複合接点の製造方法
【課題】少ない銀合金で界面の接合強度を向上させ、製造時の無駄をなくし、長期に安定した接点性能を発揮する耐久性に優れた複合接点を得る。
【解決手段】小径の基部の一端部に大径の鍔部が形成されるとともに、鍔部の上面部を構成する銀合金からなる接点部と、鍔部の下面部を構成する大径部と小径の基部とを一体に形成した銅合金からなる足部とを有する複合接点を製造する方法であって、銅合金素線12と、銅合金素線12よりも外径の小さい銀合金素線13とを成形金型の孔21内で突き合わせた状態で鍛造することにより、銅合金素線12の拡径を孔21の内周面により制限した状態で銀合金素線13の外径を孔21の内径まで拡げながら両素線を接合して銀合金部と銅合金部とからなる一次成形体を形成する一次成形工程と、一次成形体における銀合金部、銀合金部と銅合金部との接合界面及び銅合金部を含む一端部を鍛造して鍔部を成形する二次成形工程とを有する。
【解決手段】小径の基部の一端部に大径の鍔部が形成されるとともに、鍔部の上面部を構成する銀合金からなる接点部と、鍔部の下面部を構成する大径部と小径の基部とを一体に形成した銅合金からなる足部とを有する複合接点を製造する方法であって、銅合金素線12と、銅合金素線12よりも外径の小さい銀合金素線13とを成形金型の孔21内で突き合わせた状態で鍛造することにより、銅合金素線12の拡径を孔21の内周面により制限した状態で銀合金素線13の外径を孔21の内径まで拡げながら両素線を接合して銀合金部と銅合金部とからなる一次成形体を形成する一次成形工程と、一次成形体における銀合金部、銀合金部と銅合金部との接合界面及び銅合金部を含む一端部を鍛造して鍔部を成形する二次成形工程とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少ない銀合金で長期に亘り安定した接点性能を発揮する耐久性に優れた複合接点の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リレー、スイッチ、電磁開閉器、ブレーカ等に用いられる電気接点として、銀合金からなる単体接点に代えて、省銀化のため接点部分のみ銀合金材料を用い、それ以外の部分を銅系材料で代替する複合接点が広く用いられている。この種の複合接点は、小径の基部の一端部に大径の鍔部が形成された全体としてリベット形状をしているとともに、鍔部の上面部を構成する銀合金からなる接点部と、接点部の背面を接合した大径部を基部と一体に形成した銅合金からなる足部とを有している。
【0003】
このような複合接点は、足部となる銅合金の素線と、接点部となる銀合金の素線とを突き合わせて鍛造することにより成形されるが、接合時の偏心を避けるため、接合工程を2回以上の複数回に分けて行うことが一般的である。
特許文献1には、銅合金素線と銀合金素線とを同心状に突き合わせた状態で、ラッパ状に拡径した開口部を有する金型で両素線の突き合わせ部を圧接しながら外側方に膨出させるように予備成形した後、据え込み鍛造によりリベット形状に二次(仕上げ)成形する技術が開示されている。
このような突き合わせによる接合の場合、成形後の外周部において銀合金と銅合金の接合強度が低下し易く、接点として使用中に発生する熱応力により剥離し、耐久性の低下につながることが懸念される。そのため、これを回避するため、最終形状の外径よりも大きく拡げて成形した後、外周部の接合強度が弱い部分を除去し、接合強度に優れた中央部分のみを利用する方法も提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−121214号公報
【特許文献2】特開平4−298927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2記載の技術では、強固な接合強度が得られるものの、外周部が無駄になってしまう問題がある。
また、各特許文献記載の技術では、銅合金及び銀合金の両素線とも同一径の素線を使用しているが、銅合金に対して銀合金の使用量が少ないことから、素線の切断や接合加工を容易にするため、銀合金素線として銅合金素線よりも小径のものを使用することが行われてきている。この異径素線を接合する場合、従来の接合方法では、ますます接合部の外周部が接合不十分となる傾向にあり、無駄が多くなる。また、鍛造初期に小径の銀合金が銅合金にめり込む変形となるため、平坦な接合界面を形成することが難しい。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、少ない銀合金で界面の接合強度を向上させ、製造時の無駄をなくすとともに、長期に亘り安定した接点性能を発揮する耐久性に優れた複合接点を得ることができる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
特許文献1記載の技術では、接合界面の平坦化を目的として、予備成形段階で接合界面を最終形状の足部の外径より大きく拡げる強い加工を行い、これに対して、二次成形では相対的に小さい加工としている。しかしながら、本発明者は、複合接点の界面の接合強度につき鋭意研究した結果、銅合金と銀合金の接合強度については、一次成形で両者を接合させた後に行う二次成形において、両者の接合部分を大きく変形させることが重要であり、その変形量との相関性が高いことを見出した。この点において、二次成形の変形量が相対的に小さい特許文献1記載の技術では、接合強度が低くなってしまう。また、特許文献1記載の鍛造法は、銀合金と銅合金が同じ直径であることを前提としており、銀合金を少量化し、銀合金の線径が銅合金の線径に対して小さい場合は、平坦な接合界面を得ることは困難である.
本発明は、かかる知見の下、以下の解決手段とした。
【0008】
すなわち、本発明の複合接点の製造方法は、小径の基部の一端部に大径の鍔部が形成されるとともに、該鍔部の上面部を構成する銀合金からなる接点部と、該接点部の背面と接合した状態で前記鍔部の下面部を構成する大径部と前記小径の基部とを一体に形成した銅合金からなる足部とを有する複合接点を製造する方法であって、銅合金素線と、該銅合金素線よりも外径の小さい銀合金素線とを成形金型の孔内で突き合わせた状態で鍛造することにより、前記銅合金素線の拡径を前記孔の内周面により制限した状態で前記銀合金素線の外径を前記孔の内径まで拡げながら前記銀合金素線と前記銅合金素線とを接合して銀合金部と銅合金部とからなる一次成形体を形成する一次成形工程と、前記一次成形体の前記銀合金部、前記銀合金部と前記銅合金部との接合部及び前記銅合金部を含む一端部を鍛造して前記鍔部を成形する二次成形工程とを有することを特徴とする。
【0009】
一次成形工程では、鍛造による銅合金素線の拡径を成形金型の孔の内周面により制限しつつ、外径の小さい銀合金素線を孔の内径まで拡げた状態に接合し、二次成形工程で、その接合部をさらに拡径するように変形させる。したがって、二次成形工程においては、銅合金部と銀合金部との接合部は新生面を形成しながら拡径するとともに、その新生面に常に圧力が作用することになるから、外周縁に至るまで強固な接合部を得ることができる。このため、特許文献2記載のように外周部を切除する必要はなく、無駄が生じない。
【0010】
本発明の複合接点の製造方法において、前記孔は前記成形金型のダイの開口部により形成されており、前記一次成形工程は、前記孔内に、該孔の開口端部に空間部を残して前記銅合金素線を挿入状態に収容しておき、前記空間部内で前記銀合金素線と前記銅合金素線とを鍛造するとよい。
あるいは、前記成形金型には、ダイの開口部を延長するように該開口部と同じ内径のスリーブが設けられるとともに、前記孔は前記スリーブにより形成されており、前記ダイの前記開口部内に前記銅合金素線の少なくとも基端部を挿入状態に収容しておき、前記スリーブの前記孔内で前記銀合金素線と前記銅合金素線とを鍛造することとしてもよい。
いずれの方法においても、銅合金素線の拡径を制限した状態で銀合金素線を鍛造してダイの孔又はスリーブの孔の内径まで拡げながら接合することができ、その後の二次成形工程における変形量を大きくすることができる。なお、銅合金素線の拡径を成形金型の孔の内周面により制限した状態とは、銅合金素線外周面と成形金型の孔の周面の間に生じる隙間の分だけ銅合金素線が拡径することを許容する。つまり、銅合金素線と、この銅合金素線よりも外径の小さい銀合金素線とを成形金型の孔内で突き合わせた状態で鍛造したとき、鍛造後の銅合金素線の外周面が成形金型の孔の内周面に接触して孔の内径以上に拡径しなければよい。
【0011】
これらの方法において、前記孔は前記銅合金素線の外径とほぼ同じ内径に形成されているものとしておいてもよいし、前記孔は前記銅合金素線の外径よりも大きく該銅合金素線の外周面との間にリング状の空間部が形成される内径に形成されているものとしておいてもよい。
成形金型のダイの開口部の内径が銅合金素線の外径より大きい場合には、銅合金素線を成形金型のダイの開口部の中央に配置するために、開口部内で銅合金素線の下端を当接するエジェクターピンの先端部に周縁部をテーパー面とした形状の凹部を形成しておいてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の複合接点の製造方法によれば、一次成形工程において銅合金素線の変形を制限しながらそれよりも外径の小さい銀合金素線を成形金型の孔の内径まで変形させて接合し、二次成形工程においてその接合部を常に圧力を作用させた状態で拡径しているので、外周縁に至るまで強固な接合部を得ることができる。したがって、少ない銀合金で界面の接合強度を向上させ、製造時の無駄をなくすとともに、長期に亘り安定した接点性能を発揮する耐久性に優れた複合接点を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る複合接点の一実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1の複合接点を製造する方法の第1実施形態に用いられる成形金型を示す縦断面図である。
【図3】図2の成形金型のダイの孔の直上に銅合金素線及び銀合金素線を配置した状態を示す縦断面図である。
【図4】図3に示す状態から銅合金素線をダイの孔内に挿入した状態を示す縦断面図である。
【図5】図4に示す状態から銀合金素線を鍛造した状態を示す縦断面図である。
【図6】図5に示す状態からパンチ及びパンチスリーブを退避させ、一次成形体の銀合金部と銅合金部との接合部を含む一部分をダイの孔から突出させた状態を示す縦断面図である。
【図7】図6の一次成形体に二次成形用のパンチを対峙させた状態を示す縦断面図である。
【図8】図7に示す状態から一次成形体を鍛造して鍔部を成形した状態を示す縦断面図である。
【図9】本発明の製造方法の第2実施形態に用いられる成形金型を示し、銅合金素線及び銀合金素線を配置した状態を示す縦断面図である。
【図10】図9に示す状態から一次成形体を成形した状態を示す縦断面図である。
【図11】本発明の製造方法の第3実施形態に用いられる成形金型を示し、銅合金素線及び銀合金素線を配置した状態を示す縦断面図である。
【図12】図11に示す状態から一次成形体を成形した状態を示す縦断面図である。
【図13】本発明の製造方法の第4実施形態に用いられる成形金型を示し、銅合金素線及び銀合金素線を配置した状態を示す縦断面図である。
【図14】図13に示す状態から一次成形体を成形した状態を示す縦断面図である。
【図15】比較例について一次成形体を成形した状態を示す縦断面図である。
【図16】複合接点の断面写真であり、(a)が比較例、(b)が実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る複合接点の一実施形態を図面を参照しながら説明する。
本実施形態の複合接点1は、図1に示すように、小径の基部2の一端部に大径の鍔部3が形成された全体としてリベット形状をしているとともに、鍔部3の上面部を構成する銀合金からなる接点部4と、接点部4の背面に位置し、それと接合された鍔部3の下面部を構成する大径部5を基部2と一体に形成した銅合金からなる足部6とを有している。符号7は接点部4と足部6との接合界面を示す。
これら接点部4と足部6とは、銀合金からなる線材と銅合金からなる線材とを突き合わせて冷間でヘッダ加工することにより圧接される。圧接後に300℃〜400℃の熱処理が施される。そして、鎖線で示すように、銅又は銅合金等からなる台金板8の孔9内に足部6の基部2を挿入した状態にかしめられる。
【0015】
このような複合接点1において、接点部4を構成する銀合金としては、純Ag系合金、Ag−Cu系合金、Ag−CuO系合金、Ag−Ni系合金、Ag−ZnO系合金、Ag−Pd系合金、Ag−SnO2系合金、Ag−CdO合金、Ag−SnO2−In2O3系合金等を用いることができる。
また、足部6を構成する銅合金としては、タフピッチ銅、無酸素銅などの純銅材に加えて、Cu−Co−P−Ni−Sn−Zn系合金、Cu−Zr系合金、Cu−Zr−Cr系合金、Cu−Cr系合金、Cu−Fe−P系合金などの析出強化型銅合金やCu−Mg系合金などの固溶強化型銅合金を用いることができる。
【0016】
これら銅合金は、いずれもビッカース硬さが、80HV〜185HVで、接点部4を構成する銀合金(例えばビッカース硬さが90HV〜130HV)に対して80%〜160%の硬さを有している。
接点形状及び接合界面7の界面の所望形態に応じて、銅合金及び銀合金のビッカース硬さを適切に選択することにより、接合時に銅合金を大きく変形させるとともに、その銅合金の外周部まで銀合金層を十分に広げることができ、両者の接合強度を向上させることができる。
【0017】
次に、このように構成される複合接点の製造方法の第1実施形態について説明する。
図2は製造時に使用される成形金型を示している。この成形金型11は、所定長さに切断した銅合金素線12及び銀合金素線13を接合する一次成形工程と、一次成形体15の接合部分を成形する二次成形工程とを同一のステーションにおいて、一次成形で使用されるパンチ23及びパンチスリーブ24と、二次成形で使用されるパンチ33とを交替しながら連続的に成形する金型である。
この複合接点1を製造する場合、銅合金素線12は、複合接点1の足部6と略同じ外径か又は小さい外径のものが用いられるが、銀合金素線13は、その使用量が少ないため、銅合金素線12と同じ外径とすると、長さが短すぎて、素材のせん断加工やクランプ等の取り扱いが困難になるので、銅合金素線12よりも小径のものが用いられる。これら銅合金素線12及び銀合金素線13は複合接点1で用いられる体積に応じて所定長さに切断された後、クランプ等により把持されて移送される。
図3〜図8は、この成形金型11を使用した複合接点の製造方法を工程順に説明している。以下では、これら図3〜図8を参照し、成形金型11についても説明しながら、製造方法を工程順に説明する。
【0018】
<一次成形工程>
一次成形工程では、銅合金素線12を挿入状態に収容する開口部(本発明の孔に相当しており、以下、第1実施形態においては孔という)21を有するダイ22と、この孔21内の銅合金素線12の先端に銀合金素線13を軸方向に押し込むように鍛造するパンチ23と、このパンチ23の外側にスライド可能に設けられたパンチスリーブ24と、ダイ22の孔21内をスライド可能かつ所定位置で静止・保持する機能を有するエジェクタ−ピン25とを備えている。エジェクタ−ピン25は、一次成形及び二次成形では、それぞれ所定位置で保持し、鍛造金型の一部を形成し、二次成形終了後には成形された複合接点1を孔21から排出する機能を備えている。
【0019】
この場合、ダイ22の孔21は銅合金素線12を挿入し得る程度に銅合金素線12の外径よりわずかに大きいが、実質的にほぼ同じ内径に形成され、パンチ23は銀合金素線13の外径とほぼ同じ外径に形成される(図3参照)。また、パンチスリーブ24は、ダイ22の孔21の内径よりも大きい外径に形成されており、パンチ23がダイ22の孔21に臨ませられた際に、ダイ22の表面でパンチ23の周囲の孔21の開口を閉塞することができるようになっている(図4参照)。エジェクタ−ピン25は、その先端が孔21の開口端から銅合金素線12の長さ以上の深さまで退避した位置(図4に示す位置)と、孔21の開口端に配置した位置との間でスライドさせられる。
【0020】
そして、エジェクタ−ピン25の先端が最も深い位置まで退避した状態で、孔21内に挿入状態に収容された銅合金素線12の先端から孔21の開口端までの間に、空間部26が形成され(図4参照)、この空間部26内で図5に示されるように銀合金素線13がパンチ23により鍛造され、接合界面19にて銅合金素線12と接合される。
【0021】
この一次成形工程を具体的に説明すると、銅合金素線12と銀合金素線13とは、ダイ22の孔21の直上で同軸上に突き合わせられ、パンチ23がパンチスリーブ24内を下方にスライドすることにより、その突き合わせ状態でダイ22の孔21内に挿入され、内部の所定位置に保持されたエジェクタ−ピン25との間に挟まれるようにして固定される。この挿入状態では、図4に示すように、銅合金素線12はダイ22の孔21内にすべて収容され、銀合金素線13の一部が孔21内に挿入された状態となる。したがって、銅合金素線12の突き合わせ面から孔21の開口端までの間に前述した空間部26が形成される。また、パンチスリーブ24は、ダイ22の上面に当接されることにより、パンチ23の周囲の孔21の開口を閉塞した状態とする。
【0022】
次いで、パンチ23により、突き合わせ状態にある銅合金素線12と銀合金素線13とを鍛造すると、エジェクタ−ピン25とパンチ23との間で銅合金素線12と銀合金素線13とが軸方向に押しつぶされ、半径方向には外方に押し拡げられ、図5に示すように、銅合金素線12とダイ22の孔21の内周面とパンチスリーブ24の先端面とにより囲まれた空間内に充満させられる。このとき、銅合金素線12の外径とダイ22の孔21の内径とは銅合金素線12を挿入し得る程度のわずかな差でしかなく、ほぼ同じ径であるので、銅合金素線12の拡径は孔21の内周面により実質的に拘束され、空間部26内で銀合金素線13のみが変形して、ダイ22の孔21の内径と同じになるまで拡げられながら銅合金素線12の先端面と接合する。この一次成形体15においては、銅合金素線12であった部分を銅合金部17、銀合金素線13であった部分を銀合金部18と称す。符号19はこれら銅合金部17と銀合金部18との接合部を示しており、銅合金素線12の拡径が拘束された状態で銀合金素線13が鍛造されているので、その接合界面19は、軸方向に直角でほぼ平坦に形成される。
【0023】
鍛造加工後、図6に示すように、エジェクタ−ピン25がダイ22の孔21内部でスライドし、同期してパンチ23及びパンチスリーブ24が退避し、二次成形に備えた位置に固定される。この際、一次成形体15の銀合金部18の基端部をダイ22の孔21内に挿入状態のまま残して、銅合金部17及び銀合金部18の一部がダイ22の外部に露出、つまり、接合界面19がダイ22の外部に露出した状態となっている。
【0024】
<二次成形工程>
二次成形工程では、図7に示すように、一次成形工程で使用されたパンチ23及びパンチスリーブ24に代えて、ダイ22の孔21の直上にパンチ33が配置され、孔21から突出する銅合金部17と銀合金部18との接合界面19を含む一端部(銀合金部側の端部)を鍛造する。このパンチ33は、その先端面にダイ22の孔21の内径より大きい内径の凹部34が形成されており、この凹部34により鍔部3が形成される。
【0025】
一次成形体15は、銀合金部18の上面からパンチ33の凹部34により軸方向に鍛造されると、図8に示すように、ダイ22の孔21から突出している銅合金部17及び銀合金部18がパンチ33の凹部34内に拡がりながら成形される。このとき、一次成形体15では銅合金部17及び銀合金部18はこれらの接合界面19も含めて同じ外径に形成されており、これらがパンチ33によって鍛造される際に、両者の接合界面19も軸方向に加圧されながら半径方向に押し拡げられる。
したがって、この二次成形工程においては、銅合金部17と銀合金部18との接合界面19は新生面を形成しながら拡径するとともに、その新生面に常に圧力が作用することになるから、鍔部3の外周縁に至るまで強固な接合界面7を得ることができる。また、一次成形体15における接合界面19が軸方向に直角で平坦に形成されていたことから、二次成形品の接合界面7も平坦に形成され、ほぼ一様な厚さの接点部4を得ることができる。
【0026】
最後に、エジェクタ−ピン25により複合接点1をダイ22から押し上げて排出する。得られた複合接点1は、鍔部3の外周縁まで強固に接合しているので、長期間の接点開閉に伴うサイクル熱応力が発生しても、接合界面7の剥離を抑制することができ、また、少ない銀量でありながら、銅合金の大径部5との接合界面7の界面全域で均質な厚さの銀合金の接点部4が得られ、長期に亘り安定した接点性能を発揮する耐久性に優れたものとなる。また、接合界面7が平坦に形成されることにより、省銀化にも効果的である。
【0027】
なお、上記実施形態では、一次成形工程において、ダイ22の孔21の奥深くにエジェクタ−ピン25を退避させ、ダイ22の孔21の開口端部に銀合金素線成形用の空間部26を形成したが、図9及び図10に示す第2実施形態のように、ダイの上面でパンチスリーブにより銀合金素線の成形用の空間部を形成するようにしてもよい。
この一次成形工程で用いられるパンチスリーブ(本発明のスリーブに相当)42は、ダイ22の開口部21に対向する孔が、ダイ22の開口部21の内径と同じ内径で開口する大径孔部(本発明の孔に相当する)43aと、その奥に銀合金素線13の外径と同じ内径のガイド孔部43bとの二段構造とされている。そして、このパンチスリーブ42の先端をダイ22の表面に実質的に当接させることで、ダイ22の開口部21と実質的に連通状態の大径孔部43aにより空間部44が形成される。この場合、銅合金素線12は、その基端部がダイ22の開口部21内に挿入状態に収容され、銅合金素線12の先端部及び銀合金素線13がパンチスリーブ42の空間部44内に配置される。そして、その空間部44内で銀合金素線13を鍛造することにより、軸方向に押しつぶしながら空間部44内を充満させ、銅合金素線12と実質的に同じ外径まで拡げて接合する。得られた一次成形体は、前述の一実施形態と同様、銅合金部17と銀合金部18とがほぼ同じ径で接合され、接合界面19は、軸方向に直角でほぼ平坦に形成される。その後、上記二次成形工程によって、銅合金部17と銀合金部18との接合界面19を含む一端部を鍛造して鍔部3が形成される。
この実施形態では、エジェクタ−ピン25は、一次成形工程と二次成形工程とでその位置が変わらないため、エジェクタ−ピン25の位置変更が設備上難しい場合などに有効である。さらに、上記以外にも、例えば図9及び図10に示されるパンチスリーブ42について、大径孔部43a下部にテーパーを設け、一次成形後、パンチ23及びパンチスリーブ42が退避する際に一次成形体15の抜けを容易にするなどの応用も可能である。
【0028】
図11及び図12は本発明の第3実施形態を示している。この実施形態では、一次成形工程において、銅合金素線12の外径が成形金型のダイ22の開口部(孔)21の内径よりも小さく形成されており、銅合金素線12をダイ22の孔21に挿入したときに、ダイ22と銅合金素線12との間に隙間が形成される。この隙間は、一次形成工程においてダイ22の孔21に銅合金素線12が円滑に挿入することができる程度に設定される。具体的には、孔21の内径と銅合金素線12の外径との差が、孔21の内径の1/5以下に設定するのが望ましい。
また、エジェクタ−ピン51の先端部には、周縁部をテーパー面とした形状の凹部52が形成されており、銅合金素線12をダイ22の孔21に挿入したときに、銅合金素線12を凹部51内に案内してダイ22の孔21の中央に配置することができるようになっている。
その他、第1実施形態と共通部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0029】
この実施形態において、銅合金素線12をダイ22の孔21内に挿入して銀合金素線13を突き合わせた状態で鍛造すると、銅合金素線12は、ダイ22の孔21との隙間の範囲で拡径するが、その孔21の内周面により、それ以上の拡径については拘束され、一方、銀合金素線13は孔21の内周面まで拡径しながら銅合金素線12に接合され、図12に示すように、銅合金部17と銀合金部18とが接合した一次成形体15が形成される。
この一次成形体15においても、銅合金素線12の拡径が孔21の内周面により制限された状態で鍛造されるので、その接合界面19を軸方向に直角でほぼ平坦に形成することができる。その後、上記二次成形工程によって、銅合金部17と銀合金部18との接合界面19を含む一端部を鍛造して鍔部3が形成される。
【0030】
図13及び図14は本発明の第4実施形態を示している。この実施形態では、一次成形工程において、銅合金素線12の外径が成形金型のダイ22の開口部(孔)55の内径よりも小さく形成されており、銅合金素線12をダイ22の孔55に挿入したときに、ダイ22と銅合金素線12との間に隙間が形成される。この隙間は、一次形成工程においてダイ22の孔21に銅合金素線12が円滑に挿入することができる程度に設定される。具体的には、孔21の内径と銅合金素線12の外径との差が、孔21の内径の1/5以下に設定するのが望ましい。
また、ダイ22の孔55の下部には、テーパー面56が形成され、このテーパー面56より下方にエジェクタ−ピン挿入孔57が形成されている。そして、テーパー面56の下端にエジェクターピン25の先端面が配置されることにより、このエジェクタ−ピンとともに凹部を形成しており、銅合金素線12をダイ22の孔55に挿入したときに、銅合金素線12を凹部内に案内してダイ22の孔55の中央に配置することができるようになっている。
また、ダイ22の孔55を第3実施形態と同様にストレート形状とし、エジェクタ−ピンの先端部に、周縁部をテーパー面とした形状の凹部を形成してもよい。
その他、第2実施形態と共通部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0031】
この実施形態において、銅合金素線12をダイ22の孔55内に挿入して銀合金素線13を突き合わせた状態で鍛造すると、銅合金素線12は、ダイ22の孔55およびパンチ42の孔43aとの隙間の範囲で拡径するが、その孔55および孔43aの内周面により、それ以上の拡径については拘束され、一方、銀合金素線13は孔43aの内周面まで拡径しながら銅合金素線12に接合され、図14に示すように、銅合金部17と銀合金部18とが接合した一次成形体15が形成される。
この一次成形体15においても、銅合金素線12の拡径が孔55および孔43aの内周面により制限された状態で鍛造されるので、その接合界面19を軸方向に直角でほぼ平坦に形成することができる。その後、上記二次成形工程によって、銅合金部17と銀合金部18との接合界面19を含む一端部を鍛造して鍔部3が形成される。
【実施例】
【0032】
複合接点の材料として、市販の純Ag系合金(a)、Ag−SnO2系合金(b)、Ag−SnO2−In2O3系合金(c)、Ag−ZnO系合金(d)、Ag−Ni系合金(e)からなる直径1.5mmの銀合金線材と、市販のタフピッチ銅(CDA番号:C11000)(p)、Cu−Cr系合金(CDA番号:C18200)(q)、Cu−Cr−Zr系合金(三菱伸銅株式会社 商品名:MZC1)(r)、Cu−P−Co−Ni−Sn―Zn系合金(三菱伸銅株式会社 商品名:HRSC)(s)、Cu−Fe−P系合金(三菱伸銅株式会社 商品名:TAMAC194)(t)、Cu−Mg系合金(三菱伸銅株式会社 商品名:MSP1)(u)からなる直径1.9mmの銅合金線材を用いた。これら銀合金線材と銅合金線材とを所定長さに切断して適宜に組み合わせ、本発明の製造方法によって冷間鍛造し、その後に350℃で30分の熱処理を施すことにより、接点部の直径が3.5mm、鍔部の厚みが0.5mm(接点部の厚みが0.15mm、銅合金の大径部の厚みが0.35mm)、足部の直径が2.0mm、足部の長さが2.0mmのリベット形状の複合接点を作製した。比較例として、図15に示すように一次成形工程での銀合金素線13の鍛造変形量を減らし、銀合金部18の直径が銅合金部17に対して小さい状態の一次成形体15とし、二次成形工程は本発明方法と同一の方法によって冷間鍛造した複合接点も作製した。この図15においても、説明の便宜のため実施形態と同一の符号を付している。
【0033】
これら複合接点につき、接点部と足部との間の剥離強度、接点としての耐久性を評価した。
剥離強度は、各複合接点をせん断応力試験機(APTEC製 TM2102D−IT )にセットし、接点部と足部との界面に平行に荷重を加えてせん断応力を測定し、剥離強度を測定した。
耐久性評価は、作製した複合接点を2個一組としてそれぞれ厚み1mmの銅製の台金板にかしめ固定し、これをASTM接点開閉試験機に取り付けて繰り返し開閉し、サイクル耐久性の評価を実施した。通電条件は、負荷電圧が直流12V、0.5Ωの抵抗負荷による定常電流24Aとし、接触力、開離力とも196mN(20gf)で、通電1秒+休止4秒(サイクルタイム5秒)で20万回まで繰り返し開閉した。
なお、接点開離タイミングから1秒以上、接点が開かない場合には溶着したと判断し、合計で10回溶着が起きた場合にはサイクル数が20万回に満たない場合でも試験終了とした。
【0034】
所定のサイクル数を終えることなく途中で試験終了したものも含め、耐久試験終了後にサンプル外観を観察するとともに、必要に応じてこれを樹脂に埋め込み断面を研磨して銀合金と銅合金の界面及びかしめ固定した銅板と接点の鍔部との界面を観察し、耐久性が良好な順に○、△、×で判定した。
その判定基準としては、銀合金と銅合金の界面に目立った剥離が起きておらず、かつ、接点の鍔部がかしめ固定された銅板に接触している、もしくはかしめ固定された初期状態から外観上ほとんど変化がない場合には◎、銀合金と銅合金の界面での剥離が若干見られる、もしくは鍔部の反り上がりが観察されるものの、所定のサイクル数終了まで溶着停止しなかったものを○、銀合金と銅合金の界面での剥離が見られるか、鍔部の反り上がりが発生しており、所定のサイクル数に達する前に溶着停止を起こしてしまったものを×とした。
【0035】
【表1】
【0036】
表1の結果から、実施例の接点はいずれも優れた剥離強度を有しており、また耐久性にも優れることが確認された。比較例は、剥離強度が低いことから、耐久性試験中に銀合金と銅合金の接合面での剥離が発生し、十分な耐久性を発揮することができなかった。
したがって、本発明の製造方法によれば、長期に亘り安定した接点性能を発揮する耐久性に優れた複合接点が得られることが確認された。
【0037】
また、実施例と比較例との断面を顕微鏡で確認したところ、図16(a)に示す比較例においては、軸心から半径方向外側に向かうにしたがって銀合金部の材料のフローラインが接合界面から外方に向けて大きく湾曲していることがわかる。これは、二次成形において、鍔部の外周部付近では、一次成形で得られた銀合金部と銅合金部との接合界面が拡径しきれず、一次成形の時点で、未接合状態であった銅合金部の外周部の端面(線材端面)に銀合金部の側面(線材外周面)が座屈するように接合しており、接合界面中心部と比較すると鍔部外周部近傍の接合強度は著しく弱い。
これに対して、同図(b)に示す実施例の場合は、比較例のものと比べるとフローラインが均質で、接合界面からの湾曲も比較例のものより小さい。これは、一次成形の時点で既に銅合金部と銀合金部とが全面で接合しており、この接合界面が二次成形によって均質に半径方向外方に延びているためであり、接合界面中心部から鍔部の外周部まで銀合金部と銅合金部とが強固に接合している。
【0038】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、一端部にのみ接点部が設けられているものとしたが、基部の端部にも銀合金を設けて、両端部に接点部を形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の複合接点は、リレー、スイッチ、電磁開閉器、ブレーカ等に用いられる電気接点として用いることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 複合接点
2 基部
3 鍔部
4 接点部
5 大径部
6 足部
7 接合界面
8 台金板
9 孔
11 成形金型
12 銅合金素線
13 銀合金素線
15 一次成形体
17 銅合金部
18 銀合金部
19 接合界面
21 開口部(孔)
22 ダイ
23 パンチ
24 パンチスリーブ
25 エジェクタ−ピン
26 空間部
33 パンチ
34 凹部
42 パンチスリーブ(スリーブ)
43a 大径孔部(孔)
43b ガイド孔部
44 空間部
51 エジェクタ−ピン
52 凹部
55 開口部(孔)
56 テーパー面
57 エジェクタ−ピン
【技術分野】
【0001】
本発明は、少ない銀合金で長期に亘り安定した接点性能を発揮する耐久性に優れた複合接点の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リレー、スイッチ、電磁開閉器、ブレーカ等に用いられる電気接点として、銀合金からなる単体接点に代えて、省銀化のため接点部分のみ銀合金材料を用い、それ以外の部分を銅系材料で代替する複合接点が広く用いられている。この種の複合接点は、小径の基部の一端部に大径の鍔部が形成された全体としてリベット形状をしているとともに、鍔部の上面部を構成する銀合金からなる接点部と、接点部の背面を接合した大径部を基部と一体に形成した銅合金からなる足部とを有している。
【0003】
このような複合接点は、足部となる銅合金の素線と、接点部となる銀合金の素線とを突き合わせて鍛造することにより成形されるが、接合時の偏心を避けるため、接合工程を2回以上の複数回に分けて行うことが一般的である。
特許文献1には、銅合金素線と銀合金素線とを同心状に突き合わせた状態で、ラッパ状に拡径した開口部を有する金型で両素線の突き合わせ部を圧接しながら外側方に膨出させるように予備成形した後、据え込み鍛造によりリベット形状に二次(仕上げ)成形する技術が開示されている。
このような突き合わせによる接合の場合、成形後の外周部において銀合金と銅合金の接合強度が低下し易く、接点として使用中に発生する熱応力により剥離し、耐久性の低下につながることが懸念される。そのため、これを回避するため、最終形状の外径よりも大きく拡げて成形した後、外周部の接合強度が弱い部分を除去し、接合強度に優れた中央部分のみを利用する方法も提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−121214号公報
【特許文献2】特開平4−298927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2記載の技術では、強固な接合強度が得られるものの、外周部が無駄になってしまう問題がある。
また、各特許文献記載の技術では、銅合金及び銀合金の両素線とも同一径の素線を使用しているが、銅合金に対して銀合金の使用量が少ないことから、素線の切断や接合加工を容易にするため、銀合金素線として銅合金素線よりも小径のものを使用することが行われてきている。この異径素線を接合する場合、従来の接合方法では、ますます接合部の外周部が接合不十分となる傾向にあり、無駄が多くなる。また、鍛造初期に小径の銀合金が銅合金にめり込む変形となるため、平坦な接合界面を形成することが難しい。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、少ない銀合金で界面の接合強度を向上させ、製造時の無駄をなくすとともに、長期に亘り安定した接点性能を発揮する耐久性に優れた複合接点を得ることができる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
特許文献1記載の技術では、接合界面の平坦化を目的として、予備成形段階で接合界面を最終形状の足部の外径より大きく拡げる強い加工を行い、これに対して、二次成形では相対的に小さい加工としている。しかしながら、本発明者は、複合接点の界面の接合強度につき鋭意研究した結果、銅合金と銀合金の接合強度については、一次成形で両者を接合させた後に行う二次成形において、両者の接合部分を大きく変形させることが重要であり、その変形量との相関性が高いことを見出した。この点において、二次成形の変形量が相対的に小さい特許文献1記載の技術では、接合強度が低くなってしまう。また、特許文献1記載の鍛造法は、銀合金と銅合金が同じ直径であることを前提としており、銀合金を少量化し、銀合金の線径が銅合金の線径に対して小さい場合は、平坦な接合界面を得ることは困難である.
本発明は、かかる知見の下、以下の解決手段とした。
【0008】
すなわち、本発明の複合接点の製造方法は、小径の基部の一端部に大径の鍔部が形成されるとともに、該鍔部の上面部を構成する銀合金からなる接点部と、該接点部の背面と接合した状態で前記鍔部の下面部を構成する大径部と前記小径の基部とを一体に形成した銅合金からなる足部とを有する複合接点を製造する方法であって、銅合金素線と、該銅合金素線よりも外径の小さい銀合金素線とを成形金型の孔内で突き合わせた状態で鍛造することにより、前記銅合金素線の拡径を前記孔の内周面により制限した状態で前記銀合金素線の外径を前記孔の内径まで拡げながら前記銀合金素線と前記銅合金素線とを接合して銀合金部と銅合金部とからなる一次成形体を形成する一次成形工程と、前記一次成形体の前記銀合金部、前記銀合金部と前記銅合金部との接合部及び前記銅合金部を含む一端部を鍛造して前記鍔部を成形する二次成形工程とを有することを特徴とする。
【0009】
一次成形工程では、鍛造による銅合金素線の拡径を成形金型の孔の内周面により制限しつつ、外径の小さい銀合金素線を孔の内径まで拡げた状態に接合し、二次成形工程で、その接合部をさらに拡径するように変形させる。したがって、二次成形工程においては、銅合金部と銀合金部との接合部は新生面を形成しながら拡径するとともに、その新生面に常に圧力が作用することになるから、外周縁に至るまで強固な接合部を得ることができる。このため、特許文献2記載のように外周部を切除する必要はなく、無駄が生じない。
【0010】
本発明の複合接点の製造方法において、前記孔は前記成形金型のダイの開口部により形成されており、前記一次成形工程は、前記孔内に、該孔の開口端部に空間部を残して前記銅合金素線を挿入状態に収容しておき、前記空間部内で前記銀合金素線と前記銅合金素線とを鍛造するとよい。
あるいは、前記成形金型には、ダイの開口部を延長するように該開口部と同じ内径のスリーブが設けられるとともに、前記孔は前記スリーブにより形成されており、前記ダイの前記開口部内に前記銅合金素線の少なくとも基端部を挿入状態に収容しておき、前記スリーブの前記孔内で前記銀合金素線と前記銅合金素線とを鍛造することとしてもよい。
いずれの方法においても、銅合金素線の拡径を制限した状態で銀合金素線を鍛造してダイの孔又はスリーブの孔の内径まで拡げながら接合することができ、その後の二次成形工程における変形量を大きくすることができる。なお、銅合金素線の拡径を成形金型の孔の内周面により制限した状態とは、銅合金素線外周面と成形金型の孔の周面の間に生じる隙間の分だけ銅合金素線が拡径することを許容する。つまり、銅合金素線と、この銅合金素線よりも外径の小さい銀合金素線とを成形金型の孔内で突き合わせた状態で鍛造したとき、鍛造後の銅合金素線の外周面が成形金型の孔の内周面に接触して孔の内径以上に拡径しなければよい。
【0011】
これらの方法において、前記孔は前記銅合金素線の外径とほぼ同じ内径に形成されているものとしておいてもよいし、前記孔は前記銅合金素線の外径よりも大きく該銅合金素線の外周面との間にリング状の空間部が形成される内径に形成されているものとしておいてもよい。
成形金型のダイの開口部の内径が銅合金素線の外径より大きい場合には、銅合金素線を成形金型のダイの開口部の中央に配置するために、開口部内で銅合金素線の下端を当接するエジェクターピンの先端部に周縁部をテーパー面とした形状の凹部を形成しておいてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の複合接点の製造方法によれば、一次成形工程において銅合金素線の変形を制限しながらそれよりも外径の小さい銀合金素線を成形金型の孔の内径まで変形させて接合し、二次成形工程においてその接合部を常に圧力を作用させた状態で拡径しているので、外周縁に至るまで強固な接合部を得ることができる。したがって、少ない銀合金で界面の接合強度を向上させ、製造時の無駄をなくすとともに、長期に亘り安定した接点性能を発揮する耐久性に優れた複合接点を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る複合接点の一実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1の複合接点を製造する方法の第1実施形態に用いられる成形金型を示す縦断面図である。
【図3】図2の成形金型のダイの孔の直上に銅合金素線及び銀合金素線を配置した状態を示す縦断面図である。
【図4】図3に示す状態から銅合金素線をダイの孔内に挿入した状態を示す縦断面図である。
【図5】図4に示す状態から銀合金素線を鍛造した状態を示す縦断面図である。
【図6】図5に示す状態からパンチ及びパンチスリーブを退避させ、一次成形体の銀合金部と銅合金部との接合部を含む一部分をダイの孔から突出させた状態を示す縦断面図である。
【図7】図6の一次成形体に二次成形用のパンチを対峙させた状態を示す縦断面図である。
【図8】図7に示す状態から一次成形体を鍛造して鍔部を成形した状態を示す縦断面図である。
【図9】本発明の製造方法の第2実施形態に用いられる成形金型を示し、銅合金素線及び銀合金素線を配置した状態を示す縦断面図である。
【図10】図9に示す状態から一次成形体を成形した状態を示す縦断面図である。
【図11】本発明の製造方法の第3実施形態に用いられる成形金型を示し、銅合金素線及び銀合金素線を配置した状態を示す縦断面図である。
【図12】図11に示す状態から一次成形体を成形した状態を示す縦断面図である。
【図13】本発明の製造方法の第4実施形態に用いられる成形金型を示し、銅合金素線及び銀合金素線を配置した状態を示す縦断面図である。
【図14】図13に示す状態から一次成形体を成形した状態を示す縦断面図である。
【図15】比較例について一次成形体を成形した状態を示す縦断面図である。
【図16】複合接点の断面写真であり、(a)が比較例、(b)が実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る複合接点の一実施形態を図面を参照しながら説明する。
本実施形態の複合接点1は、図1に示すように、小径の基部2の一端部に大径の鍔部3が形成された全体としてリベット形状をしているとともに、鍔部3の上面部を構成する銀合金からなる接点部4と、接点部4の背面に位置し、それと接合された鍔部3の下面部を構成する大径部5を基部2と一体に形成した銅合金からなる足部6とを有している。符号7は接点部4と足部6との接合界面を示す。
これら接点部4と足部6とは、銀合金からなる線材と銅合金からなる線材とを突き合わせて冷間でヘッダ加工することにより圧接される。圧接後に300℃〜400℃の熱処理が施される。そして、鎖線で示すように、銅又は銅合金等からなる台金板8の孔9内に足部6の基部2を挿入した状態にかしめられる。
【0015】
このような複合接点1において、接点部4を構成する銀合金としては、純Ag系合金、Ag−Cu系合金、Ag−CuO系合金、Ag−Ni系合金、Ag−ZnO系合金、Ag−Pd系合金、Ag−SnO2系合金、Ag−CdO合金、Ag−SnO2−In2O3系合金等を用いることができる。
また、足部6を構成する銅合金としては、タフピッチ銅、無酸素銅などの純銅材に加えて、Cu−Co−P−Ni−Sn−Zn系合金、Cu−Zr系合金、Cu−Zr−Cr系合金、Cu−Cr系合金、Cu−Fe−P系合金などの析出強化型銅合金やCu−Mg系合金などの固溶強化型銅合金を用いることができる。
【0016】
これら銅合金は、いずれもビッカース硬さが、80HV〜185HVで、接点部4を構成する銀合金(例えばビッカース硬さが90HV〜130HV)に対して80%〜160%の硬さを有している。
接点形状及び接合界面7の界面の所望形態に応じて、銅合金及び銀合金のビッカース硬さを適切に選択することにより、接合時に銅合金を大きく変形させるとともに、その銅合金の外周部まで銀合金層を十分に広げることができ、両者の接合強度を向上させることができる。
【0017】
次に、このように構成される複合接点の製造方法の第1実施形態について説明する。
図2は製造時に使用される成形金型を示している。この成形金型11は、所定長さに切断した銅合金素線12及び銀合金素線13を接合する一次成形工程と、一次成形体15の接合部分を成形する二次成形工程とを同一のステーションにおいて、一次成形で使用されるパンチ23及びパンチスリーブ24と、二次成形で使用されるパンチ33とを交替しながら連続的に成形する金型である。
この複合接点1を製造する場合、銅合金素線12は、複合接点1の足部6と略同じ外径か又は小さい外径のものが用いられるが、銀合金素線13は、その使用量が少ないため、銅合金素線12と同じ外径とすると、長さが短すぎて、素材のせん断加工やクランプ等の取り扱いが困難になるので、銅合金素線12よりも小径のものが用いられる。これら銅合金素線12及び銀合金素線13は複合接点1で用いられる体積に応じて所定長さに切断された後、クランプ等により把持されて移送される。
図3〜図8は、この成形金型11を使用した複合接点の製造方法を工程順に説明している。以下では、これら図3〜図8を参照し、成形金型11についても説明しながら、製造方法を工程順に説明する。
【0018】
<一次成形工程>
一次成形工程では、銅合金素線12を挿入状態に収容する開口部(本発明の孔に相当しており、以下、第1実施形態においては孔という)21を有するダイ22と、この孔21内の銅合金素線12の先端に銀合金素線13を軸方向に押し込むように鍛造するパンチ23と、このパンチ23の外側にスライド可能に設けられたパンチスリーブ24と、ダイ22の孔21内をスライド可能かつ所定位置で静止・保持する機能を有するエジェクタ−ピン25とを備えている。エジェクタ−ピン25は、一次成形及び二次成形では、それぞれ所定位置で保持し、鍛造金型の一部を形成し、二次成形終了後には成形された複合接点1を孔21から排出する機能を備えている。
【0019】
この場合、ダイ22の孔21は銅合金素線12を挿入し得る程度に銅合金素線12の外径よりわずかに大きいが、実質的にほぼ同じ内径に形成され、パンチ23は銀合金素線13の外径とほぼ同じ外径に形成される(図3参照)。また、パンチスリーブ24は、ダイ22の孔21の内径よりも大きい外径に形成されており、パンチ23がダイ22の孔21に臨ませられた際に、ダイ22の表面でパンチ23の周囲の孔21の開口を閉塞することができるようになっている(図4参照)。エジェクタ−ピン25は、その先端が孔21の開口端から銅合金素線12の長さ以上の深さまで退避した位置(図4に示す位置)と、孔21の開口端に配置した位置との間でスライドさせられる。
【0020】
そして、エジェクタ−ピン25の先端が最も深い位置まで退避した状態で、孔21内に挿入状態に収容された銅合金素線12の先端から孔21の開口端までの間に、空間部26が形成され(図4参照)、この空間部26内で図5に示されるように銀合金素線13がパンチ23により鍛造され、接合界面19にて銅合金素線12と接合される。
【0021】
この一次成形工程を具体的に説明すると、銅合金素線12と銀合金素線13とは、ダイ22の孔21の直上で同軸上に突き合わせられ、パンチ23がパンチスリーブ24内を下方にスライドすることにより、その突き合わせ状態でダイ22の孔21内に挿入され、内部の所定位置に保持されたエジェクタ−ピン25との間に挟まれるようにして固定される。この挿入状態では、図4に示すように、銅合金素線12はダイ22の孔21内にすべて収容され、銀合金素線13の一部が孔21内に挿入された状態となる。したがって、銅合金素線12の突き合わせ面から孔21の開口端までの間に前述した空間部26が形成される。また、パンチスリーブ24は、ダイ22の上面に当接されることにより、パンチ23の周囲の孔21の開口を閉塞した状態とする。
【0022】
次いで、パンチ23により、突き合わせ状態にある銅合金素線12と銀合金素線13とを鍛造すると、エジェクタ−ピン25とパンチ23との間で銅合金素線12と銀合金素線13とが軸方向に押しつぶされ、半径方向には外方に押し拡げられ、図5に示すように、銅合金素線12とダイ22の孔21の内周面とパンチスリーブ24の先端面とにより囲まれた空間内に充満させられる。このとき、銅合金素線12の外径とダイ22の孔21の内径とは銅合金素線12を挿入し得る程度のわずかな差でしかなく、ほぼ同じ径であるので、銅合金素線12の拡径は孔21の内周面により実質的に拘束され、空間部26内で銀合金素線13のみが変形して、ダイ22の孔21の内径と同じになるまで拡げられながら銅合金素線12の先端面と接合する。この一次成形体15においては、銅合金素線12であった部分を銅合金部17、銀合金素線13であった部分を銀合金部18と称す。符号19はこれら銅合金部17と銀合金部18との接合部を示しており、銅合金素線12の拡径が拘束された状態で銀合金素線13が鍛造されているので、その接合界面19は、軸方向に直角でほぼ平坦に形成される。
【0023】
鍛造加工後、図6に示すように、エジェクタ−ピン25がダイ22の孔21内部でスライドし、同期してパンチ23及びパンチスリーブ24が退避し、二次成形に備えた位置に固定される。この際、一次成形体15の銀合金部18の基端部をダイ22の孔21内に挿入状態のまま残して、銅合金部17及び銀合金部18の一部がダイ22の外部に露出、つまり、接合界面19がダイ22の外部に露出した状態となっている。
【0024】
<二次成形工程>
二次成形工程では、図7に示すように、一次成形工程で使用されたパンチ23及びパンチスリーブ24に代えて、ダイ22の孔21の直上にパンチ33が配置され、孔21から突出する銅合金部17と銀合金部18との接合界面19を含む一端部(銀合金部側の端部)を鍛造する。このパンチ33は、その先端面にダイ22の孔21の内径より大きい内径の凹部34が形成されており、この凹部34により鍔部3が形成される。
【0025】
一次成形体15は、銀合金部18の上面からパンチ33の凹部34により軸方向に鍛造されると、図8に示すように、ダイ22の孔21から突出している銅合金部17及び銀合金部18がパンチ33の凹部34内に拡がりながら成形される。このとき、一次成形体15では銅合金部17及び銀合金部18はこれらの接合界面19も含めて同じ外径に形成されており、これらがパンチ33によって鍛造される際に、両者の接合界面19も軸方向に加圧されながら半径方向に押し拡げられる。
したがって、この二次成形工程においては、銅合金部17と銀合金部18との接合界面19は新生面を形成しながら拡径するとともに、その新生面に常に圧力が作用することになるから、鍔部3の外周縁に至るまで強固な接合界面7を得ることができる。また、一次成形体15における接合界面19が軸方向に直角で平坦に形成されていたことから、二次成形品の接合界面7も平坦に形成され、ほぼ一様な厚さの接点部4を得ることができる。
【0026】
最後に、エジェクタ−ピン25により複合接点1をダイ22から押し上げて排出する。得られた複合接点1は、鍔部3の外周縁まで強固に接合しているので、長期間の接点開閉に伴うサイクル熱応力が発生しても、接合界面7の剥離を抑制することができ、また、少ない銀量でありながら、銅合金の大径部5との接合界面7の界面全域で均質な厚さの銀合金の接点部4が得られ、長期に亘り安定した接点性能を発揮する耐久性に優れたものとなる。また、接合界面7が平坦に形成されることにより、省銀化にも効果的である。
【0027】
なお、上記実施形態では、一次成形工程において、ダイ22の孔21の奥深くにエジェクタ−ピン25を退避させ、ダイ22の孔21の開口端部に銀合金素線成形用の空間部26を形成したが、図9及び図10に示す第2実施形態のように、ダイの上面でパンチスリーブにより銀合金素線の成形用の空間部を形成するようにしてもよい。
この一次成形工程で用いられるパンチスリーブ(本発明のスリーブに相当)42は、ダイ22の開口部21に対向する孔が、ダイ22の開口部21の内径と同じ内径で開口する大径孔部(本発明の孔に相当する)43aと、その奥に銀合金素線13の外径と同じ内径のガイド孔部43bとの二段構造とされている。そして、このパンチスリーブ42の先端をダイ22の表面に実質的に当接させることで、ダイ22の開口部21と実質的に連通状態の大径孔部43aにより空間部44が形成される。この場合、銅合金素線12は、その基端部がダイ22の開口部21内に挿入状態に収容され、銅合金素線12の先端部及び銀合金素線13がパンチスリーブ42の空間部44内に配置される。そして、その空間部44内で銀合金素線13を鍛造することにより、軸方向に押しつぶしながら空間部44内を充満させ、銅合金素線12と実質的に同じ外径まで拡げて接合する。得られた一次成形体は、前述の一実施形態と同様、銅合金部17と銀合金部18とがほぼ同じ径で接合され、接合界面19は、軸方向に直角でほぼ平坦に形成される。その後、上記二次成形工程によって、銅合金部17と銀合金部18との接合界面19を含む一端部を鍛造して鍔部3が形成される。
この実施形態では、エジェクタ−ピン25は、一次成形工程と二次成形工程とでその位置が変わらないため、エジェクタ−ピン25の位置変更が設備上難しい場合などに有効である。さらに、上記以外にも、例えば図9及び図10に示されるパンチスリーブ42について、大径孔部43a下部にテーパーを設け、一次成形後、パンチ23及びパンチスリーブ42が退避する際に一次成形体15の抜けを容易にするなどの応用も可能である。
【0028】
図11及び図12は本発明の第3実施形態を示している。この実施形態では、一次成形工程において、銅合金素線12の外径が成形金型のダイ22の開口部(孔)21の内径よりも小さく形成されており、銅合金素線12をダイ22の孔21に挿入したときに、ダイ22と銅合金素線12との間に隙間が形成される。この隙間は、一次形成工程においてダイ22の孔21に銅合金素線12が円滑に挿入することができる程度に設定される。具体的には、孔21の内径と銅合金素線12の外径との差が、孔21の内径の1/5以下に設定するのが望ましい。
また、エジェクタ−ピン51の先端部には、周縁部をテーパー面とした形状の凹部52が形成されており、銅合金素線12をダイ22の孔21に挿入したときに、銅合金素線12を凹部51内に案内してダイ22の孔21の中央に配置することができるようになっている。
その他、第1実施形態と共通部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0029】
この実施形態において、銅合金素線12をダイ22の孔21内に挿入して銀合金素線13を突き合わせた状態で鍛造すると、銅合金素線12は、ダイ22の孔21との隙間の範囲で拡径するが、その孔21の内周面により、それ以上の拡径については拘束され、一方、銀合金素線13は孔21の内周面まで拡径しながら銅合金素線12に接合され、図12に示すように、銅合金部17と銀合金部18とが接合した一次成形体15が形成される。
この一次成形体15においても、銅合金素線12の拡径が孔21の内周面により制限された状態で鍛造されるので、その接合界面19を軸方向に直角でほぼ平坦に形成することができる。その後、上記二次成形工程によって、銅合金部17と銀合金部18との接合界面19を含む一端部を鍛造して鍔部3が形成される。
【0030】
図13及び図14は本発明の第4実施形態を示している。この実施形態では、一次成形工程において、銅合金素線12の外径が成形金型のダイ22の開口部(孔)55の内径よりも小さく形成されており、銅合金素線12をダイ22の孔55に挿入したときに、ダイ22と銅合金素線12との間に隙間が形成される。この隙間は、一次形成工程においてダイ22の孔21に銅合金素線12が円滑に挿入することができる程度に設定される。具体的には、孔21の内径と銅合金素線12の外径との差が、孔21の内径の1/5以下に設定するのが望ましい。
また、ダイ22の孔55の下部には、テーパー面56が形成され、このテーパー面56より下方にエジェクタ−ピン挿入孔57が形成されている。そして、テーパー面56の下端にエジェクターピン25の先端面が配置されることにより、このエジェクタ−ピンとともに凹部を形成しており、銅合金素線12をダイ22の孔55に挿入したときに、銅合金素線12を凹部内に案内してダイ22の孔55の中央に配置することができるようになっている。
また、ダイ22の孔55を第3実施形態と同様にストレート形状とし、エジェクタ−ピンの先端部に、周縁部をテーパー面とした形状の凹部を形成してもよい。
その他、第2実施形態と共通部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0031】
この実施形態において、銅合金素線12をダイ22の孔55内に挿入して銀合金素線13を突き合わせた状態で鍛造すると、銅合金素線12は、ダイ22の孔55およびパンチ42の孔43aとの隙間の範囲で拡径するが、その孔55および孔43aの内周面により、それ以上の拡径については拘束され、一方、銀合金素線13は孔43aの内周面まで拡径しながら銅合金素線12に接合され、図14に示すように、銅合金部17と銀合金部18とが接合した一次成形体15が形成される。
この一次成形体15においても、銅合金素線12の拡径が孔55および孔43aの内周面により制限された状態で鍛造されるので、その接合界面19を軸方向に直角でほぼ平坦に形成することができる。その後、上記二次成形工程によって、銅合金部17と銀合金部18との接合界面19を含む一端部を鍛造して鍔部3が形成される。
【実施例】
【0032】
複合接点の材料として、市販の純Ag系合金(a)、Ag−SnO2系合金(b)、Ag−SnO2−In2O3系合金(c)、Ag−ZnO系合金(d)、Ag−Ni系合金(e)からなる直径1.5mmの銀合金線材と、市販のタフピッチ銅(CDA番号:C11000)(p)、Cu−Cr系合金(CDA番号:C18200)(q)、Cu−Cr−Zr系合金(三菱伸銅株式会社 商品名:MZC1)(r)、Cu−P−Co−Ni−Sn―Zn系合金(三菱伸銅株式会社 商品名:HRSC)(s)、Cu−Fe−P系合金(三菱伸銅株式会社 商品名:TAMAC194)(t)、Cu−Mg系合金(三菱伸銅株式会社 商品名:MSP1)(u)からなる直径1.9mmの銅合金線材を用いた。これら銀合金線材と銅合金線材とを所定長さに切断して適宜に組み合わせ、本発明の製造方法によって冷間鍛造し、その後に350℃で30分の熱処理を施すことにより、接点部の直径が3.5mm、鍔部の厚みが0.5mm(接点部の厚みが0.15mm、銅合金の大径部の厚みが0.35mm)、足部の直径が2.0mm、足部の長さが2.0mmのリベット形状の複合接点を作製した。比較例として、図15に示すように一次成形工程での銀合金素線13の鍛造変形量を減らし、銀合金部18の直径が銅合金部17に対して小さい状態の一次成形体15とし、二次成形工程は本発明方法と同一の方法によって冷間鍛造した複合接点も作製した。この図15においても、説明の便宜のため実施形態と同一の符号を付している。
【0033】
これら複合接点につき、接点部と足部との間の剥離強度、接点としての耐久性を評価した。
剥離強度は、各複合接点をせん断応力試験機(APTEC製 TM2102D−IT )にセットし、接点部と足部との界面に平行に荷重を加えてせん断応力を測定し、剥離強度を測定した。
耐久性評価は、作製した複合接点を2個一組としてそれぞれ厚み1mmの銅製の台金板にかしめ固定し、これをASTM接点開閉試験機に取り付けて繰り返し開閉し、サイクル耐久性の評価を実施した。通電条件は、負荷電圧が直流12V、0.5Ωの抵抗負荷による定常電流24Aとし、接触力、開離力とも196mN(20gf)で、通電1秒+休止4秒(サイクルタイム5秒)で20万回まで繰り返し開閉した。
なお、接点開離タイミングから1秒以上、接点が開かない場合には溶着したと判断し、合計で10回溶着が起きた場合にはサイクル数が20万回に満たない場合でも試験終了とした。
【0034】
所定のサイクル数を終えることなく途中で試験終了したものも含め、耐久試験終了後にサンプル外観を観察するとともに、必要に応じてこれを樹脂に埋め込み断面を研磨して銀合金と銅合金の界面及びかしめ固定した銅板と接点の鍔部との界面を観察し、耐久性が良好な順に○、△、×で判定した。
その判定基準としては、銀合金と銅合金の界面に目立った剥離が起きておらず、かつ、接点の鍔部がかしめ固定された銅板に接触している、もしくはかしめ固定された初期状態から外観上ほとんど変化がない場合には◎、銀合金と銅合金の界面での剥離が若干見られる、もしくは鍔部の反り上がりが観察されるものの、所定のサイクル数終了まで溶着停止しなかったものを○、銀合金と銅合金の界面での剥離が見られるか、鍔部の反り上がりが発生しており、所定のサイクル数に達する前に溶着停止を起こしてしまったものを×とした。
【0035】
【表1】
【0036】
表1の結果から、実施例の接点はいずれも優れた剥離強度を有しており、また耐久性にも優れることが確認された。比較例は、剥離強度が低いことから、耐久性試験中に銀合金と銅合金の接合面での剥離が発生し、十分な耐久性を発揮することができなかった。
したがって、本発明の製造方法によれば、長期に亘り安定した接点性能を発揮する耐久性に優れた複合接点が得られることが確認された。
【0037】
また、実施例と比較例との断面を顕微鏡で確認したところ、図16(a)に示す比較例においては、軸心から半径方向外側に向かうにしたがって銀合金部の材料のフローラインが接合界面から外方に向けて大きく湾曲していることがわかる。これは、二次成形において、鍔部の外周部付近では、一次成形で得られた銀合金部と銅合金部との接合界面が拡径しきれず、一次成形の時点で、未接合状態であった銅合金部の外周部の端面(線材端面)に銀合金部の側面(線材外周面)が座屈するように接合しており、接合界面中心部と比較すると鍔部外周部近傍の接合強度は著しく弱い。
これに対して、同図(b)に示す実施例の場合は、比較例のものと比べるとフローラインが均質で、接合界面からの湾曲も比較例のものより小さい。これは、一次成形の時点で既に銅合金部と銀合金部とが全面で接合しており、この接合界面が二次成形によって均質に半径方向外方に延びているためであり、接合界面中心部から鍔部の外周部まで銀合金部と銅合金部とが強固に接合している。
【0038】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、一端部にのみ接点部が設けられているものとしたが、基部の端部にも銀合金を設けて、両端部に接点部を形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の複合接点は、リレー、スイッチ、電磁開閉器、ブレーカ等に用いられる電気接点として用いることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 複合接点
2 基部
3 鍔部
4 接点部
5 大径部
6 足部
7 接合界面
8 台金板
9 孔
11 成形金型
12 銅合金素線
13 銀合金素線
15 一次成形体
17 銅合金部
18 銀合金部
19 接合界面
21 開口部(孔)
22 ダイ
23 パンチ
24 パンチスリーブ
25 エジェクタ−ピン
26 空間部
33 パンチ
34 凹部
42 パンチスリーブ(スリーブ)
43a 大径孔部(孔)
43b ガイド孔部
44 空間部
51 エジェクタ−ピン
52 凹部
55 開口部(孔)
56 テーパー面
57 エジェクタ−ピン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
小径の基部の一端部に大径の鍔部が形成されるとともに、該鍔部の上面部を構成する銀合金からなる接点部と、該接点部の背面と接合した状態で前記鍔部の下面部を構成する大径部と前記小径の基部とを一体に形成した銅合金からなる足部とを有する複合接点を製造する方法であって、銅合金素線と、該銅合金素線よりも外径の小さい銀合金素線とを成形金型の孔内で突き合わせた状態で鍛造することにより、前記銅合金素線の拡径を前記孔の内周面により制限した状態で前記銀合金素線の外径を前記孔の内径まで拡げながら前記銀合金素線と前記銅合金素線とを接合して銀合金部と銅合金部とからなる一次成形体を形成する一次成形工程と、前記一次成形体の前記銀合金部、前記銀合金部と前記銅合金部との接合界面及び前記銅合金部を含む一端部を鍛造して前記鍔部を成形する二次成形工程とを有することを特徴とする複合接点の製造方法。
【請求項2】
前記孔は前記成形金型のダイの開口部により形成されており、前記一次成形工程は、前記孔内に、該孔の開口端部に空間部を残して前記銅合金素線を挿入状態に収容しておき、前記空間部内で前記銀合金素線と前記銅合金素線とを鍛造することを特徴とする請求項1記載の複合接点の製造方法。
【請求項3】
前記成形金型には、ダイの開口部を延長するように該ダイの開口部と同じ内径のスリーブが設けられるとともに、前記孔は前記スリーブにより形成されており、前記一次成形工程は、前記ダイの前記開口部内に前記銅合金素線の少なくとも基端部を挿入状態に収容しておき、前記スリーブの前記孔内で前記銀合金素線と前記銅合金素線とを鍛造することを特徴とする請求項1記載の複合接点の製造方法。
【請求項4】
前記孔は前記銅合金素線の外径とほぼ同じ内径に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合接点の製造方法。
【請求項5】
前記孔は前記銅合金素線の外径よりも大きくかつ前記大径部の外径より小さい内径に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合接点の製造方法。
【請求項1】
小径の基部の一端部に大径の鍔部が形成されるとともに、該鍔部の上面部を構成する銀合金からなる接点部と、該接点部の背面と接合した状態で前記鍔部の下面部を構成する大径部と前記小径の基部とを一体に形成した銅合金からなる足部とを有する複合接点を製造する方法であって、銅合金素線と、該銅合金素線よりも外径の小さい銀合金素線とを成形金型の孔内で突き合わせた状態で鍛造することにより、前記銅合金素線の拡径を前記孔の内周面により制限した状態で前記銀合金素線の外径を前記孔の内径まで拡げながら前記銀合金素線と前記銅合金素線とを接合して銀合金部と銅合金部とからなる一次成形体を形成する一次成形工程と、前記一次成形体の前記銀合金部、前記銀合金部と前記銅合金部との接合界面及び前記銅合金部を含む一端部を鍛造して前記鍔部を成形する二次成形工程とを有することを特徴とする複合接点の製造方法。
【請求項2】
前記孔は前記成形金型のダイの開口部により形成されており、前記一次成形工程は、前記孔内に、該孔の開口端部に空間部を残して前記銅合金素線を挿入状態に収容しておき、前記空間部内で前記銀合金素線と前記銅合金素線とを鍛造することを特徴とする請求項1記載の複合接点の製造方法。
【請求項3】
前記成形金型には、ダイの開口部を延長するように該ダイの開口部と同じ内径のスリーブが設けられるとともに、前記孔は前記スリーブにより形成されており、前記一次成形工程は、前記ダイの前記開口部内に前記銅合金素線の少なくとも基端部を挿入状態に収容しておき、前記スリーブの前記孔内で前記銀合金素線と前記銅合金素線とを鍛造することを特徴とする請求項1記載の複合接点の製造方法。
【請求項4】
前記孔は前記銅合金素線の外径とほぼ同じ内径に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合接点の製造方法。
【請求項5】
前記孔は前記銅合金素線の外径よりも大きくかつ前記大径部の外径より小さい内径に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合接点の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−30475(P2013−30475A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−139595(P2012−139595)
【出願日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【出願人】(594111292)三菱マテリアルシーエムアイ株式会社 (54)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【出願人】(594111292)三菱マテリアルシーエムアイ株式会社 (54)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】
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