説明

記憶装置、ホスト装置、回路基板、液体容器及びシステム

【課題】書き込み処理時間を短縮できる記憶装置、ホスト装置、回路基板、液体容器及びシステム等を提供すること。
【解決手段】記憶装置100は、バスBSを介して接続されるホスト装置400との通信処理を行う制御部110と、ホスト装置400からのデータが書き込まれる記憶部120と、記憶部120のアクセス制御を行う記憶制御部130とを含む。制御部110は、第1のモードでは、データ書き込みコマンド及びデータを受信した際に、記憶制御部130に対して受信したデータの書き込みを指示すると共に、記憶部120に対して正常にデータが書き込まれた場合に、ホスト装置400に対してアクノリッジを返信する。第2のモードでは、データ書き込みコマンド及びデータを受信した際に、記憶制御部130に対して受信したデータの書き込みを指示し、ホスト装置400に対してアクノリッジを返信しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記憶装置、ホスト装置、回路基板、液体容器及びシステム等に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式のプリンターで用いられるインクカートリッジ(液体容器)には、記憶装置が設けられているものがある。この記憶装置には、例えばインクの色やインク消費量などの情報が格納される。インク消費量に関するデータは、プリンター本体(ホスト装置)から記憶装置に送信され、記憶装置に含まれる不揮発性メモリーなどに書き込まれる。このようなプリンターにおいて、例えば停電やコンセントの引き抜きなどで電源が遮断されると、インク消費量などの情報を書き込めないという問題がある。
【0003】
この問題に対して、例えば特許文献1には、電源遮断時に記憶装置に必要なデータを記憶装置に書き込む手法が開示されている。
【0004】
しかしながらこの手法では、用いられるインクカートリッジの個数が多くなると書き込み処理の全体の時間が長くなり、限られた電源保持時間内に書き込み処理を完了することが難しくなるなどの課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−187461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の幾つかの態様によれば、書き込み処理時間を短縮できる記憶装置、ホスト装置、回路基板、液体容器及びシステム等を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、バスを介して接続されるホスト装置との通信処理を行う制御部と、前記ホスト装置からのデータが書き込まれる記憶部と、前記記憶部のアクセス制御を行う記憶制御部とを含み、前記制御部は、動作モードとして第1のモードと第2のモードとを有し、前記第1のモードでは、前記ホスト装置からのデータ書き込みコマンド及びデータを受信した際に、前記記憶制御部に対して受信したデータの書き込みを指示すると共に、前記記憶部に対して正常にデータが書き込まれた場合に、前記ホスト装置に対してアクノリッジを返信し、前記第2のモードでは、前記ホスト装置からの前記データ書き込みコマンド及びデータを受信した際に、前記記憶制御部に対して受信したデータの書き込みを指示し、前記ホスト装置に対して前記アクノリッジを返信しない記憶装置に関係する。
【0008】
本発明の一態様によれば、第1のモードでは、記憶部に対して正常にデータが書き込まれた場合に、記憶装置がホスト装置に対してアクノリッジを返信することができるから、ホスト装置は各記憶装置においてデータが正常に書き込まれたか否かを判断することができる。また第2のモードでは、ホスト装置が記憶装置からのアクノリッジ返信を待たずに、すなわち記憶部へのデータ書き込みが完了するまで待たずに、次の記憶装置へのデータ送信に移行することができるから、複数の記憶装置に対するデータ書き込み処理の全体の時間を短縮することができる。
【0009】
また本発明の一態様では、リセット端子を含み、前記制御部は、データパケット受信後の、前記記憶制御部からの内部アクノリッジを待つ期間である内部アクノリッジ待ち期間において、前記リセット端子の電圧レベルに基づいて、前記動作モードが前記第1のモードであるか、或いは前記第2のモードであるかを判断してもよい。
【0010】
このようにすれば、制御部は、リセット端子の電圧レベルに基づいて、第1のモード又は第2のモードのいずれかを選択することができる。リセット端子の電圧レベルは、ホスト装置により設定されるから、制御部の動作モードはホスト装置により設定することができる。
【0011】
また本発明の一態様では、クロック端子と、データ端子とを含み、前記制御部は、前記内部アクノリッジ待ち期間において前記リセット端子の電圧レベルがリセット解除を指示する論理レベルである場合に、前記動作モードが前記第1のモードであると判断し、前記クロック端子の電圧レベルが第1の論理レベルであり、且つ、前記記憶部に対して正常にデータが書き込まれた場合に、前記データ端子に対して前記アクノリッジを表す論理レベルの信号を出力してもよい。
【0012】
このようにすれば、ホスト装置がリセット端子の電圧レベルを、リセット解除を指示する論理レベルに設定することで、記憶装置の動作モードを第1のモードに設定することができる。またホスト装置がクロック端子の電圧レベルを第1の論理レベルに設定することで、ホスト装置がアクノリッジを受信可能な状態であることを記憶装置に対して通知することができる。またホスト装置は、データ端子の電圧レベルに基づいてアクノリッジの有無を判断することができる。
【0013】
また本発明の一態様では、前記制御部は、前記内部アクノリッジ待ち期間において前記リセット端子の電圧レベルがリセットを指示する論理レベルになった場合に、前記動作モードが前記第2のモードであると判断してもよい。
【0014】
このようにすれば、ホスト装置がリセット端子の電圧レベルを、リセットを指示する論理レベルに設定することで、記憶装置の動作モードを第2のモードに設定することができる。
【0015】
また本発明の一態様では、前記制御部は、前記内部アクノリッジ待ち期間において、コマンド非受付状態に移行してもよい。
【0016】
このようにすれば、記憶装置は、内部アクノリッジ待ち期間において、ホスト装置からの他の記憶装置に対するコマンドの影響を受けずに、記憶部へのデータ書き込みを行うことができる。
【0017】
本発明の他の態様は、バスを介して接続される第1の記憶装置〜第n(nは2以上の整数)の記憶装置との通信処理を行う通信処理部と、前記通信処理部を制御する制御部とを含み、前記通信処理部は、動作モードとして第1のモードと第2のモードとを有し、前記第1のモードでは、前記第1の記憶装置〜前記第nの記憶装置のうちの第m(mは1≦m≦nである整数)の記憶装置に対するデータ書き込みコマンド及びデータの送信後に、前記第mの記憶装置からのアクノリッジ返信を待つステートに移行し、前記第2のモードでは、前記第mの記憶装置に対する前記データ書き込みコマンド及びデータの送信後に、前記第mの記憶装置からの前記アクノリッジ返信を待つことなく、第m+1の記憶装置に対するデータ書き込みコマンド及びデータを送信するステートに移行するホスト装置に関係する。
【0018】
本発明の他の態様によれば、第1のモードでは、通信処理部は、第mの記憶装置からのアクノリッジを受け取ることができるから、ホスト装置は各記憶装置においてデータが正常に書き込まれたか否かを判断することができる。また第2のモードでは、ホスト装置が第mの記憶装置からのアクノリッジ返信を待たずに、すなわち記憶部へのデータ書き込みが完了するまで待たずに、第m+1の記憶装置へのデータ送信に移行することができるから、複数の記憶装置に対するデータ書き込み処理の全体の時間を短縮することができる。
【0019】
また本発明の他の態様では、リセット端子を含み、前記通信処理部は、前記第2のモードでは、前記第mの記憶装置に対するデータパケット送信後に、前記リセット端子の電圧レベルを、リセットを指示する論理レベルに設定することで、前記動作モードが前記第2のモードであることを前記第mの記憶装置に対して通知してもよい。
【0020】
このようにすれば、ホスト装置は、リセット端子の電圧レベルをリセットを指示する論理レベルに設定することで、第mの記憶装置の動作モードを第2のモードに設定することができる。
【0021】
また本発明の他の態様では、クロック端子を含み、前記通信処理部は、前記第1のモードでは、前記第mの記憶装置に対するデータパケット送信後に、前記クロック端子の電圧レベルを第1の論理レベルに設定し、前記第2のモードでは、前記データパケット送信後に前記クロック端子の電圧レベルを第2の論理レベルに設定してもよい。
【0022】
このようにすれば、クロック端子の電圧レベルを第1の論理レベルに設定することで、ホスト装置がアクノリッジを受信可能な状態であることを第mの記憶装置に対して通知することができる。またクロック端子の電圧レベルを第2の論理レベルに設定することで、ホスト装置がアクノリッジを受信不可能な状態であることを第mの記憶装置に対して通知することができる。
【0023】
また本発明の他の態様では、前記第2のモードでは、前記第mの記憶装置に対してデータを書き込むための書き込み必要期間の長さをtTMとし、前記第mの記憶装置に対するデータパケットを送信してから前記第m+1の記憶装置に対する前記データ書き込みコマンドを送信するまでの期間である送信待ち期間の長さをtTWとした場合に、tTW<tTMであってもよい。
【0024】
このようにすれば、第mの記憶装置に対する書き込み必要期間の経過前に、第m+1の記憶装置に対するデータ書き込みコマンドを送信することができるから、複数の記憶装置に対する書き込み処理の全体の時間を短縮することができる。
【0025】
本発明の他の態様は、上記いずれかに記載の記憶装置を含む回路基板に関係する。
【0026】
本発明の他の態様は、上記いずれかに記載の記憶装置を含む液体容器に関係する。
【0027】
本発明の他の態様は、ホスト装置と、バスを介して前記ホスト装置と接続される第1の記憶装置〜第n(nは2以上の整数)の記憶装置とを含み、前記ホスト装置は、前記第1の記憶装置〜前記第nの記憶装置との通信処理を行う通信処理部と、前記通信処理部を制御するホスト制御部とを含み、前記通信処理部は、動作モードとして第1のモードと第2のモードとを有し、前記第1のモードでは、前記第1の記憶装置〜前記第nの記憶装置のうちの第m(mは1≦m≦nである整数)の記憶装置に対するデータ書き込みコマンド及びデータの送信後に、前記第mの記憶装置からのアクノリッジ返信を待つステートに移行し、前記第2のモードでは、前記第mの記憶装置に対する前記データ書き込みコマンド及びデータの送信後に、前記第mの記憶装置からの前記アクノリッジ返信を待つことなく、第m+1の記憶装置に対するデータ書き込みコマンド及びデータを送信するステートに移行し、前記第mの記憶装置は、前記ホスト装置との通信処理を行う制御部と、前記ホスト装置からのデータが書き込まれる記憶部と、前記記憶部のアクセス制御を行う記憶制御部とを含み、前記制御部は、前記第1のモードでは、前記ホスト装置からのデータ書き込みコマンド及びデータを受信した際に、前記記憶制御部に対して受信したデータの書き込みを指示すると共に、前記記憶部に対して正常にデータが書き込まれた場合に、前記ホスト装置に対してアクノリッジを返信し、前記第2のモードでは、前記ホスト装置からの前記データ書き込みコマンド及びデータを受信した際に、前記記憶制御部に対して受信したデータの書き込みを指示し、前記ホスト装置に対して前記アクノリッジを返信しないシステムに関係する。
【0028】
また本発明の他の態様では、前記ホスト装置は、ホスト側リセット端子を含み、前記通信処理部は、前記第2のモードでは、前記第mの記憶装置に対するデータパケット送信後に、前記ホスト側リセット端子の電圧レベルを、リセットを指示する論理レベルに設定し、前記第mの記憶装置は、リセット端子を含み、前記制御部は、データパケット受信後の、前記記憶制御部からの内部アクノリッジを待つ期間である内部アクノリッジ待ち期間において、前記リセット端子の電圧レベルに基づいて、前記動作モードが前記第1のモードであるか、或いは前記第2のモードであるかを判断してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】記憶装置及びホスト装置の基本的な構成例。
【図2】第1のモードの動作を説明するタイミングチャート。
【図3】第1のモードによるデータ書き込み処理の全体を説明するタイミングチャート。
【図4】第2のモードの動作を説明するタイミングチャート。
【図5】第2のモードによるデータ書き込み処理の全体を説明するタイミングチャート。
【図6】システムの基本的な構成例。
【図7】液体容器の詳細な構成例。
【図8】図8(A)、図8(B)は、回路基板の詳細な構成例。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0031】
1.記憶装置及びホスト装置
図1に本実施形態の記憶装置及びホスト装置の基本的な構成例を示す。本実施形態の記憶装置100は、制御部110、記憶部120、記憶制御部130、クロック端子TCK、データ端子TDA、リセット端子TRSTを含む。また、本実施形態のホスト装置400は、通信処理部410、制御部420、クロック端子HCK、データ端子HDA、リセット端子HRSTを含む。なお、本実施形態の記憶装置及びホスト装置は、図1の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0032】
記憶装置100(100−1〜100−n(nは2以上の整数))は、バスBSを介してホスト装置400と接続される。バスBSは、例えば図1に示すように、クロック信号線SCK、データ信号線SDA、リセット信号線XRSTを含む。クロック信号線SCKを介して、ホスト装置400は、複数の記憶装置100−1〜100−nに対してクロックを供給する。また、データ信号線SDAを介して、ホスト装置400と各記憶装置100との間でデータ等のやり取りが行われる。また、リセット信号線XRSTを介して、ホスト装置400は、複数の記憶装置100−1〜100−nに対してリセット信号を出力する。
【0033】
複数の記憶装置100−1〜100−nは各々ID情報を有し、ホスト装置400は、このID情報を指定することで、複数の記憶装置100−1〜100−nのうちの1つの記憶装置に対してコマンドやデータを送信することができる。例えば図1では、第1の記憶装置100−1のID情報はID=1であり、第2の記憶装置100−2のID情報はID=2である。
【0034】
記憶装置100は、クロック端子TCK(広義には第1の端子)、データ端子TDA(広義には第2の端子)及びリセット端子TRST(広義には第3の端子)を含む。クロック端子TCKにはクロック信号線SCKが接続され、データ端子TDAにはデータ信号線SDAが接続され、リセット端子TRSTにはリセット信号線XRSTが接続される。
【0035】
記憶装置100の制御部110は、バスBSを介して接続されるホスト装置400との通信処理を行う。具体的には、例えば図1に示すように、ホスト装置400からのクロック及びリセット信号に基づいて、データ信号線SDAを介してホスト装置400から送信されるコマンドや書き込みデータなどを受信し、またデータ信号線SDAを介してホスト装置400に対して記憶部120から読み出されたデータや後述するアクノリッジ(Acknowledge)などを送信する。
【0036】
記憶部120は、例えばEEPROMや強誘電体メモリーなどの不揮発性メモリー装置であって、ホスト装置400からのデータが書き込まれる。記憶制御部130は、記憶部120のアクセス制御を行う。
【0037】
制御部110は、例えばIDコンパレーターID_COMP、I/OコントローラーI/O_CNTL、オペレーションコードデコーダーOPCDEC、アドレスカウンターADDR_COUNTを含む。IDコンパレーターID_COMPは、ホスト装置400から送信されたID情報が自分自身のID情報と一致するか否かを比較する。一致する場合には、オペレーションコードデコーダーOPCDECに対してイネーブル信号を出力し、オペレーションコードデコーダーOPCDECはホスト装置400から送信されたコマンド(オペレーションコード)をデコードする。一方、ホスト装置400から送信されたID情報が自分自身のID情報と一致しない場合には、送信されたコマンドは無視される。
【0038】
具体的には、ホスト装置400から送信されたコマンドが書き込みコマンドである場合には、I/OコントローラーI/O_CNTLは、ホスト装置400からの書き込みデータを受信し、受信した書き込みデータdataを記憶制御部130に出力する。記憶制御部130は、オペレーションコードデコーダーOPCDECからの書き込み命令wrに基づいて、メモリーデータm_dataを記憶部120に書き込む。この書き込む際のアドレス情報addrは、ホスト装置400からのクロックに基づいてアドレスカウンターADDR_COUNTにより生成され、書き込みデータはシーケンシャルに、すなわち送信された順番に記憶部120の連続するアドレスに書き込まれる。書き込みデータが記憶部120に正常に書き込まれた場合には、記憶制御部130は、内部アクノリッジ(Acknowledge)i_ackをI/OコントローラーI/O_CNTLに出力する。
【0039】
ホスト装置400から送信されたコマンドが読み出しコマンドである場合には、記憶制御部130は、オペレーションコードデコーダーOPCDECからの読み出し命令rdに基づいて、記憶部120からメモリーデータm_dataを読み出す。この読み出す際のアドレス情報addrもホスト装置400からのクロックに基づいてアドレスカウンターADDR_COUNTにより生成され、シーケンシャルに読み出される。
【0040】
制御部110は、動作モードとして第1、第2のモード(第1、第2の動作モード)を有する。第1のモードでは、制御部110は、ホスト装置400からのデータ書き込みコマンド及びデータを受信した際に、記憶制御部130に対して受信したデータの書き込みを指示すると共に、記憶部120に対して正常にデータが書き込まれた場合に、ホスト装置400に対してアクノリッジACKを返信する。このアクノリッジACKは、データが記憶部120に正常に書き込まれたことをホスト装置400に通知するためのものである。ホスト装置400は、アクノリッジACKを受信することで、各記憶装置においてデータが正常に書き込まれたことを認識することができる。
【0041】
一方、第2のモードでは、ホスト装置400からのデータ書き込みコマンド及びデータを受信した際に、記憶制御部130に対して受信したデータの書き込みを指示するが、ホスト装置400に対してアクノリッジACKを返信しない。この第2のモードでは、ホスト装置400が、各記憶装置においてデータが正常に書き込まれたか否かを知ることができないが、後述するように、バスに接続された複数の記憶装置に対するデータ書き込み処理の全体の時間を短縮することができる。
【0042】
上記の動作モード(第1、第2のモード)は、後述するホスト装置400の通信処理部410の動作モードに基づいて設定される。すなわち、制御部110は、データパケット受信後の、記憶制御部130からの内部アクノリッジi_ackを待つ期間である内部アクノリッジ待ち期間IAKWにおいて、リセット端子TRSTの電圧レベルに基づいて、動作モードが第1のモードであるか、或いは第2のモードであるかを判断する。これについては、後で具体的に説明する。
【0043】
制御部110の動作モード(第1、第2のモード)は、例えばステートマシンなどで実現することができる。具体的には、このステートマシンは、書き込みコマンドや内部アクノリッジi_ackやリセット端子TRSTの電圧レベル(リセット信号)などの入力に基づいて状態(ステート)遷移し、遷移先のステートにおいて所定の命令(例えばデータ書き込み命令やアクノリッジACK返信命令など)を出力する。
【0044】
ホスト装置400は、通信処理部410、制御部420、クロック端子HCK、データ端子HDA、リセット端子HRSTを含む。通信処理部410は、バスBSを介して接続される複数の記憶装置100−1〜100−nとの通信処理を行う。制御部420は、通信処理部410を制御する。
【0045】
通信処理部410は、動作モードとして第1、第2のモードを有する。第1のモードでは、通信処理部410は、第1〜第nの記憶装置100−1〜100−nのうちの第m(mは1≦m≦nである整数)の記憶装置100−mに対するデータ書き込みコマンド及びデータの送信後に、第mの記憶装置100−mからのアクノリッジACK返信を待つステートに移行する。そして第mの記憶装置100−mからのアクノリッジACKを受け取った後、第m+1の記憶装置100−m+1に対してデータ書き込みコマンド及びデータを送信する。ホスト装置400は、アクノリッジACKを受信することで、各記憶装置においてデータが正常に書き込まれたことを認識することができる。
【0046】
一方、第2のモードでは、通信処理部410は、第mの記憶装置100−mに対するデータ書き込みコマンド及びデータの送信後に、第mの記憶装置100−mからのアクノリッジACK返信を待つことなく、第m+1の記憶装置100−m+1に対するデータ書き込みコマンド及びデータを送信するステートに移行する。この第2のモードでは、ホスト装置400は、各記憶装置においてデータが正常に書き込まれたか否かを知ることができないが、後述するように、バスに接続された複数の記憶装置に対するデータ書き込み処理の全体の時間を短縮することができる。
【0047】
通信処理部410は、第2のモードでは、第mの記憶装置100−mに対するデータパケット送信後に、リセット端子HRSTの電圧レベルを、リセットを指示する論理レベルに設定することで、動作モードが第2のモードであることを第mの記憶装置100−mに対して通知する。そして第mの記憶装置100−mの制御部110は、内部アクノリッジ待ち期間IAKWにおいて、リセット端子TRSTの電圧レベルに基づいて、動作モードが第1のモードであるか、或いは第2のモードであるかを判断することができる。
【0048】
本実施形態の記憶装置及びホスト装置によれば、第1のモードでは、ホスト装置が各記憶装置からのアクノリッジを受け取ることができるから、各記憶装置においてデータが正常に書き込まれたか否かを判断することができる。また第2のモードでは、ホスト装置が各記憶装置からのアクノリッジ返信を待たずに、次の記憶装置へのデータ送信に移行することができるから、複数の記憶装置に対するデータ書き込み処理の全体の時間を短縮することができる。
【0049】
2.第1のモードによる書き込み処理
図2は、本実施形態の記憶装置における第1のモードの動作を説明するタイミングチャートである。図2には、リセット信号XRST、クロック信号SCK及びデータ信号SDAの各信号波形と、2つの記憶装置(ID=1、2)における制御部110、記憶部120の動作状態及び内部信号wr、i_ackの信号波形とを示す。
【0050】
図2において、I及びIDLはアイドル期間、IDCはID認識期間、C及びCMDはコマンド認識期間、D及びDATはデータ受信期間、IAKWは内部アクノリッジ待ち期間、MWRTはメモリー書き込み期間、AKSはアクノリッジ返信期間、Rはリセット期間、Nは受信したID情報と自身のID情報とが不一致であることを認識するID不一致認識期間を示す。
【0051】
リセット信号XRSTがHレベル(高電位レベル、広義には第1の論理レベル)である場合に、記憶装置100はリセット解除状態であり、リセット信号XRSTがLレベル(低電位レベル、広義には第2の論理レベル)である場合に、記憶装置100はリセット状態である。リセット信号XRSTがHレベルである期間、すなわちリセットが解除されている期間において、制御部110が動作状態(アクティブ状態)であり、ホスト装置400からのコマンド及びデータを受信し、またホスト装置400に対しアクノリッジACKを送信することができる。
【0052】
最初に、ホスト装置400は、リセット信号XRSTをLレベルからHレベルに設定して記憶装置のリセットを解除する。そして制御部110は、アイドル状態になる(図2のIで示す期間)。
【0053】
次にホスト装置400は、第1の記憶装置(ID=1)に対してID情報、書き込みコマンド及びデータを送信する。図2に示すように、例えばID情報はI0〜Ii(iは自然数)のi+1ビットで構成され、これにパリティビットIPが付加される。また例えば書き込みコマンドはC0〜Cj(jは自然数)のj+1で構成され、これにパリティビットCPが付加される。また例えばデータはD0〜Dkのk+1ビットで構成され、これにパリティビットDPが付加される。パリティビットIP、CP、DPは、パリティチェックのために付加されるビットであって、1の個数が常に偶数若しくは奇数となるように付加されるビットである。
【0054】
第1の記憶装置(ID=1)のIDコンパレーターID_COMPは、ID認識期間IDCにおいて、受信したID情報と自身のID情報とが一致することを認識する。続くコマンド認識期間CMDにおいて、オペレーションコードデコーダーOPCDECは、受信したコマンドが書き込みコマンドであることを認識する。次のデータ受信期間DATにおいて、I/OコントローラーI/O_CNTLは、データを受信して記憶制御部130に出力する。そしてオペレーションコードデコーダーOPCDECは、記憶制御部130に対して書き込み信号wrを出力し、メモリー書き込み期間MWRTにおいて、記憶部120にデータが書き込まれる。このメモリー書き込み期間MWRTにおいて、制御部110は内部アクノリッジ待ち期間IAKWとなり、記憶制御部130から内部アクノリッジ信号i_ackが出力されるのを待つ。データが正常に書き込まれた場合には、記憶制御部130は、内部アクノリッジ信号i_ackを制御部110に出力する。制御部110は、内部アクノリッジ信号i_ackを受け取ると、ホスト装置400に対してアクノリッジACKを返信する(図2のAKSで示す期間)。
【0055】
ホスト装置400の通信処理部410は、第1の記憶装置(ID=1)に対してID情報、書き込みコマンド及びデータを送信した後、クロック信号SCKをHレベルに保持する。こうすることで、ホスト装置400がアクノリッジACKを受信可能な状態であることを記憶装置100に対して通知することができる。そしてホスト装置400がアクノリッジACKを受信すると、クロック信号SCKをLレベルに戻し、次にリセット信号XRSTをLレベルに設定して記憶装置100をリセットする(図2のRで示す期間)。
【0056】
一方、第2の記憶装置(ID=2)の制御部110は、最初のID認識期間において、受信したID情報と自身のID情報とが不一致であることを認識する(図2のNで示す期間)。そして、コマンド及びデータを受信せずに、アイドル期間IDLになる。次のID認識期間IDCにおいて、受信したID情報と自身のID情報とが一致することを認識した場合には、書き込みコマンド及びデータを受信する(図2のC、Dで示す期間)。そしてメモリー書き込み期間MWRTにおいて、記憶部120にデータが書き込まれる。このメモリー書き込み期間MWRTにおいて、制御部110は内部アクノリッジ待ち期間IAKWとなり、内部アクノリッジ信号i_ackが出力されるのを待つ。データが正常に書き込まれた場合には、内部アクノリッジ信号i_ackが出力され、制御部110は、ホスト装置400に対してアクノリッジACKを返信する(図2のAKSで示す期間)。
【0057】
以上に説明したように、制御部110は、内部アクノリッジ待ち期間IAKWにおいてリセット端子TRSTの電圧レベルがHレベル(広義には、リセット解除を指示する論理レベル)である場合に、動作モードが第1のモードであると判断する。そしてクロック端子TCKの電圧レベルがHレベル(広義には、第1の論理レベル)であり、且つ、記憶部120に対して正常にデータが書き込まれた場合に、データ端子TDAに対してアクノリッジACKを表す論理レベル(例えば図2ではHレベル)の信号を出力する。
【0058】
またホスト装置400の通信処理部410は、第1のモードでは、記憶装置100に対するデータパケット送信後にクロック端子HCKの電圧レベルをHレベル(広義には、第1の論理レベル)に設定する。こうすることで、ホスト装置400がアクノリッジACKを受信可能な状態であることを記憶装置100に対して通知することができる。
【0059】
図3は、4個の記憶装置(ID=1〜4)がバスに接続される場合について、第1のモードによるデータ書き込み処理の全体を説明するタイミングチャートである。図3には、リセット信号XRST、クロック信号SCK及びデータ信号SDAの各信号波形と、ホスト装置400及び各記憶装置100の動作状態(ステート)とを示す。なお、記憶装置が4個以外の場合であっても、図3と同様に処理を行うことができる。
【0060】
図3において、ICDはID情報、コマンド及びデータの送信期間(又は受信期間)、ACKWはアクノリッジ待ち期間、AKRはアクノリッジ受信期間、RSはリセット信号XRSTをアクティブにする期間、I及びIDLはアイドル期間、IAKWは内部アクノリッジ待ち期間、MWRTはメモリー書き込み期間、AKSはアクノリッジ返信期間、Rはリセット期間、Nは受信したID情報と自身のID情報とが不一致であることを認識するID不一致認識期間を示す。
【0061】
図3に示すように、第1のモードでは、ホスト装置400から第1の記憶装置(ID=1)にデータが送信され、記憶部120へのデータ書き込みが正常に実行された後、第1の記憶装置100−1からホスト装置400に対してアクノリッジACKが返信される。そして第2〜第4の記憶装置(ID=2〜4)についても同様に書き込み処理が行われる。
【0062】
第1のモードでは、データの受信が完了してから、メモリー書き込み期間MWRT、すなわち書き込み必要期間TMの経過後に、記憶装置からアクノリッジACKが返信される。そしてホスト装置はアクノリッジACKを受け取ってから、次の記憶装置へのデータ書き込み処理を開始する。このために、書き込み必要期間の長さをtTMとした場合に、例えば図3に示すように4個の記憶装置が接続される場合では、データ等の通信に要する時間の他に、さらに4×tTMの時間が必要になる。通常の場合、記憶部にデータを書き込むための時間は、通信に要する時間よりも長い。例えば1個の記憶装置に対するデータ等の通信に要する時間は約100μsであるが、書き込み必要期間の長さtTMは約5msである。従って、図3では、全体の書き込み必要期間の長さは約20msになる。
【0063】
このように第1のモードでは、ホスト装置が各記憶装置からのアクノリッジACKを受け取ることができるから、各記憶装置についてデータが正常に書き込まれたか否かを判断することができるが、その一方で全体の書き込み処理時間が長くなる。
【0064】
3.第2のモードによる書き込み処理
図4は、本実施形態の記憶装置における第2のモードの動作を説明するタイミングチャートである。図4には、リセット信号XRST、クロック信号SCK及びデータ信号SDAの各信号波形と、2つの記憶装置(ID=1、2)における制御部110、記憶部120の動作状態及び内部信号wr、i_ackの信号波形とを示す。なお、図4における符号は、図2に示したものと同じであるから、ここでは説明を省略する。
【0065】
最初に、ホスト装置400は、リセット信号XRSTをLレベルからHレベルに設定して記憶装置のリセットを解除する。そして制御部110は、アイドル状態になる。次にホスト装置400は、第1の記憶装置(ID=1)に対してID情報、書き込みコマンド及びデータを送信する。
【0066】
第1の記憶装置(ID=1)のIDコンパレーターID_COMPは、ID認識期間IDCにおいて、受信したID情報と自身のID情報とが一致することを認識する。続くコマンド認識期間CMDにおいて、オペレーションコードデコーダーOPCDECは、受信したコマンドが書き込みコマンドであることを認識する。次のデータ受信期間DATにおいて、I/OコントローラーI/O_CNTLは、データを受信して記憶制御部130に出力する。そしてオペレーションコードデコーダーOPCDECは、記憶制御部130に対して書き込み信号wrを出力し、メモリー書き込み期間MWRTにおいて、記憶部120にデータが書き込まれる。このメモリー書き込み期間MWRTにおいて、制御部110は内部アクノリッジ待ち期間IAKWとなり、記憶制御部130から内部アクノリッジ信号i_ackが出力されるのを待つ。
【0067】
ホスト装置400の通信処理部410は、第1の記憶装置(広義には第mの記憶装置)に対するデータパケット送信後に、クロック端子HCKの電圧レベルをLレベル(広義には、第2の論理レベル)に設定する。次にリセット信号XRSTをLレベルに設定してバスをリセットする。そしてリセット信号XRSTをHレベルに戻してバスのリセットを解除した後、第2の記憶装置(ID=2)に対してID情報、書き込みコマンド及びデータの送信を開始する。
【0068】
ホスト装置400の通信処理部410は、第1の記憶装置(広義には第mの記憶装置)に対するデータパケット送信後にリセット端子HRSTの電圧レベルをLレベル(広義には、リセットを指示する論理レベル)に設定することで、動作モードが第2のモードであることを第1の記憶装置(広義には第mの記憶装置)に対して通知する。
【0069】
第1の記憶装置(ID=1)の制御部110は、内部アクノリッジ待ち期間IAKWにおいてリセット端子TRSTの電圧レベルがLレベル(広義には、リセットを指示する論理レベル)になった場合に、動作モードが第2のモードであると判断する。そして第2のモードであると判断した制御部110は、記憶制御部130に対して受信したデータの書き込みを指示するが、ホスト装置400に対してアクノリッジACKを返信しない。
【0070】
第1の記憶装置(ID=1)のメモリー書き込み期間MWRT(内部アクノリッジ待ち期間IAKW)において、すなわち第1の記憶装置のメモリー書き込み中に、第2の記憶装置(ID=2)に対するデータの送信処理が並行して実行される。このようにしても、制御部110は、内部アクノリッジ待ち期間IAKWにおいては、ホスト装置400からのコマンドを受け付けないから、第2の記憶装置(ID=2)に対するデータの送信処理によって第1の記憶装置(ID=1)のメモリー書き込み処理が影響を受けることはない。
【0071】
第1の記憶装置(ID=1)のメモリー書き込みが正常に実行された場合には、記憶制御部130から内部アクノリッジ信号i_ackが制御部110に対して出力される。制御部110は、内部アクノリッジ信号i_ackを受け取ると、アクノリッジACKを返信することなく、リセット状態に設定される。
【0072】
第2の記憶装置(ID=2)についても、第1の記憶装置と同様にして、メモリー書き込み期間MWRTにおいて記憶部120への書き込み処理が実行され、正常に書き込まれた場合には記憶制御部130から内部アクノリッジ信号i_ackが制御部110に対して出力される。制御部110は、内部アクノリッジ信号i_ackを受け取ると、アクノリッジACKを返信することなく、リセット状態に設定される。
【0073】
以上に説明したように、制御部110は、内部アクノリッジ待ち期間IAKWにおいてリセット端子TRSTの電圧レベルがLレベル(広義には、リセットを指示する論理レベル)になった場合に、動作モードが第2のモードであると判断する。そして記憶制御部130に対して受信したデータの書き込みを指示するが、ホスト装置400に対してアクノリッジACKを返信しない。
【0074】
ホスト装置400の通信処理部410は、第2のモードでは、第mの記憶装置に対するデータ書き込みコマンド及びデータの送信後に、第mの記憶装置からのアクノリッジ返信を待つことなく、第m+1の記憶装置に対するデータ書き込みコマンド及びデータを送信するステートに移行する。また通信処理部410は、第mの記憶装置に対するデータパケット送信後にリセット端子HRSTの電圧レベルをLレベル(広義には、リセットを指示する論理レベル)に設定することで、動作モードが第2のモードであることを第mの記憶装置に対して通知することができる。
【0075】
図5は、4個の記憶装置(ID=1〜4)がバスに接続される場合について、第2のモードによるデータ書き込み処理の全体を説明するタイミングチャートである。図5には、リセット信号XRST、クロック信号SCK及びデータ信号SDAの各信号波形と、ホスト装置400及び各記憶装置100の動作状態(ステート)とを示す。なお、記憶装置が4個以外の場合であっても、図5と同様に処理を行うことができる。図5における符号は、図3に示したものと同じであるから、ここでは説明を省略する。
【0076】
図5に示すように、第2のモードでは、ホスト装置400による第1の記憶装置(ID=1)への送信処理の後、送信待ち期間TWの経過後に、第2の記憶装置(ID=2)への送信処理が開始される。そして同様に、第3、第4の記憶装置(ID=3、4)に対して送信処理が実行される。
【0077】
第1の記憶装置では、ホスト装置400からデータを受信した後のメモリー書き込み期間MWRTにおいて、記憶部120への書き込み処理が実行される。そしてこの書き込み処理と並行して、第2の記憶装置においてデータの受信処理が行われ、メモリー書き込み処理が開始される。このように第1〜第4の記憶装置の書き込み処理が並行して行われるから、全体の書き込み処理時間を短縮することができる。
【0078】
具体的には、データ等の通信時間をtCOM、送信待ち期間TWの長さをtTW、メモリーへの書き込み必要期間TMの長さをtTMとした場合に、例えば図5では全体の書き込み処理時間は、4×tCOM+3×tTW+tTMで与えられる。通常の場合、記憶部にデータを書き込むための時間は、通信に要する時間よりも長い。例えばtCOM及びtTWは約100μsであり、tTMは約5msであるから、全体の書き込み処理時間は、約5.7msになる。上述したように第1のモードでは、全体の書き込み処理時間は4×tTM=20msより長くなるから、第2のモードを用いることで、全体の書き込み処理時間を短縮することができる。
【0079】
以上に説明したように、第2のモードでは、第mの記憶装置に対してデータを書き込むための書き込み必要期間TMの長さをtTMとし、第mの記憶装置に対するデータパケットを送信してから第m+1の記憶装置に対するデータ書き込みコマンドを送信するまでの期間である送信待ち期間TWの長さをtTWとした場合に、tTW<tTMである。このようにすることで、第mの記憶装置に対する書き込み必要期間TMの経過前に、第m+1の記憶装置に対するデータ書き込みコマンドを送信することができるから、バスに接続された複数の記憶装置に対する書き込み処理の全体の時間を短縮することができる。
【0080】
4.システム、液体容器及び回路基板
図6に本実施形態のシステムの基本的な構成例を示す。本実施形態のシステムは、例えばインクジェット方式のプリンターなどであって、第1の記憶装置100−1〜第n(nは2以上の整数)の記憶装置100−n、記憶装置が実装されるn個の回路基板200−1〜200−n、回路基板を備えるn個の液体容器300−1〜300−n及びホスト装置400を含む。なお、本実施形態のシステムは図6の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0081】
以下では、ホスト装置400がインクジェット方式のプリンター本体であり、液体容器300がインクカートリッジであり、回路基板200がインクカートリッジに設けられた回路基板である場合を例に説明する。但し、本実施形態では、ホスト装置、液体容器、回路基板は、他の装置、容器、回路基板であってもよい。例えば、ホスト装置はメモリーカードのリーダー/ライターであってもよく、回路基板はメモリーカードに設けられた回路基板であってもよい。
【0082】
第1の記憶装置100−1〜第nの記憶装置100−nは、それぞれリセット端子TRST、クロック端子TCK、データ端子TDA、第1の電源端子VDD及び第2の電源端子VSSを含む。これらn個の記憶装置100−1〜100−nの各々は、記憶部120(例えば不揮発性メモリー等)を含み、それぞれの記憶部120にはn個の液体容器(例えばインクカートリッジ等)300−1〜300−nを識別するためのID(Identification)情報(例えばID=1、ID=2、ID=3など)が記憶されている。IDは、液体容器が収容する液体の色などの種類毎に異なるものが付与される。また記憶部120には、液体容器のインク残量(又はインク消費量)などのデータが、ホスト装置400により書き込まれる。
【0083】
ホスト装置400は、例えばプリンター本体などであって、ホスト側リセット端子HRST、ホスト側クロック端子HCK、ホスト側データ端子HDA、第1の電源端子VDD及び第2の電源端子VSSを含む。
【0084】
上述したように、本実施形態の記憶装置、ホスト装置及びシステムによれば、ホスト装置(プリンター本体)400が、バスに接続された複数の記憶装置の各記憶装置100に対してデータを書き込む処理において、2つの動作モード(第1、第2のモード)のいずれかを選択することができる。
【0085】
第1のモードでは、ホスト装置400が、各記憶装置100からのアクノリッジACKを受信することができるから、各記憶装置100においてデータが正常に書き込まれたことを認識することができる。従って、例えばプリンターが通常に使用されている場合などでは、第1のモードによる書き込み処理を行うことで、正常にデータが書き込まれなかった記憶装置に対して再書き込み処理(リトライ)を行うことができる。その結果、記憶装置に記憶されたデータ(インク残量など)の信頼性が高まるから、液体容器にインクが残っているにもかかわらず使用できないなどの不具合を低減することが可能になる。
【0086】
一方、第2のモードでは、ホスト装置400が、各記憶装置100においてデータが正常に書き込まれたか否かを知ることができないが、複数の記憶装置に対するデータ書き込み処理の全体の時間を短縮することができる。従って、例えばプリンター使用中に停電した場合やユーザーが誤って電源コンセントを抜いてしまった場合などでは、第2のモードによる書き込み処理を行うことで、短い電源保持時間内に書き込み処理を完了することができる。その結果、電源保持のためのキャパシターの容量を小さくすることができるから、プリンター(システム)の製造コストを低減することなどが可能になる。
【0087】
具体的には、例えば停電或いはコンセント引き抜き等による通常でない電源遮断が生じた場合には、プリンター本体(ホスト装置)の電源回路(図示せず)が通常でない電源遮断を検出し、制御部420はその検出結果に基づいて通信処理部410に対して第2のモードによるデータ書き込みを指示する。そして通信処理部410は、バスに接続された複数の記憶装置100−1〜100−nに対して第2のモードによるデータ書き込み処理を実行することができる。上述したように、第2のモードでは書き込み処理時間を短縮できるから、限られた電源保持時間内に全ての記憶装置に対する書き込みを完了することが可能になる。
【0088】
図7に、本実施形態の液体容器(インクカートリッジ)300の詳細な構成例を示す。液体容器300の内部には、インクを収容するための図示しないインク室が形成される。また、液体容器300には、インク室に連通するインク供給口340が設けられる。このインク供給口340は、液体容器300がプリンターに装着された時に、印刷ヘッドユニットにインクを供給するためのものである。
【0089】
液体容器300は、回路基板200を含む。回路基板200には、本実施形態の記憶装置100が設けられ、インク消費量などのデータの記憶やホスト装置400とのデータ送受信を行う。回路基板200は、例えばプリント基板により実現され、液体容器300の表面に設けられる。回路基板200には、第1の電源端子VDD等の端子が設けられる。そして、液体容器300がプリンターに装着された時に、それらの端子とプリンター側の端子が接触(電気的に接続)することで、電源やデータのやり取りが行われる。
【0090】
図8(A)、図8(B)に、本実施形態の記憶装置100が設けられた回路基板200の詳細な構成例を示す。図8(A)に示すように、回路基板200の表面(プリンターと接続される面)には、複数の端子を有する端子群が設けられる。この端子群は、第1の電源端子VDD、第2の電源端子VSS、リセット端子TRST、クロック端子TCK、データ端子TDAを含む。各端子は、例えば矩形状(略矩形状)に形成された金属端子により実現される。そして、各端子は、回路基板200に設けられた図示しない配線パターン層やスルーホールを介して、記憶装置100に接続される。
【0091】
図8(B)に示すように、回路基板200の裏面(プリンターと接続される面の裏側の面)には、本実施形態の記憶装置100が設けられる。記憶装置100は、例えば、フラッシュメモリーや強誘電体メモリー等を有する半導体記憶装置により実現できる。この記憶装置100には、インク又は液体容器300に関連する種々のデータが格納され、例えば、液体容器300を識別するためのID情報やインクの消費量等のデータが格納される。インク消費量のデータは、液体容器300内に収容されたインクについて、印刷の実行等に伴い消費されるインク量の累計を示すデータである。このインク消費量のデータは、液体容器300内のインク量を示す情報であってもよく、消費したインク量の割合を示す情報であってもよい。
【0092】
なお、以上のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また記憶装置、ホスト装置、回路基板、液体容器及びシステムの構成、動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0093】
100 記憶装置、110 制御部、120 記憶部、130 記憶制御部、
200 回路基板、300 液体容器、340 インク供給口、400 ホスト装置、
410 通信処理部、420 制御部、
ID_COMP IDコンパレーター、I/O_CNTL I/Oコントローラー、
OPCDEC オペレーションコードデコーダー、
ADDR_COUNT アドレスカウンター、
SCK クロック信号線、SDA データ信号線、XRST リセット信号線、
TCK クロック端子、TDA データ端子、TRST リセット端子、
HCK クロック端子、HDA データ端子、HRST リセット端子、
ACK アクノリッジ、i_ack 内部アクノリッジ、
TM 書き込み必要期間、TW 送信待ち期間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バスを介して接続されるホスト装置との通信処理を行う制御部と、
前記ホスト装置からのデータが書き込まれる記憶部と、
前記記憶部のアクセス制御を行う記憶制御部とを含み、
前記制御部は、
動作モードとして第1のモードと第2のモードとを有し、
前記第1のモードでは、前記ホスト装置からのデータ書き込みコマンド及びデータを受信した際に、前記記憶制御部に対して受信したデータの書き込みを指示すると共に、前記記憶部に対して正常にデータが書き込まれた場合に、前記ホスト装置に対してアクノリッジを返信し、
前記第2のモードでは、前記ホスト装置からの前記データ書き込みコマンド及びデータを受信した際に、前記記憶制御部に対して受信したデータの書き込みを指示し、前記ホスト装置に対して前記アクノリッジを返信しないことを特徴とする記憶装置。
【請求項2】
請求項1において、
リセット端子を含み、
前記制御部は、
データパケット受信後の、前記記憶制御部からの内部アクノリッジを待つ期間である内部アクノリッジ待ち期間において、前記リセット端子の電圧レベルに基づいて、前記動作モードが前記第1のモードであるか、或いは前記第2のモードであるかを判断することを特徴とする記憶装置。
【請求項3】
請求項2において、
クロック端子と、
データ端子とを含み、
前記制御部は、
前記内部アクノリッジ待ち期間において前記リセット端子の電圧レベルがリセット解除を指示する論理レベルである場合に、前記動作モードが前記第1のモードであると判断し、
前記クロック端子の電圧レベルが第1の論理レベルであり、且つ、前記記憶部に対して正常にデータが書き込まれた場合に、前記データ端子に対して前記アクノリッジを表す論理レベルの信号を出力することを特徴とする記憶装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記制御部は、
前記内部アクノリッジ待ち期間において前記リセット端子の電圧レベルがリセットを指示する論理レベルになった場合に、前記動作モードが前記第2のモードであると判断することを特徴とする記憶装置。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれかにおいて、
前記制御部は、
前記内部アクノリッジ待ち期間において、コマンド非受付状態に移行することを特徴とする記憶装置。
【請求項6】
バスを介して接続される第1の記憶装置〜第n(nは2以上の整数)の記憶装置との通信処理を行う通信処理部と、
前記通信処理部を制御する制御部とを含み、
前記通信処理部は、
動作モードとして第1のモードと第2のモードとを有し、
前記第1のモードでは、前記第1の記憶装置〜前記第nの記憶装置のうちの第m(mは1≦m≦nである整数)の記憶装置に対するデータ書き込みコマンド及びデータの送信後に、前記第mの記憶装置からのアクノリッジ返信を待つステートに移行し、
前記第2のモードでは、前記第mの記憶装置に対する前記データ書き込みコマンド及びデータの送信後に、前記第mの記憶装置からの前記アクノリッジ返信を待つことなく、第m+1の記憶装置に対するデータ書き込みコマンド及びデータを送信するステートに移行することを特徴とするホスト装置。
【請求項7】
請求項6において、
リセット端子を含み、
前記通信処理部は、
前記第2のモードでは、前記第mの記憶装置に対するデータパケット送信後に、前記リセット端子の電圧レベルを、リセットを指示する論理レベルに設定することで、前記動作モードが前記第2のモードであることを前記第mの記憶装置に対して通知することを特徴とするホスト装置。
【請求項8】
請求項7において、
クロック端子を含み、
前記通信処理部は、
前記第1のモードでは、前記第mの記憶装置に対するデータパケット送信後に、前記クロック端子の電圧レベルを第1の論理レベルに設定し、
前記第2のモードでは、前記データパケット送信後に前記クロック端子の電圧レベルを第2の論理レベルに設定することを特徴とするホスト装置。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれかにおいて、
前記第2のモードでは、
前記第mの記憶装置に対してデータを書き込むための書き込み必要期間の長さをtTMとし、前記第mの記憶装置に対するデータパケットを送信してから前記第m+1の記憶装置に対する前記データ書き込みコマンドを送信するまでの期間である送信待ち期間の長さをtTWとした場合に、tTW<tTMであることを特徴とするホスト装置。
【請求項10】
請求項1乃至5のいずれかに記載の記憶装置を含むことを特徴とする回路基板。
【請求項11】
請求項1乃至5のいずれかに記載の記憶装置を含むことを特徴とする液体容器。
【請求項12】
ホスト装置と、
バスを介して前記ホスト装置と接続される第1の記憶装置〜第n(nは2以上の整数)の記憶装置とを含み、
前記ホスト装置は、
前記第1の記憶装置〜前記第nの記憶装置との通信処理を行う通信処理部と、
前記通信処理部を制御するホスト制御部とを含み、
前記通信処理部は、
動作モードとして第1のモードと第2のモードとを有し、
前記第1のモードでは、前記第1の記憶装置〜前記第nの記憶装置のうちの第m(mは1≦m≦nである整数)の記憶装置に対するデータ書き込みコマンド及びデータの送信後に、前記第mの記憶装置からのアクノリッジ返信を待つステートに移行し、
前記第2のモードでは、前記第mの記憶装置に対する前記データ書き込みコマンド及びデータの送信後に、前記第mの記憶装置からの前記アクノリッジ返信を待つことなく、第m+1の記憶装置に対するデータ書き込みコマンド及びデータを送信するステートに移行し、
前記第mの記憶装置は、
前記ホスト装置との通信処理を行う制御部と、
前記ホスト装置からのデータが書き込まれる記憶部と、
前記記憶部のアクセス制御を行う記憶制御部とを含み、
前記制御部は、
前記第1のモードでは、前記ホスト装置からのデータ書き込みコマンド及びデータを受信した際に、前記記憶制御部に対して受信したデータの書き込みを指示すると共に、前記記憶部に対して正常にデータが書き込まれた場合に、前記ホスト装置に対してアクノリッジを返信し、
前記第2のモードでは、前記ホスト装置からの前記データ書き込みコマンド及びデータを受信した際に、前記記憶制御部に対して受信したデータの書き込みを指示し、前記ホスト装置に対して前記アクノリッジを返信しないことを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項12において、
前記ホスト装置は、ホスト側リセット端子を含み、
前記通信処理部は、
前記第2のモードでは、前記第mの記憶装置に対するデータパケット送信後に、前記ホスト側リセット端子の電圧レベルを、リセットを指示する論理レベルに設定し、
前記第mの記憶装置は、リセット端子を含み、
前記制御部は、
データパケット受信後の、前記記憶制御部からの内部アクノリッジを待つ期間である内部アクノリッジ待ち期間において、前記リセット端子の電圧レベルに基づいて、前記動作モードが前記第1のモードであるか、或いは前記第2のモードであるかを判断することを特徴とするシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−81629(P2012−81629A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228904(P2010−228904)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】