説明

調理方法およびそれを用いた調理機器

【課題】従来の調理方法では、調理中に調理物が乾燥し、食材の硬さにムラができ、食べたときに好ましい食感を得ることができなかった。また、所定の温度まで冷却されるのに時間がかかり、調理時間が長いという課題があった。
【解決手段】調理物10を加熱するときの加熱源を、鍋加熱手段13による鍋11の直接加熱と、蒸気発生装置の蒸気加熱手段17による上面からの加熱蒸気を併用することで、鍋11内の調理物10を蒸気により、調理物10の水分を蒸発させることなく調理することができるので、食べたとき、官能的に好ましい最適な食感を実現することができ、冷却手段19を備えることで、冷却時間が短縮化され、調理時間を短くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品を調理するための調理方法および調理機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の食文化の多様化や質の向上にともなって、食品をより美味しく調理する為に様々な方法が提案されている。
【0003】
一般に言われている調理とは、鍋等の容器に、食品等の調理物を収納して、加熱操作を行うことにより、組織の温度を急速に上げ、組織破壊や成分変化を生じさせることである。このように食品を組織破壊により軟らかくするためには、所定の温度以上で所定の時間維持する必要があり、調理操作の過程では、成分変化が生じた調理物内部の破壊された組織から一般に旨味といわれる成分が溶出される。
【0004】
さらに、調味液とともに所定の時間加熱操作を行った調理物を冷却すると、その冷却過程において調味液が食品内部に染み込むことも一般によく知られている。
【0005】
よってこの原理を応用して、加熱操作を行った調理物を、さらに断熱容器内に収納して、冷却過程を経て保温状態で調理を行うようにした保温調理機器もある。
【0006】
上記構成の保温調理機器では、調味液と共に所定の時間、加熱操作により沸騰状態に維持した調理物を、断熱容器内に収納することにより所定の温度まで冷却され、その冷却過程において、調味液を食品内部に染み込ませ、食べる時に再加熱を行うことができるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−146834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら上記従来の機器では、加熱中、調味液に漬からない部分があると、その部分は乾燥しやすく、その後の保温過程で更に乾燥し、食材の硬さにムラがあり、食べたとき、好ましい食感を得ることができなかった。また、断熱容器内に収納するため、所定の温度まで冷却されるのに時間がかかり、調理時間が長いという課題があった。
【0008】
本発明は、上記従来の課題を考慮して、加熱中、調味液に漬からない部分が乾燥しないように、最適な加熱を行うことで、出来上がった調理物を均一の硬さで官能的に好ましい食感に実現することができ、また、最適な冷却を行うことで、調理時間の短縮化を実現することができる調理方法および調理機器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の調理方法は、食品を95℃〜500℃の温度まで加熱する加熱工程と、前記加熱工程に続いて食品を95℃〜500℃の温度で一定時間維持する沸騰維持工程と、前記沸騰維持工程に続いて食品を60℃〜80℃の温度まで冷却する冷却工程と、前記冷却工程に続いて60℃〜80℃の温度で一定時間維持する保温維持工程とを有し、前記加熱工程および前記沸騰維持工程を、上部からの蒸気加熱と、食品を収容した容器を直接熱源で加熱する直接加熱により行い、前記加熱工程および前記沸騰維持工程および前記冷却工程および前記保温維持工程の各工程時間と前記冷却工程の冷却速度を食品の種類によって制御するものである。
【0010】
これによって、最適な加熱工程を実現することができるので、加熱中、調味液に漬からない部分が乾燥せず、出来上がった調理物が均一の硬さになり、官能的に好ましい食感を感じることができ、また、最適な冷却工程を実現することができるので、調理時間の短縮化が可能な調理方法を実現することができる。
【0011】
また、本発明の調理機器は、断熱構造で構成された調理室と、前記調理室内に収納された食品を95℃〜500℃の温度まで加熱する加熱手段と、前記加熱手段によって加熱された前記食品を95℃〜500℃の温度で一定時間維持する沸騰維持手段と、前記沸騰維持手段によって沸騰維持された前記食品を60℃〜80℃の温度まで冷却を行う冷却手段と、前記冷却手段によって冷却された前記食品を60℃〜80℃の温度で一定時間維持する保温維持手段とを有し、前記加熱手段および前記沸騰維持手段を、上部から発生する蒸気発生装置を備えた蒸気発生手段と、食品を収容した容器を直接熱源で加熱する直接加熱装置を備えた加熱手段で加熱し、前記加熱手段および前記沸騰維持手段および前記冷却手段および前記保温維持手段の各作動時間と前記冷却手段の冷却速度を食品の種類によって制御する制御装置を備えたものである。
【0012】
これによって、最適な加熱工程を実現することができるので、加熱中、調味液に漬からない部分が乾燥せず、出来上がった調理物が均一の硬さになり、官能的に好ましい食感を感じることができ、また、最適な冷却工程を実現することができるので、調理時間の短縮化が可能な調理機器を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の調理方法は、最適な加熱工程を実現することができるので、加熱中、調味液に漬からない部分が乾燥せず、出来上がった調理物が均一の硬さになり、官能的に好ましい食感を感じることができる調理方法を実現することができ、美味しい調理物を提供することができる。また、最適な冷却工程を実現することができるので、目的の温度まで短時間で冷却し、調理時間を短縮することができる調理方法を実現することができる。
【0014】
また、本発明の調理機器は、最適な加熱工程を実現することができるので、加熱中、調味液に漬からない部分が乾燥せず、出来上がった調理物が均一の硬さになり、官能的に好ましい食感を感じることができる調理機器を提供することができる。また、最適な冷却工程を実現することができるので、目的の温度まで短時間で冷却し、調理時間を短縮することができる調理機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
請求項1に記載の発明は、食品を95℃〜500℃の温度まで加熱する加熱工程と、前記加熱工程に続いて食品を95℃〜500℃の温度で一定時間維持する沸騰維持工程と、前記沸騰維持工程に続いて食品を60℃〜80℃の温度まで冷却する冷却工程と、前記冷却工程に続いて60℃〜80℃の温度で一定時間維持する保温維持工程とを有し、前記加熱工程および前記沸騰維持工程を、上部からの蒸気加熱と、食品を収容した容器を直接熱源で加熱する直接加熱により行い、前記加熱工程および前記沸騰維持工程および前記冷却工程および前記保温維持工程の各工程時間と前記冷却工程の冷却速度を食品の種類によって制御することにより、調理中、調味液に漬からない部分が乾燥せず、食べたとき、均一な食感を実現でき、また、冷却時間が短縮化されることで、調理時間を短縮することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1の発明に加えて、少なくとも加熱工程および沸騰維持工程に加えて、さらに保温維持工程を上部からの蒸気加熱と、食品を収容した容器を直接熱源で加熱する直接加熱により加熱するものであり、調理中、調味液に漬からない部分がさらに乾燥しにくくなり、食べたとき、より好ましい食感を実現することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明に加えて、少なくとも直接加熱に加えて、さらに容器の周囲の空気層を熱源で温めることによる間接加熱によって加熱するものであり、より均一に食材が加熱される加熱調理を実現することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明に加えて、冷却工程を霧状の水であるミストにより冷却するものであり、より効率良く、調理物を冷却することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の発明に加えて、冷却工程を冷風によって冷却するものであり、より効率良く、調理物を冷却することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の発明に加えて、加熱工程の前に0℃〜10℃の温度で冷却保存する保存工程とをさらに備えたものであり、食品を調理前に保存しておいても食品の鮮度が低下することを防ぐことができる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の発明に加えて、保温維持工程の後に95℃〜500℃の温度に加熱する再加熱工程とをさらに備えたものであり、調理後の食品を温かい状態にすることができる。
【0022】
請求項8に記載の発明は、断熱構造で構成された調理室と、前記調理室内に収納された食品を95℃〜500℃の温度まで加熱する加熱手段と、前記加熱手段によって加熱された前記食品を95℃〜500℃の温度で一定時間維持する沸騰維持手段と、前記沸騰維持手段によって沸騰維持された前記食品を60℃〜80℃の温度まで冷却を行う冷却手段と、前記冷却手段によって冷却された前記食品を60℃〜80℃の温度で一定時間維持する保温維持手段とを有し、前記加熱手段および前記沸騰維持手段を、上部から発生する蒸気発生装置を備えた蒸気発生手段と、食品を収容した容器を直接熱源で加熱する直接加熱装置を備えた加熱手段で加熱し、前記加熱手段および前記沸騰維持手段および前記冷却手段および前記保温維持手段の各作動時間と前記冷却手段の冷却速度を食品の種類によって制御する制御装置を備えたものであり、調理中、調味液に漬からない部分が乾燥せず、食べたとき、均一な食感が感じられ、また、冷却時間が短縮化されることで、調理時間を短縮する調理機器を実現することができる。
【0023】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の発明に加え、少なくとも加熱手段および沸騰維持手段に加え、さらに保温維持手段を直接加熱装置を備えた加熱手段と蒸気発生装置を備えた蒸気発生手段で発生する蒸気により加熱するものであり、調理中、調味液に漬からない部分がさらに乾燥しにくくなり、食べたとき、より好ましい食感が感じられる調理機器を実現することができる。
【0024】
請求項10に記載の発明は、請求項8または9に記載の発明に加え、少なくとも直接加熱手段に加えて、さらに容器の周囲の空気層を熱源で温める外気加熱装置を備えた外気加熱手段によって加熱するものであり、より均一に食材を加熱する調理機器を実現することができる。
【0025】
請求項11に記載の発明は、請求項8から10のいずれか一項に記載の発明に加え、蒸気発生手段は、水タンクを有し、前記水タンクを加熱する加熱手段により加熱するように構成したものであり、安定した量の蒸気を供給する調理機器を実現することができる。
【0026】
請求項12に記載の発明は、請求項8から11のいずれか一項に記載の発明に加え、蒸気発生手段は、加熱調理中の廃熱によって加熱されるように構成したものであり、加熱手段による加熱の消費電力を減少する調理機器を実現することができる。
【0027】
請求項13に記載の発明は、請求項8から12のいずれか一項に記載の発明に加え、冷却手段を冷風発生装置を備えた冷風手段と霧状の水であるミスト発生装置を備えたミスト手段によって冷却するものであり、より効率良く調理物を冷却する調理機器を実現することができる。
【0028】
請求項14に記載の発明は、請求項8から13のいずれか一項に記載の発明に加え、冷却手段を冷風発生装置を備えた冷却手段によって冷却するものであり、より効率良く調理物を冷却する調理機器を実現することができる。
【0029】
請求項15に記載の発明は、請求項8から14のいずれか一項に記載の発明に加えて、加熱手段によって食品を加熱する前に、0℃〜10℃の温度で冷却保存する保存手段とをさらに備えたものであり、食品を調理前に保存しておいても食品の鮮度が低下することを防ぐ調理機器を実現することができる。
【0030】
請求項16に記載の発明は、請求項8から15のいずれか一項に記載の発明に加えて、保温維持手段によって食品を60℃〜80℃の温度で一定時間維持した後に95℃〜500℃の温度に加熱する再加熱手段とをさらに備えたものであり、調理後の食品を温かい状態にする調理機器を実現することができる。
【0031】
請求項17に記載の発明は、請求項8から16のいずれか一項に記載の発明に加え、断熱構造として、ウレタン発泡材で形成されたものであり、さまざまな形状の調理室に応じた断熱構成を容易に形成することができる。
【0032】
請求項18に記載の発明は、請求項8から17のいずれか一項に記載の発明に加え、断熱構造として、真空断熱材で形成されたものであり、調理室の断熱性能を向上させることができる。
【0033】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1における調理機器の構成および作用について、図1を参照にしながら説明する。尚、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0034】
図1は、本発明の実施の形態1における調理機器を示す断面図である。
【0035】
調理機器は、調理する調理物10が収容されている鍋11と、調理物の温度を非接触で検知する赤外線センサー12と、調理する調理物10を収容する鍋11を加熱する鍋加熱手段13が設置されている。また、調理器上面には、蒸気発生手段として水タンク14と、水タンク加熱手段15と、蒸気加熱部16と、蒸気加熱手段17と、蒸気管18が設置されており、蒸気加熱手段17で温められた蒸気が蒸気管18を通って調理室29に放出される。
【0036】
図には示していないが、圧縮機、凝縮器、キャピラリーチューブを有し、冷却手段19により、調理室29を冷却できる構造になっている。冷風発生装置としては、冷却手段19で冷却された冷気を送風機20により冷風を発生させて調理室29内に強制通風される。ダンパーサーモ21は調理室入口に設けて電気的入力で冷気流入量を調整するものであり、モータ22の駆動力によってダンパーサーモ21を開閉するように構成されている。吐出ダクト23は前記送風機からの冷気を調理室29内に導くものであり、また吹き出し口24は調理室29内に冷気を吹き込むものである。また、ミスト発生装置には、水タンク25と、ミスト発生手段26と、ミスト管27を備え、ミスト発生手段26によって発生したミストは、ミスト管27を通って調理室29に放出される。吸い込みダクト28は調理室29内の冷却した冷気を冷却手段19に戻すために備えられている。
【0037】
また、調理室29はウレタン発泡あるいは、真空断熱材で形成された断熱構造を有している。
【0038】
図2は、本発明の実施の形態1における調理機器本体外殻の一部に設けたコントロールパネルを示す図である。コントロールパネル30は、調理する調理物のメニューを選択するメニュー選択キー31、選択したメニューを決定するメニュー決定ボタン32、選択したメニューを表示するメニュー表示パネル33、調理を開始する開始ボタン34、調理が終了したことを知らせる終了ランプ35を備えている。
【0039】
調理物を調理室29内の鍋11に収容し、コントロールパネル30のメニュー選択キー31によりメニューを選択し、開始ボタン34を押すことにより、選択されたメニューの情報に基づいて、赤外線センサー12で検知した調理物の温度を制御することより、調理物に最適な加熱と冷却を組み合わせた調理が行われる。
【0040】
以下、本実施の形態1における調理機器の調理室29にて調理する工程を従来の調理方法と比較しながら説明する。
【0041】
(表1)は、従来の調理方法と実施の形態1で調理した食品に関するデータである。
【0042】
【表1】

【0043】
(表1)において、従来の調理方法で、調味液とともに調理したイワシの煮付けの調理後の染み込み状態、煮崩れ状態、官能評価による軟らかさを示している。
【0044】
(表1)における調味液の染み込み状態の評価は、調理した食品の組織全体に調味液が染み込んでいるときには○、組織全体の1/2以上のときには△、1/2未満のときには×とした。また、調理後の食品の見栄えや食感として重要な項目である煮崩れ状態は、調理した食品の組織全体がほとんど煮崩れていないときには○、煮崩れが組織全体の1/2未満のときは△、1/2以上のときは×とした。
【0045】
軟らかさの官能評価は、調理前の状態を0ポイントとし、1ポイント違うと軟らかさの差は明確に認識される。
【0046】
総合評価は、調理物として染み込み状態、煮崩れ状態、軟らかさから総合的に判断して評価を行い、染み込み状態が○、煮崩れが1/2未満、軟らかさが2ポイント以上のときに○、いずれか一項目でも満足しないときには×とした。
【0047】
(表1)により従来の調理方法では、鍋等に調理物としていわしの煮付けの材料と通常調理と比較して調味液を収容し、加熱操作により沸騰状態にした調理物をそのまま所定の時間維持し、その後断熱容器内に収納したもので、染み込みは良いものの、乾燥している部分があり、形状が悪く、軟らかさは1ポイントと食べることは可能であるが食感に硬い部分と軟らかい部分のムラがあり、総合評価も×であった。
【0048】
(表1)に示したように、従来の調理方法では、沸騰状態にある調理物を所定の時間維持し、その後断熱容器内に収納したことで、所定の温度まで冷却され、その冷却過程において、調味液が食材全体に染み込んだものの、調味液に漬かっていない部分が加熱調理中、蒸発して乾燥したため、形状が悪く、その部分だけ硬くなった。
【0049】
また、従来の調理方法は調理時間が2時間であるのに対し、実施の形態1における調理時間は1時間と短い。実施の形態1における調理機器は、加熱過程で直接加熱と上からの蒸気加熱を併用することで効果的に加熱を行い、また、冷却過程においても、冷風とミストの併用により効果的に冷却を行うことで、調理時間の短縮化を実現することができた。
【0050】
次に、従来の調理方法と同等の重量のいわしの煮付けを例にとって、本実施の形態1における調理機器の調理室29にて調理する工程を説明する。
【0051】
まず、調理物10であるいわしの煮付けの材料を、調理室29内の、鍋11に収容する。さらに、水タンク14、25内に所定量の水を入れ、メニュー選択キー31でいわしの煮付けを選択し、選択したメニューをメニュー決定ボタン32で決定する。その後開始ボタン34を押すことにより、選択されたメニューの情報に基づいて調理が開始され、いわしの煮付けの場合は、調理室29内の加熱手段としての鍋加熱手段13が作動し、鍋11の直接加熱が行われる。同時に、加熱手段15の駆動により、水タンク14内の水が蒸気となり、隣接する蒸気加熱部16へと流入する。そこで一旦留まり、加熱手段17によって加熱蒸気となり、蒸気管18の内部を移動し、調理室29内へ投入され、上面から調理物の加熱を行う。鍋11の加熱が行われることにより鍋11に収容された調理物10の温度が上昇する。また、いわしの煮付けの温度は、赤外線センサー12により、沸騰維持手段としての鍋加熱手段13の入力と、水タンク14内の加熱手段15の入力を制御することによって、所定の値で所定の時間維持される。その後、調理室29内の冷却手段19が作動し、冷却手段19で冷却された冷気が送風機20により調理室29内に強制通風される。同時に、水タンク25内の水はミスト発生手段26によって水状となり、水管27の内部を移動し、調理室29内へ投入される。いわしの煮付けは冷風と水によって冷却され、選択されたメニューの情報に基づいて、赤外線センサー12により保温維持手段としてダンパーサーモ21を制御することによって冷気量が調整され、所定の温度で所定の時間保温維持される。また、保温維持手段としては、ダンパーサーモ21を制御することで冷気量を調整するとともに、温度が下がりすぎた場合には鍋加熱手段13と蒸気発生装置の加熱手段15を組み合わせて温度調節を行う。そして、保温維持が終了し、終了ランプが点灯する。
【0052】
上記のように、加熱源を、鍋加熱手段13による鍋11の直接加熱と、蒸気発生装置による上面からの加熱蒸気を併用することで、鍋11内のいわしの煮付けの調味液に漬かっていない部分も、蒸気により、いわしの水分を蒸発させることなく、食べたとき、好ましい食感を実現することができる。また、目的の温度に均一に維持し、かつ短時間で加熱過程を終了させることができる。
【0053】
また、加熱手段15により、水タンク14の水が蒸気となったものを、更に加熱手段17により加熱蒸気にすることで、安定した温度の加熱蒸気を得ることができ、目的の温度により均一に維持することができる。
【0054】
また、冷却工程においても、冷却手段19による冷風と、ミスト発生手段26によるミスト噴射を併用することで、鍋11内のいわしの煮付けを目的の温度に短時間で冷却させることができ、調理時間を短縮させることができる。
【0055】
なお調理物10を加熱する加熱手段は限定されるものではなく、電気ヒーター、IH、ガス等でよい。また、食品の温度を検知するセンサーは、赤外線センサー12に限定されるものではなく、芯温計等でもよい。さらに、冷却手段も限定されるものではなく、コンプレッサー、ペルチェ式等でよい。
【0056】
また、メニューや食品の重量、種類、大きさによっては、保温維持時間終了後、さらに加熱を行うことによって、調味液の染み込みも良くなり、煮崩れもなく十分軟らかい調理物を得ることが出来る。
【0057】
また、保存ボタンを備えたコントロールパネル30においては、保存ボタンを調理前に押すことにより、調理室29の鍋11内に収容された調理物10は冷却保存され、予め調理物10をセットしておくことができる。また、再加熱ボタンを備えたコントロールパネル30においては、調理が終了した調理物10を、食べる直前に、再加熱ボタンを押すことにより、食べごろ温度にまで加熱維持することができる。さらに、タイマー等の所定の時間を自由に制御できる制御基板を備えた調理機器においては、保存時間、調理開始時間、再加熱時間を設定することができることにより、保存、調理、再加熱を自動で行うことができる。
【0058】
以上述べたところから明らかなように、実施の形態1の調理機器は、調理物としていわしの煮付けを調理するとき、調味液に漬かっていない部分も、上からの蒸気により、いわしの水分を蒸発させることなく、食べたとき、好ましい食感を実現することができ、また、目的の温度に均一に維持し、かつ短時間で調理を終了させることができることを特徴とするものである。
【0059】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2における調理機器を示す断面図である。基本構成は、本実施の形態1の調理機器と同様であるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略し、相違点について説明する。
【0060】
この実施の形態2は、鍋11の蓋36に、蒸気発生装置を設けたものである。鍋11に、蓋36を取り付けたことで、実施の形態1における赤外線センサー12の代わりに、鍋11の底に鍋底センサー37を設けた。
【0061】
上記の構成において調理動作は実施の形態1と同様であるが、鍋底センサー37は、鍋底の温度から調理物10の温度を検知し、実施の形態1の赤外線センサー12と同じ働きをする。
【0062】
蒸気発生装置を蓋36に設けたことで、鍋内のみに蒸気が噴射され、より均一な温度で短時間に加熱過程を終了させることができる。また、調味液に漬かっていない調理物も、より乾燥しにくく、好ましい食感を実現することができる。
【0063】
(実施の形態3)
図4は、本発明の実施の形態3における調理機器を示す断面図である。構成が実施の形態1と同様である部分は、同一符号を付して説明を省略し、相違点について説明する。
【0064】
本体43は、炊飯器と同じ形状で、内鍋41を備え、着脱自在の鍋40を内装している。鍋40を覆う蓋42は、開閉自在に設置されている。冷却手段38は、冷却管39を備え、内鍋41に密着して設置されており、冷却管39が冷却されると、内鍋41や鍋40が冷却され、調理物10が冷やされる。
【0065】
上記の構成において調理動作を説明する。鍋40に調理物10を入れ、そして、鍋40を本体43にセットする。さらに、蓋42に設けられた水タンク14内に所定量の水を入れ、メニュー選択キー31で任意のメニューを選択し、選択したメニューをメニュー決定ボタン32で決定する。その後開始ボタン34を押すことにより、選択されたメニューの情報に基づいて調理が開始され、鍋40内の調理物の加熱手段13が作動し、鍋40の直接加熱が行われる。同時に、加熱手段15の駆動により、水タンク14内の水が蒸気となり、隣接する蒸気加熱部16へと流入する。そこで一旦留まり、加熱手段17によって過熱蒸気となり、蒸気管18の内部を移動し、鍋40内へ投入され、上面から調理物の加熱を行う。鍋40の加熱が行われることにより鍋40に収容された調理物10の温度が上昇する。また、調理物の温度は、鍋底センサー37により、沸騰維持手段としての鍋加熱手段13の入力と、水タンク14内の加熱手段15の入力を制御することによって、所定の値で所定の時間維持される。その後、本体43内に内蔵された冷却手段38が作動し、冷却管39が冷却され、調理物10が冷却される。選択されたメニューの情報に基づいて、鍋底センサー33により保温維持手段として冷却手段38が冷却管33の冷却量を制御することによって冷却量が調整され、所定の温度で所定の時間保温維持される。また、保温維持手段としては、冷却手段38を制御することで冷却量を調整するとともに、温度が下がりすぎた場合には鍋加熱手段13と蒸気発生装置の加熱手段15を組み合わせて温度調節を行う。そして、保温維持が終了し、終了ランプが点灯する。
【0066】
上記のように、加熱源を、鍋加熱手段13による鍋11の直接加熱と、蒸気発生装置による上面からの加熱蒸気を併用することで、鍋40内の調理物10の調味液に漬かっていない部分は、蒸気により、調理物10の水分を蒸発させることなく、食べたとき、好ましい食感を実現することができ、また、目的の温度に均一に維持し、かつ短時間で加熱過程を終了させることができる。
【0067】
また、加熱手段15により、水タンク14の水が蒸気となったものを、更に加熱手段17により加熱蒸気にすることで、安定した温度の加熱蒸気を得ることができ、より均一に目的の温度に維持することができる。
【0068】
冷却工程では、冷却管35を内鍋37に密着させることで、鍋36内の調理物37を目的の温度に効率良く短時間で冷却させ、短時間で調理することができる。
【0069】
なお調理物10を加熱する鍋加熱手段13は限定されるものでなく、電気ヒーター、IH、ガス等でもよい。また、食品の温度を検知するセンサーは、鍋底センサー33に限定されるものではなく、芯温計や赤外線センサー等でもよい。さらに、冷却手段38も限定されるものではなく、コンプレッサー、ペルチェ式等でもよい。
【0070】
また、メニューや食品の重量、種類、大きさによっては、保温維持時間終了後、さらに加熱を行うことによって、調味液の染み込みも良くなり、煮崩れもなく十分軟らかい調理物を得ることが出来る。
【0071】
また、保存ボタンを備えたコントロールパネル30においては、保存ボタンを調理前に押すことにより、鍋40内に収容された調理物10は冷却保存され、予め調理物10をセットしておくことができる。また、再加熱ボタンを備えたコントロールパネル30においては、調理が終了した調理物10を、食べる直前に、再加熱ボタンを押すことにより、食べごろ温度にまで加熱維持することができる。さらに、タイマー等の所定の時間を自由に制御できる制御基板を備えた調理機器においては、保存時間、調理開始時間、再加熱時間を設定することができることにより、保存、調理、再加熱を自動で行うことができる。
【0072】
以上述べたところから明らかなように、実施の形態3の調理機器は、調理物を調理するとき、調味液に漬かっていない部分も、蒸気により、調理物の水分を蒸発させることなく、食べたとき、好ましい食感を実現でき、また、目的の温度に均一に維持し、かつ短時間で調理を終了させることができることを特徴とするものである。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上のように、本発明にかかる調理機器は、食品を調理するとき、調味液に漬かっていない部分も、蒸気により、調理物の水分を蒸発させることなく、食べたとき、好ましい食感を実現することができ、また、目的の温度に均一に維持し、かつ短時間で調理をすることができるので、食品以外の有機物や無機物の加熱や冷却の制御を実現する用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施の形態1における調理機器を示す断面図
【図2】本発明の実施の形態1におけるコントロールパネルを示す図
【図3】本発明の実施の形態2における調理機器を示す断面図
【図4】本発明の実施の形態3における調理機器を示す断面図
【符号の説明】
【0075】
10 調理物
11,40 鍋
12 赤外線センサー
13 鍋加熱手段
14,25 水タンク
15 水タンク加熱手段
16 蒸気加熱部
17 蒸気加熱手段
18 蒸気管
19,38 冷却手段
20 送風機
21 ダンパーサーモ
22 モータ
23 吐出ダクト
24 吹き出し口
26 ミスト発生手段
27 ミスト管
28 吸い込みダクト
29 調理室
30 コントロールパネル
31 メニュー選択キー
32 メニュー決定ボタン
33 メニュー表示パネル
34 開始ボタン
35 終了ランプ
36,42 蓋
37 鍋底センサー
39 冷却管
41 内鍋
43 本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を95℃〜500℃の温度まで加熱する加熱工程と、前記加熱工程に続いて食品を95℃〜500℃の温度で一定時間維持する沸騰維持工程と、前記沸騰維持工程に続いて食品を60℃〜80℃の温度まで冷却する冷却工程と、前記冷却工程に続いて60℃〜80℃の温度で一定時間維持する保温維持工程とを有し、前記加熱工程および前記沸騰維持工程を、上部空間からの蒸気加熱と食品を収容した容器を直接熱源で加熱する直接加熱とを組み合わせて加熱することにより行い、前記加熱工程および前記沸騰維持工程および前記冷却工程および前記保温維持工程の各工程時間を食品の種類によって制御する調理方法。
【請求項2】
少なくとも加熱工程および沸騰維持工程に加えて、さらに保温維持工程を上部空間からの蒸気加熱と、食品を収容した容器を直接熱源で加熱する直接加熱とを組み合わせて加熱することにより加熱する請求項1に記載の調理方法。
【請求項3】
少なくとも直接加熱に加えて、さらに容器の周囲の空気層を熱源で温めることによる間接加熱によって加熱する請求項1または2に記載の調理方法。
【請求項4】
冷却工程を霧状の水であるミストにより冷却する請求項1から3のいずれか一項に記載の調理方法。
【請求項5】
冷却工程を冷風によって冷却する請求項1から4のいずれか一項に記載の調理方法。
【請求項6】
加熱工程の前に0℃〜10℃の温度で冷却保存する保存工程とをさらに備えた請求項1から5のいずれか一項に記載の調理方法。
【請求項7】
保温維持工程の後に95℃〜500℃の温度に加熱する再加熱工程とをさらに備えた請求項1から6のいずれか一項に記載の調理方法。
【請求項8】
断熱構造で構成された調理室と、前記調理室内に収納された食品を95℃〜500℃の温度まで加熱する加熱手段と、前記加熱手段によって加熱された前記食品を95℃〜500℃の温度で一定時間維持する沸騰維持手段と、前記沸騰維持手段によって沸騰維持された前記食品を60℃〜80℃の温度まで冷却を行う冷却手段と、前記冷却手段によって冷却された前記食品を60℃〜80℃の温度で一定時間維持する保温維持手段とを有し、前記加熱手段および前記沸騰維持手段は、上部から発生する蒸気発生装置を備えた蒸気発生手段と食品を収容した容器を直接熱源で加熱する直接加熱装置とを組み合わせたものであり、前記加熱手段および前記沸騰維持手段および前記冷却手段および前記保温維持手段の各作動時間を食品の種類によって制御する制御装置を備えた調理機器。
【請求項9】
少なくとも加熱手段および沸騰維持手段に加え、さらに保温維持手段を上部から発生する蒸気発生装置を備えた蒸気発生手段と、食品を収容した容器を直接熱源で加熱する直接加熱装置を備えた加熱手段で加熱する請求項8に記載の調理機器。
【請求項10】
少なくとも直接加熱手段に加えて、さらに容器の周囲の空気層を熱源で温める外気加熱装置を備えた外気加熱手段によって加熱する請求項8または9に記載の調理機器。
【請求項11】
蒸気発生手段は、水タンクを有し、前記水タンクを加熱する加熱手段により加熱するように構成した請求項8から10のいずれか一項に記載の調理機器。
【請求項12】
蒸気発生手段は、加熱調理中の廃熱によって加熱されるように構成した請求項8から11のいずれか一項に記載の調理機器。
【請求項13】
冷却手段として霧状の水であるミストを発生するミスト発生装置を備えた請求項8から12に記載の調理機器。
【請求項14】
冷却手段として低温の風を流す冷風発生装置を備えた請求項8から13に記載の調理機器。
【請求項15】
加熱手段によって食品を加熱する前に、0℃〜10℃の温度で冷却保存する保存手段とをさらに備えた請求項8から14のいずれか一項に記載の調理機器。
【請求項16】
保温維持手段によって食品を60℃〜80℃の温度で一定時間維持した後に95℃〜500℃の温度に加熱する再加熱手段とをさらに備えた請求項8から15のいずれか一項に記載の調理機器。
【請求項17】
前記断熱構造として、ウレタン発泡材で形成されたことを特徴とする請求項8から16のいずれか一項に記載の調理機器。
【請求項18】
前記断熱構造として、真空断熱材で形成されたことを特徴とする請求項8から17のいずれか一項に記載の調理機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−325507(P2006−325507A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−155281(P2005−155281)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】