説明

試料前処理用デバイス,反応槽シート及び試料分析方法

【課題】気泡の形成を回避して,微小な疎水性の反応槽内部に試料溶液を導入し,前処理する。
【解決手段】試料前処理用デバイスは,平面基板201上に構築された,微小かつ疎水性の反応槽203を有し,反応槽の両端側に,反応槽内に試料を流入するための流入口204と,試料流入時に反応槽内部の空気を逃がすための流出口204を有し,流入口と流出口との間に少なくとも一箇所,反応槽幅が全体幅の80%以下になっている部位を有している。反応槽は,平面基板に吸着しやすく,下面に反応槽となる窪みが加工されたシート202を吸平面基板の上に,吸着させることによって形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,平面基板上に微小な反応槽を形成してそこで微量な試料の反応を行うための試料前処理用デバイス,その試料前処理用デバイスを構成する反応槽シート,及びその試料前処理用デバイスを用いた試料分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のゲノミクス,プロテオミクス研究のための大規模解析において,多数の試料を高速に処理/測定する技術への需要が高まっている。例えば基板上に多種類の生体分子を固定化したマイクロアレイ技術や,基板上に固定化した酵素を用いた高速試料前処理技術が注目されている。これらの技術においては,基板上に試料溶液を添加して,基板上の分子と反応させることができる反応槽をあらかじめ基板上に構築する必要がある。試料となる血液等は入手量が数10〜数100μL程度と微量である場合が多いことから,この反応槽の容量も同様に微量でなければならない。しかし反応面には一定以上の面積が必要であることから,反応槽は必然的に厚さ1mm以下の薄い形状である必要がある。反応槽の素材としては,生体試料の付着が起こりにくい疎水性の素材を用いることが望ましい。しかし,このような微小かつ疎水性の反応槽中に,水溶液である試料を導入すると,反応槽内部での試料の送液が均一に行われず,反応槽内部で気泡が形成されやすくなる。基板上に固定化する分子が抗体や酵素等の生体試料である場合,気泡混入によりこれらが空気と接触・乾燥することで機能を失う可能性が高い。また,気泡の混入により反応槽の基板への吸着性が悪くなり,反応中に試料が反応槽から漏れて失われる可能性がある。このような理由から,上記技術において気泡の混入は大きな問題となっている。
【0003】
微量な構造体中への気泡混入を防止する手法としては,例えば特開平6−343694号公報に記載されているように,一つの溶液流を一時的に複数の細い溶液流に分岐させる手法がある。しかし同技術は,試料中に予め含まれていた気泡を送液中に除去することを目的としたものであり,平面基板上に形成された薄い反応槽内部で,その疎水性に起因する気泡の形成を防止することはできない。また同技術の形状では,マイクロアレイのように平面基板上に固定化された分子と溶液との反応を行うことはできない。
【0004】
また,複数の反応槽を細管流路で連結し,遠心力を用いて反応槽から別の反応槽へ溶液を移動させる手法が特開2006−189374号公報で報告されている。この場合,送液の制御や逆流の防止を目的として細管による連結を用いているが,流路中への気泡の混入を防止するものではない。
【0005】
【特許文献1】特開平6−343694号公報
【特許文献2】特開2006−189374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は従来の問題点を解決し,微小かつ疎水性の反応槽内部に試料溶液を導入する際,気泡が形成されることのない試料前処理用デバイス,及びその試料前処理用デバイスを用いた試料分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の試料前処理用デバイスは,平面基板上に構築された,微小かつ疎水性の反応槽を有し,反応槽の両端側に,反応槽内に試料を流入するための流入口と,試料流入時に反応槽内部の空気を逃がすための流出口を有し,流入口と流出口との間に少なくとも一箇所,反応槽幅が全体幅の80%以下になっている部位を有している。反応槽は,平面基板に吸着しやすく,下面に反応槽となる窪みが加工されたシートを吸平面基板の上に,吸着させることによって形成される。
【0008】
この構造によると,試料導入時に試料溶液が反応槽幅の狭い場所に向かって集中して流れる現象により,気泡の形成が防止される。本発明が対象とする反応槽に添加される試料は,典型的には,数10〜数100μL程度の微量な試料である。
【0009】
平面基板としては,ニトロセルロースやPVDF等のメンブレン,ガラス,ウエハー等のシリコン,プラスチック等の樹脂,金属等に,必要に応じて固定に適した修飾を施したものを用いることができる。修飾の種類には,物理吸着によって生体分子を固定化することができるポリ−L−リジンやアミノシラン,共有結合によって対象分子を固定化することができるアルデヒド基やエポキシ基のような官能基,及び対象分子との親和性を利用して固定化することができるアビジンやNi−NTAなどを用いることができる。また,ポリアクリルアミドゲルやアガロースゲルのような,親水性の多孔質マトリックスの薄層から成る固相も利用できる。
【0010】
平面基板の上に載せて反応槽を形成するシートの素材としては,平面基板に吸着可能で,かつ試料に影響を及ぼさない素材を用いる必要がある。例えばポリジメチルシロキサン(Polydimethylsiloxane, PDMS)は,生体試料の付着を起こしにくく,安価で加工しやすいという点で優れた素材である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると,微小かつ疎水性の反応槽内部に試料溶液を導入する際,気泡の形成を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下,本発明の実施の形態を説明する。
図1は,本発明の試料前処理用デバイスを用いた分析手順の説明図である。本実施例では,基板上への疎水性シート吸着による微量反応槽の形成(S11),酵素,抗体等の平面基板上への固定化(S12),反応槽中への試料溶液の添加(S14),基板上に固定化した分子と試料との反応(S14),試料溶液の回収及び分析(S15)の順番で作業を進める。ただし本発明は本実施例のみに限定されるものではない。本実施例では試料前処理用デバイスの他,マイクロピペッター,密封容器,気相インキュベーター,洗浄容器を用いる。また必要に応じて,反応槽内の試料を撹拌するための撹拌装置(小型振動モーター)を用いる。
【0013】
図2は,分析のための操作の模式図である。図2(a)に示すように,反応槽シート202は,下面に深さ0.2〜0.5mmの溝203が3mm間隔で6個形成されており,平面基板上に設置することで試料や試薬を平面基板上に保持するための反応槽を形成することができる。また溝203の長辺両端部には試料や試薬を反応槽内に出し入れするための,直径1mmの流入口/流出口204が設けられている。
【0014】
(1) 基板上への反応槽シート吸着による微量反応槽の形成
図2(b)に示すように,平面基板201上に深さ0.2〜0.5mmの溝を有した反応槽シート202を吸着させ,平面基板201と反応槽シート202の間に,試料や試薬を平面基板上に保持するための反応槽203を有する試料前処理用デバイス200を形成する。
【0015】
(2) 酵素,抗体等の平面基板上への固定化
図2(b)に示すように,固定化する試薬をマイクロピペッター205を使用して,試料前処理用デバイス200の平面基板201上に形成された反応槽203内部に流入口204より添加する。次に,図2(c)に示すように,試料前処理用デバイス200を水滴206とともに密封容器207中に設置し,気相インキュベーター208内で保温して平面基板201上への結合反応を行う。密封容器207中に,試料前処理用デバイス200を少量の水滴306と共に密封することにより,容器の内部の湿度を長時間保ち,平面基板上の試料や試薬の蒸発を防ぐことができる。その後,図2(d)に示すように,試料前処理用デバイスから反応槽シート202を取り外した後,試薬が固定化された平面基板201を,洗浄溶液を満たした洗浄容器209中で振盪し,未結合の分子を取り除く。
【0016】
(3) 微量反応槽中への試料溶液の添加
図2(e)に示すように,反応槽シート202を再度平面基板201上に吸着させて試料前処理用デバイス200を組み立て,マイクロピペッター205により血液等の試料溶液を,反応槽中の流入口204から添加する。
【0017】
(4) 基板上に固定化した分子と試料との反応
図2(f)に示すように,試料を反応槽203内に保持した状態で試料前処理用デバイスを水滴206とともに密封容器207中に設置し,気相インキュベーター208内で一定時間インキュベートし,固定化した分子と試料との反応を行う。必要に応じて撹拌装置(小型振動モーター)210を用い,反応槽内部の試料を撹拌する。
【0018】
(5) 試料溶液の回収及び分析
図2(g)に示すように,試料前処理用デバイス200の反応槽203中の試料を,マイクロピペッター205を用いて回収し,分析装置211によって分析する。
【0019】
次に,図3を用いて反応槽の形状と気泡の形成について説明する。反応槽301のように単純な楕円形の構造を持つ反応槽の場合,反応槽の材質が疎水性であるために反応槽中での送液が一定に行われず,特に流入口と流出口から最も離れた中間領域のエッジ付近(図中に斜線で表示した領域)への送液がされにくくなることから,同部位に気泡が形成されやすくなる。一方,反応槽302のように,流入口と流出口との間に少なくとも一箇所,反応槽の幅が狭くなっている部位を有する場合,反応槽内部での送液の方向が,反応槽の幅が狭くなっている部分に集中することになるため,前述の気泡の形成を防止することができる。気泡のサイズは0.5 ±0.1mmである。従ってこれが反応槽の両エッジ側に形成された場合,3σのばらつきを考慮すると最大で1.6mmとなる可能性が考えられ,これは反応槽全体幅の約20%になることから,前述の領域の幅は全体幅の80%以下であることが望ましい。
【0020】
この気泡の形成を抑制する原理は,反応槽中での送液方向を制御することによるものであるため,形状としては反応槽302以外にも反応槽303のように,反応槽の左側半分にあたる,流入口近傍領域全体の幅が狭くなっている形状や,反応槽304に示したように,流入口と流出口との間に幅が狭くなっている領域が複数箇所存在する形状でも同等の効果が認められる。なお,図中の矢印は送液方向を示す。
【0021】
反応槽301中にマイクロピペッターを利用して40μLの水溶液を3秒間かけて導入した場合の気泡形成率は18.3%であったのに,反応槽302中に水溶液を導入した場合の気泡形成率は5%であり,反応槽の形状変更が気泡形成防止に有効であることを確認している。
【0022】
図4は,本発明による試料前処理用デバイスを構成する反応槽シートの製造工程を示す模式図である。シリコンウエハ上にフォトレジストを塗布し,フォトリソグラフィーによってパターンを作製した後,PDMS樹脂を添加して目的のパターンを保持した反応槽シートを作製する。注入口および流出口に相当する穴を開けた後,目的のガラス基板に吸着させる。
【0023】
<実験例>
図5を用いて,本発明の試料前処理用デバイスを用いた実験例について説明する。本実験例では,平面基板上にタンパク質分解酵素の一種であるトリプシンを固定化し,PDMSによって作製した反応槽シートを基板上に吸着させ,反応槽内部にタンパク質の一種であるBSAを導入し,導入した試料に振動を与えて反応槽内部で撹拌し,試料が固定化したトリプシンによって消化されたことをHPLCによって確認した。
【0024】
[反応槽シート]
反応槽シートは縦35mm×横85mm×厚さ2mmのPDMS製シートであり,反応槽となる溝が3mm間隔で6個形成されている。溝は直径8mmの円二つが幅3.5mm,長さ3mmの流路によって連結された構造を持ち,深さは0.3mmである。反応槽内部の容量は40μLである。反応槽の両端には内部に試料を注入するための,直径1mmの流入口及び流出口が設けられている。
【0025】
[振動撹拌ユニット]
振動撹拌ユニットは,平面基板と反応槽シートを密着させて構成される試料前処理用デバイスを保持するためのホルダ401,振動モーター405を備えた振動ユニット404から構成される。ホルダは下部ホルダ402と上部ホルダ403から構成される。上部ホルダは枠状の形状で開口部を有し,枠部分で試料前処理用デバイスを保持するとともに,開口部から試料前処理用デバイスに形成された反応槽の流入口にアクセスすることができる。
【0026】
図5に,振動撹拌ユニットの使用方法の概略を示す。始めに,図5(a)に示すように,試料前処理用デバイスを構成する平面基板を下部ホルダ402上に設置した後,反応槽シートを平面基板上に載せる。この際,試料前処理用デバイスは,平面基板と反応槽シートの溝との間に試料を保持する反応槽が形成される。次に,図5(b)に示すように,上部ホルダ403を閉じ,試料前処理用デバイスの平面基板と反応槽シートを密着して固定する。次に,図5(c)に示すように,上部ホルダ403の開口部を介して,マイクロピペッター205を用いて試料を流入口から試料前処理用デバイスの反応槽内に注入し,その後に流入口をシールにより封じる。次に,図5(d)に示すように,振動ユニット404を取り付けて,モーター405を作動させることで試料を撹拌する。反応終了後に,図5(e)に示すように,上部ホルダ403の開口部を介して,マイクロピペッター205を用いて反応槽から試料を回収する。
【0027】
[トリプシンの平面基板への固定化]
本実験では,平面基板としてProteoChip(TypeA,Proteogen)を用いた。ProteoChipは,カリックスクラウン誘導体の一種であるタンパク質結合試薬‘ProLinker’をスライドグラス(縦26mm×横76mm)上にコーティングしたプロテインチップであり,ProLinkerとの相互作用によってタンパク質を表面に固定化することができる。
【0028】
ProteoChip201に反応槽シートを吸着させ,ホルダ402,403によって固定した。トリプシン(T8802,SIGMA)はPBS(pH 7.4)を用いて1mg/mLに調製し,流入口より反応槽内部に注入した。流入口にシールを貼付して塞ぎ,4℃で一晩静置してトリプシンを固定化した。
【0029】
次に,ProteoChip201から反応槽シートを外して洗浄容器209中に入れた後,PBS(pH 7.4)を添加して10分間振盪する洗浄操作を2回繰り返した。次に,10mMTris−HCl(pH 8.0)によってProteoChip201を2回すすいだ後,濾紙によってProteoChip201上に残存した水滴を除去した。
【0030】
[BSAの還元アルキル化]
BSA(A9647,SIGMA)は,変性用バッファー(6M塩酸グアニジン,2.5mMEDTAを含む200mM Tris−HCl,pH 8.5)を用いて1mg/mLに調製した。1mLのタンパク質溶液に対し1μLの還元溶液(60mg/mL DTTを含む滅菌水)を添加し,溶液表面を窒素ガスによって30秒間静かに吹いた後,37℃で3時間静置してタンパク質を変性及び還元処理した。反応後,氷上で5分間冷却して液温を下げ,20μLのアルキル化溶液(50mg/mLヨードアセトアミドを含む変性用バッファー)を添加した。溶液表面を窒素ガスによって30秒間静かに吹いた後,室温・遮光条件下で1時間静置して還元後のシステイン側鎖をアルキル化した。最後に200mLの反応バッファー(Tris−HCl,pH8.5)に対して4℃で2時間の透析を3回繰り返し,溶液中の塩酸グアニジンを取り除いた。
【0031】
[BSAの消化]
トリプシン固定化済み平面基板に反応槽シート202を吸着させ,振動撹拌ユニットのホルダ402,403によって固定した後,反応槽内部に0.2mg/mLに調製した還元アルキル化済みBSAを注入した。振動ユニット404をセットし,37℃で30分間振動を添加することで消化反応を行った。
【0032】
[トリプシン消化物の逆相HPLCによる解析]
回収した消化済みBSAを逆相HPLC解析に供試し,未消化のBSAに相当するピークの減少から消化を確認した。測定条件は以下のとおりである。
カラム:CAPCELLPAK C18 MG(内径2mm×75mm,粒子径3μm,資生堂)
移動相A液:0.1%TFAを含む2%アセトニトリル
移動相B液:0.1%TFAを含む98%アセトニトリル
グラジエント:測定開始後5分間,A液比率100%で送液の後,5〜60分間でA液比率100%から40%(B液比率0%から60%)のリニアグラジエント
流速:0.2mL/分
検出:紫外部(214nm)の吸光度
【0033】
[実験結果]
図3に302として示した形状の反応槽を用いた場合のHPLC解析の結果を図6に示す。未消化BSAに相当するピークの消失(実線,保持時間50分)及び生成したペプチドに相当するピークの出現(破線,保持時間5〜40分)が確認された。図3に303として示した形状の反応槽を用いた場合にも,気泡形成が起こらないため同等の結果が得られる。
【0034】
一方,図3に301として示した形状の反応槽を用いた場合,気泡の混入により反応槽の基板への吸着性が悪くなり,反応中に試料が反応槽から漏れて解析が不可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は,マイクロアレイ実験における反応や,生体分子解析のための,特定分子の濃縮や酵素処理といった前処理に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】分析手順の説明図。
【図2】分析のための操作の模式図。
【図3】反応槽の形状と気泡の形成についての説明図。
【図4】反応槽シートの製造工程図。
【図5】振動撹拌ユニットの使用方法の概略を示す図。
【図6】実験結果を示す図。
【符号の説明】
【0037】
201:平面基板
202:反応槽シート
203:溝(反応槽)
204:流入口/流出口
205:マイクロピペッター
206:水滴
207:密封容器
208:インキュベーター
209:洗浄容器
210:撹拌装置(小型振動モーター)
211:分析装置
402:下部ホルダ
403:上部ホルダ
404:振動ユニット
405:振動モーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高さに比して幅が広く上下面及び側面を壁面で囲まれた複数の扁平な反応槽と,
前記反応槽の上面の一端に設けられた試料注入口と,
前記反応槽の上面の前記試料注入口と反対側の端部に設けられた流出口とを有し,
前記反応槽は,前記試料注入口と前記流出口との間に少なくとも一箇所,幅が最大幅より狭いくびれ部を有することを特徴とする試料前処理用デバイス。
【請求項2】
請求項1記載の試料前処理用デバイスにおいて,前記くびれ部の幅は最大幅の80%以下であることを特徴とする試料前処理用デバイス。
【請求項3】
請求項1記載の試料前処理用デバイスにおいて,反応槽形状が長軸18mm×短軸8mmの楕円において,短軸と楕円輪郭との交差点において,反応槽幅が短軸の長さの80%以下となるくびれを有することを特徴とするデバイス。
【請求項4】
請求項1記載の試料前処理用デバイスにおいて,前記複数の反応槽は,平面基板の上に,下面に前記反応槽の形状をした複数の凹部を有するシートを吸着させて構成されたことを特徴とする試料前処理用デバイス。
【請求項5】
高さに比して幅が広く上下面及び側面を壁面で囲まれた複数の扁平な反応槽と,
前記反応槽の上面の一端に設けられた試料注入口と,
前記反応槽の上面の前記試料注入口と反対側の端部に設けられた流出口とを有し,
前記反応槽は,注入口から流出口に向かって,反応槽幅が勾配的に広がっていくことを特徴とする試料前処理用デバイス。
【請求項6】
平面基板の上に吸着させて,前記平面基板との間に複数の反応槽を形成するのに使用される樹脂製の反応槽シートであって,
下面にそれぞれが前記反応槽となるべき,深さに比して幅が広い複数の独立した窪みを有し,各窪みは上面に貫通する試料注入口と流出口とを有して前記試料注入口と流出口との間に少なくとも一箇所,幅が最大幅より狭いくびれ部を有することを特徴とする反応槽シート。
【請求項7】
請求項6記載の反応槽シートにおいて,前記くびれ部の幅は最大幅の80%以下であることを特徴とする反応槽シート。
【請求項8】
請求項6記載の反応槽シートにおいて,ポリジメチルシロキサンをはじめとするシリコーンゴムからなることを特徴とする反応槽シート。
【請求項9】
請求項6記載の反応槽シートにおいて,流入口から流出口に向かって,反応槽幅が勾配的に広がっていくことを特徴とする反応槽シート。
【請求項10】
下面に深さに比して幅が広い複数の独立した窪みを有し,各窪みは上面に貫通する試料注入口と流出口とを有して前記試料注入口と流出口との間に少なくとも一箇所,幅が最大幅より狭いくびれ部を有する反応槽シートを平面基板上に吸着させ,前記平面基板と前記樹脂製シートの間に複数の反応槽を形成する工程と,
前記試料注入口から各反応槽に固定化試薬を注入する工程と,
前記平面基板から前記反応槽シートを取り外し,前記平面基板を洗浄して当該平面基板に未結合の試薬を除去する工程と,
前記洗浄した平面基板に前記反応槽シートを再度吸着させて複数の反応槽を形成する工程と,
前記複数の反応槽に前記試料注入口から試料を注入し,前記試薬と反応させる工程と,
前記複数の反応槽から内部の試料を回収する工程と,
回収した試料を分析する工程と,
を有することを特徴とする試料分析方法。
【請求項11】
流入口から流出口に向かって,反応槽幅が勾配的に広がっていく反応槽シートを平面基板上に吸着させ,前記平面基板と前記樹脂製シートの間に複数の反応槽を形成する工程と,
前記試料注入口から各反応槽に固定化試薬を注入する工程と,
前記平面基板から前記反応槽シートを取り外し,前記平面基板を洗浄して当該平面基板に未結合の試薬を除去する工程と,
前記洗浄した平面基板に前記反応槽シートを再度吸着させて複数の反応槽を形成する工程と,
前記複数の反応槽に前記試料注入口から試料を注入し,前記試薬と反応させる工程と,
前記複数の反応槽から内部の試料を回収する工程と,
回収した試料を分析する工程と,
を有することを特徴とする試料分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−128247(P2009−128247A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−304905(P2007−304905)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】