説明

調光装置を備えた撮像装置

【課題】 強い反射光による撮像のぼやけを防止する。
【解決手段】 調光装置30を第1の偏光板12と液晶素子20とから構成し、第1の偏光板12を光源1の前方に配置し、液晶素子20を結像レンズ2の前部に配置すると共に、液晶素子20を構成する第2の偏光板22の直線偏光軸x22と光源1の前方に配置した第1の偏光板12の直線偏光軸y12とを直交ニコル配置にする。液晶素子20を構成する液晶セル21はネマティック液晶材料を用い、シャッタ6の開勢中で光源1の点灯中に、液晶セル21の電圧無印加操作と電圧印加操作を行って写真映像を撮る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、写真撮影に用いるフィルム映像用のカメラやCCD受光素子を用いたデジタルカメラなどの写真撮像装置、内視鏡などの撮像装置、また、文字や絵画などの原稿を読み取るスキャナー、複写機などの撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明はカメラ、内視鏡、スキャナー、複写機などの撮像装置に関するものであるが、従来技術を説明するにあたり、カメラを例に取ってその従来技術の詳細を説明する。カメラで写真撮影を行う場合に、薄暗い所や暗所などで写真を撮るとき、或いは、被写体の周りに十分な明るさがない場合などには、通常、カメラの光源であるストロボを焚いて写真を撮る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ストロボを焚いて写真を撮るときに、カメラの間近に強い反射物があると、例えば、雨の水滴や霧の水滴、透明な窓ガラスなどがあると、ストロボの光の一部がその反射物によって反射され、その強い反射光に影響されて被写体がぼやけてしまい、はっきりと写らないと云う問題が起きる。
【0004】
図6は、その一例を示すもので、窓ガラス越しにスポーツ選手をカメラで写真を撮っている状態を示した図である。1はカメラのストロボである光源、2はカメラの結像レンズ、3はスポーツ選手の被写体、4は窓ガラスである。尚、図示はしていないが、レンズ2の後方にシャッターと写真フイルムが配置される。今、窓ガラス4のすぐ近くでカメラの光源1を焚くと、窓ガラス4を透過して被写体3を照明する透過光L1と窓ガラス4に反射されて反射光となってカメラ側に戻ってくる反射光L2が現れる。一方、ストロボの光源1の透過光L1によって照明された被写体3からは反射光(乱反射光)Rが戻ってきて結像のレンズ2を透過し、フィルム面にその像を結ぶ。ここで、窓ガラス4からの反射光L2が被写体3からの反射光Rよりも非常に強い場合には、強い反射光L2が影響を及ぼして被写体3の映像をぼかしてしまうと云う問題が起きる。そして、被写体3の映像がぼやけた写真ができあがる。これと同じ様なことが、雨の降っている時の写真撮影や霧の中での写真撮影の時にも、雨の水滴や霧の水滴の反射光の影響を受けて被写体のぼやけた写真ができあがることが生じる。
【0005】
以上、カメラについての従来技術の問題点を述べたが、複写機やスキャナーなどにおいても、カメラほどその程度は著しくはないにしても同様なことが起きる。例えば、スキャナーについて云えば、ガラス板上に写し取る原稿を載置し、下方よりハロゲンランプなどの光源でもって光を照射して原稿を照明すると共に原稿からの反射光を作り、その反射光をミラー、結像レンズ、CCDなる受光素子などを設けたキャリッジを走査して原稿の画像をミラー、結像レンズを介して受光素子に写し取る構造を取っている。この時に、受光素子に入射する光は原稿からの反射光ばかりではなくガラス板からの反射光も入り込む。このガラス板からの反射光が原稿の映像をぼやかす影響を与え、映像の鮮明さが欠けてくると云う問題を持っている。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みて成されたもので、映像のぼやけを極力小さく押さえる撮像装置を生み出すことを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段として、本発明の撮像装置は調光装置を備える。その調光装置は、第1の偏光板と液晶素子とから構成し、第1の偏光板は光源の前方に配設し、液晶素子は結像レンズの前方に配設する。そして、液晶素子はネマティック液晶材料を用いて、液晶素子に設けてある第2の偏光板の直線偏光軸と光源の前方に配設した第1の偏光板の直線偏光軸とを直交ニコル配置にすることを特徴とするものである。
【0008】
そして、撮像中に液晶素子は電圧無印加操作と、電圧印加操作が行われることを特徴とするものである。また、液晶素子の駆動時間、光源の点灯時間、シャッタの開勢時間などを制御する制御回路を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
発明の効果として、光源の前方に第1の偏光板を配置し、液晶素子は結像レンズの前方に配置し、そして、液晶素子の液晶材料をネマティック液晶材料を用いると共に、液晶素子に設けてある第2の偏光板の直線偏光軸と光源の前方に配置した第1の偏光板の直線偏光軸とを直交ニコル配置にすることにより、液晶素子を透過して結像レンズに入射する光を制限する。例えば、カメラの場合には、液晶素子に電圧を印加していないときは窓ガラスからの反射光は透過せず、被写体からの反射光が透過する。液晶素子に電圧を印加したときは被写体からの反射光と窓ガラスからの反射光が透過する。この液晶素子の電圧無印加時間と印加時間をコントロールすることにより窓ガラスからの反射光の透過を制限し、反射光による被写体の写真映像への影響を小さくする。これにより、窓ガラスからの強い反射光による写真映像のぼやけを防止する。また、窓ガラスからの反射光も適宜に入れることによって人が見た状態に近い状態の写真を写し撮ることができる。そして、液晶素子の駆動時間、光源の点灯時間、シャッタの開勢時間などの制御操作を制御回路で行えば、自動的に操作が行われて綺麗な映像写真が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の最良の実施形態を図1〜図5を用いて説明する。最初に図の説明をする。図1は本発明の第1実施形態に係る調光装置を備えた撮像装置の要部の構成のみを示した構成図で、撮像装置としてはカメラを示している。尚、分かり易くするために調光装置は斜視図で示してある。図2は図1における液晶素子の要部断面図を示していて、図3は図2における液晶素子の光の透過状況を説明する説明図を示している。また、図4は液晶素子における電圧の無印加状態、及び、印加状態の場合の結像レンズに入射する光の説明図を示したもので、図4(a)図は液晶素子に電圧の無印加状態における結像レンズに入射する光の説明図、図4(b)図は液晶素子に電圧の印加状態における結像レンズに入射する光の説明図を示している。図5は第2実施形態に係る調光装置を備えた撮像装置の要部構成のみを示した構成図で、撮像装置はスキャナーを示している。尚、従来技術で説明した撮像装置の構成と同じ構成を取る部品は同一符号を付して説明する。
【0011】
本発明の第1実施形態のカメラからなる撮像装置は従来のカメラに調光装置を備えている。図1に示すように、調光装置30は、ストロボからなる光源1の前方(発光した光を放射する方向の側)に配置した第1の偏光板12と、結像レンズ2の前方に配置した液晶素子20とから構成している。また、液晶素子20は、図1、図2に示すように、液晶セル21に第2の偏光板22を設けたものからなっている。そして、この第2の偏光板22の直線偏光軸x22と前述の第1の偏光板12の直線偏光軸y12とが直交するような配置、即ち、直交ニコルの配置になっている。ここで、第1の偏光板12の直線偏光軸y12は、図1の中において矢印で示した方向と平行な振動面を持つ光の直線偏光成分はこの偏光板を透過することを表している。同様に、第2の偏光板22の直線偏光軸x22は、図1の中において矢印で示した方向と平行な振動面を持つ光の直線偏光成分はこの偏光板を透過することを表している。尚、図1において、光源1の後方にある1bは反射板で、光源1の発光した光が反射板1bで反射されて光源1の前方に集光するような構成になっている。また、結像レンズ2の後方に配置されている6はシャッタ、7はフィルムを示していて、シャッタ6の開閉により写真映像をフィルム上に映し出す構成になっている。また、図示はしていないが、別途にシャッタスイッチ(電源スイッチ)や制御基板などが設けられていて、シャッタスイッチ、制御基板、光源1、液晶素子20、シャッタ6とに電気接続が取られている。そして、シャッタスイッチを押すと光源1、液晶素子20、シャッタ6が連動して駆動するようになっている。
【0012】
次に、液晶素子20は液晶セル21と第2の偏光板22とから構成されるが、液晶セル21は、図2に示すように、ガラスからなる上下の透明基板23a、23bの内面にITO膜からなる上下の透明電極24a、24bと、平行になるようにラビング処理を施した上下の配向膜25a、25bとを積層して設け、一定の間隙の中に液晶26を封止材27を介して封止した構成を取っている。また、図2の中においては、上透明基板23aの外面には偏光板22を貼付けた構成を取っており、この偏光板22が第2の偏光板になっている。この第2の偏光板22を液晶セル21に貼付けた液晶素子20を、結像レンズ2の前方に、光源1の前方に設けた第1の偏光板11と直交ニコルの配置となるように配置している。また、この液晶セル21に用いる液晶は、上下の透明電極24a、24bに所定の電圧を印加すると90°に配向の向きが変わるネマティック液晶材料を用いている。
【0013】
次に、上記液晶素子20を用いた場合の光の透過状況を図3でもって説明する。図3より、液晶素子20は液晶セル21に第2の偏光板22を設けたものからなるが、第2の偏光板22の横方向に示した矢印が直線偏光軸x22を示しており、この直線偏光軸x22と平行な振動面を持つ直線偏光成分の光は透過するようになっている。一般に、入射面に対して垂直方向の振動面を持つ光成分をS成分、入射面に対して水平方向の振動面を持つ光成分をP成分と呼んでいる。図3は液晶素子20に向かって入射する光LをS成分とP成分とで描いてある。ネマティック液晶材料を用いた液晶セル21に光が透過すると、液晶セル21の電圧無印加状態では90°回転して液晶を透過する。今、入射光LのS成分の光が偏光板22の直線偏光軸x22と平行な振動面を持っているとすると、S成分の光は液晶セル21内で90°回転してしまうことから垂直方向の振動面を持つ光成分に偏光する。この垂直方向の振動面を持つ光成分は偏光板22の直線偏光軸x22と平行な振動面を持つ光成分ではないので偏光板22に吸収されてしまう。一方、P成分の光は、液晶セル21を透過すると90°回転して偏光板22の直線偏光軸x22と平行な振動面を持つ光成分に偏光する。従って、P成分の光は偏光板22を透過して進む。
【0014】
次に、液晶セル21に電圧を印加した状態では液晶材料が透明状態になるので、入射光LのP成分の光、及び、S成分の光はそのままの状態で液晶セル21を透過する。しかしながら、P成分の光は偏光板22の直線偏光軸x22に対して垂直方向の振動面を持つ光であるので偏光板22に吸収されてしまう。また、水平方向の振動面を持つS成分の光は偏光板22を透過して進む。以上述べたように、偏光板22の直線偏光軸x22を入射光LのS成分と平行になる方向に配置すると、液晶セル21の電圧無印加状態では入射光LのP成分が液晶素子20を透過し、液晶セル21の電圧印加状態ではS成分が液晶素子20を透過する。
【0015】
今、本発明の調光装置を備えたカメラを用いて、従来例と同様に、窓ガラス越しにスポーツ選手の被写体3を写真撮影した場合にどのようになるかを図4を用いて説明する。図4の(a)図は液晶素子に電圧の無印加状態における結像レンズに入射する光の説明図で、図4の(b)図は液晶素子に電圧の印加状態における結像レンズに入射する光の説明図を示している。尚、図4の(a)、(b)において、ストロボからなる光源1からの出射光で、窓ガラス4を透過してスポーツ選手の被写体3を照明する光Q2と窓ガラス4で反射される光Q1とが描かれている。窓ガラス4から反射される光Q1は偏光した光で、特に、ブルースター角(57°)以上では完全に偏光した反射光になる。窓ガラス4への入射角が57°に至らぬ光は窓ガラス4を透過して直進する。ここで、窓ガラス4から反射される光をQ1、窓ガラス4を透過する光をQ2と符合して表示している。そして、光源1から出射される光Q1で入射面に対して垂直方向の振動面を持つ光成分をS1、入射面に対して水平方向の振動面を持つ光成分をP1と符合して表示し、同様に、光源1から出射される光Q2についても、S2、P2と符合して表示している。また、被写体3からの反射光をB3と符合して表示し、反射光B3で入射面に対して垂直方向の振動面を持つ光成分をS3、入射面に対して水平方向の振動面を持つ光成分をP3と符合して表示している。
【0016】
また、図4の(a)、(b)において、光源1の前方(光源1の光を出射する方向側)に配置した第1の偏光板12は、矢印で示した直線偏光軸y12が光源1の光Q1のP1成分及び光Q2のP2成分と平行になる方向に配置してある。また、結像レンズ2の前方に配置した液晶素子20の第2の偏光板21は、矢印で示した直線偏光軸x22が第1の偏光板12の直線偏光軸y12と直交する配置にしてある。即ち、第2の偏光板22の直線偏光軸x22と第1の偏光板12の直線偏光軸y12とは直交ニコルの配置を取っている。また、第2の偏光板22の直線偏光軸x22は被写体3からの反射光B3のS3成分と平行になる配置になっている。
【0017】
最初に、光源1から出射した光Q1で、P1成分の光は第1の偏光板12の直線偏光軸y12と平行な振動面を持つことから第1の偏光板12を透過して直進する。そして、P1成分の光は間近にある窓ガラス4に当たって反射する。一方、光Q1のS1成分の光は第1の偏光板12に吸収されてしまう。光源1から出射した光Q2で、P2成分の光は第1の偏光板12の直線偏光軸y12と平行な振動面を持つことから第1の偏光板12を透過して直進し、更に、間近にある窓ガラス4を透過して被写体3を明るく照明する。一方、光Q2のS2成分の光は第1の偏光板12に吸収されてしまう。
【0018】
ここで、光源1から出射した光Q1で第1の偏光板11を透過したP1成分の光は窓ガラス4に当たって反射されるが、この反射光はガラス表面で反射されたときに90°偏光した成分の光に変わる。この反射された光を反射光B1と符合すると、反射光B1はP1成分の光が90°偏光された成分の光となっている。従って、この反射光B1は液晶素子20の第2の偏光板22の直線偏光軸x22と水平方向の振動面を持つ成分の光になっている。
【0019】
次に、窓ガラス4からの反射光B1、被写体3からの反射光B3が液晶素子20の液晶セル21の電圧無印加状態、並びに、電圧印加状態でどのようになるかを説明する。図4(a)に示す電圧無印加状態において、窓ガラス4からの反射光B1は液晶セル21を透過するときに90°回転して液晶セル21を透過する。従って、第2の偏光板22の直線偏光軸x22と水平方向の振動面を持つ成分の光の反射光B1は90°回転して第2の偏光板22の直線偏光軸x22に対しては垂直方向の振動面を持つ光の成分に変わる。このため、反射光B1は第2の偏光板22に吸収されてしまう。一方、光源1の窓ガラス4を透過した光によって照明された被写体3からの反射光(これは乱反射光になっているが)B3は液晶セル21を透過するときに90°回転する。即ち、反射光B3のP3成分の光は90°回転して第2の偏光板22の直線偏光軸x22と水平方向の振動面を持つ光成分に偏光する。そして、第2の偏光板22を透過して進む。反射光B3のS3成分の光は液晶セル21を透過するときに90°回転して第2の偏光板22の直線偏光軸x22と垂直方向の振動面を持つ光成分に偏光する。そして、第2の偏光板22に吸収される。従って、液晶セル21の電圧無印加状態にあっては、被写体3のP3成分の反射光のみが液晶素子20を透過して結像レンズ2に入射する。そして、結像レンズ2を通過し、開勢状態にあるシャッタ6をも通過してフィルム7に結像する。電圧無印加状態にあっては被写体3のみの映像がフィルムに映し出される。
【0020】
次に、図4(b)に示す電圧印加状態においては、窓ガラス4からの反射光B1は第2の偏光板22の直線偏光軸x22と水平方向の振動面を持つ成分の光になっていることから液晶セル21、第2の偏光板22を透過して進む。また、被写体3からの反射光B3のP3成分及びS3成分の光は偏光することなく液晶素子20を透過する。しかしながら、P3成分の光は第2の偏光板22の直線偏光軸x22と垂直方向の振動面を持つ成分の光であるので第2の偏光板22に吸収されてしまう。そして、第2の偏光板22の直線偏光軸x22と水平方向の振動面を持つS3成分の光のみが第2の偏光板22を透過する。従って、電圧印加状態にあっては、窓ガラス4からの反射光B1と被写体3からのS成分の光とが液晶素子20を透過して進む。そして、結像レンズ2を通過し、開勢状態にあるシャッタ6をも通過してフィルム7に結像する。
【0021】
以上のことから、窓ガラス4からの反射光B1がフィルム7に入射するのは液晶セル21の電圧印加状態のときだけである。反射光B1が非常に強い反射光で、且つ、長い時間入り込むと被写体3の映像をぼかすなどして影響を及ぼす。そこで、反射光B1が入射する時間を制限する。例えば、シャッタ速度が15m・sec(1/60秒)に設定されている場合に、液晶セル21の電圧無印加時間を10m・sec、電圧印加時間を5m・secと云うように制限する。このように、窓ガラス4からの反射光B1の入射する時間を制限することによって、反射光B1の光の強さが弱められて、反射光B1による影響を非常に小さく押さえて鮮明な被写体3の写真映像を撮ることができる。そしてそこには、窓ガラス4も写し出されて、人が目で見た映像と同じ様な映像が写真に写し出される。
【0022】
本発明の調光装置を備えたカメラにあっては、シャッタ6の開勢中は光源1が点灯していて被写体3を照明する。従って、照明のない暗い映像が入り込むこともなく、絶えず明るく照明された被写体3の写真映像が映し出される。シャッタ6の開勢時間中は光源1が点灯したままであるから、1/数100秒とか1/1000秒とかの高速点灯よりも長時間点灯の光源が必要とされる。近年では、低電流で駆動するLEDが光源として用いられてきている。LEDは光の指向性を有していることから好適なストロボ用光源として用いることができる。
【0023】
本発明の調光装置を備えたカメラは、シャッタスイッチ(電源スイッチ)を半押しすると自動焦点操作が行われ、更に、全押しすると光源が点灯すると共にシャッタが開勢する。そして、シャッタの開勢時間中に液晶素子の電圧無印加操作と電圧印加操作が順次行われる。そして、液晶素子の電圧無印加操作と電圧印加操作が終了すると、シャッタが閉勢し、光源が消灯する。本発明の調光装置を備えたカメラは、シャッタの開勢時間、液晶素子の電圧印加・無印加を含めた駆動時間、光源の点灯時間などを制御する制御回路を持っており、これらの駆動操作は駆動回路に基づいて操作が行われる。撮影者はシャッタスイッチの半押しと全押しの操作を行うのみで、後の駆動操作は駆動回路によって自動的に行われる。
【0024】
以上説明したように、本発明の調光装置を備えたカメラは、すぐ傍に窓ガラスなどの反射物があっても、その反射光による影響を非常に小さく押さえて綺麗な被写体の写真を写し撮ることができる。雨などの水滴や霧などの水滴の反射物であっても同様な結果を得る。
【0025】
次に、本発明の第2実施形態に係る調光装置を備えた撮像装置を図5を用いて説明する。図5は第2実施形態に係る調光装置を備えた撮像装置の要部構成のみを示した構成図で、撮像装置としてはスキャナーを示している。尚、分かり易く説明するために調光装置は斜視図で描いてある。図5において、35は原稿を載置するために設けたガラスなどからなる透明板で、36は透明板35上に載置した読取り用の原稿、37は反射板である。また、31はハロゲンランプなどによる光源、32は結像レンズ、33はCCD受光素子である。また、光源31の前方に配設されている42は第1の偏光板で、結像レンズ32の前方に配設されている50は液晶素子である。この第1の偏光板42と液晶素子50とで本発明の調光装置60を構成している。また、液晶素子50は液晶セル51に第2の偏光板52を貼付けたものからなっている。光源31でもって原稿36を照明し、その照明した原稿36の画像を反射板37で反射させ、その反射画像を結像レンズ32で集光してCCD受光素子33にその反射画像を撮像するようになっている。ここでの調光装置60は結像レンズ32に入ってくる透明板35からの直接反射光を少量にするための働きをなしている。
【0026】
ここでの第1の偏光板42、第2の偏光板52は前述の第1実施形態で用いた偏光板と同じ仕様のものを用いている。また、液晶セル51も前述の第1実施形態で用いた液晶セルと同じ仕様のものを用いている。図5において、第1の偏光板42の直線偏光軸y42と平行な振動面を持つ光の直線偏光成分はこの偏光板42を透過することを表している。また、液晶セル51に設けた第2の偏光板52の直線偏光軸x52と平行な振動面を持つ光の直線偏光成分はこの偏光板52を透過することを表している。そして、第1の偏光板42の直線偏光軸y42と第2の偏光板52の直線偏光軸x52とは直交するような配置、即ち、直交ニコルの配置になっている。
【0027】
このような構成を取る調光装置60を配設することにより、光源31から出射されて光で、第1の偏光板42の直線偏光軸y42と平行な振動面を持つ光の成分は第1の偏光板42を透過して原稿36の画像を照明し、原稿36の画像が反射光B4でもって液晶素子50に入射する。また一方においては、第1の偏光板42を透過した光で、透明板35表面での反射光と透明板35の表面の汚れ、キズなどから反射される反射光、更に、原稿36表面の汚れからの反射光も液晶素子50に入射する。ここで、反射光B5の光が結像レンズ32を介してCCD受光素子33に入ってくると受光素子33上に結ぶ原稿36の画像がぼやけるなどの影響を受ける。そこで、この影響を小さく押さえるために、液晶素子50の第2の偏光板52の直線偏光軸x52を第1の偏光板42の直線偏光軸y42と直交ニコルの配置にし、液晶素子50の液晶セル51に電圧無印加状態と電圧印加状態を作り出して、反射光B5のCCD受光素子33への入射光量を制限する。液晶セル51の電圧無印加状態と電圧印加状態とを繰り返すことによって反射光B5の液晶素子60への透過が制限できる。その理由は前述の第1実施形態で詳しく説明したと同じ理由によるのでここでの説明は省略する。
【0028】
以上述べたように、本発明の調光装置を備えたスキャナーとすることにより、原稿の画像を鮮明に映し出すことができる。第2実施形態はスキャナーを取り上げて説明したが、複写機などもほぼ同じような構成を取っているので複写機についても同じ効果を得ることができる。
【0029】
また、胃カメラなどの内視鏡についても、本発明の調光装置を備えた内視鏡とすることにより鮮明な胃壁の画像を得ることができる。胃壁などは水分が付着しているので、その水分表面からの反射光が胃壁映像に影響を与える。内視鏡のスコープの先端などに本発明の調光装置を配設することにより、水分表面からの反射光の入射を制限して鮮明な胃壁画像を得ることができる。また、本発明の調光装置を光ピックアップ装置に備えると鮮明な映像を映し出すことができる。
【0030】
以上詳細に説明したように、本発明の調光装置を備えた撮像装置は、間近に透明な反射物があってもその反射物の反射光の入光量を制限することができ、鮮明な画像を撮像することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態に係る調光装置を備えた撮像装置の要部の構成を示す構成図である。
【図2】図1における液晶素子の要部断面図である。
【図3】図2における液晶素子の光の透過状況を説明する説明図である。
【図4】液晶素子における電圧の無印加状態、及び、印加状態の場合の結像レンズに入射する光の説明図を示したもので、図4の(a)図は液晶素子に電圧の無印加状態における結像レンズに入射する光の説明図、図4の(b)図は液晶素子に電圧の印加状態における結像レンズに入射する光の説明図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る調光装置を備えた撮像装置の要部構成のみを示した構成図である。
【図6】従来例の一例を示すもので、窓ガラス越しにスポーツ選手をカメラで写真を撮っている状態を説明した説明図である。
【符号の説明】
【0032】
1、31 光源
2、32 結像レンズ
3 被写体
4 窓ガラス
6 シャッタ
7 フィルム
12、42 第1の偏光板
20、50 液晶素子
21、51 液晶セル
22、52 第2の偏光板
23a 上透明基板
23b 下透明基板
24a 上透明電極
24b 下透明電極
25a 上配向膜
25b 下配向膜
26 液晶
27 封止材
y12、y42、x22、x52 直線偏光軸
30、60 調光装置
33 CCD受光素子
35 透明板
36 原稿
37 反射板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の偏光板と液晶素子とからなる調光装置であって、前記第1の偏光板を光源の前方に備え、前記液晶素子を結像レンズの前方に備えると共に、前記液晶素子に設けてある第2の偏光板の直線偏光軸と前記第1の偏光板の直線偏光軸とを直交ニコル配置にしたことを特徴とする調光装置を備えた撮像装置。
【請求項2】
前記液晶素子は、ネマティック液晶材料を用いた液晶素子であることを特徴とする請求項1に記載の調光装置を備えた撮像装置。
【請求項3】
前記液晶素子は、撮像中に電圧無印加操作と電圧印加操作が行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の調光装置を備えた撮像装置。
【請求項4】
前記液晶素子の駆動時間と前記光源の点灯時間とシャッタの開勢時間とを制御する制御回路を有することを特徴とする請求項1に記載の調光装置を備えた撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−154182(P2006−154182A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−343599(P2004−343599)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(000124362)シチズンセイミツ株式会社 (120)
【Fターム(参考)】