン及び/又は炭素原子数4〜10のα−オレフィン(たとえば、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ペンテン、1−オクテンおよび4−メチル−1−ペンテン)とのランダム共重合体もしくはブロック共重合体が挙げられる。該共重合体として、エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・1−ヘキセン共重合体、プロピレン・1−オクテン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1−ヘキセン共重合体を例示することができる。オレフィン系樹脂(b−3)として、プロピレンの単独重合体、エチレン・プロピレン共重合体またはプロピレン・1−ブテン共重合体を用いることが好ましい。
【0046】
上記ブロック共重合体とは、プロピレンとエチレンとを用いる場合について説明すると、以下のような工程からなる製造方法で製造される重合体を意味する。
(1)プロピレンを単独重合し、ポリプロピレンを生成させる工程;
(2)該ポリプロピレンの存在下に、プロピレンとエチレンとを共重合させる工程。
または
(1)プロピレンを単独重合し、ポリプロピレンを生成させる工程;
(2)未反応のプロピレンモノマーを除去し、該ポリプロピレンの存在下に、エチレンを添加して重合させる工程。
前者の場合、得られる重合体は実質上、工程(1)で生成されるポリプロピレンと、工程(2)で生成されるプロピレン・エチレン共重合体との混合物である。
【0047】
本発明で用いるオレフィン系樹脂(b−3)がプロピレン系樹脂である場合、該プロピレン系樹脂は、JIS K6758に従って、21.18Nの荷重下、温度230℃で測定されるメルトフローレートが0.1〜300g/10分であることが好ましく、0.5〜200g/10分であることがより好ましい。
【0048】
本発明においてオレフィン系樹脂(b−3)として用いられるエチレン系樹脂としては、エチレン単位を70〜100重量%含有する、エチレンの単独重合体、または、エチレンと、炭素原子数3〜10のα−オレフィン(たとえば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテンおよび1−ヘキセン)および/または極性基と炭素−炭素二重結合とを有する単量体(たとえば、酢酸ビニル、アクリル酸エステルおよびメタアクリル酸エステル)との共重合体が挙げられる。好ましいエチレン系樹脂としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ペンテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体が挙げられる。
【0049】
本発明で用いるオレフィン系樹脂(b−3)がエチレン系樹脂である場合、該エチレン系樹脂は、JIS K6760に従って、21.18Nの荷重下、温度190℃で測定されるメルトフローレートが0.01〜300g/10分であることが好ましく、0.1〜200g/10分であることがより好ましい。
【0050】
本発明で用いるオレフィン系樹脂(b−3)は、公知の方法で重合して得ることができる。該重合方法としては、チーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒のような重合触媒を用いて、(1)ヘキサンやヘプタン、トルエン、キシレンのような不活性溶媒中で重合する方法;(2)液状のモノマーを重合する方法(バルク重合法);(3)気体のモノマーを重合する方法(気相重合法);および(4)これらの組合せ;を例示することができる。オレフィン系樹脂(b−3)の立体構造は特に限定されず、立体構造として、アイソタクチック構造、シンジオタクチック構造、およびこれら両構造が混合した構造を例示することができる。中でも、アイソタクチック構造を主たる構造とするプロピレン系樹脂が好ましい。
【0051】
本発明における架橋剤(b−4)としては、ゴムの架橋に通常用いられている架橋剤を用いることができ、有機過酸化物、フェノール樹脂、硫黄、含硫黄化合物、p−キノン、p−キノンジオキシムの誘導体、ビスマレイミド化合物、エポキシ化合物、シラン化合物、およびアミノ樹脂を例示することができる。中でも、有機過酸化物が好ましい。
【0052】
有機過酸化物として、ジクミルペルオキシド、ジ−第3ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(第3ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−ジ(第3ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(第3ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(第3ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(第3ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p−クロルベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロルベンゾイルペルオキシド、第3ブチルペルオキシベンゾエート、第3ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、および第3ブチルペルオキシドを例示することができる。中でも、2,5−ジメチル−2,5−ジ(第3ブチルペルオキシ)−ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(第3ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(第3ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンが好ましく、分解温度の高い2,5−ジメチル−2,5−ジ(第3ブチルペルオキシ)−ヘキシン−3が特に好ましい。
【0053】
本発明で用いる有機過酸化物は、液状や粉体、ペレット等のいずれの形状でもよい。また、分散性を良好にするため、架橋反応に不活性な無機フィラー、鉱物油、溶剤等の希釈剤で希釈して用いることがより好ましい。また、その添加方法も液体の状態で添加することがより好ましい。中でもパラフィン系オイルはその取り扱い性、製品への影響を考慮した場合、好ましい希釈剤である。
【0054】
架橋反応を均一かつ緩やかに進行させるために、有機過酸化物と架橋助剤と組合せて用いてもよい。架橋助剤としては硫黄系、メタクリレート系、マレイミド系といった多官能性の化合物を配合することができる。架橋助剤として、イオウ、p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジアリルフタレート、テトラアリルオキシエタン、トリアリルイソシアヌレート、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、無水マレイン酸、ジビニルベンゼン、ジアクリル酸亜鉛、およびジメタアクリル酸亜鉛を例示することができる。中でも、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、またはトリアリルイソシアヌレートが好ましい。N,N’−m−フェニレンビスマレイミドは単独で、架橋剤として用いることもできる。
【0055】
架橋剤(b−4)として用いられるフェノール樹脂としては、ゴム用架橋剤として一般的に使用されている下式で表される化合物を例示することができる(米国特許3287440号公報および同3709840号公報参照):


式中、nは0〜10の整数;XおよびYはそれぞれ独立に水酸基、ハロゲン化アルキル基またはハロゲン原子であり;Rは炭素原子数1〜15の飽和炭化水素基である。該化合物は、置換フェノールとアルデヒドとをアルカリ触媒で縮重合させることによって製造することができる。
【0056】
上記のフェノール樹脂としてまた、アルキルフェノ−ルホルムアルデヒドや、臭素化アルキルフェノ−ルホルムアルデヒドを例示することができる。
【0057】
架橋剤としてフェノール樹脂を使用する場合には、架橋反応の速度を調節するために、架橋促進剤と組合せてもよい。架橋促進剤として、塩化第一スズおよび塩化第二鉄のような金属ハロゲン化物;ならびに、塩素化ポリプロピレン、臭化ブチルゴムおよびクロロプレンゴムのような有機ハロゲン化物を例示することができる。
【0058】
フェノール樹脂は、金属酸化物(たとえば、酸化亜鉛)およびステアリン酸のような分散剤と組合せて用いることが好ましい。
【0059】
本発明におけるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(B’)は、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム(b−1)、鉱物油系軟化剤(b−2)、オレフィン系樹脂(b−3)、架橋剤(b−4)以外の成分、たとえば、タルクおよび炭酸カルシウムのような無機フィラー;難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、耐熱・耐光安定剤、老化防止剤、および離型剤のような添加剤;または顔料を含んでいてもよい。これらは、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム(b−1)、鉱物油系軟化剤(b−2)、オレフィン系樹脂(b−3)、架橋剤(b−4)を動的に熱処理する際に添加してもよい。
【0060】
上記「動的に熱処理する」とは、溶融状態で混練することをいう。
本発明における動的な熱処理は、バンバリーミキサーのような公知の密閉式混練機;または、押出し機およびオープンロールのような公知の溶融混練機、で行うことができる。溶融混練における温度は、通常150〜250℃であり、時間は通常1〜30分間である。
【0061】
本発明の複合成形体は、前記したオレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(A)と、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(B’)からなるオレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(B)が融着されてなる。このような複合成形体の製造方法としては、あらかじめ製造したオレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(A)を金型内に装填した後、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(B’)を前記金型内に注入して、前記オレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(A)と融着する方法が挙げられる。
【0062】
本発明の複合成形体を構成するオレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(A)、オレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(B)の形状、および複合成形体の形状については特に制限はないが、自動車内外装材として好適に用いられる。自動車内外装材としては、オレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(A)の基材層にオレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(B)の表皮部材層が融着されてなるドアトリムなどが挙げられる。
【0063】
本発明の複合成形体は、ウェザーストリップ材として好適であり、特に、オレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(A)からなる棒状部材と、オレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(B)からなるコーナー部材とが融着されてなる本発明の複合成形体は、融着強度に優れ、かつべとつきがないため、ウェザーストリップ材として好適である。
【0064】
本発明のウェザーストリップ材の製造方法としては、予め棒状に押出成形して所定の長さに切断した熱可塑性エラストマー成形体(A)を、異なる方向から金型内に装填した後、射出成型機により、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(B’)を前記金型内に射出して、前記熱可塑性エラストマー成形体(A)と融着する方法、いわゆるインサート成形が挙げられる。
【0065】
上記射出成型機としては、通常、スクリュー式、プランジャー式等の射出装置が用いられる。また、射出速度は、通常、射出率で1〜2000cm3/秒、好ましくは10〜1000cm3/秒である。熱可塑性エラストマー(B’)を金型内へ導入する際の温度は、好ましくは150〜300℃である。このとき、金型は加熱して用いてもよいし、加熱せずに室温のままで用いてもよい。金型の好ましい温度は、30〜80℃の範囲である。尚、金型は、複合成形体の使用目的、用途等に応じて、その内壁面を平滑性の高いものとしたり、文字、模様等が得られるようにしたりすることができる。また、上記熱可塑性エラストマー(B’)を金型内へ導入する際には、熱可塑性エラストマー成形体(A)が、予め加熱されていてもよいし、室温のままでもよい。好ましくは、上記金型及び上記熱可塑性エラストマー成形体(A)が、いずれも、低温状態にあることであり、20〜60℃の範囲にあることが特に好ましい。
【実施例】
【0066】
以下に実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0067】
〔実施例1〕
オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(B’)の製造
ゴム成分として油展エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴム(EPDM−1;ムーニー粘度(JIS K6300、ML1+4100℃):53、エチレン単位の含有量(IR法):62.0重量%、プロピレン単位の含有量(IR法):28.1重量%、5−エチリデン−2−ノルボルネン単位の含有量(IR法):9.9重量%とをそれぞれ含み、該共重合体ゴムを100重量部として、出光興産株式会社製の商品名がPW−380なる伸展油100重量部を含む)200重量部と、オレフィン系樹脂としてプロピレン単独重合体(PP−1;メルトフローレート(JIS K6758、230℃、21.18N)=0.7g/10min)77.8重量部と酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤(チバスペシャリティケミカルズ製、商品名:Irganox1010)0.28重量部、耐候剤としてジアゾ系耐候安定剤(住友化学株式会社製、商品名:スミソーブ300)0.56重量部、HALS系耐候安定剤(チバスペシャリティケミカルズ製、商品名:Tinuvin622)0.56重量部、有機過酸化物(化薬アクゾ株式会社製、2,5-ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンをパラフィン系オイルであるPW−100(出光興産(株)製)で10%に希釈品、商品名:APO−10DL)8.9重量部、架橋助剤(精工化学株式会社製、ハイクロスM−P)0.83重量部を、2軸押出機を用いて200±10℃で押出して(つまり、動的に加熱して)、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(B’)を得た。
【0068】
複合成形体の製造
オレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(A)として、AES社製商品名121−73W175からなる9cm×3cm×厚さ2mmの板状成形体を用いた。該成形体のシクロヘキサン抽出分は3%未満、圧縮永久歪が32%であった。
100ton射出成型機にて、前記オレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(A)を金型に装填し、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(B’)をシリンダー温度250℃、金型温度50℃設定で前記金型内に射出し、インサート成形法により、オレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(A)とオレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(B)が融着された複合成形体を得た。該複合成形体をJIS3号ダンベルで打ち抜き、200mm/minの引張速度で引張り、接着強度を評価した。また、該複合成形体を80℃で168時間、オーブンに入れ、界面のベトツキ状態を観察した。結果を表1に示した。
【0069】
〔実施例2〕
実施例1において、ゴム成分として油展エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴム(EPDM−1)200重量部と、オレフィン系樹脂としてプロピレン単独重合体(PP−1)56.4重量部を用いた以外は実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示した。
【0070】
〔比較例1〕
実施例1において、ゴム成分として油展エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴム(EPDM−2;ムーニー粘度(JIS K6300、ML1+4100℃):53、エチレン単位の含有量(IR法):65.2重量%、プロピレン単位の含有量(IR法):29.5重量%、5−エチリデン−2−ノルボルネン単位の含有量(IR法):5.3重量%とをそれぞれ含み、該共重合体ゴムを100重量部として、出光興産株式会社製の商品名がPW−380なる伸展油100重量部を含む)を用いた以外は実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示した。
【0071】
〔比較例2〕
実施例1において、ゴム成分として油展エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴム(EPDM−2)200重量部と、オレフィン系樹脂としてプロピレン単独重合体(PP−1)56.4重量部を用いた以外は実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示した。
【0072】
【表1】

【0073】
〔実施例3〕
実施例1において、ゴム成分として油展エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴム(EPDM−1)200重量部と、オレフィン系樹脂としてプロピレン単独重合体(PP−1)66.7重量部を用いた以外は実施例1と同様に評価を行った。結果を表2に示した。
【0074】
〔比較例3〕
オレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(A−2)の製造
ゴム成分として油展エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴム(EPDM−2)200重量部と、プロピレンとしてプロピレン単独重合体(PP−1)56.4重量部と酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤(チバスペシャリティケミカルズ製、商品名:Irganox1010)0.25重量部、耐候剤としてジアゾ系耐候安定剤(住友化学株式会社製、商品名:スミソーブ300)0.51重量部、HALS系耐候安定剤(チバスペシャリティケミカルズ製、商品名:Tinuvin622)0.51重量部、有機過酸化物(化薬アクゾ株式会社製、2,5-ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンをパラフィン系オイルであるPW−100(出光興産(株)製)で10%に希釈品、商品名:APO−10DL)5.1重量部、架橋助剤(住友化学株式会社製、スミファインBM)0.25重量部を、2軸押出機を用いて200±10℃で押出して(つまり、動的に加熱して)、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を得た。該オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物のシクロヘキサン抽出分は7.7%であった。
得られた熱可塑性エラストマー組成物を100ton射出成型機でシリンダー温度220℃、金型温度50℃設定で15cm×9cm×厚さ2mmのオレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(A−2)を作製した。該成形体の圧縮永久歪が45%であった。
【0075】
複合成形体の製造
オレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(A−2)を9cm×3cm×厚さ2mmの板状成形体に切り出し、100ton射出成型機にて、金型に装填し、実施例3で得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物をシリンダー温度250℃、金型温度50℃設定で前記金型内に射出し、インサート成形法により、複合成形体を得た。該複合成形体をJIS3号ダンベルで打ち抜き、200mm/minの引張速度で引張り、接着強度を評価した。また、該複合成形体を80℃で168時間、オーブンに入れ、界面のベトツキ状態を観察した。結果を表2に示した。
【0076】
〔実施例4〕
オレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(A−3)の製造
ゴム成分として油展エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴム(EPDM−2)200重量部と、プロピレンとしてプロピレン単独重合体(PP−2)59.7重量部と酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤(チバスペシャリティケミカルズ製、商品名:Irganox1010)0.26重量部、酸化亜鉛(堺化学工業株式会社製 商品名「酸化亜鉛2種」)0.79重量部、フェノール樹脂(田岡化学工業株式会社製、タッキロール250)6.2重量部を、2軸押出機を用いて200±10℃で押出して(つまり、動的に加熱して)、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を得た。該オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物のシクロヘキサン抽出分は1.2%であった。
得られた熱可塑性エラストマー組成物を100ton射出成型機でシリンダー温度220℃、金型温度50℃設定で15cm×9cm×厚さ2mmのオレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(A−3)を作製した。該成形体の圧縮永久歪は29%であった。
【0077】
複合成形体の製造
オレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(A−3)を9cm×3cm×厚さ2mmの板状成形体に切り出し、100ton射出成型機にて、金型に装填し、実施例3で得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物をシリンダー温度250℃、金型温度50℃設定で前記金型内に射出し、インサート成形法により、複合成形体を得た。該複合成形体をJIS3号ダンベルで打ち抜き、200mm/minの引張速度で引張り、接着強度を評価した。また、該複合成形体を80℃で168時間、オーブンに入れ、界面のベトツキ状態を観察した。結果を表2に示した。
【0078】
〔実施例5〕
オレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(A−4)の製造
ゴム成分として油展エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴム(EPDM−2)200重量部と、プロピレンとしてプロピレン単独重合体(PP−2)59.7重量部と酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤(チバスペシャリティケミカルズ製、商品名:Irganox1010)0.26重量部、酸化亜鉛(堺化学工業株式会社製 商品名「酸化亜鉛2種」)0.77重量部、フェノール樹脂(田岡化学工業株式会社製、タッキロール201)6.2重量部、塩化第1スズ(関東科学製 特級試薬)1.56重量部を、2軸押出機を用いて200±10℃で押出して(つまり、動的に加熱して)、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を得た。該オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物のシクロヘキサン抽出分は2.0%であった。
得られた熱可塑性エラストマー組成物を100ton射出成型機でシリンダー温度220℃、金型温度50℃設定で15cm×9cm×厚さ2mmのオレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(A−4)を作製した。該成形体の圧縮永久歪は28%であった。
【0079】
複合成形体の製造
オレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(A−4)を9cm×3cm×厚さ2mmの板状成形体に切り出し、100ton射出成型機にて、金型に装填し、実施例3で得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物をシリンダー温度250℃、金型温度50℃設定で前記金型内に射出し、インサート成形法により、複合成形体を得た。該複合成形体をJIS3号ダンベルで打ち抜き、200mm/minの引張速度で引張り、接着強度を評価した。また、該複合成形体を80℃で168時間、オーブンに入れ、界面のベトツキ状態を観察した。結果を表2に示した。
【0080】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロヘキサン抽出分が5重量%未満であり、圧縮永久歪(JIS K6262 70℃、22時間)が35%未満であるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(A')を含有するオレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(A)と、非共役ジエンの単位の含有量が6〜15wt%であるエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム(b−1)100重量部あたり、鉱物油系軟化剤(b−2)40〜150重量部、オレフィン系樹脂(b−3)5〜150重量部、架橋剤(b−4)0.01〜20重量部を配合して動的に熱処理することにより得られるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(B’)を含有するオレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(B)とが融着されてなることを特徴とする複合成形体。
【請求項2】
自動車内外装材であることを特徴とする請求項1記載の複合成形体。
【請求項3】
ウェザーストリップ材であることを特徴とする請求項1に記載の複合成形体。
【請求項4】
オレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(A)からなる棒状部材と、オレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(B)からなるコーナー部材とが融着されてなることを特徴とする請求項3に記載の複合成形体。
【請求項5】
請求項1に記載の複合成形体の製造方法であって、金型内にオレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(A)を装填した後、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物(B’)を前記金型内に注入して、前記オレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(A)とオレフィン系熱可塑性エラストマー成形体(B)とを融着させることを特徴とする請求項1に記載の複合成形体の製造方法。

【公開番号】特開2008−266615(P2008−266615A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73245(P2008−73245)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】