説明

複合構築板

【課題】鋼板と合成樹脂の骨格部材との組合せにより重量を低減でき、現場の施工性や運搬の効率化を図ることができる複合構築板に関する。
【解決手段】鋼板製の箱形枠体20内に合成樹脂製のブロックを略隙間無く内蔵した複合構築板であって、上記ブロックが仕切壁によって多数の区画に仕切られた合成樹脂製の骨格部材6からなっており、該骨格部材と、骨格部材の開口面側を覆う鋼板製の被覆板7とが、凹凸係合により係合されて鋼板の枠内に固定されてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、覆工板や壁高欄などに用いる構築板であって、鋼板製の箱形枠体内に合成樹脂を内蔵した複合構築板に関する。
【背景技術】
【0002】
地下鉄工事天井部等の各種建設工事施工時の仮設道路、ダム工事や橋梁工事の桟橋路面、応急橋の床版、その他の重量物を支持する作業台として覆工板が利用されている。
また、道路および橋梁の路肩に設置する防護柵には、一般に鋼あるいはアルミの格子状高欄やコンクリート製の壁高欄が使用されている。
【0003】
従来の覆工板は、鋼板や形鋼を組み合わせて構成されている。
例えば、標準サイズの骨格部材(幅×高×長=1.0m×0.2m×2.0m)では、重量は400kg前後あり、剛性は断面二次モーメントで16,000m4程度である。
重量との関係で小型骨格部材を敷き詰めて路面を形成するために騒音の発生源になることが多く、走行車両による打撃音を緩和する目的で特殊舗装を施して使用するのが一般的である。
また、高規格道路の橋梁に設置されるコンクリート製の壁高欄は現場での場所打ち施工が一般的であり、自重が大きいことと施工期間が長いことが難点になっている。
最近ではコンクリートの打ち継ぎ目となる目地部から路面となる床版にクラックを誘発する事故が多発している。
そこで、例えば、実用新案登録第3013066号公報の覆工板では、GFRPを用いて厚板状に形成し、その肉厚中心に沿って多数の肉抜き孔を貫通形成した中芯材と、上下を覆うCFRP層とで構成した構造が開示されているが、GFRPだけで剛性を得るには、厚みを厚くする必要があり、効果的ではない。
また、特開昭58−26164号公報の建設用足場板では、縦長リブ状片をメッシュ状に形成した合成樹脂製芯材の表裏両面に金属製板材を重合させ、固定するためにリベットを用い、その頭部を滑止部とした構成が開示されているが、リベット止めするために、合成樹脂製芯材に筒部を形成し、上下の金属製板材の孔と整合する必要があり、構造が複雑で組立が繁雑となり、また表面を扁平に成形することもできないなどの欠点があった。
上記問題点は、覆工板や壁高欄などの鋼板製の構築板に共通する問題であった。
【特許文献1】実用新案登録第3013066号公報
【特許文献2】特開昭58−26164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は上記実情に鑑みてなされたもので、その主たる課題は、従来の覆工板のように鋼板だけのものに比べて、合成樹脂製の骨格部材を内蔵することで重量を大幅に軽減し、敷設工事に使用する重機の小型化を図ってハンドリングの向上を図り、施設現場への運搬車1台当たりの搬送量を増やして作業効率を向上させることができる複合構築板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1の発明では、
鋼板製の箱形枠体内に合成樹脂製のブロックを略隙間無く内蔵した複合構築板であって、
上記ブロックが仕切壁によって多数の区画に仕切られた合成樹脂製の骨格部材からなっており、該骨格部材と、骨格部材の開口面側を覆う鋼板製の被覆板とが、凹凸係合により係合されて鋼板製の箱形枠体内に固定されてなることを特徴とする。
請求項2の発明では、
骨格部材の開口面側に凹凸係合する一方の係合部が形成され、
上記被覆板の内壁面側に上記一方の係合部に対応する他方の係合部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の複合構築板。
また、請求項3の発明では、
前記被覆板の内壁面側に形成される他方の係合部が、被覆板の内壁面に固着される合成樹脂製のパネルの内壁面に形成された係合部であることを特徴とする。
更に、請求項4の発明では、
前記骨格部材の隣接する区画を仕切る仕切壁の壁面に開口部が形成されており、該開口部の縁部に沿って補強用の突出部が形成されていることを特徴とする。
また、請求項5の発明では、
前記骨格部材の中空内に、熱交換用の媒体が充填されていることを特徴とする。
請求項6の発明では、
前記請求項1記載の複合構築板が、覆工板からなっていることを特徴とする。
更に、請求項7の発明では、
前記請求項1に記載の複合構築板が、道路および橋梁の路肩に設置する防護柵用の防護板からなっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明の複合構築板は、鋼板製の箱形枠体内に多数の区画に仕切った合成樹脂製の骨格部材を内蔵し被覆板に掛け止めて前記箱形枠体内に固定したので、所定の剛性を確保しながら全体重量を大幅に軽減することができ、施工や運搬を容易に行うことができる。
また、前記合成樹脂製の骨格部材により鋼板にかかる荷重を緩衝することができるので、例えば覆工板として用いた場合に走行車両による振動や打撃を緩衝して騒音を減衰させることができる。
また、合成樹脂製の骨格部材を用いることで強度を保ちながら軽量化しうるので、例えば覆工板として用いた場合に、現場敷設に使用する重機の小型化が実現し、作業上のハンドリングが向上し、現場工事の工期の短縮に貢献できる。
また、工事現場への運送面ではトレーラー1台分の搬送量を従来より増大できる。
更に、骨格部材は中空部を有し、透孔部を介して連通するので、該中空部に熱交換用の媒体を流動可能に充填することができ、例えば積雪地域で凍結防止剤を使用することなく路面融雪を行うことができる。
また、複合構築板にアンカー部品を取り付けて、壁状に使用することで、軽量、施工容易度、床版クラック防止等の優位性を備えた防護柵として道路および橋梁の路肩設備に利用することができ、その他の各種用途に応じた利用が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
この複合構築板は、仕切壁によって多数の区画に仕切られた合成樹脂製の骨格部材を被覆板で凹凸係合させ、鋼板製の箱形枠体内に固定することで、軽量性と剛性と緩衝性を備えた複合構築板を実現した。
【実施例1】
【0008】
以下に、この発明の複合構築板を覆工板に適用した場合の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。
全体構造を図1から図3に示す覆工板1は、図示例の場合、矩形六面体からなっており、鋼板製の箱形枠体20内に多数の区画に仕切った合成樹脂製の骨格部材6を内蔵し腹材(中埋め材)として機能させる構成からなっている。
【0009】
[鋼板製の箱形枠体]
鋼板製の箱形枠体20は、本実施例の場合、中空の矩形六面体であって、骨格部材6の上下の開口面6a、6b側を覆うと共に掛止められる鋼板製の上下一対の被覆板7、4と、骨格部材6の周壁面を覆って、前記被覆面7、4と共に骨格部材6の外周を覆う鋼板製の周壁板2、3とからなっている。
【0010】
周壁板2、3は、前記上下に離間する一対の被覆板7と4の間の一方の側端面(図示例では長手方向)を覆う第1周壁板2と、これと直交する方向(短手方向)の側端面を覆う第2周壁板3とからなっており、本実施例ではそれぞれ断面アングル状に折り曲げ加工した鋼板からなっている。
【0011】
[骨格部材]
骨格部材6は、図5に明瞭なように、合成樹脂製のブロックであって、縦横に延びる仕切壁6A、6Bで略等間隔に仕切って平面から見て多数の平面視略正方形の区画となる柱状セル13からなる骨格構造からなっているので、軽量で且つ強度を高めることができる。
柱状セル13の断面形状は正方形、長方形、菱形などの格子形状、あるいはハニカム形状などの多角形状、その他の任意の幾何形状としてもよい。
【0012】
本実施例では、骨格部材6を用いることで、幅1.0m、高さ0.2m、長さ2.0mの標準サイズの覆工板1として、従来の剛性を確保しながら従来より全体重量を40%以上軽減することができる。
これにより、覆工板1の現場敷設に使用する重機の小型化が実現し、作業上のハンドリングの向上に貢献できる。
また、工事現場への運送面ではトレーラー1台分の搬送量を従来の覆工板より1.6倍以上に増大できることが確認された。
【0013】
[一方の係合部]
この骨格部材6は、開口面となる両面側で、縦横の仕切壁6A、6Bの交叉する個所6Cで所定の個所に、凹凸係合の一方の係合部となる円筒状の凹部10が形成されている。
この凹部10は角筒状その他任意の筒形状であってもよい。
この発明では上記係合部は、凹部10に代えて凸部であってもよい。
また、この係合部の配置は、図示例に限定されるものではなく、用途に応じて仕切壁6A、6Bの交叉個所6Cや中途個所に適宜に配置することができる。
【0014】
[透孔部]
また、骨格部材6は、その区画を仕切る仕切壁6A、6Bに、各柱状セル13間を連通する透孔部12が穿設されている。
この透孔部12は長手方向の開口縁部に沿って、仕切壁6A、6Bと直交する方向に補強リブ12aが両面側に突出している。
この発明では、補強リブを設けなくてもよく、更に仕切壁に前記透孔部を設けなくてもよい。
【0015】
本実施例では1つの柱状セル13が有する各壁面(格子状の場合は4面、ハニカム状の場合は6面)にそれそれ前記透孔部12を設けたことで、液状またはゲル状の蓄熱材その他の熱交換用の媒体の流入を可能にしている。
これにより覆工板1内が連続した中空構造を形成するので、中空部に液状またはゲル状の蓄熱材を注入すれば、積雪寒冷地における道路の融雪システムに利用することができる。
【0016】
[被覆板]
被覆板7、4は、覆工板1の箱形枠部の上面および下面となるもので、図7に示すように、骨格部材6の開口面側の上下を覆う一対の矩形プレートからなっている。
この上面および下面の被覆板7、4には、前記骨格部材6に形成した一方の係合部としての凹部10に対応する他方の係合部としての突起部9が一体的に形成される。
前述のように、一方の係合部を突起部とすれば、被覆板に形成される他方の係合部には凹部が形成される。
【0017】
[突起部]
本実施例で突起部9は、図4に示すように、上面および下面の被覆板7、4の各内壁面側に、接着剤などで固着または接合される突起形成板5a、5bに形成されている。
即ち、突起部9は、突起形成板5a、5bのプレート本体上に一体に突設されて、前記凹部10に嵌合する筒体状の突起からなっている。
突起部9は、図4(a)に示すように、筒体の外周壁に筒体を中心にして放射状に突出する4本の圧潰リブ11を有しており、該圧潰リブ11の先端は嵌合をガイドするために先端に向かって幅狭となるように切欠が形成されている。
【0018】
これにより、覆工板1の箱形枠部20の上面となる被覆板7と下面となる被覆板4は、それぞれその鋼板の内壁面に合成樹脂製の突起形成板5a、5bを接着した複合部材となっている。
そして、前記突起部9は、骨格部材6の凹部10に打ち込み挿入して両者を連結する。
打ち込み挿入時には、突起部9の筒体に沿って設けられた圧潰リブ11が圧潰することで凹部10との連結度を高めると共に両者の寸法誤差を吸収することができる。
【0019】
本実施例では、合成樹脂製の突起形成板5a、5bのプレート本体を前記被覆板7、4に固着して各被覆板7、4に突起部9を形成する構成を例示したが、この発明では被覆板7、4に金属製または合成樹脂製の突起部のみを固着し、あるいは鋼板製の被覆板7、4に突起部を一体に形成する構成などであってもよい。
【0020】
[覆工板の組立方法]
図7に示すように、前記アングル状の第1および第2周壁板2、3に、前記突起形成板5bを固着した下面の被覆板4を溶接して鋼板製の箱形枠体20の上面が開口した受箱20aを組み立てる。
次ぎに、プラスチック製の骨格部材6を、該骨格部材10の下面に配置された凹部10に、受箱20aの下面となる被覆板4の突起部9を打ち込み挿入して前記受箱内に骨格部材6を収納する。
本実施例では凹部10内に接着剤を注入しておくことで、突起部9を凹部10に係合すると共に固着することができる。
【0021】
次いで、骨格部材10の上面に配置された凹部10に、箱形枠体20の上面となる被覆板7の突起部9を打ち込み挿入する。
そして、前記受箱20aを構成する第1および第2周壁板2、3に前記上面となる被覆板7の外周を溶接して、骨格部材6を内蔵した箱形枠体20が組み立てられる。
更に、覆工板1として用いる場合は、前記上面となる被覆板7上に薄層舗装8が舗設される。
【実施例2】
【0022】
図8は複合構築板を壁高欄14に適用した場合の異なる実施例を示す。
壁高欄本体14aに用いる複合構築板は、前記実施例1の覆工板1と同様であるのでその説明を省略する。
そして、覆工板1の長手方向の周壁板2の一方を下側に配置すると共に、路床にアンカーする部材15を取り付ける。
これを道路または橋梁の路肩に設置すると共に、上側になった他方の周壁板2に手摺り部材16を取り付けることで壁高欄14として用いることができる。
【0023】
上記実施例では覆工板と壁高欄の場合を例示したが、この発明は同様の鋼板を用いた構築材として種々用途に適用することができる。
その他、要するにこの発明の要旨を変更しない範囲で種々設計変更しうること勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明を覆工板に適用した場合の内部構造を説明するために一部を切り欠いた平面図である。
【図2】図1のA断面とB断面を半分づつ説明する参考断面図である。
【図3】図1のC断面とD断面を半分づつ説明する参考断面図である。
【図4】(a)は突起部の断面図、(b)は突起部と凹部の結合状態を説明する側断面図、(c)は凹部の断面図である。
【図5】(a)は骨格部材の部分断面図、(b)は部分斜視図である。
【図6】(a)図5(a)のE断面を示す断面図、(b)は図5(a)のF断面を示す断面図である。
【図7】覆工板の組立状態を示す説明図である。
【図8】壁高欄に適用した場合の斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
1 覆工板
2 長手方向の周壁板
3 短手方向の周壁板
4 下面の被覆板
5a 突起形成板(下面)
5b 突起形成板(上面)
6 骨格部材
7 上面の被覆板
8 薄層舗装
9 突起部
10 凹部
11 圧潰リブ
12 透孔部
13 柱状セル
14 壁高欄
15 路床にアンカーする部材
16 手摺り設備
20 箱形枠体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板製の箱形枠体内に合成樹脂製のブロックを略隙間無く内蔵した複合構築板であって、
上記ブロックが仕切壁によって多数の区画に仕切られた合成樹脂製の骨格部材からなっており、
該骨格部材と、骨格部材の開口面側を覆う鋼板製の被覆板とが、凹凸係合により係合されて前記箱形枠体内に固定されてなることを特徴とする複合構築板。
【請求項2】
骨格部材の開口面側に凹凸係合する一方の係合部が形成され、
上記被覆板の内壁面側に上記一方の係合部に対応する他方の係合部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の複合構築板。
【請求項3】
被覆板の内壁面側に形成される他方の係合部が、被覆板の内壁面に固着される合成樹脂製のパネルの内壁面に形成された係合部であることを特徴とする請求項2に記載の複合構築板。
【請求項4】
骨格部材の隣接する区画を仕切る仕切壁の壁面に開口部が形成されており、該開口部の縁部に沿って補強用の突出部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載
【請求項5】
骨格部材の中空内に、熱交換用の媒体が充填されていることを特徴とする請求項1に記載の複合構築板。
【請求項6】
請求項1記載の複合構築板が、覆工板からなっていることを特徴とする複合構築板。
【請求項7】
請求項1に記載の複合構築板が、道路および橋梁の路肩に設置する防護柵用の防護板からなっていることを特徴とする複合構築板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−88742(P2008−88742A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−272257(P2006−272257)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【出願人】(390007788)松尾橋梁株式会社 (3)
【Fターム(参考)】