説明

複数クラッチ式変速機の制御装置

【課題】 クラッチの耐久性の低下を抑制する。
【解決手段】 入力軸に連結される複数の伝達クラッチと、該複数の伝達クラッチのクラッチ出力軸と変速機出力軸とを複数の変速クラッチの断続を切り換えることにより選択的に連結する複数の歯車対とを備え、クラッチ出力軸と変速機出力を連結する歯車対を切り換え、変速機出力軸に連結されたクラッチ出力軸に連なる伝達クラッチを係合し、他の動力伝達用クラッチを解放するように複数の動力伝達用クラッチを係合・解放して変速を行い、前記伝達クラッチの耐久性を判断する耐久性判断手段(ステップS1〜S2)と、前記耐久性判断手段による判断結果に基づいて前記変速制御を行う変速段変更手段(ステップS4およびS5)とを有することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数のクラッチの係合・解放を切り換えることにより、変速機の変速を実行するように構成された変速機の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
変速機を制御してクリープトルクを発生させる場合、変速機を構成するクラッチを半係合状態にしてクリープトルクを発生させることが考えられる。このような、クラッチが半係合状態でクリープトルクを発生させる場合、クラッチの温度の上昇を抑制し、耐久性の低下を防止するために、クラッチのスリップから温度を求め、その温度に応じてクラッチの最大トルク容量を求めることが考えられる。そして、このようなクラッチの温度に応じて伝達可能な最大クリープトルクが決定されるように構成されたトルク伝達システムの制御装置が特許文献1に記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、シフトアップ時のトルクの落ち込みを抑制することを目的として、シフトアップ時にエンジンのトルクを増大させるように構成されたパワートレインの制御装置が記載されている。
【0004】
さらに、特許文献3には、シフトダウン時の加速の過度の上昇を抑制することを目的として、シフトダウン時にエンジンのトルクを低下させるように構成された自動変速機の変速制御装置が記載されている。
【特許文献1】特開平10ー325423号公報
【特許文献2】特開平5ー86918号公報
【特許文献3】特開平5−147458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の制御装置によれば、クラッチの温度に応じて、伝達可能な最大クリープトルクが決定されるので、クラッチの温度の上昇を抑制し、耐久性を向上させることができる。
【0006】
しかし、特許文献1の発明では、車両のクリープ状態、すなわちクラッチの半係合状態が長く続くと、クラッチの温度が上昇しすぎる場合があり、このような場合、クラッチの温度の許容範囲を超える可能性があるので、クラッチの半係合状態を終了させる必要がある。したがって、クリープトルクを継続して伝達させることができない場合がある。
【0007】
この発明は、上記の技術的課題を解決するためになされたものであり、クリープトルクの変動を抑制しつつ、クラッチの耐久性の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達するためこの発明は、クラッチの半係合状態を所定時間ごとに切り換えることを特徴とするものである。より具体的には請求項1の発明は、変速機入力軸に連結される複数の動力伝達用クラッチと、該複数の動力伝達用クラッチのクラッチ出力軸と変速機出力軸とを複数の変速用クラッチの断続を切り換えることにより選択的に連結する複数の歯車対とを備え、クラッチ出力軸と変速機出力軸を連結する歯車対を切り換え、変速機出力軸に連結されたクラッチ出力軸に連なる動力伝達用クラッチを係合し、他の動力伝達用クラッチを解放するように複数の動力伝達用クラッチを係合・解放して変速を行う複数クラッチ式変速機の制御装置において、前記動力伝達用クラッチの耐久性を判断する耐久性判断手段と、前記耐久性判断手段による判断結果に基づいて前記変速制御を行う変速段変更手段とを有することを特徴とする制御装置である。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1において、前記変速段変更手段は前記耐久性判断手段により、前記動力伝達用クラッチの耐久性の低下が予測される場合に前記変速制御を行うことを特徴とする制御装置である。
【0010】
そして、請求項3の発明は、請求項2において、前記複数クラッチ式変速機の制御装置は、前記動力伝達用クラッチを半係合状態とすることにより前記動力伝達用クラッチのクラッチ入力軸とクラッチ出力軸との間に差回転を発生させるスリップ発生手段を更に有し、前記耐久性判断は前記スリップ発生手段により判断されることを特徴とする制御装置である。
【0011】
さらに、請求項4の発明は、請求項3において、前記耐久性判断手段は、前記差回転が所定時間継続して発生した場合に、前記動力伝達用クラッチの耐久性の低下を予測することを特徴とする制御装置である。
【0012】
そして、請求項5の発明は、請求項2において、前記耐久性判断手段は、前記動力伝達用クラッチの温度が所定値以上である場合に、前記動力伝達用クラッチの耐久性の低下を予測することを特徴とする制御装置である。
【0013】
また、請求項6の発明は、請求項1において、前記変速段変更手段は、前記耐久性判断手段により、前記動力伝達用クラッチの耐久性が低下したと判断された場合に前記変速制御を行うことを特徴とする制御装置である。
【0014】
さらに、請求項7の発明は、請求項6において、前記複数クラッチ式変速機の制御装置は、前記動力伝達用クラッチを半係合状態とすることにより前記動力伝達用クラッチのクラッチ入力軸とクラッチ出力軸との間に差回転を発生させるスリップ発生手段を更に有し、前記耐久性判断は前記スリップ発生手段により判断されることを特徴とする制御装置である。
【0015】
また、請求項8の発明は、請求項7において、前記耐久性判断手段は、前記差回転が所定時間継続して発生した場合に、前記動力伝達用クラッチの耐久性が低下したと判断することを特徴とする制御装置である。
【0016】
さらに、請求項9の発明は、請求項6において、前記耐久性判断手段は、前記動力用クラッチの温度が所定値以上である場合に、前記動力伝達用クラッチの耐久性が低下したと判断することを特徴とする制御装置である。
【0017】
そして、請求項10の発明は、請求項1ないし9のいずれかにおいて、現在の変速段が所定時間継続したか否かを判断する変速段継続判断手段と、前記変速段変更手段は、前記変速段継続判断手段により、現在の変速段が所定時間継続していると判断された場合に、前記変速制御をおこなうことを特徴とする制御装置である。
【0018】
また、請求項11の発明は、請求項1ないし10のいずれかにおいて、前記変速制御とは、前記変速制御開始時の変速段が最も変速比の大きい変速段である場合にはアップシフトをおこない、前記変速制御開始時の変速段が最も変速比の大きい変速段以外の変速段である場合には、ダウンシフトをおこなうことを特徴とする制御装置である。
【0019】
さらに、請求項12の発明は、請求項1ないし11のいずれかにおいて、前記変速制御開始時に、前記変速制御の内容がアップシフトである場合には、前記原動機のトルクを増大させるとともに、前記変速制御の内容がダウンシフトである場合には、前記変速機入力軸に連結された原動機のトルクを増大させるとともに、前記変速制御の内容がダウンシフトである場合には、前記原動機のトルクを低下させることを特徴とする制御装置である。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明によれば、動力伝達用クラッチの耐久性が低下した場合もしくは低下が予測される場合には、変速制御がおこなわれる。したがって、動力伝達用クラッチのそれ以上の耐久性の低下を抑制することができる。
【0021】
請求項2の発明によれば、動力伝達用クラッチの耐久性の低下が予測される場合には、変速制御がおこなわれる。したがって、動力伝達用クラッチのそれ以上の耐久性の低下を抑制することができる。
【0022】
また、請求項3の発明によれば、動力伝達用クラッチを半係合状態とすることでスリップが発生している場合には、耐久性の予測がおこなわれ、その予測結果に基づいて変速制御がおこなわれる。したがって、動力伝達用クラッチのそれ以上の耐久性の低下を抑制することができる。
【0023】
さらに、請求項4の発明によれば、動力伝達用クラッチの差回転状態、すなわちスリップ状態が所定時間継続して発生した場合に、前記動力伝達用クラッチの耐久性が低下すると予測される。したがって、動力伝達用クラッチのそれ以上の耐久性の低下を抑制することができる。
【0024】
請求項5の発明によれば、動力伝達用クラッチの温度が所定値以上であると判断された場合には、前記動力伝達クラッチの耐久性が低下すると予測される。したがって、動力伝達用クラッチのそれ以上の耐久性の低下を抑制することができる。
【0025】
また、請求項6の発明によれば、クラッチの耐久性が低下していると判断された場合に、変速制御がおこなわれる。したがって、同一のクラッチで長時間スリップが行われることを防止し、クラッチの耐久性の低下を抑制することができる。
【0026】
また、請求項7の発明によれば、動力伝達用クラッチを半係合状態とすることでスリップが発生している場合には、耐久性の判断がおこなわれ、その判断結果に基づいて変速制御がおこなわれる。したがって、動力伝達用クラッチのそれ以上の耐久性の低下を抑制することができる。
【0027】
さらに、請求項8の発明によれば、動力伝達用クラッチの差回転状態、すなわちスリップ状態が所定時間継続して発生した場合に、前記動力伝達用クラッチの耐久性が低下していると判断される。したがって、動力伝達用クラッチのそれ以上の耐久性の低下を抑制することができる。
【0028】
請求項9の発明によれば、動力伝達用クラッチの温度が所定値以上であると判断された場合には、前記動力伝達クラッチの耐久性が低下していると判断される。したがって、動力伝達用クラッチのそれ以上の耐久性の低下を抑制することができる。
【0029】
請求項10の発明によれば、現在の変速段が所定時間継続している場合、変速切換がおこなわれる。したがって、同一のクラッチで長時間スリップが行われることを防止し、クラッチの耐久性の低下を抑制することができる。
【0030】
さらに、請求項11の発明によれば、現在の変速段が最も変速比の大きな変速段である場合には、アップシフトが行われ、変速段が最も変速比の大きな変速段以外であれば、ダウンシフトがおこなわれる。したがって、同一のクラッチで長時間スリップが行われることを防止し、クラッチの耐久性の低下を抑制することができる。
【0031】
そして、請求項12の発明によれば、変速制御がアップシフトであれば、原動機のトルクを増加させ、変速制御のダウンシフトであれば原動機のトルクを低下させる。したがって、変速に伴うトルクの増減を補正する結果となるので、変速に伴うクリープトルクの変動を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
つぎに、この発明を具体例に基づいて説明する。図2には、この発明の一実施例である車両Veのドライブトレーンおよび制御系統の一例が、模式的に示されている。まず、車両Veには駆動力源としてのエンジン1が設けられており、エンジン1と車輪2との間に形成された動力伝達経路に変速機3が設けられている。この変速機3は、第1クラッチ出力軸4および第2クラッチ出力軸5および第1変速機出力軸6および第2変速機出力軸7を有している。第2クラッチ出力軸5は円筒状に構成されており、第2クラッチ出力軸5の内部に第1クラッチ出力軸4が配置されている。また、第1クラッチ出力軸4と第2クラッチ出力軸5とが同軸上に配置され、第1クラッチ出力軸4と第2クラッチ出力軸5とが相対回転可能となるように構成されている。さらに、第1クラッチ出力軸4および第2クラッチ出力軸5に対して、第1変速機出力軸6が平行に配置されているとともに、第1変速機出力軸6と第2変速機出力軸7とが平行に配置されている。
【0033】
また、変速機3は、前進段を設定するために、第1速用歯車対8ないし第6速用歯車対13を有している。まず、第1速用歯車対8は、第1速ドライブギヤ14と、第1速ドライブギヤ14に噛合された第1速ドリブンギヤ15とにより構成されている。第1速ドライブギヤ14は第1クラッチ出力軸4に設けられており、第1速ドライブギヤ14と第1クラッチ出力軸4とが一体回転するように構成されている。これに対して、第1速ドリブンギヤ15は第1変速機出力軸6に設けられており、第1速ドリブンギヤ15と第1変速機出力軸6とが相対回転可能となるように構成されている。
【0034】
つぎに、第2速用歯車対9は、第2速ドライブギヤ16と、第2速ドライブギヤ16に噛合された第2速ドリブンギヤ17とにより構成されている。第2速ドライブギヤ16は第2クラッチ出力軸5に設けられており、第2速ドライブギヤ16と第2クラッチ出力軸5とが一体回転するように構成されている。これに対して、第2速ドリブンギヤ17は第1変速機出力軸6に設けられており、第2速ドリブンギヤ17と第1変速機出力軸6とが相対回転可能となるように構成されている。
【0035】
さらに、第3速用歯車対10は、第3速ドライブギヤ18と、第3速ドライブギヤ18に噛合された第3速ドリブンギヤ19とにより構成されている。第3速ドライブギヤ18は第1クラッチ出力軸4に設けられており、第3速ドライブギヤ18と第1クラッチ出力軸4とが相対回転可能となるように構成されている。これに対して、第3速ドリブンギヤ19は第1変速機出力軸6に設けられており、第3速ドリブンギヤ19と第1変速機出力軸6とが一体回転するように構成されている。
【0036】
さらに、第4速用歯車対11は、第4速ドライブギヤ20と、第4速ドライブギヤ20に噛合された第4速ドリブンギヤ21とにより構成されている。第4速ドライブギヤ20は第2クラッチ出力軸5に設けられており、第4速ドライブギヤ20と第2クラッチ出力軸5とが相対回転可能となるように構成されている。これに対して、第4速ドリブンギヤ21は第1変速機出力軸6に設けられており、第4速ドリブンギヤ21と第1変速機出力軸6とが一体回転するように構成されている。
【0037】
さらに、第5速用歯車対12は、第5速ドライブギヤ22と、第5速ドライブギヤ22に噛合された第5速ドリブンギヤ23とにより構成されている。第5速ドライブギヤ22は第1クラッチ出力軸4に設けられており、第5速ドライブギヤ22と第1クラッチ出力軸4とが相対回転可能となるように構成されている。これに対して、第5速ドリブンギヤ23は第1変速機出力軸6に設けられており、第5速ドリブンギヤ23と第1変速機出力軸6とが一体回転するように構成されている。
【0038】
さらに、第6速用歯車対13は、第6速ドライブギヤ24と、第6速ドライブギヤ24に噛合された第6速ドリブンギヤ25とにより構成されている。第6速ドライブギヤ24は第2クラッチ出力軸5に設けられており、第6速ドライブギヤ24と第2クラッチ出力軸5とが相対回転可能となるように構成されている。これに対して、第6速ドリブンギヤ25は第1変速機出力軸6に設けられており、第6速ドリブンギヤ25と第1変速機出力軸6とが一体回転するように構成されている。
【0039】
さらに、変速機3は、後進段を設定するための後進用歯車対26を有している。後進用歯車対26は、後進ドライブギヤ27および後進ドリブンギヤ28と、後進ドライブギヤ28および後進ドリブンギヤ28に噛合された後進アイドラギヤ29とにより構成されている。後進ドライブギヤ27は第2クラッチ出力軸5に設けられており、後進ドライブギヤ27と第2クラッチ出力軸5とが一体回転するように構成されている。これに対して、後進ドリブンギヤ28は第1変速機出力軸6に設けられており、後進ドリブンギヤ28と第1変速機出力軸6とが相対回転可能となるように構成されている。
【0040】
そして、各変速用歯車対に対応して複数の変速用クラッチが設けられている。この変速用クラッチは、変速用歯車対を構成する各ギヤと、各軸との間における動力伝達状態を制御する装置である。この実施例においては、変速用クラッチとして同期装置(シンクロメッシュ機構)を用いた場合を説明する。まず、第1速用歯車対8に対応する第1クラッチ30は、第1変速機出力軸6に設けられている。第1クラッチ30は、第1変速機出力軸6と一体回転し、かつ、第1変速機出力軸6の軸線方向に動作可能なスリーブ31と、第1速ドリブンギヤ15と一体回転するアウターギヤ32と、スリーブ31と一体回転し、かつ、スリーブ31とともに軸線方向に動作可能なシンクロナイザーリング(図示せず)およびシンクロナイザーキー(図示せず)とを有している。スリーブ31にはインナーギヤ(図示せず)が形成されており、スリーブ31が軸線方向に動作することにより、アウターギヤ32と、スリーブ31のインナーギヤとの係合・解放がおこなわれるように構成されている。このアウターギヤ32と、スリーブ31のインナーギヤとが係合された場合は、第1クラッチ出力軸4と第1変速機出力軸6との間で、第1速用歯車対8を経由させて動力伝達をおこなうことが可能となる。これに対して、スリーブ31が軸線方向で中立位置に動作されて、スリーブ31のインナーギヤと、アウターギヤ32とが解放された場合は、第1クラッチ出力軸4と第1変速機出力軸6との間で、第1速用歯車対8を経由させて動力伝達をおこなうことが不可能となる。
【0041】
前記第2速用歯車対9に対応する第2クラッチ33は、第1変速機出力軸6に設けられている。第2クラッチ33は、第1変速機出力軸6と一体回転し、かつ、第1変速機出力軸6の軸線方向に動作可能なスリーブ34と、第2速ドリブンギヤ17と一体回転するアウターギヤ35と、スリーブ34と一体回転し、かつ、スリーブ34とともに軸線方向に動作可能なシンクロナイザーリング(図示せず)およびシンクロナイザーキー(図示せず)とを有している。スリーブ34にはインナーギヤ(図示せず)が形成されており、スリーブ34が軸線方向に動作することにより、アウターギヤ35とインナーギヤとの係合・解放がおこなわれるように構成されている。このアウターギヤ35と、スリーブ34のインナーギヤとが係合された場合は、第2クラッチ出力軸5と第1変速機出力軸6との間で、第2速用歯車対9を経由させて動力伝達をおこなうことが可能となる。これに対して、アウターギヤ35と、スリーブ34のインナーギヤとが解放された場合は、第2クラッチ出力軸5と第1変速機出力軸6との間で、第2速用歯車対9を経由させて動力伝達をおこなうことが不可能となる。
【0042】
また、この第2クラッチ33は後進用歯車対26に対応するクラッチとしての機能を兼備している。すなわち、後進用ドリブンギヤ28と一体回転するアウターギヤ36が設けられており、アウターギヤ36に対応するシンクロナイザーリング(図示せず)が設けられている。そして、スリーブ34が軸線方向に動作することにより、アウターギヤ36とスリーブ34のインナーギヤとの係合・解放がおこなわれるように構成されている。このアウターギヤ36とスリーブ34のインナーギヤとが係合された場合は、第2クラッチ出力軸5と第1変速機出力軸6との間で、後進用歯車対26を経由させて動力伝達をおこなうことが可能となる。これに対して、アウターギヤ36とスリーブ34のインナーギヤとが解放された場合は、第2クラッチ出力軸5と第1変速機出力軸6との間で、後進用歯車対26を経由させて動力伝達をおこなうことが不可能となる。なお、スリーブ34を軸線方向で中立位置に移動させると、スリーブ34のインナーギヤを、2つのアウターギヤ35,36から共に解放させることは可能であるが、スリーブ34のインナーギヤが軸線方向のいずれの位置にある場合でも、2つのアウターギヤ35,36のいずれか一方にのみ噛合する。
【0043】
前記第3速用歯車対10に対応する第3クラッチ37は、第1クラッチ出力軸4に設けられている。第3クラッチ37は、第1クラッチ出力軸4と一体回転し、かつ、第1クラッチ出力軸4の軸線方向に動作可能なスリーブ38と、第3速ドライブギヤ18と一体回転するアウターギヤ39と、スリーブ38と一体回転し、かつ、スリーブ38とともに軸線方向に動作可能なシンクロナイザーリング(図示せず)およびシンクロナイザーキー(図示せず)とを有している。スリーブ38にはインナーギヤ(図示せず)が形成されており、スリーブ38が軸線方向に動作することにより、アウターギヤ39とスリーブ38のインナーギヤとの係合・解放がおこなわれるように構成されている。このアウターギヤ38とスリーブ38のインナーギヤとが係合された場合は、第1クラッチ出力軸4と第1変速機出力軸6との間で、第3速用歯車対10を経由させて動力伝達をおこなうことが可能となる。これに対して、アウターギヤ39とスリーブ38のインナーギヤとが解放された場合は、第1クラッチ出力軸4と第1変速機出力軸6との間で、第3速用歯車対10を経由させて動力伝達をおこなうことが不可能となる。
【0044】
また、この第3クラッチ37は第5速用歯車対12に対応するクラッチとしての機能を兼備している。すなわち、第5速ドライブギヤ22と一体回転するアウターギヤ40が設けられており、アウターギヤ40に対応するシンクロナイザーリング(図示せず)が設けられている。そして、スリーブ38が軸線方向に動作することにより、アウターギヤ40とスリーブ38のインナーギヤとの係合・解放がおこなわれるように構成されている。このアウターギヤ40とスリーブ38のインナーギヤとが係合された場合は、第1クラッチ出力軸4と第1変速機出力軸6との間で、第5速用歯車対12を経由させて動力伝達をおこなうことが可能となる。これに対して、アウターギヤ40とスリーブ38のインナーギヤとが解放された場合は、第1クラッチ出力軸4と第1変速機出力軸6との間で、第5速用歯車対12を経由させて動力伝達をおこなうことが不可能となる。なお、スリーブ38を軸線方向で中立位置に移動させると、スリーブ38のインナーギヤを、2つのアウターギヤ39,40から共に解放させることは可能であるが、スリーブ38のインナーギヤが軸線方向のいずれの位置にある場合でも、2つのアウターギヤ39,40のいずれか一方にのみ噛合する。
【0045】
前記第4速用歯車対11に対応する第4クラッチ41は、第2クラッチ出力軸5に設けられている。第4クラッチ41は、第2クラッチ出力軸5と一体回転し、かつ、第2クラッチ出力軸5の軸線方向に動作可能なスリーブ42と、第4速ドライブギヤ20と一体回転するアウターギヤ43と、スリーブ42と一体回転し、かつ、スリーブ42とともに軸線方向に動作可能なシンクロナイザーリング(図示せず)およびシンクロナイザーキー(図示せず)とを有している。スリーブ42にはインナーギヤ(図示せず)が形成されており、スリーブ42が軸線方向に動作することにより、アウターギヤ43とスリーブ42のインナーギヤとの係合・解放がおこなわれるように構成されている。このアウターギヤ43とスリーブのインナーギヤとが係合された場合は、第2クラッチ出力軸5と第1変速機出力軸6との間で、第4速用歯車対11を経由させて動力伝達をおこなうことが可能となる。これに対して、アウターギヤ43とスリーブ42のインナーギヤとが解放された場合は、第2クラッチ出力軸5と第1変速機出力軸6との間で、第4速用歯車対11を経由させて動力伝達をおこなうことが不可能となる。
【0046】
また、この第4クラッチ41は第6速用歯車対13に対応するクラッチとしての機能を兼備している。すなわち、第6速ドライブギヤ24と一体回転するアウターギヤ44が設けられており、アウターギヤ44に対応するシンクロナイザーリング(図示せず)が設けられている。そして、スリーブ42が軸線方向に動作することにより、アウターギヤ44とスリーブ42のインナーギヤとの係合・解放がおこなわれるように構成されている。このアウターギヤ44とスリーブ42のインナーギヤとが係合された場合は、第2クラッチ出力軸5と第1変速機出力軸6との間で、第6速用歯車対13を経由させて動力伝達をおこなうことが可能となる。これに対して、アウターギヤ44とスリーブ42のインナーギヤとが解放された場合は、第2クラッチ出力軸5と第1変速機出力軸6との間で、第6速用歯車対13を経由させて動力伝達をおこなうことが不可能となる。なお、スリーブ42を軸線方向で中立位置に動作させると、スリーブ42のインナーギヤを、2つのアウターギヤ43,44から共に解放させることは可能であるが、スリーブ42のインナーギヤが軸線方向のいずれの位置にある場合でも、2つのアウターギヤ43,44のいずれか一方にのみ噛合する。
【0047】
一方、前記第1変速機出力軸6と一体回転するドライブギヤ45と、前記第2変速機出力軸7と一体回転するドリブンギヤ46とが噛合されている。さらに、変速機3は、エンジン1に接続される入力軸47を有している。また、第1クラッチ出力軸4と入力軸47との間における動力伝達状態を制御する第1切り換えクラッチC1と、第2クラッチ出力軸5と入力軸47との間における動力伝達状態を制御する第2切り換えクラッチC2とが設けられている。この第1切り換えクラッチC1および第2切り換えクラッチC2としては、例えば、摩擦式クラッチ、より具体的には湿式クラッチを用いていることが可能である。つまり、第1切り換えクラッチC1および第2切り換えクラッチC2を構成するプレートやディスクが、潤滑油により潤滑および冷却される。この第1切り換えクラッチC1,第2切り換えクラッチC2は、別々に係合圧もしくはトルク容量を制御可能に構成された、いわゆるツインクラッチである。
【0048】
一方、前記エンジン1には内燃機関および外燃機関が含まれるが、この実施例では、内燃機関を用いている場合について説明する。内燃機関としては、例えば、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジン、メタノールエンジンなどを用いることが可能である。この実施例では、エンジン1としてガソリンエンジンが用いられている場合について説明する。このエンジン1は、電子スロットルバルブ、燃料噴射量制御装置、点火時期制御装置などを有する公知のものである。さらに、車両Veにはブレーキ装置(図示せず)が設けられている。このブレーキ装置は、乗員により操作されるブレーキペダル、および車輪2に設けられたホイールシリンダなどにより構成されている。そして、ブレーキペダルの操作に応じてホイールシリンダの油圧が制御されて、車輪2に対する制動力が調整される。
【0049】
つぎに、車両Veの制御系統について説明すると、第1切り換えクラッチC1および第2切り換えクラッチC2および第1クラッチ30ないし第4クラッチ41を、それぞれ別々に制御することの可能なアクチュエータが設けられている。この実施例では、アクチュエータとして油圧アクチュエータ48が用いられている。つまり、第1切り換えクラッチC1および第2切り換えクラッチC2および第1クラッチ30ないし第4クラッチ41は、いずれも油圧制御式のクラッチであり、各クラッチに対応して油圧室(図示せず)が形成されているととともに、各油圧室の油圧が油圧アクチュエータ48により制御されるように構成されている。つまり、第1切り換えクラッチC1および第2切り換えクラッチC2の係合圧は、油圧アクチュエータ48により制御される。この油圧アクチュエータ48は、油圧回路およびソレノイドバルブなどを有する公知の構造を有している。
【0050】
また、車両Veの全体を制御する総合電子制御装置49が設けられているとともに、エンジン1を制御するエンジン用電子制御装置50が設けられている。さらに、変速機3を制御するために乗員が操作するシフト操作装置51が設けられているとともに、変速機3における変速状態を表示するシフト状態表示装置52が設けられている。シフト操作装置51は、乗員が手で操作する構造のものまたは足で操作する構造のもののいずれでもよい。シフト操作装置51の操作により、前進段(ドライブポジション)、後進段(リバースポジション)、ニュートラルポジション、パーキングポジションなどを選択的に切り換え可能である。さらに、シフト状態表示装置52は、ランプ点灯、音声表示、ディスプレイ表示などの少なくとも1つの表示システムにより、変速機3の変速状態を出力する構成となっている。また、潤滑油および油圧アクチュエータ48の作動油の温度を検出する油温センサ520および各クラッチの軸線方向におけるスリーブの位置を検知するスリーブ位置センサ53が設けられている。
【0051】
前記エンジン用電子制御装置50には、各種のセンサやスイッチの信号が入力される。このエンジン1用電子制御装置には、例えば、エンジン1回転速度、吸入空気量、吸入空気温度、アクセル開度、スロットル開度、冷却水温、エンジン吹き上げ禁止スイッチ54などの信号が入力される。エンジン吹き上げ禁止スイッチ54は、シフト操作装置51に設けたり、シフト操作装置51とは別にインストルメントパネルなどに設けることが可能である。エンジン用電子制御装置50からは、エンジン1の電子スロットルバルブの開度、吸入空気量、点火時期、燃料噴射量などを制御する信号が出力される。
【0052】
前記総合電子制御装置49には、各種のセンサやスイッチの信号が入力される。総合電子制御装置49には、例えば、第1クラッチ出力軸4の回転速度センサ55、第2クラッチ出力軸5の回転速度センサ56、第2変速機出力軸7の回転速度センサ57、潤滑油および作動油の温度、切り換えクラッチC1,C2の係合面の温度を検出するクラッチ温度センサ58、ブレーキペダルの操作状態、ナビゲーションシステムで得られる道路状況、シフト操作装置51の操作状態、道路勾配センサ、加速度センサなどの信号が入力される。総合電子制御装置49からは、油圧アクチュエータ48を制御する信号、シフト状態表示装置52を制御する信号などが出力される。なお、エンジン用電子制御装置50と総合電子制御装置49との間で相互に信号の授受がおこなわれる。また、この実施例において、各種の回転部材の回転速度は、各種の回転部材の回転数と等価のパラメータである。
【0053】
つぎに、変速機3の制御について説明する。変速機3で前進段の第1速を設定する場合は、第1クラッチ30のスリーブの動作により、第1クラッチ30のスリーブのインナーギヤとアウターギヤ32とが係合されるとともに、第1切り換えクラッチC1が係合されるとともに、第2クラッチ33ないし第4クラッチ41のスリーブが全て中立位置に制御され、かつ、第2切り換えクラッチC2が解放される。このような制御により、入力軸47と第2変速機出力軸7との間で、第1切り換えクラッチC1および第1速用歯車対8を経由して動力伝達をおこなうことが可能になるとともに、入力軸47と第2変速機出力軸7との間における変速比が、第1速用歯車対8を構成する第1速ドライブギヤ14と第1速ドリブンギヤ15との歯数比に応じた値となる。すなわち、変速機3の変速段として第1速が設定される。
【0054】
また、変速機3で前進段の第2速を設定する場合は、第2クラッチ33のスリーブ34の動作により、スリーブ34のインナーギヤとアウターギヤ35とが係合されるとともに、第2切り換えクラッチC2が係合されるとともに、第1クラッチ30および第3クラッチ37および第4クラッチ41のスリーブが全て中立位置に制御され、かつ、第1切り換えクラッチC1が解放される。このような制御により、入力軸47と第2変速機出力軸7との間で、第2切り換えクラッチC2および第2速用歯車対9を経由して動力伝達をおこなうことが可能になるとともに、入力軸47と第2変速機出力軸7との間における変速比が、第2速用歯車対9を構成する第2速ドライブギヤ16と第2速ドリブンギヤ17との歯数比に応じた値となる。すなわち、変速機3の変速段として第2速が設定される。
【0055】
また、変速機3で前進段の第3速を設定する場合は、第3クラッチ37のスリーブ38の動作により、スリーブ38のインナーギヤとアウターギヤ39とが係合されるとともに、第1切り換えクラッチC1が係合されるとともに、第1クラッチ30および第2クラッチ33および第4クラッチ41のスリーブが全て中立位置に制御され、かつ、第2切り換えクラッチC2が解放される。このような制御により、入力軸47と第2変速機出力軸7との間で、第1切り換えクラッチC1および第3速用歯車対10を経由して動力伝達をおこなうことが可能になるとともに、入力軸47と第2変速機出力軸7との間における変速比が、第3速用歯車対10を構成する第3速ドライブギヤ18と第3速ドリブンギヤ19との歯数比に応じた値となる。すなわち、変速機3の変速段として第3速が設定される。
【0056】
さらに、変速機3で前進段の第4速を設定する場合は、第4クラッチ41のスリーブ42の動作により、スリーブ42のインナーギヤとアウターギヤ43とが係合されるとともに、第2切り換えクラッチC2が係合されるとともに、第1クラッチ30および第2クラッチ33および第3クラッチ37のスリーブが全て中立位置に制御され、かつ、第1切り換えクラッチC1が解放される。このような制御により、入力軸47と第2変速機出力軸7との間で、第2切り換えクラッチC2および第4速用歯車対11を経由して動力伝達をおこなうことが可能になるとともに、入力軸47と第2変速機出力軸7との間における変速比が、第4速用歯車対11を構成する第4速ドライブギヤ20と第4速ドリブンギヤ21との歯数比に応じた値となる。すなわち、変速機3の変速段として第4速が設定される。
【0057】
さらに、変速機3で前進段の第5速を設定する場合は、第3クラッチ37のスリーブ38の動作により、スリーブ38のインナーギヤとアウターギヤ40とが係合されるとともに、第1切り換えクラッチC1が係合されるとともに、第1クラッチ30および第2クラッチ33および第4クラッチ41のスリーブが全て中立位置に制御され、かつ、第2切り換えクラッチC2が解放される。このような制御により、入力軸47と第2変速機出力軸7との間で、第1切り換えクラッチC1および第5速用歯車対12を経由して動力伝達をおこなうことが可能になるとともに、入力軸47と第2変速機出力軸7との間における変速比が、第5速用歯車対12を構成する第5速ドライブギヤ22と第5速ドリブンギヤ23との歯数比に応じた値となる。すなわち、変速機3の変速段として第5速が設定される。
【0058】
さらに、変速機3で前進段の第6速を設定する場合は、第4クラッチ41のスリーブ42の動作により、スリーブ42のインナーギヤとアウターギヤ44とが係合されるとともに、第2切り換えクラッチC2が係合されるとともに、第1クラッチ30および第2クラッチ33および第3クラッチ37のスリーブが全て中立位置に制御され、かつ、第1切り換えクラッチC1が解放される。このような制御により、入力軸47と第2変速機出力軸7との間で、第2切り換えクラッチC2および第6速用歯車対13を経由して動力伝達をおこなうことが可能になるとともに、入力軸47と第2変速機出力軸7との間における変速比が、第6速用歯車対13を構成する第6速ドライブギヤ24と第6速ドリブンギヤ25との歯数比に応じた値となる。すなわち、変速機3の変速段として第6速が設定される。このように、変速機3は、前進段において第1速ないし第6速を選択的に切り換えることが可能である。つまり、変速機3は、変速比を段階的に、または不連続に切り換えることの可能な有段変速機である。
【0059】
一方、シフト操作装置51の操作により、後進段(リバースポジション)が選択された場合は、第2クラッチ33のスリーブ34の動作により、スリーブ34のインナーギヤとアウターギヤ36とが係合されるとともに、第2切り換えクラッチC2が係合されるとともに、第1クラッチ30および第3クラッチ37および第4クラッチ41のスリーブが全て中立位置に制御され、かつ、第1切り換えクラッチC1が解放される。このような制御により、入力軸47と第2変速機出力軸7との間で、第2切り換えクラッチC2および後進用歯車対26を経由して動力伝達をおこなうことが可能になるとともに、入力軸47と第2変速機出力軸7との間における変速比が、後進用歯車対26を構成する後進用ドライブギヤ27とアイドラギヤ29と後進用ドリブンギヤ28との歯数比に応じた値となる。すなわち、変速機3で後進段が設定される。なお、前進段が設定された場合と、後進段が設定された場合とでは、第2変速機出力軸7の回転方向が逆となる。
【0060】
前進段または後進段が選択された場合は、上記のように入力軸47と第2変速機出力軸7とが動力伝達可能に接続されるため、エンジン1が運転され、かつ、アクセルペダルが踏み込まれた場合、つまり、パワーオンの状態では、エンジントルクが変速機3を経由して車輪2に伝達されて、駆動力が発生する。これに対して、車両Veの惰力走行時、つまり、アクセルペダルが踏まれていないパワーオフの状態では、車両Veの運動エネルギに対応するトルクが、車輪2から変速機3を経由してエンジン1に伝達され、エンジンブレーキ力が生じる。
【0061】
さらに、シフト操作装置51により、パーキングポジションまたはニュートラルポジジョンが選択された場合は、第1切り換えクラッチC1および第2切り換えクラッチC2が共に解放される。このような制御により、入力軸47と第2変速機出力軸7との間で動力伝達をおこなうことが不可能となる。そして、現在設定されている変速段から他の変速段(目標変速段)に切り換える場合は、現在の変速段を設定しているクラッチのスリーブを動作させて、現在の変速段に対応するアウターギヤと、スリーブのインナーギヤとを解放するとともに、目標変速段に対応するクラッチのスリーブを動作させて、目標変速段を設定するアウターギヤと、スリーブのインナーギヤとを係合させる制御が実行される。また、現在の変速段から目標変速段に切り換える場合に、第1切り換えクラッチC1および第2切り換えクラッチC2の係合・解放状態を切り換える必要がある場合は、その切り換え制御が実行される。
【0062】
この実施例において、前進段では、変速段を示す数字が小さいほど、変速機3における変速比が大きくなる。ここで、変速機3の変速比とは、入力軸47の回転速度を第2変速機出力軸7の回転速度で除した値である。この実施例において、現在の変速段における変速比よりも、目標変速段における変速比の方が大きくなる変速制御がダウンシフトである。また、現在の変速段における変速比よりも、目標変速段における変速比の方が大きくなる変速制御がアップシフトである。そして、変速機3は、変速比を切り換える場合に、第1切り換えクラッチC1のトルク容量、および第2切り換えクラッチC2のトルク容量が制御されるように構成された、いわゆるツイン・クラッチ式の変速機3である。つまり、変速機3の変速段を変更する場合は、第1切り換えクラッチC1および第2切り換えクラッチC2の係合・解放を並行して実行する、いわゆるクラッチ・ツウ・クラッチ変速となる。
【0063】
なお、この実施例においては、変速機3の変速段を切り換えるにあたり、自動変速制御とマニュアル変速制御とを選択可能である。マニュアル変速制御とは、乗員がシフト操作装置51をマニュアル操作することにより、第1速ないし第6速の変速段を選択的に切り換える制御である。また、自動変速制御とは、シフト操作装置51で前進段が選択されている場合に、車両Veの走行状態、例えば、車速およびアクセル開度および総合電子制御装置49に記憶されている変速マップに基づいて、変速判断をおこない、第1速ないし第6速の変速段を選択的に切り換える制御である。この場合、変速マップには、現在の変速段から他の変速段にアップシフトする場合の基準となるアップシフト線、および、現在の変速段から他の変速段にダウンシフトする場合の基準となるダウンシフト線が設けられている。
【0064】
一方、このような、ツイン・クラッチ式の変速機3において、クラッチC1もしくはC2を完全係合とはせずに、すなわち、半係合状態とすることにより、クリープトルクを発生させることが可能であり、この場合のクリープトルクの大きさは、クラッチC1もしくはC2の係合具合、すなわち、トルク容量に応じて変化する。また、クリープトルク発生の時間が所定値より長い場合には、クリープトルクの大きさを維持しつつクラッチC1もしくはC2の半係合状態を中止する制御を行う。
【0065】
このような、クラッチC1もしくはC2の半係合状態を中止する制御の一例を、図1のフローチャートを用いて説明する。なお、ルーチンの実行の前提として、クラッチC1もしくはC2はすでに半係合状態であるものとする。
【0066】
先ず、クラッチC1もしくはC2の半係合状態が所定時間続いているか否かが判断される(ステップS1)。ステップS1で否定的に判断された場合、すなわち、半係合状態が所定時間続いていない場合には、このルーチンを抜けるが、クラッチC1もしくはC2の半係合状態が所定時間続いている場合には、現在の変速段が所定時間維持されているか否かが判断される(ステップS2)。
【0067】
なお、ステップS1およびステップS2で否定的に判断された場合、すなわち、現在の変速段が所定時間維持されていない場合には、このルーチンを抜けるが、現在の変速段が所定時間が維持されている場合、すなわち、クラッチC1もしくはC2の半係合状態が所定時間継続しており、かつ、クラッチC1もしくはC2の温度が上昇しており、さらに現在の変速段が所定時間維持されている場合、つまり、車速が上昇中でなく、かつ、クリープトルクが維持されている場合には、現在の変速段が第1速であるか否かが判断される(ステップS3)。
【0068】
そして、ステップS3で肯定的に判断された場合、すなわち、ステップS3以前における変速段が第1速であると判断された場合には、1速から2速へのアップシフトを行うと共に、アップシフト、すなわちギア比の増大に伴うクリープトルクの減少を抑制するために、エンジンの出力トルクを増大させる(ステップS4)。その後、このルーチンを抜ける。なお、1速から2速へのアップシフトは、先ず、プレシフトとして、第2クラッチ33が係合され、その後、半係合状態であるクラッチC1が完全解放されるとともに、クラッチC2が半係合され、トルクの伝達がおこなわれる。この時、クラッチC1の解放前のトルク容量とクラッチC2の半係合後のトルク容量とが等しくなるように制御が行われる。
【0069】
一方、ステップS3で否定的に判断された場合、すなわち、ステップS3以前における変速段が第1速以外である場合には、車速は上昇していないと考えられるので、強制的にダウンシフト行うとともに、ダウンシフト、すなわちギア比の減少に伴うクリープトルクの増大を抑制するために、エンジンの出力トルクを減少させる(ステップS5)。その後、このルーチンを抜ける。なお、この場合、ステップS3以前における変速段に対応するクラッチC1もしくはC2は解放され、ステップS3以後における変速段に対応するクラッチC2またはC1が半係合される。この時、解放前のステップS3以前における変速段に対応するクラッチC1もしくはC2のトルク容量と、ステップS3以後における変速段に対応するクラッチC2またはC1のトルク容量とが等しくなるように制御がおこなわれる。
【0070】
上記の実施例においては、クリープ状態が連続して所定時間継続した場合に、制御が開始されるように構成されているが、クリープ状態とするためにクラッチは半係合状態となっており、したがって、時間経過にともなってクラッチC1またはC2の温度が上昇するので、クリープ状態が維持されている時間に代えて、クラッチC1またはC2の温度によって判断しても良い。このクラッチ温度による制御の一例のフローチャートを図4に示す。
【0071】
ステップS11では、半係合状態にあるクラッチC1またはC2の温度が所定値t1以上か否かが判断される(ステップS1)。ステップS11で否定的に判断された場合は、このルーチンを抜けるが、肯定的に判断された場合には、ステップS12に進み、以下、ステップS2からステップS5と同様の処理がおこなわれる。
【0072】
図3は上記フローチャートの制御を1速段と2速段との間で適用した場合のタイムチャートである。A時点以前、すなわちステップS1以前においては、クラッチC1は半係合状態になっており、クラッチC2は解放状態になっている。ステップS2およびS3の判断が肯定的に成立すると(A時点)、1速から2速へのアップシフトが開始される。すなわち、クラッチC1は半係合状態から解放状態とされ、クラッチC1による伝達トルクが減少し、代わってクラッチC2が半係合されるので、クラッチC2による伝達トルクが増大する。そして、エンジントルクが増大される(ステップS5の処理、A時点からB時点)。
【0073】
その後、車速の増大等が発生せず、ステップS2およびS3の判断が肯定的に成立すると(C時点)、C時点における変速段が2速であるので、ステップS4で判断が否定的に成立し、2速から1速へのダウンシフトが開始される。すなわち、クラッチC1は解放状態から半係合状態とされ、クラッチC1による伝達トルクが増大し、代わってクラッチC2が解放状態とされるので、クラッチC1による伝達トルクが増大する。そして、エンジントルクが減少される(ステップS6の処理、C時点からD時点)。
【0074】
つまり、B時点からC時点の間の時間が予め定めた所定値よりも大きくなったときは、変速の切換がおこなわれる。そして、変速の切換によってスリップ状態にあった切換前のクラッチC1またはC2が解放され、スリップ状態になかったクラッチC2もしくはC1のいずれかがのクラッチが半係合状態、すなわちスリップ状態とされる。したがって、半係合状態と解放状態とを2つのクラッチC1およびC2の間で切り換えることで、同一のクラッチで長時間スリップが行われることを防止するので、クラッチC1,C2の耐久性のそれ以上の低下を抑制することができる。
【0075】
そして、同一のクラッチで長時間スリップがおこなわれた結果、クラッチの耐久性が低下した場合、変速制御が行われる。従って、それ以上のクラッチの耐久性の低下が抑制される。
【0076】
なお、B時点からC時点の時間は、スリップ状態が維持されている時間であって、これが、所定時間を上回った場合に変速制御が実行される。したがって、所定時間を上回れば変速制御が行われ、クラッチC1,C2が切り替わるので、クラッチC1,C2のそれ以上の耐久性の低下を抑制することができる。
【0077】
また、同一のクラッチで長時間スリップがおこなわれた結果、クラッチC1もしくはC2の温度が上昇した場合、所定の温度t1を超えた場合に変速制御がおこなわれる。したがって、クラッチC1もしくはC2の温度のそれ以上の上昇を抑え、耐久性の低下を抑制することができる。
【0078】
さらに、B時点からC時点の時間は、変速段が維持されている時間であって、これが所定時間を上回った場合に変速制御が実行される。したがって、所定時間を上回れば変速制御が行われ、クラッチC1,C2が切り替わるので、クラッチC1,C2のそれ以上の耐久性の低下を抑制することができる。
【0079】
さらに、変速制御開始時の変速段が最も変速比の大きな変速段である場合には、アップシフトを行い、変速制御開始時の変速段が最も変速比の大きな変速段以外の変速段である場合には、ダウンシフトを行うようになっているので、同一のクラッチで長時間スリップが行われることを防止し、クラッチの耐久性の低下を抑制することができる。
【0080】
そして、上記のダウンシフト時にはエンジン1の出力トルクを増大させ、上記のアップシフト時にはエンジン1の出力トルクを減少させる。これにより、変速切換時のトルクの変動を抑制することができるので、変速に伴うクリープトルクの変動を抑制することができる。
【0081】
なお、図2に示すパワートレーンにおいては、第1切り換えクラッチC1および第2切り換えクラッチC2が入力軸47に対して並列に配置され、第2変速機出力軸7が車輪2に連結される構成となっているが、エンジントルクが、各歯車対を経由して第1切り換えクラッチC1および第2切り換えクラッチC2に伝達され、ついで、そのトルクが第2変速機出力軸7に伝達されるように構成されているパワートレーンにおいても、請求項1の発明を適用可能である。また、原動機としてエンジン1に加えてモータ・ジェネレータを有する車両Veにも、この発明を適用可能である。
【0082】
ここで、実施例で説明した構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、エンジン1が原動機に相当し、第1クラッチ出力軸4および第2クラッチ出力軸5が、この発明のクラッチ出力軸に相当し、第1速用歯車対8ないし第6速用歯車対13が、この発明の複数の歯車対に相当し、第1切り換えクラッチC1および第2切り換えクラッチC2が、この発明における複数の動力伝達用クラッチに相当し、第1クラッチ30ないし第4クラッチ41が、クラッチ出力軸と変速機出力を連結する歯車対を切り換える複数の変速用クラッチに相当し、車両Veが、この発明の駆動装置に相当し、エンジン1およびモータ・ジェネレータが、この発明の原動機に相当する。
【0083】
さらに、ステップS1からS3の機能的手段が、請求項1における耐久性判断手段に相当し、ステップS5およびS6の機能的手段が、請求項1における変速段変更手段に相当する。また、ステップS2の機能的手段が、請求項2における耐久性判断手段に相当し、ステップS5およびS6の機能的手段が請求項2における変速段変更手段に相当する。また、ステップS3の機能的手段が請求項10における変速段継続判断手段に相当し、ステップS5およびS6の機能的手段が請求項10における変速段変更手段に相当する。
【0084】
また、この発明は、各動力伝達部材および各回転部材の回転軸線が、車両Veの前後方向または車両Veの幅方向のいずれの向きで配置されている車両Veにおいても実行可能である。また、この発明は、第2変速機出力軸7のトルクが、前輪または後輪のいずれに伝達される構成の二輪駆動車にも適用可能である。また、この発明は、第2変速機出力軸7のトルクが、動力分配装置(トランスファ)により、前輪および後輪に分配される構成の四輪駆動車にも適用可能である。またこの発明は、車両Ve以外の駆動装置、例えば、建設機械、工作機械などにも適用可能である。また、請求項1ないし請求項4の発明においては、各種のクラッチとして、摩擦式クラッチ、電磁式クラッチ、噛み合い式クラッチなどを用いることが可能である。電磁式クラッチの場合は、電磁力またはトルク容量が、この発明における動力伝達状態に相当する。また、請求項5の発明に用いられる各種のクラッチとしては、摩擦式クラッチ、例えば、湿式クラッチおよび乾式クラッチが挙げられる。
【0085】
なお、上記実施例においては、切り換えクラッチC1,C2の耐久性が低下した場合、クリープ状態を中断するように構成したが、切り換えクラッチC1,C2にハンチングが発生した場合にも、同様の手順でクリープ状態を中断するように構成してもよい。要は、中断する要因にかかわらず、クリープ状態を中断する必要が発生した場合に上記の手順を適用することができる。
【0086】
また、上記実施例においては、耐久性の低下は判断がクラッチC1,C2の温度がt1に達した時点で、クラッチC1,C2の耐久性が低下したと判断されるが、クラッチC1,C2の温度の上昇経過等をさらに参照して、クラッチC1,C2の耐久性が低下する以前に耐久性の低下を予測してもよい。例えば、耐久性判断時点以前の所定時間内のクラッチC1,C2の温度上昇勾配が所定値よりも大きく、かつ、クラッチC1,C2の温度がt1に達した場合に、クラッチC1,C2の耐久性が低下すると予測してもよい。このような場合、クラッチC1またはC2の係合が続いた場合には耐久性が許容下限限界値を超えることがクラッチC1,C2の耐久性が低下する以前に予測されるので、耐久性が低下しきるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】この発明における変速機3で実行可能な制御例を示すフローチャートである。
【図2】図1の制御例を実行可能な車両Veのパワートレーンおよびその制御系統を示す概念図である。
【図3】図1の制御例に対応するタイムチャートの一例である。
【図4】この発明における変速機3で実行可能な他の制御例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0088】
1…エンジン、 3…変速機、 4…第1クラッチ出力軸、 5…第2クラッチ出力軸、 6…第1変速機出力軸、 7…第2変速機出力軸、 8…第1速用歯車対、 9…第2速用歯車対、 10…第3速用歯車対、 11…第4速用歯車対、 12…第5速用歯車対、 13…第6速用歯車対、 14…第1速ドライブギヤ、 15…第1速ドリブンギヤ、 16…第2速ドライブギヤ、 17…第2速ドリブンギヤ、 18…第3速ドライブギヤ、 19…第3速ドリブンギヤ、 20…第4速ドライブギヤ、 21…第4速ドリブンギヤ、 22…第5速ドライブギヤ、 23…第5速ドリブンギヤ、 24…第6速ドライブギヤ、 25…第6速ドリブンギヤ、 30…第1クラッチ、 33…第2クラッチ、 37…第3クラッチ、 41…第4クラッチ、 47…入力軸、 48…油圧アクチュエータ、 C1…第1切り換えクラッチ、 C2…第2切り換えクラッチ、 Ve…車両。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機入力軸に連結される複数の動力伝達用クラッチと、該複数の動力伝達用クラッチのクラッチ出力軸と変速機出力軸とを複数の変速用クラッチの断続を切り換えることにより選択的に連結する複数の歯車対とを備え、クラッチ出力軸と変速機出力軸を連結する歯車対を切り換え、変速機出力軸に連結されたクラッチ出力軸に連なる動力伝達用クラッチを係合し、他の動力伝達用クラッチを解放するように複数の動力伝達用クラッチを係合・解放して変速を行う複数クラッチ式変速機の制御装置において、
前記動力伝達用クラッチの耐久性を判断する耐久性判断手段と、
前記耐久性判断手段による判断結果に基づいて変速制御を行う変速段変更手段とを有することを特徴とする複数クラッチ式変速機の制御装置。
【請求項2】
前記変速段変更手段は前記耐久性判断手段により、前記動力伝達用クラッチの耐久性の低下が予測される場合に前記変速制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の複数クラッチ式変速機の制御装置。
【請求項3】
前記複数クラッチ式変速機の制御装置は、前記動力伝達用クラッチを半係合状態とすることにより前記動力伝達用クラッチのクラッチ入力軸とクラッチ出力軸との間に差回転を発生させるスリップ発生手段を更に有し、
前記耐久性判断は前記スリップ発生手段により判断されることを特徴とする請求項2に記載の複数クラッチ式変速機の制御装置。
【請求項4】
前記耐久性判断手段は、前記差回転が所定時間継続して発生した場合に、前記動力伝達用クラッチの耐久性の低下を予測することを特徴とする請求項3に記載の複数クラッチ式変速機の制御装置。
【請求項5】
前記耐久性判断手段は、前記動力伝達用クラッチの温度が所定値以上である場合に、前記動力伝達用クラッチの耐久性の低下を予測することを特徴とする請求項2に記載の複数クラッチ式変速機の制御装置。
【請求項6】
前記変速段変更手段は、前記耐久性判断手段により、前記動力伝達用クラッチの耐久性が低下したと判断された場合に前記変速制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の複数クラッチ式変速機の制御装置。
【請求項7】
前記複数クラッチ式変速機の制御装置は、前記動力伝達用クラッチを半係合状態とすることにより前記動力伝達用クラッチのクラッチ入力軸とクラッチ出力軸との間に差回転を発生させるスリップ発生手段を更に有し、
前記耐久性判断は前記スリップ発生手段により判断されることを特徴とする請求項6に記載の複数クラッチ式変速機の制御装置。
【請求項8】
前記耐久性判断手段は、前記差回転が所定時間継続して発生した場合に、前記動力伝達用クラッチの耐久性が低下したと判断することを特徴とする請求項7に記載の複数クラッチ式変速機の制御装置。
【請求項9】
前記耐久性判断手段は、前記動力用クラッチの温度が所定値以上である場合に、前記動力伝達用クラッチの耐久性が低下したと判断することを特徴とする請求項6に記載の複数クラッチ式変速機の制御装置。
【請求項10】
現在の変速段が所定時間継続したか否かを判断する変速段継続判断手段と、
前記変速段変更手段は、前記変速段継続判断手段により、現在の変速段が所定時間継続していると判断された場合に、前記変速制御をおこなうことを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の複数クラッチ式変速機の制御装置。
【請求項11】
前記変速制御とは、前記変速制御開始時の変速段が最も変速比の大きい変速段である場合にはアップシフトをおこない、前記変速制御開始時の変速段が最も変速比の大きい変速段以外の変速段である場合には、ダウンシフトをおこなうことを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の複数クラッチ式変速機の制御装置。
【請求項12】
前記変速制御開始時に、前記変速制御の内容がアップシフトである場合には、原動機のトルクを増大させるとともに、前記変速制御の内容がダウンシフトである場合には、前記変速機入力軸に連結された原動機のトルクを増大させるとともに、前記変速制御の内容がダウンシフトである場合には、前記原動機のトルクを低下させることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の複数クラッチ式変速機の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−292055(P2006−292055A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−112881(P2005−112881)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】