説明

試料の伸びの測定で用いられる変位センサ

試料の伸びの測定での使用のための接触式変位センサ:本発明は、引張りによる試料の伸びの機械的な測定での使用のための接触式変位センサに関する。本発明は、更に、接触式変位センサの使用だけでなく、そのような接触式変位センサを用いる試料の伸びの測定のための方法、そのような接触式変位センサを用いる試料の伸びの測定のためのシステムに関する。接触式変位センサは、試料が接触される要素を備えている。本発明によれば、要素は、回転可能に取り付けられており、試料が裂かれることが要素を回転させるように配置されている。裂かれた試料によって回転される要素によれば、小さなエネルギー量だけが接触式変位センサに転送され、接触式変位センサに過負荷が掛かったり破壊されたりしない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引張りによる試料の伸びの機械的な測定で使用される接触式変位センサに関する。本発明は、更に、接触式変位センサの使用だけでなく、そのような接触式変位センサを用いる試料の伸びの測定のための方法、そのような接触式変位センサを用いる試料の伸びの測定のためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
機械的な伸びの測定手順において、非常に厳格に且つ緩みなしに、測定される伸びの方向の変位の伝達を確保するように、接触式変位センサが試料と接触するところで、接触式変位センサが緩みなく且つ非常に容易に移動できるように取り付けられている。試料に及ぶ接触式変位センサの接触力は、できるだけ低くあるべきである。その結果、切り欠き脆性試料の拡張挙動及び破断挙動は、できるだけ影響を受けないであろう。
【0003】
このため、接触式変位センサおよびそれらのセンサシステムの装着は、過負荷に対して敏感である。例えば、試料が引張りの間に裂けて、試料の残りが制御されない方法で反動し、接触式変位センサに衝突するとき、このことが発生するかもしれない。特に、非常に弾性エネルギーに富んだ材料、例えばエストラマーを試験している間、接触式変位センサ及び測定システムの双方に、全体として相当な破損を与えるかもしれない。
【0004】
ドイツ実用新案7804241号から、引張り圧力または圧縮圧力にさらされる試料の伸びの測定用の伸びセンサが知られている。それは、センサの前方端部で測定ナイフ刃を用いて試料に直接接触でき、対応する測定信号の生成のために2つのセンサの対の間で変位の変化を伝搬する、2対の調整して取り付けられるセンサを含んでいる。ここで、測定ナイフ刃は、センサの前方端部に回転可能に取り付けられる切断片に位置しており、切断片の回転軸は、測定される変位の変化の方向に対して概ね垂直を向いている。切断片の測定位置は、互いに向かい合う切断ナイフ刃を有する各センサ対を向いているが、切断片に作用する与えられた回転モーメントの下で切断片の回転軸回りの回転を切断片に許容する力依存の取付具によって画定されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
伸びセンサにとってのそのような設計上の不利は、測定ナイフ刃がそれらの取付具に対して回転でき、そのとき作用する力がセンサ上に転送され、センサを破損しうるということである。破損は、切断片が逆回転できないことにあり、そのため装置を修理し手動で調整する必要がある。
【0006】
自動化された分析実験室において、特に装置が一晩の試運転を依然として有効とするとき、このことは能力の損失をもたらし、試料を翌朝まで試験できない。
【0007】
更に、統合ラチェット機構を有し非常に小さなぎざぎざがつけられた真鍮リールを備えるセンサが知られており、それらの構造的な実施態様によれば、高い力がセンサ上に転送される。それに加えて、ここで、ラチェット機構は非常に複雑であり、環状に並べられた引っ掛かり点及び死点により連続的な伝送特性を有していない。既知の光学の移動センサは機械的損傷の危険を回避するが、必要な試料のマーキングに問題があるので、1000%以上に至るまでの伸び範囲が確実にマッピングされるわけではないという不利を有している。
【0008】
このため、接触式変位センサは、伸びの下で裂けて反動した試料が接触式変位センサ又は測定システムに損害をほとんど又はまったく与えないことが望ましい。試料の伸びを測定する方法であって、エネルギー豊富なエラストマー試料を自動的に且つ少数の中断を挟みながらテストすることができる方法も、望ましいだろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、引張りによる試料の伸びの機械的な測定で使用される接触式変位センサが提供されている。該接触式変位センサは、回転対称要素に接続されるセンサ指状体を備えている。該要素は、回転可能に取り付けられている。該要素の回転軸は、幾何学的回転軸でもある。該要素は、回転軸を囲む外周面を有しており、該外周面に試料が接触される。
【0010】
本発明に係る移動可能に取り付けられた接触式変位センサは、回転対称要素に接続されるセンサ指状体を備えている。回転対称要素は、好ましくは、その幾何学的回転軸を囲む断面の輪郭の完全回転によって形成される。試料が裂けることによる前記要素の回転が、接触式変位センサの位置決めに影響を及ぼさないので、その幾何学的回転軸を囲む回転対称要素を取り付けることによって、各測定手順に先立つ接触式変位センサの調整及び/又は修理のための努力が回避される。
【0011】
それに加えて、回転対称要素は、例えば筒形状又は樽形状要素であり、不適当に固定された試料との間でスリップする可能性を減少させる。接触式変位センサがスリップすることを避けるために、試料に接触する要素の表面は、適当な方法で形成されるか又は適当な材料から作られている。
【0012】
要素の表面又は要素全体の適当な材料は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、及び/又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む群から選択される。要素は、好ましくは10mm以上から50mm以下の直径、より好ましくは15mm以上から40mm以下の直径、もっとも好ましくは20mm以上から30mm以下の直径を、特徴とする。
【0013】
要素の回転対称な形態によれば、接触式変位センサと試料との間の距離は、たとえ試料が裂けた後に要素が回転したとしても、いかなる所定時間においても同一のままである。本発明の良い影響は、特に、接触式変位センサの軸から試料までの距離が一定の大きさ且つ不変であることによって、達成されている。
【0014】
このため、試料と接触式変位センサ又はセンサシステムとの直接の接触は、避けられている。
【0015】
要素の回転対称形状によれば、試料が裂けるときに試料が要素を巻き込まないことや、それゆえに破壊のエネルギーが反動する試料から接触式変位センサ又はセンサシステムに転送されないことが、達成される。
【0016】
要素の静止摩擦は、反動する試料によって乗り越えられ、要素は振動無しに回転し始める。その結果として、接触式変位センサに向けられるエネルギーの大部分は、回転エネルギーに変換され、接触式変位センサ及びセンサシステムは損傷から保護される。試料に面する断面の輪郭が不変のままなので、その形状により、その測定位置における要素の再設定及び調整は不必要である。このため、要素の回転軸と試料との間の距離は、不変のままである。効果的には、接触式変位センサは、要素の回転軸が試料の引張り方向に対して垂直となるように取り付けられている。
【0017】
要素の回転軸は、例えば、センサ指状体の中心軸と一致するか、センサ指状体の中心軸と平行であるか、又はセンサ指状体の中心軸に対してある角度で傾斜している。
【0018】
接触式変位センサの特有の構造により、接触式変位センサは、例えば、1000%又はそれ以上の非常に高い伸びを有し、及び/又は拡張中に高エネルギーを蓄える、試料の測定に適している。更に、本発明に係る接触式変位センサは、各測定作業に先立って新たに調整する必要がないので、接触式変位センサは、特に自動的な試料試験での使用に適している。自動処理は、接触式変位センサ又はセンサシステムに対する損傷の危険性の減少が測定システムのより長い耐久性を導くという点で、更に支持されている。
【0019】
接触式変位センサの一実施形態では、要素は、筒形体に形成されており、筒状体の外周面は凸状に曲げられている。このことは、要素が試料に接触する外周面が、球状又は凸状となるやり方で外側に曲がっていることを意味する。球状又は凸状の実施形態によれば、要素と試料との間は線接触ではなくほとんど点接触である。このことは、特に大きな伸びのための試験の測定値の精度を増大させる。更に、要素の外周面は、そのとき、端を含んでおらず、その結果、試料に切り込みが入ることや誤った試験の測定値が避けられる。
【0020】
接触式変位センサの更なる実施形態において、要素はベアリングによってセンサ指状体に接続されている。ベアリングによれば、要素は、回転可能だけでなく自転可能に取り付けられており、その結果、要素はその幾何学的回転軸の周りを回転でき、裂かれて反動する試料は要素に巻き付くことがない。要素のベアリングは、好ましくは、正確な試験の測定値を確保するために、緩みなく設計される。例として、適当な材料から作られる、円錐ベアリング又はニードルベアリングが、ベアリングとして用いられる。更に、転動体なしのベアリングを用いることができ、例えば、入れ子の形態で又は要素自体の一体構成として、適当で滑らかな材料、例えばPTEEで作られる。しかし、ベアリングは、ボールベアリングとして設計されることが好ましい。
【0021】
接触式変位センサの更なる実施形態において、要素の回転抵抗は、摩擦クラッチによって調整可能である。調整可能な回転抵抗のため、接触式変位センサの立ち上がりは、試料の伸びによる連続動作の間に確保される。例えば引き裂かれる瞬間に振動が発生しても、筒状体の静止摩擦が乗り越えられ、要素は急に動くことなしに回転し始める。このように、要素および接触式変位センサに向けられたエネルギーの大部分は、回転エネルギーに変換される。このため、測定システムだけでなく接触式変位センサが損害から保護される。
【0022】
ここで、摩擦クラッチは調整可能なバネ(スリップリング)システムとして設計されることが好ましい。このことは、要素の回転抵抗は、要素側でセンサ指状体の中心軸上に配置される調整ネジを介して手動で予め張力を掛けられた圧縮バネによって調整できることと、同様に圧縮バネは要素に対して圧縮リングを押し且つそれゆえに回転抵抗を生み出すことと、を意味する。要素は、回転の両方向において等しく回転可能である。例えばラチェットにおいて必要な、結合要素の複合体は、必要ではない。
【0023】
接触式変位センサの更なる実施形態において、要素の回転軸は、センサ指状体の中心軸から離れて配置されている。その結果として、センサ指状体は、特に高度に弾性且つ高度に拡張可能な材料を用いており、試料から更に離れて配置されている。その結果、測定システムだけでなくセンサ指状体の破損の危険が更に減少している。
【0024】
本発明の更なる観点は、伸張方向における引張りによって試料の伸びの測定のための方法である。少なくとも1つの本発明に係る接触式変位センサが回転対称要素の外周面で試料に接触している。接触式変位センサは、要素の回転軸が試料の伸張方向に対して垂直となるように配置されている。
【0025】
本発明に係る方法は、このため、試料の伸びの測定に関する。伸びは、試料が拡張する場合に追跡を維持するように作られた接触式変位センサで試料に接触することによって測定される。接触式変位センサの追跡は、伸びの距離が計算される測定値を与える。
【0026】
試料の伸張方向は、伸びの終点において試料が裂けるときに、試料の2つの残りが反動する方向でもある。伸張方向に対して垂直な要素の回転軸により、試料の残りの直線運動は、試料の残りが接触式変位センサの要素に衝突するとき、要素の回転に変換される。その結果として、既に上述したように、損傷が避けられる。
【0027】
少なくとも1対の本発明に係る接触式変位センサの方法の実施形態において、1対の接触式変位センサは互いに向かい合っており、1対の接触式変位センサは各回転対称要素の外周面で試料に接触している。更に、接触式変位センサは、各要素の回転軸が試料の伸張方向に対して垂直となるように配置されている。1対の向かい合うように配置された接触式変位センサにおいて、1対の接触式変位センサは、試料の向かい合う両側に配置される。
【0028】
更に、本発明の1つの観点は、引張りによる試料の伸びの測定のためのシステムであり、該システムは、本発明に係る接触式変位センサを備えている。このようなシステムは、例えば、試料の伸びの測定のための市販の装置でもよい。市販の装置において、例えば測定ナイフ刃の形で設計されている接触式変位センサは、本発明に係る接触式変位センサによって置換されている。効果的には、このシステムにおける接触式変位センサは、要素の回転軸が試料の伸張方向に対して垂直となるように、配置されている。
【0029】
システムの実施形態において、少なくとも1対の本発明に係る接触式変位センサは、互いに向かい合うように配置されており、各回転対称要素の外周面で試料に接触するように構成されている。更に、接触式変位センサは、各要素の回転軸が試料の伸張方向に対して垂直となるように配置されている。1対の向かい合うように配置された接触式変位センサにおいて、1対の触式変位センサは、試料の向かい合う両側に配置される。
【0030】
本発明の更なる観点は、引張りによる試料の伸びの測定のための、本発明に係る接触式変位センサの利用でもある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る接触式変位センサの概略図である。
【図2】試料の伸びの測定のための接触式変位センサの配置の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、今、添付図面に準拠する好ましい実施形態に基づいて、より詳細に記述される。
【0033】
図1は、本発明に係る接触式変位センサの概略図を示している。接触式変位センサ10は、センサ指状体12を備えている。試料に面しているセンサ指状体12の端部に、試料16にその外周面24で接触する要素14が取り付けられている。要素10の幾何学的回転軸20は、センサ指状体12の中心軸34上に設けられている回転軸18に一致している。
【0034】
要素14は、要素14が回転軸14の周りを回転できるように、ボールベアリング26によって取り付けられている。要素14の回転抵抗は、バネ(スリップリング)システムによって調整できる。調整ネジ28を通じて、圧縮バネ30は予め張力を加えられている。圧縮バネ30は、圧縮リング32の上にバネ力を及ぼしている。圧縮バネ30は、要素14に対して押されている。
【0035】
図2は、試料の伸びの測定のための接触式変位センサの配置の概略斜視図を示しており、接触式変位センサのこの配置は、本発明の方法において採用されている。示される接触式変位センサ10は、それぞれ、2つの測定位置で試料16のどちらかの側に1対で配置されている。その結果として、接触式変位センサ10の樽状体14は、それぞれ球状に形成された外周面24で試料に接触している。外周面24の球状の形成により、ほとんど点接触が達成されている。
【0036】
要素14の回転軸はセンサ指状体12の中心軸34及び要素14の回転軸に一致しており、その結果として、球状面24が形成されている。本発明によれば、要素14の回転軸は、伸張方向22に対して垂直である。回転によって画定される外周面24が試料に接触するので、接触式変位センサの空間配置が画定される。
【0037】
伸張方向22における試料16の引張りの間、伸びが発生する。この間、接触式変位センサ10が追跡を行い、伸びの技術的な測定記録を可能とする。その結果、試料16は、裂けるまで引き伸ばされる。試料16が2つの残りに裂かれた後、2つの残りが、接触式変位センサ10の本体14を通過して、元の長さに戻るように反動する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転対称要素(14)に接続されるセンサ指状体(12)を備えている、引張りによる試料(16)の伸びの機械的な測定での使用のための接触式変位センサにおいて、
前記要素(14)は、回転可能に取り付けられており、
前記要素(14)の回転軸(18)は、前記要素(14)の幾何学的回転軸(20)でもあり、
前記要素(14)は、該回転軸(20)を囲む外周面(24)を備えており、該外周面(24)に前記試料(16)が接触される、
ことを特徴とする、接触式変位センサ。
【請求項2】
前記要素(14)は、筒形状に形成されており、該筒形状の外周面(24)は凸状に曲げられている、請求項1に記載の接触式変位センサ。
【請求項3】
前記要素(14)は、ベアリングによって前記センサ指状体(12)に接続されている、請求項1に記載の接触式変位センサ。
【請求項4】
前記ベアリングは、ボールベアリング(26)として設計されている、請求項3に記載の接触式変位センサ。
【請求項5】
前記要素(14)の回転抵抗は、摩擦クラッチによって調整可能である、請求項1に記載の接触式変位センサ。
【請求項6】
前記摩擦クラッチは、調整可能なバネ(スリップリング)システムとして設計されている、請求項5に記載の接触式変位センサ。
【請求項7】
前記要素(14)の前記回転軸(18)は、前記センサ指状体(12)の中心軸(34)から離れて配置されている、請求項1に記載の接触式変位センサ。
【請求項8】
伸張方向(22)に引張ることによる試料(16)の伸びの測定のための方法において、
少なくとも1つの請求項1に記載の接触式変位センサ(10)は、前記回転対称要素(14)の外周面(24)で前記試料(16)に接触しており、
前記接触式変位センサ(10)は、前記要素(14)の前記回転軸(18)が前記試料(16)の前記伸張方向(22)に対して垂直となるように、配置されている、
ことを特徴とする、方法。
【請求項9】
少なくとも1対の請求項1に記載の接触式変位センサは、互いに向かい合って配置され、前記各回転対称要素(14)の前記外周面(24)で前記試料(16)に接触しており、
前記接触式変位センサ(10)は、前記各要素(14)の前記回転軸(18)が前記試料(16)の前記伸張方向(22)に対して垂直となるように、配置されている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
引張りによる試料(16)の伸びの測定のためのシステムであって、
請求項1に記載の接触式変位センサ(10)を備えている、システム。
【請求項11】
少なくとも1対の請求項1に記載の接触式変位センサは、互いに向かい合って配置され、前記各回転対称要素(14)の前記外周面(24)で前記試料(16)に接触するように構成されており、
前記接触式変位センサ(10)は、前記各要素(14)の前記回転軸(18)が前記試料(16)の前記伸張方向(22)に対して垂直となるように、配置されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
引張りによる試料(16)の伸びを測定するための、請求項1に記載の接触式変位センサ(10)の利用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−524529(P2011−524529A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513938(P2011−513938)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【国際出願番号】PCT/EP2009/004302
【国際公開番号】WO2009/153013
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】