説明

記録装置、及び記録装置の初期化処理の実行方法

【課題】電源を投入したときなどに最初に実行される初期化処理を簡略化する。
【解決手段】キャリッジの移動可能領域内で原点位置から第1の距離に配置され、キャリッジに対して当接することでキャリッジの移動を規制する当接位置と、キャリッジから離間することでキャリッジの移動を許容する離間位置との間で変位可能なストッパを備えた記録装置であって、電源が投入されたときに、まずキャリッジの原点位置を検出し、その後、キャリッジを原点位置からストッパの方向に移動させて、キャリッジの移動が規制されたか否か、且つキャリッジの移動距離が第1の距離から前記キャリッジの幅分を引いた第2の距離か否か、に基づいて初期化処理を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源投入時に記録ヘッドを搭載したキャリッジの原点位置検出処理を含む初期化処理を実行する記録装置、及びその初期化処理の実行方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、所定の方向に往復移動可能であって記録ヘッドを搭載したキャリッジを備える記録装置、いわゆるシリアルプリンタにおいては、その電源投入時に、記録ヘッドを搭載したキャリッジの原点位置検出処理が行われている。例えば、特許文献1には、電源投入によるプリンタの初期動作時に、キャリッジを往復移動させるシリアルプリンタが記載されている。このシリアルプリンタによれば、電源が投入されて初期動作が実行されるとき、未知の位置に停止していたキャリッジは、まず移動可能領域の一端部にある原点位置に向けて移動される。そしてストッパに当接する等してキャリッジが停止したら、その位置を仮の原点位置として記憶し、今度はキャリッジの移動領域における原点位置とは反対側の方向に所定距離だけ移動させる。キャリッジが所定距離だけ移動できた場合には、仮の原点位置を真の原点位置として記憶し、更にキャリッジを原点位置近傍の待機位置へと移動させるのである。一方、キャリッジが所定距離だけ移動できなかった場合には、仮の原点位置が不正確だったということになるので、エラーを報知するのである。
【0003】
【特許文献1】特許第3061091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のシリアルプリンタにおいては、電源投入時のプリンタの初期動作時に、キャリッジが必ず移動可能領域を往復移動するため、電源投入後できるだけ早急に画像の記録等を実行したい利用者にとっては非常に煩わしいという問題があった。
【0005】
また、原点位置検出に一度失敗しただけでエラーを報知するので、利用者にとってはこの点においても非常に煩わしいという問題があった。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電源投入時の初期動作を簡略化して利用者の待機時間を短縮化するとともに、原点位置検出に失敗した場合でも再度原点位置検出を実行することで利用者の利便性を高めることのできる記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、被記録媒体に対して画像を記録可能な記録ヘッドを搭載したキャリッジと、このキャリッジの移動可能領域内の一端部に設けられている原点位置を基準として前記キャリッジを主走査方向に往復移動させる移動手段と、キャリッジの移動距離や移動/停止状態を検出可能なキャリッジ検出手段と、前記キャリッジの原点位置を検出する原点検出手段と、を備え、電源が投入されたときに前記キャリッジの原点位置検出処理を含む初期化処理を実行する記録装置であって、前記キャリッジの移動可能領域内であって原点位置から第1の距離に配置され、前記キャリッジに対して当接することで前記キャリッジの移動を規制する当接位置と、前記キャリッジから離間することで前記キャリッジの移動を許容する離間位置との間で変位可能な規制手段と、前記原点検出手段が原点位置を検出した後に、前記移動手段が前記キャリッジを原点位置から前記規制手段の方向に移動させたとき、前記キャリッジの移動が規制されたか否か、且つ前記キャリッジの移動距離が第1の距離から前記キャリッジの幅分を引いた第2の距離か否か、に基づいて、簡易初期化処理たる第1の初期化処理か、又はこの第1の初期化処理よりも長時間を要する第2の初期化処理を実行する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
また請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記キャリッジの移動が規制され、且つ、前記キャリッジの移動距離が第2の距離である場合、前記制御手段は第1の初期化処理を実行することを特徴とする。
【0009】
また請求項3の発明は、請求項1又は請求項2の発明において、前記キャリッジの移動距離が第2の距離を超えたにも拘わらず前記キャリッジの移動が規制されなかったか、又は、前記キャリッジの移動が規制されたにも拘わらず前記キャリッジの移動距離が第2の距離でなかった場合、前記制御手段は第2の初期化処理を実行することを特徴とする。
【0010】
また請求項4の発明は、請求項1〜請求項3の何れかの発明において、更に、当該記録装置に電源が投入されたとき、前記原点検出手段が原点位置を検出する前に、前回の電源遮断時における当該装置の状態を検出する状態検出手段を備えていることを特徴とする。
【0011】
また請求項5の発明は、請求項4の発明において、前回の電源遮断時における当該装置の状態が特定の状態であると前記状態検出手段により検出されたとき、前記制御手段は第2の初期化処理を実行することを特徴とする。
【0012】
また請求項6の発明は、請求項4又は請求項5の発明において、前回の電源遮断時における当該装置の状態が特定の状態でないと前記状態検出手段により検出されたとき、前記制御手段は前記原点検出手段に原点位置を検出させることを特徴とする。
【0013】
また請求項7の発明は、請求項5又は請求項6の発明において、前記特定の状態は、前記記録ヘッドのノズル面が覆部材により覆われていない状態、被記録媒体が異常位置に存在している状態、当該装置がエラーの状態、前記記録ヘッドのメンテナンス動作中の状態、そして被記録媒体上画像を記録するための記録剤の交換中の状態、のうち少なくとも一つの状態であることを特徴とする。
【0014】
また請求項8の発明は、請求項7の発明において、前回の電源遮断時に前記記録ヘッドのノズル面が覆部材により覆われていない状態であったことを前記状態検出手段が検出したとき、前記制御手段は、当該装置が次の記録動作を実行する前に前記記録ヘッドのメンテナンス処理を実行するように制御することを特徴とする。
【0015】
また請求項9の発明は、請求項4〜請求項8の何れかの発明において、今回の電源投入が当該装置に対する最初の電源投入であると前記状態検出手段により検出されたとき、前記制御手段は第2の初期化処理を実行することを特徴とする。
【0016】
また請求項10の発明は、請求項1〜請求項9の何れかの発明において、第2の初期化処理は、前記キャリッジの移動可能領域内で原点位置の配置されている一端部とは反対側の他端部近傍まで前記移動手段により前記キャリッジを移動させる動作を含むことを特徴とする。
【0017】
また請求項11の発明は、請求項10の発明において、前記移動手段が前記キャリッジを前記他端部近傍まで移動させるとき、前記キャリッジが第2の距離よりも長い第3の距離だけ移動したことを前記キャリッジ検出手段が検出した場合、前記制御手段は前記移動手段に、前記キャリッジの移動を停止させると共に前記記録ヘッドのノズル面が覆部材により覆われるまで前記キャリッジを原点位置に向けて移動させることを特徴とする。
【0018】
また請求項12の発明は、請求項10又は請求項11の発明において、前記移動手段が前記キャリッジを前記他端部近傍まで移動させるとき、前記キャリッジが第2の距離よりも長い第3の距離だけ移動していないのに移動が規制されたことを前記キャリッジ検出手段が検出した場合、前記制御手段は前記移動手段に前記キャリッジの移動を停止させると共に、第2の初期化処理を繰り返すことを特徴とする。
【0019】
また請求項13の発明は、請求項12の発明において、第2の初期化処理が繰り返されるとき、前記制御手段は、その繰り返し回数に応じて、前記移動手段の前記キャリッジの移動力を増大させることを特徴とする。
【0020】
また請求項14の発明は、請求項12又は請求項13の発明において、第2の初期化処理が所定回数繰り返されたとき、前記キャリッジの不具合を報知する報知手段を備えたことを特徴とする。
【0021】
請求項15の発明は、被記録媒体に対して画像を記録可能な記録ヘッドを搭載したキャリッジと、このキャリッジの移動可能領域内の一端部に設けられている原点位置を基準として前記キャリッジを主走査方向に往復移動させる移動手段と、キャリッジの移動距離や移動/停止状態を検出可能なキャリッジ検出手段と、前記キャリッジの原点位置を検出する原点検出手段と、を備え、電源が投入されたときに前記キャリッジの原点位置検出処理を含む初期化処理を実行する記録装置であって、当該装置に電源が投入されたとき、前回の電源遮断時における当該装置の状態を検出する状態検出手段と、当該状態検出手段の検出結果に基づいて、簡易初期化処理たる第1の初期化処理か、又はこの第1の初期化処理よりも長時間を要する第2の初期化処理を実行する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0022】
また請求項16の発明は、請求項15の発明において、前回の電源遮断時における当該装置の状態が特定の状態でないと前記状態検出手段により検出されたとき、前記制御手段は第1の初期化処理を実行することを特徴とする。
【0023】
また請求項17の発明は、請求項15又は請求項16の発明において、前回の電源遮断時における当該装置の状態が特定の状態であると前記状態検出手段により検出されたとき、前記制御手段は第2の初期化処理を実行することを特徴とする。
【0024】
また請求項18の発明は、請求項16又は請求項17の発明において、前記特定の状態は、前記記録ヘッドのノズル面が覆部材により覆われていない状態、被記録媒体が異常位置に存在している状態、当該装置がエラーの状態、前記記録ヘッドのメンテナンス動作中の状態、そして被記録媒体上に画像を記録するための記録剤の交換中の状態、のうち少なくとも一つの状態であることを特徴とする。
【0025】
また請求項19の発明は、請求項18の発明において、前回の電源遮断時に前記記録ヘッドのノズル面が覆部材により覆われていない状態であったことを前記状態検出手段が検出したとき、前記制御手段は、当該装置が次の記録動作を実行する前に前記記録ヘッドのメンテナンス処理を実行するように制御することを特徴とする。
【0026】
また請求項20の発明は、請求項17〜請求項19の何れかの発明において、今回の電源投入が当該装置に対する最初の電源投入であると前記状態検出手段により検出されたとき、前記制御手段は第2の初期化処理を実行することを特徴とする。
【0027】
また請求項21の発明は、請求項17〜請求項20の何れかの発明において、第2の初期化処理は、前記キャリッジの移動可能領域内で原点位置の配置されている一端部とは反対側の他端部近傍まで前記移動手段により前記キャリッジを移動させる動作を含むことを特徴とする。
【0028】
また請求項22の発明は、請求項21の発明において、前記移動手段が前記キャリッジを前記他端部近傍まで移動させるとき、前記キャリッジが第2の距離よりも長い第3の距離だけ移動したことを前記キャリッジ検出手段が検出した場合、前記制御手段は前記移動手段に前記キャリッジの移動を停止させると共に、前記記録ヘッドのノズル面が覆部材により覆われるまで前記キャリッジを原点位置に向けて移動させることを特徴とする。
【0029】
また請求項23の発明は、請求項22又は請求項23の発明において、前記移動手段が前記キャリッジを前記他端部近傍まで移動させるとき、前記キャリッジが第2の距離よりも長い第3の距離だけ移動していないのに移動が規制されたことを前記キャリッジ検出手段が検出した場合、前記制御手段は前記移動手段に前記キャリッジの移動を停止させると共に、第2の初期化処理を繰り返すことを特徴とする。
【0030】
また請求項24の発明は、請求項23の発明において、第2の初期化処理が繰り返されるとき、前記制御手段は、その繰り返し回数に応じて、前記移動手段の前記キャリッジの移動力を増大させることを特徴とする。
【0031】
また請求項25の発明は、請求項23又は請求項24の発明において、第2の初期化処理が所定回数繰り返されたとき、前記キャリッジの不具合を報知する報知手段を備えたことを特徴とする。
【0032】
請求項26の発明は、被記録媒体に対して画像を記録可能な記録ヘッドを搭載したキャリッジと、このキャリッジの移動可能領域内の一端部に設けられている原点位置を基準として前記キャリッジを主走査方向に往復移動させる移動手段と、前記キャリッジの移動距離や移動/停止状態を検出可能なキャリッジ検出手段と、前記キャリッジの原点位置を検出する原点検出手段と、前記キャリッジの移動可能領域内であって原点位置から所定の距離に配置され、前記キャリッジに対して当接することで前記キャリッジの移動を規制する当接位置と、前記キャリッジから離間することで前記キャリッジの移動を許容する離間位置との間でに変位可能な規制手段と、を備えた記録装置に電源が投入されたときに、前記キャリッジの原点位置検出処理を含む初期化処理を実行する方法であって、前記移動手段に前記キャリッジを原点位置に向けて移動させる工程と、前記原点検出手段に原点位置を検出させる工程と、前記移動手段に前記キャリッジを原点位置から前記規制手段の方向に移動させる工程と、前記キャリッジの移動が規制されたか否か、且つ前記キャリッジの移動距離が第1の距離から前記キャリッジの幅分を引いた第2の距離か否か、を判断する工程と、当該判断に基づいて、初期化処理を変更する工程とからなることを特徴とする。
【0033】
また請求項27の発明は、被記録媒体に対して画像を記録可能な記録ヘッドを搭載したキャリッジと、このキャリッジの移動可能領域内の一端部に設けられている原点位置を基準として前記キャリッジを主走査方向に往復移動させる移動手段と、前記キャリッジの移動距離や移動/停止状態を検出可能なキャリッジ検出手段と、前記キャリッジの原点位置を検出する原点検出手段と、前記キャリッジの移動可能領域内であって原点位置から所定の距離に配置され、前記キャリッジに対して当接することで前記キャリッジの移動を規制する当接位置と、前記キャリッジから離間することで前記キャリッジの移動を許容する離間位置との間でに変位可能な規制手段と、を備えた記録装置に電源が投入されたときに、前記キャリッジの原点位置検出処理を含む初期化処理を実行する方法であって、当該装置に電源が投入されたとき、前回の電源遮断時における当該装置の状態を検出する工程と、当該工程の検出結果に基づいて、前記初期化処理を変更する工程とからなることを特徴とする。
【0034】
また、請求項28の発明は、被記録媒体に対して画像を記録可能な記録ヘッドを搭載したキャリッジと、このキャリッジの移動可能領域内の一端側に設けられている原点位置を基準として前記キャリッジを主走査方向に往復移動させる移動手段と、キャリッジの移動距離や移動/停止状態を検出可能なキャリッジ検出手段と、前記キャリッジの原点位置を検出する原点検出手段と、を備え、電源が投入されたときに前記キャリッジの原点位置検出処理を含む初期化処理を実行する記録装置であって、前記一端側に配置され、前記記録ヘッドのメンテナンスを実行するとともに、待機時には記録ヘッドを覆部材で覆うメンテナンス手段と、電源投入時に、前記移動手段が前記キャリッジを原点位置方向へと移動させるとともに前記原点検出手段が原点位置を検出した後、前記移動手段が前記キャリッジを原点位置方向とは逆の方向に移動させたときのキャリッジの状態に基づいて、簡易初期化処理たる第1の初期化処理か、又はこの第1の初期化処理よりも長時間を要する第2の初期化処理を実行する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0035】
また、請求項29の発明は、被記録媒体に対して画像を記録可能な記録ヘッドを搭載したキャリッジと、このキャリッジの移動可能領域内の一端部に設けられている原点位置を基準として前記キャリッジを主走査方向に往復移動させる移動手段と、前記キャリッジの移動距離や移動/停止状態を検出可能なキャリッジ検出手段と、前記キャリッジの原点位置を検出する原点検出手段と、を備えた記録装置に電源が投入されたときに、前記キャリッジの原点位置検出処理を含む初期化処理を実行する方法であって、前記移動手段に前記キャリッジを原点位置に向けて移動させる工程と、前記原点検出手段に原点位置を検出させる工程と、前記移動手段に前記キャリッジを原点位置方向とは逆の方向に移動させる工程と、前記キャリッジの状態を判断する工程と、当該判断に基づいて、簡易初期化処理たる第1の初期化処理か、又はこの第1の初期化処理よりも長時間を要する第2の初期化処理を実行する工程とからなることを特徴とする。
【0036】
また、請求項30の発明は、被記録媒体に対して画像を記録可能な記録ヘッドを搭載したキャリッジと、このキャリッジの移動可能領域内の一端側に設けられている原点位置を基準として前記キャリッジを主走査方向に往復移動させる移動手段と、キャリッジの移動距離や移動/停止状態を検出可能なキャリッジ検出手段と、前記キャリッジの原点位置を検出する原点検出手段と、を備え、電源が投入されたときに前記キャリッジの原点位置検出処理を含む初期化処理を実行する記録装置であって、前記記録ヘッドのメンテナンスを実行するとともに、待機時には記録ヘッドを覆部材で覆うメンテナンス手段が、前記キャリッジの移動可能領域内の前記一端側に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0037】
請求項1の発明によれば、原点検出手段が原点位置を検出した後に、移動手段がキャリッジを原点位置から規制手段の方向に移動させたとき、キャリッジの移動が規制されたか否か、且つキャリッジの移動距離が第1の距離から前記キャリッジの幅分を引いた第2の距離か否か、に基づいて、制御手段が簡易初期化処理たる第1の初期化処理か、この第1の初期化処理よりも長時間を要する第2の初期化処理(完全初期化処理)を実行するので、電源投入時の記録装置の状態によっては初期化処理動作を簡略化して利用者の待機時間を短縮化することができる。
【0038】
請求項2の発明によれば、キャリッジが原点位置から第2の距離を移動した上で規制手段によりその移動を規制(停止)された場合、この記録装置に電源が投入された時点で記録装置の状態が正常であったと判断できるので、制御手段は第1の初期化処理を実行することにより利用者の待機時間を短縮化することができる。
【0039】
請求項3の発明によれば、キャリッジの移動距離が第2の距離を超えたにも拘わらずキャリッジの移動が規制されなかったか、又は、キャリッジの移動が規制されたにも拘わらずキャリッジの移動距離が第2の距離でなかったため、この記録装置に何らかの異常が生じていると判断できるので、制御手段は第2の初期化処理を実行することにより、第1の初期化処理より多少時間がかかるものの、この記録装置を自動的に正常状態に戻すことができる。
【0040】
請求項4〜請求項6の発明によれば、記録装置に電源が投入されたとき、原点検出手段が原点位置を検出する前に、前回の電源遮断時におけるこの記録装置の状態を検出する状態検出手段を備えているので、記録装置に何らかの異常が生じている場合にはその異常をより早く検出できるので、長時間を要する第2の初期化処理を早く開始できる。
【0041】
請求項7又は請求項18の発明によれば、電源遮断時におけるこの記録装置の状態が特定されているので、状態検出手段は記録装置の状態を容易に検出することができる。
【0042】
請求項8又は請求項19の発明によれば、前回の電源遮断時に記録ヘッドのノズル面が覆部材により覆われていない状態であったことを状態検出手段が検出したとき、記録ヘッドにインク詰まりが発生している虞れがあるため、次回の記録前に記録ヘッドのメンテナンス処理を実行することで正常な記録を行うことができる。
【0043】
請求項9又は請求項20の発明によれば、この記録装置に対する最初の電源投入である場合は第2の初期化処理が実行されるので、この記録装置を速やかに使用可能状態に設定できる。
【0044】
請求項10又は請求項21の発明によれば、キャリッジを長い距離移動させることができるため、原点検出処理もより精度良く正確に実行することができる。
【0045】
請求項11又は請求項22の発明によれば、原点検出処理もより精度良く正確に実行することができ、且つ記録ヘッドを待機状態とすることができる。
【0046】
請求項12又は請求項23の発明によれば、キャリッジ検出手段が異常を検出した場合、第2の初期化処理が繰り返されるので、突発的に生じた1回のエラーで装置が停止することがなく、利用者を煩わせることがない。
【0047】
請求項13又は請求項24の発明によれば、第2の初期化処理が繰り返されるとき、制御手段はその繰り返し回数に応じて移動手段のキャリッジの移動力を増大させるので、より正確に原点位置検出処理が実行される。
【0048】
請求項14又は請求項25の発明によれば、第2の初期化処理が所定回数繰り返されたときにキャリッジの不具合を報知する報知手段を備えているので、不具合が自動的には回復不能な状態であるときに初めて利用者はキャリッジの不具合を認識することとなり、利用者の煩わしさを軽減することができる。
【0049】
請求項15〜請求項17、請求項27の発明によれば、記録装置に何らかの異常が生じている場合にはその異常をより早く検出できるので、長時間を要する第2の初期化処理を早く開始できる。
【0050】
請求項26、請求項28、請求項29の発明によれば、請求項1と同様に、電源投入時の記録装置の状態によっては初期化処理動作を簡略化して利用者の待機時間を短縮化することができる。
【0051】
請求項30の発明によれば、記録ヘッドのメンテナンスを実行するとともに、待機時には記録ヘッドを覆部材で覆うメンテナンス手段が、キャリッジの移動可能領域内の原点位置と同一端側に配置されているので、原点検出処理を速やかに行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
以下、本発明を具体化した実施形態を、図1乃至図36を参照して説明する。
【0053】
<全体構成>
本実施形態のインクジェットプリンタは、プリンタ機能と、コピー機能と、スキャナ機能と、ファクシミリ機能とを備えた多機能装置(以下、MFD:Multi Function Deviceと称す)であって、図1乃至図3に示すように、合成樹脂製の射出成形品からなる本体フレーム1の上面にコピー機能やスキャナ機能を実行するための画像読取装置2が設けられている。画像読取装置2の下方には、左右方向に往復移動可能であって、被記録媒体たる記録紙P上に画像を記録可能な記録ヘッド10を搭載したキャリッジ3と、その記録ヘッド10のノズルの目詰まりを回復させるためのメンテナンスユニット4と、記録ヘッド10にインクを供給するインクタンク5とが設けられている。また、本体フレーム1の前面の開口部1aからは排紙トレイ6を備える給紙カセット7が挿抜可能に構成されている。キャリッジ3の移動経路の左端から右端に近い位置に至る長い領域は記録領域8となっており、この記録領域8よりも右方向、即ち移動経路の右端部には、記録ヘッド10のメンテナンス位置や、キャリッジの原点位置(ホームポジション)が設けられている。従って、この移動経路の右端部にメンテナンスユニット4が設けられている。更に、キャリッジ3の移動経路の左端側には、記録ヘッド10の各ノズルからインクを強制的に噴射するためのフラッシング部9(図4参照)が設けられている。また、メンテナンス位置の前方(手前)には、ブラック(黒)、シアン、マゼンダ、イエローの4色のインクタンク5(インクカートリッジ)が一列に並んで配置されている。
【0054】
また、本実施形態では、給紙カセット7は、被記録媒体としての例えばA4サイズ、レターサイズ、リーガルサイズ、はがきサイズ等にカットされた記録紙Pをその短辺が用紙搬送方向(副走査方向、前後方向)と直交する方向(主走査方向、左右方向)に延びるようにして複数枚積層(堆積)されて収納できる形態とする。なお、給紙カセット7の前端部側には、リーガルサイズ等の長い記録紙Pの後端部を支持するための補助支持部材7aが前後方向に移動可能に装着されている。図3では、補助支持部材7aが本体フレーム1(開口部1a)から外部に突出する位置に配置されている状態を示しているが、A4サイズ等の給紙カセット7内に納まってしまう(開口部1aから本体フレーム1の外部へ突出しない)記録紙Pを用いる場合には、収納部7bに補助支持部材7aを給紙の妨げとならないように収納することができる。
【0055】
また、給紙カセット7の奥側(図3において給紙カセット7の後端部側)には、用紙分離用の土手部208が配置されている。後に詳述するように、金属板製の箱型のメインフレーム110の底板111a(図5参照)には、給紙手段206における給紙アーム206aの基端部が上下方向に回動可能に装着されている。この給紙アーム206aの下端に設けられた給紙ローラ206bと、土手部208とにより、給紙カセット7内に積層(堆積)収納された被記録媒体である記録紙Pが一枚ずつ分離搬送されるのである。分離された記録紙Pは上方向且つ前方向へのUターンパス(給送路)209を介して給紙カセット7より上側(高い位置)に設けられた記録部207に給送される。記録部207は、後に詳述するように、プリンタ機能などを実現するためのインクジェット式の記録ヘッド10が搭載された往復動可能なキャリッジ3等からなり、給送されてきた記録紙P上に画像を記録する。
【0056】
記録部207にて画像を記録された記録紙Pはその記録面を上向きにして排紙部210から排出されるが、その排紙された記録紙Pが載置される排紙トレイ6が給紙カセット7の上側に一体的に形成されており、排紙部210に連通する排紙口210aが本体フレーム1の前面の開口部1aと共通にして開口されている。
【0057】
また、画像読取装置2の底壁211が後述する上カバー体230の上方からほぼ隙間なく重畳されるように構成されている。この画像読取装置2は左側の側端に配置されている図示しない枢軸部を介して本体フレーム1に対して上下方向に回動可能に開閉されるように構成されている。さらに、画像読取装置2の上面を覆う原稿カバー体213の後端は画像読取装置2の後端に対して枢軸212aを介して装着されているので、原稿カバー体213は画像読取装置2に対して開閉可能に構成されている。
【0058】
本体フレーム1の前方の上側で、且つ画像読取装置2の前方には、各種操作ボタンや液晶表示部等を備えた操作パネル部214が設けられており、画像読取装置2と操作パネル部214との平面視投影面積内に、記録部207と排紙部210並びにこの排紙部210の一側に設けられたインクタンク5が位置するように配置されている。また、給紙カセット7における補助支持部材7aを収納部7bに収納した状態では、給紙カセット7の前後方向の長さと、画像読取装置2及び操作パネル部214の前後方向の長さとはほぼ等しくなっている。従って、このMFDは平面視略正方形状の略直方体となるので、製品として出荷する梱包時にも梱包が容易となるとともに、梱包用の箱も小型化が可能となる。
【0059】
画像読取装置2の上面には、原稿カバー体213を上側に開けて原稿を載置することができる載置用ガラス板216が設けられ、その下側に画像読取り用のイメージスキャナ装置(CIS:Contact Image Sensor) 217が図3の紙面と直交する方向(主走査方向、図1、図2における左右方向)に延びるガイドシャフト244に沿って往復移動可能に設けられている。
【0060】
4つのインクタンク5は、フルカラー記録のための4色(ブラック(BK)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y))のインクを各々収容しており、平面視の面積が小さく、且つ高さ寸法の高いほぼ矩形箱形状を備えている。これらのインクタンク5は前後方向に沿って一列状に収納されており、画像読取装置2を本体フレーム1から上方に回動させた(開いた)状態で着脱可能となる。
【0061】
そして、各インクタンク5からインクジェット式の記録ヘッド10に複数本(本実施形態ではインク色と同じ4本)のインク供給管(インクチューブ)14を介してインクを供給するように構成されている。なお、4色よりも多数のインク色を使用する場合(6色〜8色等)には、そのインク色の数に応じたインクタンク5を収納可能に構成すれば良いし、インク供給管14もインクタンク5の数に合わせて増やせばよい。
【0062】
搬送される記録紙Pの幅(記録紙Pの短辺)より外側には、その一端側(本実施形態では、図1、図2及び図4で左側)にフラッシング部9が、また、他端側(図1,図2及び図4で右側)に後述するメンテナンス手段としてのメンテナンスユニット4がそれぞれ配置されている。これにより、記録ヘッド10はフラッシング部9に設けられたフラッシング位置にて記録動作中等にノズルの目詰まり防止のためのインク吐出を行う。キャリッジ3はメンテナンスユニット4の近傍にメンテナンス位置が設けられており、メンテナンスユニット4のノズルキャップ60が記録ヘッド10のノズル面を下方から覆って黒インクとその他のカラーインクとを選択的に吸引したり、記録ヘッド10上のバッファタンク11内の気泡を除去するための回復処理等を行う。なお、キャリッジ3が所定のタイミングでメンテナンスユニット4近傍を左右方向に移動するとき、後述するワイパ90がノズル面の余剰インクや異物等を除去することでノズル面のクリーニングが行われる。
【0063】
また図3及び図5に示すように、箱型のメインフレーム110で支持され、左右方向(主走査方向)に延びる横長の板状の第1及び第2ガイド部材222、223の間に記録部207は形成される。
【0064】
ここで、図5を参照しながら、メインフレーム110の構成について簡単に説明する。メインフレーム110は一枚の金属板(鋼板)を所定形状に打ち抜いた後、底板110aに対して、一対の側板110b、及び一対の補強板110cをそれぞれ上向き開放の箱状に折曲形成したものである。従って、組み立て作業が至極簡単になる。そして、メインフレーム110の用紙搬送方向の上流側(後側)に第1ガイド部材222が固着され、用紙搬送方向の下流側(前側)に第2ガイド部材223が固着されている。但し、図5では一対の補強板110cのうち、手前側の補強板110cのみが記載されている。
【0065】
記録ヘッド10が搭載されたキャリッジ3は、第1ガイド部材222及び第2ガイド部材223に跨がって摺動自在に支持(搭載)されて往復移動可能となる。
【0066】
また、第2ガイド部材223における用紙搬送方向の上流側(後側)には、上向き屈曲させたほぼ垂直(鉛直)なガイド片223aが形成されている。
【0067】
なお、第1及び第2ガイド部材222、223の右端は、右側の側板110bよりも右方向に突出しており、その突出箇所と右側板110bとの間に跨がってメンテナンスユニット4が装着される。
【0068】
さらに、メインフレーム110における底板110aには、給紙手段206における給紙アーム206a及び給紙ローラ206bを収納可能な開口部270(図3参照)が形成されている。そして、開口部270の左右両側には、一対の軸支持板110d(図3及び図5には一方の軸支持板110dのみ記載)が上向きに切り起こしする等して立設されており、両軸支持板110dには給紙アーム206aの基端部が回動可能に軸支できる図示しない軸孔が穿設されている。
【0069】
また、図6に示すように、キャリッジ3には、その下面側から突出して両ガイド部材222、223のそれぞれの第1摺動面251、252に当接する第1摺動凸部255a,255bが備えられている。
【0070】
本実施形態では、第1ガイド部材222の第1摺動面251に当接する1つの第1摺動凸部255aは、キャリッジ3の左右方向(主走査方向)のほぼ中央部に配置されている。第2ガイド部材223の第1摺動面252に当接する2つの第1摺動凸部255bは、キャリッジ3の左右方向(主走査方向)に適宜隔てて配置されている。従って、3つの第1摺動凸部255a、255b、255bは、キャリッジ3の平面視において、三角形(2等辺三角形が好ましい)の各頂点に配置されることにより、第1及び第2ガイド部材222、223に対してキャリッジ3が安定して支持される。また、第1摺動凸部255a、255bはそれぞれキャリッジ3の自重を両ガイド部材222、223に対して受けながら軽快に摺動するため、第1摺動凸部255a、255bの下面(支持面、摺動面)には、前後方向に長い潤滑用のグリース保持用の凹溝が主走査方向(左右方向)に適宜間隔で複数本形成されている。
【0071】
キャリッジ3には、第2ガイド部材223のガイド片223aにおける第2摺動面254に当接させる2箇所の第2摺動凸部259、260が設けられている。一方の第2摺動凸部259はキャリッジ3のホルダケースと一体的に形成されており、垂直なガイド片223aを挟持片262と第2摺動凸部259とで挟み込むように配置され、挟持片262と第2摺動凸部259との間は、主走査方向及び下方が開放されている。
【0072】
他方の第2摺動凸部260及び挟持片263は、第2ガイド部材223の垂直なガイド片223aに対するキャリッジ3の装着姿勢を調整する姿勢調整手段264を介して設けられている。この姿勢調整手段264には、調節摘み268ひいてはダイヤル板269の回動位置に応じて調節体ブロック265が前後方向に移動し、ガイド片223aに対する第2摺動凸部260の突出量が調整できるため、一方の第1摺動凸部259の摺動面がガイド片223aに当接している箇所を中心として平面視でのキャリッジ3の水平方向における傾きを変更調節できるものである。
【0073】
また図4に示すように、記録ヘッド10が搭載されたキャリッジ3を往復移動させるために、用紙搬送方向(図3における矢印A方向)の下流側に配置された第2ガイド部材223の上面には、主走査方向(左右方向)に延びるように配置されたタイミングベルト224がプーリ224a,224bに巻回されており、そのタイミングベルト224を駆動するCR(キャリッジ)モータ320(実施形態ではDCモータであるが、ステッピングモータ等他のモータでもよい。)は第2ガイド部材223の下面にネジ止めにより固定されている。このCRモータ320の駆動軸にはプーリ224aが固設されている。これらの各構成要素やCRモータ320を駆動する駆動回路312、更には制御部とで移動手段を構成している。第2ガイド部材223には、ガイド片223aの近傍にて主走査方向に沿って延びるように配置されてキャリッジ3の左右方向(主走査方向)位置や移動/停止を検知するためのエンコーダストリップ247等を備える。この帯状のエンコーダストリップ247は検査面(左右方向に一定間隔で配置されたスリットの形成面)が垂直方向に沿うように配置されている。
【0074】
また、用紙搬送方向の下流側の第2ガイド部材223の下面から本体フレーム1の前端の排紙口210aまでの間をメインフレーム110の底板110aとほぼ同じ高さ位置で排紙部210の上方を覆うようにした合成樹脂製の仕切板(下カバー体)229が本体フレーム1と一体的に形成されている。
【0075】
さらに、この仕切板(下カバー体)229の上側には適宜空間を隔て、且つキャリッジ3及びその往復移動経路の上方を覆うようにした上カバー体230が配置されている。なお、この上カバー体230の中途部には、キャリッジ3の往復移動経路が上方から視認可能な矩形状の窓孔(図示せず)が穿設されている。記録紙Pが記録部207内で紙ジャムを起こした場合等には、利用者は画像読取装置2を本体フレーム1から上方に回動させて、この窓孔から記録紙Pを取り出すことができる。この場合、インク供給管14はプラテン226上に引き回されていないので、記録紙Pの除去が容易となる。
【0076】
<キャリッジ3、及びキャリッジ3へのインクの供給手段>
次に、記録ヘッド10を搭載したキャリッジ3について図6及び図7を参照して説明する。キャリッジ3は、下面に多数のノズルを設けた記録ヘッド10を有し、キャリッジ3が記録領域8(図2参照)を走行する間に、記録ヘッド10のノズルからは下向きにインクが選択的に噴射され、被記録媒体(記録紙P)への画像の記録が行われる。なお、本実施形態においては、上述した通り、4色のインクを使用するので、記録ヘッド10も各インク色毎に4つ備えられている。
【0077】
各記録ヘッド10の上面には、夫々、バッファタンク11が設けられている。バッファタンク11は、上部に気泡貯留室12を有し、下部に記録ヘッド10に連なるインク流室13を有する。気泡貯留室12には、可撓性を有するチューブ14(図2を参照)を通してインクタンク5からインクが供給される。気泡貯留室12内に供給されたインクは、フィルタ15を通過してインク流室13に流れ込み、記録ヘッド10に至る。インクがフィルタ15を通過する際に、インク内に含まれている気泡が分離され、気泡貯留室12の上方に貯留されていく。
【0078】
キャリッジ3には、記録ヘッド10よりも右方向に位置するようにバルブケース16が設けられている。バルブケース16の下面には、各気泡貯留室12の天井壁から延出された排出路17が排出口18として開口され、これら4つの排出口18は前後方向に並んでいる。バルブケース16の内部では4つの排出路17が上下方向に延びており、この上下方向に延びた部分には、夫々、常閉式の開閉弁19が収容されている。開閉弁19は、常には、上下方向に細長い弁体20がバネ21により弁口22を塞ぐ閉弁状態に保持されているが、開閉部材50により弁体20がバネ21の付勢に抗して上方へ移動すると、開閉弁19が開弁されるようになっている。また、気泡貯留室12から排出路17の排出口18に至る排気経路(詳しくは後述する)の排気抵抗については、カラー用即ちシアン用の排気経路とイエロー用の排気経路とマゼンダ用の排気経路とが互いに同じ程度となっている。一方、黒色用の排気経路の排気抵抗は、カラー用の各排気抵抗よりも小さい。但し、理解を容易にするために、図7では、ノズルキャップ60と排気キャップ40とが(同様に記録ヘッド10とバルブケース16とが)前後方向に並べて記載されているが、実際には他の図面(例えば、図10〜図12、図17〜図21)に示すように、ノズルキャップ60と排気キャップ40とは左右方向に併設されている。具体的には、ノズルキャップ60の右方向に排気キャップ40が配置されている。同様に記録ヘッド10とバルブケース16も、図4に示すように、左右方向に併設されており、具体的には、記録ヘッド10の右方向にバルブケース16が配置されている。
【0079】
かかるキャリッジ3は、その往復移動経路中、最も右端の原点位置と、この原点位置よりも僅かに左側(記録領域8側)であってワイパ90よりも右側の空吸引位置(アンキャップ位置)と、ワイパ90よりも僅かに左側のワイピング終了位置とに停止し得るようになっている。
【0080】
<メンテナンスユニット4の駆動力伝達機構>
次に、図5を参照して、メンテナンスユニット4の駆動力伝達機構の構成を説明する。メインフレーム110には、給紙手段206の給紙ローラ206bを回転させるための手段として、メインフレーム110の左端部に設けたモータ24を含む回転駆動機構が設けられている。モータ24の出力軸に係合された減速ギヤ25の回転軸26は右方向へ長く延びており、回転軸26の右端部には駆動ギヤ27が一体回転するように設けられている。駆動ギヤ27には、キャリッジ3がメンテナンス位置に移動したときにのみ大径傘歯車28と係合するスライドギヤ29が係合されており、大径傘歯車28は軸線を上下方向に向けた小径傘歯車30に係合されている。
【0081】
小径傘歯車30は、減速ギヤ31を介して太陽ギヤ32に係合されている。図8及び図9に示すように、太陽ギヤ32の軸33には旋回アーム34の一端が相対回転自由に取り付けられ、旋回アーム34の他端には遊星ギヤ35が相対回転可能に取り付けられ、遊星ギヤ35は太陽ギヤ32に係合されている。遊星ギヤ35の前方には、軸線を太陽ギヤ32及び遊星ギヤ35と平行、即ち上下方向に向けた円盤状のカム55がメンテナンスフレーム111に回転自由に支持され、カム55には、遊星ギヤ35と同じ高さの従動ギヤ36が一体に形成されている。尚、カム55については、後に詳しく説明する。
【0082】
一方、遊星ギヤ35の後方には、ポンプギヤ37が、遊星ギヤ35と同じ高さでメンテナンスフレーム111に回転自由に支持されている。ポンプギヤ37が回転すると、ロータリー式のポンプ38が駆動して吸引動作を行うようになっている。
【0083】
太陽ギヤ32が、下から見た図9における反時計回り方向に回転すると、遊星ギヤ35が太陽ギヤ32を中心に反時計回り方向へ公転してカム55の従動ギヤ36に係合し、カム55が反時計回り方向(上から見ると時計回り方向)に回転駆動される。これに対し、太陽ギヤ32が時計回り方向に回転すると、遊星ギヤ35が太陽ギヤ32を中心に時計回り方向へ公転してポンプギヤ37に係合し、ポンプ38が回転駆動して吸引動作を行う。したがって、カム55の回転方向は、常に、図9における反時計回り方向(図15及び図16においては時計回り方向)となる。
【0084】
<メンテナンスユニット4の排気キャップ40>
メンテナンスフレーム111には、キャップリフトホルダ41が移動可能に設けられている。キャップリフトホルダ41は、図11〜図14、図17〜図21に示すように、左右一対ずつの平行な等長リンク42からなる4節リンク機構により、待機位置と密着位置との間で左右方向へ円弧状に平行移動し得るようになっている。待機位置は図11及び図17に示すように左側の下方位置であって、ノズルキャップ60がキャリッジ3の下面(記録ヘッド10のノズル面)から退避している位置である。密着位置は図12及び図20に示すように右側の上方位置であって、ノズルキャップ60がキャリッジ3の下面(記録ヘッド10のノズル面)に密着する位置である。このとき、キャップリフトホルダ41は、復帰バネ43により待機位置側へ付勢されている。また、キャップリフトホルダ41の右端縁には上方に向かって立設された受け板44が形成されており、キャリッジ3が記録領域8から原点位置(メンテナンス位置)へ移動する過程では、原点位置に至る直前でキャリッジ3が受け板44に対して左側から当接し、その後、キャリッジ3が原点位置に到達する間、キャリッジ3が、受け板44を押しつつ、キャップリフトホルダ41を復帰バネ43の付勢に抗して待機位置から密着位置へ移動させる。
【0085】
キャップリフトホルダ41の右端位置には排気キャップ40が押上バネ45を介して上下方向への相対移動可能に支持されている。排気キャップ40は、シリコンゴム製であって、前後方向に細長い略方形をなし、上面側に開放された凹部を有する。かかる排気キャップ40は、キャップリフトホルダ41が待機位置にある状態では、キャリッジ3の下面(記録ヘッド10のノズル面)よりも下方で待機する。キャリッジ3に押されてキャップリフトホルダ41が密着位置に向かって斜め右上方へ円弧状に変位する過程では、排気キャップ40の上端縁のリップ部がキャリッジ3の下面(記録ヘッド10のノズル面)に対して気密状に密着するとともに押上バネ45の付勢により密着度を高めていく。そして、この密着により、排気キャップ40の凹部とキャリッジ3の下面とによって4つの排出口18に連通する気密空間46が構成されるようになっている(図12,図20及び図21を参照)。排気キャップ40の底壁の後端部には、吸気口47(図7及び図10参照)が凹部に連通するように開口されており、この吸気口47はチューブを介して後述する切換手段70の排気ポート78に接続されている。
【0086】
<メンテナンスユニット4の開閉部材50>
排気キャップ40の底壁には、前後方向に並ぶ4本の棒状をなす開閉部材50が、気密を保った状態で上下方向へ摺動し得るように貫通されている。4本の開閉部材50のうち最も後方に位置する黒色用開閉部材50は、単独で排気キャップ40に対して相対的に上下動し得るようになっており、この黒色用開閉部材50の下端部には横向きに突出するカムフォロア51(図17〜図21を参照)が形成されている。4本のうち前側に並ぶ3本のカラー用開閉部材50は、排気キャップ40の下方で互いに連結されていて一体的に上下動するようになっている。このカラー用開閉部材50の下端部にも横向きに突出するカムフォロア51が形成されている。この2つのカムフォロア51は、カム55によって左右方向へ往復駆動される前後2つのスライダ52のカムガイドに別々に係合されている。尚、スライダ52については後述する。
【0087】
また、排気キャップ40はキャップリフトホルダ41と一体に移動するが、開閉部材50は、排気キャップ40に対して左右方向へは一体的に変位するものの、上下方向に関しては排気キャップ40に対して相対的に変位する。このように上下方向への相対変位を許容されていることにより、開閉部材50は、キャップリフトホルダ41の位置に関わりなく常にスライダ52と係合する状態に保たれる。
【0088】
<開閉部材50の駆動機構>
カム55の上面には、内側カム溝56が形成されている。この内側カム溝56は、図15及び図16に示すように、カム55と同心の円弧形をなす非駆動領域56aと、この非駆動領域56aに連なり且つ非駆動領域56aよりも径方向中心側へ湾曲した形態の駆動領域56bとから構成される。また、メンテナンスフレーム111には、前後2つのスライダ52が、カム55の上方において左右方向(即ち、キャリッジ3の移動方向と平行な方向)へ個別に平行移動し得るように支持されている。各スライダ52から下方へ突出したカムフォロア53が、カム55の中心よりも右方向の位置において内側カム溝56に係合されている。カムフォロア53が非駆動領域56aに係合している状態では、スライダ52は右側の位置(図15を参照)で待機しており、カムフォロア53が駆動領域56bに係合するとスライダ52が左方向へスライド(図16を参照)するようになっている。尚、後側(図15における上側)のスライダ52は黒色インク用の開閉部材50を駆動するためのものであり、前側のスライダ52はカラーインク用の開閉部材50を駆動するためのものである。
【0089】
各スライダ52には、夫々、開閉部材50のカムフォロア51を係合させるためのフリーガイド54aとカムガイド54bが形成されている。図17〜図21に示すように、フリーガイド54aは、左右方向(即ち、スライダ52の移動方向と平行)に直線状に延びているとともに右端部において右上がりに傾斜した経路を有しており、カムガイド54bは、フリーガイド54aの右端に連なるとともに、右側に向かって段階的に上り勾配となる傾斜部を有している。
【0090】
キャップリフトホルダ41が待機位置にある状態では、スライダ52がカム55の非駆動領域56aと駆動領域56bのいずれに係合していても、開閉部材50のカムフォロア51は常にフリーガイド54aに係合する状態を保ち、カムガイド54bに係合することはない。キャリッジ3によってキャップリフトホルダ41が密着位置へ移動すると、キャップリフトホルダ41と一体に右方向へ変位した開閉部材50のスライダ52が、フリーガイド54aからカムガイド54bに係合する状態となる。このとき、スライダ52のカムフォロア53が非駆動領域56aに係合していれば、開閉部材50のカムフォロア51はカムガイド54bの最も低い左端(フリーガイド54aの右端と同じ高さ)に係合し、開閉部材50は最も低い閉弁位置で待機することになる。この閉弁位置では、開閉部材50の上端は開閉弁19の弁体20の下端よりも更に下方に位置するため、開閉弁19は閉弁状態に保たれる。
【0091】
この状態から、スライダ52のカムフォロア53がカム55の駆動領域56bと係合する状態に移行して左方向へスライドすると、開閉部材50のカムフォロア51はカムガイド54bを相対的に右方向へ移動しつつ傾斜部を上ることになるため、開閉部材50は閉弁位置から上昇して開弁位置へ移動する。開閉部材50が開弁位置に移動すると、開閉部材50の上端が弁体20の下端に当接してその弁体20を押し上げるため、開閉弁19は開弁状態となる。つまり、開閉部材50は、閉弁位置からキャリッジ3の移動方向と交差する略直角な方向に且つキャリッジ3の排出路17内に挿入しつつ開弁位置へ進出することで開閉弁19を開弁させるようになっている。
【0092】
<メンテナンスユニット4のノズルキャップ60>
さて、キャップリフトホルダ41における排気キャップ40よりも左側の領域には、ノズルキャップ60が押上バネ61(図11及び図12参照))を介して上下方向への相対移動可能に支持されている。ノズルキャップ60は、シリコンゴム製であって、前後方向に長い略方形をなし、上面側に開放された左右2つの凹部を有し、各凹部内には上面が盛り上がった蒲鉾形断面のスペーサ62が収容されている。かかるノズルキャップ60は、キャップリフトホルダ41が待機位置にある状態では、キャリッジ3の下面(記録ヘッド10のノズル面)よりも下方で待機する。キャリッジ3が受け板44に当接し、更に右方向に移動することによりキャップリフトホルダ41が密着位置に向かって斜め右上方へ円弧状に変位する過程では、ノズルキャップ60の上端縁のリップ部がキャリッジ3の下面(記録ヘッド10のノズル面)に対して気密状に密着するとともに押上バネ61の付勢により密着度を高めていく。そして、この密着により、ノズルキャップ60のスペーサの上面とキャリッジ3の下面とによって記録ヘッド10のノズルに連通する左右2つの独立した密閉空間63が同時に構成されるようになっている(図19乃至図21を参照)。右側の幅狭の黒色用密閉空間63は黒色用のノズルと対応し、左側の幅広のカラー用密閉空間63はカラー用の3色のノズルと対応するようになっている。
【0093】
ノズルキャップ60の各凹部の底壁には、その後端部(長手方向における一方の端部)に位置するように吸気口64(図7及び図10参照)が開口されており、幅狭の黒色用の凹部の吸気口64は、チューブを介して切換手段70の黒色インク用ポート79(以下、Bkポートという)に接続され、幅広のカラー用の凹部の吸気口64は、チューブを介して切換手段70のカラー用ポート80(以下、Coポートという)に接続されている。各密閉空間63は、左右方向(即ち、幅方向)中央において上下の間隔が最も狭く、左右両側に向かって上下の間隔が次第に大きくなる形態である。したがって、密閉空間63内を負圧にしてノズルのインクを吸気口64側へ吸引する際には、左右方向中央から左右両側に(流動抵抗の小さい側に)向かう空気(インクを含んだ空気)の流れが、前後方向に亘ってほぼ均一に生成され、その空気流が、密閉空間63の左右両端部において合流しつつ吸気口64(後方)に向かう大きな流れとなり、吸気口64内に吸引される。したがって、前後方向に長い密閉空間63の後端部に吸気口64が配置された構造となっていても、空気の流れを全域に亘ってほぼ均一にして、インクのパージを全てのノズルに対して均一に行うことができる。
【0094】
<メンテナンスユニット4の切換手段70>
切換手段70は、排気キャップ40によって形成された気密空間46を、ポンプ38に連通させる状態と、ポンプ38から遮断する状態とに切換える機能と、ノズルキャップ60によって形成された密閉空間63を、ポンプ38に連通させる状態と、ポンプ38から遮断する状態とに切換える機能とを兼ね備えている。切換手段70は、図8に示すように、カム55の下面に形成された取付部71と、切換部材73と、カバー76とを備えて構成されている。
【0095】
取付部71は、図8に示すように、カム55及び従動ギヤ36と同心の円形をなし、取付部71の外周には位置決め突起72が形成されている。切換部材73は、ゴム製であって、円盤状をなし、外面には切換流路74が形成されている。切換流路74は、切換部材73の下面の中心から放射状に(径方向に)延びる4本の分岐溝74aと、切換部材73の外周に各分岐溝74aの外周端に連なるように形成された連通溝74bとからなる。かかる切換部材73は、その上面の位置決め溝75を位置決め突起72に嵌合させつつ取付部71に嵌合され(図11及び図12を参照)、これにより、切換部材73がカム55及び従動ギヤ36に対して同心に且つ一体回転するように取り付けられている。
【0096】
カバー76は、合成樹脂製であって、有底の円筒状をなす。カバー76の底壁の中心には吸気ポート77が形成され、この吸気ポート77はチューブを介してポンプ38に接続されている。但し、図17〜図21の示す内容ではこの吸気ポート77は重要なポイントではないので、吸気ポート77が正確に記載されている他の図面(図8,図9,図11〜図14)とは異なり、図17〜図21では吸気ポート77が鉛直方向に延出するように簡略的に記載されている。カバー76の円形の周壁には、周方向に所定の角度間隔を空けて5つのポート78〜82が形成されている。5つのうち1つ目は、排気キャップ40によって形成される気密空間46に連通する排気ポート78であり、2つ目は、ノズルキャップ60によって形成された黒色用の密閉空間63に連通するBkポート79(黒色インク用ポート)であり、3つ目は、ノズルキャップ60によって形成されたカラー用の密閉空間63に連通するCoポート80(カラーインク用ポート)であり、残りの2つは大気に開放された大気ポート81,82である。
【0097】
かかるカバー76は、カム55の下面に形成された3つの係止爪83によってカム55に取り付けられている。即ち、カバー76の外周にはフランジ84が全周に亘って連続して形成されており、3つの係止爪83は、カム55と同心の円周上に所定角度間隔を空けて配置され、径方向への弾性撓みが可能となっている。カバー76をカム55の下面に組み付けると、3つの係止爪83がフランジ84の下面に対して外周側から係止され、これにより、カバー76が、カム55及び切換部材73に対して相対的に回転し得るように、且つ上下方向(カム55の回転中心軸方向)への相対変位は規制された状態で支持される。カバー76をカム55に組み付けた状態では、カバー76の内部に切換部材73が収容され、切換部材73の外周のリップ部がカバー76の内周に対して密着しており、カバー76と切換部材73とが相対的に回転すると、切換部材73の外周のリップ部とカバー76の内周との間に摺動抵抗(摩擦抵抗)が発生するようになっている。
【0098】
また、カバー76の外周には、径方向へ延出するアーム部85が一体に形成されており、このアーム部85の延出端が、太陽ギヤ32の軸33に対して相対回転可能に嵌合されている。このアーム部85と軸33との嵌合により、カバー76は、メンテナンスフレーム111に対して回転規制された状態に保持され、カバー76のポート78〜82の位置も固定された配置となる。尚、アーム部85は、軸33の抜止め突起37aにより下方への抜止めがなされており、このアーム部85とその上方に位置する太陽ギヤ32との間では、旋回アーム34が、軸33に対する相対回転を許容された状態で挟まれた状態となっている。
【0099】
カバー76内で切換部材73が回転する過程では、切換流路74の4つの連通溝74bの全てがいずれのポート78〜82にも連通しない状態と、4つの連通溝74bのうちいずれか1つ乃至3つの連通溝74bがいずれかのポート78〜82に連通する状態とに切り換わる。全ての連通溝74bがいずれのポート78〜82にも対応しない状態では、全てのポート78〜82がポンプ38から遮断される。連通溝74bがポート78〜82に連通する状態では、連通溝74bと対応するポート78〜82が切換流路74を介してポンプ38に連通されるか、もしくは、連通溝74bと対応する複数のポート78〜82が切換流路74を介して互いに連通するとともにポンプ38にも連通する状態となる。尚、具体的な切り換え形態については、後述する。
【0100】
<メンテナンスユニット4のワイパ90>
カム55の上面には、外側カム溝97が形成されている。外側カム溝97は、開閉部材50用の内側カム溝56の外側に略同心状に配され、カム55と同心の円弧部97aと、円弧部97aと略同径の円周上、即ち円弧部97aの途中の位置に形成された隆起部97bと、円弧部97aと略同径の円周上に配置された解除部97cと、解除部97cに対して径方向外側の位置で対応するように配置された逃がし凹部97dとから構成される。
【0101】
ワイパ90は、記録ヘッド10のノズル面に付着しているインクを拭き取るためのものであって、キャップリフトホルダ41よりも左方向の位置、即ちキャリッジ3の移動経路において原点位置(メンテナンス位置)と記録領域8との間に位置するようにメンテナンスフレーム111に設けられている。ワイパ90は、全体としてキャリッジ3の移動方向と略直角な方向に延びる板状をなし、ワイパホルダ90aに固定されている。このワイパホルダ90aが上下方向に移動可能に構成されているため、ワイパ90は、カム55よりも上方であって、キャリッジ3の移動経路の下方で待避する待避位置(図24を参照)と、キャリッジ3の移動経路上に進出する拭取位置(図22を参照)との間で移動可能である。
【0102】
ワイパ90は、左側に位置する規制板91と右側に位置する板状のストッパ92との間に所定のクリアランスを空けて配置されており、これにより、ワイパ90は左右方向へ大きく変位することなく昇降できるように案内されている。ワイパホルダ90aの左側に位置する規制板91の上方には係止部93が形成され、ワイパホルダ90aの側面には左方向に突出した係止突起94が形成されている。従って、係止突起94が係止部93に対して上から係止されることにより、ワイパ90が拭取位置に保持されるようになっている。また、ワイパ90における規制板91よりも下方の位置とメンテナンスフレーム111との間には、ワイパホルダ90aを斜め左下方向へ付勢するバネ95が装着されている。さらに、ワイパホルダ90aには下方へ突出するカムフォロア96が形成され、このカムフォロア96は、カム55の中心よりも左側の位置において外側カム溝97に係合されている。
【0103】
外側カム溝97は、上述した通り、カム55と同心であって、ワイパ90(ワイパホルダ90a)を退避位置に保持可能な円弧部97aと、円弧部97aと略同径の円周上に配置され、退避位置のワイパ90(ワイパホルダ90a)と干渉することでそのワイパ90を拭取位置へ押し動かす隆起部97bと、円弧部97aと同径の円周上に配置され、拭取位置にあるワイパ90のカムフォロア96に対して径方向に干渉する解除部97cとから構成される。
【0104】
カムフォロア96が円弧部97aに係合している状態では、バネ95の付勢によりカムフォロア96が円弧部97aの上面に当接した状態となり、このとき、ワイパ90は待避位置に保持される。そして、隆起部97bがカムフォロア96に接近すると、カムフォロア96が隆起部97bに乗り上がり、ワイパ90が拭取位置へ上昇する。この間、ワイパ90は、バネ95による斜め左方向への引張りによって規制板91に押し付けられた状態となるので、拭取位置に達したところで係止突起94が係止部93に係止し、この係止によってワイパ90が拭取位置に保持される。
【0105】
拭取位置にあるワイパ90は、上端の拭取部を規制板91よりも上方へ突出させているとともに、規制板91に対して右から当接し、カムフォロア96を円弧部97aの外周面に対して右側から当接させ、かかる状態でバネ95により斜め左下方へ引っ張られている。したがって、キャリッジ3が、ワイパ90の上端部に対して右側から(つまり、原点位置(メンテナンス位置)から記録領域8に向かって移動する過程で)干渉しても、ワイパ90は規制板91に押し付けられることとなって係止突起94を係止部93に係止させた状態に保たれる。このとき、ワイパ90が記録ヘッド10のノズル面を擦り、ノズル面に付着しているインクを除去する。
【0106】
これに対し、キャリッジ3が、ワイパ90の上端部に対して左側から干渉すると、ワイパ90が右側へ傾くように姿勢を変化させるため、これに伴いワイパホルダ90aも右方向に傾くように姿勢を変化させる。その結果、係止突起94が規制板91の係止部93から外れるため、バネ95の付勢によってワイパホルダ90aが下降する。従って、ワイパ90も拭取位置から待避位置へ下降する。
【0107】
また、拭取位置のワイパ90は、カム55の解除部97cによっても待避位置へ下降する。即ち、カム55の回転に伴って解除部97cのテーパ面がカムフォロア96の下端部に当接すると、テーパ面の傾斜によりカムフォロア96の下端部が左方向へ押されて逃がし凹部97d内に変位する。つまり、解除部97cはワイパホルダ90aに対して径方向に干渉する。これに伴い、ワイパ90及びワイパホルダ90aは、規制板91の下端縁を支点として右側へ傾くように姿勢を変化させる。その結果、係止突起94が規制板91の係止部93から右方向へ外れるため、バネ95の付勢によってワイパホルダ90aが下降する。従って、ワイパ90も拭取位置から待避位置へ下降する。
【0108】
<メンテナンスユニット4のキャリッジロック100>
カム55の外周には、下面がカム面102とされた円形のフランジ部101が形成されている。カム面102には、部分的に上方へ凹んだ形態、即ち部分的に高くなった領域が形成され、この領域がロック領域102aとなっている(図8参照)。また、カム面102のうち、ロック領域102aよりも低い部分はロック解除領域102bとなっている。規制手段たるキャリッジロック100は、メンテナンスフレーム111に対して上下移動可能に、且つバネ100a(図10参照)により上方へ付勢された状態で支持されており、キャリッジロック100の下端部に形成したカムフォロア103がカム面102に対して下から当接されている。したがって、キャリッジロック100の大部分はカム55よりも上方に位置している。カムフォロア103がロック解除領域102bに当接している状態では、バネ100aの付勢力に抗してキャリッジロック100が下方のロック解除位置に保持され、カムフォロア103がロック領域102aに当接する状態では、バネ100aの付勢力によりキャリッジロック100が上動し、キャリッジ3の移動経路に進出する。このとき、キャリッジ3が原点位置(又はメンテナンス位置)に位置していれば、キャリッジロック100の上端部はキャリッジ3の移動経路に進出すると共に、キャリッジ3の左側面の前端部に係止可能となるので、この係止によってキャリッジ3の左方向、即ち記録領域8への移動が規制されるようになっている。
【0109】
<カム55の回転位置の制御手段>
カム55の外周のフランジ部101には被検出部105が一体回転するように設けられているとともに、メンテナンスフレーム111には、カム55の回転に伴なって被検出部106によりON・OFFされるリーフスイッチ106が設けられている。リーフスイッチ106がON又はOFF状態(図25におけるポジション「A(M)」「N」「O」「P」「Q」「R」「S」「K」)になると、カム55を駆動するためのモータ24の回転数のカウントが開始され、これにより、カム55の停止位置が正確に制御されるようになっている。尚、以下のメンテナンス等の工程の説明においては、リーフスイッチ106のON・OFF動作及びそれに基づくカム55の回転位置の制御については、説明を省略する。
【0110】
<キャリッジ3の移動に伴なうキャップリフトホルダ41の動作>
キャップリフトホルダ41が復帰バネ43の付勢により退避位置に保持されている状態で、キャリッジ3が記録領域8側から原点位置側へ移動すると、図14に示すように、キャリッジ3が空吸引位置に達したところで、キャリッジ3がキャップリフトホルダ41の受け板44に当接する。このとき、排気キャップ40とノズルキャップ60の双方ともに、キャリッジ3の下面よりも下方に位置する。つまり、キャリッジ3の下面に対して非接触の(キャリッジ3の下面から離間した又は退避した)状態である。
【0111】
この状態から、キャリッジ3が原点位置側へ、即ち、更に右方向へ移動すると、図18に示すように、キャップリフトホルダ41が斜め右上方へ円弧状に変位することにより、ノズルキャップ60がその下方位置において記録ヘッド10のノズル面に接触する。更にキャリッジ3が右方向へ移動すると、図19に示すように、上動するキャップリフトホルダ41とキャリッジ3の下面に当接しているノズルキャップ60との間のバネ61が弾縮され、このバネ61の弾性復元力によりノズルキャップ60は記録ヘッド10に強く押し付けられ、記録ヘッド10のノズル面とノズルキャップ60との間に確実に気密状態にシールされた密閉空間63が構成される。
【0112】
この状態から更にキャリッジ3が右方向へ移動して原点位置に到達すると、図20に示すように、排気キャップ40がキャリッジ3の下面に密着するとともに、排気キャップ40とキャップリフトホルダ41との間に設けたバネ45の弾力により排気キャップ40がキャリッジ3の下面に強く押し付けられ、これにより、キャリッジ3の下面と排気キャップ40との間に確実に気密状態にシールされた気密空間46が構成される。
【0113】
<メンテナンスにおける排気工程及び空吸引工程>
気泡貯留室12内に貯留されている気泡を排出する工程の初期には、キャリッジ3が原点位置にあり、キャリッジロック100が上昇位置に配置されている。このため、キャリッジ3の記録領域8方向への移動、即ちメンテナンス位置から記録領域8方向へのキャリッジ3の移動は規制される(移動規制状態又はロック状態)。また、この移動規制状態では、排気キャップ40がキャリッジ3の下面に密着して気密空間46が構成されている。また、カム55と切換部材73は、図25におけるポジション「A(M)」に位置し、このとき、気密空間46は大気とポンプ38のいずれとも非連通の遮断状態となる。また、黒色用密閉空間63とカラー用密閉空間63は、共に、切換部材73の切換流路74を介して大気に開放されると同時に、ポンプ38に連通する。
【0114】
この状態からカム55と切換部材73が図22のポジション「H」まで回転して停止し、気密空間46が切換部材73を介してポンプ38のみに連通する状態となる。このとき、黒色用密閉空間63とカラー用密閉空間63は、共に、大気及びポンプ38と非連通の遮断状態となる。この状態で、遊星ギヤ35がポンプギヤ37の方向へ公転してポンプ38が駆動される。従って気密空間46内の空気が排出され、気密空間46内が負圧状態となる。
【0115】
このようにしてプレ排気が行われた後、カム55と切換部材73がポジション「I」へ移動する。移動の過程では、黒色用のスライダ52がカム55との係合により左方向へ移動し、黒色用の開閉部材50が閉弁位置から開弁位置へと押し上げられ、この開閉部材50の押し上げにより黒色用の排出路17に設けられている開閉弁19が開弁状態となる。また、気密空間46はポンプ38にのみ連通する状態となり、黒色用密閉空間63とカラー用密閉空間63は大気及びポンプ38とは非連通の遮断状態となる。そして、ポジション「I」の状態で、ポンプ38が駆動され、黒色用の気泡貯留室12内に貯留されていた気泡が、排出路17、気密空間46、切り替え流路及びポンプ38を通って大気へ排出される。この排気工程では、上述した通り、黒色用密閉空間63とカラー用密閉空間63は遮断状態に保たれる。
【0116】
ポンプ38による黒色用の気泡貯留室12の排気が完了すると、カム55と切換部材73がポジション「J」に移動する。この移動の過程では、黒色用のスライダ52が右方向へ復動して開閉部材50が閉弁位置へ復帰し、黒色用の開閉弁19が閉弁されるとともに、カラー用のスライダ52が左方向へ移動してその下部が閉弁位置から開弁位置へ押し上げられ、カラー用の排出路17に設けられている3つの開閉弁19が開弁される。また、ポジション「I」と同様に、気密空間46はポンプ38にのみ連通する状態となり、黒色用密閉空間63とカラー用密閉空間63は大気及びポンプ38とは非連通の遮断状態となる。そして、ポジション「J」の状態で、ポンプ38が駆動され、カラー用の3つの気泡貯留室12内に貯留されていた気泡が、排出路17、気密空間46、切り替え流路及びポンプ38を通って大気へ排出される。この排気工程でも、黒色用密閉空間63とカラー用密閉空間63は遮断状態に保たれる。この後、カム55と切換部材73がポジション「A」へ移動する。この移動の過程では、開弁状態となっていたカラー用のスライダ52が右方向へ復動して開閉部材50が閉弁位置へ復帰し、カラー用の開閉弁19が閉弁される。以上により、気泡貯留室12内の気泡の排出工程が完了する。また、排気工程の間、キャリッジ3は原点位置に保持されたままである。
【0117】
この後、カム55と切換部材73がポジション「B」まで回転し、キャリッジロック100が下降してキャリッジ3の移動規制状態(ロック状態)が解除される。このポジション「B」においても、気密空間46と密閉空間63の連通、遮断状態はポジション「A」と同じである。キャリッジロック100によるキャリッジ3の移動規制状態(ロック状態)が解除されると、キャリッジ3は原点位置から空吸引位置(図17参照)まで移動する。従って、排気キャップ40及びノズルキャップ60がキャリッジ3の下面から離間する。次に、カム55と切換部材73がポジション「G」まで回転し、黒色用のノズルキャップ60の凹部がポンプ38のみに連通するとともに、排気キャップ40の凹部とカラー用のノズルキャップ60の凹部がポンプ38から遮断された状態となる。ポジション「G」まで回転する途中では、ワイパ90が退避位置から拭取位置へ上昇し、ワイパホルダ90aの係止突起94が規制板91の係止部93に係止されることによって、ワイパ90は拭取位置に保持される。このとき、キャリッジ3(記録ヘッド10のノズル面)はワイパ90よりも右方向(原点位置側)に位置する。
【0118】
この状態から、キャリッジ3が左方向へ移動する。この間、キャリッジ3の下面にある記録ヘッド10のノズル面がワイパ90の上端縁に摺接し、ノズル面に付着していたインクがワイパ90によって拭き取られる。そして、キャリッジ3がワイパ90を通過し終わってワイピングが完了すると、キャリッジ3はワイピング終了位置で一旦停止する。この後、キャリッジ3は再度空吸引位置(原点位置側)へ復動し、このときに、キャリッジ3がワイパ90の上端部に対して左側から当接することにより、ワイパ90が拭取位置から退避位置へ落下する。ワイパ90が落下した後、キャリッジ3は空吸引位置で停止する。
【0119】
この後、カム55と切換部材73がポジション「H」まで回転する。このとき、キャリッジ3は空吸引位置にあって排気キャップ40はキャリッジ3と非接触であるため、気密空間46は構成されず、排気キャップ40の凹部がポンプ38に連通する状態となる。そして、ポンプ38が駆動すると、空吸引が行われ、排気工程において気泡貯留室12から気泡(空気)とともに排気キャップ40内に吸引されていたインクが、ポンプ38側へ吸引されて排出される。以上により、空吸引工程が完了する。
【0120】
この後、カム切換部材73がポジション「L」まで回転する。すると、黒色用ノズルキャップ60とカラー用ノズルキャップ60の凹部が、共に大気に開放されるとともにポンプ38に連通された状態となる。また、排気キャップ40の凹部はポンプ38とは非連通の状態となる。この状態で、キャリッジ3が空吸引位置から更に右方向の原点位置へ復帰する。すると、排気キャップ40がキャリッジ3に密着して気密空間46(大気から遮断されている)が構成されるとともに、ノズルキャップ60がキャリッジ3に密着して密閉空間63が構成される。この後、カム55と切換部材73がポジション「A(M)」に復帰する。以上により、排気工程と空吸引工程が完了する。
【0121】
<メンテナンスにおけるインクパージ工程>
記録ヘッド10のノズル内で目詰まりしているインクとそのインク内に含まれている気泡を吸引して排出するインクパージ工程の初期には、キャリッジ3は原点位置に配置されており、気密空間46と密閉空間63とが構成されている。また、カム55と切換部材73は、図25におけるポジション「A」に位置し、黒色用密閉空間63とカラー用密閉空間63が、共に、切換部材73を介して大気に開放されると同時に、ポンプ38に連通した状態となっている。また、気密空間46は外気とポンプ38のいずれとも非連通の遮断状態となる。
【0122】
この状態からカム55と切換部材73がポジション「F」まで回転する。すると、黒色用密閉空間63とカラー用密閉空間63の双方共に、大気から遮断されると同時に、ポンプ38とは非連通の状態となる。気密空間46も大気及びポンプ38から遮断された状態となる。この状態で、ポンプ38が駆動され、ポンプ38内と切換流路74内に負圧がチャージ(ポンプ38内と切換流路74内が大気圧以下に減圧)される。
【0123】
この後、カム55と切換部材73がポジション「G」まで回転する。すると、黒色用密閉区間が切換部材73を介してポンプ38に連通され、黒色用密閉空間63内(ノズルキャップ60内)に貯留されていた黒色インクが一気にポンプ38側へ吸引される。尚、このとき、気密空間46とカラー用密閉空間63は、ポンプ38と大気のいずれからも遮断された状態となっている。
【0124】
黒色用密閉空間63内のインクパージが済むと、カム55と切換部材73がポジション「H」まで回転し、気密空間46のみがポンプ38に連通し、黒色用密閉空間63とカラー用密閉空間63は、いずれもポンプ38とは連通せず、且つ大気からも遮断された状態となる。
【0125】
この後、キャリッジ3は、原点位置から、一旦、図17に示す空吸引位置へ移動し、更に記録領域8側へ移動する。このとき、上記のようにカム55と切換部材73がポジション「A」からポジション「F」へ回転する間に、退避位置にあったワイパ90が上昇して拭取位置に固定された状態でワイピングに備えて待機している。したがって、キャリッジ3が移動する間に、記録ヘッド10のノズル面がワイパ90に接触し、ノズル面に付着しているインクが拭き取られて除去される。また、キャリッジ3がワイパ90を通過した後、キャリッジ3は更に左方向へと移動され、記録領域8の左方向にあるフラッシング位置にてフラッシングが行われる。
【0126】
この後、再びキャリッジ3が記録領域8の左方向にある空吸引位置まで戻るのであるが、この間に、キャリッジ3がワイパ90に当接することにより、ワイパ90は拭取位置から退避位置へ落下する。また、キャリッジ3が空吸引位置に戻った状態では、排気キャップ40とノズルキャップ60がキャリッジ3の下面から離間したままであるため、気密空間46と密閉空間63は形成されない。
【0127】
この後、カム55と切換部材73がポジション「H」からポジション「G」まで回転し、黒色用のノズルキャップ60の凹部のみがポンプ38に連通する状態となる。そして、この状態で、ポンプ38が駆動され、黒色用密閉空間63内に残留している黒色インクがポンプ38側へ吸引されて除去される。以上により、黒色用インクのパージ工程が完了する。
【0128】
この後、カム55と切換部材73がポジション「L」まで回転し、黒色用密閉空間63の凹部とカラー用密閉空間63の凹部が、大気に開放されるとともにポンプ38に連通した状態となる。尚、排気キャップ40の凹部とポンプ38とは非連通状態である。この状態で本ポンプ38が駆動し、もう一度、空吸引が行われ、これにより、切換流路74のうち大気ポートに連通する流路に残留しているインクがポンプ38側へ吸引されて除去される。
【0129】
この後、空吸引位置のキャリッジ3が原点位置へ復帰し、気密空間46と密閉空間63が形成される。次に、カム55と切換部材73がポジション「A(M)」まで回転する。以上により、黒色インクのパージ工程が完了する。
【0130】
尚、カラーインクのパージ工程についても、上記と同様にして行われる。このカラー用パージ工程では、黒色用のパージ工程における負圧チャージからインク吸引完了に至るポジション「F」、「G」、「H」を、夫々、ポジション「C」、「D」、「E」に変更し、ワイピング後の空吸引のポジション「G」をポジション「D」に変更すればよい。
【0131】
また、上記工程では、インクパージの前に負圧チャージを行って、インクを一気に吸引するようにしたが、負圧チャージを行わずにインクパージすることも可能である。この場合は、ポジション「F」(カラー用の場合は、ポジション「C」)で停止してポンプ38吸引する工程を省けばよい。
【0132】
<キャリッジ3が被記録媒体への記録を開始する工程>
メンテナンス済みのキャリッジ3が、原点位置で待機している状態から、被記録媒体への記録を行うために空吸引位置とワイピング終了位置を通過して記録領域8へ移動する際には、ノズル面に対するワイピングは不要である。不必要なワイピングは記録ヘッド10のノズル面の耐用寿命を短くするからである。
【0133】
この場合は、キャリッジ3を移動させる前に、予め、ポジション「A」にあるカム55を、ポジション「J」を通過した位置、例えばポジション「L」とポジション「M」との間の位置まで回転させる。カム55がポジション「J」からポジション「L」に至る間に、カム55の解除部97cがワイパホルダ90aのカムフォロワ96と干渉し、拭取位置に固定(ロック)されているワイパ90を退避位置へ落下させる。この状態でキャリッジ3を原点位置から記録領域8側へ移動させても、キャリッジ3はワイパ90と接触せずに済み、無駄なワイピングが回避される。
【0134】
次に図26を参照して、このMFDの制御部(制御手段)について説明する。この制御部は、MFDの全体的な動作を制御するものである。
【0135】
この制御部は、CPU300、ROM301、RAM302、EEPROM303を中心とするマイクロコンピュータとして構成され、バス305を介してASIC(Application Specific Integrated Circuit)306に接続されている。
【0136】
そして、記録紙を副走査方向に搬送する搬送手段として、搬送ローラ227及び排紙ローラ228と、これらの搬送ロ−ラ227及び排紙ローラ228を駆動する駆動源となる搬送(LF)モータ319を備えている。搬送ローラ227及び排紙ローラ228は、搬送(LF)モータ319に接続され、この搬送ローラ227及び排紙ローラ228が回転することによって、記録紙Pが副走査方向(矢印A方向)に搬送される。
【0137】
また、搬送(LF)モータの駆動量を制御する駆動量制御手段及び搬送(LF)モータの駆動量を補正する補正手段として、駆動量制御手順を指令するCPU2と、CPU300から指令された駆動量制御手順に基づいて制御信号を生成するASIC306と、ASIC306において生成されて出力されたPWM信号を受け、搬送(LF)モータを回転するためのパルス信号等を形成する駆動回路311とを備えている。
【0138】
ROM301には、インクジェットプリンタの各種動作を制御するプログラム等が格納されおり、RAM302は、CPUがこれらのプログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記憶する記憶領域として、また作業領域として用いられる。
【0139】
ASIC306にはNCU(Network control Unit)317が接続されており、公衆回線からNCU317を介して入力された通信信号はMODEM318によって復調されてからASIC306に入力される。また、ASIC306がファクシミリ送信等で画像データを外部へ送信する場合には、その画像データがMODEM318によって通信信号に変調され、その通信信号がNCU317を介して公衆回線に出力される。
【0140】
また、ASIC306は、CPU300からの指令に従い、例えば搬送(LF)モータ319に通電する相励磁信号等を生成して、これらの信号を搬送(LF)モータ319の駆動回路311やキャリッジ(CR)モータ320の駆動回路312に与え、駆動回路311や駆動回路312等を介して搬送(LF)モータ319やキャリッジ(CR)モータ320に駆動信号を通電し、搬送(LF)モータ319やキャリッジ(CR)モータ320の回転、停止等の制御を行っている。
【0141】
更に、ASIC306には、用紙スタッカーからMFDの装置本体内に供給された原稿の画像や文字を読み取るための、画像読取部217(例えば、CISやCCDなど)、送受信操作のためのキーボード321や液晶ディスプレイ(LCD)322を備えたパネルインターフェース314、パソコンなどの外部機器とパラレルケーブルやUSBケーブルを介してデータの送受信を行うためのパラレルインターフェース315やUSBインターフェース316、などが接続されている。
【0142】
更に、ASIC306には、メンテナンスユニット4のカム55の回転位置を検出するためのリーフスイッチ106、記録紙PがMFD内部に給紙されたときに、その記録紙Pの位置を検出するために備えられたレジセンサ308、搬送ローラ227の回転量を検出するために搬送ローラ227又は搬送(LF)モータに設けられたロータリエンコーダ309、キャリッジ3の移動量を検出するためのリニアエンコーダ310等が接続されている。リニアエンコーダ310はキャリッジ3に配設されており、エンコーダストリップ247とリニアエンコーダ310と、制御部とでキャリッジ検出手段を構成している。
【0143】
駆動回路311は、搬送(LF)ローラ227に接続された搬送(LF)モータ24を駆動させるためのものであり、この駆動回路311が搬送ローラ227を駆動することにより、記録紙Pが副走査方向(矢印A方向))に搬送される。
【0144】
駆動回路312は、記録ヘッド10が搭載されたキャリッジ3を主走査方向に移動させるキャリッジ(CR)モータ320を駆動するためのものであり、この駆動回路312がキャリッジ(CR)モータ320を駆動することにより、キャリッジ3が主走査方向(左右方向)に移動し、これに伴い、キャリッジ3に搭載されている記録ヘッド10が主走査方向に移動する。
【0145】
駆動回路313は、記録ヘッド10から所定のタイミングでインクを記録紙Pに対して選択的に吐出させるためのものであり、CPU300から出力される駆動制御手順に基づきASIC306において生成され出力された信号を受けて、記録ヘッド10を駆動制御する。
【0146】
次に、図27〜図35を参照して、本実施形態のMFDにおける記録系の初期化処理についての動作を詳細に説明する。この記録系の初期化処理は、MFDに電源を投入したときに実行される処理である。この電源投入は、操作パネル部14上のソフト電源スイッチを押下することでMFDをOFF状態からON状態にしたり、図示しない電源コードを商用電源に挿入することで実行される。このMFDでは、2種類の記録初期化処理、即ち第1の初期化処理たる簡易初期化処理と第2の初期化処理たるフル初期化処理とが備えられている。2種類の初期化処理のうち、フル初期化処理は、次の場合に実行される。即ち、MFDに電源が投入されたとき、MFDの、(1)リーフスイッチ106がOFF状態のとき、(2)レジセンサ308がON状態のとき、(3)電源が前回装置エラー状態でOFFにされたとき、(4)電源が前回パージ実行中や記録剤たるインクの交換中にOFFにされたとき、(5)最初の電源投入であるとき、の5通りの場合に実行される。従って、簡易初期化処理はこの5通りの場合以外のときに実行される。また、(1)(2)の状態はMFDに電源が投入されたときにリーフスイッチ106やレジセンサ308の出力をCPU300等からなる制御部がチェックすることで判断され、(3)(4)(5)の状態はEEPROM303内の各フラグ記憶領域に記憶されているので、制御部が各フラグ記憶領域をチェックすることで判断される。
【0147】
MFDに電源が投入されると、図27に示すように、まずEEPROM303内の初期化処理リトライ回数記憶領域に記憶されるn(初期化処理リトライの回数)の値が0クリアされると共に、記録ヘッド10に接続されているFFC(FLEXIBLE FLAT CABLE)の機能チェックが実行される(S100)。FFCの接続にエラーが生じた場合には利用者に報知等が行われるが、本発明においては重要なポイントではないので、本フローでは機能チェックがOKであったものとして、エラーの報知等については詳述しない。
【0148】
次に、リーフスイッチ106がON状態か否かが判断される(S200)。これは上述したように、前回MFDの電源がOFFにされたときにキャリッジ3がキャッピング位置(通常保存位置)にあるときには、必ずリーフスイッチ106がON状態となっているからである。従って、リーフスイッチ106がON状態であると判断されれば(S200:Yes)、キャリッジ3がキャッピング位置(通常保存位置)にあるものと推定されるため、次に給紙手段206と搬送ローラ227との間に配置されているレジセンサ308がOFF状態か否かが判断される(S300)。レジセンサ308がOFF状態ではない、即ちON状態である(S300:No)ということは、前回MFDの電源がOFFにされた時点で被記録媒体たる記録紙がレジセンサ308付近に残留しているということなので、この場合にはフル初期化処理(S900〜)に移行することとなる。
【0149】
レジセンサ308がOFF状態であれば(S300:Yes)、次にEEPROM303のチェックが実行される(S400)。即ち、上述した通り、(3)電源が前回装置エラー状態でOFFにされたか否か、(4)電源が前回パージ実行中やインク交換中にOFFにされたか否か、(5)このMFDに最初に電源が投入されたか否か、が判断されるのである。これらの情報はEEPROM303内の各フラグ記憶領域に記憶されているので、各フラグ記憶領域内の情報を検出することで容易に判断される。EEPROMチェックがOKでなければ(S400:No)、即ち、(3)(4)(5)のうち一つでも肯定判断((3)であれば、電源が前回装置エラー状態でOFFにされたこと、(4)であれば、電源が前回パージ実行中やインク交換中にOFFにされたこと、(5)であれば、このMFDに最初に電源が投入されたこと)があれば、フル初期化処理(S900〜)に移行することとなる。
【0150】
一方、EEPROMチェックがOKであれば(S400:Yes)、即ち、(3)(4)(5)が全て否定判断((3)であれば、電源が前回装置エラー状態でOFFにされていないこと、(4)であれば、電源が前回パージ実行中やインク交換中にOFFにされていないこと、(5)であれば、このMFDに最初に電源が投入されたのではないこと)であれば、キャリッジ3の原点検出処理が実行される(S500)。以上のS200〜S400までが、状態検出手段を構成している。
【0151】
ここで、図28及び図36を参照して、キャリッジ原点検出処理を説明する。キャリッジ原点検出処理(S500)では、キャリッジ3の原点検出をするために、まずキャリッジ3をメンテナンスユニット4側の最右端壁に向けてトルクTnで移動開始させる(S501)。即ち、図36における(a)→(b)の状態である。この場合は、最初にnが0クリアされているので、通常(本実施形態においてはキャリッジ3を駆動するのに最低)のトルクであるトルクT0でキャリッジ3の移動が行われる。次に、キャリッジ3の移動が停止したか否かが判断される(S502)。この判断は、リニアエンコーダ310の出力に基づいて行われるが、一般によく知られた技術であるので、ここでは詳述しない。キャリッジ3が停止していない間(S502:No)はキャリッジ3の移動が継続され、キャリッジ3が停止したら(S502:Yes)、例えば、キャリッジ3が最右端壁に当接した図36の(b)の状態になったら、その停止位置がキャリッジ3の仮の原点位置としてASIC306内の記憶領域に記憶されるのである(S503)。このキャリッジ原点検出処理(S500)が原点検出手段を構成している。
【0152】
キャリッジ3の原点検出処理(S500)が終了したら、次にキャリッジ位置判定処理1が実行される(S600)。以下に、図29を参照して、このキャリッジ位置判定処理1を説明する。このキャリッジ位置判定処理1(S600)では、まずキャリッジ3が停止位置(正常状態であれば原点位置)からキャリッジロック100の方向に向けて移動開始される(S601)。即ち、図36における(b)→(c)の状態である。次に、キャリッジ3が停止したか否かが判断される(S602)。この判断も上述の通り、リニアエンコーダ310の出力に基づいて行われる。キャリッジ3が停止していなければ(S602:No)、キャリッジ3の移動量が所定範囲を超えたか否かが判断される(S604)。これはキャリッジ3の真の原点位置からキャリッジロック100までの距離(第1の距離)D1は予め定められているので、キャリッジ3が真の原点位置からキャリッジロック100に向かって誤差範囲αを含む所定の移動量(D2±α)だけ移動すればキャリッジ3はキャリッジロック100に当接して停止するはずだからである。ここで、D2はD1からキャリッジ3の幅分を引いた距離(第2の距離)である。従って、キャリッジ3の移動量が所定範囲(D2±α)のうち、最大の移動量(D2+α)を超えていなければ(S604:No)、S602へ戻ってキャリッジ3の移動を継続する。例えば、キャリッジ3がキャリッジロック100に当接することにより停止したと判断された場合、即ち、図36における(c)の状態になった場合には(S602:Yes)、その移動量が所定範囲(D2±α)内か否かが判断される(S603)。移動量が所定範囲(D2±α)内であれば(S603:Yes)、先ほどS500においてASIC306内の記憶領域に記憶された仮の原点位置が正しいもの(真の原点位置)であったとして、キャリッジ位置判定処理1を終了する。この場合には、記録ヘッド10のヘッド電圧をチェックして(S700)、初期化処理を終了する。
【0153】
一方、キャリッジ3が停止することなくその移動量が最大の移動量(D2+α)を超えた場合(S604:Yes)には、何らかのエラーが発生していることとなるので、その場合にはキャリッジ3の移動を停止させ(S605)、キャリッジ3の原点検出処理(S606)を実行した後、後述するフル初期化処理のS1100へと移行する。キャリッジ3の原点検出処理(S606)は、上述したS500の処理内容と同一であるので、ここでは詳述しない。
【0154】
また、キャリッジ3は停止したもののその移動量が所定範囲(D2±α)内ではない場合(S603:No)にも、キャリッジ3の原点検出処理(S606)を実行した後、後述するフル初期化処理のS1100へと移行する。この場合の何らかのエラーとは、例えば、キャリッジ3の原点検出処理(S500)において、キャリッジ3が最右端壁に当接して停止したのではなく、何らかの異物等によって最右端壁に当接する前に停止してしまってキャリッジ3の原点であると記憶した仮の原点位置が間違っていた場合や、電源投入時にリーフスイッチ106はON状態にあったものの、実際にはキャリッジロック100が下降位置に配置されている場合等が挙げられる。
【0155】
このようにnの値を0クリアして記録ヘッドに接続されているFFCをチェック(S100)してから記録ヘッド10の電圧チェック(S700)するまでの最短の一連の流れ(S100→S200→S300→S400→S500→S600→S700)が簡易初期化処理となる。この簡易初期化処理の場合、キャリッジ3をフラッシング位置の方向に移動させないので、初期化処理時間を短縮させることができ、且つ利用者に煩わしさを与えることがない。なお、この簡易初期化処理が実行されている間は、記録ヘッド10はずっとノズルキャップ60にキャッピングされている状態なので、改めてキャッピング動作を行う必要はない。
【0156】
一方、S200においてリーフスイッチ106がOFF状態の場合(S200:No)、S300においてレジセンサ308がON状態の場合(S300:No)、S400においてEEPROMチェックがOKでない場合(S400:No)、S600のキャリッジ位置判定処理1で何らかのエラーが発生していると判断された場合(S603:No→S606、又はS604:Yes→S605→S606)には、フル初期化処理へと移行する。但し、各段階におけるそれまでの状況に応じて、フル初期化処理を最初(S900)から実行するか、途中(S1100)から実行するかが異なる。
【0157】
上述した通り、MFDの電源がOFFにされたときにキャリッジ3がキャッピング位置(通常保存位置)にあるときには、必ずリーフスイッチ106がON状態となっているので、リーフスイッチ106がOFF状態の場合(S200:No)には、キャリッジ3はキャッピング位置(通常保存位置)にないことになる。即ち、今回MFDに電源が投入された時点で、記録ヘッド10のノズル面はノズルキャップ60によりキャッピングをされていなかったと判断される。従って、記録ヘッド10の各ノズルが乾燥をしてインク詰まり等が発生している虞れがあるため、記録パージフラグをON状態にしてから(S800)、フル初期化処理が実行されることとなる。記録パージフラグをON状態にするとは、EEPROM303内の記録パージフラグ記憶領域に「1」を記憶させることを意味している。この記録パージフラグがON状態であれば、初期化処理が終了して待機状態にあるMFDに記録指示が入力されたとき、その記録動作を開始する前に記録ヘッド10に対してパージ動作が実行されるのである。従って、例え記録ヘッド10の各ノズルにインク詰まり等が発生している場合であっても、記録前にパージ処理が実行されるので、画像や文字の記録は良好に行われるのである。
【0158】
記録パージフラグをON状態にしたら(S800)、キャリッジ3の原点検出処理(S900)が実行される。その動作内容は上述したS500の処理内容と同一であるので、ここでは述べない。
【0159】
キャリッジ3の原点検出処理(S900)が終了したら、次にRAM302内の初期化処理リトライ回数記憶領域に記憶されているnの値が1であるか否かが判断される(S1000)。最初はn=0なので(S1000:No)、引き続きキャリッジ3の空吸引位置への移動処理(S1100)が実行される。以下に、図30及び図36を参照してキャリッジ3の空吸引位置への移動処理(S1100)を説明する。なお、空吸引位置とは、メンテナンスユニット4側の最右端壁から記録領域8側に所定量だけキャリッジ3の位置を戻した位置であって、ノズルキャップ60が記録ヘッド10のノズル面に当接し得ない位置をいう。従って、ポンプ38を回転させたとき、ノズルキャップ60内に残留している廃インクは吸引されるものの、各ノズルからインクは吸引されないため、インクの無駄な消費を抑制することができる。
【0160】
この空吸引位置への移動処理(S1100)では、まずRAM302内の空吸引位置移動処理リトライ回数記憶領域に記憶されているmの値が0クリアされ(S1101)、次にカム55の回転が開始される(S1102)。カム55を回転させるのは、キャリッジロック100が下降位置ではなく上昇位置に配置されている場合があるので、図36(d)に示すように、キャリッジロック100を下降位置に配置してからキャリッジ3を空吸引位置へと移動させるためである。本実施形態では、カム55が1回転する間にリーフスイッチ106がOFF状態からON状態になる箇所は4箇所存在するが、そのうち3箇所では確実にキャリッジロック100が下降位置に配置される。しかし、残りの1箇所ではリーフスイッチ106がOFF状態からON状態になったとしても、キャリッジロック100が上昇位置に配置される。この場合、キャリッジ3を空吸引位置へ移動させようとしてもキャリッジ3はキャリッジロック100に当接して空吸引位置へと移動することができない。そこで、リーフスイッチ106がOFF状態からON状態になる箇所を少なくとも2回検出すればキャリッジロック100を下降位置に配置することができるので、キャリッジ3を確実に空吸引位置へと移動させることができる。従って、このサブルーチンでは空吸引位置移動処理リトライ回数を1回のみ許容しているのである。また、キャリッジ3を空吸引位置へと移動させるのは、上述した通り、記録ヘッド10のノズル面にノズルキャップ60が密着した状態でLFモータ24を回転させてポンプ38を回転させると、記録ヘッド10の各ノズルからインクを吸ってしまうため、予めキャリッジ3を空吸引位置に移動させておくのである。
【0161】
カム55が回転し始めたら(S1102)、リーフスイッチ106の出力がOFF状態になったか否かが検出される(S1103)。リーフスイッチ106の出力がOFF状態でなければ(S1103:No)、リーフスイッチ106の出力がOFF状態になるまでS1103は継続される。リーフスイッチ106の出力がOFF状態になったら(S1103:Yes)、次にリーフスイッチ106の出力がON状態になったか否かを検出する(S1104)。リーフスイッチ106の出力がON状態でなければ(S1104:No)、リーフスイッチ106の出力がON状態になるまでS1104は継続される。リーフスイッチ106の出力がON状態になったら(S1104:Yes)、カム55の回転が停止される(S1105)。そしてキャリッジ3は原点位置から空吸引位置に向けて移動開始される(S1106)。即ち図36において(b)→(e)である。次に、キャリッジ3が所定量だけ移動したか否かが判断される(S1107)。キャリッジ3が所定量だけ移動したと判断されると(S1107:Yes)、キャリッジ3の移動が停止され(S1113)、この空吸引位置への移動処理が終了する(図36(e))。
【0162】
一方、キャリッジ3が所定量だけ移動していないと判断されると(S1107:No)、次にキャリッジ3が停止したか否かが判断される(S1108)。キャリッジ3が停止していないと判断されると(S1108:No)、S1107へと戻ってキャリッジ3の移動が継続される。しかし、キャリッジ3が停止したと判断されると(S1108:Yes)、RAM302内の空吸引位置移動処理リトライ回数記憶領域に記憶されているmの値が1だけインクリメントされる(S1109)。キャリッジ3が原点位置から所定量だけ移動していないのにキャリッジ3が停止したということは、図36(c)に示すように、キャリッジロック3が上昇位置に配置されていることを示しているので、その場合には、空吸引位置移動処理が再度1回だけリトライされるのである。また、これらのキャリッジ3の移動量及び停止の判断も上述の通り、リニアエンコーダ310の出力に基づいて行われる。
【0163】
RAM302内の空吸引位置移動処理リトライ回数記憶領域に記憶されているmの値が1だけインクリメントされたら(S1109)、そのmの値が2以上か否かが判断される(S1110)。このとき、正常であればm=1なので(S1110:No)、再びS1102へと移行して空吸引位置への移動処理が再度実行される。上述したように、最初の空吸引位置への移動処理でキャリッジロック100が上昇位置(図36(c))にあったとしても、S1102〜S1108までのステップを再度実行すれば、キャリッジロック100は降下位置に配置されているはずなので、通常はキャリッジ3の移動が停止され(S1113)、この空吸引位置への移動処理が終了する(図36(e))。但し、最初の空吸引位置への移動処理においてキャリッジ3は原点位置からキャリッジロック100に当接する位置まで既に移動しているので、リトライ時においては、S1107の所定量は、キャリッジロック100の当接位置から空吸引位置まで(図36において(c)→(e))の距離となることは言うまでもない。
【0164】
しかし、S1102〜S1108までのステップを再度実行してもキャリッジ3が所定量だけ移動していないのに停止してしまった場合には(S1108:Yes)、RAM302内の空吸引位置移動処理リトライ回数記憶領域に記憶されているmの値が更に1だけインクリメントされる(S1109)。この場合、m=2となっているので(S1110:Yes)、操作パネル上のLCD322や図示しないスピーカ等からエラーが利用者に報知され(S1111)、MFDの動作が停止される(S1112)。エラーを認識した利用者は、利用者自身が回復可能な簡単なエラーの場合には本体フレーム1から画像読取装置2を回動させてエラーの原因を除去すればよい。また、利用者自身が回復不能な重度のエラーの場合にはMFDを専門家による修理に出すこととなる。
【0165】
キャリッジ3の移動が停止されて(S1113)、この空吸引位置への移動処理が終了する(図36(e))と、次にカム55の回転位置検出処理(S1200)が実行される。
【0166】
以下に、図31を参照して、カム55の回転位置検出処理(S1200)を説明する。このカム55の回転位置検出処理(S1200)では、まずRAM302内の回転位置検出処理リトライ回数記憶領域に記憶されているkの値が0クリアされるとともに、EEPROM303内の所定領域に記憶されるカム55の回転量をカウントするカウント値も0クリアされる(S1201)。そして、カム55の回転が開始される(S1202)。カム55が回転し始めたら(S1202)、リーフスイッチ106の出力がOFF状態になったか否かが検出される(S1203)。リーフスイッチ106の出力がOFF状態でなければ(S1203:No)、リーフスイッチ106の出力がOFF状態になるまでS1203は継続される。リーフスイッチ106の出力がOFF状態になったら(S1203:Yes)、次にリーフスイッチ106の出力がON状態になったか否かが検出される(S1204)。リーフスイッチ106の出力がON状態でなければ(S1204:No)、リーフスイッチ106の出力がON状態になるまでS1204は継続される。リーフスイッチ106の出力がON状態になったら(S1204:Yes)、カム55の回転が一旦停止されるとともに、カム55の回転量をカウントするカウント値も0クリアされる(S1205)。そして、カム55の回転が再び開始されるとともに、カム55の回転量のカウントが開始される(S1206)。そして、カム55が所定量回転したか否かが判断される(S1207)。カム55が所定量回転していなければ(S1207:No)、リーフスイッチ106がOFF状態になったか否かが判断される(S1208)。リーフスイッチ106がOFF状態になっていなければ(S1208:No)、S1207へと戻ってカム55の回転が継続される。
【0167】
一方、カム55が所定量回転していないうちにリーフスイッチ106がOFF状態になったら(S1208:Yes)、カム55の回転が停止されると共に、カム55の回転量をカウントしていたカウント値も0クリアされる(S1209)。この処理で検出したいカム55の回転位置は、リーフスイッチ106のON状態が最も長く継続される位置の近傍にあるため、カム55が所定量だけ回転する前にリーフスイッチ106がOFF状態になるということは、現在のカム55の回転位置が目的の回転位置ではないことを示しているからである。そして、kの値が1だけインクリメントされ(S1210)、続いてkの値が4以上になったか否かが判断される(S1211)。これは、カム55が1回転するまでにリーフスイッチ106がOFF状態からON状態になる箇所が4箇所あるため、この回転位置検出処理を4回繰り返せば、必ず目的の回転位置が検出できるからである。kの値が4以上でなければ(S1211:No)、S1202へ戻って再度カム55の回転位置検出処理が実行される。
【0168】
一方、kの値が4以上であれば(S1211:Yes)、操作パネル上のLCD322や図示しない発声器からエラーが利用者に報知され(S1212)、MFDの動作が停止される(S1213)。
【0169】
また、リーフスイッチ106がOFF状態になる前にカム55が所定量回転していれば(S1207:Yes)、カム55の回転が停止され(S1214)、カム55の回転位置検出処理(S1200)が終了する。
【0170】
カム55の回転位置検出処理(S1200)が終了すると、リーフスイッチ106のOFF検出処理(S1300)が実行される。
【0171】
以下に、図32を参照してリーフスイッチ106のOFF検出処理(S1300)を説明する。このリーフスイッチ106のOFF検出処理(S1300)では、まずカム55の回転が開始される(S1301)。そして、リーフスイッチ106がOFF状態になったか否かが判断される(S1302)。リーフスイッチ106がOFF状態になっていなければ(S1302:No)、リーフスイッチ106がOFF状態になるまでカム55の回転が継続され、リーフスイッチ106がOFF状態になったら(S1302:Yes)、カム55の回転が停止され(S1303)、このリーフスイッチ106のOFF検出処理(S1300)が終了する。従って、カム55の回転位置検出処理(S1200)によってキャリッジロック100が確実に上昇位置にあるカム55の回転位置が検出されたため、次のリーフスイッチ106のOFF検出処理(S1300)によって、確実にキャリッジロック100が下降位置に配置されるのである。
【0172】
リーフスイッチ106のOFF検出処理(S1300)が終了すると、キャリッジ位置判定処理2(S1400)が実行される。
【0173】
以下に、図33及び図36を参照して、キャリッジ位置判定処理2(S1400)を説明する。このキャリッジ位置判定処理2(S1400)が開始される時点では、キャリッジロック100が下降位置に配置されているので、キャリッジ3はキャリッジロック100に当接することなくフラッシング位置側の最左端壁に向けて移動開始される(S1401)。そして、キャリッジ3が所定量だけ移動したか否かが判断される(S1402)。この場合、所定量(所定距離)とは、キャリッジ3が空吸引位置(図36(e))からフラッシング位置側の最左端壁の直前(図36(f))まで移動できる量(第3の距離)である。キャリッジ3が所定量だけ移動していないと判断されると(S1402:No)、キャリッジ3が停止したか否かが判断される(S1403)。キャリッジ3が停止していないと判断されると(S1403:No)、S1402へと戻ってキャリッジ3の移動が継続される。キャリッジ3が所定量だけ移動したと判断されると(S1402:Yes)、キャリッジ3の移動が停止され(S1404)、このキャリッジ3の位置判定処理2(S1400)が終了する(図36(f))。
【0174】
キャリッジ3の位置判定処理2(S1400)が終了すると、レジセンサ308の近傍に記録紙が残留している可能性が否定できないので、排紙処理(S1500)が実行される。この排紙処理では、例えばA4サイズの記録紙が給紙手段206によって給紙トレイから1枚だけ分離され、更には搬送ローラ227と排紙ローラ228とによって排紙トレイ上に排紙可能なだけの量の搬送処理が実行される。
【0175】
排紙処理(S1500)が終了すると、記録ヘッド10に対してノズルキャップ60をキャッピングできるように、キャリッジ3をキャッピング位置へと移動させて記録ヘッド10をノズルキャップ60でキャッピングする(S1600)。即ち、図36における(f)→(g)である。更に、RAM302内の初期化処理リトライ回数記憶領域に記憶されているnの値が0クリアされる(S1700)。最後に、記録ヘッド10の電圧チェック(S700)が実行されて、キャリッジ3の往復移動を含むフル初期化処理が終了する。
【0176】
一方、キャリッジ位置判定処理2(S1400)において、キャリッジ3が所定量だけ移動していないのに(S1402:No)、キャリッジ3が停止した場合には(S1403:Yes)、何らかのエラーが発生しているものとしてS1800へと進む。まず、RAM302内の初期化処理リトライ回数記憶領域に記憶されているnの値が1だけインクリメントされる(S1800)。次に、nの値が2か否かが判断される(S1900)。nの値が2ではないと判断されれば(S1900:No)、S900へ戻ってキャリッジ3の原点検出処理が再び実行される。キャリッジ3の原点検出処理(S900)が終了したら、nの値が1か否かが判断されるが(S1000)、今回はn=1となっているので(S1000:Yes)、即ちフル初期化処理のリトライであるので、S1100〜S1300までのステップは実行されることなく、S1400のキャリッジ3の位置判定処理2が実行される。但し、最初のフル初期化処理においては、S1400のキャリッジ3の位置判定処理2が実行される時点でキャリッジ3は空吸引位置に移動していたので、S1402における所定量はキャリッジ3が空吸引位置からフラッシング位置側の最左端壁直前まで移動するだけの移動量であったが、今回はS900によりキャリッジ3が原点位置にいるため、S1402における所定量は、キャリッジ3が原点位置(図36(b))からフラッシング位置側の最左端壁直前(図36(f))まで移動するだけの移動量である。
【0177】
また、フル初期化処理のリトライでS1100〜S1300までのステップが実行されないのは、最初に実行されたフル初期化処理により、既にノズルキャップ60内の余剰インクは最初の空吸引で吸引されてしまっており、更にキャリッジロック100も現在下降位置に配置されているからである。
【0178】
このリトライによってキャリッジ3が所定量だけ移動(S1402:Yes)した後に、図36(f)に示すように、キャリッジ3の移動が停止されれば(S1404)、このキャリッジ3の位置判定処理2は終了し、S1500の排紙処理に移行する。
【0179】
しかし、キャリッジ3が所定量だけ移動していないのに(S1402:No)、キャリッジ3が停止した場合には(S1403:Yes)、何らかのエラーが発生しているものとしてS1800へと進み、nの値が再び1だけインクリメントされる。すると、n=2となる(S1900:Yes)。本実施形態では、フル初期化処理のリトライは1回だけであるので、nの値が2であるということは、一度リトライをしたにも拘わらずキャリッジ3の位置判定処理2で再び何らかのエラーが発生しているものと判断されたことを意味している。従って、キャリッジ3のエラー処理(S2000)が実行される。
【0180】
以下に、図34を参照して、キャリッジ3のエラー処理(S2000)を説明する。このキャリッジ3のエラー処理(S2000)では、まず操作パネル上の表示装置であるLCD322に、「OPEN COVER」が表示される(S2001)。これはMFD内で発生した何らかのエラーの回復処理を利用者に委ねるため、MFD内でエラーが発生していること、及び原稿読取装置2を本体フレーム1から開くように利用者に報知するのである。原稿読取装置2には図示しないカバーオープンセンサが備えられているので、本体フレーム1に対する原稿読取装置2の開閉状態はこのカバーオープンセンサによって検出される(S2002)。従って、LCD322の「OPEN COVER」表示は、利用者が原稿読取装置2を本体フレーム1に対して開状態にするまで継続される(S2002:No)。利用者が原稿読取装置2を本体フレーム1に対して開状態にすると(S2002:Yes)、次にLCD322に、「CLOSE COVER」を表示させる(S2003)。これは利用者によるエラーの回復処理が終了したら原稿読取装置2を閉じるように利用者に報知するものである。本体フレーム1に対する原稿読取装置2の開閉状態は、上述した通り、カバーオープンセンサによって検出される(S2004)ので、LCD322の「CLOSE COVER」表示は、利用者が原稿読取装置2を本体フレーム1に対して閉状態にするまで継続される(S2004:No)。利用者が原稿読取装置2を本体フレーム1に対して閉状態にすると(S2004:Yes)、原稿読取装置2のカバークローズ処理(S2005)が実行される。
【0181】
以下に、図35を参照して、原稿読取装置2のカバークローズ処理(S2005)を説明する。この原稿読取装置2のクローズ処理(S2005)では、まず、RAM302内の初期化処理リトライ回数記憶領域に記憶されているnの値が0クリアされる(S2006)。次に、S900と同様のキャリッジ3の原点検出処理(S2007)が実行される。キャリッジ3の原点検出処理(S2007)が終了したら、nの値が1か否かが判断される(S2008)。今回はn=0であるので(S2008:No)、S1200と同様のカム55の回転位置検出処理(S2009)が実行される。カム55の回転位置検出処理(S2009)が終了したら、S1300と同様のリーフスイッチ106のOFF検出処理(S2010)が実行される。リーフスイッチ106のOFF検出処理(S2010)が終了したら、S1400と同様のキャリッジ3の位置判定処理2(S2011)が実行される。但し、S2007〜S2011の動作は、上述したS900〜S1400の動作と同様であるので、ここでは詳述しない。キャリッジ3の位置判定処理2(S2011)によって、キャリッジ3が原点位置からフラッシング位置側の最左端壁直前まで移動した上で停止した(S1402:Yes→S1404)場合には、S1500と同様の排紙処理が実行された後、S1600と同様にキャリッジ3はキャッピング位置まで移動され、記録ヘッド10がノズルキャップ60によりキャッピングされる(図36(g))。そしてこのカバークローズ処理(S2005)は終了する。但し、図示はしていないものの、このカバークローズ処理の間も常にリニアエンコーダ310によるキャリッジ3の位置情報に基づいてキャリッジ位置が正しいか否かが検出されている。従って、キャリッジ3の位置についてエラーを検出した場合には、キャリッジ3のエラー処理のS2001に戻ることになる。
【0182】
カバークローズ処理(S2005)が終了したら、キャリッジエラー処理(S2000)が終了したことになるので、S1700へ移行する。そしてRAM302内の初期化処理リトライ回数記憶領域に記憶されているnの値が0クリアされた後(S1700)、記録ヘッド10のヘッド電圧をチェックして(S700)、初期化処理は終了する。
【0183】
一方、キャリッジ3の位置判定処理2(S2011)において、キャリッジ3が所定量だけ移動していないのに(S1402:No)、キャリッジ3が停止した場合には(S1403:Yes)、何らかのエラーが発生しているものとしてS1800へと進む。この後の処理内容については、上述されているので、ここでは説明を省略する。
【0184】
以上詳述した通り、本発明の記録装置によれば、原点検出手段が原点位置を検出した後に、移動手段がキャリッジを原点位置から規制手段の方向に移動させたとき、キャリッジの移動が規制されたか否か、且つキャリッジの移動距離が第1の距離から前記キャリッジの幅分を引いた第2の距離か否か、に基づいて、制御手段が簡易初期化処理たる第1の初期化処理か、この第1の初期化処理よりも長時間を要する第2の初期化処理(完全初期化処理)を実行するので、電源投入時の記録装置の状態によっては初期化処理動作を簡略化して利用者の待機時間を短縮化することができる。
【0185】
また、別の発明によれば、キャリッジが原点位置から第2の距離を移動した上で規制手段によりその移動を規制(停止)された場合、この記録装置に電源が投入された時点で記録装置の状態が正常であったと判断できるので、制御手段は第1の初期化処理を実行することにより利用者の待機時間を短縮化することができる。
【0186】
また、別の発明によれば、キャリッジの移動距離が第2の距離を超えたにも拘わらずキャリッジの移動が規制されなかったか、又は、キャリッジの移動が規制されたにも拘わらずキャリッジの移動距離が第2の距離でなかったため、この記録装置に何らかの異常が生じていると判断できるので、制御手段は第2の初期化処理を実行することにより、第1の初期化処理より多少時間がかかるものの、この記録装置を自動的に正常状態に戻すことができる。
【0187】
また、別の発明によれば、記録装置に電源が投入されたとき、原点検出手段が原点位置を検出する前に、前回の電源遮断時におけるこの記録装置の状態を検出する状態検出手段を備えているので、記録装置に何らかの異常が生じている場合にはその異常をより早く検出できるので、長時間を要する第2の初期化処理を早く開始できる。
【0188】
また、別の発明によれば、電源遮断時におけるこの記録装置の状態が特定されているので、状態検出手段は記録装置の状態を容易に検出することができる。
【0189】
また、別の発明によれば、前回の電源遮断時に記録ヘッドのノズル面が覆部材により覆われていない状態であったことを状態検出手段が検出したとき、記録ヘッドにインク詰まりが発生している虞れがあるため、次回の記録前に記録ヘッドのメンテナンス処理を実行することで正常な記録を行うことができる。
【0190】
また、別の発明によれば、この記録装置に対する最初の電源投入である場合は第2の初期化処理が実行されるので、この記録装置を速やかに使用可能状態に設定できる。
【0191】
また、別の発明によれば、キャリッジを長い距離移動させることができるため、原点検出処理もより精度良く正確に実行することができる。
【0192】
また、別の発明によれば、原点検出処理もより精度良く正確に実行することができ、且つ記録ヘッドを待機状態とすることができる。
【0193】
また、別の発明によれば、キャリッジ検出手段が異常を検出した場合、第2の初期化処理が繰り返されるので、突発的に生じた1回のエラーで装置が停止することがなく、利用者を煩わせることがない。
【0194】
また、別の発明によれば、第2の初期化処理が繰り返されるとき、制御手段はその繰り返し回数に応じて移動手段のキャリッジの移動力を増大させるので、より正確に原点位置検出処理が実行される。
【0195】
また、別の発明によれば、第2の初期化処理が所定回数繰り返されたときにキャリッジの不具合を報知する報知手段を備えているので、不具合が自動的には回復不能な状態であるときに初めて利用者はキャリッジの不具合を認識することとなり、利用者の煩わしさを軽減することができる。
【0196】
また、別の発明によれば、記録ヘッドのメンテナンスを実行するとともに、待機時には記録ヘッドを覆部材で覆うメンテナンス手段が、キャリッジの移動可能領域内の原点位置と同一端側に配置されているので、原点検出処理を速やかに行うことができる。
【0197】
なお、本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなくその趣旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0198】
例えば、上述した実施形態においては、図27におけるエラー時のリトライ回数を2回としているが、更に増やすことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0199】
【図1】多機能装置の外観斜視図
【図2】内部機構の全体構成をあらわす平面図
【図3】多機能装置を左右位置の略中央で切断した断面図
【図4】記録部の構成をあらわす平面図
【図5】メンテナンス機構に回転駆動力を伝達するための機構をあらわす斜視図
【図6】キャリッジの上下反転させた状態の斜視図
【図7】キャリッジ及び記録ヘッドを模式的にあらわした概略断面図
【図8】メンテナンス機構を底面側から視た斜視図
【図9】メンテナンス機構の底面図
【図10】メンテナンス機構を上から視た斜視図
【図11】キャップが待機位置、開閉部材が閉弁位置、ワイパが退避位置にある状態をあらわす概略断面図
【図12】キャリッジが原点位置にあり、ノズルキャップがキャリッジに密着した状態をあらわす概略断面図
【図13】黒色用の開閉部材が開弁位置にあり、カラー用の開閉部材が閉弁位置にある状態をあらわす概略断面図
【図14】黒色用の開閉部材が閉弁位置にあり、カラー用の開閉部材が開弁位置にある状態をあらわす概略断面図
【図15】カラー用の開閉部材が閉弁位置にある状態をあらわすカムの平面図
【図16】カラー用の開閉部材が開弁位置にある状態をあらわすカムの平面図
【図17】キャリッジが空吸引位置にある状態をあらわす概略断面図
【図18】キャリッジが空吸引位置よりも原点位置側へ移動してノズルキャップがキャリッジに密着した状態をあらわす概略断面図
【図19】図18の状態からキャリッジが更に原点位置側へ移動しキャリッジに対するノズルキャップの密着度が高まった状態をあらわす概略断面図
【図20】キャリッジが空吸引位置よりも原点位置側へ移動して排気キャップがキャリッジに密着した状態をあらわす概略断面図
【図21】開閉部材が開弁位置へ変位した状態をあらわす概略断面図
【図22】(A)ワイパが拭取位置に保持されているときのワイパのカムフォロアとカムの解除部との位置関係をあらわす概略平面図 (B)ワイパが拭取位置に保持されている状態をあらわす概略断面図
【図23】(A)拭取位置のワイパが係止部から外されたときのワイパのカムフォロアとカムの解除部との位置関係をあらわす概略平面図 (B)拭取位置のワイパが係止部から外された状態をあらわす概略断面図
【図24】(A)ワイパが拭取位置から退避位置へ変位する過程をあらわす概略断面図 (B)ワイパが拭取位置から退避位置へ変位した状態をあらわす概略断面図
【図25】カムと切換部材のポジション、開閉部材の変位状態、キャリッジロックの変位状態、ワイパの変位状態をあらわすチャート図
【図26】多機能装置の電気的構成を示すブロック図
【図27】多機能装置に電源を投入した後に実行される初期化処理の流れを示すフローチャート
【図28】キャリッジ原点検出処理(サブルーチン)の動作を示すフローチャート
【図29】キャリッジ位置判定処理1(サブルーチン)の動作を示すフローチャート
【図30】キャリッジの空吸引位置への移動処理(サブルーチン)の動作を示すフローチャート
【図31】カムの回転位置検出処理(サブルーチン)の動作を示すフローチャート
【図32】リーフスイッチOFF検出処理(サブルーチン)の動作を示すフローチャート
【図33】キャリッジ位置判定処理2(サブルーチン)の動作を示すフローチャート
【図34】キャリッジエラー処理(サブルーチン)の動作を示すフローチャート
【図35】カバークローズ処理(サブルーチン)の動作を示すフローチャート
【図36】(a)〜(g)は、キャリッジの動作及び位置を模式的に表した図
【符号の説明】
【0200】
3…キャリッジ
10…記録ヘッド
12…気泡貯留室
17…排出路
19…開閉弁
50…開閉部材
54b…カムガイド
55…カム
90…ワイパ
92…ストッパ
93…係止部
95…バネ(付勢部材)
97a…円弧部
97b…隆起部
97c…解除部
100…キャリッジロック
102…カム面(キャリッジロックのカムガイド)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体に対して画像を記録可能な記録ヘッドを搭載したキャリッジと、このキャリッジの移動可能領域内の一端部に設けられている原点位置を基準として前記キャリッジを主走査方向に往復移動させる移動手段と、キャリッジの移動距離や移動/停止状態を検出可能なキャリッジ検出手段と、前記キャリッジの原点位置を検出する原点検出手段と、を備え、電源が投入されたときに前記キャリッジの原点位置検出処理を含む初期化処理を実行する記録装置であって、
前記キャリッジの移動可能領域内であって原点位置から第1の距離に配置され、前記キャリッジに対して当接することで前記キャリッジの移動を規制する当接位置と、前記キャリッジから離間することで前記キャリッジの移動を許容する離間位置との間で変位可能な規制手段と、
前記原点検出手段が原点位置を検出した後に、前記移動手段が前記キャリッジを原点位置から前記規制手段の方向に移動させたとき、前記キャリッジの移動が規制されたか否か、且つ前記キャリッジの移動距離が第1の距離から前記キャリッジの幅分を引いた第2の距離か否か、に基づいて、簡易初期化処理たる第1の初期化処理か、又はこの第1の初期化処理よりも長時間を要する第2の初期化処理を実行する制御手段と
を備えたことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記キャリッジの移動が規制され、且つ、前記キャリッジの移動距離が第2の距離である場合、前記制御手段は第1の初期化処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記キャリッジの移動距離が第2の距離を超えたにも拘わらず前記キャリッジの移動が規制されなかったか、又は、前記キャリッジの移動が規制されたにも拘わらず前記キャリッジの移動距離が第2の距離でなかった場合、前記制御手段は第2の初期化処理を実行することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
更に、当該記録装置に電源が投入されたとき、前記原点検出手段が原点位置を検出する前に、前回の電源遮断時における当該装置の状態を検出する状態検出手段を備えていることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の記録装置。
【請求項5】
前回の電源遮断時における当該装置の状態が特定の状態であると前記状態検出手段により検出されたとき、前記制御手段は第2の初期化処理を実行することを特徴とする請求項4に記載の記録装置。
【請求項6】
前回の電源遮断時における当該装置の状態が特定の状態でないと前記状態検出手段により検出されたとき、前記制御手段は前記原点検出手段に原点位置を検出させることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の記録装置。
【請求項7】
前記特定の状態は、前記記録ヘッドのノズル面が覆部材により覆われていない状態、被記録媒体が異常位置に存在している状態、当該装置がエラーの状態、前記記録ヘッドのメンテナンス動作中の状態、そして被記録媒体上に画像を記録するための記録剤の交換中の状態、のうち少なくとも一つの状態であることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の記録装置。
【請求項8】
前回の電源遮断時に前記記録ヘッドのノズル面が覆部材により覆われていない状態であったことを前記状態検出手段が検出したとき、前記制御手段は、当該装置が次の記録動作を実行する前に前記記録ヘッドのメンテナンス処理を実行するように制御することを特徴とする請求項7に記載の記録装置。
【請求項9】
今回の電源投入が当該装置に対する最初の電源投入であると前記状態検出手段により検出されたとき、前記制御手段は第2の初期化処理を実行することを特徴とする請求項4〜請求項8の何れかに記載の記録装置。
【請求項10】
第2の初期化処理は、前記キャリッジの移動可能領域内で原点位置の配置されている一端部とは反対側の他端部近傍まで前記移動手段により前記キャリッジを移動させる動作を含むことを特徴とする請求項1〜請求項9の何れかに記載の記録装置。
【請求項11】
前記移動手段が前記キャリッジを前記他端部近傍まで移動させるとき、前記キャリッジが第2の距離よりも長い第3の距離だけ移動したことを前記キャリッジ検出手段が検出した場合、前記制御手段は前記移動手段に、前記キャリッジの移動を停止させると共に前記記録ヘッドのノズル面が覆部材により覆われるまで前記キャリッジを原点位置に向けて移動させることを特徴とする請求項10に記載の記録装置。
【請求項12】
前記移動手段が前記キャリッジを前記他端部近傍まで移動させるとき、前記キャリッジが第2の距離よりも長い第3の距離だけ移動していないのに移動が規制されたことを前記キャリッジ検出手段が検出した場合、前記制御手段は前記移動手段に前記キャリッジの移動を停止させると共に、第2の初期化処理を繰り返すことを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の記録装置。
【請求項13】
第2の初期化処理が繰り返されるとき、前記制御手段は、その繰り返し回数に応じて、前記移動手段の前記キャリッジの移動力を増大させることを特徴とする請求項12に記載の記録装置。
【請求項14】
第2の初期化処理が所定回数繰り返されたとき、前記キャリッジの不具合を報知する報知手段を備えたことを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の記録装置。
【請求項15】
被記録媒体に対して画像を記録可能な記録ヘッドを搭載したキャリッジと、このキャリッジの移動可能領域内の一端部に設けられている原点位置を基準として前記キャリッジを主走査方向に往復移動させる移動手段と、キャリッジの移動距離や移動/停止状態を検出可能なキャリッジ検出手段と、前記キャリッジの原点位置を検出する原点検出手段と、を備え、電源が投入されたときに前記キャリッジの原点位置検出処理を含む初期化処理を実行する記録装置であって、
当該装置に電源が投入されたとき、前回の電源遮断時における当該装置の状態を検出する状態検出手段と、
当該状態検出手段の検出結果に基づいて、簡易初期化処理たる第1の初期化処理か、又はこの第1の初期化処理よりも長時間を要する第2の初期化処理を実行する制御手段と
を備えたことを特徴とする記録装置。
【請求項16】
前回の電源遮断時における当該装置の状態が特定の状態でないと前記状態検出手段により検出されたとき、前記制御手段は第1の初期化処理を実行することを特徴とする請求項15に記載の記録装置。
【請求項17】
前回の電源遮断時における当該装置の状態が特定の状態であると前記状態検出手段により検出されたとき、前記制御手段は第2の初期化処理を実行することを特徴とする請求項15又は請求項16に記載の記録装置。
【請求項18】
前記特定の状態は、前記記録ヘッドのノズル面が覆部材により覆われていない状態、被記録媒体が異常位置に存在している状態、当該装置がエラーの状態、前記記録ヘッドのメンテナンス動作中の状態、そして被記録媒体上に画像を記録するための記録剤の交換中の状態、のうち少なくとも一つの状態であることを特徴とする請求項16又は請求項17に記載の記録装置。
【請求項19】
前回の電源遮断時に前記記録ヘッドのノズル面が覆部材により覆われていない状態であったことを前記状態検出手段が検出したとき、前記制御手段は、当該装置が次の記録動作を実行する前に前記記録ヘッドのメンテナンス処理を実行するように制御することを特徴とする請求項18に記載の記録装置。
【請求項20】
今回の電源投入が当該装置に対する最初の電源投入であると前記状態検出手段により検出されたとき、前記制御手段は第2の初期化処理を実行することを特徴とする請求項15〜請求項19の何れかに記載の記録装置。
【請求項21】
第2の初期化処理は、前記キャリッジの移動可能領域内で原点位置の配置されている一端部とは反対側の他端部近傍まで前記移動手段により前記キャリッジを移動させる動作を含むことを特徴とする請求項15〜請求項20の何れかに記載の記録装置。
【請求項22】
前記移動手段が前記キャリッジを前記他端部近傍まで移動させるとき、前記キャリッジが第2の距離よりも長い第3の距離だけ移動したことを前記キャリッジ検出手段が検出した場合、前記制御手段は前記移動手段に前記キャリッジの移動を停止させると共に、前記記録ヘッドのノズル面が覆部材により覆われるまで前記キャリッジを原点位置に向けて移動させることを特徴とする請求項21に記載の記録装置。
【請求項23】
前記移動手段が前記キャリッジを前記他端部近傍まで移動させるとき、前記キャリッジが第2の距離よりも長い第3の距離だけ移動していないのに移動が規制されたことを前記キャリッジ検出手段が検出した場合、前記制御手段は前記移動手段に前記キャリッジの移動を停止させると共に、第2の初期化処理を繰り返すことを特徴とする請求項22又は請求項23に記載の記録装置。
【請求項24】
第2の初期化処理が繰り返されるとき、前記制御手段は、その繰り返し回数に応じて、前記移動手段の前記キャリッジの移動力を増大させることを特徴とする請求項23に記載の記録装置。
【請求項25】
第2の初期化処理が所定回数繰り返されたとき、前記キャリッジの不具合を報知する報知手段を備えたことを特徴とする請求項23又は請求項24に記載の記録装置。
【請求項26】
被記録媒体に対して画像を記録可能な記録ヘッドを搭載したキャリッジと、このキャリッジの移動可能領域内の一端部に設けられている原点位置を基準として前記キャリッジを主走査方向に往復移動させる移動手段と、前記キャリッジの移動距離や移動/停止状態を検出可能なキャリッジ検出手段と、前記キャリッジの原点位置を検出する原点検出手段と、前記キャリッジの移動可能領域内であって原点位置から所定の距離に配置され、前記キャリッジに対して当接することで前記キャリッジの移動を規制する当接位置と、前記キャリッジから離間することで前記キャリッジの移動を許容する離間位置との間でに変位可能な規制手段と、を備えた記録装置に電源が投入されたときに、前記キャリッジの原点位置検出処理を含む初期化処理を実行する方法であって、
前記移動手段に前記キャリッジを原点位置に向けて移動させる工程と、
前記原点検出手段に原点位置を検出させる工程と、
前記移動手段に前記キャリッジを原点位置から前記規制手段の方向に移動させる工程と、
前記キャリッジの移動が規制されたか否か、且つ前記キャリッジの移動距離が第1の距離から前記キャリッジの幅分を引いた第2の距離か否か、を判断する工程と、
当該判断に基づいて、簡易初期化処理たる第1の初期化処理か、又はこの第1の初期化処理よりも時間のかかる第2の初期化処理を実行する工程と
からなることを特徴とする記録装置の初期化処理実行方法。
【請求項27】
被記録媒体に対して画像を記録可能な記録ヘッドを搭載したキャリッジと、このキャリッジの移動可能領域内の一端部に設けられている原点位置を基準として前記キャリッジを主走査方向に往復移動させる移動手段と、前記キャリッジの移動距離や移動/停止状態を検出可能なキャリッジ検出手段と、前記キャリッジの原点位置を検出する原点検出手段と、前記キャリッジの移動可能領域内であって原点位置から所定の距離に配置され、前記キャリッジに対して当接することで前記キャリッジの移動を規制する当接位置と、前記キャリッジから離間することで前記キャリッジの移動を許容する離間位置との間でに変位可能な規制手段と、を備えた記録装置に電源が投入されたときに、前記キャリッジの原点位置検出処理を含む初期化処理を実行する方法であって、
当該装置に電源が投入されたとき、前回の電源遮断時における当該装置の状態を検出する工程と、
当該工程の検出結果に基づいて、簡易初期化処理たる第1の初期化処理か、又はこの第1の初期化処理よりも時間のかかる第2の初期化処理を実行する工程と
からなることを特徴とする記録装置の初期化処理実行方法。
【請求項28】
被記録媒体に対して画像を記録可能な記録ヘッドを搭載したキャリッジと、このキャリッジの移動可能領域内の一端側に設けられている原点位置を基準として前記キャリッジを主走査方向に往復移動させる移動手段と、キャリッジの移動距離や移動/停止状態を検出可能なキャリッジ検出手段と、前記キャリッジの原点位置を検出する原点検出手段と、を備え、電源が投入されたときに前記キャリッジの原点位置検出処理を含む初期化処理を実行する記録装置であって、
前記一端側に配置され、前記記録ヘッドのメンテナンスを実行するとともに、待機時には記録ヘッドを覆部材で覆うメンテナンス手段と、
電源投入時に、前記移動手段が前記キャリッジを原点位置方向へと移動させるとともに前記原点検出手段が原点位置を検出した後、前記移動手段が前記キャリッジを原点位置方向とは逆の方向に移動させたときのキャリッジの状態に基づいて、簡易初期化処理たる第1の初期化処理か、又はこの第1の初期化処理よりも長時間を要する第2の初期化処理を実行する制御手段と
を備えたことを特徴とする記録装置。
【請求項29】
被記録媒体に対して画像を記録可能な記録ヘッドを搭載したキャリッジと、このキャリッジの移動可能領域内の一端部に設けられている原点位置を基準として前記キャリッジを主走査方向に往復移動させる移動手段と、前記キャリッジの移動距離や移動/停止状態を検出可能なキャリッジ検出手段と、前記キャリッジの原点位置を検出する原点検出手段と、を備えた記録装置に電源が投入されたときに、前記キャリッジの原点位置検出処理を含む初期化処理を実行する方法であって、
前記移動手段に前記キャリッジを原点位置に向けて移動させる工程と、
前記原点検出手段に原点位置を検出させる工程と、
前記移動手段に前記キャリッジを原点位置方向とは逆の方向に移動させる工程と、
前記キャリッジの状態を判断する工程と、
当該判断に基づいて、簡易初期化処理たる第1の初期化処理か、又はこの第1の初期化処理よりも長時間を要する第2の初期化処理を実行する工程と
からなることを特徴とする記録装置の初期化処理実行方法。
【請求項30】
被記録媒体に対して画像を記録可能な記録ヘッドを搭載したキャリッジと、このキャリッジの移動可能領域内の一端側に設けられている原点位置を基準として前記キャリッジを主走査方向に往復移動させる移動手段と、キャリッジの移動距離や移動/停止状態を検出可能なキャリッジ検出手段と、前記キャリッジの原点位置を検出する原点検出手段と、を備え、電源が投入されたときに前記キャリッジの原点位置検出処理を含む初期化処理を実行する記録装置であって、
前記記録ヘッドのメンテナンスを実行するとともに、待機時には記録ヘッドを覆部材で覆うメンテナンス手段が、前記キャリッジの移動可能領域内の前記一端側に配置されていることを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公開番号】特開2006−35650(P2006−35650A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−219076(P2004−219076)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】