説明

警報装置および警報システム

【課題】複数の警報装置を連携させて広範囲なエリアまで警報を伝えることができるとともに、警報発生情報を受信した警報装置で、警報の発生箇所を容易に認識することのできる警報装置および警報システムを提供する。
【解決手段】警報を要する事態又は該事態の通知操作を感知する感知手段と、現在位置を検出する位置検出手段と、電波を送受信して他の警報装置と通信を行う通信手段と、表示出力を行う表示手段19と、装置の動作制御を行う制御手段とを備えた警報装置1A,1Bである。そして、前記感知手段による感知動作があった場合に、現在位置の情報を含む警報伝送情報を他の警報装置1Bへ送信させ、この警報伝送情報を受信した場合には、自己1Bの現在位置の情報と、警報を発した装置1Aの現在位置の情報との差分を演算して、この差分を表わす情報を表示手段19に表示出力させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、警報を要する事態が発生した場合にこれを伝える警報装置および警報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばレバーを引き抜くことで大音量の警報音を発生させたり、GPS(全地球測位システム)により位置情報を測位して親機やセキュリティ会社などに通報を行う携帯型の警報装置がある。
【0003】
また、従来、上記のような携帯型の警報装置を複数個で連携させることで、様々な機能を付加するようにした技術の開発もなされている。例えば、特許文献1には、1個の防犯ブザー装置の警報音が鳴った場合に、周辺に点在する他の防犯ブザー装置がこれを検知し且つ警報音を発することで、遠方の人々まで警報音を届かせることを可能としたシステムが開示されている。
【特許文献1】特開2007−207212号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
警報時に警報音を出力するだけの警報装置は、警報音の届く範囲でしか人に報知することができず、近くに人がいないような場所では効果が半減する。また、遠くで警報音が鳴っているのが聞こえた場合でも、どこで鳴っているのか分かり難いという課題もある。また、セキュリティ会社など特定の連絡先にしか通報しないような警報装置では、人が駆けつけるまでにある程度の時間が掛かり、緊急時に早急な対応ができないという課題がある。
【0005】
また、複数の警報装置を連携させて、同様の警報装置を所持している者に、警報信号を無線により転送することで、広範囲なエリアまで警報を伝えることができると考えられた。しかしながら、この場合でも、単に警報発生の情報を伝送するだけでは、どこで警報が発生したのか分かり難いという課題があった。
【0006】
この発明の目的は、複数の警報装置を連携させて広範囲なエリアまで警報を伝えることができるとともに、警報発生情報を受信した警報装置で、警報の発生箇所を容易に認識することのできる警報装置および警報システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
警報を要する事態および警報を要する事態を通知する操作の少なくとも一方を感知する感知手段と、
現在位置を検出する位置検出手段と、
無線により他の警報装置と送受信を行う通信手段と、
表示出力を行う表示手段と、
前記感知手段による感知動作があった場合に、
警報発生の情報および前記位置検出手段により検出された現在位置の情報を含む警報伝送情報を、前記通信手段により他の警報装置へ送信させ、
前記通信手段により他の警報装置が発した前記警報伝送情報を受信した場合に、
前記位置検出手段により検出した自己の現在位置の情報と、受信した警報伝送情報に含まれる他の警報装置の現在位置の情報との差分を演算して、この差分を表わす情報を前記表示手段により表示出力させる制御手段と、を有することを特徴としている。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の警報装置において、
前記制御手段は、
前記通信手段により他の警報装置が発した前記警報伝送情報を受信した場合に、
前記差分を表わす情報として、前記他の警報装置を指し示す方向、および当該他の警報装置までの距離の情報を演算し、当該演算された差分を表わす情報を前記表示手段により表示出力させることを特徴としている。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の警報装置において、
前記制御手段は、
前記通信手段により前記警報伝送情報を受信した場合に、
前記通信手段によって当該警報伝送情報を別の警報装置へ転送させることを特徴としている。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の警報装置において、
さらに所持者の識別情報が設定可能な記憶手段を備え、
前記警報伝送情報には、前記所持者の識別情報が含まれることを特徴としている。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れか1項に記載の警報装置を複数備えて構成される警報システムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に従うと、1個の警報装置で警報が発せられた場合に、この警報装置から近隣に在る他の警報装置へ警報伝送情報が無線伝送されたり、さらに、この警報伝送情報が別の警報装置へと転送されていくことで、広範囲なエリアまで警報を伝えることができる。さらに、警報伝送情報を受信した警報装置には警報発生箇所までの距離と方向とが表示出力されるので、これにより警報発生箇所を容易に認識して、速やかな対処が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1には、本発明の実施形態の防犯ブザーの内部構成を示すブロック図を、図2は、この防犯ブザーにおいて異常を感知する構造を背面側ケースを外して表わした内部構造図を示す。図2(a)は引抜きレバーが刺さったときの状態図、(b)は引抜きレバーが引き抜かれたときの状態図である。図3には、異常発生時における防犯ブザーの動作を説明する図を示す。
【0015】
この実施の形態の防犯ブザー1は、引抜きレバー31を引き抜くことで異常状態を感知し、警報音の出力と、無線による警報伝送情報の送信とを行って、周囲に警報を要する異常事態の発生を報知するものである。この防犯ブザー1は、同種の構成を有した他の防犯ブザー1aとアンテナAN1を介した無線伝送によりデータ通信を行う送受信部10と変復調部11、引抜きレバー31が引き抜かれたことを検知する例えば接点スイッチからなる検出部12、警報音を発したり情報受信の通知音を出力したりするブザー13、CPU(中央演算処理装置)や不揮発性メモリを内蔵し装置の全体的な制御を行う制御部14、アンテナAN2を介してGPS衛星信号を受信するGPS受信部15、GPS衛星信号から現在位置の緯度・経度などを求める緯度・経度演算部16、該演算部16やCPUに作業用のメモリ空間を提供するとともに緯度・経度演算部16と制御部14との間でデータのやり取りを行うメモリ17、制御部14からのコマンドに応じて表示データを出力する描画処理部18、表示出力を行う表示部19等を備えている。
【0016】
制御部14に内蔵される不揮発性メモリには、各種の制御プログラムや制御データが格納されている。制御プログラムとしては、送受信部10を介したデータ通信によりユーザの識別情報を登録する処理プログラムや、2つの緯度経度の情報からその差分(方向や距離)を演算する処理プログラムや、異常発生時にブザー出力を行ったり表示部19に所定の表示を行ったりする処理プログラムが格納されている。
【0017】
図2(a),(b)に示すように、装置本体20のケーシング20Aの内部には回路基板21が固定され、この回路基板21に図1の回路構成が配設されている。この回路基板21上には、その他、動作電圧を供給する電池25なども配設されている。
【0018】
また、装置本体20の中段より下側の部分には引抜きレバー31の鉤部分が挿入される挿入穴22が設けられている。この挿入穴22に対して引抜きレバー31が挿抜されることで、検出部12の接点レバー12aに引抜きレバー31の先端が当接/離間してこれらが検出されるようになっている。
【0019】
表示部19は、例えば液晶パネルなどであり、図3に示すように装置本体20の前面部に表示面が露出された状態に設けられている。表示部19上には文字表示等が可能になっている。
【0020】
次に、この実施形態の防犯ブザー1の動作について説明する。
【0021】
図4には、複数の防犯ブザーが連携して動作する際の制御動作のフローチャートを、図5には、複数の防犯ブザーの連携動作を説明する図を示す。
【0022】
先ず、防犯ブザー1の使用開始時においては、例えば、送受信部10を介したデータ転送によりコンピュータ等を使用して使用者を識別する個人情報が入力される(ステップJ1)。個人情報は、例えば、氏名、年齢、学校名、クラスなどを含む。なお、データの入力方式はどのようなものを適用しても良い。次いで、防犯ブザー1を動作状態とすることで、送受信部10からの情報受信や引抜きレバー31の引抜きの検知を待機する状態となる(ステップJ2)。
【0023】
ここで、防犯ブザー1A(図4中「防犯ブザーA」と記す)の所持者が不慮の事態に遭遇するなどして引抜きレバー31を引き抜いたとする。すると、防犯ブザー1Aの検出部12がそれを検知し(ステップJ3)、制御部14が指令を発してブザー13から大音量の報知音を出力する(ステップJ4)。また、これと並行して制御部14が指令を発して緯度・経度演算部16とGPS受信部15によりGPS測定処理(現在位置の測位)が行われる(ステップJ5)。
【0024】
そして、GPS測定処理が済んだら、近くにある他の防犯ブザー1,1…に警報発生を通知するため、送受信部10を介して緊急信号(警報発生の情報)と警報を発した防犯ブザー1Aに関する情報(警報伝送情報)の発信を行う(ステップJ6)。ここで送信される情報には、ステップJ1で登録してある個人情報、GPS測定により得られた緯度・経度の情報、引き抜かれた時刻の情報などが含まれる。これらは無線によりブロードキャスト送信され、この電波が受信可能な範囲に置かれた全ての防犯ブザー1,1…により受信可能とされる。
【0025】
ここで、別の防犯ブザー1B(図4中「防犯ブザーB」と記す)が無線を受信可能な範囲にあったとする。防犯ブザー1Bでは、情報受信とレバー引抜き検知の待機状態にあるので、上記のブロードキャスト送信があったときに速やかにその受信処理に移行する(ステップJ7)。
【0026】
防犯ブザー1Bにおいて、他の防犯ブザー1Aからの送信情報を受信したら、次いで、制御部14が指令を発して緯度・経度計算部16とGPS受信部15によりGPS測定処理を行う(ステップJ8)。そして、測定が済んだら、受信情報に含まれる警報を発した機器の緯度・経度と、GPS測定により取得した自らの緯度・経度の差分を算出する。また、この緯度・経度の差から、警報を発した他の防犯ブザー1のある方向および距離を算出する(ステップJ9)。
【0027】
次いで、情報受信を知らせるためにブザー13を中程度の音で鳴動させ(ステップJ10)、描画処理部18にデータを送って表示部19に警報を発した防犯ブザー1Aの情報を文字等により表示出力する(ステップJ11)。表示内容には、警報を発した防犯ブザー1Aに登録されている個人情報と、防犯ブザー1Aのある方向と距離、警報が発せられた時刻の情報が含まれる。
【0028】
さらに、これらの情報表示を行ったら、緊急信号と、先に受信した警報を発した防犯ブザー1Aに関する情報の発信を行う(ステップJ12)。すなわち、先に受信した防犯ブザー1Aの個人情報、緯度・経度情報、レバー引抜き時刻情報等を、更に、近くにある別の防犯ブザー1,1…へ転送すべく送受信部10から無線により送信する。この送信もブロードキャスト送信により行う。
【0029】
ここで、他の防犯ブザー1C(図4中「防犯ブザーC」と記す)が、このブロードキャスト送信された無線を受信可能な範囲にあった場合には、この防犯ブザー1Cは情報受信とレバー引抜き検知の待機状態にあるので、速やかに上記のブロードキャスト送信された情報の受信処理に移行する(ステップJ7a)。そして、この防犯ブザー1Cにおいても、防犯ブザー1BによるステップJ8〜J12の処理と同様の処理(ステップJ8a〜J12a)が、その後、行われる。これにより、警報を直接に発していない防犯ブザー1Bから無線の受信を行った場合でも、警報を発した防犯ブザー1Aに対する方位と距離とが計算されて表示出力されたり(ステップJ9a,J11a)、警報を発した防犯ブザー1Aに関する情報の転送処理(ステップJ12a)が行われるようになっている。
【0030】
図5に示すように、上記のような情報の転送処理により、警報を発した防犯ブザー1Aから近くの防犯ブザー1Bへ緊急信号や防犯ブザー1Aの情報が送信され、さらに、防犯ブザー1Bから近くの防犯ブザー1Cへ緊急信号や防犯ブザー1Aの情報が転送されていく。そして、このように複数の防犯ブザー1A,1B,1C,1D…が情報網を形成して、警報を発した防犯ブザー1Aから広範囲に情報が転送されていくこととなる。さらに、情報を受信した防犯ブザー1B,1C,1D…においては、警報を発した防犯ブザー1Aまでの方角と距離とが表示出力されるので、緊急時においてもその場所を見つけやすく、周囲の者により不慮の事態への対応を速やかに行うことができる。
【0031】
なお、上記の情報の転送方式では、複数の防犯ブザー1,1…間で情報転送がループ状に繰り返し実行されてしまうことがあり得るので、直前に受け取った緊急信号および情報と同一のものを再度受信した場合には、受信処理を中断させたり、その後の処理を中断させて、同一の情報が繰り返し転送されてしまうのを回避するように構成すると良い。
【0032】
以上のように、この実施形態の防犯ブザーによれば、情報受信した防犯ブザー1B〜1Dには、警報を発した防犯ブザー1Aまでの方角と距離とが表示出力されるので、緊急時においてもその場所を見つけやすく、周囲の者により不慮の事態への対応を速やかに行うことができる。また、警報を発した防犯ブザー1Aの所持者の情報も表示されるので、そのものに適した対応をとれるという効果もある。
【0033】
また、警報を発した防犯ブザー1Aから無線送信された情報は、複数の防犯ブザー1B〜1Dを介して転送されるので、広範囲に警報発生を知らせることができる。
【0034】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、上記実施形態では、不慮の事態の発生を引抜きレバーを引き抜くことで感知する構成を示したが、その他、本発明を例えば車載用の警報装置に応用するのであれば、人体の近接を異常事態の発生として検知するように構成したり、特定の揺れを異常事態の発生として感知するように構成しても良い。
【0035】
また、現在位置を測位するのにGPSを利用した例を示したが、例えば、PHS(Personal HandyphoneSystem)を利用して位置検出を行う構成を利用しても良いなど、その他の種々の方式を適用することもできる。
【0036】
その他、各防犯ブザーの間で転送される情報の具体例や、情報受信した場合に表示部に表示される表示内容の具体例など、この実施形態で示した細部等は発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態の防犯ブザーの内部構成を示すブロック図である。
【図2】防犯ブザーの異常感知の構造を背面側ケースを外して示した内部構造図である。
【図3】異常発生時における2つの防犯ブザーの連携動作を説明する図である。
【図4】複数の防犯ブザーの制御動作の流れを示すフローチャートである。
【図5】異常発生時における複数の防犯ブザーの連携動作を説明する図である。
【符号の説明】
【0038】
1,1A〜1D 防犯ブザー(警報装置)
10 送受信部
11 変復調部
12 検出部
13 ブザー
14 制御部
15 GPS受信部
16 緯度・経度演算部
17 メモリ
18 描画処理部
19 表示部
20 装置本体
31 引抜きレバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
警報を要する事態および警報を要する事態を通知する操作の少なくとも一方を感知する感知手段と、
現在位置を検出する位置検出手段と、
無線により他の警報装置と送受信を行う通信手段と、
表示出力を行う表示手段と、
前記感知手段による感知動作があった場合に、
警報発生の情報および前記位置検出手段により検出された現在位置の情報を含む警報伝送情報を、前記通信手段により他の警報装置へ送信させ、
前記通信手段により他の警報装置が発した前記警報伝送情報を受信した場合に、
前記位置検出手段により検出した自己の現在位置の情報と、受信した警報伝送情報に含まれる他の警報装置の現在位置の情報との差分を演算して、この差分を表わす情報を前記表示手段により表示出力させる制御手段と、
を有することを特徴とする警報装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記通信手段により他の警報装置が発した前記警報伝送情報を受信した場合に、
前記差分を表わす情報として、前記他の警報装置を指し示す方向、および当該他の警報装置までの距離の情報を演算し、当該演算された差分を表わす情報を前記表示手段により表示出力させることを特徴とする請求項1記載の警報装置。
【請求項3】
前記制御手段はさらに、
前記通信手段により前記警報伝送情報を受信した場合に、
前記通信手段によって当該警報伝送情報を別の警報装置へ転送させることを特徴とする請求項1記載の警報装置。
【請求項4】
前記警報装置はさらに、
所持者の識別情報が設定可能な記憶手段を備え、
前記警報伝送情報には、前記所持者の識別情報が含まれることを特徴とする請求項1記載の警報装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の警報装置を複数備えて構成されることを特徴とする警報システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−134425(P2009−134425A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−308860(P2007−308860)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】