説明

貝類の処理方法

【課題】 簡素な処理設備で、剥離された貝類を篩で分離して得られる、分離貝の腐敗臭
防止を行うとともに、分離液のCODを十分に低下させるように処理することができる処
理方法を提供する。
【解決手段】 海水の水路壁1から剥離された付着の貝類2を破砕して、または破砕ぜす
に、篩3を上架した貯槽5に移送し、篩上の固形物に腐敗臭防止剤6を散布したのち別途
処理し、篩下のヘドロ分を含む分離液は、貯槽5内で曝気して、または曝気せずに、凝集
反応槽8に移送して無機凝集剤9を添加し、凝集反応液を固液分離槽(沈殿槽10)にて
固液分離して分離汚泥と処理水を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却水として海水を取り入れる水路の壁に付着する貝類を剥離した際に発生
する廃棄物としての剥離貝類の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所、化学コンビナート、製鉄所等のプラントでは、海水が工業用冷却水として大量
に使用されているが、この海水の採水のための海水水路の壁には大量のムラサキイガイ、
フジツボ、カキなどの貝類が付着する。
【0003】
これらの付着した貝類を放置すると、配管閉塞、海水採水量の低下、冷却効率の低下、
ひいては装置故障、発電装置稼動効率の低下等の様々な障害を引き起こすため、発電所の
定期検査の時期に、水路の水を抜いて、または抜かずして付着貝類を剥離し、これを廃棄
物として処理していた。
【0004】
従来、剥離された貝類は、発電所等の敷地内にに掘った穴に放置されていたが、夏場に
は量が多いことも相俟って、魚の腐敗したような臭気の発生や、投棄箇所からの汚水の流
出といった環境汚染の問題があり、更に投棄場所の確保、投棄場所への運搬コスト等も大
きな問題となっていた。
【0005】
剥離された貝類の腐敗臭防止方法として、硝酸塩水溶液を散布する方法と硝酸塩水溶液
中に浸漬する方法が提案されている(特許文献1参照)。また、剥離された貝類の処理方
法として、固液分離して分離液は凝集沈殿処理または活性汚泥し、固形分は破砕してまた
は破砕処理せずに、乾燥・焼却処理または酵素分解処理することが知られている(特開平
6−79255、特開平6−129626、特開平8−89933)。処理方法として、
くらげを破砕して懸濁水とし、この懸濁水を硫酸バンドによって凝集沈殿処理する方法(
特開平4−48986号公報)がある。
【特許文献1】特許第3405120号
【特許文献2】特開平6−79255号
【特許文献3】特開平6−129626号
【特許文献4】特開平8−89933号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、剥離された貝類を固液分離して得られる、ヘドロを含む分離液は、凝集剤により
凝集処理をして、CODを除去して浄化されていた。しかし、剥離された貝類が固液分離
されるまでに一部腐敗が起こり、分離液中にCOD成分が溶出して濃度が高くなり、凝集
処理をしてもCODの除去効果が十分ではなく、その処理水をさらに高度処理しても最終
処理水のCODはやや高いものとなっていた。そのため、処理設備が長大化し、処理コス
トも嵩んでいた。
【0007】
本発明は上記従来の問題点を解決し、簡素な処理設備で、剥離された貝類を篩などの水
切り手段で分離して得られる分離液のCODを十分に低下させるように処理することがで
きる処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明(請求項1)の貝類の処理方法は、海水の水路壁から剥離された付着性の貝類を
破砕して、または破砕ぜすに、水切り工程に移送する移送工程と、移送された貝類に腐敗
臭防止剤を添加して腐敗臭防止を行うとともに、水切りを行い、固形物と分離液とに分離
する水切り工程と、分離した固形物を別途処理する工程と、分離した、ヘドロ分を含む分
離液を曝気して、または曝気せずに貯留する貯留工程と、貯留された分離液を、凝集反応
槽に移送して凝集剤を添加し、凝集反応を行う凝集反応工程と、凝集反応工程の反応液を
固液分離槽にて固液分離して分離汚泥と処理水を得る固液分離工程とを具備することを特
徴とするものである。
【0009】
本発明(請求項2)の貝類の処理方法は、海水の水路壁から剥離された付着性の貝類に
腐敗臭防止剤を添加して腐敗臭防止を行う腐敗臭防止工程と、腐敗臭防止剤が添加された
貝類を破砕して、または破砕ぜすに、水切り工程に移送する移送工程と、移送された貝類
を固形物と分離液とに分離する水切り工程と、分離した固形物を別途処理する工程と、分
離した、ヘドロ分を含む分離液を曝気して、または曝気せずに貯留する貯留工程と、貯留
された分離液を、凝集反応槽に移送して凝集剤を添加し、凝集反応を行う凝集反応工程と
、凝集反応工程の反応液を固液分離槽にて固液分離して分離汚泥と処理水を得る固液分離
工程とを具備することを特徴とするものである。
【0010】
本発明(請求項3)の貝類の処理方法は、請求項1または2において、処理水をさらに
濾過処理後、活性炭吸着処理することを特徴とするものである。
【0011】
本発明(請求項4)の貝類の処理方法は、請求項1ないし3のいずれか1項において、
腐敗臭防止剤は、硝酸塩であることを特徴とするものである。
【0012】
かかる本発明の貝類の処理方法によると、剥離された貝類の移送前または水切り時に腐
敗臭防止剤を散布するので、貯留される分離貝類の腐敗臭が防止されるとともに、分離液
貯槽内の分離液もCODの増加が抑制される。
【0013】
剥離された貝類は、海水やヘドロとともにポンプ、バキュームカーまたはブルトーザー
で移送されるが、移送前に水路底部に放置されると腐敗が進行するため、移送前に腐敗臭
防止剤を散布することができる。剥離された貝類を放置せずにすぐ移送する場合は、水切
り時に腐敗臭防止剤を散布する。
【0014】
腐敗臭防止剤は、防止効果持続の観点から硝酸塩を用いることが好ましいが、カリウム
ミョウバンやナトリウムミョウバンなどのミョウバンを用いることもできる。硝酸塩とし
ては、硝酸カルシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウムなどを用いる
ことができる。使用方法としては、剥離された貝類を硝酸塩水溶液に浸漬する方法と、剥
離された貝類に硝酸塩使用液を散布する方法がある。硝酸塩の使用量は、剥離された貝類
の重量当り0.1〜1.0重量%が目安である。
【0015】
剥離された貝類は、水切りに先立って、剥離された貝類の減容化のために必要に応じ、
破砕機で破砕処理を行う。次に剥離された貝は、篩などの水切り手段で分離される。篩の
ほかに、サイクロン分離機や遠心分離機なども使用可能である。分離液は、同伴する海水
の量や移送前の貝類の腐敗の進行度合いや、破砕による減容化の実施の有無により、CO
D濃度は異なるが、COD濃度が高い場合(通常、COD濃度が150mg/L以上の場
合)は、分離液貯槽において曝気を行う。この場合、下水等の活性汚泥処理装置のように
、沈殿槽を設けて分離汚泥を曝気部へ汚泥返送するような操作は不要である。同伴される
ヘドロ中には、好塩性の微生物が存在し、単に曝気するだけで、その微生物は増殖し、B
OD成分に相当するCOD成分を分解する。CODが低下された分離液は、凝集反応槽に
移送される。
【0016】
分離液貯槽中の分離液のCOD濃度が高くない場合は、分離液貯槽において曝気を行う
ことなく、分離液は凝集反応槽に移送される。
【0017】
凝集反応槽においては、分離液に凝集剤を添加して凝集処理を行う。凝集剤としては、
硫酸バンド、PAC(ポリ塩化アルミニウム)、塩化第二鉄、ポリ硫酸鉄などを使用する
。さらに、ポリアクリル酸ナトリウムやポリアクリルアミドの部分加水分解物などの凝集
剤を添加して、生成フロックを大きくし、沈殿分離を容易にすることもできる。
【0018】
凝集反応液は、沈殿槽や浮上分離槽などの固液分離装置で分離汚泥と処理水とに分離さ
れる。分離汚泥は脱水され、脱水ケーキは廃棄物として処理され、処理水は放流されるか
、必要に応じ、さらに高度処理される。
【0019】
高度処理としては、濾過処理とそれに引続く活性炭吸着処理が挙げられる。濾過処理に
は上層がアンスラサイト、下層が砂からなる二層濾過器を用い、これに下向流で通水した
後、活性炭吸着処理には、粒状活性炭を充填した活性炭塔を用い、これにに下向流で通水
して高度にCODを除去した処理水を得るのとができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、剥離された貝類の移送前または篩などによる水切り時に腐敗臭防止
剤を散布するので、貯留される分離貝類の腐敗臭が防止されるとともに、分離液貯槽内の
分離液もCODの増加が抑制される。したがって、後続する凝集処理により、分離液のC
OD除去は容易に行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0022】
図1は本発明の貝類の処理方法の実施の形態を示す系統図である。
海水の水路壁1から剥離された貝類2は、ポンプ(図示せず)により移送され、破砕機(
図示せず)により破砕して、または破砕せずに篩3の上に放出され、篩3からすべり落ち
た貝類は一時貯留場4に貯留されるとともに、分離液は同伴されるヘドロとともに貯槽5
に貯留される。腐敗臭防止剤は、散布手段6から篩3の上の貝類に散布され、一時貯留場
4の貯留される貝類は、腐敗臭が防止される。
【0023】
分離液は、貯槽5において必要に応じて曝気手段7により曝気する。分離液には同伴す
るヘドロが存在するので、単に曝気するだけで好塩性の微生物が活性となり、分離液中の
溶解性有機物を分解するので、CODを除去することができる。貯槽5内の分離液はポン
プP1で凝集反応槽8に移送され、そこで凝集剤9が添加され、凝集処理される。すなわ
ち、硫酸バンドや塩化第二鉄の添加により生成フロックにCOD成分が取り込まれる。生
成したフロックは、沈殿槽10で上澄水と沈殿汚泥とに分離される。沈殿汚泥は汚泥排出
管11から排出され、別途処理される。上澄水は、そのまま放流してもよいが、ポンプピ
ット12からポンプP2により、必要に応じて濾過器13および/または活性炭吸着塔1
4に通水してさらに微細懸濁物やCODを除去して高度処理を行い、排出管15から排出
する。
【実施例1】
【0024】
図1に示す貝類の処理装置を用いて、貝類の処理を行った。ただし、破砕機、曝気手段
7、濾過器13および活性炭吸着塔14は稼動を停止した。まず剥離された貝類は、海水
とともに篩3に移送され、分離した貝類は一時貯留場4に貯留し、分離液(CODMn50
mg/L)は、貯槽5に受け入れた。その際、篩3上には、硝酸カルシウムを海水に溶か
した50%溶液を硝酸カルシウムとして、貝類重量当り0.1%となるように散布した。
分離液は曝気することなく、ポンプP1で流量5m3/hrで凝集反応槽8に送られ、そ
こに塩化第二鉄を300mg/L添加して凝集処理を行い、沈殿槽(分離面積:20m2
)で固液分離した。上澄水のCODMnは15mg/Lであった。なお、一時貯留場の分離
貝は、5日放置されたが、腐敗臭はしなかった。
比較例1
実施例1において、腐敗臭防止剤を散布することなく、実施例1と同様の処理を行った
ところ、上澄水のCODMnは30mg/Lであった。なお、一時貯留場の分離貝は、1日
放置後には腐敗臭が鼻を刺激した。
実施例2
実施例1において、同伴海水が少なく、分離液のCOD濃度がCODMn400mg/Lと
高かったので曝気手段を稼動させ、分離液1m3当り空気を0.01m3/min曝気し、
さらに濾過器13(二層濾過器:1.4m3)および活性炭吸着塔(1.4m3)にそれぞ
れSV0.7hr-1で通水したところ、沈殿槽12の上澄水3および最終処理水のCOD
Mnはそれぞれ80mg/Lおよび10mg/Lであった。
比較例2
実施例2において、腐敗臭防止剤を散布することなく、実施例2と同様の処理を行った
ところ、分離液のCODMnは100mg/Lであり、上澄水のCODMnは20mg/Lで
あった。なお、一時貯留場の分離貝は、1日放置後には腐敗臭が鼻を刺激した。
【0025】
以上の結果から、剥離された貝類の篩による分離時に腐敗臭防止剤を散布する実施例1
および実施例2では、一時貯留した貝類の腐敗臭防止の効果もあり、分離液のCOD低減
が可能となった。このため、上澄水または最終処理水の水質は良好となった。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の貝類の処理法の実施の形態を示す系統図である。
【符号の説明】
【0027】
1 水路壁
2 貝類
3 篩
4 一時貯留場
5 貯槽
6 散布手段
7 曝気手段
8 凝集反応槽
9 凝集剤
10 沈殿槽
11 汚泥排出管
12 ポンプピット
13 濾過器
14 活性炭吸着塔
15排出管



【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水の水路壁から剥離された付着性の貝類を破砕して、または破砕ぜすに、水切り工程
に移送する移送工程と、
移送された貝類に腐敗臭防止剤を添加して腐敗臭防止を行うとともに、水切りを行い、
固形物と分離液とに分離する水切り工程と、
分離した固形物を別途処理する工程と、
分離した、ヘドロ分を含む分離液を曝気して、または曝気せずに貯留する貯留工程と、
貯留された分離液を、凝集反応槽に移送して凝集剤を添加し、凝集反応を行う凝集反応
工程と、
凝集反応工程の反応液を固液分離槽にて固液分離して分離汚泥と処理水を得る固液分離
工程とを具備することを特徴とする貝類の処理方法。
【請求項2】
海水の水路壁から剥離された付着性の貝類に腐敗臭防止剤を添加して腐敗臭防止を行う
腐敗臭防止工程と、
腐敗臭防止剤が添加された貝類を破砕して、または破砕ぜすに、水切り工程に移送する
移送工程と、
移送された貝類を固形物と分離液とに分離する水切り工程と、
分離した固形物を別途処理する工程と、
分離した、ヘドロ分を含む分離液を曝気して、または曝気せずに貯留する貯留工程と、
貯留された分離液を、凝集反応槽に移送して凝集剤を添加し、凝集反応を行う凝集反応
工程と、
凝集反応工程の反応液を固液分離槽にて固液分離して分離汚泥と処理水を得る固液分離
工程とを具備することを特徴とする貝類の処理方法。
【請求項3】
請求項1または2において、処理水をさらに濾過処理後、活性炭吸着処理することを特
徴とする貝類の処理方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、腐敗臭防止剤は、硝酸塩であることを特徴
とする貝類の処理方法。



【図1】
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【公開番号】特開2007−98188(P2007−98188A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−287272(P2005−287272)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】