説明

試料をミリングしながら像を生成する方法

【課題】 本発明は、既知の方法の欠点である、ミリングによって曝露された面では像が生成されないこと、及び如何なるエンドポイント指定もウエハ表面から生成される像に基づかなければならないことを解決することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、FIB鏡筒のみが用いられている装置によって、この問題に対する代替解決策を提供する。
薄片を最終的な厚さ-たとえば30nm-にまでミリングするため、集束イオンビーム100は前記薄片に沿って繰り返し走査される。前記薄片をミリングしている際、前記薄片から信号が得られ、該信号はエンドポイント指定にとって十分であることが分かった。検査用のさらなる電子ビームは必要ない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面を有する試料のミリング及び画像化を行う方法に関する。当該方法は、
前記試料を排気可能な環境中に設ける手順、
前記表面に集束粒子ビームを案内する手順、
前記表面全体にわたって前記ビームを所定のパターンに従って走査して前記試料の複数の地点を照射することによって前記試料をミリングする手順、
前記試料に衝突する前記粒子ビームに応じて前記試料から放出される放射線を検出する検出器からの信号を取得する手順、及び、
前記信号から得られるデータをコンピュータメモリ内に記憶する手順であって、前記データは前記試料の面を表す手順、
を有する。
【0002】
本発明はさらに、本発明に係る方法を実行するソフトウエアに関する。
【0003】
係る方法は特許文献1から既知である。
【背景技術】
【0004】
たとえば半導体産業では、たとえば透過型電子顕微鏡(TEM)での検査用に試料が半導体ウエハから取り出される。そのようなTEMで検査される試料は典型的には、辺々が10μmのオーダーで、かつ厚さが50nm未満-好適には30nm-である長方形の試料である。ただし他のサイズ及び厚さが用いられても良い。そのような試料は、ウエハをミリングすることによってそのウエハから取り出されて良い。そのようなミリングによって、さらなる処理及び/又は検査のためにそのウエハから取り出された薄い層が残される。本明細書においてはミリングとはスパッタリング及びエッチングをも含むことに留意して欲しい。試料をミリングしながらガス注入システム(GIS)によって適切な流体のジェットをウエハへ案内することによってこの流体層がウエハ表面に吸着し、その結果ミリング速度は通常増大される。ウエハ又は吸着した流体がイオンビームによって照射されるとき、その流体のミリングすなわちエッチングが増進される。
【0005】
薄片としても知られている、ウエハから解放された薄い層は通常、TEMで観察されるには厚すぎる。よってさらなる処理は典型的には、試料を最終的な厚さにまで薄くする手順を有する。最終的な厚さとは典型的には50nm未満であって、通常は20-40nmの範囲である。
【0006】
特許文献1は、どのようにして半導体ウエハである試料から薄片が解放されるのかについて記載している。ウエハはFIBに導入されて、複数の基準マークがウエハ表面に生成される。基準のマークのうちの一組は粗い位置決め用であり、もう一組の基準のマークは細かい位置決め用である。さらに保護層が、薄片が意図しないイオンビームへの曝露から保護されるように形成される地点に局所的に加えられる。相対的に高いビーム電流を有するイオンビームをウエハ表面へ案内することによって、2つの溝が、薄い膜によって分離された状態でウエハ内に形成される。イオンビームに対する溝の位置は、ミリング中、粗い基準マークの位置を測定することによって繰り返しチェックされる。このようにして、イオンビームに対する試料のドリフトが排除される。溝が十分深いときには、膜は薄くされて良い。膜を薄くするのは、イオンビームを低ビーム電流に調節し、かつ細かい基準マークに対するイオンビームの位置を測定することによって実現される。続いて膜は、その膜の表面全体にわたって、その表面にほぼ平行なビームを走査することによって局所的に薄くされる。その結果、所謂膜の「研磨」が実現される。
【0007】
当業者には知られているように、FIBによるウエハの画像化は、前記ウエハへ集束ビームを案内する手順、及び前記ウエハの表面全体にわたって前記ビームを所定のパターン-たとえばラスタパターン-で走査する手順を有する。イオンビームの衝突に応じて、たとえば電子及び2字イオンのような放射線がウエハから放出される。画像化中にビームが表面をミリングするということは意図しない副作用である。なぜなら画像化は基準マークに損傷を与えることなく行われることが好ましいからである。
【0008】
像を生成するためには、1回の走査で十分であるが、信号対雑音比を改善させるために繰り返し走査が用いられても良い。
【0009】
特許文献1は、ミリングされるウエハの部分に対して正確にビームの位置を設定するように基準マークの位置を設定するためのウエハ表面の画像化について記載している。
【0010】
特許文献1はさらに、膜すなわち薄片を最終的な薄さにすることについて記載している。この最終的な薄さにすることは通常、清浄切断(clean up cut)又は断面の清浄化と呼ばれる。この最終的な厚さにする際には、イオンビームは、関心部位へ向かって1回で1ライン走査される。この切断パターンによって、ビームは、1組のライン切断をシリアルモードで実行することで、曝露表面へのライン切断を徐々に行い、その曝露表面を清浄にする。材料を取り除く多数のライン切断が溝底部に到達するとき、そのラインは他の溝の方向に進み、かつ新たな層が薄片からミリングされる。
【0011】
既知の方法の欠点は、ミリングによって曝露された面では像が生成されないこと、及び如何なるエンドポイント指定もウエハ表面から生成される像に基づかなければならないことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2008/051937号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明はこのことに対する解決法を供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的のため、本発明は以下のような特徴を有する。その特徴とは、ビームは試料面に対して実質的に平行な状態で前記試料に衝突し、照射された複数の地点は繰り返し走査される単一の曲線を形成し、各走査中材料は前記表面から様々な距離でミリングされ、かつ、コンピュータメモリが前記試料全体にわたる前記曲線の多数走査のデータを記憶し、その結果、前記面は前記粒子ビームの方向によって定義される一の方向及び前記曲線に沿って定義される他の方向を向く、ことである。
【0015】
本発明は、単一のライン又は曲線を繰り返しミリングする際に発生する放射線を検出することによって、各ラインが、より表面から離れたライン又は曲線に一致するという知見に基づいている。従って水平面に対して垂直に衝突するビームについては、(衝突ビームの方向に平行な)垂直面が画像化される。これは、水平面にビームが垂直に衝突する結果、(表面に平行な)水平面が画像化される従来技術に係る画像化とは対照的である。
【0016】
曲線によって試料を走査する結果一連のライン切断となることは前述のように既知である。しかしこれは、ミリングされる面をミリングしながら行うFIB画像化とは決して併用されない。その代わりFIB画像化は、基準マークが設けられている表面を画像化するのに用いられる。
【0017】
ミリングされた面の画像化は、イオンビームを用いてミリングし、かつそのイオンビームに対して角度をなしていて、試料の地点にてそのイオンビームと交差する電子ビームによって画像化する装置から既知であることにさらに留意して欲しい。これらの装置は産業界では広く受け入れられているが、FIB鏡筒しか有していない装置よりも明らかに高価である。
【0018】
像の品質は従来技術による表面像の品質よりも劣ることには触れておく必要がある。これは、溝の深い部分からの放射線は、表面(付近)で生成される放射線とは同一の効率で検出されないという事実によるものである。その像のさらなる問題点は、薄片全体にわたってビームを走査する際、そのビームがその薄片に対して斜めに衝突することによって引き起こされる。その結果、既に清浄な(研磨、ミリングされた)薄片の一部がビームによってわずかに照射されることで、検出される2次放射線を発生させる。換言すると、表面から離された薄片の一部をミリング及び画像化するとき、表面とミリングされるラインとの間の面の一部が画像化される地点に寄与し、ミリングされたラインと、そのミリングされたラインと表面との間の面の一部との間である種のクロストークが生じる。
【0019】
本発明の方法の実施例では、粒子ビームは表面に対して実質的に垂直に衝突する。
【0020】
通常、試料表面に対して垂直に薄片は掘られる。これは、イオンビームが表面に対して垂直であることを要求する。
【0021】
本発明の方法の他の実施例では、データは像を生成するのに用いられる。
【0022】
ミリングされた面の図を表すデータは、ディスプレイ又は他の画像化装置-たとえばプリンタ-上に像を生成するのに用いられて良い。
【0023】
本発明の方法のさらに他の実施例では、曲線はライン部分である。その結果面は長方形の面となる。
【0024】
ここで長方形の面はラインを繰り返し走査することによって画像化される。
【0025】
長方形の面はまた、互い違いの方向に-つまり曲がりくねらせて-ライン部分を走査することによって、生成されても良い。
【0026】
本発明の方法のさらに他の実施例では、曲線は環である。その結果面は曲面となる。
【0027】
本発明の方法のさらに他の実施例では、環は円である。その結果面は円筒面となる。
【0028】
本発明の方法の他の実施例では、検出された放射線は、試料から放出される荷電粒子を有する。
【0029】
2次電子は通常、荷電粒子を検出するように備えられたたとえばEverhart-Thornley型検出器又はフォトダイオードによって検出される。しかし2次電子及び/又は2次イオンを検出する他の種類の検出器も当業者に知られている。
【0030】
本発明の方法のさらに他の実施例では、集束粒子ビームは集束荷電粒子ビームである。
【0031】
荷電粒子-たとえば電子又はイオン-の集束ビームは、静電場又は磁場によって集束され、かつ電気又は磁気偏向器によって走査されて良い。そのようなビーム源は周知である。そのような集束及び走査ビームを供給する鏡筒は既に利用可能である。
【0032】
本発明の方法のさらに他の実施例では、ミリングは、ガス支援ミリング又はガス支援エッチングを有する。
【0033】
当業者に知られているように、FIB装置では、試料は通常1mbar未満-典型的には10-3mbar以下の圧力の試料チャンバ内に設けられている。エッチャント流体-たとえばXeF2(二フッ化キセノン)-のジェットを試料へ導くことによって、流体層が試料へ吸着して、ビームのミリングを促進する。このようにして、それ自体ではミリングを行わない電子ビームでさえも、試料のエッチングに用いることができる。
【0034】
本発明の方法のさらに他の実施例では、コンピュータメモリ内に記憶されたデータは、エンドポイント指定を決定する他のデータと比較される。
【0035】
記憶されたデータが比較される他のデータは、他の薄片を観察しながら収集されて良い。比較は自動的に-つまりコンピュータによってたとえば像認識手法を用いて-行われて良い。あるいは比較はオペレータによって、データから生成された像と他の像又はCADモデルとを比較することによって行われても良い。
【0036】
本発明の方法のさらなる実施例では、他のデータとはCADモデルを用いて生成されたデータである。
【0037】
本発明の方法の他の実施例では、曲線は多数の滞留地点で構成され、粒子ビームは所定の滞留期間中に各滞留地点へ案内され、その後粒子ビームは次の滞留地点へ案内される。
【0038】
ビームが一定の速度で曲線に沿って進行する必要はない。地点から地点へのジャンプは、今日利用可能なスキャンジェネレータ及び像メモリと共に大抵の場合利用される代替手法である。
【0039】
本発明の方法のさらなる実施例では、各滞留期間中一のデータ点がコンピュータメモリ内に記憶される。
【0040】
本発明の方法の他の実施例では、各滞留期間は多数の副滞留期間に分割され、各副滞留期間中にコンピュータメモリ内に一のデータ点が記憶され、各データ点は表面からの様々な距離に相当する。
【0041】
ビームが曲線のうちの一点へ案内されるとき、そのビームは材料に穴を開け、表面からさらにさらに遠ざかるようにして材料を徐々にミリングして除去する。そのような一の滞留期間中に得られる情報は複数の副滞留期間で分割されて良い。各周期の信号は様々なメモリ位置に記憶される。各後続の位置は表面からさらに遠ざかる位置を表す。
【0042】
本発明の方法のさらに他の実施例では、曲線上の一点へビームを案内する前に、隣接する地点がミリングされ、その隣接する地点が設けられるのは、ビームがその一点へ案内されるときに、そのビームが、試料表面とその試料のミリングされる部分との間の面の部分と衝突しない位置である。
【0043】
最初に既にミリングされた面に近い地点をミリングし、続いて既にミリングされた面からわずかにビームを遠ざけることによって、ミリングされた面全体にわたって斜めに入射するビームは(ほとんど)、既にミリングされた面の部分からの2次放射線を発生させない。既にミリングされた面の部分とはつまり、ビームが試料をミリングする位置と試料表面との間の面の部分である。ビームは、面をミリングしながらその面に対して平行であるので、ある地点をミリングする際の信号は常に、実際のミリングが行われている地点と表面との間のミリングされた面の信号を一部含むことに留意して欲しい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】2つの溝がミリングされたウエハ表面を概略的に図示している。
【図2】局所的に薄くされた薄片を概略的に図示している。
【図3】図2に図示された線AA’に沿った断面を概略的に図示している。
【図4】従来技術に係る電子ビームによって得られた像と、本発明によって生成された像との概略的な比較を表している。
【図5】本発明による方法を実行するように備えられた装置を概略的に図示している。
【発明を実施するための形態】
【0045】
ここで図を参照しながら本発明について説明する。図中、同一の参照番号は対応する素子を表す。
【0046】
図1は2つの溝がミリングされたウエハ表面を概略的に図示している。
【0047】
図1は、ウエハ表面101で表される試料表面に対して実質的に垂直に衝突するイオンビーム100で表される粒子ビームを図示している。表面では、2組の基準マーク-1組の高精度基準マーク102aと1組の粗い基準マーク102b-がミリングされる。たとえばタングステン又はプラチナの保護層103が表面上に堆積される。2つの溝104がミリングされて、2つの溝間に薄い層すなわち薄片105が残される。
【0048】
イオンビーム-たとえばイオン鏡筒によって生成されるガリウムイオンビーム-はたとえば50keVのエネルギーのイオンを有する。他の種類のイオン及び他のエネルギーのイオンが用いられても良い。イオンビームは、たとえば1nm〜10nmの直径の焦点に集束される。ビームが表面に衝突する場所で、材料はスパッタリングされる。このようにして、表面全体にわたってたとえば長方形のパターンでビームを走査することによって、表面内に2つの溝がミリングされて良い。通常、表面全体にわたってビームを走査するプロセスは複数回繰り返される。溝は、各ビーム通過後に、より深い層を露出する。
【0049】
溝を掘る前に、2組の基準マークが表面内にミリングされる。2組の基準マークとは、1組の粗い基準マーク102bと1組の細かい基準マーク102aである。これらの基準マークは、ミリングするときの試料に対するビームの位置の設定、及びたとえばドリフトのような効果の除去に用いられる。試料と粒子ビームの相対位置を決めるため、基準マークを含む表面像が生成される。ここで像中の基準マークの位置を決定することによって、その基準マークに対する像の位置(視野)が決定される。試料がビームに対してドリフトするとき、その基準マークも同様に像中でドリフトする。ここでたとえば視野の中心を変更することによって、ドリフトの効果は除去される。視野の再設定は、たとえば予想されるドリフトの大きさに基づいて、基本原理に従って行われて良い。
【0050】
保護層が、ウエハ表面上であって薄い層すなわち薄片の一部となる場所に堆積される。イオンビームを用いて層を堆積することそれ自体は既知であり、イオンビーム誘起堆積(IBID)法として知られている。試料上に金属層を堆積するため、試料を真空状態に設けたままで、先駆体流体-たとえば有機金属ガス-のジェットが、ガス注入システム(GIS)によってその試料へ向かうように導かれる。先駆体ガスの層は試料表面に吸着する。吸着した層を有する試料をイオンビームに曝露する結果、先駆体分子が分解して、金属成分が表面と結合する。より揮発性の高い有機金属分子の残りは表面から脱離して、当該装置の真空システムによって排気される。堆積に用いられるイオンビームもまたミリングを起こすが、イオンビーム電流密度、イオンエネルギー、試料へ向かう流体の量等のパラメータによって、その堆積をミリングよりも速くすることが可能であることに留意して欲しい。
【0051】
この保護層は、ビームの意図しない効果に対して薄片の上部を保護する。たとえばビーム収差により、イオンビームの電流密度プロファイルはガウス曲線に接近し、そのビーム直径はたとえば半値全幅(FWHM)の値に相当することに留意して欲しい。従ってビームの中心から離れた距離でのイオンのスパッタリング及び/又は注入が起こると考えられる。
【0052】
ウエハ表面上に保護層を堆積した後、ビームは表面全体にわたって走査されることで、2つの長方形が照射される。材料はこれらの照射された位置でスパッタリングされ、かつ2つの溝104が形成される。それにより2つの溝の間に薄片が残される。
【0053】
たとえここでのプロセスが平坦な底部を有する2つの溝を生成するものとして記載されているとしても、溝は通常、最も深い部分が薄片に近くてその薄片からさらに離れた位置の溝が浅いという形態を有することに留意して欲しい。
【0054】
図2は局所的に薄くされた薄片を概略的に図示している。
【0055】
図2は、図1に図示された処理手順後の処理工程でのウエハを図示していると考えることも可能である。薄片105は局所的に薄くされることで、薄くなった部分206が残される。このように薄くする-研磨とも呼ばれる-には、ビームが薄片端部に案内され、かつライン部分が繰り返し走査され、その結果として材料の細片が走査毎に取り除かれる。ライン部分を繰り返し走査することによって、最後の細片207が取り除かれるまで、薄い層が取り除かれる。
【0056】
薄片は、基準マーク付近の材料を切除し、かつその薄片の底部をアンダーカットすることによってウエハから取り出されて良いことに留意して欲しい。薄片はたとえば、ウエハから分離する前にマニピュレータへ接合若しくははんだ付けされて良いし、又は、分離後にマニピュレータへはんだ付け、接着、若しくは静電的に接続されても良い。ウエハと底部で接続したままの薄片は、そのウエハから解放されるように切断されても良い。
【0057】
線AA’に沿った断面図が図3に示されている。
【0058】
図3は図2に図示された線AA’に沿った断面を概略的に図示している。図3は保護層103を有する薄片105を図示している。薄片105にはイオンビーム100が照射される。イオンビーム100は、この図面に対して垂直な線に沿って、ウエハ全体にわたって走査される。ビームが材料をミリングする地点300で、そのビームが薄片と衝突する様子が図示されている。ミリングは、2次粒子-たとえば当該装置の検出手段によって検出可能な2次電子301-の放出を引き起こす。ビームは薄片全体にわたって斜め入射するので、一部のイオンも面302の既に研磨された部分に衝突し、かつこの露出面上に位置するウエハ材料の一部は、検出手段によって検出される信号に寄与する。十分な材料の細片が取り除かれ、かつ研磨面302の底部が現れるとき、この面の研磨は終了して良い。たとえビームが集束ビームであるとしても、ミリングに用いられる開口角は通常小さい(典型的には数mrad)ので、ミリングされる長さ(典型的には5-15μm)全体にわたってビーム径は変化しないことに留意して欲しい。
【0059】
図4は従来技術に係る電子ビームによって得られた像と、本発明によって生成された像との概略的な比較を表している。
【0060】
図4Aは所謂デュアルビーム装置で生成される像を図示している。デュアルビーム装置では、ミリングと研磨がイオンビームによって行われ、かつ研磨の進展は、ある角度をなした状態で面105へ案内される電子ビームによって観察される。像は、SEMによって得られた典型的な像品質及び像解像度を表す。
【0061】
図4Bは本発明による方法を用いることによってFIBで生成された像を図示している。図4Bの像の品質は、図4Aで示された電子ビームによって得られたものよりもはるかに悪い。しかし図4Bの像の品質は、エンドポイント指定にとっては十分であることが分かる。
【0062】
図4Bの像で見ることのできる垂直方向での不鮮明さは、前述したように、既に露出された面302の寄与の結果である。
【0063】
図5は本発明による方法を実行するように備えられた装置を概略的に図示している。
【0064】
図5はFIB装置500を図示している。FIB装置500は真空チャンバ502を有し、真空チャンバ502の上にはFIB鏡筒510がマウントされている。FIB鏡筒は、光軸514に沿ったイオンビームを生成するイオン源512を有する。ビームは、レンズ516aと516bによって集束され、かつ偏向器518によって偏向されて良い。よってFIB装置は集束イオンビーム508を生成する。試料504は試料ホルダ506上に設けられている。試料ホルダ506は、FIB鏡筒によって生成される集束イオンビーム508に対する試料の位置設定を行うように備えられている。FIB装置にはさらにガス注入システム(GIS)520が備えられている。GIS520は、流体が試料へ向かうことを可能にするキャピラリ522、及び流体を含む容器524を有する。バルブ526は試料へ向かう流体の量を制御することが可能である。係る流体は、試料上に保護層を堆積するのに用いられて良い。あるいは他の流体を有する他のGISが、ミリングを促進させるのに用いられても良い。FIB装置には、2次放射線を検出する検出器530がさらに備えられる。これはたとえば、2次電子を検出するEverhart-Thornley型検出器、又はフォトダイオードのような半導体デバイスであって良い。2次イオンを被検出電子に変換する検出器を含む他の検出器も知られている。検出器の信号は制御装置532へ供される。この制御装置には、この信号から得られるデータを記憶するコンピュータメモリが備えられている。制御装置はまたFIB装置の他の部品をも制御する。他の部品とはたとえば、レンズ516、偏向器518、試料ホルダ506、GIS520の流路、及びチャンバ502を排気する真空ポンプ(図示されていない)である。従って制御装置は、試料上でのイオンビームの位置設定を行うように備えられている。制御装置はモニタ534上に記憶されたデータの像を生成することができる。
【0065】
たとえ本発明がFIB装置を用いた図5で説明されているとしても、本発明はたとえば、電子ビームを用いた装置又はイオンビームと電子ビームの両方を用いた装置と併用されても良いことに留意して欲しい。本発明は、他の種類の検出器、GIS、レンズ、偏向器、粒子源等を用いた装置と併用されても良い。
【符号の説明】
【0066】
100 イオンビーム
101 ウエハ表面
102a 高精度(細かい)基準マーク
102b 粗い基準マーク
103 保護層
104 溝
105 薄片
206 薄くなった部分
207 最後の細片
300 ビームの衝突位置
301 2次電子
302 既に研磨された部分
303 研磨面
500 FIB装置
502 真空チャンバ
504 試料
506 試料ホルダ
508 集束イオンビーム
510 FIB鏡筒
512 イオン源
514 光軸
516a レンズ
516b レンズ
518 偏向器
520 ガス注入システム(GIS)
522 キャピラリ
524 容器
526 バルブ
530 検出器
532 制御装置
534 モニタ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を有する試料のミリング及び画像化を行う方法であって、
当該方法は、
前記試料を排気可能な環境中に設ける手順、
前記表面に集束粒子ビームを案内する手順、
前記表面全体にわたって前記ビームを所定のパターンに従って走査して前記試料の複数の地点を照射することによって前記試料をミリングする手順、
前記試料に衝突する前記粒子ビームに応じて前記試料から放出される放射線を検出する検出器からの信号を取得する手順、及び、
前記信号から得られるデータをコンピュータメモリ内に記憶する手順、
を有し、
前記データは前記試料の面を表し、
前記ビームは試料面に対して実質的に平行な状態で前記試料に衝突し、
前記の照射された複数の地点は繰り返し走査される単一の曲線を形成し、
各走査中、前記表面から様々な距離で材料がミリングされ、かつ、
コンピュータメモリが前記試料全体にわたる前記曲線の多数走査のデータを記憶し、
その結果、前記面は前記粒子ビームの方向によって定義される一の方向と、前記曲線に沿って定義される他の方向を向く、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記粒子ビームが前記表面に対して実質的に垂直に衝突する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記データは像を生成するのに用いられる、上記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記曲線がライン部分であり、その結果前記面は長方形の面となる、上記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記曲線が環であり、その結果前記面は曲面となる、請求項1乃至3に記載の方法。
【請求項6】
前記環は円であり、その結果前記面は円筒面となる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記の検出された放射線は前記試料から放出される荷電粒子を有する、上記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記集束粒子ビームは集束荷電粒子ビームである、上記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記ミリングする手順はガス支援ミリング又はガス支援エッチングを有する、上記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記のコンピュータメモリ内に記憶されたデータは、エンドポイント指定を決定する他のデータと比較される、上記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記他のデータはCADモデルを用いて生成されたデータである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記曲線は多数の滞留地点で構成され、
前記粒子ビームは所定の滞留期間中に各滞留地点へ案内され、
その後前記粒子ビームは次の滞留地点へ案内される、
上記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
各滞留期間中、前記コンピュータメモリ内には一のデータ点が記憶される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
各滞留期間は多数の副滞留期間に分割され、
各副滞留期間中、前記コンピュータメモリ内には一のデータ点が記憶され、
各データ点は前記表面からの様々な距離に相当する、
請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記曲線上の一点へビームを案内する前に隣接する地点がミリングされ、
前記ビームがその一点へ案内されるときに、前記ビームが、前記の試料表面と試料のミリングされる部分との間の面の一部と衝突しないように、前記隣接する地点が設けられる、
上記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
粒子光学装置をプログラム制御するソフトウエアであって、
前記粒子光学装置は、試料全体にわたって微細集束粒子ビームを走査し、かつ前記微細集束粒子ビームの衝突に応じて前記試料から放出される2次放射線を検出する検出器からの信号から得られるデータを記憶するように備えられ、
前記粒子光学装置には、該粒子光学装置を制御するプログラム可能な制御装置が備えられ、
当該ソフトウエアは、上記請求項のいずれかに記載の方法を実行する前記プログラム可能な制御装置をプログラム制御するコードを有する、
ソフトウエア。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−230672(P2010−230672A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69564(P2010−69564)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(501233536)エフ イー アイ カンパニ (87)
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
【住所又は居所原語表記】7451 NW Evergreen Parkway, Hillsboro, OR 97124−5830 USA
【Fターム(参考)】