説明

触媒支援型化学加工方法及び装置

【課題】近年電子デバイスの材料として重要性が高まっている銅やGaN等を、加工効率が高く且つ数十μm以上の空間波長領域にわたって精度高く加工する。
【解決手段】酸化性処理液32中に被加工物38を配し、酸性または塩基性を有する固体触媒44を被加工物38の被加工面に接触または極接近させて配して、固体触媒44と接触または極接近している被加工面の表面原子を酸化性処理液32中に溶出させて該加工面を加工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒支援型化学加工方法及び装置に係わり、更に詳しくは、化学的な反応が可能な触媒作用を利用して被加工物を加工する触媒支援型化学加工方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に機械的な加工は、古くから様々な場面で使用されている。たとえば、機械研磨では、工具を加工したい表面に押し付けることで、機械的作用により材料欠陥を導入し表面の原子を剥ぎ取って加工する。このような機械研磨法では、結晶格子にダメージを与えてしまう上に、高精度な面を得ることが非常に困難となる。ゆえに、高精度でものを作成するためには、格子欠陥を発生させることなく加工できる化学的な加工を用いる必要がある。
【0003】
超微粉体を分散した懸濁液を被加工物の被加工面に沿って流動させて、該超微粉体を被加工面上に略無荷重の状態で接触させ、その際の超微粉体と被加工面との界面での相互作用(一種の化学結合)により、被加工面原子を原子単位に近いオーダで除去して加工する、いわゆるEEM(Elastic Emission Machining)による加工法は既に知られている(特許文献1〜4等参照)。
【0004】
また、高電圧を印加した加工電極により発生させた反応ガスに基づく中性ラジカルを被加工物の被加工面に供給し、この中性ラジカルと被加工面の原子または分子とのラジカル反応によって生成した揮発性物質を気化させて除去し、加工電極を被加工面に対して相対的に変化させて加工するものであって、反応ガスの種類と被加工物の材質に応じて決定される、加工時間と加工量との間の相関データと、前加工面と目的加工面の座標データとに基づきその座標差に応じて加工時間を数値制御して加工するプラズマCVM(Chemical Vaporization Machining)も提案されている(特許文献5)。
【0005】
更に、回転電極を高速に回転させることで、該回転電極の表面でガスを巻き込むことによって加工ギャップを横切るガス流を形成して加工する回転電極を用いた高密度ラジカル反応による高能率加工方法も提案されている(特許文献6)。
【0006】
前述のEEMやプラズマCVMは、化学的な加工として非常に優れている。EEMは、原子スケールで平滑な面を得ることが可能であり、プラズマCVMでは機械的な加工に匹敵する高能率な加工が高精度で可能である。
【0007】
EEMは、その加工原理から考えて、高周波の空間波長に対して非常に平滑な面を得ることが可能である。EEMは、超純水によりSiO等の微粒子を表面に供給し、微粒子の表面の原子と被加工物表面の原子が化学的に結合することで加工が進むことが特徴である。このとき、微粒子の表面が非常に平坦な面であり、それが基準面となって、表面に転写されていると考えられる。ゆえに、原子配列を乱すことなく、原子サイズのオーダで平坦な表面を作ることが可能となる。しかしEEMは、その加工原理のゆえ、数十μm以上の空間波長域を平坦化しにくい。
【0008】
また、プラズマCVMは、活性なラジカルを利用しているので、非常に高効率な加工法である。プラズマCVMの加工は、プラズマ中の中性ラジカルと被加工物表面の化学反応を利用しており、1気圧という高圧力雰囲気下において高密度のプラズマを発生させ、プラズマ中で生成した中性ラジカルを被加工物表面の原子に作用させ、揮発性の物質に変えることで加工している。ゆえに、被加工面の原子配列を乱すことなく、従来の機械加工に匹敵する加工能率を持っている。しかし、基準面を持たない加工法であるため、指数面や結晶欠陥による影響を受けやすい。
【0009】
一方、化学機械的研磨(CMP)は、SiOやCrを砥粒として用い、機械的作用を小さくし、化学的作用によって無擾乱表面を形成しようとするものである。例えば、特許文献7に示すように、酸化触媒作用のある砥粒を分散させた酸化性研磨液にダイヤモンド薄膜を浸漬し、砥粒で薄膜表面を擦過しながらダイヤモンド薄膜を研磨する方法が開示されている。ここで、砥粒として酸化クロムや酸化鉄を用い、この砥粒を過酸化水素水、硝酸塩水溶液又はそれらの混合液に分散させた研磨液を用いることが開示されている。しかし、CMPは、機械的要素が含まれているため、加工変質層を完全に除去できないばかりでなく、機械的剛性が低い材料に適用することは困難である。
【0010】
更に、ハロゲン化水素酸からなる処理液中に被加工物を配し、白金、金またはセラミックス系固体触媒からなる触媒を被加工物の被加工面に接触若しくは極接近させて配し、触媒の表面でハロゲン化水素を分子解離して生成したハロゲンラジカルと被加工物の表面原子との化学反応で生成したハロゲン化合物を溶出させることによって被加工物を加工する加工法が提案されている(特許文献8)。しかし、ハロゲンラジカルでは加工できない材料が存在する。たとえば、GaNはフッ酸中で安定なため、ハロゲンラジカルでは加工されない。また、銅はフッ酸中で速やかに腐食されてしまうために用いる事はできない。
【0011】
【特許文献1】特公平2−25745号公報
【特許文献2】特公平7−16870号公報
【特許文献3】特公平6−44989号公報
【特許文献4】特開2000−167770号公報
【特許文献5】特許第2962583号公報
【特許文献6】特許第3069271号公報
【特許文献7】特許第3734722号公報
【特許文献8】特開2006−114632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
酸化性溶液と被加工物の金属材料に対応する酸性または塩基性溶液とを混合した処理液中に、該被加工物を浸漬させることにより、被加工物の表面原子をイオン化してエッチング除去できることが知られている。しかし、この方法では、被加工物表面が均等にエッチング除去されるため、被加工面の表面粗さは改善されず、平坦化加工等に用いることは一般に困難である。また、処理後も残留する処理液によりエッチング反応が進行し、このため、処理直後に残留する処理液を超純水等で置換する必要がある。
【0013】
本発明は、前述の状況に鑑み、特に近年電子デバイスの材料として重要性が高まっている銅やGaN等を、加工効率が高く且つ数十μm以上の空間波長領域にわたって精度高く加工することが可能な新しい加工法を提案することを目的とする。その加工法は、機械的な加工法であれば、表面に格子欠陥が導入され高精度な加工が困難となるから、結晶学的に考えて、化学的な加工法でなければならない。本発明では、化学的な反応によって基準面を転写するという原理を利用するが、その基準面が変化しないということが重要である。基準面が変化すると、加工が進むに従って加工表面が変化してしまうからである。そこで、本発明は、基準面が変化せず、化学的な反応が可能な触媒作用を利用した触媒支援型化学加工方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に記載の発明は、酸化性処理液中に被加工物を配し、酸性または塩基性を有する固体触媒を被加工物の被加工面に接触または極接近させて配して、前記固体触媒と接触または極接近している被加工面の表面原子を酸化性処理液中に溶出させて該被加工面を加工することを特徴とする触媒支援型化学加工方法である。
【0015】
酸化性処理液は、被加工物の被加工面を酸化させ、酸性または塩基性を有する固体触媒は、触媒表面のみが酸性または塩基性を示す。特に、被加工物に対して常態では溶解性を示さない、又はほとんど示さない酸化性溶液を用いると、被加工物の被加工面は、酸化性処理液で酸化されて酸化膜を形成し、酸化された被加工面の固体触媒と接触または極近接している部位のみでエッチング反応が進む。これによって、固体触媒表面を加工基準面とした平坦化加工が可能となる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、前記酸化性処理液は、オゾン水または過酸化水素水であることを特徴とする請求項1記載の触媒支援型化学加工方法である。
酸化性処理液としてオゾン水または過酸化水素水を使用した場合、被加工物に対して常態では溶解性を示さないか、ほとんど示さないが、オゾン水または過酸化水素水の濃度が濃いほど被加工物に対する酸化速度が速まる。オゾン水または過酸化水素水濃度を、オゾン水または過酸化水素水による酸化速度の方が酸性または塩基性を有する固体触媒によるエッチング速度より遅くなるように決めることが好ましく、これによって、酸化膜を被加工面に生成されると同時に除去して、孔食が進行したり、被加工面が酸化膜になってしまったりすることを防止することができる。また、加工後の被加工面に酸または塩基性エッチング溶液が残留しないため、被加工面の洗浄が容易で、超純水置換等を行う必要はない。また、薬液コストおよび廃液コストがかからない。
【0017】
請求項3に記載の発明は、被加工物の加工中または加工前に、被加工物の被加工面に光を照射することを特徴とする請求項1または2記載の触媒支援型化学加工方法である。
このように、被加工物の被加工面に光を照射することで、被加工面の酸化を促進して、加工速度を高めることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、被加工物の加工中における該被加工物の温度、前記酸化性処理液の温度及び前記固体触媒の温度の少なくとも1つを制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の触媒支援型化学加工方法である。
アレニウスの式で知られるように、化学反応は反応温度が高ければ、それだけ反応速度は大きくなる。このため、反応温度を制御することで、加工速度を変化させることができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、処理液中に配した被加工物の被加工面に光を照射し、酸性または塩基性を有する固体触媒を被加工物の被加工面に接触または極接近させて配して、前記固体触媒と接触または極接近している被加工面の表面原子を処理液中に溶出させて該被加工面を加工することを特徴とする触媒支援型化学加工方法である。
【0020】
被加工物の被加工面に光、好ましくは紫外線を照射することによって、被加工面を酸化させることができる。これによって、被加工物の被加工面に酸化膜を形成し、酸化された被加工面の固体触媒と接触または極近接している部位のみをエッチング除去することができる。この場合、処理液は、酸化性処理液であることが好ましいが、超純水や酸素水(超純水に酸素を溶解させたもの)等であっても良い。
【0021】
請求項6に記載の発明は、被加工物の加工中における該被加工物の温度、前記処理液の温度及び前記固体触媒の温度の少なくとも1つを制御することを特徴とする請求項5記載の触媒支援型化学加工方法である。
【0022】
請求項7に記載の発明は、被加工物の加工中に、被加工物の被加工面と前記固体触媒の間に電圧を印加することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の触媒支援型化学加工方法である。
このように、被加工物の被加工面と前記固体触媒の間に電圧を印加することで、被加工面の酸化を促進して、加工速度を高めることができる。
【0023】
請求項8に記載の発明は、前記固体触媒によって加工基準面を形成し、該加工基準面の形状またはパターンを被加工物の被加工面に転写することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の触媒支援型化学加工方法である。
【0024】
請求項9に記載の発明は、前記固体触媒は、イオン交換機能を付与した不織布、樹脂または金属の何れかであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の触媒支援型化学加工方法である。
イオン交換機能を付与する素材は、例えばポリエチレン繊維からなる不織布、フッ素樹脂やPEEK等の樹脂、またはPt,Au等の金属の耐酸化性材料であることが好ましい。
【0025】
例えば、グラフト重合法により、ポリエチレン繊維からなる不織布にイオン交換機能を付与することができる。また、この場合、固体触媒のイオン交換容量を大きくすることによって、被加工物に対するエッチング速度をより速くすることができる。前述のオゾン水または過酸化水素水濃度、照射する光の強度、印加する電圧と固体触媒のイオン交換容量は、被加工面に酸化膜が成長しない程度にバランスさせることが好ましい。
【0026】
請求項10に記載の発明は、前記固体触媒は、酸性または塩基性を有する金属酸化物であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の触媒支援型化学加工方法である。
酸性または塩基性を有する金属酸化物としては、セラミックス系のアルミナ、ジルコニア及びシリコン酸化物等が挙げられる。
【0027】
請求項11に記載の発明は、前記固体触媒を微粉末として前記酸化性処理液中に分散させ、該微粉末を酸化性処理液の流動に伴って被加工物の被加工面に供給することを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の触媒支援型化学加工方法である。
【0028】
請求項12に記載の発明は、酸性または塩基性を有する固体触媒を表面に固定した定盤と、被加工物を保持し該被加工物の被加工面を前記定盤の表面に接触または極接近させるホルダと、前記定盤と前記ホルダで保持して該定盤の表面に接触または極接近させた被加工物との間に酸化性処理液を供給する酸化性処理液供給部と、前記定盤と前記ホルダで保持して該定盤に接触または極近接させた被加工物とを相対移動させる駆動部を有することを特徴とする触媒支援型化学加工装置である。
請求項13に記載の発明は、被加工物の被加工面に光を照射する光源を更に有することを特徴とする請求項12記載の触媒支援型化学加工装置である。
【0029】
請求項14に記載の発明は、酸性または塩基性を有する固体触媒を表面に固定した定盤と、被加工物を保持し該被加工物の被加工面を前記定盤の表面に接触または極接近させるホルダと、前記定盤と前記ホルダで保持して該定盤の表面に接触または極接近させた被加工物との間に処理液を供給する処理液供給部と、被加工物の被加工面に光を照射する光源と、前記定盤と前記ホルダで保持して該定盤に接触または極近接させた被加工物とを相対移動させる駆動部を有することを特徴とする触媒支援型化学加工装置である。
【0030】
請求項15に記載の発明は、被加工物の被加工面と前記固体触媒の間に電圧を印加する電源を更に有することを特徴とする請求項12乃至14のいずれかに記載の触媒支援型化学加工装置である。
【0031】
請求項16に記載の発明は、被加工物の加工中における該被加工物の温度、前記処理液の温度及び前記固体触媒の温度の少なくとも1つを制御する温度制御機構を更に有することを特徴とする請求項12乃至15のいずれかに記載の触媒支援型化学加工装置である。
【発明の効果】
【0032】
本発明の触媒支援型化学加工方法は、加工基準面に酸性または塩基性を有する固体触媒を用い、被加工面を酸化性処理液または光(例えば紫外線)の照射で酸化させ、この酸化物を固体触媒表面の酸(Hイオン)または塩基(OHイオン)と反応させ、反応した酸化物を酸化性処理液等の処理液中に溶出させることで加工が進展する。本発明では、砥粒や研磨材を用いずに、触媒機能を果たす固体触媒を酸化性処理液等の処理液中で被加工面に接触または極近接させ、固体触媒と被加工面を相対移動させることにより常に新しい被加工面が出現して加工が進む。ここで、固体触媒は、その表面のみが酸性または塩基性を示すので、それにより空間的に制御された状態で加工できる。
【0033】
本発明の触媒支援型化学加工方法は、加工基準面を有する化学的な加工であるので、EEMやプラズマCVMでは困難であった数十μm以上の空間波長領域を高度に平坦化加工することができる。また、銅や、これまで加工が難しかったGaN等の高精度な加工ができるようになり、半導体製造工程においても使用できる可能性がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
先ず、本発明の加工原理について説明する。
多くの金属元素は、酸素と結合することで酸化物を生成する。これらの酸化物は、ブレンステッド酸、ブレンステッド塩基またはその両方としての性質を持ち、それぞれ酸性酸化物、塩基性酸化物または両性酸化物と呼ばれている。例えば、銅やニッケル等は塩基性酸化物を、タングステン等は酸性酸化物を、アルミニウム、チタン、鉄またはガリウム等は両性酸化物をそれぞれ生成する。酸性酸化物は塩基と反応する酸化物であり、塩基性酸化物は酸と反応する酸化物である。両性酸化物は酸ともまた塩基とも反応する酸化物である。この時、酸または塩基と反応した酸化物は、イオンとなって液中へと溶出する。
【0035】
例えば、銅は、酸素と結合して塩基性酸化物である銅酸化物(CuO)を生成し、銅酸化物は、下記の化学式(1)で酸(H)と反応し、銅イオンとなって液中に溶出する。
CuO(s)+2H+(aq)→Cu2+(aq)+H2O (1)
タングステンは、酸素と結合して酸性酸化物であるタングステン酸化物(WO)を生成し、タングステン酸化物は、下記の化学式(2)で塩基(OH)と反応し、タングステン酸イオンとなって液中に溶出する。
WO3(s)+2OH(aq)→WO42−(aq)+H2O (2)
【0036】
アルミニウムは、酸素と結合して両性酸化物であるアルミニウム酸化物(Al)を生成し、アルミニウム酸化物は、下記の化学式(3)で酸(H)と反応し、アルミニウムイオンとなって液中に溶出するか、または下記の化学式(4)で塩基(OH)と反応し、アルミン酸イオンとなって液中に溶出する。
Al2O3(s)+6H+(aq)→2Al3+(aq)+3H2O (3)
Al2O3(s)+3H2O+2OH(aq)→2[Al(OH)4](aq) (4)
【0037】
ここで、酸性または塩基性を有する、例えばイオン交換機能を付与した不織布等からなる固体触媒は、触媒表面で酸性または塩基性を示す。このため、酸性を示す固体触媒(固体酸性触媒)に、銅やニッケル等の塩基性酸化物、またはアルミニウムやガリウム等の両性酸化物を接触または近接させると、これらの酸化物は、酸(Hイオン)と反応しイオンとなって液中に溶出する。このため、例えば銅にあっては、これをオゾン水等の酸化性処理液中に配して表面を酸化させ、この酸化物を固体酸性触媒に接触または極接近させてイオンとして液中に溶出させることで、銅の表面が加工される。
【0038】
同様に、塩基性を示す固体触媒(固体塩基性触媒)に、タングステン等の酸性酸化物、またはアルミニウムやガリウム等の両性酸化物を接触または近接させると、これらの酸化物は、塩基(OHイオン)と反応しイオンとなって液中に溶出する。このため、例えばタングステンにあっては、これをオゾン水等の酸化性処理液中に配して表面を酸化させ、この酸化物を固体塩基性触媒に接触または極接近させてイオンとして液中に溶出させることで、タングステンの表面が加工される。
【0039】
次に、酸化性処理液を使用して銅表面を加工する加工方法を、図1を参照して説明する。先ず、図1(a)に示すように、容器10の内部に、例えば4ppmの濃度のオゾン水からなる酸化性処理液12を満たし、この酸化性処理液12中に、少なくとも表面が銅からなる被加工物14を浸漬させる。更に、酸性を有する固体触媒(固体酸性触媒)16を、容器10の上部に酸化性処理液12中に浸漬させて配置する。この固体酸性触媒16の表面には、多数の水素イオン(H)16aが生成される。すると、被加工物(銅)14の表面は、酸化性処理液12で酸化されて、図1(b)に示すように、被加工物14の表面に、塩基性酸化物である酸化銅(CuO)14aが生成される。
【0040】
この状態で、図1(c)に示すように、酸化銅14aの表面に固体酸性触媒16の表面を、例えば0.01〜5kgf/cm程度の面圧で接触させる。すると、前述の化学式(1)で示すように、酸化銅(CuO)14aは、その固体酸性触媒16との接触部Aで固体酸性触媒16の表面に生成される水素イオン(H)16aとエッチング反応し、銅イオン(Cu2+)となって酸化性処理液12中に溶出する。これにより、図1(d)に示すように、酸化銅14aの固体酸性触媒16の表面と接触した部位18が除去され、これによって、銅からなる被加工物14の表面が加工される。
【0041】
この例によれば、被加工物14の固体酸性触媒16との接触部Aのみでエッチング反応が進んで該接触部Aのみが加工される。このため、固体酸性触媒16の表面を加工基準面とした被加工物14の表面の平坦化加工が可能となる。また、加工後の被加工物表面には、酸性または塩基性溶液が残留することなく、このため、超純水置換等が必要なくなる。
【0042】
この触媒支援型化学加工法によれば、固体酸性触媒16の表面のみで反応種となる水素イオン16aが作られ、固体酸性触媒16の表面の物性は長時間変化しない。このため、化学エッチングとは異なり、表面の面指数や結晶欠陥に影響されずに加工することが可能となる。また、固体酸性触媒16の表面を加工基準面とし、該加工基準面を転写する化学的加工法となり、EEMで見られたような原子スケールでの平坦化が期待できる。しかも、加工基準面が転写され加工が進行しても、該基準面の表面が変化しない。つまり、以上のようなことから、この触媒支援型化学加工法は、効率的な超精密加工法となりうる可能性があると考えられる。
【0043】
ここで、酸化性処理液12としては、オゾン水の他に過酸化水素水が挙げられる。酸化性処理液12としてオゾン水を使用した場合、オゾン水濃度が濃いほど被加工物14に対する酸化速度が速まる。オゾン水濃度を、オゾン水による酸化速度の方が固体酸性触媒16によるエッチング速度より遅くなるように決めることが好ましく、これによって、例えば酸化性処理液12中に、被加工物14と固体酸性触媒16とを互いに接触させて配置し、両者を相対的に移動させことで、酸化銅14aを被加工物14の表面に生成されると同時に除去して、孔食が進行したり、被加工面が酸化膜になったりすることを防止することができる。
【0044】
固体酸性触媒16は、例えば、酸性イオン交換体や、酸性を有する金属酸化物、例えばセラミックス系のアルミナ、ジルコニア及びシリコン酸化物で作成される。固体酸性触媒16が酸性イオン交換体である場合、固体酸性触媒16の酸性イオン交換容量を大きくすることによって、被加工物14に対するエッチング速度をより速くすることができる。前述のオゾン水濃度と固体酸性触媒16のイオン交換容量は、被加工物14に酸化膜が成長しない程度にバランスさせることが好ましい。
【0045】
図1に示す例にあっては、銅の他に、酸化物が塩基性酸化物となるニッケルや、酸化物が両性酸化物となるアルミニウム、チタン、鉄またはガリウム等を加工できる。また、固体酸性触媒16を、塩基性を有する固体触媒(固体塩基性触媒)に代えることで、酸化物が酸性酸化物となるタングステン等や、酸化物が両性酸化物となるアルミニウム、チタン、鉄またはガリウム等を加工できる。
【0046】
上記の例では、固体酸性触媒16を被加工物14に接触させているが、固体酸性触媒16を被加工物14に極接近させるようにしてもよい。
また、固体酸性触媒を微粉末として酸化性処理液中に分散させ、該微粉末を酸化性処理液の流動に伴って被加工物の被加工面に供給するようにしてもよい。
【0047】
(実施例1)
本発明の触媒支援型化学加工法の加工原理を確認するため、銅の加工装置を作製した。その基礎実験用加工装置の概念図を図2に示す。この加工装置は、上部に液入口20a、液出口20b及び開口部20cを有し、例えば濃度が4ppmのオゾン水からなる酸化性処理液22で内部を満たす容器20と、下面に銅めっき試料24を保持して容器20の開口部20cに配置されるホルダ26を備えている。容器20の内部には、鉛直面に沿って回転する回転体28が回転自在に配置され、この回転体28の外周面には、酸性を有する固体触媒(固体酸性触媒)30が固定されている。この固体酸性触媒30は、例えばグラフト重合法により酸性イオン交換機能を付与したポリエチレン繊維からなる不織布によって構成されている。
【0048】
この加工装置を使用し、回転体28を60rpmで回転させながら、固体酸性触媒30にホルダ26で保持した銅めっき試料24の下面を接触させて、銅めっき試料24の表面の銅加工を10分間行った。加工後の銅めっき試料24の斜視図を図3に示す。図3に示すように、銅めっき試料24の表面には、凹状に延びる加工痕が認められ、これによって、銅が加工できることが判る。また、加工後の試料24の表面にはエッチピットが観察されなかった。これは、試料24の固体酸性触媒30に接触している部位のみが選択的にエッチングされたためであると考えられる。
【0049】
比較例1として、図2に示す処理装置における固体酸性触媒30の代わりに、イオン交換機能を付与していない不織布を使用し、他は実施例1と同じ条件で銅めっき試料24の表面の銅加工を10分間行った。比較例2として、図2に示す処理装置における固体酸性触媒30の代わりに、塩基性を有する固体触媒(固体塩基性触媒)を使用し、他は実施例1と同じ条件で銅めっき試料24の表面の銅加工を10分間行った。比較例3として、図2に示す酸化性処理液22の代わりに純水を使用し、他は実施例1と同じ条件で銅めっき試料24の表面の銅加工を10分間行った。
【0050】
これらの加工後の銅めっき試料の斜視図を図4に示す。ここで、図4(a)は比較例1に、図4(b)は比較例2に、図4(c)は比較例3にそれぞれ対応している。この図4から判るように、銅めっき試料の表面は平坦で、加工痕が認められず、これによって、比較例1〜4では銅が加工できないことが判る。
【0051】
次に、被加工物の被加工面に光、好ましくは紫外線を照射して銅表面を加工する加工方法を、図5を参照して説明する。先ず、図5(a)に示すように、容器10の内部に処理液12aを満たす。この処理液12aは、例えば4ppmの濃度のオゾン水等からなる酸化性処理液であることが好ましいが、超純水や酸素水(超純水に酸素を溶解させたもの)であってもよい。そして、この処理液12a中に、少なくとも表面が銅からなる被加工物14を浸漬させる。更に、上下に貫通して光を通過させる多数の光通過孔16bが内部に有する固体触媒(固体酸性触媒)16を、容器10の上部に処理液12a中に浸漬させて配置する。更に、固体酸性触媒16の上方の処理液12aと接触しない位置に光源19を配置する。
【0052】
この状態で、図5(b)に示すように、光源19から固体酸性触媒16の内部の光通過孔16bを通過させて、被加工物(銅)14の表面(被加工面)に向けて光、好ましくは紫外線を照射する。この時に照射する光の波長は、被加工物のバンドギャップに相当する波長以下、例えば4H−SiCのバンドギャップは3.26eVであるので、SiCを加工する場合には383nm以下、GaNのバンドギャップは3.42eVであるので、GaNを加工する場合には365nm以下であることが好ましい。
【0053】
このように、被加工物14の表面(被加工面)に光、好ましくは紫外線を照射することで被加工面を酸化させ、図5(b)に示すように、被加工物14の表面に、塩基性酸化物である酸化銅(CuO)14aを生成することができる。処理液12aとして、例えば4ppmの濃度のオゾン水等からなる酸化性処理液を使用した場合には、塩基性酸化物である酸化銅(CuO)14aの生成が促進される。
【0054】
次に、被加工物14の表面(被加工面)への光の照射を停止させ、図5(c)に示すように、酸化銅14aの表面に固体酸性触媒16の表面を、例えば0.01〜5kgf/cm程度の面圧で接触させる。すると、前述の化学式(1)で示すように、酸化銅(CuO)14aは、その固体酸性触媒16との接触部Aで固体酸性触媒16の表面に生成される水素イオン(H)16aとエッチング反応し、銅イオン(Cu2+)となって処理液12a中に溶出する。これにより、図5(d)に示すように、酸化銅14aの固体酸性触媒16の表面と接触した部位18が除去され、これによって、銅からなる被加工物14の表面が加工される。
【0055】
この例にあっても、被加工物14の固体酸性触媒16との接触部Aのみでエッチング反応が進んで該接触部Aのみが加工される。このため、固体酸性触媒16の表面を加工基準面とした被加工物14の表面の平坦化加工が可能となる。しかも、固体酸性触媒16の表面のみで反応種となる水素イオン16aが作られ、固体酸性触媒16の表面の物性は長時間変化しない。
【0056】
この例にあっても、銅の他に、酸化物が塩基性酸化物となるニッケルや、酸化物が両性酸化物となるアルミニウム、チタン、鉄またはガリウム等を加工できる。また、固体酸性触媒16を、塩基性を有する固体触媒(固体塩基性触媒)に代えることで、酸化物が酸性酸化物となるタングステン等や、酸化物が両性酸化物となるアルミニウム、チタン、鉄またはガリウム等を加工できる。
【0057】
上記の例では、固体酸性触媒16を被加工物14に接触させているが、固体酸性触媒16を被加工物14に極接近させるようにしてもよい。また、固体酸性触媒を微粉末として処理液中に分散させ、該微粉末を処理液の流動に伴って被加工物の被加工面に供給するようにしてもよい。
【0058】
なお、被加工物の被加工面の酸化を促進するため、固体触媒と被加工物の被加工面との間に電圧を印加するようにしてもよい。図1に示す例に、この原理を適用した例を図6に示す。すなわち、図6に示すように、陽極と陰極とを反転可能な電源60を備え、この電源60の一方の極から延び、スイッチ62を介装した導線64aを固体触媒16に、電源60の他方の極から延びる導線64bを被加工物14にそれぞれ接続している。その他は、図1に示すものと同様である。
【0059】
この場合にあっても、酸化性処理液12中に被加工物14と固体触媒(固体酸性触媒)16を浸漬させて配置すると、固体酸性触媒16の表面には、多数の水素イオン(H)16aが生成される。すると、被加工物(銅)14の表面は、酸化性処理液12で酸化されて、図6(b)に示すように、被加工物14の表面に、塩基性酸化物である酸化銅(CuO)14aが生成される。この時、スイッチ62をONにして、固体触媒16と被加工物14との間に、例えば固体触媒16が陽極となる電圧を印加すると、酸化銅(CuO)14aの生成が促進される。
【0060】
この状態で、図6(c)に示すように、酸化銅14aの表面に固体酸性触媒16の表面を、例えば0.01〜5kgf/cm程度の面圧で接触させる。すると、前述の化学式(1)で示すように、酸化銅(CuO)14aは、その固体酸性触媒16との接触部Aで固体酸性触媒16の表面に生成される水素イオン(H)16aとエッチング反応し、銅イオン(Cu2+)となって酸化性処理液12中に溶出する。これにより、図6(d)に示すように、酸化銅14aの固体酸性触媒16の表面と接触した部位18が除去され、これによって、銅からなる被加工物14の表面が加工される。
【0061】
なお、図5に示す例にあっても、固体触媒と被加工物の被加工面との間に電圧を印加するようにして、被加工物の被加工面の酸化を促進するようにしてもよいことは勿論である。
アレニウスの式で知られるように、化学反応は反応温度が高くなれば、それだけ反応速度は大きくなる。本加工法は、化学反応に基づいている。したがって、図1に示す例にあっては、被加工物の温度、酸化性処理液の温度及び固体触媒の温度の少なくとも1つを、図5に示す例にあっては、被加工物の温度、処理液の温度及び固体触媒の温度の少なくとも1つを制御して、化学反応が生じるときの温度を制御することで、加工速度を制御することができる。
【0062】
本発明の実施の形態の銅を加工するポリッシング装置に適用した触媒支援型化学加工装置の簡略斜視図を図7に示す。このポリッシング装置(触媒支援型化学加工装置)31は、例えば濃度2ppmのオゾン水からなる酸化性処理液32で内部を満たす容器34と、容器34内に回転自在に配置された定盤36と、表面(被加工面)を下向きにして被加工物38を着脱自在に保持するホルダ40を有している。定盤36の上面には、酸性を有する固体触媒(固体酸性触媒)44が固定されている。ホルダ40は、加工性、対薬品性及び温度に対する耐性に優れた、例えばSiCによって構成されているが、硬質塩化ビニルまたはPEEK材で構成してもよく、定盤36の回転軸芯と平行且つ偏心した位置に設けた上下動自在な回転軸42の先端に連結されている。ホルダ40は、回転軸42に対してピボット支持(ボール軸受け支持)されているので、定盤36の表面に、ホルダ40の被加工物保持面が追従することができ、被加工物38が定盤36に面接触できるようになっている。
【0063】
更に、陽極と陰極とを反転可能な電源50を備え、この電源50の一方の極から延び、スイッチ52を介装した導線54aを固体触媒44に、電源50の他方の極から延びる導線54bを被加工物38にそれぞれ接続するようにしている。
なお、図5に概略的に示すように、定盤36の内部に多数の光通過孔を設けるとともに、定盤36の下方に光源を配置して、被加工物38の表面(被加工面)に、好ましくは被加工物38のバンドギャップに相当する波長以下の光(好ましくは紫外線)を照射するようにしてもよい。
このように、光源を備えた場合には、酸化性処理液32の代わりに、超純水や酸素水等の処理液を使用するようにしてもよい。
【0064】
これにより、容器34内を、例えば濃度が2ppmのオゾン水からなる酸化性処理液32で満たし、ホルダ40で保持した被加工物38を固体酸性触媒44に所定の圧力、例えば1〜5kgf/cm程度の圧力で押付けながら、固体酸性触媒44及び被加工物38を回転させて、被加工物38の表面(下面)の銅を平坦に加工する。この時、必要に応じて、固体触媒44と被加工物38との間に、例えば被加工物38を陽極とした所定の電圧を印加する。また、光源を備えた場合には、必要に応じて、被加工物38の表面(被加工面)に、所定の周波数の光を照射する。
【0065】
なお、酸化性処理液32で満たされた容器34内に固体酸性触媒44と被加工物38が配置された浸漬型の形態に限らず、固体酸性触媒44の上方に配置したノズル(図示せず)から固体酸性触媒44と被加工物38の間に酸化性処理液を供給するようにしてもよい。酸化性処理液を循環利用する場合は、スラッジを除去するために、精製して再利用するのが好ましい。また、図7とは、上下を逆にした形態でもよい。その場合には、被加工物をその被加工面を上向きにして配置し、それに対向するように上方に配置された固体酸性触媒を、被加工物に軽く接触または微小間隔を設けて近づけてもよい。
【0066】
また、加工中に除去された銅イオンの一部が固体酸性触媒内部に取り込まれる事が考えられる。そのため、長時間もしくは複数枚数の加工を連続的に行う場合は、固体酸性触媒の再生処理を行う事が好ましい。固体酸性触媒の再生には薬液によるイオンの排出もしくは電界印加によるイオンの排出を行うことが好ましい。
【0067】
(実施例2)
図7に示すポリッシング装置を使用し、定盤36を60rpmで、ホルダ40を61rmpでそれぞれ回転させながら、ホルダ40で保持した被加工物38の表面に設けた銅めっき膜を固体酸性触媒44に接触させて60分間加工した。被加工物38として、絶縁膜の内部に設けた配線パターン内に銅めっき膜を埋込み、さらに絶縁膜の表面に銅めっき膜を形成したものを使用した。加工後の被加工物の斜視図を図8に示す。この図8から、配線間の絶縁体の表面に銅の残渣を生じさせることなく、被加工物表面の銅めっき膜が加工されて除去されたことが判る。これは、本加工法が無電解加工であり、下地(絶縁膜)の導電性が加工特性に影響を与えないためであると考えられる。
【0068】
図9は、ポリッシング装置に適用した本発明の他の実施の形態の触媒支援型化学加工装置の簡略斜視図を示す。この図9に示すポリッシング装置(触媒支援型化学加工装置)31aの図7に示すポリッシング装置(触媒支援型化学加工装置)31と異なる点は、以下の通りである。すなわち、ホルダ40の内部には、該ホルダ40で保持した被加工物38の温度を制御する温度制御機構としてのヒータ70が回転軸42に延びて埋設されている。容器34の上方には、熱交換器72によって所定の温度に制御した処理液を容器34の内部に供給する温度制御機構としての処理液供給ノズル74が配置されている。更に、定盤36の内部には、固体触媒44の温度を制御する温度制御機構としての流体流路76が設けられている。
【0069】
なお、この例では、被加工物38の温度を制御する温度制御機構としてのヒータ70、処理液の温度を制御する温度制御機構としての処理液供給ノズル74、及び固体触媒44の温度を制御する温度制御機構としての流体流路76を設けた例を示しているが、いずれか1つを設けるようにしてもよい。
【0070】
アレニウスの式で知られるように、化学反応は反応温度が高ければ、それだけ反応速度は大きくなる。この例によれば、被加工物28、処理液及び及び固体触媒44の温度の少なくとも1つの制御して、反応温度を制御することで、加工速度を変化させることができる。
本発明は、上記実施例で例示した一軸加工や平面加工に限らず、三次元形状の試料に対して、球状または円筒状に構成された触媒を接触させて所望の形状に加工するなど、各種の除去加工に応用できる。また、上述した電圧印加、光照射、温度制御はこれらを単独でも、また適宜組み合わせて加工を促進させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の加工方法の概要を示し、(a)は加工前の状態を、(b)は被加工物表面が酸化された状態を、(c)は被加工物に固体酸性触媒を接触させた状態を、(d)加工後の状態を示す。
【図2】基礎実験用加工装置の概念を示す斜視図である。
【図3】実施例1における加工後の試料表面を示す斜視図である。
【図4】比較例1〜3における加工後の試料を示す斜視図である。
【図5】本発明の他の加工方法の概要を示し、(a)は加工前の状態を、(b)は被加工物表面が酸化された状態を、(c)は被加工物に固体酸性触媒を接触させた状態を、(d)加工後の状態を示す。
【図6】本発明の加工方法の変形例の概要を示し、(a)は加工前の状態を、(b)は被加工物表面が酸化された状態を、(c)は被加工物に固体酸性触媒を接触させた状態を、(d)加工後の状態を示す。
【図7】本発明の実施の形態のポリッシング装置に適用した触媒支援型化学加工装置の概要を示す斜視図である。
【図8】実施例2における加工後の加工試料を示す顕微鏡写真である。
【図9】本発明の他の実施の形態のポリッシング装置に適用した触媒支援型化学加工装置の概要を示す断面図である。
【符号の説明】
【0072】
10,20,34 容器
12,22,30,32 酸化性処理液
12a 処理液
14,38 被加工物
14a 酸化膜
16,44 固体酸性触媒
16a 水素イオン
19 光源
24 試料
26 ホルダ
31,31a ポリッシング装置(触媒支援型化学加工装置)
36 定盤
40 ホルダ
42 回転軸
50,60 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化性処理液中に被加工物を配し、
酸性または塩基性を有する固体触媒を被加工物の被加工面に接触または極接近させて配して、
前記固体触媒と接触または極接近している被加工面の表面原子を酸化性処理液中に溶出させて該被加工面を加工することを特徴とする触媒支援型化学加工方法。
【請求項2】
前記酸化性処理液は、オゾン水または過酸化水素水であることを特徴とする請求項1記載の触媒支援型化学加工方法。
【請求項3】
被加工物の加工中または加工前に、被加工物の被加工面に光を照射することを特徴とする請求項1または2記載の触媒支援型化学加工方法。
【請求項4】
被加工物の加工中における該被加工物の温度、前記酸化性処理液の温度及び前記固体触媒の温度の少なくとも1つを制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の触媒支援型化学加工方法。
【請求項5】
処理液中に配した被加工物の被加工面に光を照射し、
酸性または塩基性を有する固体触媒を被加工物の被加工面に接触または極接近させて配して、
前記固体触媒と接触または極接近している被加工面の表面原子を処理液中に溶出させて該被加工面を加工することを特徴とする触媒支援型化学加工方法。
【請求項6】
被加工物の加工中における該被加工物の温度、前記処理液の温度及び前記固体触媒の温度の少なくとも1つを制御することを特徴とする請求項5記載の触媒支援型化学加工方法。
【請求項7】
被加工物の加工中に、被加工物の被加工面と前記固体触媒の間に電圧を印加することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の触媒支援型化学加工方法。
【請求項8】
前記固体触媒によって加工基準面を形成し、該加工基準面の形状またはパターンを被加工物の被加工面に転写することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の触媒支援型化学加工方法。
【請求項9】
前記固体触媒は、イオン交換機能を付与した不織布、樹脂または金属の何れかであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の触媒支援型化学加工方法。
【請求項10】
前記固体触媒は、酸性または塩基性を有する金属酸化物であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の触媒支援型化学加工方法。
【請求項11】
前記固体触媒を微粉末として前記酸化性処理液中に分散させ、該微粉末を酸化性処理液の流動に伴って被加工物の被加工面に供給することを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の触媒支援型化学加工方法。
【請求項12】
酸性または塩基性を有する固体触媒を表面に固定した定盤と、
被加工物を保持し該被加工物の被加工面を前記定盤の表面に接触または極接近させるホルダと、
前記定盤と前記ホルダで保持して該定盤の表面に接触または極接近させた被加工物との間に酸化性処理液を供給する酸化性処理液供給部と、
前記定盤と前記ホルダで保持して該定盤に接触または極近接させた被加工物とを相対移動させる駆動部を有することを特徴とする触媒支援型化学加工装置。
【請求項13】
被加工物の被加工面に光を照射する光源を更に有することを特徴とする請求項12記載の触媒支援型化学加工装置。
【請求項14】
酸性または塩基性を有する固体触媒を表面に固定した定盤と、
被加工物を保持し該被加工物の被加工面を前記定盤の表面に接触または極接近させるホルダと、
前記定盤と前記ホルダで保持して該定盤の表面に接触または極接近させた被加工物との間に処理液を供給する処理液供給部と、
被加工物の被加工面に光を照射する光源と、
前記定盤と前記ホルダで保持して該定盤に接触または極近接させた被加工物とを相対移動させる駆動部を有することを特徴とする触媒支援型化学加工装置。
【請求項15】
被加工物の被加工面と前記固体触媒の間に電圧を印加する電源を更に有することを特徴とする請求項12乃至14のいずれかに記載の触媒支援型化学加工装置。
【請求項16】
被加工物の加工中における該被加工物の温度、前記処理液の温度及び前記固体触媒の温度の少なくとも1つを制御する温度制御機構を更に有することを特徴とする請求項12乃至15のいずれかに記載の触媒支援型化学加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−121099(P2008−121099A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328287(P2006−328287)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】